Dead or AliCe
『16人の救世主』

お茶会-2ラウンド目

子夏
1d12
DiceBot : (1D12) > 11
アーユス
1d12
DiceBot : (1D12) > 4
桟敷川映鏡
1d12
DiceBot : (1D12) > 4
匕首咲
1D12
DiceBot : (1D12) > 7
アーユス
1d10
DiceBot : (1D10) > 5
桟敷川映鏡
1d10
DiceBot : (1D10) > 2
GM
TOT
[ 匕首咲 ] 強者の刃 : -1 → 0

第5シーン:子夏

GM
空き客室のうちの一つ。
子夏
絨毯の上に、男が倒れている。
子夏
額からは血が流れ、周囲にも飛び散った血がしみ込んでいた。
子夏
ぐったりとして、動く気配はない。
アーユス
――さて対戦相手が二人の時間を過ごしていた間。


薄く目を開き、ぼんやりとした意識と景色の中――自分が礼拝堂に居るということを思い出してなんとなく、嫌な気分になる。

アーユスが立ち上がって伸びをすると服の裾に着いた青い羽根がいくつか、ボロリと崩れて消えた。
アーユス
暫くして、陽気な鼻歌が子夏が倒れた部屋を通り過ぎかけて――投げ出された子夏の足を見つけたアーユスはおっとっととその部屋に戻る。
アーユス
倒れている子夏の肩を無遠慮に揺らす。
「ヘイヘーーイ何寝てんだーーい。」
肩バンバン。
子夏
びくりと指先が動く。
子夏
「………ッ……」
アーユス
「めっちゃ血出てる ウケるね」
アーユス
「何してんのぉ?」
子夏
「…………」
子夏
「……………ぁ、あ、どう、も」
子夏
腕に力が籠もって、震えながら起き上がった。
子夏
「いや、すいません。ちょっと、……いろいろあって」
子夏
未だ血のにじむ頭に手をやって、不快な感触と痛みに身を竦めた。
アーユス
「おはよぉ」
目を合わせてにっこり笑うと――子夏の衣服の胸元を掴み、部屋の壁に向かって軽く放り投げる。
子夏
「──」
アーユス
「なあなあ?なあなあなあなあ。」
子夏の目の前に立つと、足を顔の横に乱暴に固定する。
館の壁が軋んで不愉快な音を立てた。
アーユス
「今俺が何考えてるかわかる~~?」
子夏
驚いた顔。
アーユス
サンダル履きではあり得ない、救世主であるが故の力強い蹴りを壁に――子夏の顔の真横に何度も何度も叩き込む。
子夏
目を見開いて、あなたを見つめる。
子夏
動くこともできず、壁に血まみれの手をついたまま硬直する。
子夏
「……、………」
子夏
唇がわずかに動いたが、声が出てこない。
アーユス
「何か言ってよぉ」
ぺちぺちと、子夏の頬を触れる程度に叩く。
子夏
「…………ッ」息を呑んで、肩で息をする。
子夏
「……は、はは」
子夏
引きつった笑い声。
アーユス
「何笑ってんの?」
蹴り込まれる壁。
アーユス
右腕をプラプラさせながらニタニタと――本来は味方に向けられるべきではない笑顔を子夏に寄越す。
「あー、腕痛った~~~~~」
子夏
「……」再び声は失われるが、顔は笑みに歪んだまま。
子夏
果たして、笑みだったのかは分からない。引きつっているだけかも知れない。
子夏
「…………僕が、」
子夏
「僕が寝てるあいだに、なにか、ありましたか?」
子夏
かすれた声で問いかける。怯えが滲んでいる。
アーユス
……アーユスは公的な機関で学を得る機会がなかった。
その代わり、と言っていいのか何なのか。
余った男の頭脳は、世の中をうまく立ち回るために――媚びる相手の見定めと、媚び方と、弱い相手の見分け方と、弱点を察知するためにぐるぐると使われるようになった。
アーユス
「いやさー!俺思ったんだー!」
わざとらしい、チンピラの大声。
アーユス
「さっき子夏クンがいればさぁ~?逃げなかったらさぁ~!この腕だってここまでなんなかったもしんねーよなァーーってさ!?」
アーユス
壁を蹴り込む音。
子夏
分かっている。このわざとらしく壁を蹴るのも。大声を上げるのも。
アーユス
この男がチームメンバーで、殺せば"終わる"事はわかっている。
わかっているが、わかってはいるが。
足を止められない。弄ぶのが楽しいからだ。
子夏
これ見よがしの威圧であって、つまり、クローゼットの中で行われていたことと同じだ。
子夏
その対象が、敵から味方である自分に変わっただけだ。
子夏
ああ、さっきはひとまず我慢してくれた、先送りになったと思ったのに!
子夏
「は、はは……」
子夏
「僕も、本意では、なかったんですよ」
子夏
「でも、あそこでは……ねえ、考えてもみてください、ああするしかなかった」
アーユス
「フムフム!だから反省してここで流血してたワケか!大方アッチにやられたんだろ?」
子夏
「ええ、僕も、申し訳ないと思ってたんです!」
アーユス
「へぇ」
子夏
「だから、少しでもチームのために働けたらと、そう思って」
子夏
「芳しくはなかったですね」
アーユス
「……」
子夏
身を竦めたまま、あなたに笑いかける。
アーユス
この笑い方。
子夏
頭を殴られたせいでぐるぐると気持ちが悪い。
子夏
背にいやな脂汗が滲んでいる。
アーユス
「エヘヘ」笑ってまた壁を蹴る。
アーユス
「どうしよっかな~」
子夏
「…………ッ」衝撃に、ずきずきと頭の痛みがひどくなって、頭を庇うように縮こまった。
アーユス
「俺遊びに来ただけなんだよねー、ここ。」
しゃがみ込んで子夏の顔を、苦しむ表情を覗き込む。
子夏
「それは、」
子夏
僕も似たようなものだ、と肯こうとして止まった。
子夏
「……ここで遊んで、僕を殺して、そこで、遊びを終わりにします?」
アーユス
「それもいいよな?」
アーユス
「どう思う?」
子夏
「僕は……もうちょっと遊びたいですねぇ」
アーユス
「俺は何もかもどうでもいいんだよ、俺が楽しければ」
子夏
「今、」
子夏
びくりと、いやな震えが体に走った。さっき、同じ質問を投げかけた。
子夏
だがその時は、敵相手だったのにもかかわらず、ここまで怯えてはいなかった。
子夏
「楽しい、ですか」
アーユス
「んん?」穏やかな声で首を傾げ、子夏の頭に手をやって撫でる。
アーユス
傷口を探す指先。
アーユス
「どう見える?」
子夏
「……っ」
子夏
反射的に目をつぶって体を硬直させる。指先から、咄嗟に逃げられない。
子夏
問いには、沈黙が返った。
アーユス
「黙らないでよ~お話しようよ~」
優しく髪を掴む。ただの、暴力のための問い。
子夏
髪が引っ張られて傷が痛む。黙るべきではない。
子夏
黙るべきではないが、言葉は出てこなかった。
アーユス
目の前の男はニコニコと、楽しそうに子夏の反応を楽しんでいる。
[ 桟敷川映鏡 ] ティーセット : 1 → 0
子夏
*アーユスの『信仰の不在』を舐めます
子夏
えーと、才覚で!
匕首咲
* 横槍を入れます
匕首咲
Choice[猟奇,才覚,愛]
DiceBot : (CHOICE[猟奇,才覚,愛]) > 才覚
匕首咲
2D6
DiceBot : (2D6) > 8[5,3] > 8
匕首咲
1D6
DiceBot : (1D6) > 4
子夏
*ティーセットを使用します
[ 匕首咲 ] ティーセット : 1 → 0
[ 子夏 ] ティーセット : 1 → 0
[ 匕首咲 ] ティーセット : 0 → 1
子夏
2d6+3+3-4=>7
DiceBot : (2D6+3+3-4>=7) > 8[4,4]+3+3-4 > 9 > 成功
GM
*判定に成功。
アーユス
「ねえねえ!黙ってないでさ!」
髪の毛を掴む手に力を込めてからぱっと離す。
子夏
「──ッ」息が漏れる。
子夏
黙っていてはだめだ。
子夏
髪を離されて、恐る恐る顔を上げた。
アーユス
「ま、いーよ黙ってても。」
二転三転する要求――
アーユス
すぐさま指を広げて子夏の頭を掴んで、位置を掴んだ後頭部の傷に柔らかく――しかし爪を立てるようにして触れる。
アーユス
「あ~血が出てるね~かわいそ~」
心の伴わぬ、おどけた声。
子夏
目を閉じる。
子夏
痛みに身を竦める。
子夏
……黙っていてはだめだ。
子夏
分かっているが、苦痛が走るたびに、思考が散漫になり。
子夏
堪えなければ、と思う。
アーユス
不意に、子夏の足首を押さえながら立ち上がり――その足首を引っぱる。
アーユス
弱った男を強制的に仰向けにさせると、その胸の上に容赦なく体重をかけて座る。
子夏
「――!」
子夏
抵抗しようもない。
子夏
それでも咄嗟に、相手を押しのけようと手を伸ばす。
アーユス
その手を乱暴に払い、膝で踏む。
子夏
「っ……」息を呑む。
子夏
「あ、……」それでも何とか、声を。
子夏
酷く息苦しそうに吐き出して、相手を見た。
アーユス
「そんなに怖がんないでよぉ」へらへらと、しかし低い笑い声。
アーユス
「頭の傷、それぇ……死ぬのもつまんねーよなぁ?止血してやるよ。さっきのオカエシにね。」
アーユス
アロハシャツを脱ぐと羽根を毟って投げ捨ててから雑に丸め、子夏の髪を掴んで頭を上げ後頭部と床の間に押し込む。
子夏
「……アー、ユス、さん」
子夏
恐ろしい。何をされるのか。
子夏
相手の言葉は何一つ信じられない。
子夏
行為を止めるために、何かしなければいけない。
子夏
だが、アーユスがこうして相手を嬲るのを好むのはすでに知っている。
子夏
相手が”愉しもう”としているのを、ここからどうやって止められるだろう?
アーユス
子夏が藻掻いているのを見るのは、小さい頃にバッタの脚を毟って捨てた時のような童心を思い起こさせた。
アーユス
だけどこっちはバッタなんかよりもっといい。
表情がある。
子夏
そういう輩の矛先が自分の方を向かないようにしてきたし。
子夏
矛先が向いた時にどうするかも考えてはいた、だが。
子夏
こうしていきなり抑え込まれるのは想定していない。
アーユス
こうして不意を打ち、己の意のままに他人を弄ぶのは……何にも代え難い楽しみだ。
アーユス
「なあ、子夏クン。」
子夏
「……」
アーユス
地の底から這い登るような声。
アーユス
「俺たちって」
アーユス
「仲間?」
アーユス
歯を見せて笑い、左腕を上げ――ゆっくりと指を一本一本握って拳を固めていく。
子夏
「…ええ」
