Dead or AliCe
『16人の救世主』

お茶会-2ラウンド目

メイド3
お茶会第二サイクルに入ります。
メイド3
今日はここまでとなりますが、行動順のダイスを振りましょう。
メイド3
1d99
DiceBot : (1D99) > 31
アリシア
1d99
DiceBot : (1D99) > 17
メイド3
を、ふってね!
ティモフェイ
1d99
DiceBot : (1D99) > 30
ミラリア
1d99
DiceBot : (1D99) > 71
トイ.
1d99
DiceBot : (1D99) > 25
メイド3
お茶会第二サイクル ミラリア>ティモフェイ>トイ>アリシア
メイド3

第1シーン:ミラリア

メイド3
お茶会 第2サイクル ミラリア
ミラリア
--------
ミラリア
お茶会は一日に渡って続く。故に、その時が訪れる。
夜。暗闇が窓の向こうを覆い尽くす、静謐の時。
ミラリア
何事もなく時が過ぎていく。何事もなく。
ミラリア
その時までは、そうだった。
---
──礼拝堂。
---
十字架の掲げられた、教会の場。救いを祈る場所。祈られていた場所。儀式の行われる、神性な場。
---
そこに。
---
あなたは、ティモフェイは呼び出される。突如として。
ティモフェイ
「…………」
ティモフェイ
闇に沈む礼拝堂に、
ティモフェイ
ひとり、
ティモフェイ
立ち尽くす。
ティモフェイ
これがどういう理屈であるものかはいまさらのこと、当然、理解しているが。
ティモフェイ
――気分が悪かった。
---
……拘束や、襲撃や、語りかけてくる声。そのようなものは、何もない。
---
ただ分断のために、呼び出されただけか。
---
そう考える余地もあったかもしれない。
---
違う。
---
重く、質量を持っているような青黒い霧が、礼拝堂の片隅に集まっている。
ティモフェイ
異様な気配に、視線をそちらに向けざるを得ない。
ティモフェイ
心の疵が疼く。
ティモフェイ
指先にひかりを集め、
ティモフェイ
虹を放つ儀礼剣を握りしめる。
ティモフェイ
かつて。
ティモフェイ
かつて自分が、
ティモフェイ
自らの意思で、生贄を屠ってきた、
ティモフェイ
世界を救うための得物を手に。
---
虹の輝きが、暗闇を照らす。
---
その奥にある者を、暴き出す。
---
人影を。
ティモフェイ
目を凝らした。
---
それは、女だ。
---
あなたには、見覚えのある。
---
いいや、あなたにしかない。
ティモフェイ
ひゅ、と、
ティモフェイ
喉の奥が不格好に鳴りかけたのを、抑え込む。
ティモフェイ
ここにはトイトロールはない。
ティモフェイ
自分一人しかいない。
ティモフェイ
だから雪など降るはずもなく、
ティモフェイ
けれど、
ティモフェイ
かつて見つめ続けた白い雪を幻視する。
ティモフェイ
その背中に。
---
一人。立っている。
---
白い肌が照らされている。
ティモフェイ
彼女の背後に、降り積もる雪がある。
ティモフェイ
彼女が晴らして温めたはずの世界が、
ティモフェイ
今は氷に閉ざされている。
ティモフェイ
くちびるが、
ティモフェイ
空虚に動いた。
ティモフェイ
「マルタ」
---
「………」
---
茶色の髪が揺れて、
---
振り向いた。
ティモフェイ
「――――」
マルタ
「ティモフェイ」
ティモフェイ
立ち尽くす。
マルタ
まるで鏡写しにしたかのような。
マルタ
本人と違わない姿の。あなたの恋人。
ティモフェイ
正しくその頭が、理性が、
ティモフェイ
正常な思考が働いていれば、即座に理解できただろう。
ティモフェイ
これは鏡だ。
ティモフェイ
失われたものは戻らない。
ティモフェイ
自分が手を下した彼女が、
ティモフェイ
殺したはずの、
ティモフェイ
愛していたはずの者が、今ここにいるはずがない。
ティモフェイ
二度と。
ティモフェイ
自分の名を呼ぶはずがないと、
ティモフェイ
理解、できるはずなのに。
ティモフェイ
その背に雪が降っている。
ティモフェイ
だから、
ティモフェイ
だから、
ティモフェイ
思考が凍る。
ティモフェイ
ただ目の前の、愛したはずの女の、かたちを見取る。
マルタ
変わらない姿。死んだはずのひとり。あなたが殺したはずなのに、確かなかたちでそこにある。
ティモフェイ
彼女を殺した得物は今も闇の中、
ティモフェイ
変わらぬ輝きでその頬を照らす。
ティモフェイ
一歩。
ティモフェイ
いざなわれるように、
ティモフェイ
一歩だけ、前に出た。
ティモフェイ
「――マルタ」
ティモフェイ
どうして、
ティモフェイ
なぜ、
ティモフェイ
あの時の、
ティモフェイ
自分は、
ティモフェイ
頭の中に乱れることばの断片はなにもかも形にならず、
ティモフェイ
唇を滑り落ちるは掠れた声だけ、
ティモフェイ
ただひとつ、
ティモフェイ
彼女の名前だけ。
マルタ
立っている。立ったまま。歩み寄ることをしないまま、そこにある。
マルタ
そして唇が、小さく開く。
マルタ
まるで氷のような、冷たい声が響く。
マルタ
「ティモフェイ」
マルタ
「どうして?」
ティモフェイ
「…………っ」
ティモフェイ
足が止まる。
マルタ
あなたが内心の疑問を発する前に。それはあなたに疑問を向ける。
ティモフェイ
内心の疑問ごと思考が凍りついて、ただ視線だけを返す。
マルタ
「どうして、わたしじゃなかったの」
マルタ
「どうして、やめたの」
マルタ
「どうして」
マルタ
「どうして、今も、今度こそなんて、言ってるの」
ティモフェイ
正しく。
ティモフェイ
彼女のことは、正しく、殺したはずだった。
ティモフェイ
それが正しいと信じていた。
ティモフェイ
誰よりも清らかな魂を、神に声を届けられるのは彼女以外になく、
ティモフェイ
そうしてあたためられた世界に訪れた春の息吹に、後悔などなかったはずで。
ティモフェイ
愛していた。愛していた?
ティモフェイ
違う、
ティモフェイ
違わない、
ティモフェイ
愛していたから。
ティモフェイ
愛していたからこそ、誤ってはならなかった。
ティモフェイ
愛を理由に逃れることはできず、
ティモフェイ
ゆえに、
ティモフェイ
最後には愛を見失って仕損じた。
ティモフェイ
彼女を殺して守ったはずのすべて。
ティモフェイ
すべてがなにもかも破綻して、
ティモフェイ
そうして堕落の国にまっさかさま。
ティモフェイ
そうだ。ここは堕落の国だ。
ティモフェイ
彼女は死んだ。殺した。殺したはずだ。
ティモフェイ
ここにいる彼女は、
ティモフェイ
「マルタ」
ティモフェイ
理解、
ティモフェイ
しているのに。
マルタ
「ティモフェイ……」
ティモフェイ
覚えている。
ティモフェイ
触れた頬の温かさを。
ティモフェイ
呼ぶ声の軽やかに弾むさま、
ティモフェイ
花のほころぶようなやわらかな微笑み、
ティモフェイ
時折拗ねて唇を尖らせるときは、
