Dead or AliCe
『16人の救世主』

裁判

GM
中庭。
GM
大きな歓声が救世主達を出迎える。
GM
今回の部屋付きのメイドはおらず、6人のメイドが横並びで立つ。
GM
部屋付き──1号室と7号室のメイドは、今ここに相まみえる救世主達の部屋を掃除している。
GM
窓から、その様子がちらほらと見えた。
メイド2
「24時間が経過し、お茶会の時間が終了しました」
メイド3
「救世主の皆様も、お集まりですね」
メイド4
「これより裁判となりますが、ご準備はよろしいでしょうか」
メイド5
「ご衣裳、小道具をお持ちの方、ご確認いただきませ」
GM
メイドは、中庭に並ぶ救世主達にそう投げかける。
GM
-入場前-
アーユス
「子夏くぅん」 
アーユス
中庭に向かって歩きながら子夏の方を向いて笑う。
アーユス
何かを言うために振り向いて指まで指したはずなのに、何故か少しばかり迷って一瞬視線を伏せてから――上げた。
子夏
俯いて顔を覆っていた男は、あなたに笑顔を向けた。
子夏
「はい、何でしょう」
子夏
先程のことがなかったかのような顔で、自分とあなたの血にまみれて立っている。
アーユス
「俺が死んだ時もそのツラで笑ってたらぶん殴るからな。」
アーユス
ごくごく軽い調子で笑うその様子は、
とても今から殺し合いの場に行く人間の表情ではなかった
アーユス
「じゃあいっちょ勝つかぁ~」
子夏
「……」
子夏
「はは」
アーユス
へらへらと笑って鉄パイプを担いで――子夏に歩みを合わせるでもなく、勝手にひとりで戦場へ向かう。
子夏
「あははははは」
子夏
あなたの背中に爆笑が投げかけられた。
子夏
「大丈夫です、大丈夫ですとも」
子夏
「あなたが死んだ時は、僕も死ぬ時ですからね」
子夏
「笑ってなんていられませんよ!」
子夏
笑顔で言って、あなたの後ろに続いた。
アーユス
「ハハ」笑った。
GM
────そうしたやりとりを経て、7号室の二人はここに立っている。
GM
それに対する、1号室の面々は────
桟敷川映鏡
帽子に手を突っ込み、色とりどりのハンカチを取り出す。
桟敷川映鏡
いくつか取り出したあと、金色に光る時計を取り出す。
桟敷川映鏡
「1R、だそうなので」
桟敷川映鏡
*仕込で日刻みの時計を獲得します。
匕首咲
「おー」

ハンカチと時計が出てきて、素直に驚いている。 
桟敷川映鏡
「治ったとはいえ……」
桟敷川映鏡
「長引かせてもいいことはないですし」
匕首咲
「……なんだよ、そんな……」
匕首咲
「なんか、優しいのやめろよ」
桟敷川映鏡
帽子をかぶり直す。
匕首咲
「あいつら、っていうか、あの狂犬には恨みがあるからぜってーぶっ殺す」
匕首咲
「けど」
匕首咲
「……お前が死ぬのも嫌だから」
匕首咲
「あいつら、殺すぞ」
桟敷川映鏡
「その意気です」
メイド6
「……よろしいですね?」
アーユス
「ワンワン!」咲に向かってふざけて吠える。
アーユス
どこまでもふざけている。
子夏
手品にいつもならば拍手をするところだが、背の後ろに腕を回してにこにこ微笑んでいる。
匕首咲
勢いよく親指を下に向けた。
アーユス
中庭に立つアーユスは肩に鉄パイプを担ぎ、両腕をブラブラと引っ掛けてニヤついていた。
アーユス
入場時ほどの騒がしさはないものの、代わりに深刻なほどのヒリついた空気を笑顔に纏っていた。
子夏
ちらりと、映鏡の方へ目を向ける。
匕首咲
ナイフの峰で、肩をとんとんと叩く。

