Dead or AliCe
『16人の救世主』

お茶会-1ラウンド目

GM
それではお茶会の行動順を決めていきましょう。
GM
みなさま1d12を振ってください。
ティモフェイ
1d12
DiceBot : (1D12) > 11
トイ
1d12
DiceBot : (1D12) > 10
シャルル
1d12
DiceBot : (1D12) > 2
アレクシア
1d12
DiceBot : (1D12) > 5
GM
イニシアティブを利用して行動順を決定しますので、高い順に行動します。
メイド5
では、第1サイクルの行動順はティモフェイ様→トイ様→アレクシア様→シャルル様の順番になりました。

第1シーン:ティモフェイ

GM
*第1シーン シーンプレイヤー:ティモフェイ
GM
開会の儀式が終了した後。メイドが改めて参加者を客室へと案内します。
メイド6
「何か御用があればお申しつけください」
メイド6
6号室のメイドが2人へ頭を下げる。
ティモフェイ
「……世話をかけるね」
ティモフェイ
「重ね重ね」
ティモフェイ
先程のゴミ箱の件を言っているのか。
トイ
みずからの体を投げ捨てるように、ベッドに倒れ込む。
メイド6
メイドは立ち去っていく。
ティモフェイ
その背中を見送ってから、倒れ込んだトイを振り返った。
ティモフェイ
首輪から下がった鎖を手繰りながら、
ティモフェイ
「首尾はお気に召したかね」
ティモフェイ
トイに語りかけ、鎖を外し、
ティモフェイ
自分のベッドサイドへとそれを置く。
トイ
枕に突っ伏してじっとしている。
ティモフェイ
「…………」
ティモフェイ
「トイトロール」
ティモフェイ
名を呼ぶ。
トイ
「あ?」
トイ
顔をあげてそちらを向き。
ティモフェイ
「……随分と」
ティモフェイ
「機嫌が悪い」
ティモフェイ
「きみはこの儀式の開幕を心待ちにしていたように」
ティモフェイ
「俺は思っているのだが」
ティモフェイ
突っ立ったままにトイトロールへと語りかける、
ティモフェイ
薄汚れた風体の、救済を宣言してみせた男。
ティモフェイ
――させられた、男。
トイ
そう。