ティモフェイ
常にはない稚気を滲ませて。
ティモフェイ
そのすべてが、
ティモフェイ
今の目の前のおんなにはないのに、
ティモフェイ
けれどどうしようもなく、彼女はマルタだった。
ティモフェイ
自分が剣を突き立てて、殺した女だった。
マルタ
思考を、理解を、正しくあるべきものを、凍り付かせるように。あなたを呼ぶ声がする。
マルタ
冷たい冷たい、冷えた声。淡々とした声。
マルタ
かつてあったものの等しく喪われた、枯れた冬のような。
ティモフェイ
世界を凍らせる雪のような。
ティモフェイ
自分が忌み、彼女を犠牲に振り払ったはずのものを、
ティモフェイ
目の前のおんなはまとっている。
マルタ
「どうしてなの」
マルタ
「どうして、出来なかったの」
マルタ
「どうして、またやろうとしてるの」
マルタ
「どうして?」
ティモフェイ
「っ」
ティモフェイ
「お、れは」
ティモフェイ
雪が。
ティモフェイ
喉をこおりつかせる。
ティモフェイ
「違う」
ティモフェイ
「っ」
ティモフェイ
「違うと、思って」
ティモフェイ
違うと。
ティモフェイ
違わないと信じて、
ティモフェイ
信じて目の前のおんなを殺したのに?
ティモフェイ
ああでも明確に疑問を抱いたのはあの時だったのだ。
ティモフェイ
必要なことと、
ティモフェイ
それまでは必要な犠牲と、
ティモフェイ
名誉なことだと信じて生贄を捧げていたのに、
ティモフェイ
自分のよく知る、そのやわらかな胸元に、剣を突き立てて。
ティモフェイ
返り血に濡れる手のひらに、
ティモフェイ
初めて疑問を抱いていた。
ティモフェイ
『どうして』。
ティモフェイ
『どうして、命を捧げなければ』
ティモフェイ
『この世界は救われないのだろう』
ティモフェイ
『犠牲の上に成り立つ世界は、果たして正しいものなのか?』
ティモフェイ
などと。
ティモフェイ
愛したはずの女を殺したその瞬間になってやっと、
ティモフェイ
初めて。
マルタ
「違う?」
マルタ
「ねえ」
マルタ
「そんなの」
マルタ
「遅いよ」
マルタ
「遅いよ……」
ティモフェイ
反駁はない。
ティモフェイ
あまりにも、
ティモフェイ
あまりにも、
ティモフェイ
何度も繰り返し、噛み締めてきたことに相違なかったから。
ティモフェイ
「……俺は」
ティモフェイ
「俺は、きみを連れて逃げるべきだったか?」
ティモフェイ
「それとも」
ティモフェイ
「きみ以外を、選ぶべきだった?」
ティモフェイ
「きみが」
ティモフェイ
選んだのは、
ティモフェイ
自分だ。
ティモフェイ
ティモフェイがマルタを生贄に適任と判断し、
ティモフェイ
正しく儀を執り行って、彼女を殺した。
ティモフェイ
そうして春を招いた。
ティモフェイ
せかいが、
ティモフェイ
人々の喜びにわらう街を見た。
ティモフェイ
「きみがもっとも、求められていたんだ」
ティモフェイ
「それを知って」
ティモフェイ
「でも」
ティモフェイ
「きみは、俺の愛する人だから」
ティモフェイ
「だから、別の者を選ぶべきだったのか?」
マルタ
「───」
ティモフェイ
おんなの返答を待つ。
ティモフェイ
罰を待つ咎人のように、その頭を垂れて。
マルタ
「わたしは──」
マルタ
「わたしを選んでほしかった」
マルタ
「世界を、救うのでも」
ティモフェイ
「っ」
マルタ
「わたしを、救うのでも」
マルタ
「そのまま」
マルタ
「貫き通して欲しかった」
マルタ
「なのに」
マルタ
「なのに……」
ティモフェイ
ステンドグラスを模した、虹の儀礼剣が煌めく。
ティモフェイ
彼女を殺した時と同じ輝きだけが美しく、
ティモフェイ
だからこそ、虚しい。
ティモフェイ
奇跡が。
ティモフェイ
もしも、あるのなら。
ティモフェイ
過去を覆せるのなら。
ティモフェイ
たったひとつ、ただひとつ、望むことができるならば。
ティモフェイ
しかしティモフェイは正しく理解しているのだ、
ティモフェイ
自分は、
ティモフェイ
彼女を選ばない。
ティモフェイ
願わない。
ティモフェイ
彼女を取り戻すことを、望みはしない。
ティモフェイ
けれど、
ティモフェイ
目の前のおんなは、美しかった。
ティモフェイ
自分が愛したひとだった。
ティモフェイ
触れられるなら、
ティモフェイ
掴めるなら、
ティモフェイ
この腕に抱けるのならば。
ティモフェイ
そうしたいと、願っていた。
マルタ
「ティモフェイ……」
マルタ
その思考の隙間に。
マルタ
手が伸ばされている。ひどく緩慢に。緩やかに。
マルタ
細い指先が。あなたの。首に。
マルタ
振り払おうと思えば、簡単に振り払える、速度。
ティモフェイ
「っ」
ティモフェイ
ぎくりと、身がすくむ。
ティモフェイ
あまりにもゆるやかで、
ティモフェイ
あまりにも遅い。
ティモフェイ
降りしきる雪よりもなお緩慢な動作の、
ティモフェイ
その白く細い指先から。
ティモフェイ
逃れられずに立ち尽くす。
マルタ
冷えきった指先が、あなたの首を撫ぜるように掴む。
マルタ
「おかしいよ、ティモフェイ」
ティモフェイ
息が詰まる。
マルタ
「おかしいよ、もう」
ティモフェイ
気道が塞がれる。
ティモフェイ
しかしその指の感触が愛おしい。
ティモフェイ
その手に、
ティモフェイ
その手に殺されるなら、と、
ティモフェイ
頭の片隅が歓喜を得てしまう。
マルタ
「だから──」
マルタ
「これ以上は、やめよう」
マルタ
「偽物の希望を振りまくのも」
マルタ
「誰かの為を理由にするのも」
マルタ
「出来ないことを出来るって言うのも」
マルタ
「もう、やめて」
マルタ
指先に、緩やかに、少しずつ。
マルタ
力が籠もる。
ティモフェイ
その指が、
ティモフェイ
自分の肌を撫ぜる感触を知っていた。
ティモフェイ
あの優しい手とは似ても似つかないとも分かっている。
ティモフェイ
分かって、
ティモフェイ
ああ、分かっているのに!
ティモフェイ
「マ」
ティモフェイ
「ルタ」
ティモフェイ
「…………」
ティモフェイ
塞がれつつある喉の隙間から、
ティモフェイ
「すまない」
ティモフェイ
声を漏らす。
マルタ
灰の瞳が、あなたを覗き込んでいる。
マルタ
「いいよ」
マルタ
「いいの」
マルタ
「だから」
ティモフェイ
「すまない……」
マルタ
「だから──もう、」
マルタ
「死んで。」
ミラリア
ティモフェイの救世主失格を抉ります。猟奇で判定。
トイ.
*横やりします
メイド3
どうぞ!
トイ.
Choice[猟奇,才覚,愛]
DiceBot : (CHOICE[猟奇,才覚,愛]) > 愛
トイ.
2d6=>7 判定:愛
DiceBot : (2D6>=7) > 6[1,5] > 6 > 失敗
メイド3
失敗ですね。
メイド3
判定を。
ミラリア
2d6+3>=7
DiceBot : (2D6+3>=7) > 6[1,5]+3 > 9 > 成功
メイド3
成功です。