「いいか、当たり前のことを言ってやる」
子夏
その姿の中に何かを探すように一瞥したが、
匕首咲
「人を強姦してはいけません」
子夏
そのまままた笑った。
匕首咲
「やったからテメーは地獄行きだ!!」
アーユス
「わりーな俺学校でそれ習ってねーわ」
子夏
「僕は地獄堕ちたことありますけどね」
匕首咲
「なら今日勉強して帰ってくれよな!」
アーユス
「地獄はオメーラが先に行って、俺を出迎えるお茶会を準備してな。」
子夏
「意外といいところですからおすすめですよ!」
子夏
嘘だけど。
アーユス
「マジ?」
子夏
「嘘ですね」
アーユス
「クソがよ~」
桟敷川映鏡
「それは是非先立って案内してもらいたいものです」
桟敷川映鏡
銀のステッキをくるりと回す。
子夏
ぱっと腕を広げて、何も持っていない両手を背中の後ろから出した。それだけだ。
桟敷川映鏡
「まァ、まだ行く気はないがね……」
匕首咲
ふと、賽の河原の話を思い出す。
親より先に死んだ子はどこにも行けない。
子を産めない女は、何かあっただろうか。

少しだけ、そんなことを思った。
メイド6
「……よろしいようですね。では」
メイド8
「それでは裁判を開廷いたします」
メイド8
子夏
*日刻みの時計を使用します
桟敷川映鏡
*日刻みの時計を使用します
アーユス
*日刻みの時計を使用します
子夏
1d6+3+2+1 才覚+日刻みの時計+着慣れた衣裳
DiceBot : (1D6+3+2+1) > 5[5]+3+2+1 > 11
アーユス
1d6+2
DiceBot : (1D6+2) > 2[2]+2 > 4
桟敷川映鏡
1d6+2+1 日刻みの時計+着慣れた衣裳
DiceBot : (1D6+2+1) > 3[3]+2+1 > 6
匕首咲
1D6
DiceBot : (1D6) > 6
桟敷川映鏡
1d6+3
DiceBot : (1D6+3) > 3[3]+3 > 6
匕首咲
1D6
DiceBot : (1D6) > 2
GM
*3日目終了 
GM
*4日目
GM
カード配布
子夏
*sK,cK,h2,c5,s10
アーユス
*d6,d7,d8,c8,hA 
桟敷川映鏡
*s5.s7.h5.c9.dQ
匕首咲
* h8,cJ,hQ,dK,sA 
GM
*裁判 1ラウンド目 手番:子夏
子夏
*奪取を使用[sK] 対象:桟敷川映鏡
子夏
2d6+3+1+1=>7 判定:才覚+万能+多彩な凶器
DiceBot : (2D6+3+1+1>=7) > 3[1,2]+3+1+1 > 8 > 成功
子夏
*dQを奪取!
子夏
中庭に風がうねる。
子夏
はじめは静かに、やがて雲もないのにごろごろと雷の音。
子夏
さて、手品勝負と行こうかな?
子夏
仮面の男に視線を向けた。口元には笑みがぱっと笑みが浮かぶ。
GM
*裁判 1ラウンド目 手番:桟敷川映鏡
桟敷川映鏡
自身の懐を漁る。舌打ち。視線をへらへら笑いの男へ向けた。
子夏
ひらひらと手を振っている。
桟敷川映鏡
*c9 鋭気を使用します。続いてh5で乱打を使用します。対象はアーユス。
子夏
*妨害を使用[s10]
子夏
*精確を使用[h2]
子夏
1d6
DiceBot : (1D6) > 6
子夏
2d6+3+1+1+6=>7 判定:才覚+万能+多彩な凶器
DiceBot : (2D6+3+1+1+6>=7) > 7[1,6]+3+1+1+6 > 18 > 成功
桟敷川映鏡
2d6+3
DiceBot : (2D6+3) > 6[3,3]+3 > 9
GM
乱打は失敗。
桟敷川映鏡
「フン、やれるじゃあないか」
子夏
最初の目論見を外されて、あなたが選ぶのは次善の手。
子夏
しかし、それも準備はしている。
桟敷川映鏡
蝶のように飛んだハンカチが落とされる。
子夏
「少しはいいところを見せないと」
子夏
「何もしないまま死んだら、お客さんもがっかりするでしょ?」
アーユス
二人の間に交わされる何かを見ている。
桟敷川映鏡
「その通りです」
GM
*裁判 1ラウンド目 手番:匕首咲
匕首咲
* hQ刹那を使用します。対象はアーユス。
匕首咲
2D6+3
DiceBot : (2D6+3) > 2[1,1]+3 > 5
匕首咲
TOV
匕首咲
* 逆転します
匕首咲
* 心の疵、弱者の肉を選びます
[ 匕首咲 ] 弱者の肉 : 0 → -1
匕首咲
* 1の出目を6に変更
GM
ファンブルが回避され、刹那が判定成功に。
子夏
「!」仮面の男の攻撃を防いだ視線が、女の方を追う。
子夏
だが、間に合わない。 
桟敷川映鏡
同じく追った視線が、女の腹へ向かう。
匕首咲
1d6+2+1+2+2
DiceBot : (1D6+2+1+2+2) > 5[5]+2+1+2+2 > 12
匕首咲
コートの裏に留めたナイフを抜く。
すう、と息を吸って、止める。
世界の全ての動きが緩慢になる感覚。
匕首咲
今から抉るのは、弱者の肉。