さきほどの『救済の宣言』は… すべて、トイトロールが筋書し、命じてティモフェイに読み上げさせたものだ。
トイ
「ああ。オレはずっとこの日を待ってた。この儀式をな。シャルルにアレクシア…」
トイ
「儀式を発動させた礼を言いたかったくれぇさ」
トイ
「なのになんで気分が悪ィのか」
ティモフェイ
あの二人なのか、と無言で得心している。
トイ
「自分でもわかんねえ…」
ティモフェイ
ティモフェイが腰を下ろすことはない。
ティモフェイ
壁に背中を預けすらせず、二本の足で突っ立っている。
ティモフェイ
救世主であればこそ、多少の身体的疲労を無視して振る舞うことはたやすかった。
ティモフェイ
だから突っ伏したトイとは真逆に立ち呆けたまま、
ティモフェイ
「そも」
ティモフェイ
「きみがほんとうの意味で上機嫌だったことの方が」
ティモフェイ
「珍しいように思えるがね」
トイ
その言葉を聞き、きゅうにけらけらと笑いだす。
トイ
「アッハッハッハ」バタバタとベットの上で足をばたつかせ
ティモフェイ
光のない瞳で笑い転げるトイを見る。
トイ
「だれのせいで?」
ティモフェイ
「俺だな」
ティモフェイ
即答する。
トイ
「解ってんじゃねえか。
・・・・・・」
トイ
「な~~ぁ、ティモフェイ。」
トイ
「お前オレの事かわいそうだと思う?」
ティモフェイ
「…………」
ティモフェイ
逡巡は一瞬だった。
ティモフェイ
「……理不尽な人生を」
ティモフェイ
「送らされたものとは、認識している」
ティモフェイ
「まあ」
ティモフェイ
「そうだな」
ティモフェイ
かすかに息をついて、
ティモフェイ
「きみが俺に強いること」
ティモフェイ
「その、すべてに」
ティモフェイ
「きみなりの権利を認めてはいるつもりだよ」
ティモフェイ
「俺は」
トイ
ゆらりとたちあがり、ティモフェイの眼前まで歩く。
ティモフェイ
褪せた色のひとみでトイを見る。
トイ
「だったら、かわいそうなオレの為に涙の一粒でも流して憐れんでみろよ…」
トイ
「どうせお前は口では何とでも言えて」
トイ
「本心ではオレをバカにしてるんだ。見下してるんだよ。なあ」
ティモフェイ
「…………」
トイ
「なァ?
そうだよな~~…」
トイ
「オレみたいに無学で、下品な、下賤な輩は何人死んだって構わないって」
トイ
「口でどう言おうがなあ!てめーの行動が語ってるんだよッ!」
トイ
ティモフェイの胸ぐらをつかみあげる。
ティモフェイ
動揺はない。
ティモフェイ
掴み寄せられてトイトロールの仮面に顔が寄り、
ティモフェイ
その瞳は、たしかに、乾ききっている。
ティモフェイ
――弁明を、したことはない。
ティモフェイ
自ら恋人を生贄として選びだし、
ティモフェイ
そして手にかけたあの日から。
ティモフェイ
ティモフェイの頬を涙が伝うことはなかった。
ティモフェイ
最期の一週間。
ティモフェイ
従来の手筈。いつもの手順。
ティモフェイ
選ばれた清い魂を救世騎士の館でもてなすあの一週間は、
ティモフェイ
この儀式の参加者が手厚くもてなされるさまと、よく似ていた。
ティモフェイ
ひどく、胸糞が悪い。
ティモフェイ
しかし悲しいことにティモフェイにはそれをトイに向けない程度の分別があった。
ティモフェイ
だから、トイとは通じ合えない。
ティモフェイ
深い絶望の縁にある彼のたましいに、手が届くことはない。
ティモフェイ
代わりに語る。
ティモフェイ
「……俺の行動を見て」
ティモフェイ
「俺が、きみを死んでも構わないと、そのように思っている」
ティモフェイ
「きみは、本当にそう感じているのか?」
トイ
「うん」
トイ
「お前はオレなんか死ねばいいってずっと思ってる」
ティモフェイ
ため息をついた。
ティモフェイ
「どうして」
ティモフェイ
短く問う。
トイ
「……………
…………………………」
トイ
どうしてと聞かれて頭で考える。すると、わからなくなる。
トイ
理路整然としたティモフェイの問いかけにこたえられず、トイトロールの腕が止まる。
トイ
「それは……」
トイ
「だって………」
トイ
「…そうだ!!」
ティモフェイ
仮面を見つめる。
ティモフェイ
その奥の顔色を見透かすように、まっすぐに。
トイ
「そうだ、お前はオレの故郷を見捨てた、世界を救う『儀式』をやらなかった。
オレはな…そのことを言ってんだっての」
トイ
「お高く留まった救世主たちは、他の民がどれだけ死のうと心が痛まない」
トイ
「一瞥もくれない」
ティモフェイ
「…………」
トイ
「オレは故郷に帰りたかった。」
トイ
「花が咲いて。陽がさして、川が流れて、あの都市で……」
トイ
「美しい思い出はあそこにしかなかった、オレが本当に上機嫌だったとき。しあわせの取り分は、あの都市にすべておいておかれたはずなのに」
トイ
「なのにてめーーは 儀式を途中で止めた!!」
ティモフェイ
「……ああ」
トイ
「こんどの『儀式』はぜってええ途中で止めさせたりしない!!」
ティモフェイ
また小さく息をついて、
ティモフェイ
「それが」
ティモフェイ
「きみの望みだと、思っているのか」
トイ
胸ぐらを掴んだ手を振り、地面に討ち倒す。
トイ
「その偉そうな口を閉じろ!」
ティモフェイ
「っ」
ティモフェイ
したたかに床に叩きつけられて、息を詰める。
ティモフェイ
しかしトイを見上げて、
ティモフェイ
「トイトロール」
ティモフェイ
「この『堕落の国』を救済したとて」
ティモフェイ
「きみの故郷は、救われないぞ」
トイ
「だれのせいで!?」
ティモフェイ
「俺だ」
ティモフェイ
「俺のせいだから、言っている」
ティモフェイ
*トイの疵『冬』を舐めます。判定は猟奇。
ティモフェイ
GM
了解です。
GM
横槍はありますか?
シャルル
*横槍を入れます。
GM
それではチョイスから。
シャルル
Choice[猟奇,才覚,愛]
DiceBot : (CHOICE[猟奇,才覚,愛]) > 才覚
シャルル
2d6=>7 判定:才覚
DiceBot : (2D6>=7) > 10[6,4] > 10 > 成功
GM
効果量をどうぞ。
シャルル
1d6
DiceBot : (1D6) > 5
[ シャルル ] HP : 20 → 19
ティモフェイ
*トイの疵『冬』を舐めます。判定は猟奇。再掲
GM
宣言と処理ありがとうございます。
GM
-5で判定をどうぞ。
ティモフェイ
2d6+3-5=>7 判定:猟奇
DiceBot : (2D6+3-5>=7) > 4[1,3]+3-5 > 2 > 失敗
ティモフェイ
失敗ですね。
GM
失敗です。
ティモフェイ
ではそのように。
GM
それでは横槍が入った描写をどうぞお楽しみください。
トイ
「オレは帰りたい。家に帰りたいんだよ…」
トイ
トイの機嫌が荒れ、まわりに降る雪がつよく、濃くなる。
トイ
ティモフェイの頭に足を乗せ、踏む。
シャルル
コンコンと、ノックの音が響く。
トイ
ミシミシと、かたいかかとに力を入れて…
トイ
頭蓋まで踏みつぶしそうなその時、ノックの音。
ティモフェイ
「…………」
ティモフェイ
みし、と踏みしめられた頭蓋の軋む音が、
ティモフェイ
ノックの音に遮られる。
ティモフェイ
視線だけ、そちらに向けた。
トイ
「チッ」
トイ
「だれだ!」
シャルル
「シャルルです。先ほど、お会いいたしました。」
シャルル
扉の向こうから声が返ってくる。
ティモフェイ
動揺も関心もなく視線を虚空に投げかけている。
トイ
ティモフェイの頭をいちどゴン、と蹴っ飛ばし。ドアの方へ
ティモフェイ
頭が床を転がって横向きに、
トイ
「ンだよ」 ドアを開ける
ティモフェイ
けれどすぐに上身を起こして、扉を向いた。
トイ
「別にいいけどな。コイツといるとイラついてしかたねーし」
ティモフェイ
立て膝をついている。
シャルル
先ほど分かれたままの格好で、そこに立っている。
一人だ。
シャルル
広場で手渡された封筒を、見せる。
シャルル
「こちらの封筒、使用すると強制的に移動させられるそうなので。あまり……ご招待には向かないな、と。」
シャルル
「お邪魔をしてしまいましたら、申し訳ございません。」
トイ
「アハハ、たしかに…」
シャルル
視線は一度奥のティモフェイに向けられ、そしてトイに戻る。
ティモフェイ
虚ろな瞳がシャルルを向いている。
ティモフェイ
その視線に特段の敵意は感じられない。
トイ
「…なあニイサン、ちょっと遊ばねえか。なに。時間はとらねえよ」
シャルル
「おや、どういったご趣向かにはよりますが……。」
トイ
「こいつ。」ティモフェイを指し