ティモフェイ
「すま、ない」
マルタ
力が。
ティモフェイ
唇が空虚に動く。
マルタ
加えられていく。
ティモフェイ
「すまない」
ティモフェイ
許しを乞う。
ティモフェイ
繰り返し、引き絞られる喉の隙間から、
ティモフェイ
か細い声で許しの言葉を吐き。
ティモフェイ
「すまない、マルタ」
ティモフェイ
「俺は」
ティモフェイ
「――きみの頼みを、聞けない」
ティモフェイ
虹剣が閃いた。
ティモフェイ
その腕を裂くように、得物が振り抜かれる。
マルタ
「………──」
マルタ
喉を突き飛ばす、俊敏な動き。
マルタ
一撃の被害は、かろうじて服が裂けるに留まる。
ティモフェイ
突き飛ばされてたたらを踏み、
ティモフェイ
背を丸めて何度も咳を繰り返す。
ティモフェイ
そうして顔を上げて、
ティモフェイ
目の前のおんなを、改めて見つめた。
マルタ
追撃を加えるでもなく、ただその様子を見届ける。
ティモフェイ
「……俺は、救世主などではなく」
ティモフェイ
「きみを選ぶこともできず」
ティモフェイ
「貫き通すことも、できなかった男だけれど」
ティモフェイ
口の端を歪めた。
ティモフェイ
「……もう、遅いんだ」
ティモフェイ
遅いのだと、そのように繰り返した。
マルタ
「そう……」
マルタ
「なら」
マルタ
女が歩く。あなたから離れて。礼拝堂の出口へ。茶の髪を揺らし。
ティモフェイ
その姿を、
ティモフェイ
視線で追いかけて、しかし、
ティモフェイ
背を向けた。
マルタ
「裁いて、貰って」
ティモフェイ
「…………」
マルタ
そうして女は、歩き去っていった。
マルタ
姿が消えてすぐ、足音も聞こえなくなる。
マルタ
彼女を纏っていた煙も失せて。
マルタ
礼拝堂に残るはあなた一人だけ。
ティモフェイ
手には儀礼剣。
ティモフェイ
彼女を殺した得物。
ティモフェイ
その輝きを瞳の中に映し込みながら、
ティモフェイ
おんなの心臓を貫いた時の手応えを、思い出していた。
メイド3
斬り捨てた。
メイド3
過ちを犯した。
メイド3
いかなる奇跡が叶っても、なかったことには決してならない。
メイド3
雪を払う救世があろうとも、罪を雪ぐ奇跡はない。
メイド3
メイド6

第1シーン:ティモフェイ

メイド6
お茶会 第2サイクル ティモフェイ
ティモフェイ
礼拝堂の出来事から夜が明けて、翌朝かな。
ティモフェイ
1d12
DiceBot : (1D12) > 10
ティモフェイ
10 : 温室。光を取り入れるための一面のガラス張りは、砂塵だけの光景だ。
メイド6
先日、散々植木鉢を投げつけられた温室ですが、すっかり綺麗に掃除されています。
ティモフェイ
ではその美しく掃除をされた温室に、今は雪が降っている。
メイド6
日光があまりに不足した堕落の国においては、特になんの役に立たない温室です。
メイド6
気休めに置かれた作り物の鉢植えの頭が、白くなっています。
ティモフェイ
雪が降り、雪が降り、造花を白く彩る温室に、
ティモフェイ
不意に、ミラリアとアリシアは召喚される。
ティモフェイ
目の前には覇気のない顔をした救世主が一人と、
トイ.
昨夜のうちにあったことなどつゆしらず、ぐっすりとねてた男。
トイ.
まぁまぁ体調も落ち着いた。
ティモフェイ
二人の同じ顔をした救世主が、女王と鏡を出迎える。
アリシア
37度は切ったようですね!
ティモフェイ
おかげさまで……。
トイ.
「ふあ…」あくび。
ミラリア
「…………」
ティモフェイ
礼拝堂の一件から、一晩。
ティモフェイ
目の前の男は平常の鉄面皮を取り戻している、
ティモフェイ
ように、見える。
ティモフェイ
少なくとも、見かけの上では。
ミラリア
眼前から視線を外さないまま、罠がないか、退路は、と少しの確認をして。
ティモフェイ
「急に呼び立ててすまないね」
ミラリア
「ふむ」
ティモフェイ
「あまりこれを使ってこなかったものだから」ぴらと残った招待状を振り。
アリシア
大丈夫ですよ~とアイコンタクト。
トイ.
目をこすりながら、興味の赴くままにアリシアに一歩近づき…
トイ.
息を吐きかける。
トイ.
鏡、くもるのかな?
ミラリア
「二人同時なら使うまでもなかったろうにな。まあいい……」
ティモフェイ
「他の救世主に倣って使ってみようと思っただけで、特別の策略などありはしないよ」
ティモフェイ
肩を竦めた。
ティモフェイ
「女性二人の部屋に踏み込むのも、気が引けた」
アリシア
スッ……と息をよける。
ティモフェイ
「俺は」
ティモフェイ
「この手の裁判の前の、なんというか……」
トイ.
あ!避けやがった!
ティモフェイ
「茶会と呼ばれるたぐいの駆け引きを、基本的には馬鹿馬鹿しく思っているのだが」
アリシア
この鏡で簡単に遊べるとは思わぬことです……
ティモフェイ
有効であることは認めるものの。
アリシア
「ちなみに鏡は女性ではございませんので、
 女性一人の部屋ということになりますね~」
 どうでもいい補足。
ティモフェイ
「なおさら悪いな」どうでもいい補足に短く返し。
ティモフェイ
「ただ、まあ」
ティモフェイ
「きみたちを相手にしていると」
ティモフェイ
「多少の真似事は、してみせた方がいいかと思った」
ティモフェイ
いまいち要領を得ない前振りを、淡々と並べ立てる。
ミラリア
「ほう」
ミラリア
「ならば、手並みを見せてもらうとするか」
ミラリア
「出来るというのなら」
ティモフェイ
「…………」やはりいまいち気乗りがしない、というように顔をしかめたが。
ティモフェイ
「鏡」
アリシア
はい!
トイ.
鏡になんとか息を吐きかけようとウロウロしてたがよけられている。
ティモフェイ
「この会場に残った、8人の救世主たち」
アリシア
スッ……スッ……
ティモフェイ
「その中で最も美しい者は、誰になる?」
トイ.
ぐぬぬ…
アリシア
「はい。ティモフェイさま。
 ここでは──」
 さほどの時をおかずに、鏡が答えを──
ミラリア
「      」
トイ.
「     ?」
ミラリア
瞬時に。
ミラリア
隣に蹴りが入れられる。
ティモフェイ
ぱち、と瞬いた。
トイ.
「ああああ か、かがみ―――!」
アリシア
「アアアアアア!!」割れた。
トイ.
「割れちまった!!」
トイ.
「割れちまったよ!おい!!」
ミラリア
「………喧しい」
ティモフェイ
ゆるりと視線をミラリアに向けた。
ティモフェイ
「おそろしいのか?」
ミラリア
「喧しい 喧しいぞ」
ティモフェイ
「その答えを、聞くのが」
ミラリア
「……」
トイ.
「ええ…」足元の鏡の破片を拾っている…
ミラリア
「貴 様……」
ティモフェイ
「いや」
ティモフェイ
「実際のところ」
ティモフェイ
「きみが最も美しい、という答えが出るのではないかと」
ティモフェイ
「俺は思っていたのだがね」
アリシア
「あっ助かります~」
 散らばっているのはもはや光を反射しない硬質な破片だ。
トイ.
「形合う?これ…」ひそひそとアリシアに。
ミラリア
「……… ……… ………」
ミラリア
そうだ。それ以外の答えが、あるはずがない。
ティモフェイ
せいぜいが上回るとしても、一号室の美丈夫くらいか。
ミラリア
もはや一人殺した。潰した。顔無しの死体が残るだけ。
アリシア
「大丈夫 大丈夫でございます」
 カタ…… パチ……
ティモフェイ
それも鏡の美醜の基準次第だから分からなかったが。
ミラリア
他に上回るものなど、何処にもありはしない、それが真実のはずだ。
ティモフェイ
「あまり」
トイ.
「いたっ」手を切る。
ティモフェイ
「人を揺さぶるような真似は、得意ではなくてね」
ティモフェイ
ちらとトイトロールに目を向けたが、
ティモフェイ
すぐにミラリアに向き直った。
ティモフェイ
「しかし」
ティモフェイ
「きみ、やはり」
ティモフェイ
「存外に自分の美に、自信がないようだ」
ミラリア
「……… ………   ………」
トイ.
ふと顔をあげた瞬間。たまたま目をむけたティモフェイと目が合った。
トイ.
「たしかに」
ティモフェイ
*ミラリアの心の疵『一番美しいのは誰?』を抉ります 猟奇で
トイ.
「オレも女王陛下がいちばんきれいだとおもった」
アリシア
*横槍入れますか~
アリシア
choice[猟奇,愛,才覚]
DiceBot : (CHOICE[猟奇,愛,才覚]) > 愛
アリシア
2d+3>=7
DiceBot : (2D6+3>=7) > 10[5,5]+3 > 13 > 成功
アリシア
1d6 減少量
DiceBot : (1D6) > 5
アリシア
ヤリイカはなし
メイド6
大きいですね。判定を。