子夏
辛うじて答えた。相手からすれば、噴飯物だろう。
子夏
一度、自分は彼を見捨てて逃げている。
子夏
「その、はずですね」
子夏
それでも、そう言うしかない。
アーユス
しかし帰ってきたのは意外にも――
「よかったぁ」
アーユス
明るい声。
子夏
「……ッ」
子夏
一瞬、虚を突かれた顔になる。
子夏
油断をしてはならないと思いながら、あなたの緩んだ顔に安堵がわずか広がる。
アーユス
その顔を確認してから、子夏の右頬を軽く、しかし素早く殴る。
子夏
痛みが走った。
子夏
そういう人物だと分かっていながら、あなたの手管を何となく知っていながら、好きにされている。
子夏
息が覚束なくなり、怯えた目で見上げる。
アーユス
「俺思うんだよねー」
アーユス
「仲間ってさー」
アーユス
「分け合ってこそじゃん?」
アーユス
肩を揺すって笑う。
子夏
「……な」
アーユス
この男はそんな殊勝なことを一切思っていない。
ただの言い訳だ。
子夏
何を分け合うというのだ。
子夏
まさか、という顔。膝に踏まれた手を、引きずりだそうとする。
アーユス
わざと膝に体重を――子夏の腕に掛けてから立ち上がる。
アーユス
「おっと、さすがに今のじゃ折れねーよな?」
へらへらとした笑い声。
子夏
「……ッ」苦鳴ひとつこぼさず、それでも痛みに首を振って、
子夏
「な、にを……」
アーユス
「えら~い」
痛苦に悶える首の動きをわざと肯定と取る。
子夏
「あ、アーユスさん」
子夏
「やめ、やめましょう。そんな」
アーユス
数歩のところに落ちていた、何度かの使用で歪んだ鉄パイプを――まさしくこの館で凶行に使われた道具を拾う。
アーユス
「何を~?」
今までと同じ声の調子。
子夏
慌てて、身を起こす。頭がぐらついて、立つことができない。気分が悪い。
子夏
「ぼ、くを、いたぶるのは、あとでも」
子夏
そうだ。とにかくこの場を逃れることだ。
アーユス
「おっとっと」
子夏の鼻先を――あと僅かの距離を鉄パイプが掠める。
アーユス
「なー今さ」
子夏
彼の気分はめまぐるしく変わる。もし相手との戦いを乗り越えられたら、忘れているかも知れない。
アーユス
「今さぁ?」
子夏
「……」
子夏
びくりと体を跳ねさせる。
アーユス
鉄パイプで壁を叩く。
人間に当たるべきではない暴力の音が部屋中に響き渡る。
アーユス
「何考えてる?」
子夏
「──ッ」音に身を竦める。見透かすような問いかけに、言葉が詰まる。
子夏
「……は、はは」
子夏
笑いが零れた。乾いている。
子夏
「そりゃ、もちろん」
子夏
「どうしたら、あなたに、許してもらえるのか、ですよ」
子夏
どうにかそう言って、よろよろと立ち上がった。
アーユス
「何その笑い。」
立ち上がろうとした子夏の腹を、足先で小突く。
子夏
「っ」
アーユス
「もうちょっと俺たち、話し合う時間が必要だよねー」
子夏
「……ええ、僕も、そう思います」
アーユス
「じゃ」足を上げる。「ゆっくりしてきなよ」
子夏の肩を蹴る。
子夏
「~~~ッ!」
アーユス
立ち上がったばかりの子夏をまた床に寝かせる。
子夏
無様に転がって、何とか薄目を開いてあなたを見上げた。
アーユス
最初に会った時と変わらない顔であなたに歩み寄り、今度は座らずにその腹に足を置いて止めた。
子夏
呼気だけ、悲鳴のように鋭く音を鳴らす。
アーユス
ここで子夏を殺せば、自分が終わる。
それはわかっている。
しかし、しかし。
アーユス
「何からはなそっかな~」緩やかに、足に力を込める。
子夏
次第にみしみしと、軋む音が体の中からした。
アーユス
癪に障るへつらい笑いが、どうしても自分の奥深くの何かに火を点ける。
子夏
どうしたらいい?
子夏
彼が自分を嬲るのに飽きるまで付き合えばいいのか。
子夏
しかし、彼が飽きた時、自分は生きているか?
アーユス
ああでも、殺さないけど。
アバラの一つぐらいいいんじゃないかなぁ。
魔が刺して足を上げて――子夏の脇腹を蹴る。
子夏
衝撃に体が跳ねた。
子夏
「……ッ! ……!」呼吸すら止まって、蹴られた場所を守るように丸まる。
アーユス
その様子を見ればけらけらと声を上げて笑い
「アッハッハ、ごめんつい。
 いやでもさぁアバラってすげーイテーんだよね!」
アーユス
「俺も昔折って、スッゲ~キツかったんだよね~」
子夏
痛みで呼吸などできないのだ。自分もこの痛みは知っている。
子夏
かつて、黙っていろとだけ言われて。
子夏
あらゆる痛苦をこの身に受けた。
子夏
だがその時は、黙って耐えてさえいればよかった。
子夏
気まぐれに、思いつきで、何を求められているのかも分からないまま。
子夏
この人は地獄よりたちが悪い!
アーユス
暫く子夏が悶えるのを眺めて楽しんでから、ぽんとわざとらしく手を叩く。
「言うの忘れてたわー。」
アーユス
「俺が分け合いたいって言ったのはー」
アーユス
「今日の俺の痛み~」
アーユス
理不尽だ。
子夏
そんなことをして何になる?
アーユス
これはただ、運悪くあなたに降りかかる理不尽だ。
子夏
あなたがこの戦いに遊びで参加してるのは知ってたさ。
子夏
でも、曲がりなりにも仲間として戦って、倒すのは向こうの二人組だろう!
アーユス
この地獄を耐えても何もあなたに褒美はない。
子夏
そんな言葉があなたに何も響かないのは知っている。
アーユス
しかし逃げればこの男に何をされるかわからない。
アーユス
そして誰もあなたを助けない。
子夏
言葉は何も出てこない。あなたに何を言えばいいのか分からない。
アーユス
アーユスは鉄パイプで殴って、開きっぱなしのドアを閉めた。
子夏
殺されないのを祈るしかないのか?
アーユス
この男に僅かに理性が残って居ることを期待しなければいけないのか?
子夏
いまだ激痛に身悶えながら、視線をあなたへ向けた。
子夏
ドアの閉まる音さえ、痛みを及ぼす。
アーユス
「アバラな~地味なんだよな、痛みが。」
子夏
「ぅ……」
アーユス
「地味だけど呼吸するのも辛い。」
アーユス
袖代わりに見えるタトゥー塗れの腕。
タンクトップの男が、子夏の周りを鮫のように悠々と歩いている。
子夏
「ゆ、」
子夏
「許してください……許して」
子夏
ついに懇願をこぼして、丸まったままあなたを見上げた。
アーユス
「痛いもんねぇ!」
アーユス
「痛いのは嫌だもんねぇ。」
アーユス
「わかるよぉ」
アーユス
「でも俺、別に……」 
子夏
「……ッ」この笑み!
子夏
それが自分に救いを与えるものではないともう十分知っている。
アーユス
「君が別に悪くないって、理解しちゃいるからさ」
アーユス
タチの悪い答えだ。
子夏
「……」
子夏
じゃあ純粋に、本当に仲間同士痛みを分け合いましょうと思っていると?
子夏
そんなはずはない。
子夏
あなたがそういう態にしようとしているのを、何とか逸らさねばいけない。
アーユス
「運が悪かった。誰だってそうだろ?」
アーユス
暴力はいつだって理不尽な通り雨だ。
アーユス
少なくとも、この男にとってはそうだった。
子夏
「……」
子夏
「……今の、僕も?」
アーユス
上役からでも仲間からでも、信頼した相手からでも、不意に降り注いでは気分を台無しにしていくものだった。
アーユス
「どう思う?」
子夏
「僕は……あなたが、やめてくれるんじゃないか、って、まだ思ってますよ」
アーユス
「…………」
子夏
喋りにくそうに、か細い声で言って。
子夏
耐え切れず、床に額をつく。
アーユス
「子夏クンは俺のために何をしてくれる?」
子夏の頭の上に影を落とし、無意味な問いをかける。
子夏
芋虫のように丸まって、痛みに震える呼吸をして、降りかかる問いを聞いている。
子夏
「……あなたを、守るつもりでしたよ」
子夏
「本当です。……上手くはいかなかったですけどね」
アーユス
「人間誰だって失敗はあるよね~ 俺もよく失敗した」
子夏
「失敗する相手は嬲り者にするぐらいしか役目がないですか?」
アーユス
「い~やいや 盾にするとか、先に行かせるとか……キミ多分。わかるだろ?人間の使い方さ。」
子夏
「ええ」
アーユス
「キミに任せてれば俺をうまく使ってくれるんだろうな~って思った事もあったな~」
アーユス
「けど俺はさぁやっぱどうしても」
子夏
「……それは、申し訳ありませんね」
アーユス
「人をどうやって信頼したらいいのか」
アーユス
「わからない」
アーユス
「ずっと。」
子夏
「……」
アーユス
「そうだ。」
子夏
「………………」
子夏
沈黙。
子夏
肩で息をして、アーユスの方を見た。その表情を確かめようとする。
アーユス
「信用しないでもよかったし、それでなんとかなった。」
アーユス
その表情は、
アーユス
笑っていなかった。
子夏
ここまで話してきて。それははじめて。
子夏
本音に聞こえた。
子夏
…………まさか? この人は、僕を。信頼しようとしていたのか?
子夏
つまり僕は、それを裏切ったってことなのか?
子夏
ああ、それはなんて……
アーユス
「俺がほんとうに裏切られたのは、俺が覚えてる限りでは1度だけだ」
アーユス
「お前は」
アーユス
「2度めになるのかな?」
アーユス
「なるのかどうかを俺は確かめたい」
子夏
「…………」
子夏
「裏切りませんよ」
子夏
「僕とあなたは、生き残ろうとする限りは、一蓮托生なんだ」
子夏
「行くも戻るも一緒です」
子夏
「僕はあなたを見捨てましたが、死ぬ前に助けましたよ」
アーユス
「死なれたら困るからな」
子夏
「そうです。僕はそうします」
アーユス
「どんなカス野郎でも頭数だ。」
子夏
「あなたもそうしてくれて構わない」
子夏
「まあ、できる限り守ってもらった方が、勝てると思いますけれどね」
子夏
「僕はあなたのように腕っぷしも強くないし」
子夏
「あの彼女のように化け物でもない」
子夏
「僕のできることはほんの些細なごまかしや手管です」
子夏
「それがあなたの引いた札なんだ」
アーユス
「ハハ」
子夏
「できる限りのことはします」
子夏
「僕が返せるのはそれぐらいです。あなたは……」
子夏
「それで、信頼に足らないと思うかもしれないけれど」
子夏
「それなら、信じてくれないで大丈夫です」
子夏
「信じるに足る人間なんかいない」
