Dead or AliCe
『16人の救世主』

2日目

GM
*2日目開始*
GM
*マスターシーン*
GM
どこにも行き着かない恋であっても。身体の行き着く先はある。
GM
桟敷川映鏡が女の身体を抱えて客室に戻った時、そこには1号室のメイドが待ち構えていました。
GM
そして桟敷川の後ろから、8号室のメイドが部屋に入る。その背後に8号室の救世主二人も引き連れて。
桟敷川映鏡
寝台に女を横たえ、それを見ている。
桟敷川映鏡
部屋に面々が入ってくればそちらへ視線を向けた。
匕首咲
眠るように静かに横たわる死体。
救世主といえども、頚椎を切断されては生きていられない。
マキナ
「……」戸惑いの様子を隠せないまま、メイドに連れられて部屋の中へ。
小鴨 チカ
「…………」
桟敷川映鏡
「処遇のほどは決定で?」
桟敷川映鏡
メイドに話しかける。
メイド1
「────まずは、皆様方。お集まり下さり有難うございます。」
メイド1
「現在、少々特殊な事態が発生しそうな状況ですので。説明を、と」
マキナ
特殊な事態。連れてこられる際にも、そう聞いた。
小鴨 チカ
「──はい」
小鴨 チカ
といっても、わからないことだらけだ。
マキナ
お茶会の最中にメイドがこうして介入してくることは──見てきた限り、なかったはずだ。
小鴨 チカ
今、どういう状態だ?あの後、何があった?これから、どうなる?
匕首咲
ベッドには、女がただ横たわっている。
僅かな血痕と共に。
マキナ
横たわる咲に目を向ける。
小鴨 チカ
死んでる…………のか?
マキナ
そのように見える。
GM
女の血色は悪い。
GM
今、この時もそれは進行しているように見える。
マキナ
見えるが、しかし。まさか。

マキナ
だって、ほんの先刻まで一緒にテーブルを囲んで、話をしていて。
マキナ
誰かが死ぬ時があるならばそれは裁判を迎えてからのはずで。
小鴨 チカ
この二人……儀式には望んで参加したはず。現に、ついさっきまでは、やる気に満ちていたように見える。
マキナ
二人を見失ってから今までの短い時間で、一体何があったというのか。
桟敷川映鏡
蒼褪めていく女の顔をただ見ている。
小鴨 チカ
……手を下したのが誰にせよ。
小鴨 チカ
少なくとも、目の前の彼は、この結末に絡んでいる。
小鴨 チカ
焦る様子もなく、彼女を救おうともしない。このまま、裁判で負けてしまっても構わないみたいだ。
小鴨 チカ
「……説明を、お願いします」
小鴨 チカ
続きを促した。
メイド1
恭しく一礼。それから、言葉を続ける。
メイド1
「説明というのは、このオールド・メイド・ゲームにおいて。救世主の方が、お茶会の最中に自らのペアを殺害した場合の処遇についてです」
マキナ
「…………」
小鴨 チカ
やっぱり、さじき川さんが匕首さんを殺したのか。
メイド1
「それは戦うことの破棄、権利の破棄と見做され、敗北となります」
メイド1
「儀式参加前の棄権と異なり、客席から補充の救世主が割り当てられる事は無く、対戦者側の勝利が確定……」
小鴨 チカ
「……ぼくたちの、勝ち……?」
桟敷川映鏡
「おめでとうございます」
メイド1
「そのケースにおいては、そうなります」

マキナ
「勝ち……」
マキナ
どこかぼんやりと、その単語をなぞる。
マキナ
あまりにも急なことで、正直実感が伴わない。
マキナ
「……ん? そのケースにおいては、ってことは」
マキナ
「まだそうなってはいないと?」
マキナ
再び咲に視線を移す。
メイド1
その問いには、黙して語らず。
GM
ただ、動かない女の殻がそこにある。