「こいつはさ、何したって構わないんだ」
トイ
「舐めろ言えば靴の裏をなめる。食えといやゴミでも食う。殺せと言えば人を殺す。」
ティモフェイ
「…………」ため息。
トイ
「だが――
オレぁね、見たことがない。こいつ、泣かないんだ。」
トイ
「だからオニイサン、賭けでもしないか?」
トイ
「こいつを先に泣かせてほうが勝ち。何したってかまわないよ」
トイ
「ちょっとした余興だよ。」
シャルル
「はぁ。なるほど。」
シャルル
視線を再びティモフェイに移す。
ティモフェイ
シャルルを見返した。
ティモフェイ
怯えも恐れもない。ただ深い諦念だけが。
ティモフェイ
トイトロールの言葉の通り、
シャルル
「そうですね…………。」
ティモフェイ
何をしても構わない、というのに、説得力が出る。
シャルル
思案顔。どうすべきか、真剣に考えているような。
ティモフェイ
けれどどこかに、
ティモフェイ
探るような気配があった。
シャルル
しかしそこに憐憫も恐怖もなく。
ティモフェイ
目の前の男を。相対する救世主を。
シャルル
ただ考えている。
ティモフェイ
この先、殺し合うことになる相手の本質を。
シャルル
「…………難しいですね。」
シャルル
「私は人が泣くとき、そこには何らかの感情があると思っているのですが……。」
シャルル
「この方には、それが感じられません。」
ティモフェイ
「…………」
シャルル
「信用、信頼、友情、愛情……裏切りや悲観に、絶望。」
シャルル
「そうして、できることといえば…………」
シャルル
「安堵、安寧、安楽。……つまり、殺してさし上げることくらいなのですが。」
シャルル
「試すわけにもいきませんから。」
ティモフェイ
「……死体は泣かないぞ」
シャルル
トイに向かって。
ティモフェイ
「死体に縋って、泣くものはあるが」
ティモフェイ
床に座り込んだままに答える。
シャルル
「もしくは……彼が貴方を愛し、信頼し、慈しんでいるのなら。」
シャルル
「ティモフェイさんのお話しする通り、貴方の死体にすがって泣くのではないでしょうか。」
トイ