子夏
「あなたは正しい」
アーユス
「そうだな」
アーユス
「俺はいつだって正しい」
アーユス
嘘だ。
子夏
「続けますか?」
子夏
問いは冷めていた。
アーユス
一度ため息をついた。
子夏
身を強張らせたまま、沙汰を待っている。
アーユス
人間の本質は、いつだって痛みの向こう側にある。
それを垣間見たと、自分は思っている。
アーユス
思っているが。
アーユス
いつだって遊びをやめられない!
アーユス
「殺しはしねーよ」
子夏
「……」
アーユス
子夏の上に座る。胸を避けて……骨盤のあたりにでも。
子夏
「つまらないかも、しれませんよ」
アーユス
「そうだね」
子夏
「我慢するのは、得意なんだ」
子夏
自分を鼓舞するようなその言葉は、言ってしまってからまずいと思ったが。
子夏
口にしてしまったものはもう戻らない。
アーユス
部屋の暖かな光を影にしてなお、歯をむき出しにして笑うのが見えた。
子夏
殺しはしない。
子夏
その言葉をもはや信じるしかないと悟っている。
アーユス
ポケットの中に手を突っ込んで何かを探る。
アーユス
アーユスのポケットから出てきたものは、子夏の目に一度キラリと光を返す。
アーユス
安全ピン。
子夏
「は」
アーユス
力が弱いほうの手で子夏の耳元の髪をかき分け、耳を引っ張り、色々な角度から下見する。
子夏
身を竦ませている。なすがままだ。
アーユス
もう片方の手からぴんと弾ける微かな音。 
子夏
針が出た音だと見なくても分かる。
アーユス
「はいこちら安全ピンとなっておりまーす」
わざわざ子夏の目の前に針の先を翳す。
子夏
「……」
アーユス
「安全ピン、俺は使ったことないんだけど……普段あれね、ピアッサー使ってるから。これでピアス開けるって聞いたことだけあるんだよねー」
アーユス
軽いトークと共に、耳上部軟骨に、針が刺さる。
子夏
「な」
アーユス
力で、貫通させる。
子夏
声を堪える気配。
子夏
鋭い痛みに耐えるように体が強張り、それがほかの傷を痛ませる。
アーユス
あなたを見ている。
子夏
「──、ッ……」すっかり顔からは血の気がない。
子夏
唇がわなないて、それでも声は出てこない。
アーユス
「あっそうだ」傷口から耳の外周をなぞり、少し下に。
アーユス
「ここ開けたら俺とオソロのやつ通るよ。」
アーユス
別にそれで相手が喜ぶとは毛頭思っていない。
子夏
沈黙して、痛みを堪えている。
アーユス
ただ、安全ピンが引き抜かれ、新しい指の位置に刺さるだけだ。
子夏
息を呑んで、新しい痛みに耐える。
アーユス
またも力で無理やり貫通させ、安全ピンを新しい穴にぱちんと固定する。
アーユス
辺りを見回し――たまたま手に届く位置にあった、運良く蓋の空いてない酒瓶を手にとって壁で蓋を割り散らかす。
アーユス
「まあ消毒これでいっか」
アーユス
その酒を子夏の、今できた患部に振りかける。
子夏
絶対よくない、と声を上げる間もない。
子夏
傷口に酒が沁みて、新しい痛みを発生させる。
アーユス
残った酒を一口飲み、子夏を見ながら痛いよねー、と声には出さず目線だけで笑った。
アーユス
まあ俺が掛けられたのは酒じゃなかったけど。
アーユス
酒をもう一口。
子夏
腕で顔を隠して、ぜえぜえと息をついている。
アーユス
「っつ」割れた瓶の端で唇を切った。
アーユス
舌打ちすると、瓶を投げ捨てる。
アーユス
しかし、殺さずに嬲るというのは……
アーユス
正直な話。
アーユス
昔良くやった事だ。
アーユス
この世界に来てから救世主相手は、殺すと決めたからにはすぐに殺さなければならなかった。
アーユス
まるで故郷に帰ったようなワクワク感!
アーユス
笑ったまま、顔を隠す腕を無理やり引き剥がす。
子夏
あなたが郷愁に胸をときめかせているとも知らず、早く終わることを祈っている。
アーユス
「次はそうだな。」
子夏
腕をはがされて、恐る恐るにあなたと視線を合わせた。
アーユス
「怖がっててもいいぜ」
子夏
「……」
アーユス
心底楽しそうに笑っている。ずっと。
子夏
つまり、この人はそういう人なのだ。
子夏
人をいたぶるのが好きなんだ。それははじめから分かっている。
アーユス
ライオンがじゃれついているようなものだ。
子夏
だから、予想外だったのは、彼が僕を信じているなどと言ったことで。
子夏
こんな人がこんな僕を信じようとして、裏切られたと感じたことだ。
アーユス
信じようとして、信じ方がわからなくなっていた。
この国に来てからは、特にそうだった。
アーユス
ずっと必要としなかったものが、産まれ方を解らずにさまよってのたうっている。
アーユス
どうすればいいのかわからなかった。
アーユス
だから、自分のものさしで図るしか、ものさしを押し付けることしかできなかった。
アーユス
言葉だけでは散々、たとえ愛があったと思っても
アーユス
何もなかった。
アーユス
だからアーユスは。
アーユス
子夏の上着の首元を掴んで引っ張り、肩を露出させる。
子夏
「……ッ」
アーユス
自分に出来ることをやってみるしかない。
アーユス
「俺さっきあの女に食われた時思ったんだよね」
アーユス
「そういえば人生で人を思いっきり噛んだこと、意外となくない?って」
子夏
答えはない。
子夏
あなたの与える痛みを予感して、身を強張らせている。
アーユス
「仲間だろ」
脅迫の言葉と一緒に、大きく口を開ける。
アーユス
こういう時に出す言葉では無いような気がしたが、いつも都合よく使われた言葉なので、彼はこれ以上にうまい使い方を知らなかった。
アーユス
子夏の肩に、ゆっくりと歯が当たる。
子夏
怯えに、息が上がっている。
アーユス
温かい――熱いほどの口の温度が伝わってから、舌が適当な場所に身の置き場所を定める。
じわりと、歯が子夏の肩口に食い込む。
子夏
ぬめる舌が肌の上を動く怖気。歯が皮膚に食い込む痛み。
アーユス
噛むのが首元でなかったのは、アーユスにまだ理性と頭があることの証拠であるが、そんな事がどうでもよくなる痛みが肩からじわじわと広がっていく。
子夏
指先が跳ねて、あなたの腕を掴む。
子夏
汗と血で濡れている。
アーユス
(人間の皮膚って)
(けっこー硬いんだな)
アーユス
しかしアーユスは救世主だった。
アーユス
皮膚が限界を迎え、まず犬歯が侵入する。
子夏
突き破られた皮膚から、血が滲み出るのを感じた。
アーユス
血が滲み、溢れ、前歯が食い込む。
皮膚が潰れ、裂ける、刺さる――複雑な激痛を与える。
子夏
全身に力が籠もり、脚が勝手にあなたを跳ねのけようとばたつく。
アーユス
いよいよ血が流れ出し、口内に慣れ親しんだ、しかし違和感の深い鉄の味が広がる。
アーユス
脚をずらし、ゆっくりと子夏を押さえつける。
子夏
息が整わない。皮膚を突き破り、肉を歯が貫いていく痛み。
子夏
確かに死にはしないかもしれない。だが、損なわれる恐怖はどうしても襲ってくる。
アーユス
少し開けた唇の端からあなたの血が溢れ、服を汚す。
アーユス
ビール瓶で切った唇から溢れた血と共に混ざり合って流れ落ちる。
アーユス
(顎疲れるな)
アーユス
(やっぱ噛むのに適した顎ってちげーわ)
子夏
あっと言う間に食いちぎられた方がマシだ。
アーユス
頑張って深く噛む。――が、口内一杯に噛んで食いちぎるというのは、やはり難しい。
アーユス
「む、」一度力を緩めて血を追い出してから、もう一度強く噛む。
子夏
ぎくりと体が跳ねた。
アーユス
片腕で子夏の頭を押さえつける。
アーユス
もう一度深く噛んで――皮下組織に達したか達しないかというところで歯を閉じようとしたり、噛んだまま引っ張ってみる。
子夏
「──ッ!?」
子夏
息を呑む。まさか本当に食いちぎろうとしているのか?
アーユス
乱雑な牙の動きに、無闇に血が溢れ、皮膚の奥から嫌な音を届ける。
子夏
思わず、手を突っ張った。だが、震えていて、あなたの胸を力なく押すだけだ。
アーユス
子夏の恐怖心を煽ったところで――水から顔を上げたような呼気の音がした。
アーユス
口と胸元を血まみれにした、下手な吸血鬼のようになったアーユスの顔がある。
子夏
荒く息をついて、脱力する。ばたりと腕が落ちて、辛うじて開いた目があなたの血まみれの顔を捉えた。
アーユス
少しばかり汗をかいて、あなたの顔を見てから、自分の作った傷口を見る。
アーユス
「いやー食いちぎるのって難しいね。」
子夏
痩せた肩に、くっきりと血まみれの歯形が残っている。
子夏
あなたがむやみに顎を動かしたものだから、酷い傷痕だ。
子夏
「……か、た、これ、繋がってます……?」
アーユス
これが地元だったら歯医者の記録から捕まってたのかな?
けどまあ、歯医者行ったことないし大丈夫か、とどうでもいいことを考えたりしながら。
アーユス
「あるよあるある。つながってる。」噛んだ側の腕を指先からきゅっきゅと握っていき、最後に噛み傷に指を突っ込んだ。
アーユス
意外と深いな。なんて思ったり。
子夏
「……はっ!?」
子夏
いきなり指を突っ込まれるのは予測できなかったらしい。顎をのけぞらせて、驚いたような声を上げた。
アーユス
そのまま傷口を指先で好き勝手に弄び、自分の歯列について考えている。
子夏
すぐに手で口を塞いで、声を堪える。
アーユス
「声、出るねー」小さく笑って。
子夏
「…………」思わず、あなたから目を背けた。
アーユス
「…………」楽しくなってしまうべきではないのだが。
アーユス
自分より弱い人間を嬲るというのは、貴重な娯楽であるからして。
アーユス
「そういえばセンニンのシュギョー?そういうので辛抱強いのかな?」子夏の片手を、勝手に握って自分の方へ引っ張る。
アーユス
子夏の手を勝手にまじまじと見る。
子夏
力仕事などしたことのなさそうな細い手だ。
子夏
「……そ、ですね。声を……」
子夏
「声を上げるなと……、言われて」
子夏
「は、はは……」
アーユス
自分よりも細い、女と張り合える程度の手を、指先を、物珍しそうに眺めながら。
子夏
笑い声が零れた。
アーユス
「で、こういう事されてもあんまり声出ないってよっぽどヤベーじゃん!」
子夏
「あの時は、」
子夏
「殺されましたからね」
アーユス
「ほぉお」
 