ティモフェイ
2D6+3-5>=7 猟奇判定
DiceBot : (2D6+3-5>=7) > 5[4,1]+3-5 > 3 > 失敗
ティモフェイ
はい……。
メイド6
失敗ですね。
ミラリア
誰よりも真実を頼り、そして信じる愚かな女王。
ミラリア
だが、であるというのに、真実から目を逸らそうとする、ひどく大きな矛盾がそこには存在している。
ティモフェイ
されどその矛盾を暴き立て、疵を抉るだけの度量がこの男にはない。
ティモフェイ
ある意味では鏡に負けず劣らず、
ティモフェイ
他人の心を理解できない空っぽの救世騎士。
ティモフェイ
救世主失格の男。
アリシア
「女王様が鏡をお割りあそばせになるのは
 日常茶飯事ですからねぇ~!」
アリシア
「ここのところは、大一番で緊張されているのか
 割られる回数が減って不安になっていたところでございます」
ティモフェイ
「そうなのか」
ティモフェイ
「…………」
ティモフェイ
「先程の質問の」
ティモフェイ
「答えは、聞けぬと?」
トイ.
「なるほど」
トイ.
おなじかおのおとこがふたり、納得顔。
ミラリア
「……… ……… ………」
ミラリア
「そうだ。」
ミラリア
代わりに答えている。
ミラリア
「コインの枚数が減って自重してやっていたが──」
ミラリア
「脚が動くことぐらい、あろうというもの」
アリシア
「というかですね~
 聞かれるとうれしくなってついついなんでも答えちゃうんですが……」
ティモフェイ
ほんとにめちゃめちゃ答えてたもんな……。
アリシア
「鏡は女王様の所有物なので、
 ホイホイあなたがたの問いに答えるのはよくないんですよね」
ミラリア
「そうだぞ」
アリシア
「すみません」
ティモフェイ
肩を竦める。
トイ.
「そうだったのか…」
ティモフェイ
「それは、失礼をした」
ミラリア
「林檎だの卵だの あの問いの時も割ろうかと思った」
トイ.
ぺこりと頭を下げる。
アリシア
「真実(マジ)遺憾(サーセン)でございます」
アリシア
「というわけで、さきほどの問いの答えは……」
アリシア
「女王様を倒し、この鏡の所有権を奪ってから、
 ということでご容赦願います」
ティモフェイ
「……難しいな」
ティモフェイ
「その時には最早、無用の問いだ」
ティモフェイ
「興味が他に移っているかもしれん」
ティモフェイ
自分自身は美しさなどどうでもいいと言うように、そのように答える。
ミラリア
「ああ、そして、そのような瞬間が来ることはあるまい」
トイ.
「……」多少テンションが下がる。
ティモフェイ
「……悪いが」
ティモフェイ
「そればかりは、裁きが下されたのちにわかることだ」
ミラリア
「………」
ミラリア
「そうだな」
ミラリア
「正しい裁きが、真実の罪に、下されるその時……」
ミラリア
「必ず来るその時に」
ティモフェイ
「…………」
トイ.
裁判か。
そうか、いまこれ、お茶会だったか…
トイ.
それを想って、姿勢を正す。
トイ.
裁判の時間まで、刻一刻と迫ってはきているのだ。
アリシア
「せいぜい、足掻いてみてくださいねえ~っ」
 緊張感のない声。
トイ.
唇を引き結び、ちらりとティモフェイを睨んだ。
ミラリア
「やってみろ。残り僅かのこの間に」
ミラリア
「どれだけ、綻びを取り繕えるか。」
ティモフェイ
眉が寄る。
ティモフェイ
昨晩に見た、
ティモフェイ
おんなの姿が脳裏を過ぎった。
メイド6
真実も、罪の行方も今はまだ、白く積もった雪の中。
メイド6

第3シーン:トイ

メイド6
お茶会 第2サイクル トイトロール
トイ.

この館には16人の救世主がいる。

トイ.
(…いた。)
トイ.

ババ抜きのように、2つでひとつのペア。

トイ.
1号室や7号室のように、猟奇の先に一握の愛を拾うもの。
トイ.
4号室や5号室のように、背を預け互いの強さを信じるもの。
トイ.
2号室や3号室のように、抗い難い習性と、それに綴蓋をするようなもの。
トイ.
8号室のようにここではじめてであって、こけつまろびつ支え合うもの。
トイ.

