Dead or AliCe
『16人の救世主』

裁判

メイド8
中庭。
メイド8
大きな歓声。
メイド8
誰もいない中庭に、観客の期待だけが渦巻いている。
メイド6
重たい両開きの扉が開く。
メイド6
押し開けるのは兎耳のメイド。仮面を被り、剣を携えている。
メイド6
彼女は真っ直ぐ中庭へと歩く。
メイド6
「私が仕えますのは、客室6号室の救世主」
メイド6
開かれた扉の奥に、2人の姿が現れる。
メイド6
「トイトロール様、ティモフェイ様」
メイド6
湧き上がる歓声の中、2人は真っ直ぐ中庭へと歩く。

激しく雪降る刺剣の館。

くらむ雪。

世界の救いを前にした、というには深すぎる

つめたいつめたい雪の中。
ティモフェイ
雪を孕んだ風にマントがなびき。
トイ
それに伴うひらりとしたドレス。
ティモフェイ
生贄を伴って、救世騎士が歩く。
トイ
騎士にいざなわれ、生贄が歩く。
ティモフェイ
世界を閉ざして埋め尽くす残酷な雪をかき分けながら、
ティモフェイ
かの救世主は、中庭の中央に立つ。
トイ
その隣にぴたりと立つ、同じ顔の。
トイ
ティモフェイに手を伸ばす。
トイ
その手を二人であわせて、祈りを組むように。
ティモフェイ
瞼を伏せた。
トイ
鏡写しに、同じく。
ティモフェイ
雪の降りしきる中を手を合わせ、
ティモフェイ
生贄となりうる清らかな魂に身を寄せる。
ティモフェイ
今度は離さぬとばかりに、指先に力を込めた。
トイ
2人は身を寄せ、目を伏せ、ふたりがかりで祈っている。
トイ
…まあなんだか、おとぎ話そのもの。
トイ
きらきら金髪碧眼の 
同じ顔の二人が
トイ
非現実的な雪の中、声もあげずに神に祈る。
トイ
それが、『6号室』。
トイ
忘却の国。
トイ
騎士と生贄。
トイ
そのものがたり…。
メイド8
次いで、同じ装いのメイドが現れる。
メイド8
彼女は真っ直ぐ中庭へと歩く。
メイド8
「私が仕えますのは、客室8号室の救世主」
メイド8
開かれた扉の奥に、2人の姿が現れる。
メイド8
「チカ様、マキナ様」
メイド8
湧き上がる喝采の中、2人は真っ直ぐ中庭へと歩く。
小鴨 チカ
風が冷たく肌を打つ。
小鴨 チカ
寒さで手足が震えるけれど、動ける。大丈夫だ。
小鴨 チカ
手に持つのは、ぼくの知る、最も恐ろしい武器。
マキナ
チカに並んで、歩を進める。
小鴨 チカ
今度は中途半端な事はしない。必要なら、終止符を打つ覚悟も。
マキナ
降りしきる雪に巻かれながら進む。
マキナ
それを払う力なんてない。
マキナ
ただの男の子と、女の子。
マキナ
それでも雪の中、前を見て、先に進むことはできる。
マキナ
二人一緒なら。
メイド6
「24時間が経過し、お茶会の時間が終了しました」
メイド8
「救世主の皆様も、お集まりですね」
小鴨 チカ
「……」
ティモフェイ
「…………」
マキナ
チカの隣に立ち、対面の二人を見据える。
小鴨 チカ
体は細い。手足はよく動く。
小鴨 チカ
……やっぱり胴体かな。
ティモフェイ
無言のままに虹をひらめかせ、
ティモフェイ
ステンドグラスを模した剣を手に握り込む。
トイ
目を閉じて祈っている。
マキナ
手には初戦と同じ短剣を握っている。
トイ
追想の中へ。
ティモフェイ
雪の中に反射する、きらきらと虹のひかり。
メイド6
「これより裁判となりますが、ご準備はよろしいでしょうか」
ティモフェイ
頷く。
小鴨 チカ
「はい」
マキナ
頷く。
トイ
微笑んでうなずく。
メイド8
「ご衣裳、小道具をお持ちの方、ご確認いただきませ」
メイド6
「……よろしいですね」
トイ
メイド6さんの声だな、と思って。
メイド6
2人のメイドは部屋に戻らない。
メイド8
この中庭に立ち、戦いを見守る。
小鴨 チカ
「……亡者が出たら、あなたたちが殺すんだね」
メイド8
「はい」
小鴨 チカ
「……ん」
ティモフェイ
「手間をかける」
メイド6
「私たちは、刺剣の館のメイドですから」
メイド8
「オールドメイドゲームを果たすのみでございます」
メイド6
「それでは」
メイド8
「裁判を、開廷いたします」
メイド6
GM
裁判前処理を行います。
GM
*まず、8号室はスペシャルで免罪符を獲得
GM
*アイテムの移動は、チカの免罪符*2をマキナへ移動
[ 小鴨 チカ ] 免罪符 : 2 → 0
GM
*ティモフェイ 免罪符を1枚トイトロールに譲渡
[ マキナ ] 免罪符 : 0 → 3
GM
*マキナ 仕込み 水パイプ*2
[ マキナ ] 水パイプ : 0 → 2
GM
*ティモフェイ 仕込 免罪符 水パイプ
GM
以上です。
GM
各自処理をお願い致します。
GM
よろしいですね。
GM
それでは、参りましょう。
GM
GM
*裁判 第1ラウンド
GM
まずはアイテムの使用は……ありませんね。
GM
行動順を決定します。
GM
決定に影響するのは才覚のみ。
GM
各自1d6+才覚 でどうぞ。
ティモフェイ
1D6 行動順
DiceBot : (1D6) > 5
マキナ
1d6
DiceBot : (1D6) > 2
小鴨 チカ
1d+4
DiceBot : (1D6+4) > 1[1]+4 > 5
トイ
1D6+3
DiceBot : (1D6+3) > 2[2]+3 > 5
GM
5で並んだティモフェイ、トイ、チカで再度お願い致します。
小鴨 チカ
1d+4
DiceBot : (1D6+4) > 2[2]+4 > 6
ティモフェイ
1D6
DiceBot : (1D6) > 4
トイ
1D6+3
DiceBot : (1D6+3) > 6[6]+3 > 9
メイド6
*行動順はトイ様、チカ様、ティモフェイ様、マキナ様です。
メイド6
*それではカードをお引きください。
小鴨 チカ
*d2 hJ hQ hA Jo
トイ
*h4.c5.sj.hk.ca
ティモフェイ
*h2,c2,s4,s9,s10
マキナ
*h7 s7 s8 d10 cK
メイド6
*裁判 第1ラウンド トイ
トイ
救世主はみな狂っている。
トイ
では この男の狂気はどこにある?
トイ
…まあいいか。
トイ
それもこれも、トイトロールの疵に深く触れる者はいなかったからだ。
トイ
アレクシアは、癒えた疵を元に戻したのだったし
トイ
チカも、癒えた疵を元に戻したのだったし。
トイ
あばくものが現れたら、真っ先にわかった事ではあるけれど。
トイ
*精確を使用[h4] 対象:必衰
必衰を使用[c5] 対象:マキナ
メイド6
割り込みはございますか?
小鴨 チカ
*しません!
メイド6
では精確からどうぞ。
トイ
1d6
DiceBot : (1D6) > 2
トイ
2d6+3+1+2=>7 判定:才覚 万能 精確
DiceBot : (2D6+3+1+2>=7) > 2[1,1]+3+1+2 > 8 > 成功
メイド6
*ファンブル!
メイド6
逆転しますか?
トイ
*逆転します 抉る傷:災厄
[ トイ ] 災厄 : 0 → -1
トイ
出目を1つ6に変えますね!
トイ
凄まじい雪が降る。
ティモフェイ
強まる雪に、顔をしかめた。

バキリ!!

みし、みし。

館が悲鳴を上げる。

奇跡の力で、崩れはしないが。

ミシミシ、ばきばきと 雪の重さに耐えかねて

館が音を立てる!


そも。

こんな風に死者の記憶が沸き上がり、

命ない者の賑やかしにあふれ、

館をへし折るほどに雪閉ざす

この光景が

この光景を生み出す根源が――


どんなふうに何を望みとして?


嘘とまではいわないが。

『奇跡は万人に平等に振り分けられなければならない』と。
メイド6
6号室のメイドはただ黙したまま、目を細めて見ている。

心の疵は、

「災厄」「生贄」ちょうど半分半分。

万人の平等、

死んだ忘却の国の人々も平等。

死んで来たトーナメント参加者も平等。

これがいちばん平等!


抗い難い、胸に秘めた願望。

『滅べ』と。

世界の滅亡を。


人間も動物も植物もひとつ残らずすみずみまで、みんな死ね。

死んで一緒になればいい。


自分の願いがいちばん純粋であると思っていた。
トイ
その指先祈るように。
トイ
マキナを指し示す。
トイ
風。
マキナ
「……っ!」
トイ
アレクシアの記憶が。
トイ
シャルルの記憶が。
トイ
遅いかかる!
トイ
1D6+3 スート凶器
DiceBot : (1D6+3) > 3[3]+3 > 6
マキナ
*愛毒 s8 対象:必衰
[ マキナ ] HP : 22 → 16
マキナ
割り込みはされますか?
トイ
*遊撃を使用[hk]対象:愛毒
小鴨 チカ
*妨害[Jo]を使用
マキナ
*妨害に援護を
メイド6
援護の技能強化により妨害の達成値が+2。
メイド6
妨害からどうぞ。
小鴨 チカ
2d6+4+1+1+2=>7 判定:才覚+多彩な凶器+万能+援護
DiceBot : (2D6+4+1+1+2>=7) > 2[1,1]+4+1+1+2 > 10 > 成功
メイド6
*ファンブル!
小鴨 チカ
*順応を抉り、逆転を使用。15成功
メイド6
OK
メイド6
それでは目標値15点として、遊撃をどうぞ。
[ 小鴨 チカ ] 順応 : 0 → -1
トイ
2d6+2+1=>15 判定:猟奇 万能
DiceBot : (2D6+2+1>=15) > 4[3,1]+2+1 > 7 > 失敗
メイド6
遊撃失敗。そのまま愛毒をどうぞ。
小鴨 チカ
*間隙を使用 hQ
小鴨 チカ
C(4+3) 才覚+威力
DiceBot : 計算結果 > 7
メイド6
トイトロール様に7点のダメージ。
[ トイ ] HP : 17 → 10
[ 小鴨 チカ ] 順応 : 0 → -1
メイド6
あらためて、愛毒を。
マキナ
2d6+3>=7 愛
DiceBot : (2D6+3>=7) > 7[2,5]+3 > 10 > 成功
メイド6
成功です。
メイド6
トイ様の行動終了タイミングがすぐに入りますので、HPが2点減少いたします。
[ トイ ] HP : 10 → 8
トイ
いや!
メイド6
まだ行動終了ではない?
トイ
*百刑を使用[ca]対象:マキナ
状態異常:封印
[ トイ ] HP : 8 → 10
トイ
マキナの前に、あらわれる。
[ マキナ ] HP : 16 → 13
トイ

<もう一度>

<同じ目に会いたいか?>

トイ
凍てついた血液が飛び散り、マキナの進路上に炎の迷路を作り出す。

炎の先に瞳がある。

鋭い瞳だ。
マキナ
「……っ!」
トイ
かつてこの中庭で戦った、ものの記憶
マキナ
忘れうるはずもない。
トイ
*ダメージ5点(才覚+衰弱)
[ マキナ ] HP : 13 → 11
[ マキナ ] 衰弱 : 0 → 3
トイ
乗り越えた屍が
トイ
形を持って再びマキナに。
トイ
あなたはあの時とはちがうのか。
マキナ
心に刻まれた恐怖は、きっかけを得れば容易に蘇る。
マキナ
「っ、う……」
トイ
鋭い瞳。刃のような。
マキナ
あの瞳がまだどこかで見ているような、そんな怖気を覚えることが何度もあった。
マキナ
「っ、ああ!!」
マキナ
幻を割くように、短剣を振るう。
トイ
近づき、耳元で囁き、撫で――
トイ
風が切り払われる。
小鴨 チカ
トイさんに飛び掛かる。
小鴨 チカ
手には杭。胴を目掛けて。
マキナ
「は、あ……」
トイ
トイにとびかかろうとすれば、
トイ
その進路を遮るように
トイ
――中庭に風がうねる!
トイ
かつてここで戦った、子夏の記憶。
マキナ
幻、所詮は幻だ。
小鴨 チカ
「クッソが!」
マキナ
マキナが今見るべきは過去の記憶ではなく、チカの方。
小鴨 チカ
「悪趣味な能力だな!ホントに制御できてねーのか?」
トイ
「あっはっは」
トイ
「ははは!」
ティモフェイ
「…………」
マキナ
チカの進路を遮る幻に、斬り込む。
トイ
「できないんだよ!」
トイ
できないから、こうしている。
トイ
抗い難いからこうしている!
ティモフェイ
その疵をついぞ癒せぬまま。
ティモフェイ
同じ顔の救世主は剣を提げる。
メイド6
*では改めて猛毒の処理を。
[ トイ ] HP : 10 → 8
メイド6
*裁判 第1ラウンド チカ
小鴨 チカ
「……っ」
小鴨 チカ
*鋭気[d2]・封殺[hJ]
小鴨 チカ
2d6+4+1+1=>7 判定:才覚+多彩な凶器+万能
DiceBot : (2D6+4+1+1>=7) > 12[6,6]+4+1+1 > 18 > 成功
小鴨 チカ
1d
DiceBot : (1D6) > 2
メイド6
*スペシャル!
[ 小鴨 チカ ] HP : 14 → 16
小鴨 チカ
*封印2ラウンド
メイド8
攻撃の対象はどちらでしょうか?
小鴨 チカ
あ!対象言ってない!
小鴨 チカ
*トイさんです ごめんなさい!
メイド8
大丈夫です!
メイド8
鋭気と多彩な狂気の威力3でダメージは6ですね。
[ トイ ] HP : 8 → 2
小鴨 チカ
「……そうかよ」
トイ
生贄、災厄、ちょうど半分半分。
トイ
どっちに転ぶか確かめたかった。
トイ
自分という存在に意味があるとして、
トイ
それは『救世主を作り出すために存在している』生贄なのか。
トイ
『奇跡に万人に平等な死を求める』災厄なのか。
トイ
チカを見つめる。
小鴨 チカ
「……」
小鴨 チカ
これは敵だ。
小鴨 チカ
過去の事は忘れろ。
トイ
「チカ」
小鴨 チカ
「……」
小鴨 チカ
答えない。
トイ
「チカ、ピアス捨てた事怒ってないよ」
小鴨 チカ
「…………」聞くな。
マキナ
「チカくん!」
トイ
救世主は皆狂っている。
マキナ
「聞かないでいい!」
トイ
「おまえはいいやつだもん」
小鴨 チカ
知るか。
小鴨 チカ
ぼくはいいやつじゃない。
小鴨 チカ
お前も、いいやつなんかじゃない。
トイ
「だれもくるしまなくなるといいよな」
トイ
「お前がオレにそんな顔しなくてもよくなったら」
トイ
「いいよな~」
小鴨 チカ
「黙れ……」
トイ
風が吹く。
トイ
チカが逡巡する間にも。
小鴨 チカ
今、目の前に立ちはだかってるのは、暴走する力を振るうだけの──
小鴨 チカ
「化け物の、くせに!」
小鴨 チカ
杭を振るう。
トイ
化け物。
トイ
その言葉にたじろぐ。
トイ
かぜのゆるみ。チカの杭がトイに届く…!
トイ
(化け物?)
トイ
(オレは化け物なのか?)
小鴨 チカ
叩きつける!
トイ
(だから自分にだけ、マキナやチカや、シャルルやアレクシアや…)
トイ
(ティモフェイとマルタに、わかることがわからない)
小鴨 チカ
有刺鉄線の絡まる杭が、白い衣に突き刺さる。
トイ
(そうなのか?)
トイ
甲高い悲鳴。
トイ
「あっあぁ……」
トイ
「……あ、あ、はは」
トイ
「怒ってないよ」
小鴨 チカ
「ああ!?」
トイ
苦痛に顔をゆがませながら笑う。
トイ
救世主はくるっている。
トイ
トイから流れ出た血はすぐさま凍り付き。
トイ
傷口から赤い水晶のようなものが生える。
メイド6
*裁判 第1ラウンド ティモフェイ
ティモフェイ
*主動作 通打>マキナ s9捨て
*割り込み 精確 h2捨て
ティモフェイ
1D6 精確
DiceBot : (1D6) > 1
ティモフェイ
2D6+3+1>=7 通打 猟奇で判定
DiceBot : (2D6+3+1>=7) > 6[3,3]+3+1 > 10 > 成功
メイド6
成功です。ダメージ算出を。
ティモフェイ
1D6+2+2+2 上質な凶器 衰弱 看破