子夏
「痛いのは、平気なんです」
子夏
「いや、平気じゃあないけど」
子夏
「我慢は、できる」
子夏
目も虚ろに、ぼんやりと声を上げている。
アーユス
俺もだよ、と言わずに子夏の手を持って――中指の第一関節に強く噛み付いた。
子夏
「っ……」
アーユス
「耐えるねぇ」
子夏
「一言も……喋っちゃ、いけなかった」
アーユス
笑って、次は薬指の第一関節に犬歯を突き立てる。
子夏
「……」
アーユス
「死ぬまで、一言も。」
子夏
「ええ、死んでから、も」
子夏
「女に、はは」
子夏
「女に生まれ変わらせられたんです」
アーユス
人差し指を噛もうと歯を当てたところで
「死んで、女に?」
自分の世界観、人生観に無いことに目を瞬かせる。
アーユス
「いや……なんか騙されてない?それ」
アーユス
「そういうプレイじゃないの」
子夏
「そう、啞の美女だと評判になってね」
アーユス
「やっぱそういうプレイじゃん」
子夏
「金持ちに買われて」
アーユス
「趣味じゃん」
アーユス
「趣味じゃん!」
子夏
「子供を産まされて」
アーユス
「ヘェー!?」
子夏
「我慢しましたよ」
アーユス
「いやすご」 
子夏
肩で息をする。
子夏
「でもねえ、アーユスさん」
子夏
「旦那がね、こどもを」
子夏
「僕の声が聞きたいと言って」
アーユス
慰みに指を噛んでいた動きが止まる。
子夏
「目の前で、床に」
子夏
「ああ、あれを我慢してりゃあなあ」
子夏
「今頃仙人になって、こんな場所には来ずに済んだかもしれない」
アーユス
「そうだねえ」
アーユス
「今こんなとこで味方を襲うアホと組まずに済んだ。」
子夏
「だからねえ、アーユスさん」
子夏
「人なんか信じるもんじゃありませんよ」
子夏
「愛するものじゃない」
子夏
「あなたは正しい」
アーユス
指から口が離れていく。
子夏
「僕を信じようとしたことなんか、忘れたらいいですよ」
子夏
「その方がいいに決まっている」
アーユス
「ふふ」
今までの笑いとは違う、今までになかった声色。
アーユス
「そうだよ。」
アーユス
「俺は、」
アーユス
「俺が」
アーユス
「正しいよ」
子夏
「は、はは、あはは……」
子夏
「はははは……」
子夏
笑うたびに痛みが走る。
子夏
それでも笑うのをやめられない。
アーユス
力の抜けたアーユスの手から、子夏の手が滑り落とされる。
子夏
愉快だった。
子夏
力なく体を投げだしたまま、笑い続けている。
アーユス
子夏の首に、やおら両手が絡みつく。
子夏
「……」
子夏
笑い声がぴたりと止まって、あなたを見上げる。
アーユス
じわりと力が籠もる。
子夏
あなたを見つめている。
アーユス
あなたの見たそれは、とても今から首を締めて殺す人間の表情ではなかった。
アーユス
それは嗜虐を楽しむ人間の顔でもなかった。
アーユス
信頼というものを得られずに悲しむ人間の顔でもなかった。
アーユス
泣いてはいなかった。
アーユス
ただ、殺すような顔ではなかったため、つまりは。
その両腕は力を失って。
アーユス
アーユスは、何も言わずに体を折り、子夏の胸に頭を置く。
その顔は、見えなくなった。
子夏
子夏は脱力したままだ。
子夏
あなたを押しやろうとした腕も、今は床の上に落ちている。
子夏
その手はあなたに触れたり、撫でたりすることはない。
アーユス
何も求めず、何も求められない。
アーユス
沈黙と、呼吸音だけが響く。
子夏
それでもあなたが、まだどこかで信じたいとか。
子夏
愛したいとか。
子夏
信じられたいとか。愛されたいとか。そういうことを願っているなら。
子夏
この男には、それは与えられない。
アーユス
そしてこの男は、それを願うことができない。
子夏
それでも、この戦いに参加した以上は。
子夏
最後まで共に戦わねばならないのだ。
アーユス
たとえ愛も信頼も何もなくとも。
アーユス
たとえ、それで、死んでも。
アーユス
しばらくして。
アーユス
子夏から顔を上げた男の顔は、いつもどおりのものだった。
アーユス
「いやー腕ェ痛くてイライラしてさぁ……あっごめん治ってたわ!ギャハハ!」
子夏
「……は?」
アーユス
ピンクのアロハに着いていた(今は毟られた)青い羽根は歯抜けのように減っていた――どこかの何かの 奇跡の効果が使われていた。
子夏
そういえば、さっきからあなたの腕はまったく不自由なく動いている。
子夏
「治ったんですか? あれが?」
アーユス
床に投げ捨てていた青い羽根を拾い上げる。
「これこの羽根。持ってたらケガ治るんだわ。」
子夏
「はあ、それはすごいものをお持ちで……」
アーユス
「イーッヒッヒッヒャ~怖がらせちゃってごめんね~?これあげるから許して?ね?」
人を小馬鹿にした、いつもの笑顔だ。
子夏
「あ、これはどうも……」
子夏
こちらはまだ傷が痛んで、脂汗が滲んでいる。
アーユス
そう言って青い羽根を押し付ける。持っていれば、アーユスに付けられたケガの大まかな部分は治るだろう。
子夏
「……ははあ、これはすごいものですね」
子夏
「癒しの力を持った救世主っていますけど、それに似てるな」
アーユス
血まみれのアロハを着ながら。
「そうそう。そいつの。」
アーユス
「そういうやつがいたから"ちょっと"ね」
子夏
「へええ」
アーユス
「今はどうなったかな?ハハ!」
子夏
詳しくは聞くことはなく、治った傷を確かめている。
子夏
安堵の息をついた。
アーユス
子夏の手の中でボロボロと消えていく青い羽根を見る事も無く――「あっそうだ。治るまで阿片でもヤっか。痛み止めになるでしょアレ。」
子夏
「クスリはどっちかひとりずつの方がいいかもしれませんよ。じゃんけんします?」
アーユス
「やったろうじゃん」
アーユス
「はいじゃーんけーん」
アーユス
Choice[グー,チョキ,パー]
DiceBot : (CHOICE[グー,チョキ,パー]) > グー
子夏
Choice[グー,チョキ,パー]
DiceBot : (CHOICE[グー,チョキ,パー]) > チョキ
子夏
「あ~」
アーユス
「俺の勝ち~~~~~~」
子夏
「どうぞごゆっくり! ああ……」
子夏
部屋を見回す。ここもそれなりにぐちゃぐちゃだ。
子夏
「僕たちの部屋も駄目でしょうし、ほかの空いてる部屋に移動しますか?」
アーユス
子夏の視線を後追いする。
「それな。」
***
そうして、7号室の二人は――
メイドに散々な迷惑をかけて、
館の資産を好き勝手に使い込み、
新しい部屋に移動していった。
***
嵐は過ぎ去った。
少なくとも、今暫くは。
***
子夏
「だからねえ、アーユスさん」
子夏
「人なんか信じるもんじゃありませんよ」
子夏
「愛するものじゃない」
子夏
「あなたは正しい」
子夏
人の本質は痛みの向こうにこそある。
子夏
「僕を信じようとしたことなんか、忘れたらいいですよ」
子夏
「その方がいいに決まっている」
子夏
その向こうにあったものが何であれ、行為に終わりは訪れた。 
子夏
終わって、あとは、体裁が整えられた、と言っていいだろう。
子夏
見かけ上、つけられた傷は消え
子夏
血の跡だけが残されている。
アーユス
途中にいくつかいざこざはありましたが……
無事に子夏は毛羽立ったアーユスの疵を撫でる事に成功しました。