そこにある、関係性は部屋によって8組8様。
トイ.
…6号室は?
トイ.
6号室にあるきずな。
トイ.
それは2人が、
出会った時からずっと
敵対しているということだ。
トイ.
お互いがお互いの疵である。
トイ.
互いの存在が、相手を傷つける刃である。
トイ.
ひとりは恋人を犠牲にした痛みをずっと抱え、

ひとりはこの世に救いを見たことのない痛みを抱え、

別々の人生を、同じ顔で歩んできた。
トイ.
顔を合わせた時から、殺し合っていた。
トイ.
「………」
トイ.
なにか悟ったように、ティモフェイの顔を見る。
ティモフェイ
開きっぱなしの扉に構わず、ティモフェイは6号室に立つ。
ティモフェイ
ぼんやりと虚空に視線を彷徨わせながら、
ティモフェイ
「すまなかった」
ティモフェイ
と、唐突な謝罪。
トイ.
堕落の国へきて一年。
トイ.
暴力と激情だけで制してきた、これまでの裁判。トイが命令し、ティモフェイはそれに遂行するだけ。
トイ.
ティモフェイがそれを成し遂げられなければ「すまない」と。
トイ.
だが…
トイ.
「これまでと同じやり方じゃ」
トイ.
「通用しないところまで来たんだろうなァ…」
ティモフェイ
息を吐く。
ティモフェイ
雪の降る六号室に特有の白い呼気。
トイ.
女王と鏡の手練手管の前に、何かを感じる。
トイ.
「ティモフェイ」
トイ.
「中庭へ」
ティモフェイ
「?」
ティモフェイ
トイを見ます。
ティモフェイ
「まだ」
ティモフェイ
「裁判には、少し早いが」
トイ.
「……剣の稽古を。」
ティモフェイ
「は?」
ティモフェイ
存外素っ頓狂な声が出た。
ティモフェイ
考えもしなかったことを言われた、とでもいうような。
トイ.
「剣の稽古だよ!」
ティモフェイ
「…………」
ティモフェイ
目をしばたいて、トイトロールの顔を見る。
ティモフェイ
同じ顔を。
トイ.
念を押すように、病み上がりの声で怒鳴って
トイ.
睨んで顔をあわせて。
トイ.
明け放しのドアを出る。
ティモフェイ
中庭に向かうにはまだ早いものの。
ティモフェイ
先程女王が言ったとおり、裁判まではあと残り僅かの時間しか残されていない。
ティモフェイ
今から剣の稽古などしても付け焼き刃、
ティモフェイ
そもトイトロールは剣を振るうよりも、その制御できていない心の疵を暴れさせた方が裁判での脅威となる。
ティモフェイ
という結論を、無感情な計算の結果導き出しはしたものの。
ティモフェイ
トイトロールを追いかけて、開け放しのドアを出た。
ティモフェイ
その結論を告げぬままに、
ティモフェイ
彼の考えに、
ティモフェイ
願いに従うように。
トイ.
・・・中庭。
トイ.
裁判はまだ始まらない。
トイ.
がらんどうの、さみしい中庭。
トイ.
朝焼けに雪明り。
ティモフェイ
淋しげなその中に立つ、トイトロールの姿を見る。
トイ.
それを真ん中あたりまで歩いて行って、ティモフェイと対峙するように前を向く。
トイ.
「…儀礼剣、出せ」
ティモフェイ
「…………」
ティモフェイ
昨晩の。
ティモフェイ
背後に降り積もる、雪の白さを思い出す。
ティモフェイ
されど抉れた心の疵でも、
ティモフェイ
その美しさは変わらぬままに。
ティモフェイ
虹の光が雪に反射して、
ティモフェイ
きらきら、
ティモフェイ
きらきらときらめいた。
トイ.
身に沁みついて、畏怖するようにその虹に目を細め、
トイ.
鏡合わせのようにティモフェイと同じ仕草。
トイ.
構えた手の中に、雪が風まき、手の中に氷の剣が象られていく。
ティモフェイ
「…………」
ティモフェイ
眉を上げた。
トイ.
きらり。つめたく。
ティモフェイ
自分の知らない、トイトロールの新しい武器を。
トイ.
ティモフェイの方に踏み込み、切りつける!
ティモフェイ
冴え冴えと輝くその刃を瞳に映し込み、
トイ.
そこに稽古であるからという容赦はない。
トイ.
もしも、儀礼剣ではじかなければ、
ティモフェイ
振り下ろされたの一閃を、とっさに虹剣で受け止める。
ティモフェイ
がぎ、と
ティモフェイ
氷と虹が散る。
トイ.
斬りつけてもかまわない太刀筋。
ティモフェイ
その本気を知る。
ティモフェイ
そもここでトイトロールごときに切り捨てられるのならばそれまでだと、
ティモフェイ
そのことを、ティモフェイ本人も理解している。
ティモフェイ
氷の剣を弾き、押し返す。
ティモフェイ
力任せの一撃。
トイ.
「ぐっ」
トイ.
弾き飛ばされ、地に足を刷りながら。
トイ.
「…ティモフェイ…!」
ティモフェイ
「なんだ」
ティモフェイ
上段から振り下ろす。
トイ.
「死ね!」
トイ.
「お前が嫌いだ!」
ティモフェイ
「…………」
ティモフェイ
太刀筋はぶれない。
トイ.
「嫌いだ嫌いだ、嫌いだ!」
トイ.
振り下ろされた剣を氷の剣で受け止め。
トイ.
しかし、力任せに抑え込まれればその腕はふるえる。
トイ.
かわすように身を引いて。
ティモフェイ
虹剣が空を切る。
ティモフェイ
僅かに前のめりに、踏み込んだティモフェイの姿勢が崩れる。
トイ.
その隙を見逃すまいと剣閃が走る。
トイ.
「お前は…っ」
ティモフェイ
とっさに剣を引き、一撃を受け。
トイ.
剣先に力を込めながら。
トイ.
「………っ前は、」
ティモフェイ
「…………」
ティモフェイ
同じ顔の、鉄面皮。
トイ.
「堕落の国にくるまでは!」
トイ.
「力いっぱい暴れても、泣き叫んでも、いつも状況は変わらなかった」
トイ.
「なんにも覆せるものなんてなかった!」
トイ.
「なのに…」
トイ.
「ここにきてから」
ティモフェイ
その顔が、かすかに歪む。
トイ.
「暴れれば暴れただけ、それが現実になる!」
ティモフェイ
「……ああ」
トイ.
せきを切ったようにトイトロールの周りの雪が濃くなる。
ティモフェイ
今度の雪はまぼろしなどではなく。
トイ.
「前までは」
ティモフェイ
ティモフェイのめったに動かない頬が凍える。
トイ.
またいつもの、涙声。
トイ.
「前までは、怒りや悲しみをぶつけても壊れない世界だったのに」
トイ.
いまや己の機嫌が救世主を殺し、末裔を殺し、村を雪に埋もれさせる。
トイ.
怒りや悲しみは本物だ。殺したいという気持ちも、恐れも本物。
トイ.
だけど
トイ.
「止めて欲しかったのに!!」
ティモフェイ
「…………っ」
ティモフェイ
あわれなこどものような、目の前の男。
トイ.
「お前が弱いからだ!!」
ティモフェイ
その氷の剣を強めに弾く。
トイ.
心の疵。冬。忘却の国の災害を纏い、それを振るう。
ティモフェイ
その全てが、ティモフェイの心を苛むものだ。
ティモフェイ
トイトロールの存在。
トイ.
だから、この雪が猛威を振るう時、ティモフェイが止めることに意味があった。
ティモフェイ
トイトロールのまとうもの。
ティモフェイ
トイトロールの、犯すすべて。
トイ.
トイにとってはそうだった。
トイ.
故郷の災害の力と、故郷の救世主の力。
ティモフェイ
ティモフェイの過ちと矛盾がそれをのさばらせて、
ティモフェイ
しかし、
ティモフェイ
一度たりとも、止めることができずに来た。
ティモフェイ
それが
ティモフェイ
それが、彼の望みであるならばと。
ティモフェイ
もはや救うべき民は他におらず、
ティモフェイ
さりとて他に叶えられることもない、今となっては。
トイ.
手を休めずに剣を振るう。
ティモフェイ
一撃、
ティモフェイ
一撃、それを受け流しては、
ティモフェイ
踏み込むことを、
ティモフェイ
ためらう。
トイ.
ガツン、
トイ.
ガツン。
トイ.
剣と剣の交じる音。はなたれる光。
トイ.
「お前が殺せばいいって 死期を待ってるって顔見せるたび」
トイ.
「オレは必死で蓋をした気持ちを呼び起こされる…」
トイ.
「自分の、死んだ方がマシだって気持ちを!!」
ティモフェイ
「…………」
トイ.
剣撃。
ティモフェイ