DiceBot : (1D6+2+2+2) > 4[4]+2+2+2 > 10
ティモフェイ
*逆転します。
ティモフェイ
*ティモフェイの心の疵、
ティモフェイ
*『愛した女』を抉ります。
[ ティモフェイ ] 愛した女 : 0 → -1
ティモフェイ
ダメージダイスの4を6に変更。
ティモフェイ
12点ダメージです。
[ マキナ ] HP : 11 → 0
メイド6
*マキナ様のHP0! 判決表を!
マキナ
2d6+3
DiceBot : (2D6+3) > 7[5,2]+3 > 10
マキナ
*免罪符を使用します
[ マキナ ] 前科 : 0 → 1
[ マキナ ] 免罪符 : 3 → 2
メイド6
*12 無罪!HPが0となる際に受けた不利な効果を無効とし、HPは0になる前の値に戻す。前科は増える。
ティモフェイ
トイトロールとチカの攻防。
[ マキナ ] HP : 0 → 11
ティモフェイ
そのあいま。
ティモフェイ
中庭に響く高い悲鳴も笑い声も我関せず、
ティモフェイ
ティモフェイはマキナの背後に回っていた。
ティモフェイ
ステンドグラスの放つ光がマキナの目をくらまし、
ティモフェイ
その矢先に彼女の足を払い、
ティモフェイ
中庭の地面へとマキナを引き倒す。
マキナ
*愛毒 d10
マキナ
「っ!」
マキナ
足を払われ、背中を地に打ちつける。
ティモフェイ
雪を背に。
ティモフェイ
倒れ伏したマキナに乗りかかり、虹の剣を構え、
マキナ
「……っ、」
ティモフェイ
その心臓へと目掛けて突き下ろす、
ティモフェイ
腕が。
ティモフェイ
腕が、
ティモフェイ
この腕が、
ティモフェイ
この腕が殺したものが、
ティモフェイ
違う、
マキナ
ー殺される。
ティモフェイ
この女は、
ティモフェイ
この女は決して、
ティモフェイ
似ても似つかない!
ティモフェイ
彼女には、
マキナ
恐怖に見開かれた目が、自分の上に乗る男を見る。
トイ
まさしく救世騎士が 儀式に生贄を捧げるような
ティモフェイ
マルタにはどこにも通ずるところがなくて、
ティモフェイ
清らかな魂の持ち主でもなく、
ティモフェイ
けれど、
ティモフェイ
けれど、
ティモフェイ
自分は、
ティモフェイ
どうだった?
トイ
忘却の国では繰り返された悲劇の祈り。
ティモフェイ
救いたかったのは、誰だ?
ティモフェイ
彼女ばかりではないだろう。
ティモフェイ
彼女を
ティモフェイ
彼女を殺すことで
ティモフェイ
殺したことで!
ティモフェイ
そうして救えた人々の営みを、
ティモフェイ
あたりまえの、
ティモフェイ
当たり前の『男の子』と『女の子』の!
ティモフェイ
ともに過ごす日々をも、守れたことを、
ティモフェイ
確かに
ティモフェイ
確かに、そのことに
ティモフェイ
満足していたはずなのに
ティモフェイ
はずなのに、
ティモフェイ
違う
ティモフェイ
そんなものは
ティモフェイ
そんなものはどうでもいいと
ティモフェイ
ただ
ティモフェイ
この勝利は
ティモフェイ
トイトロール。
ティモフェイ
自分が、
ティモフェイ
救うと誓った者のために、
ティモフェイ
ある、
ティモフェイ
ものと。
ティモフェイ
逡巡は一瞬。
ティモフェイ
の、はずだった。
ティモフェイ
けれど、同格の救世主を、相手にしては。
メイド6
「判決は無罪! 攻撃を無効とし、前科を重ねて裁判続行でございます」
マキナ
*改めて愛毒です d10
マキナ
2d6+3>=7 愛
DiceBot : (2D6+3>=7) > 5[3,2]+3 > 8 > 成功
メイド6
成功でございます。ティモフェイ様に3ラウンド継続の猛毒。
マキナ
その逡巡をついて、短剣が閃く。
ティモフェイ
「っ」
マキナ
騎士の正装に、刃が突き刺さる。
ティモフェイ
我に返る頃にはもう遅い。
ティモフェイ
胸を貫かれて血を散らし、
ティモフェイ
身を引いて
ティモフェイ
彼女を
ティモフェイ
ああ、ほんとうに、
ティモフェイ
似ても似つかないというのに!
トイ
血をたらすティモフェイを見て笑う。
マキナ
女は敵意に満ちた目であなたを見ている。
トイ
嗤ったように、
怒ったように少し口の端を引きつらせる。
ティモフェイ
騎士の瞳は、
ティモフェイ
褪せた青色をしていた。
トイ
ティモフェイを手放せなかったのは、
トイ
あれのためだ。
トイ
2回戦で言ったように。あるいは、それを終えて言いかけたように。
トイ
ほんとは
『止めて欲しかった』んだ。
トイ
自分を切り捨てて吹雪を止め、
世界を救ってほしい。
トイ
だから心通わなくてもよかった。それを果たしてくれるなら。
トイ
自分にとっていやなヤツでも、他人にとっていやなヤツでも。
トイ
ああしてくれるなら
トイ
不都合がない。
トイ
「だがうまく出来ないねえ」
トイ
「やっぱり、うまく出来ねえんだな…」
小鴨 チカ
「あん……?」
ティモフェイ
ティモフェイの胸元の血も凍りつき、
ティモフェイ
そこにいびつな血花を咲かせていた。
マキナ
刃先には毒が塗られている。
マキナ
即座に命を奪えるようなものではない。
マキナ
しかし捨て置けばいずれ致命的にもなるもの。
ティモフェイ
けれど確かに身を蝕み、
ティモフェイ
じわじわと救世主の気力を奪っていく。
マキナ
この吹きすさぶ雪の中であれば、なおさら。
ティモフェイ
その中で。
ティモフェイ
刃だけは華々しく、男はその場に立っている。
メイド6
ティモフェイ様の手番ですので、すぐさま猛毒のHP減少が入ります。
[ ティモフェイ ] HP : 18 → 15
メイド6
*裁判 第1ラウンド マキナ
メイド6
このタイミングで各猛毒のラウンドが減少いたします。
[ ティモフェイ ] 猛毒 マキナ : 3 → 2
[ トイ ] 猛毒 : 3 → 2
マキナ
*回復 cK
小鴨 チカ
*援護
マキナ
*すみません 先に水パイプをいいですか……
メイド6
OK! どうぞ!
マキナ
*封印を解除します
[ マキナ ] 封印 : 3 → 0
[ マキナ ] 水パイプ : 2 → 1
マキナ
あらためて~回復振ります……
マキナ
2d6+3+2>=7 愛+援護
DiceBot : (2D6+3+2>=7) > 7[1,6]+3+2 > 12 > 成功
マキナ
1d6+3+2 愛+援護
DiceBot : (1D6+3+2) > 2[2]+3+2 > 7
マキナ
*マキナを7回復 衰弱を解除
[ マキナ ] 衰弱 : 3 → 0
[ マキナ ] HP : 11 → 18
マキナ
先程立っていた位置から下がり、距離を取り直す。
マキナ
マキナの力は、癒やしの力。
マキナ
館を覆う雪のように派手なものではない。
マキナ
騎士の振るう剣のように力あるものでもない。
マキナ
ただ自分を守るためだけにあったはずの力。
マキナ
マキナ一人だけのための力──だった。
マキナ
今は違う。
マキナ
自分が立って、攻撃を引き受けている間は、それで
マキナ
チカを守れる。
マキナ
誰に盾にされるでもなく、命じられるでもなく、
マキナ
はじめて、自分の意志で守りたいと思った人を、守る力。
マキナ
まだ立っている。立っていなければならない。
メイド8
*第1ラウンド終了 捨てるものはございますか?
小鴨 チカ
*hAを捨てます
ティモフェイ
*c2捨てます
トイ
*sj 廃棄
マキナ
*h7 s7破棄
メイド8
*裁判 第2ラウンド!
メイド8
*手札をお引きください!
トイ
*d4.d6.s6.d8.sk
小鴨 チカ
*s2 c3 cJ dK dA
ティモフェイ
*h3,d3,h8(s3,s10)
マキナ
*s4 c4 d5 h6 dJ
メイド8
*裁判 第2ラウンド トイ
トイ
*水パイプ 猛毒解除
トイ
*必衰を使用[d6]対象:マキナ
[ トイ ] 猛毒 : 2 → 0
マキナ
マキナ
はやいね
メイド6
防壁はダメージ算出後でございますね!
トイ
2d6+3+1=>7 判定:才覚 万能
DiceBot : (2D6+3+1>=7) > 5[2,3]+3+1 > 9 > 成功
トイ
1D6+1 スート凶器
DiceBot : (1D6+1) > 1[1]+1 > 2
メイド6
ダメージは2点。割り込みますか?
マキナ
*s4 防壁
メイド6
割り込みはございますか?
トイ
なしです!
マキナ
2d6+3>=7 愛
DiceBot : (2D6+3>=7) > 10[5,5]+3 > 13 > 成功
[ マキナ ] HP : 18 → 17
[ マキナ ] 衰弱 : 0 → 3
トイ
天に祈るように。
トイ
手をかかげ災害を呼ぶ。
トイ
いつか言ったが、
トイトロールの涙は災害の呼び水。
トイ
故郷を滅ぼした、
冬の災厄を堕落の国によびよせる。
トイ
ずっと呼び寄せてきた。
トイ
だからいつも冷気を纏っている。
トイ
だからいつも雪が降る。
トイ
凍てついた地面に氷の花が
トイ
きらきらと蔓延る。
トイ
春など待たぬ、春になれば死ぬ。
トイ
青い花。
トイ
「マキナ」
トイ
「おいでよ」
トイ
「遊んでよ」
マキナ
「……」
マキナ
呼びかけに、首を振る。
トイ
「どうして?」
トイ
素足が花の上をまどう。
マキナ
「……あなたと私は敵同士ですよ」
トイ
「……そっか」
トイ
悲しみに惹かれ、いっそう雪が降る。
[ トイ ] 水パイプ : 1 → 0
メイド6
*裁判 第2ラウンド チカ
小鴨 チカ
「つっ……」
小鴨 チカ
痛い。
小鴨 チカ
手を見ると、血が滲んでる。
小鴨 チカ
切ったか。
小鴨 チカ
仕方ない。
小鴨 チカ
こんなもの、持ってちゃな。
小鴨 チカ
有刺鉄線を鞭のように伸ばし、トイさんに向けて振る。
小鴨 チカ
*封殺[cJ]→トイ
マキナ
*援護します
トイ
割り込みません!
小鴨 チカ
2d6+4+1+1=>7 判定:才覚+多彩な凶器+万能
DiceBot : (2D6+4+1+1>=7) > 12[6,6]+4+1+1 > 18 > 成功
メイド8
*スペシャル!
小鴨 チカ
1d
DiceBot : (1D6) > 1
[ 小鴨 チカ ] HP : 16 → 17
小鴨 チカ
*3+2 多彩な凶器+援護
小鴨 チカ
*封印を2ラウンドに延長
メイド8
*トイ様のHP0! 判決表を!
トイ
2d6+3
DiceBot : (2D6+3) > 7[1,6]+3 > 10
メイド8
*9~11 HP1の状態で立ち上がる。
[ トイ ] HP : 2 → 1
トイ
目を見開く。
トイ
鞭のような有刺鉄線が迫る。
トイ
吹雪の先で、悲鳴。
小鴨 チカ
「これが、この力が、わざとじゃないってんなら」
トイ
チカの視界を一度覆う。
小鴨 チカ
「余計タチが悪い!」
小鴨 チカ
白へ向けて叫ぶ!
小鴨 チカ
「人に嫌な幻を見せる」
トイ
「あ、は、はは」
小鴨 チカ
「会う人みんなを凍えさせる!」
トイ
「それめっちゃ解る」
トイ
「完全に同意!!」
ティモフェイ
雪をまとって、目を伏せる。
トイ
「でも、だめなんだ…」
トイ

<でも>

<だめなんだ>
小鴨 チカ
「っ」
トイ

<…………>

<……ごめんね>

<……そう、なんだ>

<わかってて、……でも>
トイ
微笑む。きずまみれの顔で。
小鴨 チカ
一瞬、言葉が止まりかける。
マキナ
チカの前に立ちふさがる幻に、剣を振るう。
トイ
微笑む。きずまみれの顔で。
マキナ
「……チカくん!」
トイ
マキナの剣が幻影を切る!
小鴨 チカ
はっ。
小鴨 チカ
「……っ、生きるだけで……」
[ トイ ] 前科 : 0 → 1
小鴨 チカ
「生きるだけで、周りを不幸にするんだよ!」
トイ
「よくわかってんじゃん!」
トイ
「オレのこと!!」
メイド6
「判決は――下らず! 前科を重ねて裁判続行でございます」
*裁判 第2ラウンド ティモフェイ
ティモフェイ
「いいや」
ティモフェイ
「それでも」
ティモフェイ
「きみに罪はないよ」
ティモフェイ
*主動作 通打>マキナ h8捨て
*割り込み 精確 h3捨て
ティモフェイ
1D6 精確
DiceBot : (1D6) > 1
ティモフェイ
2D6+3+1>=7 猟奇で判定

DiceBot : (2D6+3+1>=7) > 10[5,5]+3+1 > 14 > 成功
ティモフェイ
1D6+2+2+2 上質な凶器 衰弱 看破
DiceBot : (1D6+2+2+2) > 2[2]+2+2+2 > 8
ティモフェイ
彼らの言葉を断ち切るように、虹の切っ先。
トイ
「うう」
トイ
「うるっせーーー…」
[ マキナ ] HP : 17 → 9
ティモフェイ
雪を掻き分けながら、それは今度こそマキナの胸元に伸びる。
トイ
「お前オレのせいじゃないっていうけど」
トイ
「オレのせいだろ?」
ティモフェイ
トイトロールを包む雪を背に。
ティモフェイ
「いいや」
ティモフェイ
「俺のせいだ」
マキナ
雪を裂いて現れた剣が、マキナを捉える。
トイ
唇を震わす。
ティモフェイ
マキナから溢れた血は雪に凍りつき、
マキナ
「っ、あぁ!」
ティモフェイ
あかい結晶となって落ちていく。
ティモフェイ
今度は捉えた。
ティモフェイ
感触が手に響き、
ティモフェイ
心の疵が疼く。
マキナ
刃が女を貫く。
ティモフェイ
自分の『愛した女』ではなく。
ティモフェイ
彼の『愛する女』を貫いて、
ティモフェイ
虹の切っ先はなおも輝く。
マキナ
しかし女の心臓を捉えることはなく。
マキナ
「っ、……」
ティモフェイ
「ああ」
マキナ
傷口を手で抑え、ティモフェイを睨む。
ティモフェイ
「確かに」
ティモフェイ
「災厄と呼ぶに相応しいだろうよ」
ティモフェイ
「俺たちは」
マキナ
「……そう、よ」
ティモフェイ
「とうに死ぬべきだった男と、生きるだけで人を不幸にする男」
ティモフェイ
「それが」
ティモフェイ
「きみたちのような、当たり前の」
ティモフェイ
「当たり前の少年少女を殺してでも、願いを叶えようとしている」
ティモフェイ
「だから」
ティモフェイ
「はじめから、相容れるはずなどなかった」
ティモフェイ
ルールを教えられながらさした将棋も。
マキナ
「……えぇ」
ティモフェイ
三人で盛り上がったビリヤード。
マキナ
「あなたたちみたいな人に、負けてなんかやらない……!」
ティモフェイ
春誕節のパーティ。
ティモフェイ
プレゼント交換。
ティモフェイ
すべて、
ティモフェイ
すべてに、意味がなかった。
ティモフェイ
この男はそのように切り捨てられる。
マキナ
裁判が始まれば、結局は命を奪い合う敵同士。
ティモフェイ
しかし、彼らは?
ティモフェイ
トイトロール。
ティモフェイ
チカ。
ティモフェイ
マキナ。
ティモフェイ
彼らは、それを。
マキナ
少なくともマキナにとっては、
マキナ
そうだからと言って、簡単には……
マキナ
……それでも。
マキナ
それでも、戦うしかない。
メイド6
*裁判 第2ラウンド マキナ
マキナ
*回復 dJ
小鴨 チカ
*援護~
トイ
*精確[d4]対象:妨害
妨害[d8] 対象:マキナの回復
メイド6
判定をどうぞ!
トイ
1D6
DiceBot : (1D6) > 4
トイ
2d6+3+1+4=>7 判定:才覚 万能 精確
DiceBot : (2D6+3+1+4>=7) > 7[2,5]+3+1+4 > 15 > 成功
マキナ
2d6+3+2>=7 愛+援護
DiceBot : (2D6+3+2>=7) > 5[4,1]+3+2 > 10 > 成功
マキナ
まちがえました
マキナ
失敗してます
メイド8
目標値15ですので、失敗ですね。
マキナ
*逆転します
マキナ
*『小鴨チカ』を-に 1を6に
[ マキナ ] 小鴨チカ チカ : 1 → 0
マキナ
1d+3+2 愛+援護
DiceBot : (1D6+3+2) > 2[2]+3+2 > 7
マキナ
*マキナを7回復 衰弱解除
[ マキナ ] HP : 9 → 16
[ マキナ ] 衰弱 : 3 → 0
トイ
思い出。
トイ
束の間の春誕節。
トイ
トイトロールには意味があった。
トイ
素直に楽しみ、無邪気にそうしよう、などと
トイ
だからたちが悪い。
マキナ
──マキナだって、楽しかった。
マキナ
あんな結末になって、それでも。
トイ
思い出になってしまえば、いい物語。
トイ
思い出になってしまえば、いいシーン。
トイ
後で死んでも、絵本をめくるように
マキナ
目の前で災厄を振りまく彼のことだって、やっぱり嫌いでもない。
トイ
絵本の中に綺麗なシーンをあつめるように
トイ
綺麗なものをあいしているにはかわらない。
トイ
だからたちが悪い。
マキナ
だけど、チカとマキナの未来の前に、あの二人は立ちふさがっている。
トイ
「――オレの――」
トイ
「お気入りの『記憶』」
マキナ
チカにはマキナだけ。マキナにもチカだけ。
トイ
立ち上がる凍てついた焔。
トイ
<■ ■ ■ ■  ! ! !>
マキナ
だから、負けられない。倒れられない。
トイ
声無き叫びが響く。凍てついた炎が燃え盛る。
吹き上がる。
トイ
全てを、自身さえも焼いて、中庭全域まで届くような凍てついた焔が轟々と荒れる。
トイ
<■■■■!■■■■!■■■■……!>
トイ
醜く歪んだ、黒い異形の亡者。