腕も使い切りの奇跡で治し、アーユスも今は阿片をくゆらせています。
子夏
少し離れて開け放たれた窓の傍に座り、ぼんやりしている。
子夏
とにかく、これで味方に殺されて脱落、なんてことはなくなった。
子夏
体はまだだるいし痛みもするが、先のことを考えるべきだろう。
子夏
ずいぶん時間を使った気がするが、向こうの動きはなかった。
子夏
意外と、あっちも後を引いているのかな?
子夏
果たして今頃、何をしているのやら。
GM
何もなかった。
GM
当事者たちはそう言うのだろう。
GM
ここは、そういう空間だった。
GM

第6シーン:匕首 咲

GM
1号室────
匕首咲
シーツと布団の波間で、咲は目を覚ました。
匕首咲
下腹部はじくじくと痛んだが、術後のような鋭い痛みはない。
少しだけ皮膚が引きつる感覚が残っている。
匕首咲
辺りを見回して、映鏡の姿を探す。
桟敷川映鏡
窓近くの椅子に座ってそちらを見ている。当然、すぐに目はあうだろう。
桟敷川映鏡
「おはようございます」
匕首咲
「おはよ」

ゆっくりと体を起こす。
匕首咲
「結構寝てたかな、ごめん」
桟敷川映鏡
「向こうの動きもありませんでしたし。ゆっくり休めましたよ」
匕首咲
「そっか、じゃ、よかった」
匕首咲
ベッドから下りようと、布団をどけて足を下ろす、が。
匕首咲
「あー………」
匕首咲
寝間着代わりのバスローブの尻が血に染まっている。シーツも同様に。
桟敷川映鏡
「……」
匕首咲
――子宮切除を行った場合、術後に性器から出血することは珍しくない。個人差はあるものの、1ヶ月ほど出血が続いても異常ではないのだ。
匕首咲
術後経過を見る必要のない快楽殺人者がどこまで認識していたかはさておき。
桟敷川映鏡
「傷の状態を見ましょう」
桟敷川映鏡
椅子から立ち上がる。
匕首咲
「なんだよ急に。切ったんだから血も出るだろ」
匕首咲
少しばつが悪そうに、しかし落ち着いた様子で言う。
匕首咲
女は、股から血を流すことに慣れている。
匕首咲
それはそうだ。女が母になるためには、3回股から血が流れる。
1回目は経血、2回目は破瓜、3回目は出産。
匕首咲
これは、多分、3回目。
何も産まれていないけれど。
桟敷川映鏡
「急に腸ぶちまけられても困りますしね」
桟敷川映鏡
皮肉──の裏に、少し責務が滲む。
なにせ縫合はしたのは初めてなのだから。
桟敷川映鏡
自身の手落ちでペア相手の戦力を削ぐとは、あまりに不出来じゃあないか。
匕首咲
「だいぶ痛くなくなってるし、大丈夫だと思うけど」

そうは言うものの、大人しくベッドに腰掛け、バスローブを僅かにはだけさせる。
桟敷川映鏡
患部に視線を走らせる。
表面的な縫合は解けていない。内部の出血だろう。
匕首咲
乾いた血がにじむガーゼの下。
跡は残っているものの、傷口はすっかりふさがっていた。
心の疵の力だろう。
桟敷川映鏡
「おや。こちらは塞がってますね。中だけ治りが遅いんでしょうか」
桟敷川映鏡
心の疵がどのように治癒に作用するものだろうか。
とにかく、傷は治りつつあるらしい。
桟敷川映鏡
それじゃあ、慣れてるだろう。
このぐらい。
桟敷川映鏡
女は股ぐらから血を出す生き物なんだ。
桟敷川映鏡
1回目は経血、2回目は破瓜、3回目は出産。
桟敷川映鏡
ならこれはなんの血だ?
匕首咲
「まぁ、内臓だしな。そんなもんだろ」
匕首咲
特に気にしていない様子で、着衣を正そうとする。
匕首咲
そして、ふと、縫い閉じた下腹部を見下ろした。
匕首咲
「それにしても」
匕首咲
「内臓1個減った割には、痩せたりしないんだな」
匕首咲
子を抱く器がなくなったはずの、下腹部を撫でる。
匕首咲
「生理かよってくらい血も出てるし、下っ腹も痛いし、あんまり子宮取った実感ないわ」
匕首咲
*映鏡の大きな失敗を舐めます。判定は猟奇
アーユス
TOT
子夏
*横槍します
子夏
Choice[猟奇,才覚,愛]
DiceBot : (CHOICE[猟奇,才覚,愛]) > 才覚
子夏
2d6+3=>7
DiceBot : (2D6+3>=7) > 5[3,2]+3 > 8 > 成功
子夏
1d6
DiceBot : (1D6) > 6
GM
では、マイナス6の修正。
匕首咲
*ティーセット使います
[ 匕首咲 ] ティーセット : 1 → 0
[ アーユス ] 信仰の不在/咲 : -1 → 0
匕首咲
2D6-6+3+2
DiceBot : (2D6-6+3+2) > 7[3,4]-6+3+2 > 6
GM
*失敗
[ 子夏 ] HP : 14 → 13
桟敷川映鏡
子宮の正しいグラム数は知らないが。
桟敷川映鏡
ティーカップひとつぶんほどはあるはずだ。
桟敷川映鏡
「失礼します」
桟敷川映鏡
腹部に手袋のまま触れる。
匕首咲
「おい、ちょ――」
子夏
ノックの音。 
子夏
部屋の空気を壊すように、何気なくドアの叩かれる音がする。
桟敷川映鏡
立ち上がる。
子夏
『起きてらっしゃいますか?』
桟敷川映鏡
「寝てます」
匕首咲
着衣を直している。
子夏
『それは残念!』
子夏
その言葉とともに。
子夏
扉が開いた。 
匕首咲
ベッドの上の布団を直して、血の染みを隠した。
子夏
「お邪魔でしたね」
子夏
知ってました、という顔で言って頷いた。
桟敷川映鏡
「さぁ?そうでもないかもしれませんよ」
桟敷川映鏡
椅子に腰かける。
子夏
「じゃあ、いいタイミングだったのかな?」
子夏
部屋に入ってこようとはせず、廊下と部屋のあいだに突っ立っている。
子夏
だるそうに開いた扉に寄りかかった。
子夏
着ている上着には、隠すでもなく血の跡。
子夏
「実は、お茶会のお誘いに来まして」
子夏
「そちらのあなたに」と、指先を仮面の男の方へ。
桟敷川映鏡
「おや、私ですか」
子夏
「はい、ぜひ来ていただければと」
子夏
ちらりと咲の方を見て、「そちらの彼女は、まだお休みいただいた方がよさそうですし」
子夏
へらへらと笑っている。
桟敷川映鏡
「構いませんよ、また後程」
子夏
「はい! お待ちしています」
匕首咲
そりゃどうも、と小さく呟いた。
子夏
「あ、そうだ」
子夏
「さっきはありがとうございました。痛かったですよ」
子夏
と、頭の後ろを自分でさすってニコッと笑って。
桟敷川映鏡
「痛くするつもりでしたからね」
子夏
「あっはは」
子夏
「それじゃ!」
子夏
悠々と扉を閉めて去っていった。
匕首咲
「……そういえば、あいつら招待状使い切ってるんだっけ」
匕首咲
「だから直接来たのか……」
桟敷川映鏡
「そうみたいですね」
匕首咲
「お茶会か。
助けるとは言わないけど、行けたら行くわ」
匕首咲
そんなことを言いながら、伸びをしてバスルームに向かう。
桟敷川映鏡
その背を椅子に座ったまま見送る。
桟敷川映鏡
1回目は経血、2回目は破瓜、3回目は出産──
桟敷川映鏡
バスローブについた血をふいに脳裏から外して、窓の外を見た。
匕首咲
部屋に、シャワーの水音だけが響いた。
GM
あちらに残された招待状は、残り少ない。
GM
しかし同様に、お茶会に残された時間も僅か。
GM
裁判の時は迫っている。
GM