それに、どんな言葉をかけられよう。
ティモフェイ
自分のせいで、
ティモフェイ
自分と同じ顔であったばかりに、苦痛を背負わされた彼に。
ティモフェイ
剣撃を受け止める。
ティモフェイ
受け止めるだけで、
ティモフェイ
ことばも、返せない。
ティモフェイ
ざり、と
トイ.
「やり返せよ!」
トイ.
「斬れよ!このオレを!」
ティモフェイ
靴の裏が地に擦れる音が響いた。
ティモフェイ
「…………」
ティモフェイ
その叫びを聞いている。
ティモフェイ
腕が重い。
ティモフェイ
戦いでは軽やかに振るってきたこの儀礼剣が、
ティモフェイ
しかし、ティモフェイにはずっと重かった。
ティモフェイ
目の前の
ティモフェイ
目の前の男の存在も、また。
ティモフェイ
足を引いた。
ティモフェイ
足とともに剣を引き、トイトロールのバランスを崩す。
ティモフェイ
息を吐く。
トイ.
「…っ!」バランスを崩しつんのめる。
ティモフェイ
白い息がたちのぼる。
ティモフェイ
バランスを崩してつんのめったトイトロールを見下ろして、
ティモフェイ
剣を振るった。
トイ.
寸での所で受け止める。
ティモフェイ
剣と剣の擦れる、いやなおと。
トイ.
見下ろす瞳に見上げる瞳がかちあう。
ティモフェイ
それを上から押し潰すように力をかけて。
ティモフェイ
されど視線はそらせぬまま。
トイ.
ぎりぎりと押し返そうと力を込め…
トイ.
「なんで」
トイ.
「なんで儀式をやめたんだ」
ティモフェイ
繰り返し。
ティモフェイ
トイトロールは知らぬはずの、
ティモフェイ
昨晩のおんなの姿。
ティモフェイ
ぎし、と
ティモフェイ
押し返そうとする剣を、力任せに押さえ込み。
ティモフェイ
唇を引き結ぶ。
トイ.
「答えろ」
ティモフェイ
「…………」
トイ.
「オレを斬りつけてもいい」
トイ.
「だが」
ティモフェイ
疼く。
ティモフェイ
疼いている。
ティモフェイ
心の奥が、
トイ.
「オレから目を背ける事は許さない」
ティモフェイ
どうしようもないほどに。
ティモフェイ
降り積もる雪では覆い隠せない疵が、今もじくじくと痛んでいる。
ティモフェイ
「…………」
ティモフェイ
「……どうして」
ティモフェイ
と、
ティモフェイ
そのように問われた。
ティモフェイ
「どうして、儀式を」
ティモフェイ
反復のように。
ティモフェイ
或いは自らに問いかけるように。
ティモフェイ
唇からは弱々しい声が漏れる。
トイ.
「どうして儀式を」
トイ.
「その続きは?」
ティモフェイ
「…………」
ティモフェイ
儀礼剣を握る指に、力がこもる。
トイ.
鍔迫り合いの均衡を一気にくずし、剣の下からのがれる。
トイ.
そしてまた剣を振りぬく。
ティモフェイ
その力が空振って、
ティモフェイ
振り抜かれた剣を、強引に引き戻した刃でぎりぎりに受けて。
ティモフェイ
「……とう、に」
ティモフェイ
くちびるがうごく。
ティモフェイ
くちびるをうごかしながら、
ティモフェイ
心が、それを拒んでいる。
ティモフェイ
言ってはならない。
ティモフェイ
言いたくない。
ティモフェイ
それを、
ティモフェイ
それを、認めてはならないと、
ティモフェイ
ずっと自らを戒めてきた。
ティモフェイ
「おれは」
ティモフェイ
「…………っ」
ティモフェイ
剣を引いて、強かに叩きつける。
ティモフェイ
氷剣の刃にひびが入るほどにしたたかに。
トイ.
痛いほどの振動。
トイ.
「なぜ言えない!」
トイ.
「何を考えてる!」
ティモフェイ
唇を噛み締めた。
ティモフェイ
どうして、
ティモフェイ
なぜなら、
ティモフェイ
それは、すべての否定だから。
ティモフェイ
ここに立つ理由の、
ティモフェイ
戦う理由の、すべてが否定されるだけの、事実を。
ティモフェイ
自分は、
ティモフェイ
ああ、そうだ、
ティモフェイ
とうに理解している!
ティモフェイ
それを。
ティモフェイ
トイトロールが問い詰める。
ティモフェイ
人生を覆された男が、
ティモフェイ
ティモフェイの存在に人生を覆された男が、
ティモフェイ
今、ティモフェイを覆そうとしている。
ティモフェイ
それを。
ティモフェイ
それから、
ティモフェイ
逃れるすべも、とうに失っていた。
ティモフェイ
「――――」
ティモフェイ
「とうに」
ティモフェイ
「とうに、折れていた」
ティモフェイ
乾いた声だった。
トイ.
「…………」
ティモフェイ
雪のように、凍えていた。
ティモフェイ
「マルタを殺した」
ティモフェイ
トイトロールの知らない名を呼ぶ。
ティモフェイ
「殺す、そのときまでは」
ティモフェイ
「正しいと思っていた」
ティモフェイ
「それが」
ティモフェイ
「それで、人々が、救われる」
ティモフェイ
「ああ」
ティモフェイ
「正しいと」
ティモフェイ
「正しいと、マルタは、笑った!」
ティモフェイ
「最後の一週間」
ティモフェイ
「選ばれた贄が、救世騎士の館で過ごし」
ティモフェイ
「もてなしを受ける最後の一週間を」
ティモフェイ
ああ、それは、
ティモフェイ
まるでこの館でメイドに仕えられてもてなされる、16人の救世主たちのよう。
ティモフェイ
「マルタは」
ティモフェイ
「マルタは、ずっと」
ティモフェイ
「名誉なことだと、笑っていたのに……」
ティモフェイ
その名誉を、他ならぬ自分が疑った。
トイ.
肩で息をする。
トイ.
トイの目から涙が伝う。
ティモフェイ
「だれでも」
ティモフェイ
「だれでも、よかった」
ティモフェイ
こえが、ふるえる。
ティモフェイ
「アンジェラ」
ティモフェイ
「俺が殺さなかった、こども」
ティモフェイ
「最後は皆に殺された、あの少女が」
ティモフェイ
「あの少女でなければならなかった」
ティモフェイ
「理由は」
ティモフェイ
「どこにも、なかった」
ティモフェイ
「ただ」
ティモフェイ
「……ただ」
ティモフェイ
致命的な、
ティモフェイ
自らの中の、取り返しのつかないほどに壊れた部分に、気付いてしまっただけ。
ティモフェイ
少女に手を下せず。
ティモフェイ
戸惑う彼女を唆して、
ティモフェイ
屋敷の奥に匿って。
ティモフェイ
獣の血で誤魔化して、
ティモフェイ
儀式は正しく遂行されたと嘯いて。
ティモフェイ
ああ、
ティモフェイ
そのすえに、破滅しか待たぬことを、
ティモフェイ
自分は間違いなく理解していたのに。
ティモフェイ
雪が降る。
トイ.
「……なんでそんな…」
ティモフェイ
雪が降った。
ティモフェイ
雪が振って、
トイ.
「………そんな………っ」
ティモフェイ
雪が降っても、
ティモフェイ
自分は正しい救世騎士のように振る舞い続けたから。
トイ.
「アンジェラは、マルタはおまえに…」
ティモフェイ
誰も自分を疑わなかった。
トイ.
「『助けてくれ』って言ったか?」
トイ.
「見逃してくれって?」
ティモフェイ
「…………っ」
トイ.
「しにたくないって?」
ティモフェイ
疑わなかった、から、
ティモフェイ
気づいたときには、もう、
トイ.
「そうおまえに頼んだか!?」
ティモフェイ
滅びの運命からは逃れられず。
ティモフェイ
それでも滅びにあらがわんとする民がいたいけな少女を捕まえて、
ティモフェイ
奪い取られた儀礼剣が、彼女を殺すさまを見た。
ティモフェイ
無駄死にだった。
ティモフェイ
救世騎士の血が、
ティモフェイ
救済には、必要不可欠だったから。
ティモフェイ
「…………」
ティモフェイ
「……犠牲を」
ティモフェイ
「犠牲の上に成立する、世界など」
ティモフェイ
「まちがっている……」
トイ.
ぽろり、ひらり。
トイ.
きらきらと。
ティモフェイ
その言葉は、
トイ.
トイの涙に誘われて、忘却の国の雪が降る。
ティモフェイ
この儀式そのものを、否定するものにほかならない。
トイ.
忘却の国の人々の記憶。
トイ.
それらはトイと共にある
トイ.
<マルタ>優しく穏やかな男の声。