「気っっ色悪ぃ……」
トイ
ティモフェイが自分を愛する?言葉として情報として、頭に入った瞬間に、ぶるぶるとからだが怖気にふるえた。
シャルル
「どうです?」
シャルル
ティモフェイに視線を向けて。
シャルル
「貴方は……彼が死んだら、泣きますか?」
トイ
ティモフェイを見ろしている。
ティモフェイ
「…………」
トイ
その表情は解らない。
ティモフェイ
トイの顔を窺いもせで、ただ床に視線を落としている。
シャルル
「なにやら……おふたりには時間が必要そうですね。」
シャルル
「お茶会のお誘いはまた、時間を改めてまいります。状況によっては『招待状』を使用させていただくかもしれませんが、ご容赦ください。」
シャルル
「それでは」と一言。
ティモフェイ
去りゆく背中を呼び止めず、
ティモフェイ
けれど間際に、一言。
ティモフェイ
「泣かないな」
シャルル
「ふふ。」
シャルル
一礼して、シャルルは部屋を去る。
シャルル
扉の閉まる音。
トイ
閉まる扉を呆然と眺め。
ティモフェイ
こちらはぼんやりとそれを見つめている。
トイ
『もしくは……彼が貴方を愛し、信頼し、慈しんでいるのなら。』
トイ
「うわああ!」
トイ
「うあああ!うあああ」
トイ
ベッドに飛び込み、枕をめっちゃ殴ってる。
トイ
「なんだあいつ!!腹立つ!!」
トイ
「あいつ…!絶対オレの事バカにしてるだろ!!」
ティモフェイ
立ち上がり、服の胸元を整えている。
トイ
「くそが!!!!」
ティモフェイ
「好ましい相手でなくて助かったのではないか」
ティモフェイ
いつ茶会に呼ばれてもよいようにか、ベッドサイドの鎖を取り上げ
ティモフェイ
慣れた様子で自らの首輪にそれをとりつけた。
ティモフェイ
「きみ」
ティモフェイ
「感情のままに暴れるほうが、得意だろう」
トイ
殴りに殴ってへこんだ枕を思い切りティモフェイの顔に投げつける
トイ
「わかったような口きくな!死ね!!」
ティモフェイ
枕が顔に当たって、床に落ちます。柔らかいので痛くない。
ティモフェイ
「死なないよ」
ティモフェイ
「少なくとも、今は死ねない」
ティモフェイ
自分が死ねば、この儀式に参加する相方であるところのトイトロールも死亡する。
ティモフェイ
メイドの語った儀式のさだめを思い出す。
ティモフェイ
自分の声はトイには届かない。トイの疵を、痛みをなぐさむこともかなわない。
ティモフェイ
それでもティモフェイにはトイから離れられない理由があるし、
ティモフェイ
それは同時に、ティモフェイがことここに至って自死を選べない理由でもあるのだ。
ティモフェイ
――のぞみを。
ティモフェイ
叶えなければ、ならない。
ティモフェイ
それがほんとうは、誰のものかは、もはやわからないけれど。
GM