第7シーン:アーユス

アーユス
1d12
DiceBot : (1D12) > 6
GM
6 : 中庭。ベランダ、窓から見下ろせる作りになっている。門は固く閉ざされている。
アーユス
中庭にはティーセットとテーブル。
そして席の一つには雰囲気にそぐわない男が座っている。
桟敷川映鏡
マントを翻して歩いてくる。
桟敷川映鏡
「お呼びいただきましたようで」
アーユス
「やっほ~」
アーユス
「呼んだ呼んだ。」
アーユス
「まあちょっと暴れたし、ここいらでいっちょ休憩を兼ねたお話ティータイムとでもシャレこみましょうや。」
桟敷川映鏡
返事も待たずにテーブルに着く。
子夏
座ってにこにこしている。
桟敷川映鏡
「お茶でよろしいんですか?せっかくこの館にはなんでもあるというのに」
アーユス
「メイドちゃ~んスコーン持ってきて~ クロテッドクリームもりもりで~」
アーユス
「酒ならもうココに来てからずっと飲んでるぜ」
メイド7
「仰せのままに」
子夏
「頼んでみました? いろいろ出ますよ」
アーユス
「ほぉら注文しなしな 俺のおごりだ」おごりではない
桟敷川映鏡
「水で」
子夏
「水なんだ」
アーユス
「マジかよ~!」
メイド7
「軟水、硬水、炭酸水の他、ドブ川の水もご用意できますが」
子夏
「味が付いてるもの嫌いだったりします?」
アーユス
「俺のおすすめは炭酸水だぜ」
桟敷川映鏡
「軟水でお願いいたします」
メイド7
「畏まりました」
桟敷川映鏡
「甘いものはそんなに好みませんね」
アーユス
「ならコーヒーとか」
桟敷川映鏡
「カフェインは胃に悪いので」
子夏
「なるほどな~」
アーユス
「内臓繊細ちゃんかァ?」
子夏
持ってきてもらったスコーンをもぐもぐ食べている。
桟敷川映鏡
「こう見えて案外繊細なんですよ、私」
子夏
「繊細な人に頭殴られたんですね僕」
桟敷川映鏡
サーブされた水を飲んでいる。
桟敷川映鏡
「殺さなかったじゃないですか」
アーユス
「へぇ~例えば同室の女の子の一挙一動にドキドキしちゃったり?!」
子夏
「生きてますねえ」
子夏
「いや~死ななくてよかった」
桟敷川映鏡
「ははは、ご冗談を」
アーユス
へらへら笑って足を組んだまま、紅茶の香りを嗅いでから一口。
子夏
肩口の乾いた血を触った。
アーユス
「いや~死んだら困るよハハハ」
子夏
「咲さん、大丈夫そうでしたか?」
アーユス
「ところでキミのカッコさぁ気合入ってるよね なんかの劇団?」
桟敷川映鏡
「難しいことをおっしゃいますね」
子夏
「ずいぶん疲れていたでしょう」
桟敷川映鏡
「猫は何故猫の毛皮を着ているのか?という質問に相当しますよ」
アーユス
「俺が気になったら猫にもその質問しちまうね」
桟敷川映鏡
「咲さんは大丈夫だそうです」
アーユス
答えられるかはさておき。スコーンを食べながら。
アーユス
「おおそいつぁよかった」ヘラヘラ。
子夏
うんうん頷いている。
桟敷川映鏡
「ここに来た時にはすでにこの服を着ていたんです」
アーユス
「マジで猫レベルかよ」
子夏
「いつの間にか着てたんですか?」
アーユス
「ええ……来る前は?」
桟敷川映鏡
「来る前も着てたんじゃないでしょうか」
子夏
布巾で手を拭いて、紅茶のカップを手に取った。
子夏
曖昧な答えに目を瞬かせている。
アーユス
「えっ何?そのはっきりしなさ 記憶喪失?」
アーユス
口の端に着いたクリームを指で拭って舐めながら。
桟敷川映鏡
「いいえ。ただ猫は猫ということですよ」
桟敷川映鏡
「私、怪人ですし」
アーユス
「怪人。」ははぁという音。
アーユス
*桟敷川映鏡 の二重人格を猟奇で抉ります 
匕首咲
* 横槍を入れます
匕首咲
Choice[猟奇,才覚,愛]
DiceBot : (CHOICE[猟奇,才覚,愛]) > 愛
匕首咲
TOV
匕首咲
* ティーセット使います
匕首咲
2D6+2
DiceBot : (2D6+2) > 5[1,4]+2 > 7
GM
成功。
匕首咲
1D6
DiceBot : (1D6) > 5
匕首咲
* ヤリイカを使用します
アーユス
2d6+3-7>=7
DiceBot : (2D6+3-7>=7) > 6[2,4]+3-7 > 2 > 失敗
GM
失敗。
子夏
「……」
桟敷川映鏡
手元の水へ視線を落とす。
子夏
じっと二人の会話に目を向けて、ふと行儀悪く足をぶらつかせた。
子夏
どうも読めない人だなあ、と思っている。
桟敷川映鏡
──ねえ、教えてあげよっか?
赤マントは鏡の前で手を合わせて、
「赤マントさんお帰り下さい」って言うと
消えてくれるんだって。
桟敷川映鏡
小学校で流れた赤マントの噂──
アーユス
紅茶もう一杯注ぐ。茶器の微かな音だけが響く。
桟敷川映鏡
「心の疵は、心の疵に相応しい形をして現れます」
桟敷川映鏡
「私の衣装もきっとそうなんでしょう」
桟敷川映鏡
水を飲みほした。
アーユス
「怪人ね。おとぎ話か?ジャック・ザ・リッパーみたいな?」
子夏
「……見ただけでは、どんな疵なのか分かりませんけどねえ」
桟敷川映鏡
鏡面に慣れるためだけに飲んでいる──。
桟敷川映鏡
「似たようなものです」
アーユス
「なぁるほどぉ……」よくわからないって顔
桟敷川映鏡
「怪人とお話したかったら、手順を踏んでいただきませんと」
子夏
ジャック・ザ・リッパーも知らないな。
アーユス
「えー、4人集まって円陣組めとか?」
桟敷川映鏡
わざとらしく、眼の色が変わる。
子夏
「おや」
アーユス
「ワーオ」
桟敷川映鏡
「“こういうこと”だ」
匕首咲
中庭の優雅なティータイムの時間。
子夏
「どういうことなんです?」
桟敷川映鏡
テーブルを蹴り倒す。
匕首咲
そこに突如として、何かが飛来する。
子夏
「わ」
アーユス
「うひょーっ」紅茶を避けて飛び退く。
匕首咲
それはアーユスの側頭部に命中する。
匕首咲
それは、植木鉢だった。
子夏
あ。
アーユス
「ぐえ」
子夏
「あーっ」
匕首咲
植木鉢が、続いて2個、3個と飛んでくる。
アーユス
飛んだ勢いに横のベクトルが合わさりすっ転ぶ。
子夏
慌てて倒れたテーブルの影に丸まって隠れた。
匕首咲
中庭に誂えたテーブルの側、植木から人影が飛び降りてきた。

「カチコミの時間だオラァ!!」
子夏
「わわわ」
アーユス
「おっ、とっと!」2個めを蹴り、反動で飛び起きながら続く植木鉢を避ける。
桟敷川映鏡
「煩い女」
アーユス
「ちょっと女子~!ほのぼのティータイムを邪魔しないでよね~!」中指を立ててかわいく抗議だ。
子夏
「派手だなあ!」よろよろ起き上がった。
アーユス
「逃げるか~?」
匕首咲
「人をハブってんじゃねーよ!!」
匕首咲
建物のどこかからむしってきた、リーチだけは長い階段の手すりを振り回す。
アーユス
「逃げるか(笑)」
子夏
「逃げましょ逃げましょ」
アーユス
「やだ~だってあの子乱暴なんだも~ん!」
子夏
「仕切り直ししましょう!」
桟敷川映鏡
「ティータイム、お誘いありがとうございました」
子夏
「楽しかったですか?」
匕首咲
「どっちが乱暴だ!!」

手すりを投げつける。
子夏
身を低くしてすでに逃げる態勢を取りながら、やや声を張り上げて聞いてくる。
桟敷川映鏡
「ええ、わりと」
匕首咲
そのへんにあったティーセットなんかも投げる。
子夏
「あははは、ならよかった!」
子夏
ひどいな~。
アーユス
「乱暴はしましたけどぉ!ギャハハ!」飛来物をひょいひょいと避け、子夏の方に走り込んで乱暴に抱えあげる。
匕首咲
熱々のお茶が入っているティーポットなんかも投げる。
子夏
「えっ」
子夏
抱え上げられました。
アーユス
「走るの遅そうだし」
子夏
「自慢じゃないですがめちゃくちゃ遅いです」
桟敷川映鏡
去っていく2人に手を振る。
子夏
手を振った。
匕首咲
背の低い庭木を力任せに引き抜いて、投げる。
アーユス
「ティーセットは大事にしろよ!」地面に当たって砕けるポット。
子夏
「わー! アーユスさん! アーユスさん!」
アーユス
中指を立てたまま手を振った。
アーユス
「やっべ」
アーユス
ギャハハと笑いながら走っていく!
桟敷川映鏡
ぐしゃぐしゃになった茶会の席。
[ 匕首咲 ] HP : 18 → 17
桟敷川映鏡
「傷に障りますよ」
アーユス
子夏を乱暴に肩に担いで、目にも留まらぬ速度で館の中へ走っていった。
匕首咲
「治った」
子夏
救世主の力ってすごいな~!
匕首咲
アーユスと子夏が見えなくなると、テーブルに戻り、スコーンを手に取る。
匕首咲
「なんかされたか?」
桟敷川映鏡
ひとさじの情。紅茶に落とされる砂糖。
桟敷川映鏡
「いいえ」
桟敷川映鏡
「咲さんは甘いものがお好きなんですか?」
匕首咲
「じゃ、よかった」
匕首咲
スコーンにクロテッドクリームをたっぷり、そしてジャムも乗せて。