春の光の中でほほえみ。
ティモフェイ
心が軋む。
トイ.

<マルタ>

男に触れられた頬の温かさ。
トイ.

<マルタ…>

騎士たちの館で持成され時の迷いの顔。
ティモフェイ
ひび割れた疵に、雪の冷たさがしみる。
トイ.
マルタの記憶。
マルタの目に映った、ティモフェイの記憶。
トイ.
今とは違う。笑みがある。
ティモフェイ
知らない男の顔だと、
ティモフェイ
そう思いたかった。
トイ.
身なりは美しく。髪はとかされ。どちらかというと今ではトイに似た。
トイ.

貴方に愛されたマルタの記憶。

ティモフェイ
それを。
ティモフェイ
もはや、否定できない。
ティモフェイ
ふるえる胸のうちの奥底を、
ティモフェイ
そのあたたかな記憶は鷲掴みにする。
トイ.
<ティモフェイ>
トイ.
<ティモフェイ…>
ティモフェイ
「   」
ティモフェイ
選ばなかった。
ティモフェイ
選べない。
ティモフェイ
選ぶことは、ない、のに。
トイ.
<私の儀式をしてくれるのが>
トイ.
<あなたでよかった…>
トイ.
<たった一週間だけど>
トイ.
<なんだか、新婚気分みたいな>
トイ.
<幸せな時間には、ちがいないから>
ティモフェイ
いやだ。
ティモフェイ
封じ込めていた記憶が、
ティモフェイ
心の疵を、
ティモフェイ
いたみを、
ティモフェイ
和らげていくのが。
ティモフェイ
これは。
ティモフェイ
この記憶は、自分を苛むものでなければならないのに。
ティモフェイ
彼女の声に。
ティモフェイ
面影に。
ティモフェイ
立ち尽くしていた昨晩の方が、
ティモフェイ
自分には、正しいのに。
トイ.
<ねえ> 
トイ.
<春になったらどんな花が咲くと思う?>
ティモフェイ
<花?>
トイ.
<花よ りっぱな花じゃなくても>
トイ.
<野にさく小さな花も>
トイ.
<春が来たら美しく、咲く>
ティモフェイ
<…………>
トイ.
<この世で一番ってくらい、うつくしい>
トイ.
<…そんな風に、思ったりして!>
ティモフェイ
<……俺は>
ティモフェイ
<花には詳しくないし>
ティモフェイ
<きみのようには、それを楽しめないかもしれないが>
ティモフェイ
<……青い花がいいな>
ティモフェイ
<春の空と、同じ色だから>
トイ.
*ティモフェイの救世主失格を舐めます。猟奇で判定。
メイド6
*横槍はありますか?
アリシア
*横槍します。

アリシア
choice[猟奇,愛,才覚]
DiceBot : (CHOICE[猟奇,愛,才覚]) > 愛
アリシア
*ティーセット使用。

アリシア
2d+3+2>=7
DiceBot : (2D6+3+2>=7) > 3[2,1]+3+2 > 8 > 成功
アリシア
1d6 減少
DiceBot : (1D6) > 3
アリシア
*ヤリイカ使用。

メイド6
判定をどうぞ。
トイ.
*ティーセット使用。
トイ.
2d6+2+2-5=>7 判定:猟奇 ティーセット
DiceBot : (2D6+2+2-5>=7) > 10[6,4]+2+2-5 > 9 > 成功
メイド6
成功です。
ティモフェイ
やさしい記憶。
ティモフェイ
あたたかな、思い出が。
トイ.
<それが私とあなたで>
トイ.
<さかせる花>
トイ.
<青空の花>
ティモフェイ
どうしようもなく。
ティモフェイ
ひび割れた心を、ふさいで。
トイ.
<花が咲くから>
ティモフェイ
笑う顔が。
トイ.
<花の美しさの中に わたしはいるから>
ティモフェイ
ささやきかわしたことばが、
ティモフェイ
こえが。
トイ.
<忘れないで>
トイ.
<悲しまないで>
ティモフェイ
あなたが。
ティモフェイ
あなたの咲かせた花の色が、
トイ.
<いろんな人を救ってあげられる>
トイ.
<私の大好きなあなたでいて>
ティモフェイ
自分には、確かに、
ティモフェイ
真実だったのだ。
トイ.
春の光をひとつさしこんで
トイ.
記憶は晴れた。
ティモフェイ
目の前の、その姿を見る。
トイ.
「………わかったかよ」
トイ.
忘却の国の人々の記憶は、トイと共にある。
ティモフェイ
「……トイ」
ティモフェイ
「トロール……」
ティモフェイ
掠れた声で、その名を呼ぶ。
トイ.
「………」
ティモフェイ
虹の剣の輝きが、青い瞳にうつりこむ。
トイ.
静かに剣をおろし。
トイ.
顔をあげてその光を見る。
ティモフェイ
いまさらのように、
ティモフェイ
その瞳の色が、同じだと気づいた。
ティモフェイ
空の色と。
ティモフェイ
あの日の、花の色と。

メイド6
正しい世界ではないかもしれない。
メイド6
正しい犠牲などどこにも。
メイド6
さりとて悲しみばかりではなかったはず。
メイド6
――ティモフェイの手には今だ、その剣が握られている。
メイド6

