2日目
GM
どこにも行き着かない恋であっても。身体の行き着く先はある。
GM
桟敷川映鏡が女の身体を抱えて客室に戻った時、そこには1号室のメイドが待ち構えていました。
GM
そして桟敷川の後ろから、8号室のメイドが部屋に入る。その背後に8号室の救世主二人も引き連れて。
桟敷川映鏡
部屋に面々が入ってくればそちらへ視線を向けた。
匕首咲
眠るように静かに横たわる死体。
救世主といえども、頚椎を切断されては生きていられない。
マキナ
「……」戸惑いの様子を隠せないまま、メイドに連れられて部屋の中へ。
メイド1
「────まずは、皆様方。お集まり下さり有難うございます。」
メイド1
「現在、少々特殊な事態が発生しそうな状況ですので。説明を、と」
マキナ
特殊な事態。連れてこられる際にも、そう聞いた。
マキナ
お茶会の最中にメイドがこうして介入してくることは──見てきた限り、なかったはずだ。
小鴨 チカ
今、どういう状態だ?あの後、何があった?これから、どうなる?
匕首咲
ベッドには、女がただ横たわっている。
僅かな血痕と共に。
GM
今、この時もそれは進行しているように見える。
マキナ
だって、ほんの先刻まで一緒にテーブルを囲んで、話をしていて。
マキナ
誰かが死ぬ時があるならばそれは裁判を迎えてからのはずで。
小鴨 チカ
この二人……儀式には望んで参加したはず。現に、ついさっきまでは、やる気に満ちていたように見える。
マキナ
二人を見失ってから今までの短い時間で、一体何があったというのか。
小鴨 チカ
少なくとも、目の前の彼は、この結末に絡んでいる。
小鴨 チカ
焦る様子もなく、彼女を救おうともしない。このまま、裁判で負けてしまっても構わないみたいだ。
メイド1
「説明というのは、このオールド・メイド・ゲームにおいて。救世主の方が、お茶会の最中に自らのペアを殺害した場合の処遇についてです」
小鴨 チカ
やっぱり、さじき川さんが匕首さんを殺したのか。
メイド1
「それは戦うことの破棄、権利の破棄と見做され、敗北となります」
メイド1
「儀式参加前の棄権と異なり、客席から補充の救世主が割り当てられる事は無く、対戦者側の勝利が確定……」
マキナ
あまりにも急なことで、正直実感が伴わない。
マキナ
「……ん? そのケースにおいては、ってことは」
メイド1
「……そして、ペアを殺害した救世主の処遇についてですが」
メイド1
「ペア同士は一蓮托生。片割れと同じ行末を……つまり、お亡くなりになって頂きます」
小鴨 チカ
そこは……事前に聞いてたルール通りだ。
メイド1
説明するメイドの腰には、レイピアがある。
マキナ
なんで。その疑問はマキナもまた抱いている。
マキナ
「……咲さんのこと、好きなんじゃないんですか?」
桟敷川映鏡
「茶が飲みたい、眠りたい、セックスしたい、誰かに認めてほしい、歌が聞きたい、遊んで暮らしたい……」
桟敷川映鏡
指折り人間の欲求をいくつか数えていく。
小鴨 チカ
ぼくたちは、必要に迫られて殺している。
マキナ
殺してしまえば、自分も同じ結末を辿るというのに。
小鴨 チカ
どうして、僕らじゃなくて、隣の匕首さんを。
桟敷川映鏡
「おれはそれを自分で選んでるってだけだ」
桟敷川映鏡
「なんだって、最後は自分で選びとるもんだろ」
マキナ
「あなた方が死んでくださって、それでマキナたちが勝てるっていうなら」
マキナ
マキナの視線はやはり、咲へと向けられている。
小鴨 チカ
マキナさんが言うことは……もっともだ。
マキナ
殺し合うかもしれないのに、自分を友だちだと言った少女。
小鴨 チカ
ぼくたちに危険もない。殺しもしなくて済む。その上、この結末をあっちが望んでる。
マキナ
同じ国から来た、同い年の、同じくらいの背丈の女の子。
マキナ
傍目にも分かるほどに、隣の男に恋をしていた女の子。
小鴨 チカ
どこか、自分たちに言い聞かせてるみたいにも聞こえる。
メイド1
「ペアを殺害した場合の処遇については説明した通りですが……」
メイド1
「それでは、お覚悟はなされていると判断しても宜しいでしょうか?」
もちろん、覚悟ができていないと答えた所で、メイドの行動は変わりはしない。
メイド1
ただ、何のアクションも無くてもいいのか、と、それを訴えかけている。
メイド1
……その言葉を受けても、メイドは動かない。
メイド1
「そうですか。では……その時が来たら、そのように」
メイド1
それから……その時が近付いたと判断したメイドが。
匕首咲
救世主といえども、頚椎を切断されては生きていられない。
匕首咲
奇跡を起こす6ペンスコインは20枚。
心の疵は、恋の疵。
マキナ
しかしそれ以上近寄ることはなく、ただ二人の様子に視線を注いでいる。
匕首咲
「他の女に、殺させない。
誰にも、渡さない」