第2シーン:トイ

GM
*第2シーン シーンプレイヤー:トイ
トイ

『――さ。だからさ――』

 『――わけだよ ――』
トイ
下品な笑い声。6号室から、複数の人の声が聞こえる。
トイ
べッドに座ったトイが、男女5名ほどのひとかげをはべらせている。
トイ
それは――観客だ。観客席にいた末裔たちのうちの、幾人か。

マスクをつけた末裔たち。好奇の瞳でティモフェイやトイを見つめている。
ティモフェイ
壁際に立ってその様子を見つめている。
トイ
「見て見て!見て見て!これ。
もらっちゃったよぉ~~」

ティモフェイに近寄り見せびらかす…
トイ
金のゆびわ、銀のオルゴール、宝石のぜんまい時計、春色のチューリップの球根。いずれも希少なものだ。
ティモフェイ
それらの貢ぎ物をうつろな瞳で見下ろして、
ティモフェイ
「……何になる」
ティモフェイ
「そんなものを集めたところで」
ティモフェイ
「儀式の役には、立たないだろう」
トイ
その言葉に気分を悪くした…ように思えるが、マスクの下の表情は解らない
トイ
「金目のもの。限られた宝物がどれだけ、大事なものかてめえにはわからねえ」
トイ
「それにきれいだ!」
トイ
「音が鳴るし」 オルゴールを見て上機嫌。
ティモフェイ
「…………」
ティモフェイ
「その、大事なものを」
ティモフェイ
「末裔から取り上げてしまうのも、いかがなものかと思われるが」
ティモフェイ
末裔たちに視線をめぐらせる。
ティモフェイ
「構わないのか。きみたちは」
トイ
「とりあげる?そいつは違う。これはさァ…」
トイ
「賄賂だよ」そう吐き捨てて、
ティモフェイ
「……?」
トイ
空気を換えるように手をバンと叩く。
トイ
「さてさて、特等席にお越しいただきました~トイトロールツアーのお客様、みなさま!」
トイ
「はぐれねえようにオレのケツを追っかけろ!」
トイ
そういってトイは部屋をおどるように飛び出る。5人の観客と、一人の鎖を引きつれながら…
ティモフェイ
がき、と
ティモフェイ
鎖が張り詰める、耳障りな金属の音が響く。
ティモフェイ
引きずられるままに足をもつれさせ、
ティモフェイ
廊下に出て、
ティモフェイ
館を進み、進み――
GM
観客は──双方の合意があれば。
救世主に近づくことができる。
GM
ただし、末裔のみ──。
彼らはこの2人と2人が相対する神聖な儀式には。
関与自体ができない脆弱な存在。
GM
ただの群衆(モブ)──
GM
あえていうなら、書き割り。
GM
そのようなもの。
トイ