「そうだけど?」
メイド1
「お茶を用意致しましょうか?」
7号室のメイドが淹れたものは、中庭が飲んでしまった。
桟敷川映鏡
「はは」
桟敷川映鏡
「そうしましょう」
匕首咲
「じゃあ、そうするか」
匕首咲
「クッキーとかある?」
メイド1
「ございます」
手にしたトレイの上にラングドシャが並ぶ。
桟敷川映鏡
「今度は私にも紅茶を」
メイド1
「はい」
瞬く間に新しいティーポットが用意される。
メイド1
アッサムが2杯分。
砂糖、ジャム、ミルクもたっぷりと添えられて。
GM
GM
一方その頃。
アーユス
「あー走った」
アーユス
適当な廊下の角あたりで子夏を下ろす。
子夏
揺れたので若干ぐったりしている。
アーユス
「生きてる?」
子夏
「いや~、びっくりした」
子夏
「大丈夫です。生きてます」
アーユス
「木ぃ投げるもんなあびっくりする~」
子夏
胸を押さえている。
子夏
「誘った時、咲さんもいたんですけどねえ」
子夏
「疲れてそうだから呼ばなかったのにな~」
アーユス
「じゃあハブじゃないじゃ~ん遅刻逆ギレとか最悪かよ~」
アーユス
「俺たちを追い出してお茶会でもシケこんでんのかなぁまったくよ」
子夏
「あはは」
子夏
「アーユスさん」
アーユス
「ん」
子夏
「ジャック・ザ・リッパーってどういう……何なんです?」
アーユス
「オハナシ……ってわけでもねーわ 昔いた殺人鬼よ」
子夏
「殺人鬼!」
アーユス
「売春婦だけを狙って時には内臓を持って帰る筋金入りのド変態さ!」
アーユス
ワーオって感じの手振り。
子夏
「コワ~」
子夏
「似たようなもんなんですかね」
アーユス
「あんな格好してるやつはだいたいヤベーやつよ」
子夏
「あんな目立つ格好して殺しなんかしたらすぐ捕まりそうですけどね」
子夏
首を捻っている。
子夏
まさか部屋を訪れた時、内臓が切除された後だったとは思いもよらない。
アーユス
「まあ大体は劇での脚色でああなるけど……まーたしかにあんなウカレた格好してるやつがいたら捕まるわな」
アーユス
「怪しすぎてウケる」
子夏
「は~」
子夏
首を竦めて肩を上下させた。
アーユス
「まあでも犯罪者なんてどいつもこいつも顔も姿を隠すワケだし 似たようなもんかな~って。アレも」
アーユス
「結果はまあ よくわかりませんでした~」
アーユス
「いかがでしたか?」
子夏
「あははは」
アーユス
クソブログになるな。
子夏
「どうなんでしょうねえ」
子夏
「勢いで逃げてきちゃいましたけど」
子夏
「あの人たち、怖いなあ!」
アーユス
「俺ら今からアレと戦うんですけど~っ」
アーユス
「ウケるなあ」
子夏
「…」
子夏
「まあ、裁判では逃げやしませんよ」
アーユス
「ハハ まあ俺も裁判では子夏クンを殴んねーよ」
子夏
「あははは」
子夏
「それじゃ、どうしましょうかね、待ち受けましょうか?」
アーユス
「部屋でビールでも飲みながら待つとするか トランプでもしようぜ~」
子夏
「はあい!」
GM

第8シーン:桟敷川映鏡

桟敷川映鏡
TOV
桟敷川映鏡
そのまま中庭でお茶会を続けていた。 
桟敷川映鏡
目の前でカリカリとペンと紙が鳴る音がしている。
匕首咲
メイドに持ってこさせたレターセットに、赤いボールペンで文字を綴る。
桟敷川映鏡
目を細めてそれを眺めている。
ちょうど、メイドが救世主たちにやるような視線。
桟敷川映鏡
自身は文字の読み書きができない。
ハンデだ。目の前でそれが紡がれている。
匕首咲
「こんなもんかな」

書き上がった手紙を、映鏡に読み聞かせる。
桟敷川映鏡
「はは」
桟敷川映鏡
「いいんじゃないでしょうか。咲さんのなさりたいようになさるといい」
桟敷川映鏡
メイドを呼ぶ。
桟敷川映鏡
茶会の途中だ、きっと傍らにいるだろう。
メイド1
「御用を承ります」
桟敷川映鏡
「こちらの招待状を。代筆で構いませんか?」
メイド1
「問題ありません。すぐにお呼び致しますか?」 
桟敷川映鏡
「いえ、時間を指定しております」
匕首咲
もう一通、手紙を出す。

「それと、この手紙を呼び出さない方に渡してくれ。招待状の効果が発動した後に」
桟敷川映鏡
「さて。始めましょうか」
匕首咲
「ッシャオラ!」
桟敷川映鏡
礼拝堂にアーユスさんを呼び出します。
メイド1
「了解致しました」
礼をして、メイドは消える。これより、指定されたようになるだろう。
メイド1
GM
1時間後。
GM
7号室では、救世主二人が会話を交わしていた。
[ 桟敷川映鏡 ] ティーセット : 1 → 0
[ 匕首咲 ] HP : 17 → 16
[ 匕首咲 ] HP : 16 → 17
[ 匕首咲 ] ヤリイカ : 1 → 0
GM
その内容は、これから訪れる裁判の作戦会議であったか、あるいはもっと野卑な事だったか。
GM
しかしどうあれ、その途中で……アーユスの姿は掻き消える。
子夏
「!」
メイド1
そして、代わりに姿を現したのが1号室のメイド。
子夏
それまで浮かんでいただらしのない笑みがぱっと失せて、立ち上がる。
メイド1
「子夏様宛に、1号室の方々よりお手紙を預かっております」
子夏
すぐに探しに行こうとしたところでメイドの姿が目の前に現れて。
子夏
「はい、どうも。今度はあちらからお茶会のお誘いかな?」
子夏
愛想笑いを浮かべて受け取った。すぐに内容を確認する。
手紙
拝啓、アリス。
手紙
昨日はお茶会に誘ってくれてありがとう。
薄着で少し肌寒かったけど、まぁまぁ楽しい余興でした。最後まで話せなかったのが残念です。
今日もできれば一緒にお茶を飲みたかったんですけど、誘ってもらえなくてちょっと寂しかったかな。
子夏
「……」
手紙
昨日は連れが粗相をしてしまってすみません。でも、連れの躾についてはお互い様ですよね😄
まぁ、粗相は私も似たようなものか。
手紙
あなたが見て見ぬふりをしていたことは知っていますが、怒ってはいないので安心してください。
子夏
差出人は女の方。赤い文字は自分の国でも縁起が良いものではないが。
子夏
彼女の国ではどうだろうな?
子夏
ああ、分かってる。彼女が怒って狙うとしたら、アーユスさんの方だよなあ。
子夏
腕もくっついて、いつの間にか元気になってるんだもんな。また痛めつけようとしても不思議じゃない。
手紙
さて、今回お手紙を書いたのはそんなどうでもいいことじゃありません。
手紙
私達はこれから、そちらの狂犬をお茶会に招待します。それに、あなたは30分ほど遅刻してきてほしいのです。
子夏
……
手紙
この手紙のことはあの強姦魔に決して言いません。読み終わったらメイドに渡して処分してください。
そうすれば、あなたは信頼を失わずに済むし、私達はのびのびとお茶会ができます。
子夏
…………
手紙
もし言うとおりにしてくれれば、あなたを殺すときには苦しまないようにしてあげます。できるだけ早く。死んだとわからないくらい。
子夏
「はは」
子夏
笑い声が零れた。
手紙
言うとおりにしてくれなかった場合は、残念ですが、できるだけ苦しむように殺すことにします。
子夏
「ははは」
手紙
私の連れは人体に詳しいショーマンなので、面白い方法で殺してくれると思います。昨晩も、妊娠したらいけないからって、私の子宮を切り取ってくれたんですよ。親切ですよね。
子夏
愉快そうに笑っていた男は、その一文に来たところで。
子夏
小さく眉を顰めた。
子夏
ただそれだけだ、無言で読み進める。
手紙
私は単純な暴力しかできないんですけど、生きている人間の内臓を食べるのは好きです。きちんと食べる臓器を選んでいけば、生き物って意外と死なないんですよ。
手紙
あ、でもこれじゃ内臓の取り合いになっちゃうかな?まぁ私は骨を折るのも好きなので、うまく話し合っておきます。
手紙
では、できれば30分後に、礼拝堂でお会いしましょう。