アイアンメイデンのような鉄のドレス。
マキナ
「……死んだ人が」
トイ
亡者のミラリア。
マキナ
「いつまでも邪魔をしないで!!」
トイ
荊にさかる、凍てついた焔
マキナ
炎を振りまく亡者に叫ぶ。
小鴨 チカ
あれが、お気に入りだって?
小鴨 チカ
目の前で、あれを見て。
小鴨 チカ
なんでそんな感想が抱ける。
トイ
「女王陛下はおきれいだ!」
マキナ
傷口から手をどける。その下にあった傷は癒えている。
トイ
「目の前にいたら怖いけど」
トイ
「記憶になれば怖くない」
小鴨 チカ
「死んでんだぞ!人が!」
マキナ
「……生きてないと、何の意味もない」
トイ
「いまはオレと一緒にいる」
トイ
「いてくれる」
トイ
「オレのともだち、遊び相手」
マキナ
「幻だよ」
トイ
「かな~?」
小鴨 チカ
「生きてねえ」
小鴨 チカ
「救世主は、狂ってる!」
小鴨 チカ
「どいつもこいつも、イカレ散らしやがって!」
ティモフェイ
「ああ」
ティモフェイ
「そして、きみも」
ティモフェイ
「その救世主として認められた者だ」
ティモフェイ
どれほど平凡で、
ティモフェイ
ありきたりで、
ティモフェイ
普通の営みを望む、いたいけな少年に映ったとて。
マキナ
「……チカくんは、違う」
マキナ
「勝って、また普通に戻れるの!」
ティモフェイ
この裁判の場に出される資格を得た以上は、
ティモフェイ
どうしても。
マキナ
「あなた達とは違う!!」
ティモフェイ
「…………」
マキナ
叫ぶ。
ティモフェイ
「奇跡に」
ティモフェイ
「それを願うか?」
マキナ
「そんな必要ない!!」
マキナ
チカは違う。
マキナ
まだ戻れる。
ティモフェイ
「恨みはしないよ」
マキナ
あと一回、この戦いだけを終えて。
ティモフェイ
「きみたちが、この世界を救わなくとも」
ティモフェイ
「勝ち抜いた先で掴み取ったもの」
ティモフェイ
「それだけが真実だろう」
小鴨 チカ
「…………」
マキナ
普通に戻って、普通にずっと一緒にいられるんだ!
小鴨 チカ
ぼくは違う。まだ戻れる。
小鴨 チカ
……本当に?
小鴨 チカ
マキナさん。ぼくは、まだ怖くないかな。
小鴨 チカ
……。
小鴨 チカ
頭を振る。
小鴨 チカ
今は、戦いだ。
メイド8
*ティモフェイ様の猛毒処理が抜けてましたので、今処理致します。
[ ティモフェイ ] HP : 15 → 12
メイド8
*第2ラウンド終了 捨てるものはございますか?
ティモフェイ
*d3捨てます
トイ
*sk 廃棄 
小鴨 チカ
*s2 c3 dK dAを捨て
マキナ
*すべて破棄します
メイド6
*裁判 第3ラウンド
メイド6
*手札をお引きください!
トイ
*h10.c10.c9.sq(s6)
小鴨 チカ
*s5 c6 c7 h9 cQ
ティモフェイ
*d7,dQ,sA (s3,s10)
マキナ
*h3 h5 c8 d9 dA
メイド6
*裁判 第3ラウンド トイ
トイ
*必衰を使用[s6] 対象:マキナ
小鴨 チカ
*どうぞ~
トイ
2d6+3+1=>7 判定:才覚 万能
DiceBot : (2D6+3+1>=7) > 8[4,4]+3+1 > 12 > 成功
トイ
1D6+1 スート凶器
DiceBot : (1D6+1) > 2[2]+1 > 3
マキナ
*防壁 h3
メイド6
割り込みはございますか?
トイ
ありません!
マキナ
2d6+3>=7 愛
DiceBot : (2D6+3>=7) > 7[6,1]+3 > 10 > 成功
マキナ
*2点減らして1点受けます
[ マキナ ] HP : 16 → 15
[ マキナ ] 衰弱 : 0 → 3
マキナ
*愛毒 c8
トイ
*精確を使用[sq] 対象:妨害
妨害を使用[c9] 対象:マキナの愛毒
小鴨 チカ
*こい!
トイ
1D6
DiceBot : (1D6) > 3
トイ
2d6+3+1+3=>7 判定:才覚 万能 精確
DiceBot : (2D6+3+1+3>=7) > 6[5,1]+3+1+3 > 13 > 成功
マキナ
2d6+3>=7
DiceBot : (2D6+3>=7) > 9[4,5]+3 > 12 > 成功
マキナ
またまちがえた~
マキナ
失敗です すみません
メイド6
失敗でございますね
マキナ
逆転もありません!
トイ
中庭にあふれる。
トイ
春誕節のときとかわらない、はしゃいであちこちを見るような。
トイ
カッ
トイ

「嗚呼、どうぞ皆々様御覧あれ!」

トイ

マントを翻せばそこに水槽がひとつ。

ヒールが、こつり、と音を鳴らした。

トイ
水中脱出ショーが再演される。
トイ
この世の終わりのような吹雪の中で。
マキナ
「……」
トイ
見世物にパチパチと手をたたく。
マキナ
幻だ、と
マキナ
分かっていても、それに目を奪われる。

脳裏によぎるは、1号室

マキナがその目で見たもの。

末路。

救えたのに、動かなかった。
マキナ
──咲さんは、死んだ。
トイ
並んで料理を作った事。
トイ
ほんとだかなんだか、マキナを贔屓するよという声
トイ
その記憶が、中庭にあふれる。
マキナ
『……お前に関わる者は幸せにはなれないな』
マキナ
ふとよぎるは、黒兎の言葉。
マキナ
そう言った彼も、マキナの目の前で死んだ。
マキナ
──違う!
トイ
<マキナはサービスするね!>
マキナ
だって、咲さんは、あの子は、そうなることを望んで
トイ
<だってマキナは友達だもんな~!>
マキナ
望んでいた!
マキナ
止められたかったはずなんてない!
トイ
「だってマキナは友達だもんな~」

トイの口をついて出る。
トイ
幻影と重ねて。
マキナ
──だけどそれだけ?
マキナ
彼女が死を望んでいたから?
マキナ
違う。
マキナ
見過ごせば、戦わず楽に勝ち進めるから。
マキナ
「とも、だち……」
マキナ
『ありすはマキナちゃんの事を信じてるから』
マキナ
『だってマキナは友達だもんな~』
マキナ
「わ、たしは……」
マキナ
幻だと。
マキナ
そう分かっていても、それらが
マキナ
それらが呼び起こす記憶が、
マキナ
マキナの心を衰弱させる。
メイド6
*裁判 第3ラウンド チカ
[ トイ ] 封印 : 2 → 1
小鴨 チカ
結局、ぼくは理解できなかった。
小鴨 チカ
トイさんのことも、ティモフェイさんのことも。
小鴨 チカ
けど、もうお茶会は終わった。
小鴨 チカ
今この状況に至っては、その方が都合がいい。
小鴨 チカ
目の前の敵の不可解さに惑わされてる方が、心が離れてる方が。
小鴨 チカ
遠慮なく、向かっていける。
小鴨 チカ
*暗器[c6] → トイ!
メイド6
妨害はございますか?
マキナ
援護ありません
トイ
割り込みません!
小鴨 チカ
2d6+4+1+1=>7 判定:才覚+多彩な凶器+万能
DiceBot : (2D6+4+1+1>=7) > 10[4,6]+4+1+1 > 16 > 成功
小鴨 チカ
*3ダメージ!
小鴨 チカ
Choice[《封印》,《猛毒》,《指切り》,《衰弱》]
DiceBot : (CHOICE[《封印》,《猛毒》,《指切り》,《衰弱》]) > 《衰弱》
メイド8
*トイ様のHP0! 判決表を!
トイ
2d6+3-1=>7 脅威度 前科
DiceBot : (2D6+3-1>=7) > 7[1,6]+3-1 > 9 > 成功
メイド8
*9~11 HP1の状態で立ち上がる。
トイ
「チカ」
トイ
「お茶会でお前ら言ったよな」
トイ
雪の中からささやき声。
トイ
<覚えておかれた所で
 マキナ達にはなにも関係ない>
トイ
<マキナたちの願いが
ここで終われば、
そのあと何をしてもらったところで
救われません>
小鴨 チカ
……。
トイ
<ぼくらの屍を乗り越えて、
 尊い犠牲風にまとめられて、
 他のやつらに幸せになられても
 ぜんぜん嬉しくない>
小鴨 チカ
そうだよ。
小鴨 チカ
本心だ。
小鴨 チカ
今も変わらない。
トイ
「オレそれ、ぜんぜんわかんなくて」
トイ
「まったく逆なんだよね」
トイ
「屍を礎に、他の人間は幸せになればいい。」
トイ
「そして、覚えていてほしい。」
トイ
「知って欲しい」
トイ
「ってかんじ?」
小鴨 チカ
「……そうかよ」
トイ
「そうだよ」
小鴨 チカ
「じゃあ、覚えてて……やるよっ!!」
小鴨 チカ
杭を振る!
トイ
血が飛ぶ。
小鴨 チカ
くそっ。
小鴨 チカ
この手応えが嫌だ。
トイ
それでも致命傷じゃないらしい。
トイ
血の欠片が雪に交じる。
メイド8
「判決は――下らず! 前科を重ねて裁判続行でございます」
小鴨 チカ
暴力を振るってる。
小鴨 チカ
戦いにだんだん慣れてる。
小鴨 チカ
……救世主の力じゃない。ぼく自身が、だんだん抵抗がなくなってるんだ。
トイ
「お前オレのこと覚えとく時」
トイ
「『化け物』っておぼえとくの?」
小鴨 チカ
「…………………………」
小鴨 チカ
化け物。
小鴨 チカ
目の前の相手は、化け物だ。そう思え。思い込め。
小鴨 チカ
終わったら、泣いていい。辛い事は、未来の自分に押し付けろ。
小鴨 チカ
勝て。
小鴨 チカ
答える必要はない。
小鴨 チカ
どうでもいい問いかけだ!
小鴨 チカ
何も言わずに一歩引く。
トイ
問いかけは風の中に消えていく。
トイ
だれかにきいてほしかったのに。
トイ
だれも悲鳴に耳を貸さない。
小鴨 チカ
「うぐ……」
小鴨 チカ
息を吸うたび、喉に冷たい風が張り付く。
小鴨 チカ
苦しい。喉が渇く。体の中が冷えていく。
小鴨 チカ
体も、心も、もたない。
小鴨 チカ
早くしないと!
メイド6
*裁判 第3ラウンド ティモフェイ
ティモフェイ
*補助動作 救済>トイ sA捨て
ティモフェイ
2d6
DiceBot : (2D6) > 11[6,5] > 11
トイ
よく見る光景、うずくまる男。
ティモフェイ
吹き荒れる雪の中。
ティモフェイ
虹の切っ先が持ち上げられ、光を放つ。
ティモフェイ
うずくまる男の周囲を、
ティモフェイ
きらきら、
ティモフェイ
きらきら、
ティモフェイ
光が照らして。
ティモフェイ
雪を払いはしない。
ティモフェイ
けれど、その光が身体をあたためる。
ティモフェイ
世界をあたためる救済の光の、
ティモフェイ
ほんのひとかけら。
ティモフェイ
それを、今、
ティモフェイ
救われるべき生贄、
ティモフェイ
トイトロールへと。
ティモフェイ
「トイトロール」
ティモフェイ
雪の中を歩く。
ティモフェイ
うずくまる男の隣へと歩み寄り、見下ろす。
トイ
「あ…」
トイ
光刺す。
ティモフェイ
手を。
トイ
何年も感じた事のない、春。
ティモフェイ
剣を握っていない手を、
ティモフェイ
トイトロールへと差し伸ばした。
ティモフェイ
「聞いているよ」
ティモフェイ
「きみの声を、この半年」
ティモフェイ
「俺はずっと聞かされてきた」
ティモフェイ
「違うか?」
トイ
「………ぅっ」
トイ
「うぅっ……」
トイ
「ティモフェイ!」
ティモフェイ
「ああ」
トイ
その手を取り、立ち上がり。
トイ
抱きしめる。
ティモフェイ
抱き留めて、
ティモフェイ
目を伏せた。
トイ
「うぁあ――――ん…」
ティモフェイ
背中に手のひらを回せば、トイトロールを蝕むすべて
ティモフェイ
すべてを、
ティモフェイ
雪が覆い尽くす。
ティモフェイ
わすれさせてしまう。
ティモフェイ
この戦いの邪魔になるものを、忘却の雪が、すべて。
メイド6
*救済はAを果てさせる技。スペードのAは墓場へ。
トイ
涙がきらきらと。
トイ
ティモフェイの腕の中であれば、氷にならず、雫で落ちる。
トイ
「オレが騎士だったらよかったなんてウソだよ」
トイ
「救って欲しかった、」
トイ
「救って欲しかったんだよ」
ティモフェイ
血を咲かせた胸元でその涙を受け止めて、その言葉を聞く。
ティモフェイ
「……ああ」
ティモフェイ
「すまない」
ティモフェイ
「ずっと、待たせてきた」
ティモフェイ
背を撫ぜる。
トイ
「うぅう…」
トイ
子供のように泣きじゃくる。
ティモフェイ
手のひらが上にあがって、
ティモフェイ
今は自分のものよりもよほど乱れた金髪を指先で梳く。
トイ
びくりと一度体をはねさせ、
トイ
けれど次第に受け入れる。
ティモフェイ
凍りついた髪を人肌であたため。
ティモフェイ
後頭部に手を回して、
ティモフェイ
引き寄せ、
ティモフェイ
さらに強く抱きしめた。
ティモフェイ
胸元に咲いた血の花がトイの胸に重なり、
ティモフェイ
ぼろぼろになりつつある生贄の装束を赤く染めるのも厭わず、
ティモフェイ
トイトロールでもなく、
ティモフェイ
幻でもない、
ティモフェイ
今ここに立つ一人の人間の存在を、彼の中へと知らしめた。
ティモフェイ
「…………」
ティモフェイ
「まだ」
ティモフェイ
「やれるか?」
トイ
こくりと肯く。
ティモフェイ
「よし」
ティモフェイ
髪を梳いた手で頭を撫でて、微笑む。
ティモフェイ
「続けるぞ」
トイ
「うん…!」
ティモフェイ
頷き、
ティモフェイ
トイトロールから身を離し、
ティモフェイ
そして、少年少女へと向き直る。
ティモフェイ
*補助動作 鋭気 d7捨て
*主動作 通打>マキナ s10捨て
*割り込み>通打 精確 s3捨て
[ トイ ] HP : 1 → 8
[ トイ ] HP : 8 → 12
小鴨 チカ
*通します
[ トイ ] 衰弱 : 2 → 0
[ トイ ] 封印 : 1 → 0
ティモフェイ
1D6 精確
DiceBot : (1D6) > 6
ティモフェイ
2D6+3+6>=7 猟奇で判定
DiceBot : (2D6+3+6>=7) > 9[6,3]+3+6 > 18 > 成功
メイド6
ダメージ算出を。
ティモフェイ
1D6+2+2+2+3 上質な凶器 衰弱 看破 鋭気
DiceBot : (1D6+2+2+2+3) > 5[5]+2+2+2+3 > 14
[ マキナ ] HP : 15 → 1
ティモフェイ
*逆転します。
ティモフェイ
*ティモフェイの心の疵『救世主願望』を抉ります。
[ ティモフェイ ] 救世主願望 : 0 → -1
ティモフェイ
*ダメージダイスは5から6に。
[ マキナ ] HP : 1 → 0
[ マキナ ] HP : 0 → -1
[ マキナ ] HP : -1 → 0
メイド6
*マキナ様のHP0! 判決表を!
マキナ
2d6+3-1
DiceBot : (2D6+3-1) > 3[2,1]+3-1 > 5
マキナ
免罪符!
メイド6
*ティモフェイ様は発狂いたします。
マキナ
出目を7に
[ マキナ ] 免罪符 : 2 → 1
メイド6
*6~8 ランダムな能力値で判定し、成功すればHP1の状態で立ち上がる。失敗すれば〈昏倒〉する。
マキナ
Choice[猟奇,才覚,愛]
DiceBot : (CHOICE[猟奇,才覚,愛]) > 猟奇
マキナ
2d6+2>=7
DiceBot : (2D6+2>=7) > 2[1,1]+2 > 4 > 失敗
マキナ
*逆転しま~~~す!!!
メイド6
*ファンブル!
[ マキナ ] 小鴨チカ チカ : 0 → -1
マキナ
1は6!
[ マキナ ] 前科 : 1 → 2
[ マキナ ] HP : 0 → 1
ティモフェイ
吹きすさぶ雪の中。
メイド6
*マキナ様は発狂いたします。
ティモフェイ
強く強く、
ティモフェイ
強く強く地を蹴り、
ティモフェイ
ただひとつ。
ティモフェイ
救済をなすための機功として、剣を振るう。
ティモフェイ
そこに立つ少女に、もはや像は被らない。
ティモフェイ
伸ばした虹の切っ先は、
ティモフェイ
今度こそあやまたずその胸を貫いた。
小鴨 チカ
「マキナさんッ!!!」
マキナ
「────っ!」
トイ
進軍をけん引する騎士のように。
マキナ
虹色のつるぎが、胸を貫く。
トイ
ティモフェイの後に記憶が続く。
ティモフェイ
返り血が散り、
マキナ
それが凍って、血の花が咲く。
ティモフェイ
今度は雪が留められる量ではなかった。
ティモフェイ
氷の花を舞わせながらも、
ティモフェイ
救世を誓った騎士の顔を、
トイ
風が二人を吹き抜ける。
ティモフェイ
少女の血がべっとりと濡らす。
トイ
はらはら、さらさらとティモフェイの
トイ
血濡れの髪を揺らして。
ティモフェイ
ただ一人。
ティモフェイ
ただ一人だけで、いいのだ。
ティモフェイ
自分には最早それしかない。
ティモフェイ
ああ、
ティモフェイ
彼が求めるものは、
ティモフェイ
本当はもっと単純だったかもしれない。
ティモフェイ
こたえてほしい。
ティモフェイ
ききとどけられたい。
ティモフェイ
手を、
ティモフェイ
その手を握る、ぬくもりがほしい。
マキナ
身体を濡らす赤色を、呆然と見つめる。
ティモフェイ
それだけで十分だったのかもしれない。
ティモフェイ
だが、今となっては最早手遅れ。
ティモフェイ
自分は。
ティモフェイ
目の前の少女を殺すことでしか、
ティモフェイ
もはや、彼を救うことは叶わない。
マキナ
死を直感した。
ティモフェイ
それで。
マキナ
立っていられないくらいの痛み。
ティモフェイ
それで構わないと思っている!
ティモフェイ
その痛みをもたらす剣が、
ティモフェイ
マキナの胸元できらきらと虹の光を放つ。
マキナ
だくだくと血を流して、地面にくずおれて
マキナ
それでもまだ、致命ではない。
ティモフェイ
くずおれた少女を、
小鴨 チカ
「──ッ!」
ティモフェイ
血まみれの騎士が見下ろしている。
小鴨 チカ
行くな!
小鴨 チカ
飛び出すな!
小鴨 チカ
マキナさんを信じろ。
マキナ
まだ生きてる。
マキナ
胸を刺されて、こんなに、こんなに血が出て、
ティモフェイ
まだ息のある少女に、
マキナ
それでもまだ生きてる。
ティモフェイ
最早男は容赦なく。
マキナ
これは、これでも、
小鴨 チカ
くそ。くそくそくそ!
マキナ
こんなのは、人間と言えるの?
ティモフェイ
息の根を止めんと、虹の剣を振り上げた。
マキナ
チカは、まだ普通に戻れる。
小鴨 チカ
前を向く。トイさんのほうを向く。
マキナ
でも、マキナは?
シャルル
「小鴨 チカ!」
シャルル
それは、館から。
シャルル
後悔を残した、男の残骸の。
シャルル
「後悔だけは……残すな!」
小鴨 チカ
「…………!!!!」
シャルル
最後まで、前を向き続けた男の。
ティモフェイ
男もそれを聞いている。
ティモフェイ
もはや正気も後悔もなく、
ティモフェイ
帰る道を失った男は剣を握りしめ、
小鴨 チカ
「ちく、しょうっ!!!!!!」
小鴨 チカ
体が動く。
小鴨 チカ
勝って生き残ることがすべてのはずだった。
小鴨 チカ
たとえ何をやっても。
ティモフェイ
少女の首を跳ねんと、救世の儀礼剣を振り下ろす。
小鴨 チカ
這いずってでも、一人だけ生き残ってでも。
小鴨 チカ
勝ちさえすれば、願いで元に。
小鴨 チカ
頭では、わかってるのに!
小鴨 チカ
血が抜けていく。脈打つ腕が痛む。
小鴨 チカ
そのはずだ。想像してたよりも、血はいっぱい出てる。
小鴨 チカ
手にからまったトゲは、薄手の服を突き抜けて、腕まで。
小鴨 チカ
指先まで血が滴る。
小鴨 チカ
ティモフェイさんに向けて、それを振る。
小鴨 チカ
燃え上がる!
ティモフェイ
「!」
小鴨 チカ
マキナさん、ぼくはバカだ。
小鴨 チカ
でも、まだ。
小鴨 チカ
ちょっとだけ、人間だったみたいだ。
ティモフェイ
毒々しい色の炎が雪を払い、
小鴨 チカ
ぼくは、まだ怖くない?
小鴨 チカ
マキナさんのそばに居られるかな。
アレクシア
そうして、チカの動く間に。
アレクシア
『……大丈夫ですよ』
ティモフェイ
騎士のマントの裾を焦がす。
アレクシア
『マキナさんは、生きていけます』
アレクシア
『傷が残っても』
アレクシア
『大丈夫です』
ティモフェイ
炎が身体に至るよりも前に一歩引き、
トイ
シャルルの声を聞いて笑う。
マキナ
「……っ」
アレクシア
思い出して。
トイ
怒ったように、
嗤ったように口の端を引きつらせる。
ティモフェイ
マキナを、
マキナ
「う、うぅ」
アレクシア
『ご自身と、パートナーの彼と』
ティモフェイ
仕留めることのできないまま。
小鴨 チカ
「はーっ、はーっ、はあっ」
アレクシア
『それだけでいいんですよ』
トイ
しょせん孤独。
トイ
生きているだけで、災害。
マキナ
*愛毒 d9
トイ
でしょ。
メイド6
割り込みはございますか?
トイ
*妨害を使用[c10] 対象:マキナの愛毒
小鴨 チカ
*通します
メイド6
では妨害を。
トイ
2d6+3+1=>7 判定:才覚 万能
DiceBot : (2D6+3+1>=7) > 8[6,2]+3+1 > 12 > 成功
マキナ
2d6+3>=12
DiceBot : (2D6+3>=12) > 7[3,4]+3 > 10 > 失敗
マキナ
チカは、違うから。
マキナ
まだ戻れるから。
トイ
「オレの事」
マキナ
──それこそ、違う。
トイ
「オレの願いを知っても」
マキナ
わたしたち、とっくに普通じゃない。
トイ
「オレの事ゆるしてくれるのは、ティモフェイだけだね」
トイ
「だからやなんだよな」
マキナ
4人も死なせて、これから更に2人の死体をそこに追加しようとして、
マキナ
この場に立ってる私達は、とっくに普通じゃなかった!
トイ
「化け物だと思われてる」
マキナ
だけど、生きたい!
トイ
「そう扱ってもいい」
マキナ
普通じゃなくても、
マキナ
心に疵をたくさん抱えてても、
マキナ
チカと、一緒に生きたい!
トイ
「そういう風にしか生きられない」
マキナ
こんなところで死ぬのは嫌だ!
トイ
「困ってんのに」
トイ
「まあ、いいよお」
マキナ
トイ
指先が。
トイ
示すとおりに、チカの毒が、炎が