彼らの足取りは館の階段を降りて

地下室へ。
トイ
「使用人さん!」
メイドを呼ぶ。
メイド6
「はい」
メイド6
呼ばれるのを待っていたかのようにそこに歩み出る。
トイ
「例のあーーーあの。封筒?呼び出すやつ?オレやりたい」

身振り手振りしつつ伝える。
ティモフェイ
末裔たちに紛れて、無言でその後ろに佇んでいる。
メイド6
「かしこまりました」
ティモフェイ
鎖に引かれたまま。
トイ
「おい!」ティモフェイに怒鳴る。
ティモフェイ
トイを見ます。
トイ
「クッソ気が利かねえな…」
トイ
代筆をしてほしげ。
ティモフェイ
少しだけ黙り込み。
トイ
「息してるだけ損させる酸素泥棒かてめえは」
ティモフェイ
無言のままに歩み出て、ペンをとる。
トイ
「オレの役にたてよ!」
ティモフェイ
トイには何ら反論せず。
ティモフェイ
「どちらを呼ぶ」
トイ
トイが引き連れてきた観客たちをいやらしくみまわし。
トイ
「せーのっ」
トイ
「「「エルレンマイヤー卿アレクシア嬢~~!」」」
ティモフェイ
顔をしかめた。
メイド6
「それではお名前をご記載ください」
ティモフェイ
手紙を取り出しかけた指先が止まる。
ティモフェイ
けれどすぐにテーブルにそれを置き。
ティモフェイ
なめらかにペンを走らせる。
ティモフェイ
エルレンマイヤー卿アレクシア。
ティモフェイ
整った筆跡で、
ティモフェイ
その名前を確かに書き記し、メイドへと差し出した。
メイド6
受け取る。記された人物を、ことづけどおりの瞬間に呼びだす封筒。
GM
望まれた時間に件の人物はここに来るだろう。
アレクシア
「……っ、」 一歩。よろめくようにして。
トイ
冷気。
トイ
アレクシアのよろめきを受け取り、
トイ
いきつくまもなく氷の鎖が彼女の手首を固め。
トイ
貼り付けるように、地下室の天井に宙づりに釣り上げる。
ティモフェイ
表情筋の死んだ、鎖で繋がれた男は地下室の隅に。
ティモフェイ
少女の姿を視界にとらえ、表情を曇らせている。
アレクシア
「いっ……つ、……!」 吊られるままに、足が浮く。
トイ
感嘆の声。
トイ
観客たちは手出しはしない。
ただ…見ている。息を荒げ、だえきを飲み込む音程聞こえそうな距離で、アレクシアを取り囲み、ただ見つめている。
アレクシア
「……手荒なご歓迎をどうも」
ティモフェイ
「……すまないね」
ティモフェイ
ぼそりと呟きのような返答。
アレクシア
ちらとそちらを見やり。短く鼻を鳴らす。
トイ
トイトロールはよく知っている。『視線』――ただ、見られているというそれだけで、人の心にのしかかる圧力になる事を。
トイ
ごろついて背を丸めて歩いていたトイは、背筋をのばす。
トイ
ふんぞり返り、えらぶった仕草は、けれどどこか優雅さを漂わせて。
トイ
「や、
エルレンマイヤー卿。こちらあなたのファンの皆様」
トイ
「なかなかご活躍のようだったから。
わざわざあなたを見に来たって客も要るし…」
トイ
「…こちらのご婦人はさっきの登場をみてひとめぼれしたって」
トイ
「な?」
トイ
女がうんうんとうなずく。
トイ
ニタニタ。
アレクシア
「……ほう」
トイ
貴方の気丈なさま。見下ろす視線。観客たちは目を輝かせ、歯をむき出して笑い、見つめる。
アレクシア
その寒々しい視線。
アレクシア
それを見返すこともなく、トイトロールをじっと見据えている。
トイ
館に来るときに背負ってきた荷物。荷物の中身をゴトゴト取り出し、
トイ
歪な形のムチを手に取る。
トイ
ムチの先をアレクシアの胸におき、リボンをはじいてするりととく。
トイ
間髪いれず、一番上のボタンの一つ、弾く。
ティモフェイ
視線を逸らすこともない。表情を曇らせたまま、トイとアレクシアのさまを見据えている。
アレクシア
黙る。黙っている。至近のトイトロールの顔は見えない。視線はわからない。
アレクシア
だが、どこを見られているのかはわかる。
トイ
沢山の瞳が食い入るようにアレクシアを見つめる。
トイ
「これからさ~~…何をするんだろうとおもう?」
トイ
「答えろよ、お前に聞いてんだぜ!」
トイ
アレクシアの頬をはたく。
アレクシア
乾いた音。帽子が落ちた。
アレクシア
「答える必要が?」
トイ
「ひひひ。言い当てたら…そうだなあ」
トイ
「きちんと言い当てて、何をされるか、自分で言えたら開放してやってもいいけど」
アレクシア
「きみのようなやつに」
アレクシア
「わたしは何も期待しない」
トイ
殴打。アレクシアのみぞおちに、抉りこむように
GM
トイ