匕首咲
子夏
脳裏に鮮やかな血の映像が散って消えた。
子夏
幻。そう、確かに幻だった。
子夏
あの時、自分はどうしたんだっけ?
子夏
手紙を丸めて、メイドに手渡した。
子夏
部屋を出る。
子夏
足が重い。
子夏
それは、アーユスが痛めつけられることを望んでいるからではない。 
子夏
恐怖だった。
GM
GM
そして、礼拝堂。
GM
7号室にいた筈のアーユス、手紙に記されていた件の男は、そこに居た。
桟敷川映鏡
男が招待されれば、動けないことがわかるだろう。
桟敷川映鏡
ワイヤーではない。色とりどりのハンカチだ。
桟敷川映鏡
心の疵の力によって、ひとつひとつが強靭な布地として男の全身を阻む。
桟敷川映鏡
「私の衣装の理由、お分かりいただけましたでしょうか」
桟敷川映鏡
銀のステッキがひゅ、と空を切る音。
桟敷川映鏡
色眼鏡をかけた男の眼前で切っ先が止まる。
アーユス
「俺は――」
何事かを誰かを話していたその最中、不意に呼び出された男はちらりと視線を彷徨わせ――見覚えのある光景と身を戒める布地たちにふぅん、と鼻を鳴らし、口を閉じて笑った。
アーユス
そして、礼拝堂に居る者の姿を認め――
アーユス
「お茶会が恋しくなったか?」
桟敷川映鏡
「そんなとこです」
アーユス
「ワーオ、マジックショーでおもてなししてくれるのか?」
アーユス
身を拘束されても尚、態度を崩さずに笑う。
匕首咲
映鏡の後ろで、スコップを持って立っている。
アーユス
両の手足を動かそうとしても無駄に終わる。
アーユス
動けない自分の周りを暴力が囲む。
懐かしい光景だ。
桟敷川映鏡
ステッキが翻る。切っ先ではない鈍器の側が男の喉を鋭く潰す。
桟敷川映鏡
救世主の喉がこのくらいで潰れるかどうかはわからない。
アーユス
「っ」あまり馴染みのない刺突に目を丸くして。
桟敷川映鏡
「声をあげるのは、痛みに耐えるのに有効です」
桟敷川映鏡
「私ならここから潰しますね」
アーユス
「――っ、ご、げほっ」突き立てられた異物に、反射的に咳を漏らす。
アーユス
「 ぞう、がい。」
アーユス
やってみろ、とでも言わんばかりの余裕のある笑みで。
桟敷川映鏡
そのままこめかみを2度。同じような刺突が襲う。
アーユス
脳が揺れる。
桟敷川映鏡
「耐えてくださるなら、それはそれで私は嬉しいですよ」
アーユス
視界が酷く振らされて、朦朧とさせられながら――サングラスが吹き飛んだ事がまず気になった。
匕首咲
「なーなー映鏡 、あたしも殴っていいー?」

スコップをスイングしている。
桟敷川映鏡
「どうぞ」
アーユス
息を整える。
アーユス
期待はしていない。
アーユス
でも命乞いもしない。
匕首咲
スコップを横薙ぎに振り抜く。
平たい金属が、アーユスの頬を殴打した。
匕首咲
「ラァ!」
匕首咲
もう一度。
匕首咲
「ラァ!」
匕首咲
もう一度。
アーユス
もう、惨めに蹲って同情を誘う必要も、へつらう笑いで媚びる必要もない。
桟敷川映鏡
*アーユスの『信仰の不在』を抉ります。
判定は猟奇。 
子夏
*横槍します
子夏
Choice[猟奇,才覚,愛]
DiceBot : (CHOICE[猟奇,才覚,愛]) > 愛
アーユス
衝撃が頬を往復して、頬の肉が歯に当たって抉れる。
子夏
2d6=>7
DiceBot : (2D6>=7) > 4[2,2] > 4 > 失敗
GM
横槍失敗。
桟敷川映鏡
そのままパートナーの好きに殴らせる。
アーユス
ぼたぼたと血が口の中から、子夏を噛んだ時よりは控えめに吹き出す
アーユス
「   ……」どうした、と口元だけで笑ってやる。
桟敷川映鏡
2d6+3
DiceBot : (2D6+3) > 5[2,3]+3 > 8
[ 子夏 ] HP : 13 → 12
GM
判定成功。
アーユス
頭が揺れて、目がくらむ。衝撃がデカすぎるのが幸いしたか。
桟敷川映鏡
「この国では、男に祈るんですかね」
桟敷川映鏡
礼拝堂の十字架を眺める。世間話だ。
アーユス
「あ、あはははは。」血を飛び散らせて笑う。
アーユス
「知らねえよ、祈ったことなんて」
アーユス
ねえから。という声は息切れに消える。
匕首咲
「おしゃべりしてんじゃねぇよ」

もう一度、殴打。
アーユス
「げぱっ」
アーユス
砕けたどこかの歯のが、石畳の上で小さく音を奏でた。
桟敷川映鏡
「なら貴方はどこに行くんです」
アーユス
「――さあ」
桟敷川映鏡
「ここには浄土も地獄もない」
アーユス
俺が知るかよ
アーユス
俺は
アーユス
ずっとどこにも行けなかった
アーユス
「しら」
アーユス
「ねえよ」 
アーユス
誰が教えてくれるんだ、そんなこと。
桟敷川映鏡
「そうですね」
桟敷川映鏡
「私も知りません」
アーユス
子夏。いやまあ、来ないでいいや。
この状況だと多分役にたたねーし。
アーユス
「……ウケる」
アーユス
期待なんてしてない。
匕首咲
今度はスコップの先端を、肋骨に突き刺す。
隙間に刺さればラッキー、刺さらなくても、まぁいいや。
桟敷川映鏡
母猫が子猫に獲物を与えるような笑みでそれを見ている。 
アーユス
「――――ッッッ!!!!」骨にぶつかってから隙間に忍び込む鉄の感触に歯を食いしばって、漏れ出る悲鳴を殺す。
桟敷川映鏡
「安心してください」
桟敷川映鏡
「死にはしません」
桟敷川映鏡
「ただの憂さ晴らしなので」
アーユス
激痛に俯いて、喘ぐような呼吸音が響く。
アーユス
(やっぱいてーわ、アバラ)
匕首咲
「あ~あ、ハズレかぁ。じゃあもう一回」

もう一回、だけではなく、二回、三回、四回と何度も、何度も同じように。
アーユス
「は、は、はは」笑うたびに、滑稽に血が溢れる。
アーユス
続くスコップに、ついに悲鳴が出た。
匕首咲
その暴力は、30分間続いた。
アーユス
(……)
アーユス
(『それなら、信じてくれないで大丈夫です』) 
アーユス
(『信じるに足る人間なんかいない』)
アーユス
(…………)
子夏
軋む音を立てて。
子夏
礼拝堂の扉が開いた。
アーユス
カラフルな男がボロボロになって、新しい色が増えている。
桟敷川映鏡
「先ほどはどうも」
子夏
男はすっかり表情を失って、血の匂いのする礼拝堂の中へ入ってくる。
匕首咲
「どうも~~」
子夏
「…………」
子夏
ふたりの様子を一瞥した男は、返事を発しなかった。
アーユス
血の水たまりの上に、出来の悪いマリオネットのようにぶら下がっていた。
桟敷川映鏡
指をパチンと鳴らす。魔法のようにハンカチが解ける。
子夏
声を出さないまま、とぼとぼと傷ついた男のところまで歩く。
アーユス
自分の血の上にびしゃりと音を立てて落ちる。
匕首咲
「あ~あ、邪魔が入ったから興ざめだなぁ~」

わざとらしい声色。
アーユス
半開きの目で、自分の血溜まりを見ていた。
桟敷川映鏡
ハンカチは奇術師の手元に鳥のように戻ってきた。
アーユス
ぜ、ぜ、と弱々しい呼吸音で、子夏の足が見えても動くこともない。
子夏
血だまりの中の男を見下ろし。
子夏
その場に跪いて、無言のまま支え直した。
アーユス
「…………」
桟敷川映鏡
それを止めはしない。
子夏
そのまま、二人に声もかけず去っていこうとする。
桟敷川映鏡
ただ見ている。去っていく背を見つめる。
子夏
黙りこくったままだ。
アーユス
掠れた喉からは、無様な音がするばかりで、何も子夏に伝える事ができなかった。
匕首咲
「あ~あ、連れていかれちゃうよ~」

そう言いはするが、動かない。
子夏
遅れてすみませんとも。だから言っただろうとも。
子夏
それらしい言葉はなにひとつ発さないまま。
子夏
声を堪えている。
アーユス
青あざができて、奥歯が欠けて、無残なままの顔で、口元だけで笑った。
子夏
『噫(ああ)!』
子夏
そうだ。
アーユス
(別に何も気にしちゃいない)
子夏
あの時、それだけを言ったんだ。それだけのためにすべてがダメになったんだった。
アーユス
(俺のミスだ)
(おっせーんだよ雑魚がよー)
(信用していない)(信じてない)
アーユス
それらのどれも、声にはならなかった。
アーユス
声を出したくても出せなかった。
アーユス
それは全身が痛いからなのか?
子夏
愛、心に生じ、忽ち其の約を忘れ、覚えず声を……
子夏
だから、そんなものは必要ない。
子夏
間違っていない。
アーユス
どうせ一人で生きて一人で死んでいくのだから。
アーユス
横に一人、誰か居なかった程度で。
アーユス
俺は変わらない。
アーユス
一人だ。
桟敷川映鏡
「咲さん」
桟敷川映鏡
「ご満足いただけましたか?」
匕首咲
「3割くらいは」
桟敷川映鏡
「手厳しい」
桟敷川映鏡
帽子をとって頭を下げる。
桟敷川映鏡
「残りは裁判で果たしましょう」
[ アーユス ] 信仰の不在/咲 : 0 → -1
匕首咲
「ショーには、それなりの舞台が必要だしな」
桟敷川映鏡
「そうですね」
匕首咲
「期待してるぜ、ショーマンさんよ」
桟敷川映鏡
去り際に十字架を見る。
桟敷川映鏡
ショーマンはいつも舞台の暗闇に祈るのだ。
桟敷川映鏡
ここに神がいてくれるならと。
GM
十字架は語らない。
GM
それはただそこにあり、己を救う力を持つ者のみを救う。
GM
今、何よりも雄弁で力を持つものは、メイドのポケットの中にあった。
GM
それはポケットから取り出され、告げる。
メイド1
「裁判のお時間です」