元の持ち主の記憶へすわれる。
トイ
「チカ、それ」
トイ
「オレの記憶(ともだち)だから」
小鴨 チカ
「……知るかよ」
小鴨 チカ
「これは、ぼくが──」
小鴨 チカ
受け継いだ?違うな。
小鴨 チカ
「──奪い取った力だ」
メイド6
*ティモフェイ様は猛毒でHP3点の減少。
[ ティモフェイ ] HP : 12 → 9
メイド6
*裁判 第3ラウンド マキナ
[ ティモフェイ ] 猛毒 マキナ : 2 → 1
マキナ
*救済 dA
マキナ
3d6
DiceBot : (3D6) > 8[2,2,4] > 8
[ マキナ ] HP : 1 → 9
マキナ
*攻撃 h5 トイへ
トイ
*妨害を使用[h10] 対象:マキナの攻撃
小鴨 チカ
*妨害[h9]
マキナ
*援護します
小鴨 チカ
2d6+4+1+1+2=>7 判定:才覚+多彩な凶器+万能+援護
DiceBot : (2D6+4+1+1+2>=7) > 9[4,5]+4+1+1+2 > 17 > 成功
小鴨 チカ
*器用[c7] 目標値は18
トイ
2d6+3+1=>18 判定:才覚 万能
DiceBot : (2D6+3+1>=18) > 12[6,6]+3+1 > 16 > 失敗
メイド6
*スペシャル! 成功です。
メイド6
*PCが裁判中の判定でスペシャルを起こした場合、即座にPCのHPを1D6点回復します。
トイ
1D6
DiceBot : (1D6) > 1
[ トイ ] HP : 12 → 13
[ マキナ ] 衰弱 : 3 → 0
マキナ
これは救済の分です
メイド6
妨害による目標値の変更は16点となります。
マキナ
2d6+3>=16
DiceBot : (2D6+3>=16) > 8[2,6]+3 > 11 > 失敗
マキナ
動けるだけの、最低限の止血。
マキナ
それで十分。
マキナ
まだ動ける。戦える。

冷える。
マキナ
殺される前に殺せばいい!

とても冷える。

記憶。
マキナ
取り囲む冷気が、血を失った身体から容赦なく体力を奪う。
マキナ
今私は前に進めている?