「見下してんじゃねーぞ、金持ちのクソ」
アレクシア
息が。勝手に漏れる。
アレクシア
スタッカートのような鋭さで。
トイ
「このまま嬲られたいってんなら、黙ってりゃいいけどさ~…」
罪人をうつ鞭を抱えて。
トイ
「さ、
エルレンマイヤー卿」
トイ
「何をするのかって言ったら…別にご想像のようなことじゃあねえんだよ。」
トイ
「告解だよ。
てめえの『罪を告白しな』」
トイ
「凌辱しに来たわけじゃない。調教しに来たんだ。人が心の底でもとめてる、堕落を解放してやるだけさ」
トイ
*アレクシアの疵『自罰思考』を抉ります。判定は猟奇。
シャルル
*横槍をします
GM
それでは横槍のチョイスから。
シャルル
Choice[猟奇,才覚,愛]
DiceBot : (CHOICE[猟奇,才覚,愛]) > 才覚
アレクシア
シャルル
*ティーセット使用します
シャルル
2d6+2=>7 判定:才覚ティーセット
DiceBot : (2D6+2>=7) > 9[5,4]+2 > 11 > 成功
GM
成功ですね。
GM
効果量を
シャルル
1d6
DiceBot : (1D6) > 3
GM
それでは-3で抉りの判定を。
[ シャルル ] ティーセット : 1 → 0
[ シャルル ] HP : 19 → 18
トイ
その鞭がしなる――
トイ
2d6+2-3=>7 判定:猟奇
DiceBot : (2D6+2-3>=7) > 9[5,4]+2-3 > 8 > 成功
GM
成功です。
トイ
被服を剥ぐように鞭がアレクシアの体に打ち据えられる!
アレクシア
服が裂ける。そして、肌が裂ける。
トイ
「…罪を告白しな!」
ティモフェイ
眉を寄せた。
トイ
さける肌。返り血。観客たちが血をあびようとにじり寄り、食い入る。
アレクシア
痛苦の息。
アレクシア
呻き。
アレクシア
言葉にならない。
ティモフェイ
救済を宣言したはずの男は、表情を曇らせたまま女が打ちすえられるさまを見つめている。
トイ
ピシリ、パシリ、ピシャリ
トイ
「罰してやる」
アレクシア
何度も。何度も。裂ける痛み、裂けた場所を更に裂かれる痛み。
アレクシア
言葉にならないまま、吊られた手首の先のことが脳裏をよぎった。
アレクシア
かぎ裂き。噛み跡。割れた爪。
アレクシア
いつだって。いつだって。
アレクシア
わかっている。
アレクシア
アレクシアは、自分が正しくはないことを。間違っていることを。
自分が、悪いのだということを――わかっている。
トイ
自分が悪いのだと解っている。その脳裏に、凸が凹にはまるように、今は痛みがもたらされる。
アレクシア
「ぅ、……あっ、!」
アレクシア
悲鳴。そしてそれに満たない息。
アレクシア
わかっている。
アレクシア
繰り返す。
アレクシア
言葉にはならずとも。
アレクシア
痛い。そればかりが。
トイ
意識が集中できなくなるほどの、ものもかんがえられぬほどの時間。
トイ
いや、それはほんの1時間足らずの事だったかもしれない。
トイ
アレクシアの様子を見る。
トイ
「おおーい。生きてるぅ?」
アレクシア
力なく、うつろな瞳。
トイ
頬を掴んで顔をあげさせ。
トイ
「なにか言いたいことは?」
アレクシア
「……」
アレクシア
言ってはいけない、と。どこかで、掠れきった理性が囁いた。けれど。
アレクシア
「……めん、……さ、ぃ」
トイ
「聞こえね~え~なぁ。腹にちからァ入れて大きな声でいえよ」
アレクシア
もう力が入らない。鞭打たれた痛みはほとんど麻痺して、むしろ吊られたままの手首が痛い。
アレクシア
声もなく、かすかに首を振る。
トイ
「……」
トイ
「観客のみなさ~ん?そろそろツアー時間は終了となりますがあ、延長はご所望ですか?」
トイ
ドヨドヨ ニヤニヤ。
トイ
アレクシアの髪を掴み、顔を寄せ。
トイ
低く、周りには聞こえない小声で。
トイ
「…さっさとしろよ、もっかいちゃんと「ごめんなさい」がいえたらさ。」
トイ
「助けてやるからさ」
助けるも何も、自分がこの状況を作りながらだが。
アレクシア
引かれた髪がいくらか抜けて。
アレクシア
首がかくんとそちらを向く。
アレクシア
零れ落ちるように、声。
アレクシア
「…………ご、めん、……なさい……」
ティモフェイ
眉をひそめた。
シャルル
地下室への扉が、カチャリと音を立てる。
トイ
「おっと。あははは」
ティモフェイ
あいも変わらず興味も関心もなさそうな褪せた瞳を、扉の方に向ける。
シャルル
蹴り破るわけでもなく、開かれた扉の向こうに男が立っている。
トイ