決して強者にはなれない、虐げられ、搾取され、全てを奪われる肉。

強者に歯向かうことすらできない弱き者。
匕首咲
駆ける。
靴裏は地を掴み、遠くへ追いやる。
体が、全身の肉が歓喜に震える。
匕首咲
じわり、と下腹部が熱くなる。
あ、血が出たかもな、と思ったが、それも興奮に追いやられる。
匕首咲
目が合う。
今日の"獲物"だ。
匕首咲
逆手に持ち直したナイフを、アーユスの肋骨の隙間に差し入れる。

先程散々いたぶったアーユスの内臓を守る骨。その合間に、針に糸を通すように。 
匕首咲
 
[ アーユス ] HP : 17 → 5
匕首咲
「ッ、オラァ!」
匕首咲
差し込まれたナイフの柄を拳で叩く。
ナイフは肺を裂き、柄は骨を砕いた。
アーユス
TOV
GM
*裁判 1ラウンド目 手番:アーユス
アーユス
冷えた金属が通った後に、熱を感じる。
アーユス
「ハハハハハ、ハハハハハ!」
裂かれ打たれ、青あざまみれの顔で血を吐きながら獰猛に笑う。
アーユス
無闇に笑う事で肺から登った血が唇を乱暴に濡らす。
「どうした!こんなもんか!来いよズベ公!楽しもうぜ!!」
アーユス
*闇雲、精確使用 d6 d8 対象は咲
アーユス
*精確
アーユス
1d6
DiceBot : (1D6) > 1
アーユス
カス
アーユス
-1しますぅ…
アーユス
2d6+3>=7
DiceBot : (2D6+3>=7) > 9[5,4]+3 > 12 > 成功
アーユス
踏み込んで、また血が迸る。
アーユス
上質な凶器 逆鱗 闇雲
アーユス
1d6+2+2+1
DiceBot : (1D6+2+2+1) > 5[5]+2+2+1 > 10
アーユス
鉄パイプを振り回し、咲に振り下ろす。振り下ろす。振り下ろす!
アーユス
血が落ちる。命が燃える!!
匕首咲
「だッれがズベ公だ頭スポンジ野郎!」
アーユス
「テメェ~~~だよ!」
匕首咲
ナイフをさらに刳り込もうとするが、鉄パイプが振り下ろされる。逃げるかどうか迷う前に次の一撃。骨が悲鳴を上げる。
[ 匕首咲 ] HP : 17 → 8
GM
豪華な衣装により1軽減され、9ダメージ 
GM
*1ラウンド目終了
子夏
*dQを棄てます
アーユス
*捨てるものなし
子夏
一度、安堵の息を吐いた。
匕首咲
* h8,cJを捨てます
子夏
乾いてこびりついた血を払い落としながら、再び中庭を睥睨する。
桟敷川映鏡
*s5を捨てます
アーユス
致命傷である傷を、救世主であることで立ちつづけている。
匕首咲
左腕を軽くぷらぷらと揺らす。
折れている、かもしれない。わからない。
痛くはない。動く。
なら、それで十分。
GM
*裁判 2ラウンド目 カード配布 
子夏
*[cK,c5],h4,sJ,c10
桟敷川映鏡
*s9.h9.dJ.sQ[s7] 
アーユス
*c2,d4,[d7,c8,hA] 
匕首咲
* Joker,d10,dK,cA(sA) 
GM
*裁判 2ラウンド目 手番:子夏
GM
1ラウンド、そう区切られる時間は終わった。
GM
血が流れ、観客が湧く中、2巡目の行動が始まる。