ばらの生垣。
うつくしい雲。
さえずる鳥。
マキナ
視界が霞む。

記憶ばかりの、『在りし日の』

刺剣の館の記憶がよみがえる。
マキナ
その中に、再生される記憶ばかりがはっきりと。

ヨタヨタと歩くマキナの世界を覆う。
マキナ
「う、うう……」
トイ
「マキナ」
マキナ
幻に向けて、短剣を振りかざす。
トイ
「記憶はきれいだよ」
マキナ
だけど手応えはない。
トイ
「小鳥もいるし、リスもいるし…」
マキナ
私はどこにいる? チカくんは? 相手は?
マキナ
「い、や……」
メイド6
「……」
トイ
「記憶は裏切らない」
マキナ
がむしゃらに短剣を振り回す。
トイ
「記憶はオレに幻滅もしない」
マキナ
「記憶は何もくれない!」
マキナ
「あたたかくない!」
トイ
「記憶はオレを見放さない」
トイ
「記憶になれば、凍えない」
マキナ
「触れられない!」
マキナ
「やだ、やだ、やだ」
メイド6
不思議の国と呼ばれていたときの憧憬をこの仮面は知らない。
マキナ
「やだぁ!!」
トイ
「おいでよ」
トイ
「遊ぼうよ」
マキナ
「行かない!!」
マキナ
「わたしは」
メイド6
しかし刺剣の館は知っている。存在した。かつての栄華。
マキナ
「わたしは、チカくんと、いくの」
トイ
「2人で一緒にくればいいよ」
マキナ
「生きて、チカくんと幸せになるの……!!」
トイ
「賑やかな方がたのしいよ」
マキナ
「それじゃだめ」
マキナ
「ちがう」
マキナ
「未来がない」
マキナ
「それじゃ意味がない」
トイ
『それがいちばん平等なのに』
マキナ
「わたしはまだ、チカくんに何もしてあげられてない!」
トイ
くらむ視界に声が響く。
メイド6
零れ落ちる砂時計のように、すべては時に流され捨て去られていく。
マキナ
「う、うう……」
マキナ
刃はどこにも届かない。
マキナ
吹雪の中に立ち尽くす。
メイド6
過去と散るのもまた、救いなのか。
メイド6
ただ今はまだ、時計の針は進みゆく。
メイド6
刹那を燃やして進む奇跡――まだ生きているのだから。
メイド6
*第3ラウンド終了 捨てるものはございますか?
小鴨 チカ
*このまま
トイ
*廃棄なし
ティモフェイ
*dQ捨て
マキナ
なにもありません~
メイド6
*裁判 第4ラウンド!
メイド6
*手札をお引きください!
小鴨 チカ
*h2 s2 c7(s5 cQ)
トイ
*s4.d4.dj.hk.ha
ティモフェイ
*d2 c2 d7 d8 d10
マキナ
*h4 h6 sJ hQ sK
メイド6
メイド6
*それでは……裁判 中断です
メイド8
*3日目 再開いたします
メイド8
メイド8
*裁判 第4ラウンド トイ
トイ
不思議の国が不思議の国だったころ。
トイ
咲き乱れる花、
茂みにキノコ、
清らかな水、砂塵なき空…
トイ
館はただしく使われて。
温室に花々、遊戯室に笑い声。
トイ
記憶の小鳥が飛んでいく。
トイ
*パスします
メイド8
*裁判 第4ラウンド チカ
小鴨 チカ
*鋭気[s2]
*暗器[s5] 対象:トイ
マキナ
*援護します
メイド8
割り込みはございますか?
トイ
割り込みません!
メイド8
それでは判定を。
小鴨 チカ
2d6+4+1+1+2=>7 判定:才覚+多彩な凶器+万能+援護
DiceBot : (2D6+4+1+1+2>=7) > 4[1,3]+4+1+1+2 > 12 > 成功
小鴨 チカ
C(3+3+2) 多彩な凶器+鋭気+援護
DiceBot : 計算結果 > 8
小鴨 チカ
Choice[《封印》,《猛毒》,《指切り》,《衰弱》]
DiceBot : (CHOICE[《封印》,《猛毒》,《指切り》,《衰弱》]) > 《指切り》
メイド8
*トイ様にラウンド2継続の指切り。トイ様の手札が上限4枚を超えますので、トイ様1枚破棄をお願いいたします。
トイ
*dj 廃棄
メイド8
ありがとうございます。
[ トイ ] HP : 13 → 5
小鴨 チカ
「マキナさんっ」
小鴨 チカ
「マキナさん!!」
小鴨 チカ
叫ぶ。視界を遮る、白い景色へ。
小鴨 チカ
火を燃やす。燃やす。
マキナ
視界を塞ぐ雪の向こうから声が聞こえる。
小鴨 チカ
声は届いてるかな。
小鴨 チカ
寒くないかな。
マキナ
これは。この声は。
マキナ
「ち」
マキナ
「ちか、くん」
マキナ
「チカくん!!」
マキナ
叫ぶ。
小鴨 チカ
「マキナさん……!!」
マキナ
「わ、たし、は」
マキナ
「だいじょうぶ、だから」
小鴨 チカ
「……っ」
マキナ
声が、熱がマキナに届く。
マキナ
聞こえる。感じられる。
マキナ
生きている。私も、チカくんも。
マキナ
「……私のことは、気にしないで!」
小鴨 チカ
声が聴こえる、方向は……
マキナ
「私は大丈夫だから!」
小鴨 チカ
──そこか!
小鴨 チカ
風の流れが逆流する。
小鴨 チカ
炎から、毒煙が立ち上る。
小鴨 チカ
マキナさんの声の場所を避けて、一帯を毒霧が包んだ。
トイ
「!」
トイ
雪に抗う火の熱。
トイ
体を蝕む毒霧。
トイ
せきこむ。
トイ
「けほっ…けほ」
トイ
二回戦で調子を崩した時のことを少し思い出した。
トイ
「やだなあ…」
トイ
「くるしいのも痛いのも…」
トイ
「こういうの、」
トイ
「早くこの世界からなくなればいい」
小鴨 チカ
「じゃあ、ぼくたちに任せてくれよ!」
小鴨 チカ
そのまま諦めて、突っ倒れててくれ!
メイド8
*裁判 第5ラウンド ティモフェイ
ティモフェイ
*補助動作 鋭気 s7捨て
*主動作 通打>マキナ d10捨て
*割り込み>通打 精確 c2捨て
ティモフェイ
1D6 精確
DiceBot : (1D6) > 2
ティモフェイ
2D6+3+2>=7 猟奇で判定
DiceBot : (2D6+3+2>=7) > 7[6,1]+3+2 > 12 > 成功
ティモフェイ
1D6+2+2+3+1 上質な凶器 看破 鋭気 発狂
DiceBot : (1D6+2+2+3+1) > 3[3]+2+2+3+1 > 11
[ マキナ ] HP : 9 → 0
メイド6
*マキナ様のHP0! 判決表を!
マキナ
2d6+3-2
DiceBot : (2D6+3-2) > 7[6,1]+3-2 > 8
メイド6
*6~8 ランダムな能力値で判定し、成功すればHP1の状態で立ち上がる。失敗すれば〈昏倒〉する。
マキナ
*免罪符を使用します
メイド6
*9~11 HP1の状態で立ち上がる。
[ マキナ ] 免罪符 : 1 → 0
[ マキナ ] HP : 0 → 1
[ マキナ ] 前科 : 2 → 3
ティモフェイ
吹きすさぶ雪を払う炎と毒霧、
ティモフェイ
その戦場を漂う方向から、
ティモフェイ
騎士は正しくマキナの居場所を見極める。
ティモフェイ
地を蹴った。
ティモフェイ
毒霧も炎も雪も、救世のつるぎが斬り払う。
ティモフェイ
返り血に濡れた救世主が
ティモフェイ
マキナの目の前に現れ、再びその剣を振り下ろす。
マキナ
鮮血。
ティモフェイ
胸に虹が突き立つ。
ティモフェイ
同じ疵を、
ティモフェイ
心臓を、
マキナ
「っ、あ…………っ!!」
ティモフェイ
まばゆい光が再び抉る。
マキナ
ごぼり、と血を吐く。
ティモフェイ
マキナの吐いた血はますますに騎士の衣装を汚し。
トイ
うつくしい。
マキナ
「う、あ、あぁ……」
トイ
美しい光景だ、と刷り込まれたように思う。
ティモフェイ
生贄を、
ティモフェイ
生贄を捧げるときと、同じ、
マキナ
悲鳴を上げる力もなく。
ティモフェイ
同じように心臓を貫いて。
トイ
生贄の心臓に突き立てられる儀礼剣。
その所作。
トイ
救いをもたらすシンボル。
ティモフェイ
世界を救うものとしてこの上なく手慣れた、
ティモフェイ
人を殺すためのすべ。
トイ
殺す者、殺されるものにとっては
マキナ
とめどなく血を流しながら、膝を折る。
トイ
暴力。
マキナ
胸を、心臓を貫かれている。
マキナ
生きていられるはずもない。
トイ
だが観客席の観客と同じように、それを見たがる者がいる。
マキナ
だけどやはり、まだ生きている。
ティモフェイ
まだ生きている少女を、騎士は見下ろす。
ティモフェイ
やはり躊躇はない。
ティモフェイ
既に最早、
ティモフェイ
正しく、
ティモフェイ
正しくそれは『乗り越えるべき障害』でしかなく。
マキナ
心臓は未だに脈を打ち、その度に雪の上に血が広がる。
マキナ
膝をつき頭を垂れる様はまるで
マキナ
そこに剣が振り下ろされることを待つ生贄のよう。
ティモフェイ
生贄ならば。
ティモフェイ
生贄ならば、既に死んでいるべきだった。
マキナ
だけど、マキナは違う。
ティモフェイ
この女の魂は清くない。
マキナ
人を陥れてでも、生に執着する醜さ。
ティモフェイ
生贄としての資格はない。
マキナ
──まだ死にたくない。
マキナ
死ねない!
メイド6
「判決は――下らず! 前科を重ねて裁判続行でございます」
メイド6
*ティモフェイ様のHPが猛毒により3点減少。
ティモフェイ
生贄を見下ろす救世騎士の体内を、
ティモフェイ
与えられた毒が蝕んでいる。
[ ティモフェイ ] HP : 9 → 6
ティモフェイ
呪詛を残すようなことを、
ティモフェイ
彼らは誰一人しなかった。
ティモフェイ
そのように思い出して、虹の剣を振り上げた。
メイド6
*裁判 第5ラウンド マキナ
[ ティモフェイ ] 猛毒 マキナ : 1 → 0
マキナ
「う、あぁっ!!」
マキナ
剣を振り上げた男を突き飛ばす。
ティモフェイ
「!」
マキナ
もはや死に体とはいえ、そこは腐っても救世主。
ティモフェイ
女の細腕でさえなお。
マキナ
剣の間合いから逃れる隙をつくるには十分。
ティモフェイ
がむしゃらな一撃に身体が傾ぐ。
マキナ
「……っ、」
マキナ
震える脚を無理やり動かして、距離を取る。
マキナ
痛い。苦しい。冷たい。
マキナ
どうして、私がこんな目に合わないといけないの?
マキナ
もうやだ。
マキナ
でも、私が頑張らないと。立ってないと。
マキナ
じゃないと、次に痛い思いをするのはチカくんなんだ。
マキナ
*パスします
メイド8
*第4ラウンド終了 捨てるものはございますか?
小鴨 チカ
*h2 h7を捨てます
マキナ
*h4 h6 sJ hQ 破棄
ティモフェイ
*捨てなし
トイ
*d4 s4 廃棄
メイド8
*裁判 第5ラウンド
メイド8
*手札をお引きください!
トイ
*c5.d6(hk.ha)
ティモフェイ
*d3 c4 s8 (d2 d8)
マキナ
*c3 h8 cK dK sK
小鴨 チカ
*d5 s9 hJ cJ (cQ)
メイド6
*失礼します。猛毒のラウンド数を確認しましたところ、回復タイミングが前ラウンドでした。HP点数のみ訴求し、HPを9点とします。
ティモフェイ
了解しました。確認ありがとうございます。
[ ティモフェイ ] HP : 6 → 9
メイド6
*裁判 第5ラウンド トイ
トイ
*必衰を使用[d6] 対象:マキナ
小鴨 チカ
*妨害[s9]
トイ
*遊撃を使用[hk] 対象:チカの妨害
メイド6
遊撃に対する割り込みはございますか?
メイド6
ないですね、では遊撃の処理を。
トイ
2d6+2+1=>7 判定:猟奇 万能
DiceBot : (2D6+2+1>=7) > 7[6,1]+2+1 > 10 > 成功
トイ
1D6 判定値減少
DiceBot : (1D6) > 3
トイ
ダメージ 2(猟奇)
[ 小鴨 チカ ] HP : 17 → 15
マキナ
*チカの妨害に援護します
小鴨 チカ
2d6+4+1+1+2-3=>7 判定:才覚+多彩な凶器+万能+援護-遊撃
DiceBot : (2D6+4+1+1+2-3>=7) > 7[6,1]+4+1+1+2-3 > 12 > 成功
小鴨 チカ
*器用[d5 hJ]を使用 14
メイド6
目標値14で必衰の判定をどうぞ。
トイ
2d6+3+1=>14 判定:才覚 万能
DiceBot : (2D6+3+1>=14) > 7[3,4]+3+1 > 11 > 失敗
トイ
*逆転します 心の疵:生贄
[ トイ ] 生贄 : 0 → -1
メイド6
*トイ様は発狂いたします。
トイ
出目を3→6に。必衰を成功させます。
トイ
1D6+1 スート凶器
DiceBot : (1D6+1) > 5[5]+1 > 6
メイド6
割り込みはございますか?
マキナ
ありませんので受けます
[ マキナ ] HP : 1 → 0
[ マキナ ] 衰弱 : 0 → 3
メイド6
*マキナ様のHP0! 判決表を!
マキナ
2d6+3-3
DiceBot : (2D6+3-3) > 8[2,6]+3-3 > 8
マキナ
Choice[猟奇,才覚,愛]
DiceBot : (CHOICE[猟奇,才覚,愛]) > 猟奇
マキナ
2d6+2>=7
DiceBot : (2D6+2>=7) > 7[6,1]+2 > 9 > 成功
[ マキナ ] 前科 : 3 → 4
[ マキナ ] HP : 0 → 1
トイ
*百刑を使用[ha] 対象:マキナ
マキナ
*愛毒 h8
メイド6
*同タイミングにより、ランダムです。
メイド6
*まずは両方とも判定、算出をし、それからランダムで処理順を決定いたします。
メイド6
トイ様の百刑からどうぞ。
トイ
ダメージ3点 才覚
状態異常:猛毒 3R
メイド6
メイド6
choice[トイ様,マキナ様]
DiceBot : (CHOICE[トイ様,マキナ様]) > トイ様
メイド6
ではこのまま処理をお願い致します。
[ マキナ ] HP : 1 → 0
マキナ
2d6+3-4
DiceBot : (2D6+3-4) > 8[5,3]+3-4 > 7
メイド6
6~8 ランダムな能力値で判定し、成功すればHP1の状態で立ち上がる。失敗すれば〈昏倒〉する。
マキナ
Choice[猟奇,才覚,愛]
DiceBot : (CHOICE[猟奇,才覚,愛]) > 才覚
マキナ
2d6>=7
DiceBot : (2D6>=7) > 12[6,6] > 12 > 成功
メイド6
*スペシャル!
メイド6
*PCが裁判中の判定でスペシャルを起こした場合、即座にPCのHPを1D6点回復します。
マキナ
1d6 回復量
DiceBot : (1D6) > 1
[ マキナ ] HP : 0 → 2
[ マキナ ] 前科 : 4 → 5
[ マキナ ] 封印 : 0 → 1
メイド6
*マキナさまにラウンド3継続の猛毒を付与。
メイド6
それではマキナ様の愛毒をどうぞ。
マキナ
2d6+3>=7 愛
DiceBot : (2D6+3>=7) > 4[3,1]+3 > 7 > 成功
マキナ
トイくんは毒をくらえ!!
[ トイ ] 猛毒 : 0 → 3
メイド6
*トイ様手番のため、猛毒によりHP2点の減少。
[ トイ ] HP : 5 → 2
[ トイ ] HP : 2 → 3
トイ
吹雪の中で。
トイ
白い煙の中からマキナを目がけて突き出される、レイピア。
マキナ
「──っ!!」
トイ

<このトーナメントの開幕は――>

<お前の血で彩られる事となるだろう!>

トイ
 ――処刑人ヨハンの記憶。
マキナ
見間違うはずがない。聞き違えるはずがない。
トイ
『どうして、
 私がこんな目に合わないと
  いけないの?』と、
マキナ
半年間マキナが付き従った、横暴な救世主。
トイ
いうならば、それに関係のある人物。
トイ
ヨハンの切っ先がマキナをかすめ。
トイ
しかし次の瞬間には、そのヨハンが貫かれる。
マキナ
「っ、あ」
マキナ
ヨハンはこの場所で死んだ。
トイ

かすれた声。

トイ
<ま、マキナぁ……>
トイ

<助けろ……!何をしてる!>

<早くしろ、鈍間がぁ……!>

<ごほっ、何をっ……>
マキナ
「ヨ、ハン、様…………」
マキナ
『──お前に関わる者は幸せにはなれないな』
トイ
記憶の死にゆくヨハンがマキナを見上げる。
マキナ
また、聞こえる。黒兎の声。
マキナ
彼もまた、マキナが見捨てた者の一人。
トイ
ただの冷たい冷たい、血だまり。
マキナ
助けられたかもしれない、助けなかった人間の一人。
マキナ
「っ、うぅ……」
マキナ
首を振る。
マキナ
幻影だ。
トイ
うららかな光景の中でヨハンが死んでいく。
マキナ
今更彼に何をしてやることもできない。
マキナ
死にゆくヨハンから目を背ける。
メイド6
*裁判 第5ラウンド チカ
[ トイ ] 指切り : 2 → 1
小鴨 チカ
*封殺[cJ] トイ
メイド6
割り込める物はございませんね。判定を。
小鴨 チカ
2d6+4+1+1=>7 判定:才覚+多彩な凶器+万能
DiceBot : (2D6+4+1+1>=7) > 7[5,2]+4+1+1 > 13 > 成功
小鴨 チカ
C(3+2+1) 多彩な凶器+看破+発狂
DiceBot : 計算結果 > 6
小鴨 チカ
*封印2ターン
[ トイ ] 封印 : 0 → 2
[ トイ ] HP : 3 → 0
メイド8
*トイ様のHP0! 判決表を!
トイ
2d6+3-2
DiceBot : (2D6+3-2) > 2[1,1]+3-2 > 3
メイド8
*1ゾロ 死刑!キャラクターは〈死亡〉する。
ティモフェイ
「…………」
小鴨 チカ
幻を振り払う突風と煙。その煙幕に交じって有刺鉄線が飛ぶ。
トイ
「!」
小鴨 チカ
マキナさんと、トイさんの姿が見える。
トイ
少し笑っていたその男に――
トイ
引き倒すように、鉄線。
小鴨 チカ
「っ……」
トイ
「うっ…」
トイ
「…つー…」
小鴨 チカ
トイさんに絡まる鉄の糸。
トイ
チカを、見上げる。
小鴨 チカ
そのまま倒して、馬乗りになる。
ティモフェイ
雪の吹きすさぶ中。
小鴨 チカ
棘の生えたそれを、首へと絡めて。
ティモフェイ
その光景を、見ていた。
小鴨 チカ
ぼくは、両手で引っ張った。
トイ
「チーーー」
メイド6
「――!」
ティモフェイ
少年の手に持つ有刺鉄線が、
ティモフェイ
生贄の首にかかり。
トイ
「あ あ ぁ」
トイ
首に絡みつく鉄線。
小鴨 チカ
「う、あああああ……!!!」
ティモフェイ
悲鳴が聞こえる。
トイ
喉を締め上げられ、声が出なく
マキナ
霞む視界の中で、トイに馬乗りになるチカが見える。
小鴨 チカ
手に、棘が突き刺さる。
ティモフェイ
トイトロールの声ではない。
マキナ
ああ、
ティモフェイ
トイトロールを、
ティモフェイ
生贄を殺すものの、
マキナ
死んでしまう。
ティモフェイ
殺意を剥き出しにした雄叫び。
トイ
記憶がよみがえる。
マキナ
殺させて、しまう。
トイ
何度も何度も、悲鳴を、たすけを
トイ
呼ぼうとするたびにこうして締め上げられた
トイ
懐かしい。
トイ
だからこんな汚い声になった。
マキナ
まだ彼は普通に戻れるはず、そう信じて、祈ってきたチカに
マキナ
人を手にかけさせてしまう。
ティモフェイ
地を蹴る。しかし遠い。
ティモフェイ
トイトロールを守るためではなく、
小鴨 チカ
「うっ、あっ」
ティモフェイ
救世主を殺すための位置取りをしてきたから。
トイ
声が出ない。
トイ
「… っ っ」
ティモフェイ
彼らの姿は遠く、
トイ
振りほどけない。
トイ
こわい。
ティモフェイ
今になって強い雪風が、ティモフェイの全身を叩く。
ティモフェイ
忘却の国の雪が。
トイ
恐怖に力が抜けていく。
ティモフェイ
全てを閉じ込める忘却の雪が、
小鴨 チカ
「ああああ!!!!」手を引き裂く痛み。
シャルル
「……トイトロール!」
トイ
「………っ、  、」
ティモフェイ
それを振り払うことのできなかった救世主の道を塞ぐ。
ティモフェイ
届かない。
ティモフェイ
生贄に。
ティモフェイ
今度こそ、
ティモフェイ
今度こそ救うと誓った、
ティモフェイ
あの清らかな魂に!
シャルル
「……トイ、トロール!」
マキナ
『お前に関わる者は』
  『幸せにはなれないな』
トイ
瞳から涙がこぼれおちる。
ティモフェイ
シャルルの声。
ティモフェイ
シャルルの声に導かれるように、やっと、
ティモフェイ
「トイトロール!!」
ティモフェイ
声が出た。
トイ
ただチカがこわくて、身がすくんで。考えられない。頭はこの雪景色のように真っ白。
シャルル
「アンタは……」
トイ
だれかが自分に話しかけている気もする。
マキナ
「……ち、かくん」
シャルル
「ひとりじゃ、ない……!」
トイ
それはやっぱり記憶の雪じゃないか。
マキナ
──もうやめて。
小鴨 チカ
お前だって。
ティモフェイ
雪を振り払い叫んだとて、
マキナ
「……殺して」
小鴨 チカ
お前だって、死にたくないんじゃないか!
ティモフェイ
風がそれを掻き消して。
マキナ
「殺して!!」
小鴨 チカ
なんだよ、その顔。
トイ
優しい言葉など。
ティモフェイ
「っ」
トイ
自分にかけられたものじゃない。
ティモフェイ
「死ぬな!!」
小鴨 チカ
怖いんじゃないのかよ!
マキナ
普通じゃなくていい。
トイ
だれかが誰かに言った言葉を、自分が勝手に再生しているだけ。
マキナ
幸せにだってなれなくてもいい。
ティモフェイ
「トイトロール」
マキナ
一緒に生きられるなら。
ティモフェイ
「俺は」
マキナ
殺さないと、生きられないから。
アレクシア
「――マキナ、さんっ!!」 裂くような声。
ティモフェイ
「おまえを――」
アレクシア
「疵が、」
アレクシア
「疵があっても!!」
シャルル
聞こえるうちに、わかるうちに。
マキナ
「──殺して!!」
小鴨 チカ
ここで死ぬのは本望か?覚悟を決めて挑んだのか?
アレクシア
「ここでない場所で、……また、笑えます!!」
アレクシア
「二人で!!」
マキナ
悲鳴のように、繰り返す。
小鴨 チカ
じゃあ、そんな顔、すんじゃねえよ!
アレクシア
「二人でなら!!」
マキナ
そう、二人でなら。
ティモフェイ
雪をわけて。
小鴨 チカ
「っ……!」
マキナ
あいつらを殺さないと、そんな未来すらない!
シャルル
「お前は……言っただろ、結びついてると!」
ティモフェイ
ティモフェイがチカとトイトロールへと、
ティモフェイ
ようやっと近づきゆく。
小鴨 チカ
血が滴る。
ティモフェイ
虹の剣が翻る。
マキナ
「……っ、う、うぅ……」
小鴨 チカ
糸を伝って、首元の傷口へと流れこんでゆく。
トイ
虹の光を目にしたとき。
トイ
ほんの一瞬。
トイ
ほんの一瞬我に返った。
トイ
その時思ったことは。
シャルル
「もう……いいから……頑張らなくて……いい。赤の他人の為に」
マキナ
泣きじゃくる。顔にべっとりと張り付いた血に涙が滲む。
ティモフェイ
世界をみちびく、
ティモフェイ
救世の光。
トイ
『覚えていてほしい。』