メイド1
「……そして、ペアを殺害した救世主の処遇についてですが」
メイド1
「ペア同士は一蓮托生。片割れと同じ行末を……つまり、お亡くなりになって頂きます」
小鴨 チカ
そこは……事前に聞いてたルール通りだ。
メイド1
説明するメイドの腰には、レイピアがある。
小鴨 チカ
この人も……それを分かってて……
小鴨 チカ
「…………なんで、そんなことを……」
マキナ
なんで。その疑問はマキナもまた抱いている。
桟敷川映鏡
「殺したかった」
桟敷川映鏡
「それ以外の理由があるとでも?」
マキナ
「…………」
小鴨 チカ
「…………………………!」
マキナ
「殺したかった、って……」
マキナ
「……咲さんのこと、好きなんじゃないんですか?」
桟敷川映鏡
「知ってて聞くかね」
小鴨 チカ
「じゃあ、なんで……」
桟敷川映鏡
「茶が飲みたい、眠りたい、セックスしたい、誰かに認めてほしい、歌が聞きたい、遊んで暮らしたい……」
桟敷川映鏡
指折り人間の欲求をいくつか数えていく。
桟敷川映鏡
「ま、それと同じだわな」
小鴨 チカ
「! …………」
マキナ
「……殺したい、が」
マキナ
「それと同じ?」
小鴨 チカ
ぼくたちは、必要に迫られて殺している。
小鴨 チカ
殺さないで済むのなら、殺さない。
小鴨 チカ
殺したいと思ったことはない。
小鴨 チカ
まして、味方を。
マキナ
殺してしまえば、自分も同じ結末を辿るというのに。
小鴨 チカ
どうして、僕らじゃなくて、隣の匕首さんを。
マキナ
そんな刹那的な生き方を、
マキナ
マキナには理解できない。
桟敷川映鏡
「別に」
桟敷川映鏡
「死ぬのも殺すのも、大体は自由で」
桟敷川映鏡
「おれはそれを自分で選んでるってだけだ」
桟敷川映鏡
「なんだって、最後は自分で選びとるもんだろ」
マキナ
「……」
マキナ
「……そうですね」
マキナ
「……別に口を挟むつもりはありません」
マキナ
「あなた方が死んでくださって、それでマキナたちが勝てるっていうなら」
マキナ
「ええ」
マキナ
「楽な話です」
小鴨 チカ
「………………」
マキナ
マキナの視線はやはり、咲へと向けられている。
小鴨 チカ
マキナさんが言うことは……もっともだ。
マキナ
殺し合うかもしれないのに、自分を友だちだと言った少女。
小鴨 チカ
ぼくたちに危険もない。殺しもしなくて済む。その上、この結末をあっちが望んでる。
マキナ
同じ国から来た、同い年の、同じくらいの背丈の女の子。
マキナ
傍目にも分かるほどに、隣の男に恋をしていた女の子。
マキナ
今は動かない女の子。
マキナ
「……ええ」
マキナ
「こんなにいい話そうそうありませんよ」
小鴨 チカ
でも、マキナさんのその言葉は。
小鴨 チカ
どこか、自分たちに言い聞かせてるみたいにも聞こえる。
メイド1
「ペアを殺害した場合の処遇については説明した通りですが……」
メイド1
「それでは、お覚悟はなされていると判断しても宜しいでしょうか?」
もちろん、覚悟ができていないと答えた所で、メイドの行動は変わりはしない。
メイド1
ただ、何のアクションも無くてもいいのか、と、それを訴えかけている。
桟敷川映鏡
「どうぞ、いつでも」
メイド1
……その言葉を受けても、メイドは動かない。
メイド1
腰に佩いたレイピアに、触っても居ない。
マキナ
「……どうぞ、お好きに」
マキナ
「なさればいいんじゃないですか?」
メイド1
ただ、何かを待っている。
メイド1
「そうですか。では……その時が来たら、そのように」
桟敷川映鏡
「……君らの狂気に祝福あれ」
小鴨 チカ
「…………っ」
メイド1
2秒、3秒。しばらくの間の待機姿勢。
マキナ
「……」
メイド1
それから……その時が近付いたと判断したメイドが。
メイド1
腰のレイピアに手をかけ。
メイド1
一歩。桟敷川映鏡の傍へ寄る。

匕首咲
救世主といえども、頚椎を切断されては生きていられない。
匕首咲
生きていられない。
本当に?
匕首咲
びくり、と手が痙攣した。
マキナ
「……!」
小鴨 チカ
「!?」
マキナ
半歩、反射的に前に出る。
桟敷川映鏡
──
匕首咲
奇跡を起こす6ペンスコインは20枚。
心の疵は、恋の疵。
匕首咲
手が、伸びる。
匕首咲
「──映鏡は」
匕首咲
その背を掴む。
マキナ
しかしそれ以上近寄ることはなく、ただ二人の様子に視線を注いでいる。
桟敷川映鏡
「ここにおりますよ」
匕首咲
「他の女に、殺させない。
誰にも、渡さない」
小鴨 チカ
「…………………………っ、……!」
GM
この時。
GM
このタイミング。
GM
それは命運が動く時。
GM
各々の運命が決する時。
GM
つまりは
GM
裁判が下る時。