アーユス
「どうした!俺はまだ立ってるぞ!」
子夏
沈黙している。笑みを浮かべないまま、指先を女の方へ。
子夏
*奪取を使用[cK] 対象:匕首咲
匕首咲
「見りゃ分かるってんだよ!目ン玉付いてんのか!」
子夏
2d6+3+1+1=>7 判定:才覚+万能+多彩な凶器
DiceBot : (2D6+3+1+1>=7) > 7[4,3]+3+1+1 > 12 > 成功
子夏
*cAを奪います
アーユス
「教えてやったんだ!人の親切受け入れろやァ~!!」
GM
[特殊裁定]子夏:再度補助動作タイミング
子夏
*霊感を使用[sJ]
子夏
*d8を取ります 
子夏
再び風。
子夏
戦場を動かそうとするように、足元を渦巻く風が吹く。
子夏
だが、その表情は先程と違って硬いままだ。
子夏
視線は一度、咲ではなく、
子夏
血塗れのアーユスの方を向いたが、またすぐに戻った。
GM
*裁判 2ラウンド目 手番:桟敷川映鏡
桟敷川映鏡
*h9 鋭気を使用 dJ 刹那を使用。
対象はアーユス。 
桟敷川映鏡
2d6+3
DiceBot : (2D6+3) > 2[1,1]+3 > 5
桟敷川映鏡
*逆転をします。
桟敷川映鏡
*心の疵『大きな失敗』を抉ります。
出目1を6に変更。
桟敷川映鏡
動揺 ── の二文字。
桟敷川映鏡
その二文字だけで脳裏に過る、自身すら忘れてしまったあの失敗。
桟敷川映鏡
それだけで簡単に疵は開く。
こんなこと、本来だったらなかった
桟敷川映鏡
なかった、はずなのだから! 
GM
逆転によりファンブルが阻止され、刹那の判定が成功。
桟敷川映鏡
軍靴を踏み込む音。紙吹雪と共に青いマント姿が掻き消える。
桟敷川映鏡
銀のステッキの先端、狙いは男の肋骨の隙間。
アーユス
対応できない。
桟敷川映鏡
疵を重ねるように同じ孔を穿つ。
子夏
そう思った瞬間、あろうことか目を伏せた。
GM
妨害は無い。
桟敷川映鏡
1d6+2+2+2+3 威力+看破+逆鱗+鋭気
DiceBot : (1D6+2+2+2+3) > 3[3]+2+2+2+3 > 12
[ アーユス ] HP : 5 → 0
アーユス
2d6+1
DiceBot : (2D6+1) > 4[3,1]+1 > 5
GM
3~5 〈昏倒〉する。
アーユス
まだだ、まだ死なねえぞ
アーユス
そう言おうとして、声が出なかった
アーユス
子夏の方を見る。
子夏
目をつぶって、何かを堪えるように縮こまっている。
アーユス
ゆっくりと、膝を突いて倒れた。
アーユス
滑り落ちた鉄パイプがからからと乾いた音を立てる。
アーユス
風の音がする。
アーユス
低く唸る風の音が。
子夏
吹いている。
子夏
倒れたあなたをゆるやかに撫でた。
アーユス
意識が流れ、こぼれ落ちていく。立ち上がらなければいけないのだが。
アーユス
一人で戦うのだから、自分が倒れてしまえば
アーユス
あんな弱い男に。
アーユス
任せられるはずも
子夏
そして
子夏
頭を抱えて、怯えるように立ち尽くす男が残った。
GM
*裁判 2ラウンド目 手番:匕首咲
匕首咲
「はぁ~」