『知って欲しい』
小鴨 チカ
ちがう。何もわかんねえ。
小鴨 チカ
ぐちゃぐちゃだ。今、誰が何言ってた?
トイ

『――オレの悲鳴を!』
マキナ
「……チカくん、チカくん、チカくん」
シャルル
「楽になって……いいんだ。お前が……」
トイ
手を伸ばす。両手で、やさしく
小鴨 チカ
「やめろ」
トイ
チカの顔を挟むように。
シャルル
「救われて、いいんだよ……」
ティモフェイ
雪が降る。
小鴨 チカ
「……やめろっ」
トイ
トイトロールのからだから
トイ
白銀の雪がふわりと散って
トイ
チカのなかに、トイの記憶を伝える。
マキナ
溢れて落ちる涙が凍る。
トイ
己がどんな人生だったか。
トイ
何を感じていたか。
トイ
どうして強がらなきゃいけなかったか。
ティモフェイ
血が雪を凍りつかせて、
小鴨 チカ
「……!!!!!!!!!」
トイ
どうして生きてる人間を怖がるようになったか。
シャルル
「トイトロール……」
トイ
どうしてティモフェイと一緒にいるのか。
ティモフェイ
虹の剣がきらきらと雪に反射して、
トイ
ティモフェイが故郷でどんな存在だったか。
ティモフェイ
猟奇的な光景を、どこまでも美しく彩る。
小鴨 チカ
やめろ。やめろ、やめろ、やめろ!!!
小鴨 チカ
やめてくれ!!!!!!!
ティモフェイ
少年の頬を凍えさせ。
小鴨 チカ
これ以上、何も考えたくない!
トイ
忘却の国の人々が
ティモフェイ
生贄の身体すら凍りつかせ。
トイ
死ぬときに何を感じたか。
ティモフェイ
彼らを
トイ
それを知って、自分がどう思っていたか。
ティモフェイ
彼らの人生を塞いできた、
ティモフェイ
重苦しい雪が、
ティモフェイ
オールドメイドゲームの決勝、
トイ
トイトロールという名前も、ただの民話の存在だと
小鴨 チカ
なん
ティモフェイ
裁判の只中の中庭へと降り積もる。
小鴨 チカ
忘却の
ティモフェイ
けれど。
トイ
名前もなければ
小鴨 チカ
トイトロール
ティモフェイ
けれど、もう、忘れられない。
小鴨 チカ
ティモフェイ
小鴨 チカ
トイ
顔もティモフェイの顔としかいわれない
小鴨 チカ
生贄
トイ
家族も忘れた
小鴨 チカ
「う」
ティモフェイ
忘却の雪のやさしいちから、
トイ
恋をしたこともない
小鴨 チカ
「うわああああああ」
ティモフェイ
記憶を奪い
ティモフェイ
忘れさせるちからは、
ティモフェイ
もはやすでにない。
トイ
救われたかった。
ティモフェイ
その力すら、
トイ
救われたかった。
小鴨 チカ
「うわあああ!!ああああああっ!!!!」
ティモフェイ
彼らには残っていない。
トイ
自分のようなものの悲鳴はだれもきかない
トイ
みつけられない
トイ
だから万人に平等じゃなくちゃ…
ティモフェイ
すべて。
ティモフェイ
すべてが彼の。
小鴨 チカ
平等
トイ
かなしい

   こわい
トイ
さみしい
    くるしい
小鴨 チカ
救世
小鴨 チカ
記憶
トイ
いたい 
  いたい
ティモフェイ
一人の普通の、心優しく、
ティモフェイ
かなしいほどに聡すぎる少年の頭へと刻み込まれる。
小鴨 チカ
ぼくは、
小鴨 チカ
小鴨チカ。
小鴨 チカ
17歳。
小鴨 チカ
高校生。
小鴨 チカ
東京生まれ。
小鴨 チカ
それだけだ。
小鴨 チカ
やめろ!
ティモフェイ
雪はやまない。
小鴨 チカ
他の世界の事なんて
小鴨 チカ
「ううっ」
ティモフェイ
ただの人間であれば
ティモフェイ
とうに全身を凍りつかせて、息絶えている。
小鴨 チカ
知らねえ。知らねえんだ!
ティモフェイ
それほどの激しい雪を受けてなお、
小鴨 チカ
ぼくの記憶じゃない!
ティモフェイ
少年の手は正しく動いていた。
ティモフェイ
あやまたず。
小鴨 チカ
別の世界の物語だ!
ティモフェイ
目の前の相手を、
トイ
 わすれ、ないで
ティモフェイ
人間を、
ティモフェイ
殺すために。
トイ
 忘却の国のこと
トイ
 それがなにより
トイ
 つらいんだ
小鴨 チカ
ぼくには、マキナさんがすべてで……
小鴨 チカ
「…………っ」
マキナ
「──チカくん!」
小鴨 チカ
「あっ……うえっ……」
トイ
記憶がぬけて、呆然と自分がなぜここにいるのかわからないトイトロールであった…記憶の抜け殻は
トイ
なぜじぶんが首を絞められているのかもわからず
小鴨 チカ
「マキナ、さん……」
マキナ
雪の上を這いずって、血の轍を残し、
マキナ
チカの体に触れる。
トイ
困惑したまま、その息を
トイ
引き取る。
ティモフェイ
騎士の足音。
マキナ
せめてその罪のいくらかでも引き受けようと。
ティモフェイ
それを、トイトロールが聞いていたかはわからない。
メイド8
「トイトロール様の判決は死刑! 残る6号室の救世主は1名! 裁判続行でございます」
ティモフェイ
されど何もかもが手遅れ。
ティモフェイ
息を引き取った清らかな魂に、
ティモフェイ
その抜け殻に騎士は駆け寄り、
メイド6
「……」
ティモフェイ
馬乗りになったチカの肩を掴んだ。
ティモフェイ
乱暴に、
小鴨 チカ
「っ……」
ティモフェイ
チカに寄り添ったマキナごとにその身体を突き飛ばす。
小鴨 チカ
「──ティモフェイ……」
ティモフェイ
トイトロールを見下ろす。
マキナ
突き飛ばされ、雪の上に投げ出される。
ティモフェイ
倒れ伏した彼を見下ろし、
ティモフェイ
その隣に膝をついた。
ティモフェイ
震える手を伸ばす。
ティモフェイ
頬に触れて、
ティモフェイ
首の線をたどり、
ティモフェイ
致命となった傷に指先を浸すと、
ティモフェイ
毒が手袋を蝕み、皮膚をとろかす。
トイ
触れ馴れたその体は冷たい。
ティモフェイ
灼けるような痛みが、
ティモフェイ
熱が、
ティモフェイ
他人事のように頭に届いたような、届いていないような。
ティモフェイ
もっと
ティモフェイ
もっとだいじな
ティモフェイ
もっとだいじなものが得るべき熱が、
ティモフェイ
完全に失われている。
ティモフェイ
それを正しく確認して唇を震わし、
ティモフェイ
俯くその背に、雪が降る。
ティモフェイ
トイトロールと同じ力。
ティモフェイ
トイトロールと同じ、忘却の国を想う者の心の疵の降らす雪。
ティモフェイ
首に触れていた手で、つめたい身体をたどる。
ティモフェイ
何度も自分に打擲を繰り返した腕を。
ティモフェイ
求めて伸ばされていたはずの指先。
ティモフェイ
強いられて掻き抱いた身体。
ティモフェイ
あるいは、跨がられた。
ティモフェイ
熱を分けた。
ティモフェイ
自分と同じ顔が淫奔に歪むさまは悪夢のようで、
ティモフェイ
愛した女との記憶を上書きするようで苦しかった。
ティモフェイ
それでも身を寄せていた。
ティモフェイ
抱きしめた時、
ティモフェイ
もっと早くこうすればよかったのだと、心のどこかで悟っていた。
ティモフェイ
それだけで
ティモフェイ
それだけで彼は、
ティモフェイ
今はもう亡い。
ティモフェイ
過去は覆らない。
ティモフェイ
死んだ者は蘇らない。
ティモフェイ
自分が届けられるものは――
ティモフェイ
「…………」
ティモフェイ
なきがらの、
ティモフェイ
その背中に腕を回した。
ティモフェイ
抱き寄せる。
メイド6
「……」
トイ
命のないままに抱き寄せられている。
ティモフェイ
今は焼き潰された自分の救世の刻印。
ティモフェイ
それと同じ刺青を指でたどり、
ティモフェイ
その肩に顔を埋めた。
ティモフェイ
長く。
ティモフェイ
長く長く、そうして抱き締めている。
ティモフェイ
それは明確な隙であっただろう。
トイ
力の抜けた死体は、何の抵抗も示さない。
ティモフェイ
亡骸を抱いて顔を伏せる男の背中を、
トイ
もしもそこに命があったなら、
安心しきった、信頼しきった、と言えるような
ティモフェイ
無防備な隙を晒すこともいとわず、
トイ
赤子のように人形のように、ティモフェイのなすがまま。
ティモフェイ
愛する者にするかのように、その身を抱く。
トイ
さみしがった主賓の死をしらしめるように
トイ
館の記憶が姿を消す。
小鴨 チカ
「…………ティモフェイ……」
トイ
『在りし日の』姿も見えず、元の中庭。
ティモフェイ
その中心で血の花を咲かせながら、
マキナ
ヨハンも、咲も、狩人の二人ももういない。
ティモフェイ
寄り添う救世主と生贄のふたり。
小鴨 チカ
「願いを一つ、渡すって言ったら……」
小鴨 チカ
「棄権してくれるか?」
ティモフェイ
「…………」
ティモフェイ
抱き寄せていた身体を
ティモフェイ
もう一度最後に、強く抱擁して。
ティモフェイ
マントを外した。
ティモフェイ
中庭の雪の上にそれを敷いて、トイトロールの亡骸を横たわらせる。
ティモフェイ
頬に触れた。
ティモフェイ
また首を辿って、胸をなぞり。
ティモフェイ
虹がひらめいて、
ティモフェイ
トイトロールの心臓を貫いた。
小鴨 チカ
「…………」
トイ
ひかりが走る。
マキナ
「……っ」
メイド6
血を被る。
トイ
トイの心臓を貫いた時。
ティモフェイ
騎士の装束を生贄の血で染める。
トイ
光が雪雲をかき分けた。
マキナ
チカに縋り付いたまま、そのさまに目を奪われる。
ティモフェイ
「大丈夫」
ティモフェイ
「大丈夫だ、トイトロール」
トイ
雪を晴らし、そして
ティモフェイ
「世界は」
ティモフェイ
「救われるから」
トイ
その先の砂塵を
ティモフェイ
返り血をぽたぽたと落としながら、空虚な男の声が響く。
トイ
これは、本物の空なのか
トイ
それともやはり。心の疵が作り出したものか。
ティモフェイ
それを遮る風の音も今はない。
トイ
館の上に青空が広がる。
メイド6
見上げる。
ティモフェイ
ゆっくりと
ティモフェイ
虹の剣をその胸から引き抜いて、
ティモフェイ
騎士は亡骸の隣に立つ。
ティモフェイ
そうして彼らに向けられた瞳の色は、
ティモフェイ
その背に負う青空と同じいろをしていた。
メイド6
ティモフェイを見る。
メイド6
何も言葉を発することはない。
マキナ
館の上に広がった青い青い空は、マキナの故郷とも同じ色をしていた。
メイド6
刺剣の館のメイドは儀式の進行を執り行うのみ。それ以上の干渉は許されない。
メイド6
余計な言葉を発するなどは。
マキナ
ついぞ分かりあえないままだった彼らの故郷と、それでも、空の色ばかりは。
メイド6
「トイトロール様の判決は死刑」
メイド6
「残る6号室の救世主は1名」
メイド6
「――裁判続行でございます」
メイド6
*裁判 第5ラウンド ティモフェイ
ティモフェイ
*主動作 通打>マキナ d8捨て
*割り込み>通打 精確 c4捨て
ティモフェイ
1d6 精確
DiceBot : (1D6) > 2
ティモフェイ
2D6+3+2>=7 猟奇で判定
DiceBot : (2D6+3+2>=7) > 5[3,2]+3+2 > 10 > 成功
ティモフェイ
1D6+2+2+3+1+2 上質な凶器 看破 鋭気 発狂 衰弱
DiceBot : (1D6+2+2+3+1+2) > 3[3]+2+2+3+1+2 > 13
[ マキナ ] HP : 2 → 0
メイド6
*マキナ様のHP0! 判決表を!
マキナ
2d6+3-5
DiceBot : (2D6+3-5) > 12[6,6]+3-5 > 10
[ マキナ ] 前科 : 5 → 6
メイド6
*9~11 HP1の状態で立ち上がる。
[ マキナ ] HP : 0 → 1
ティモフェイ
男が地を蹴り。
ティモフェイ
女へと刃を振りかざす。
ティモフェイ
躊躇いはない。
マキナ
「──っ!!」
マキナ
避けられない。
ティモフェイ
虹の儀礼剣は生贄の血を吸ってなお美しく輝き、
ティモフェイ
するどさを増して救世主の身を裂く。
マキナ
血が溢れる。
ティモフェイ
溢れた血が刀身を伝い、
ティモフェイ
男の手を汚し、
ティモフェイ
その手が剣を握りしめて、更に心臓を抉る。
マキナ
「──、────」
小鴨 チカ
殴りかかる。
マキナ
悲鳴の代わりに、口からは血ばかりが溢れ出した。
ティモフェイ
チカの一撃を、もはや避けもしない。
小鴨 チカ
手に戻ってくる、打撃の感触。
小鴨 チカ
「……」
ティモフェイ
肉体を穿つ確かな手応え。
小鴨 チカ
「今度は、最後まで?」
ティモフェイ
「ああ」
小鴨 チカ
「そっか」
小鴨 チカ
胸に広がるこの感情。
小鴨 チカ
なんと呼べばいいのかもわからない。
小鴨 チカ
複雑な何かだ。
小鴨 チカ
「……やろうか」
ティモフェイ
「よろしく頼む」
ティモフェイ
裁判は止まらない。
ティモフェイ
儀式は中断されない。
ティモフェイ
すべてが決定的に終わる、その瞬間まで、決して。
メイド8
*裁判 第5ラウンド マキナ
マキナ
*回復 cK
マキナ
2d6+3>=7 愛
DiceBot : (2D6+3>=7) > 10[5,5]+3 > 13 > 成功
マキナ
1d6+3 愛
DiceBot : (1D6+3) > 5[5]+3 > 8
マキナ
*予備動作のタイミングで水パイプ 猛毒を解除
マキナ
*回復8点をマキナに 衰弱を3R減少
[ マキナ ] 水パイプ : 1 → 0
[ マキナ ] 猛毒 : 3 → 0
[ マキナ ] 衰弱 : 3 → 0
メイド8
*受理します。
[ マキナ ] HP : 1 → 9
マキナ
投げ出された手が、中庭に残った雪をかく。
マキナ
まだ動く。
マキナ
動くなら、立ち上がれる。
マキナ
立ち上がれるから、戦える。
ティモフェイ
戦いは続いている。
ティモフェイ
目の前の男は、まだ立っている。
マキナ
まだ、倒れられない。
マキナ
チカくんを、守るんだ。
マキナ
全身を血に染めて、傷口からはなおも新しい血が噴き出して
マキナ
それでもまた、立ち上がる。
小鴨 チカ
「……っ」
マキナ
傷を塞ぐ。血を止める。動ければそれでいい。
マキナ
もう少しだけ彼の盾になれれば、それで。
マキナ
そうしている間にきっと、チカくんが終わらせてくれる。
マキナ
ふらつく身体で、ティモフェイからチカを庇うように立つ。
メイド8
*第5ラウンド終了 捨てるものはございますか?
ティモフェイ
*d2捨てます
マキナ
*c3 dK 廃棄
小鴨 チカ
*そのままcQ残し
メイド8
*裁判 第6ラウンド
メイド8
*手札をお引きください。
ティモフェイ
*d7 h9 sQ(d3 s8)
マキナ
*s3 d9 dJ dQ(sK)
小鴨 チカ
*h4 h5 h10 hQ (cQ)
メイド8
*裁判 第6ラウンド チカ
小鴨 チカ
*鋭気[h4]
*暗器[h5] ティモフェイ
マキナ
*援護します
小鴨 チカ
2d6+4+1+1=>7 判定:才覚+多彩な凶器+万能
DiceBot : (2D6+4+1+1>=7) > 4[3,1]+4+1+1 > 10 > 成功
小鴨 チカ
C(3+3+2+1) 多彩な凶器+鋭気+援護+発狂
DiceBot : 計算結果 > 9
[ ティモフェイ ] HP : 9 → 0
メイド8
*ティモフェイ様のHP0! 判決表を!
ティモフェイ
2D6+3
DiceBot : (2D6+3) > 4[2,2]+3 > 7
メイド8
*6~8 ランダムな能力値で判定し、成功すればHP1の状態で立ち上がる。失敗すれば〈昏倒〉する。
ティモフェイ
Choice[猟奇,才覚,愛]
DiceBot : (CHOICE[猟奇,才覚,愛]) > 才覚
ティモフェイ
2D6+3>=7 才覚判定
DiceBot : (2D6+3>=7) > 6[1,5]+3 > 9 > 成功
小鴨 チカ
Choice[《封印》,《猛毒》,《指切り》,《衰弱》]
DiceBot : (CHOICE[《封印》,《猛毒》,《指切り》,《衰弱》]) > 《衰弱》
[ ティモフェイ ] 前科 : 0 → 1
メイド8
*才覚の修正が本来は0ですので、失敗です。
メイド8
*ティモフェイ様は昏倒となります。
ティモフェイ
はい。
小鴨 チカ
「……儀式は、正しく、迷わず、最後まで遂行される。」
小鴨 チカ
「だから、ティモフェイが自分の手で勝ちを掴まなきゃいけない」
小鴨 チカ
「いけな、かった」
ティモフェイ
「ああ」
ティモフェイ
「俺は」
ティモフェイ
「二度と、儀式を中断することを、許されない」
小鴨 チカ
「でもさ。ぼくは小鴨チカなんだ」
小鴨 チカ
「これ以上、マキナさんに辛い想い、させるわけにはいかないんだよ」
ティモフェイ
小鴨チカを見る。
小鴨 チカ
「マキナさんには、忘却も堕落も関係ない」
ティモフェイ
全身を血に濡らした救世主が、目の前の少年を見つめている。
小鴨 チカ
「普通の人だ。身の回りのことだけ」
小鴨 チカ
「分かり合えるわけ、ねーよな」
ティモフェイ
その手には剣が握られている。
ティモフェイ
「結局」
ティモフェイ
「俺もトイトロールも、正しい『普通』というものを」
ティモフェイ
「どうにも理解できないようだ」
ティモフェイ
「俺は俺を普通と思っているつもりだが」
ティモフェイ
「普通ではない役割を背負い、演じてきたことは」
ティモフェイ
「間違いないからな」
小鴨 チカ
「そりゃ、そうだよ」
小鴨 チカ
毒の煙がティモフェイさんを包む。
ティモフェイ
救世主の全身は凍えている。
小鴨 チカ
「世界、救わせられなかったな」
小鴨 チカ
「ごめん」
ティモフェイ
今はもううまく動かない。
ティモフェイ
人を殺してきた、
ティモフェイ
世界を救うための儀礼剣を握る手の感触すらも、もはや危うい。
ティモフェイ
「いいや」
ティモフェイ
「俺の、力不足だ」
小鴨 チカ
「引き継ぐよ。言われた通り」
ティモフェイ
「…………」
ティモフェイ
わずかに眉を上げた。
小鴨 チカ
「だから、見守っててくれ」
小鴨 チカ
「……忘れない、から」
ティモフェイ
それから、
ティモフェイ
しずか、
ティモフェイ
ティモフェイ
わらう。
ティモフェイ
「……小鴨チカ」
ティモフェイ
「きみはやはり、普通ではないよ」
ティモフェイ
「ああ」
小鴨 チカ
「……うん」
ティモフェイ
「救世主に、ふさわしい――」
ティモフェイ
「きみのような」
ティモフェイ
「他人を想う心を正しく持つ者こそが」
ティモフェイ
「正しく世界を救い得るのだろうな」
小鴨 チカ
「やめてくれ。縁起でもない」
マキナ
「チカくんは、チカくんです」
マキナ
「救世主とか、世界とか、関係ない」
ティモフェイ
「…………」
マキナ
「私が、大好きな」
マキナ
「ひとりの、男の子です!」
noname
『ティモフェイ』
noname
『あなた、ずいぶん背負いすぎているみたいだけれど』
noname
『結局1人の人間に過ぎないこと、忘れてない?』
noname
『あなたはあなたでしかないのよ』
noname
『ティモフェイ』
noname
『救世騎士でもなければ、■■■■につらなる者でもない』
noname
『ただの普通のあなたを』
noname
『私は、愛したわ』
ティモフェイ
こえを。
ティモフェイ
愛した女の声を聞きながら、意識がゆっくりと遠のいていく。
ティモフェイ
手は届かない。
ティモフェイ
救いたいと願った唯一の手を、掴めることは二度とない。
ティモフェイ
唯一。
ティモフェイ
頑なに握りしめた救世のためのつるぎだけ、
ティモフェイ
男は最後まで、手放すことをしなかった。