第4シーン:アリシア

メイド6
お茶会 第2サイクル アリシア
アリシア
 ……中庭の。
アリシア
「鏡よ、鏡」
アリシア
 彼らを見下ろす硝子の数々。
アリシア
「この世で一番
 醜いのは──」
アリシア
 それらが一斉に割れてくだけ、
 雨となって降り注ぐ。
アリシア
「 お ま え 」
アリシア
*ティモフェイの「救世主失格」を抉ります。
トイ.
*横やりします
トイ.
Choice[猟奇,才覚,愛]
DiceBot : (CHOICE[猟奇,才覚,愛]) > 才覚
トイ.
2d6+2=>7 判定:才覚
DiceBot : (2D6+2>=7) > 8[4,4]+2 > 10 > 成功
トイ.
1d6
DiceBot : (1D6) > 6
アリシア
*ティーセットを使用。
メイド6
どうぞ。

アリシア
2d+3+2-6>=7 愛
DiceBot : (2D6+3+2-6>=7) > 8[4,4]+3+2-6 > 7 > 成功
メイド6
成功です。
ティモフェイ
立ち尽くした、その背中に。

アリシア
破片の雨が降り注いで、
アリシア
あちこちに突き刺さり、
アリシア
鏡となって、醜いおまえたちを映し出す。
ティモフェイ
その破片は肉を抉り。
ティモフェイ
血が弾けて、整えられた中庭の芝を汚す。
ティモフェイ
「…………っ」
ティモフェイ
ひきつれた呼気が、悲鳴の代わりにティモフェイの唇を漏れた。
アリシア
「どうして」
    「どうして」
  「どうして」
トイ.
破片が降り注いで、血が飛び散る。
ティモフェイ
膝をつく。
アリシア
それぞれの鏡が、口をきく。
トイ.
すぐさま凍って血が雪に。
アリシア
「楽になれると」
      「楽になれると」
    「思った?」
ティモフェイ
唇を噛みしめる。
ティモフェイ
反響する声の、
ティモフェイ
ひとつひとつが。
ティモフェイ
失敗した救世騎士を苛み、
ティモフェイ
その心の傷をうずかせる。
トイ.
雪の中で、その手の声は聞き慣れた。
トイ.
トイはきずつかない。
トイ.
だが…
ティモフェイ
安寧が。
ティモフェイ
マルタの幻影が、
ティモフェイ
記憶が、
ティモフェイ
やさしすぎた。
ティモフェイ
あたたかすぎた。
ティモフェイ
受け入れてしまったばかりの心が、
ティモフェイ
熱の灯った心が、
ティモフェイ
鏡のつめたき声に急速に冷やされて。
ティモフェイ
ひび割れる。
ティモフェイ
軋み、
ティモフェイ
壊れ、
ティモフェイ
疵を晒して、
ティモフェイ
血を流す。
アリシア
うつくしい『幻』の雪は、
アリシア
いまや、痛みを伴う『真実』の雨にとってかわられた。
ティモフェイ
ああ、
ティモフェイ
それが、
ティモフェイ
それこそが、真実。
ティモフェイ
ゆるされはしない。
ティモフェイ
楽になることなど、有り得ない。
ティモフェイ
最後まで。
ティモフェイ
最期まで、
ティモフェイ
自分には、苦しみの底が似合いだった。
ティモフェイ
希望もなく。
ティモフェイ
絶望は毒のように全身をめぐり。
ティモフェイ
ささやく声は、すべて自らを苛むもの。
アリシア
「憎悪こそ」  「妄執こそ」
   「妬みこそ」  「絶望こそ」
  「痛みこそ」 「苦しみこそ」
アリシア
「われわれの」     「われわれの」
       「真実!」
「われわれの」     「われわれの」
ティモフェイ
その真実が、
ティモフェイ
自分にはお似合いだった。
ティモフェイ
わかっていた。
ティモフェイ
わかりきっていた。
ティモフェイ
目を逸らし続けてきただけ、
ティモフェイ
理解しているふりで、
ティモフェイ
自分で自分を苛めば、
ティモフェイ
それが僅かなりとも酌量になるとでも思ったか?
ティモフェイ
有り得ない。
ティモフェイ
馬鹿げている。
ティモフェイ
ああ、
ティモフェイ
だから、
ティモフェイ
この終着は”正しい”のだ。
ティモフェイ
真実よ。
ティモフェイ
真実の鏡よ、
ティモフェイ
誰にも否定できない真実を、この愚かなる男に指し示した鏡よ。
ティモフェイ
おまえの働きは十全だ。
ティモフェイ
愚かな男に、最後の裁きを。
ティモフェイ
しかるべき罰を下す裁判が、
ティモフェイ
いま、
ティモフェイ
目の前に迫っている。
ミラリア
─────ダ、
ミラリア
ンッ!!!
ミラリア
地を踏む音が重く重く響く。大地を揺らすほど。
ミラリア
割れた窓から飛んだ女王は、弾けた火花の舞う中、ゆっくりと身を持ち上げた。
ミラリア
「──真実は、」
ミラリア
「消えない」
ティモフェイ
膝をついた男が、褪せた色の瞳で、女王を見上げる。
ミラリア
「忘れられない。逃げられはしない……」
ミラリア
紫炎の瞳が貴方を見下ろす。
ミラリア
「必ず暴かれ、突き付けられ」
ミラリア
「時が来る」
ティモフェイ
ぼたぼたと血が落ちる。
ティモフェイ
雪を汚す、鮮やかな血の色。
ティモフェイ
針を指で刺した、かつての女王がそうしたように。
ティモフェイ
その血の色はうつくしい。
トイ.
血の中を。
トイ.
「忘れない事。逃げない事」
トイ.
「それがオレの望みさ」
トイ.
「逃がさないためにこのトーナメントに」
トイ.
「引きずり出したんだから」
ティモフェイ
逃れられない。
ティモフェイ
逃れられないのだ。
ティモフェイ
自分は。
ティモフェイ
この宿痾からはもはや。
アリシア
散らばる大きな破片のいくつかが、ひとりでに組み合わさっていく。
アリシア
「ティモフェイさま」
アリシア
やがて、女王のとなりにその像が立つ。
アリシア
「あなたにもまだ、出来ることが残されてございます」
アリシア
「それは……」
ティモフェイ
「…………」
アリシア
「その子と折り重なって、
 死んであげることです。」
トイ.
「いらねーよ」
ミラリア
「哀れなものだな?実に哀れだ、小僧。責め立てられ疵付けられ憎まれるばかりの、罪人よ。もはやお前の逃げ場は、誰も用意してはくれない……」
ミラリア
「では、確かめてみようか……」
ミラリア
手を広げる。
ミラリア
「さあ、裁判の時間だ。」
ティモフェイ
わずかに面を上げる。
ティモフェイ
断頭台の罪人のように首を上げて、
ティモフェイ
けれど、その膝をゆっくりと伸ばした。
ティモフェイ
立ちあがる。
ティモフェイ
襤褸のマントを血に染めて。
ティモフェイ
今は虹剣をも血に汚して
ティモフェイ
腑抜けの男が、
ティモフェイ
それでも、抗うように中庭に立つ。
ティモフェイ
トイトロールを、
ティモフェイ
自分が救うことはできない。
ティモフェイ
救世主としての資格もない。
ティモフェイ
なのに、
ティモフェイ
なのにどうして、自分はこの場に立っている?
ティモフェイ
この場に立つことができる?
ティモフェイ
理由は分かりきっている。
ティモフェイ
――救世主は狂っているからだ。