とんとん、とナイフの峰で肩を叩く。
匕首咲
地に伏せる強姦魔を見下ろす。

「でっかい口叩いた割には、あっけなかったなァ」
子夏
その言葉に、びくりと肩を跳ねさせて倒れた仲間の方を見た。
子夏
ようやく、攻防が終わったことに気が付いて、ハッとした顔になる。
子夏
口元が、一瞬、
子夏
笑みを浮かべかけて、すぐに戻った。
子夏
俯いて、大きく息を吐く。
子夏
風は相変わらず吹いている。
子夏
生半な攻撃であれば、防ぐことはいくらでもできたはずだ。
子夏
だが、どうしようもないままだった。
子夏
ほとんど、何もできなかった。
子夏
「……」
子夏
唇がわななく。
子夏
「僕は、いつでも、」
子夏
「殺せると、思って、らっしゃいますか」
子夏
声は酷くかすれて、震えていた。
匕首咲
アーユスの体に近づき、軽く頭を蹴飛ばす。
子夏
自分が蹴られたかのように体をびくつかせた。
アーユス
悪態を返すことはない。蹴られるがままだ。
子夏
止めなければ。
子夏
止めてどうする? 殺し合っている相手に懇願するのか? 
子夏
とんだ間抜けと思われるだけだ。
匕首咲
猫が捕まえた獲物を弄ぶように、動かないアーユスの体を足蹴にする。
子夏
敗者を好きに扱う権利が勝者にはある。
子夏
それを止める力が自分にはない。
子夏
いやだ。こわい。
匕首咲
「つっまんね~男だったな~。
 そう思わない?子夏セーンセ」

俯いた男の方を、振り返る。
子夏
「…………」
子夏
沈黙が返った。
子夏
饒舌も笑みももはやなく、男は俯いて、あなたたちの方を見ないようにしている。
匕首咲
「センセ、お手紙読んでくれたみたいで嬉しかったよ」

にこ、と微笑む。

「話が通じる人でよかった」
子夏
引きつった息が零れる。
子夏
あの手紙を読んで、恐ろしくて、とてもすぐには礼拝堂に迎えなかった。
子夏
怖かった。行けばアーユスが痛めつけられているのを見なければいけない。
子夏
助ける力は自分にはない。気力さえない。
子夏
ないのに。見てしまえば、思い出す。
子夏
「その、ひとを」
子夏
「まだ、痛めつけるつもりですか」
アーユス
遠くで誰かが喋っている。
匕首咲
「そうだよ」
子夏
「…………」
匕首咲
「こいつは、苦しむように殺す」
子夏
当然の報いだ。
子夏
彼は好きにこの女のことを痛めつけた。
子夏
「や」
子夏
弱者がこの場で制止の言葉を発しても滑稽なだけだ。
子夏
「やめてください」
アーユス
まどろむ意識の中、痛みだけが鳴り響き体を締め付けて固めている。
子夏の声が聞こえた気がする。
子夏
なのにどうして、自分はこうべを垂れてまで、こんな言葉を吐いている?
匕首咲
「う~ん」

確認するように、ちらりと映鏡の方を見る。
匕首咲
「またお願い聞いてくれるなら、ちょっと考えてもいいかな」
子夏
「……」
子夏
「なに、を」
子夏
「何をすればいいですか」
子夏
苦しみから逃れたかった。
子夏
声を上げるなら、もっと早く上げるべきだった。
子夏
そうすればあのこどもは死なずに済んだ。
子夏
あのこども。どこにもいなかったこども。
子夏
俯いて、あなたの言葉を待っている。
匕首咲
「じゃ」
匕首咲
「自分で死んでくれる?」
子夏
「……」
匕首咲
「苦しまないように殺す約束だったし、ちょうどいいと思うんだけど」
子夏
このあと何が起こるかも知らず。
子夏
父親に抱き上げられて無邪気に笑っていた。
子夏
あの満たされるべき無条件の信頼。
子夏
大きく、肩で息をした。
子夏
ひどく苦しい。
子夏
頭では、まだ逡巡している。
子夏
ここからまだ、彼を助けられるのではないかと思っている。
子夏
それがむずかしいことを理解している。
子夏
「……」
子夏
TOV
子夏
長い長い沈黙の後、か細い息が零れた。
子夏
「分かりました」
子夏
答えて、懐から小さな刃物を取り出した。
子夏
匕首というにも短い、それこそ自決のためにしか使えなさそうな小さなナイフだ。
匕首咲
「そ、よかった」
子夏
この対戦の間、一度足りとて使うことはなかった。
子夏
息をつく。
子夏
ぜんぶ幻だった。
子夏
しかしあの時、確かに自分は子供を見捨てた親になった。
子夏
道士の言葉が蘇る。