・・・6号室・・・


その部屋に招かれた二人の敗退が決まったころ。

きらり。
部屋に置かれて光るものがある。

2人が堕落の国をさまよっても、もしもたどりついたのがオールドメイドゲームでなければ。

もしも参加したのがこの回のトーナメントでなければ、

2回戦で戦うことになったのが「あの」ふたりでなければ…

ここにはなかったもの。

巡り合ったのは
女王の『ミラリア』
鏡の『アリシア』。

6号室で光るもの。
それは、トイが2回戦で拾い上げた… 

真実の鏡の欠片。


・・・鏡の中に、雪が降る。


『…待ってください、…』

『どうか、どうか慈悲を。』


『お願いします。
 後一年…後一年だけ…順番を遅らせて…』

懇願する大人の声。大人たちの話声。はげしく咳き込む女の声。…

『去年も同じことを仰られました…』

『わかってください』

『…ふさわしいものなら
 他にもいるでしょう!』

『年長者を差し置いて
 子供を捧げるなど、
 おかしいではありませんか』

ドン、と机をたたく音。

『…あなたがたに免じてもう2年…
 慈悲ならばかけたはずです!』


『あの子が一番、望まれている』


…こことは違う雪降る世界の光景。

車が動き出す。

『屋敷についたら、
儀式までの一週間。
もてなしてくれるんだって… 
楽しみだなあ』

大人たちの悲壮さを悟る事の出来ない、どちらかというと楽し気な高く子供らしい、澄んだ声。

『すさまじいごちそうとか出るかも。
うらやましい?』

『………ごめんなさい。本当に、…』

『?』

『間に合わなかった。』

『このような犠牲を払わなくとも、人々が生きていける方法を私ならば解き明かす事が出来る、と信じて…』

『だけど間に合わなかった』

『私は、間に合わなかった…』

『……それじゃあ』

『これからもその研究を続ければいつか解るよ。兄さんは世界一賢いんだもん』

『母さんが…』

『お母さんが?』

『あなたを身ごもって、』

『父のいないあなたを』
『子供のように育ててきました』

『……』

こどものガラス玉のような目が、兄を見つめる。兄はすっかり青ざめ、とても具合が悪そうだ。

『あなたは純粋であったから 私はいつも不安でした』

『いつか…』
『いつかこのような日が来ると』

『かなしそうな顔しないでよ』

『だれかが神様にお願いしに
行かなきゃいけないって聞いた』

『なんか名誉なことだって聞いたよ。』

『名誉など…欺瞞です。
犠牲を強いる神がいるのならば、
この世界は邪神に支配されている。』

『兄さんはそんなんだから
清らかじゃないって言われるんだよ~』

からかうような笑い声。

『ほら、考えよう?いいことを』

『春が来たら、お母さんの咳も良くなるかな』

『春が来たら、ユージンさんちのお店も繁盛するね』

『クヴァエフさんちの農場の羊に子供が生まれるかも』

『ゼレノフのじーちゃんばーちゃんも雪下ろしキツイって言ってたし』

『となりのマイヤ姉ちゃんの結婚式に花が飾れる』

『アリーサは…』

『アリーサ?』

『学校で隣の席の子。かわいいんだ。
この前手作りのケーキをくれた』

『あかるい春の服で遊べるよ。
アリーサのお母さんが縫ってくれるよ。』

『冬のままじゃ、みんな防寒着でもこもこ。』

『グレープとキールとマルクは…』

『あなた友達が多いですよね』

『兄さんが変わってるんだよ。
部屋にこもって勉強ばっかり』

『異論なしです。』

『…春が来たら、また兄さんの部屋の窓に燕が巣をつくりに来るかな?』

『春が来たら、たのしみなことばかりだよ』

『みんなが待ち望んでる。』

『悲しいのより楽しいのが好きなんだよ。
悲しいのは、好きじゃない』

青ざめた兄が、弟を抱く。

・・・、


やがて車は荘厳な屋敷の前にさしかかる。
塀の中にまだ、春のある特別な場所。

騎士の館。


『わあ…!』

弟が車窓に顔を貼り付けて、館を眺める――

庭先に、救世騎士の一族が段取りの確認か、なにかをしているのが見える。

ふとその中に、子供がいる事に目が留まった。

自分よりは大人びた…3,4歳くらい年上の少年。

 

『あ…!』

『兄さん、あの子…』

自分に似ていたような。

よくは見えなかったけど…

『見てなかった?』
『…同じ年ごろの子がいたんだよ』

『ちょっと年上っぽかったけど、でも子供だ』

あの子が自分の儀式を執り行うのだろうか。それとも、血族の手伝いに来たのだろうか。

『…………』

『……友達に、なれるかな?』

『一週間もお屋敷にいるのに、遊び相手がいないと退屈だもん』

期待を口にして、すぐさま、う~ん、とうなる。

『でもやっぱり』

『高貴な騎士の子とはぜんぜん話とかあわないのかなあ』


いずれにしても。


『また後で会えますよ』

兄が弟の頭をなでる。

車はやがて止まる。
兄弟は手をつないで、広大な屋敷の敷地の端を歩く…

その時だった。

その後だった。

………

……

トイトロールを名乗る男は、子供の頃に人さらいにさらわれた。

さらわれた時…
どうしてあそこにいたのか、
なにをしていたのか、


『儀式の生贄になるべく、
 騎士の館に向かっていた』のだ。


変転、いくどめかの。

ティモフェイに似ていたから、
人生の不幸ははじまった。

ティモフェイに似ていなかったら、
その節の生贄になって、人生を終えていた。

そも、その不幸。
傷つけたのは、民衆の悪意だ。
ティモフェイがきずつけたわけではない。

ティモフェイのせいではないんだ。


ティモフェイのおかげで生かされた命だった。



母の名前はタマラ・フロル

兄の名前はブータン・フロル

弟の名前は…


…… 真実を知るのは、鏡の欠片だけ。
メイド8
「――ティモフェイ様、判決は昏倒!」
メイド6
「客室6号室、トイトロール様は死刑、ティモフェイ様は昏倒」
メイド8
「勝者、8号室」
メイド8
「チカ様、マキナ様」
マキナ
──勝者、8号室
マキナ
その言葉をきちんと飲み込むのに、時間がかかった。
小鴨 チカ
「…………マキナさん、下がって」
マキナ
「…………え?」
小鴨 チカ
「まだだ」
小鴨 チカ
「亡者が……出る……」
マキナ
まだ?
マキナ
だって、もう……
マキナ
……ああ、
マキナ
そうか。
マキナ
また、あれを見るのか。
マキナ
チカに従って下がろうとして、
マキナ
足がもつれる。
ティモフェイ
血まみれの騎士の身体が、中庭に横たわっている。
小鴨 チカ
支える。
マキナ
支えるチカに、ぐったりと凭れかかる。
小鴨 チカ
「メイドさん」
マキナ
無理して立ち続けた身体のどこにも力が入らない。
小鴨 チカ
マキナさんも限界だ。
小鴨 チカ
身体はもちろん、心の方も。
メイド8
頷く。
メイド6
血に濡れた客室6号室付きのメイドが、真っ直ぐティモフェイの元へ歩む。
メイド6
腰に下げた剣を執る。
ティモフェイ
男の身体は動かない。
ティモフェイ
メイドを見返しもしない。
ティモフェイ
生贄と対称に、力なく横たわっている。
メイド6
突き立てる。
ティモフェイ
血が溢れる。
メイド6
心臓を貫くその一撃は、救世主を繋ぎ止める何かを断ち切った。
メイド6
剣を引き抜き、下がる。
メイド6
血に濡れた剣を手にしたまま。
ティモフェイ
――最後まで、逡巡があった。
ティモフェイ
ティモフェイが決勝戦に至って身にまとった騎士としての装束。
ティモフェイ
それは、救世騎士として民に接するときの、いうなれば普段着だ。
ティモフェイ
世界を救う儀式を遂行するための、
ティモフェイ
正装では、ない。
ティモフェイ
生贄と同じように心臓を抉られて。
ティモフェイ
されど神に捧げられることなき魂に、雪が降る。
ティモフェイ
風が吹き抜け、まとった雪が、
ティモフェイ
その正装を形づくる。
ティモフェイ
雪が血を覆い尽くし、そそいで、きらびやかな装飾となって。
ティモフェイ
はかなくもうつくしい生贄を神に捧げるにふさわしい、救世騎士の装束。
ティモフェイ
それを。
ティモフェイ
それを結局、ここに至るまで、まとえなかった。
ティモフェイ
生贄を殺すことを拒んでいた。
ティモフェイ
 
ティモフェイ
これ以上。
ティモフェイ
誰も殺したくは、なかった。
ティモフェイ
 
ティモフェイ
その想いも今は遠く。
ティモフェイ
騎士は亡者となり、その場に佇む。
ティモフェイ
虹を放っていたうつくしいステンドグラスの儀礼剣は、
ティモフェイ
いつしか光を失って。
ティモフェイ
そうして顔にはつるりとした豚のマスク。
ティモフェイ
自分こそが、
ティモフェイ
ああ、自分こそが、
ティモフェイ
その辱めを受けるべきだったのに。
ティモフェイ
その想いも、散り果てた。
ティモフェイ
亡者が立ちあがる。
メイド6
鋭利な剣を垂直に立てて構える。
ティモフェイ
息絶えた生贄の隣に亡者が立つ。
ティモフェイ
何もかもを殺すことを拒み、
ティモフェイ
救いたかった者にただ寄り添うだけの、
マキナ
呆けたようにそれを眺める。
ティモフェイ
狂った救世主がそこにいた。
小鴨 チカ
──……。
マキナ
身に纏った正装の意味も知らずに、ただ見ている。
メイド6
その刀身は空からの光に濡れている。
メイド6
「トイトロール様、ティモフェイ様」
メイド6
「最期までよく、戦いましたね」
メイド6
突き刺す。
ティモフェイ
返答はない。
ティモフェイ
貫かれる。
ティモフェイ
抵抗も、ない。
メイド6
突き刺す、突き刺す、突き刺す――数えて8度。
ティモフェイ
再び血にまみれた救世騎士。
マキナ
──ああ。
マキナ
この人は、チカくんが殺すことにならなくてよかった。
マキナ
思ったのは、そんなことだった。
マキナ
既に一人殺しているのに。
メイド6
客室6号室の救世主の身体から引き抜いて、剣を納める。
マキナ
この人だって、自分たちのせいで死ぬことにかわりないのに。
ティモフェイ
八度貫かれた身体は再びゆっくりと傾いで、
ティモフェイ
仰向けに倒れて、
マキナ
ここに来るまでに、もう4人も、死んでいるのに。
ティモフェイ
そらをあおぐ。
ティモフェイ
マスクの下の瞳が何を映しているかはわからない。
ティモフェイ
けれどその視線の先には、
ティモフェイ
うつくしい青空の色が、
ティモフェイ
いつか見た花と同じ色の空が、広がっていた。

 
メイド6
「刺剣の館」
メイド6
「ここは死に場でございます」
メイド6
チカ、マキナに背を向けたまま言う。
メイド6
「どこにも辿り着かなくなってしまった、死んだコインの降り積もる場所。いかなる孤独な魂にもここは開かれているのです」
メイド8
「オールドメイドゲームという儀式は積もり積もったその全てを焼却し、再び力へと還元する儀式」
メイド8
「その際に生まれる限りの無い炎を奇跡とし、勝者であるあなたがたは願いをそれぞれ一つずつ、叶えることが出来ます」
メイド8
客室8号室のメイドは、チカとマキナを真っ直ぐ見据え。
メイド8
「伺いましょう。チカ様、マキナ様」
メイド8
「あなた様の願いは、何でしょうか」
マキナ
「ねが、い……」
小鴨 チカ
「…………」
小鴨 チカ
「ひとつめは……マキナさん」
小鴨 チカ
「マキナさんの疵を……癒したい」
小鴨 チカ
「マキナさんも、それでいい?」
マキナ
気だるげな、ひどく緩慢な動作で、チカを見る。
マキナ
それから、これもまた力なく。
マキナ
「……うん」
マキナ
頷く。
小鴨 チカ
「……もうひとつも、ぼくが言っていいかな」
マキナ
「…………ん」
メイド8
頷く。
小鴨 チカ
「願う」
小鴨 チカ
「飢え、腐敗、苦しみ、亡者、決闘による死。世界の歪さを、不幸の連鎖を断ち」
小鴨 チカ
「奇跡の力で、全ての人を『救済』する」
小鴨 チカ
「……これで、お願いします」
マキナ
もはや頷くこともせず、
マキナ
ただチカに身体を預けている。
小鴨 チカ
あーあ。ソラで言えちゃったよ。
小鴨 チカ
この前、胡散臭いつって吐き捨てた願いだ。
マキナ
血を流し、雪にまかれたマキナの身体はひどく冷たい。
小鴨 チカ
万人への救いなんか存在しない。それが「ぼくたち」を救うかが大事。この世界のことは、どうでもいい。
小鴨 チカ
はず、だったんだけどなあ。
マキナ
だけど、確かにまだ命の暖かさを残していて。
マキナ
チカの暖かさも、感じられる。
小鴨 チカ
トイトロール。
小鴨 チカ
この世界を救ったのは、救世騎士じゃなかったけどさ。
マキナ
生きている。
小鴨 チカ
忘却の国を知ってる。悲鳴を聞いた記憶を、引き継いだ。
小鴨 チカ
だからまあ……これが精一杯だ。妥協しておくれよ。
マキナ
彼らが救済を願っていた、
小鴨 チカ
いいだろ。君だって最後に、ひっでぇ事してくれたんだから。
小鴨 チカ
……はあ。
マキナ
チカがたった今救済を告げた世界で、
マキナ
これからも生きていける。
小鴨 チカ
ぼくらの屍を乗り越えて、尊い犠牲風にまとめられて、他のやつらに幸せになられてもぜんぜん嬉しくないとか。
小鴨 チカ
自分で言っといて、クソみてえなブーメランだ。
小鴨 チカ
けっきょく、託されたとことをやりきっても自己満足なんだよな。死んだほうは知る由もないし。
小鴨 チカ
でも、まあ。ちょっと……気持ちは、わかったよ。
小鴨 チカ
わがまま通すために殺して、ごめんな。
メイド8
「承りました」
小鴨 チカ
「まったくさ。東京を知らないやつの文面だよね」
小鴨 チカ
「このお願いじゃ、インターネットも開通しやしない」
メイド8
「……どうもありがとうございます」
メイド8
深々と頭を下げる。
小鴨 チカ
「……んーん」
小鴨 チカ
「おつかれさまでした」
メイド8
「……いえ、まだです」
メイド8
「私には、まだ仕事が残っております」
マキナ
「……?」
メイド8
チカ、マキナの眼前から翻り、客室6号室のメイドの元へ。
マキナ
視線だけで、それを追う。
メイド8
剣を執る。
メイド8
鋭利な切っ先を垂直に立てて構える。
小鴨 チカ
「6号室のメイドさん」
小鴨 チカ
「……ありがとね」
マキナ
……ああ、そっか。
マキナ
客室付きのメイドは
マキナ
その部屋の救世主と運命を同じくする。
メイド6
「礼には及びません。私たちは刺剣の館のメイドでございます」
小鴨 チカ
「アルバム、大事にする」
メイド6
「どうもありがとうございます」
メイド6
「ああ」
メイド6
「頼まれていた写真の方はアルバムの最後のページに挟ませていただきましたので」
メイド6
「後ほどご確認いただければ幸いです」
小鴨 チカ
「……ふふっ」
マキナ
「……ほんとに、たしてくれたんだ……」
マキナ
笑いたいのに、そんな元気もなかった。
メイド6
対面した客室8号室のメイドに頷く。
メイド8
スペードを模した剣が、客室6号室のメイドを貫く。
メイド6
胸を貫かれたメイドは支えを失い、その場に崩れる。
メイド6
客室6号室のメイドが最期に見上げるのは、青空。

 
メイド8
「捨て札、切り札、上がり札」
メイド8
「手に手をとって、折り重なって」
メイド8
「最後に残るはスペードのQ」
メイド8
「こぼれて外れた奇跡の欠片」
メイド8
「集めてまとめて」
メイド8
「――客室8号室の救世主」
メイド8
「チカ様、マキナ様のために」
メイド8
剣を引き抜く。
シャルル
「おーい、小鴨 チカ……さん!様!」
小鴨 チカ
「……!」
小鴨 チカ
「え、あ、ぼく!?」
シャルル
5号室のバルコニーから、手を振る。
小鴨 チカ
様!?
小鴨 チカ
……シャルルさん。
シャルル
「その救済って、俺達も助けてもらえるんですかねー!」
シャルル
叫ぶ。
小鴨 チカ
息を吸う。
小鴨 チカ
「……あったりめえよぉ!」
シャルル
「ひゅー!太っ腹!この、優勝者!救世主の中の救世主!」
小鴨 チカ
「うるせえ!ありがとう!!!」
小鴨 チカ
シャルルさん。
小鴨 チカ
あなたは気付いてないかもしれないけど。
小鴨 チカ
ぼく、あなたにメチャクチャ救われたんだ。
小鴨 チカ
マキナさんの方を見る。
小鴨 チカ
「マキナさん」
小鴨 チカ
「……ごめん」
マキナ
「……」
マキナ
「……?」
マキナ
「なにが……?」
小鴨 チカ
「願いは、ふたつ」
小鴨 チカ
「ひとつは、マキナさんの疵を治すこと」
小鴨 チカ
「ひとつは、世界を救うこと」
小鴨 チカ
「ぼくは……」
小鴨 チカ
「もう、普通には戻れないんだ」
マキナ
「……っ、」
小鴨 チカ
「ぼく、わかったよ」
小鴨 チカ
「自分が何者なのか、理解した」
小鴨 チカ
「──ぼくは、救世主だ」
小鴨 チカ
「ぼくの壊れた心の疵は……“順応”だ」
マキナ
「……なに、いってるの」
小鴨 チカ
「これは」
小鴨 チカ
「ここに来て、救世主になってから育った異常性だ」
マキナ
「……チカくんは、チカくん、だもん」
小鴨 チカ
「……」
マキナ
「あのね」
マキナ
「ふつうじゃなくて、いいよ」
マキナ
「マキナも、もう普通じゃないから」
マキナ
「戻れないから」
小鴨 チカ
「……」
小鴨 チカ
「順応って、なんだろうな?」
小鴨 チカ
「状況に合わせて見の振る舞いを変えるのは、動物の本能的な行動だよな」
小鴨 チカ
「デスゲームに順応して人を殺せるようになるのって……そこまで異常なことかな?」
マキナ
「……」
小鴨 チカ
「多分さ、生きるためにどうしても必要だったら、普通の人間でも割と出来るんじゃないかな。それって」
小鴨 チカ
「心の疵になるほどの順応って、どんな順応だと思う?」
マキナ
「……そうしないと、生きられなかったよ」
小鴨 チカ
「……元々、ぼくは狂人ってほどのもんじゃなかった」
小鴨 チカ
「普通に生きられるとはとても言えないけど、ちょっと病院に通う程度の……よくいる奴」
小鴨 チカ
「抱えてた問題のひとつは、女の人が苦手なこと。ひとつは、ビビリなこと。まあ……第一印象で分かるよな」
小鴨 チカ
「女の子関連のことは……もうさんざん話したっけ。じゃあ、もう片方はどうだろう」
マキナ
「……うん」
小鴨 チカ
「ぼく、暴力が苦手なんだ。ここに来るまで、喧嘩なんか一度もしたことない」
マキナ
「…………っ」
小鴨 チカ
「……言ったっけ。知ってる?」
マキナ
「見たら、わかるよ」
小鴨 チカ
「そっか」
小鴨 チカ
「でもそれさ、多分マキナさんが思ってるより、マジなやつなんだよ」
小鴨 チカ
「蚊が叩けなかった。道端のアリを踏んだ時、辛くて……しばらく寝込んだことがある」
小鴨 チカ
「家に踏み込んだ虫を逃がすとき……虫に触ると虫が弱るかも、って考えちゃって、出来ない」
マキナ
「…………そう、なんだ」
小鴨 チカ
「人なんてもってのほかだ。でこぴんもしっぺも、殴るふりすら出来ないんだよ」
小鴨 チカ
「ぼく、本物のビビリなんだ」
マキナ
「それ、なのに」
マキナ
そんな子を、私は
マキナ
自分が生き延びるために、人殺しに仕立て上げてしまったの?
小鴨 チカ
「……ちょっと突かれたり、脅されたりすると、泣きながら漏らすんだ。恐怖でさ」
小鴨 チカ
「ウケるだろ。学校で、殴りかかるフリをされると、漏らすんだぜ」
小鴨 チカ
「泣きながら教室のど真ん中でさ、しょんべんとうんこ垂れ流すんだよ」
マキナ
「…………」
マキナ
「……こわかったね」
小鴨 チカ
「そんなヤベエやつ、さすがにマキナさんも会った事ないだろ」
小鴨 チカ
「でもってさ。殺し合いの舞台に来てさ」
小鴨 チカ
「殺し合いなのに」
小鴨 チカ
「……ぼくが漏らしたとこ、見たことないだろ」
マキナ
今まで彼が感じた恐怖もいたわるように、力の入らない腕を回す。
マキナ
「……うん」
小鴨 チカ
「あきらかに殺し合いに不向きな性格を、なんとかしなくちゃならなかった」
小鴨 チカ
「だから、変えたんだ。性格の方を」
小鴨 チカ
「裁判までに、人を殺せる人間にした」
小鴨 チカ
「ちょっと難儀したけど、無事に……殺せた」
マキナ
「……そんな、こと」
小鴨 チカ
「今度は、見境ないスケベが都合が悪かった」
小鴨 チカ
「マキナさんの信用を得るにも、疵を舐めるにも、敵の術にハマらないためにも」
小鴨 チカ
「ぼくは、マキナさんに一途な性格になった」
小鴨 チカ
「下半身直結、緊張しいで、女子が苦手な童貞をさ」
小鴨 チカ
「マキナさんを落とせるような性格に、変えたんだ」
マキナ
「…………」
小鴨 チカ
「……まともな恋愛ができないのはね、ぼくの方なんだよ」
小鴨 チカ
「元の小鴨チカが。あんな気弱な人間が……このトラウマを抱えて、生きてけるわけがない」
小鴨 チカ
「たとえマキナさんが一緒に居てくれてもダメだ。心が壊れる」
マキナ
「……うん」
小鴨 チカ
「もう、だめになっちゃったんだよ、元のぼくは」
小鴨 チカ
「今の、このぼくじゃないとダメなんだ」
マキナ
「そっ、か」
小鴨 チカ
「ぼくの疵は、もう治せないんだ」
小鴨 チカ
「抵抗なく人が殺せるような奴」
小鴨 チカ
「状況に合わせて心が変わるような奴」
マキナ
「……うん」
マキナ
「うん」
小鴨 チカ
「マキナさんが一緒に生きるのは、そんな相手なんだ」
マキナ
「うん」
小鴨 チカ
「……不安なんだ」
小鴨 チカ
「マキナさんは、ぼくのこと、本当に怖くないって、思ってくれるかな」
小鴨 チカ
「マキナさん。好きだよ」
小鴨 チカ
「本当なんだ。全部捧げられるくらい好き」
小鴨 チカ
「ぼくはマキナさんと一緒に生きたい。それは一生変わらない気持ちだ」
マキナ
「…………っ」
小鴨 チカ
「……だけど、ぼくは自分を変えることができる」
小鴨 チカ
「それって怖いよな。信じるの」
マキナ
「わたし、」
マキナ
「私も、チカくんが好き!」
マキナ
「変わっても、それでも」
マキナ
「だってそれも、私のためじゃん!」
マキナ
「怖いわけない!」
マキナ
縋り付く。
マキナ
「好き」
マキナ
「好き、大好き」
小鴨 チカ
「……マキナさん」
マキナ
「一緒にいて」
マキナ
「ずっと、一緒にいて」
小鴨 チカ
「マキナさん。マキナさん……」
小鴨 チカ
「……」
小鴨 チカ
「うん」
マキナ
チカに抱きついて、泣きじゃくる。
小鴨 チカ
「いる……」
小鴨 チカ
「ずっと!一緒に!」
小鴨 チカ
「うおああああああああーーーー!!!!!」
マキナ
「チカくん」
マキナ
「チカくん、チカくん……っ」
小鴨 チカ
「優勝だ!!!!!」
小鴨 チカ
「終わりだ!!!!!!」
マキナ
「うん、うん……!」
小鴨 チカ
「もう、誰も殺さねーぞ!!!!!」
マキナ
「うん!」
マキナ
「チカくん」
マキナ
「がんばったね」
マキナ
「えらかったね」
小鴨 チカ
「ぼくたちが最強だ!!!!!!!!!!」
小鴨 チカ
「チクショーめがー!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
マキナ
「ありがとう、」
マキナ
「チカくん……」
メイド8
――そして、燃える。
メイド8
客室6号室のメイドの亡骸が。
メイド8
その傍に倒れ伏す、同じく客室6号室の救世主の亡骸が。
メイド8
館の奈落に投じられた、
メイド8
客室1号室、客室2号室、客室3号室、客室4号室、客室7号室のメイドと、救世主の亡骸が。
メイド8
そして無数の、無数の、どこにも至ることのなくなった、6ペンスコインが。
メイド8
辺りは熱のない炎に刹那、包まれる。
メイド8
そして、願いは果たされる。
[ マキナ ] HP : 9 → 23
[ マキナ ] 前科 : 6 → 0
[ マキナ ] 小鴨チカ チカ : -1 → 1
[ マキナ ] 傷痕 ティモ : -1 → 1
メイド8
マキナの疵はすべて癒えました。
メイド8
何一つ欠けることなく。
マキナ
「…………、」
小鴨 チカ
「マキナさん!」
マキナ
見ないでも、それがわかる。
マキナ
ずっと身体に感じていた違和感。
マキナ
不快感。
マキナ
それが、消えている。
マキナ
一生消えないのだと思っていた、それが。
小鴨 チカ
「体は?」
マキナ
「…………」
マキナ
「……か、」
マキナ
「らだ」
マキナ
「……っ、」
マキナ
「なおった、」
小鴨 チカ
「なおった!?」
マキナ
「治ったよ……!」
小鴨 チカ
「~~~~~~~~」
小鴨 チカ
「よがっだぁーーーーーー!!!!!!」
マキナ
「……っ、」
マキナ
「あ、」
マキナ
「ありがとう、」
マキナ
「チカくん……!」
マキナ
「ありがとう」
マキナ
「ありがとう……!」
小鴨 チカ
「うわ~~~~~!!!」
マキナ
つよくつよく、チカを抱きしめる。
小鴨 チカ
「帰ったら、手を繋いだり、触れ合ったり」
小鴨 チカ
「全力でいちゃつきたい!!!!!!」
小鴨 チカ
ん?
小鴨 チカ
帰る?
小鴨 チカ
帰るって……
小鴨 チカ
あ。
小鴨 チカ
「……館……」
小鴨 チカ
「おじゃましても、いいですか…………」
メイド8
「もちろんでございます」
メイド8
「晴れてオールドメイドと成った身。次の儀式の開催まで、することと言えば館の掃除だけでございますから」
マキナ
「……ありす様の屋敷」
マキナ
ぽつり、と。
マキナ
「……あ」
マキナ
「もう、だいじょうぶ、か」
マキナ
「私が」
マキナ
「救世主がいなくても、みんな……」
小鴨 チカ
「ウオーーーー!!!」
小鴨 チカ
「あやうくホームレスになるとこだった!」
小鴨 チカ
「ありがとうございます!!!」
小鴨 チカ
「うさみみたちにも、会いに行きたいなあ!」
マキナ
「……うん」
マキナ
「……昨日、来てなかった子もいるから」
マキナ
「わたし、謝りたい……」
小鴨 チカ
「行こう。全部やろう」
小鴨 チカ
「今日は寝て、ゆっくり休んで」
小鴨 チカ
「明日も明後日もある」
小鴨 チカ
「生きてんだ、ぼくら!」
マキナ
「…………っ」
マキナ
「ん、うん」
マキナ
「生きてる、」
マキナ
「これからも、生きていける」
マキナ
普通じゃなくて
マキナ
傷ついていても
マキナ
「一緒に」
マキナ
「一緒、に」
小鴨 チカ
「一緒に!!!!!!」
小鴨 チカ
「覚悟しろ!いつかマキナをオガモにしてやる!」
マキナ
「……!?」
小鴨 チカ
「がおーーーー!!!!」
マキナ
「……ま、」
マキナ
「まってます……?」
メイド8
メイド8
空は晴れたり曇ったり。
メイド8
雨が降ることもあれば雪が降ることもある。
メイド8
海は青々とした海水となり、無数の魚が波間に泳ぐ。
メイド8
草木は生い茂り、色とりどりの花が四季に応じて咲き誇ります。
メイド8
町や集落は点々と存在し、民草は壮大で豊かなこの国で、日々を過ごしています。
メイド8
何よりの脅威であった亡者の群れもまた儀式の炎によって焼却され、二度と生まれることはないでしょう。
メイド8
拝啓、アリス。
メイド8
愛しいアリス。
メイド8
きみが目を醒ましてから長い月日が流れました。
メイド8
ぶっちゃけ、この国はもう駄目――というところで、
メイド8
猟奇と才覚、愛を携えた新たなアリスが、
メイド8
この世界をどうにかしてくれました。
メイド8
めでたし、めでたし。
メイド8
メイド8
メイド8
メイド8
Dead or AliCe
メイド8
『16人の救世主』
メイド8
おしまい。