──お前は最後に愛だけを捨てられなかった。
──喜、怒、哀、懼、悪、欲。
──これらを捨てることは叶ったが、最後に愛だけが残ってしまった。
子夏
残っていたけど、捨てかけだったのには違いない。
子夏
夫を止めることも、身を挺して庇うこともできなかった。
子夏
見ていただけ。
子夏
声を上げたから何なんだ?
子夏
でも、だから、そうだ。
子夏
声を上げるなと言われていたのだ。
子夏
やれと言われたことをできなかった。
失敗した。
過ちを犯した。
捨て去ることも、抱え続けることもできなかった。
子夏
もはや仙人になることは叶わない。
かと言って、まっとうな人間に戻ることもできない。
子夏
俗世に帰ることもできず、どこにも行く場所はなく。
どこをどう彷徨ったのか、辿り着いたのがここだった。
匕首咲
* パスします。
GM
*2ラウンド目終了
子夏
*廃棄しません
桟敷川映鏡
*廃棄しません
匕首咲
* 廃棄しません
GM
*裁判 3ラウンド目 カード配布
アーユス
*全て廃棄
桟敷川映鏡
*切り札『告死』を手に入れます。 
GM
*裁判 3ラウンド目 手番:子夏
子夏
*主行動 自死を宣言[h4] 愛で判定します
子夏
2d6=>7
DiceBot : (2D6>=7) > 7[1,6] > 7 > 成功
子夏
*疵を抉ります 大きな失敗
子夏
*この1は6 
子夏
1d6
DiceBot : (1D6) > 3
[ 子夏 ] HP : 12 → 15
GM
スペシャルが発生。効果によりHPが回復。
子夏
願いが叶うという話を聞いて。
子夏
ああ、今度こそすべてを捨てよう、と思った。
子夏
今度こそ仙人になって、何も苦しみのない場所へゆこう。
子夏
ああ、でも今度こそ、今度こそと言って。
子夏
僕はずっと何もできなかったなあ。
子夏
視線が殺すべき相手、倒すべきだった相手ではなく。
子夏
倒れている仲間の方を見た。
子夏
血が迸る。
子夏
過たず喉を貫いて、
子夏
男は倒れて行った。
メイド3
「さて」
メイド3
「ペアの片方が死亡した場合、その場で敗北となります」
メイド3
メイドが静かに子夏に近寄る。手は触れない、だが、それが確かである事を確認する。
メイド3
「判決は死亡! これにて閉廷でございます」
GM
*裁判終了
[ 子夏 ] 大きな失敗 : 0 → -1
[ 子夏 ] HP : 15 → 0
[ 桟敷川映鏡 ] 大きな失敗 : 0 → -1
GM
判決が下り、観客席から歓声があがる。
GM
その音量、その怒号は、昏倒した者の意識を呼び覚ます。
アーユス
何かを感じて起きる。起きてしまった。
アーユス
上体を僅かに起こし、何かを探す。
子夏
中庭に流れていた風は止まっていた。
アーユス
痛む体を引きずって立ち上がる。
子夏
男が倒れている。
子夏
その体の下から、血が零れている。
アーユス
ぼろぼろの体で、ゆっくりと、見つけたものに歩み寄る。
群衆の歓声も、勝者の姿も何も見えず何も聞こえないかのように。
アーユス
「子夏」
子夏
答えはない。
アーユス
掠れきった声を漏らしながら、血溜まりにぱしゃりと膝をついた。
アーユス
少し前から、心の疵が抉れ、ねじれて穴が空いてしまっていた。
男の暗い暗い穴の底の記憶に光が触れてしまっていた。
アーユス
だから、無様に仲間の死体に歩み寄ることをやめられなかった。
アーユス
子夏の肩を揺する。起きない。
子夏
力なく体が揺れる。
アーユス
胴を揺する。起きない。
アーユス
体がひどく軽く感じた。
アーユス
この血の量ならばさもありなん。どこか冷静に思う。
多分、自分で死んだんだろうな。
バカなやつ。
アーユス
そう思うと、笑いがこみ上げてきた。
アーユス
肩を揺らし、出ないはずの笑い声が口の中に目いっぱいあった血と一緒に吹き出した。
アーユス
立ち上がり
アーユス
背中の、シャツの下に隠していたナイフを閃かせる。
ナイフは一瞬軌跡を描く――両手を広げ笑った。
アーユス
「おれは」
アーユス
「俺の支配者は、俺の王は俺だけだ」
匕首咲
「──!」

身構える。
アーユス
「俺を殺せるのは」
アーユス
「俺を殺すのは」
アーユス
「俺だけだ」
桟敷川映鏡
冷たい眼が男を見る。
アーユス
残った疵の力で無理やり声を出して笑う。
メイド4
メイドの一人がそこに近づく。手にはレイピアが握られている。
ペアが死亡した救世主の定めは一つ、だが……
アーユス
笑い声と共に、喉に赤いラインが走る。
アーユス
アーユスの喉に。
アーユス
ナイフの軌跡は、アーユスの首を通っていた。
アーユス
血がぱらりと花開いて飛び散り、床を濡らす。
アーユス
笑い声がすぅっと消えて、仰向けに――子夏の上に倒れ込む。
アーユス
まだすこし、暖かい。
桟敷川映鏡
ステッキをくるりと回して、地面を叩く。
匕首咲
「…………」

重なるように倒れた2人が動かなくなったのを見て、ナイフを鞘に収めた。
桟敷川映鏡
観客へ、黒い窓の向こうへ向けて両手を広げた。
桟敷川映鏡
「勝利です。私どもに賭けていた皆々様、御贔屓どうも有難うございました」
桟敷川映鏡
帽子を外して頭を下げる。
GM
館から絹を裂くような悲鳴が聞こえる。
GM
その悲鳴は7号室のメイドのものだ。
メイド7
メイドは救世主らと同じ末路を迎えて、その役目を果たす。
メイド7
仮面が外れ、床へと転がり落ちた。
GM
匕首咲
「思ってたより時間はかかったけど、まぁこんなもんか」

観客の歓声を背に、力尽きた"弱者"を見下ろす。
匕首咲
今日も勝ったのは自分だ。
"強者"は、自分だった。
匕首咲
「ふふ、ははは」
匕首咲
「あっはははははは!あははははは!」
匕首咲
「はははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは」
桟敷川映鏡
高らかに笑いを上げるパートナーを眺める。
桟敷川映鏡
しばらくそうしていたが、歓声を上げる客席へ向かって手を振るにつとめた。
桟敷川映鏡
いまひとたびの幕が降りるのだ。
GM
重たい両開きの扉が開く。
メイド1
現れるのは、1号室のメイド。
メイド1
「これにて、1号室、桟敷川映鏡様、匕首咲様と」
メイド1
「7号室、子夏様、アーユス様の裁判は決着いたしました」
メイド1
「勝者、1号室、桟敷川映鏡様、匕首咲様」
メイド4
レイピアを手にし、アーユスに敗者の運命を齎そうとしていたメイド────その必要はなかったが────が、敗者二人の死体から漁った6ペンスコインを勝者二人に差し出す。
メイド4
「こちら、6ペンスコインでございます。お収めください」
桟敷川映鏡
一礼して受け取る。
匕首咲
「どーも」

機嫌良さそうに受け取る。
メイド1
「次なる戦いへ向けて、しばらくのご休息をおとりくださいませ」
メイド4
そうしてメイドは深々と頭を下げると、中庭の”掃除”にとりかかる。
メイド4
箒、ちりとり、バケツにモップ。
メイド4
大きなゴミ箱をでんと起き、捨てるべきものをその中へ。 
メイド1
1号室のメイドだけは、二人を先導して屋敷へと進む。
メイド1
与えられた客室まで。暫しの休息をそこで過ごさせ……
GM
そしてこの館で、次なる殺し合いを開催するために。
声ならぬ声
賑やかな声は今は昔。
声ならぬ声
勝者は次へ進み、敗者は死に絶える。
声ならぬ声
男であるかも、女であるかも、子であるか、母であるかも。
声ならぬ声
その勝敗には関わらない。
声ならぬ声
勝負を決した要因は天運か、猟奇か、才覚か、
声ならぬ声
或いは、それは愛故か。
声ならぬ声
声ならぬ声
この地にて行われる伝説の儀式、オールドメイドゲーム。
声ならぬ声
そのうちの一幕が……ここに終幕。