ぱりん。

天井から吊っていた氷の鎖が砕ける。
トイ
そして、宙づりのアレクシアが落ちる。それをーー
トイ
トイが抱えるようにだきとめ。
シャルル
ドン、ドンドン。
トイ
シャルルの方を見て、見せつける。
シャルル
銃声。
シャルル
それは、トイに向けられたものではない。
シャルル
ドン、ドン、ドン、ドン。
シャルル
右手に握ったハンドガンから放たれる正確な射撃は、
シャルル
後方でにやけた笑みを浮かべた末裔たちへのものだ。
ティモフェイ
虹がひらめいた。
ティモフェイ
放たれた銃弾のひとつひとつが、
ティモフェイ
その輝きに叩き切られて、地下室の床を転がる。
ティモフェイ
気づけばティモフェイの腕に、虹を放つ美しい儀礼剣が握られている。
シャルル
床に、薬莢が転がる音。それで銃声は止む。
ティモフェイ
ステンドグラスを模したその刀身から虹の光を煌めかせて、
ティモフェイ
薄暗い地下室を照らしながら、ティモフェイが一歩、前に出る。
ティモフェイ
「手荒いものだな」
シャルル
「おやおや、人を護るのがお上手ですね。」
ティモフェイ
「無力な末裔相手に」
ティモフェイ
「……お褒めの言葉をどうも」
トイ
悲鳴。
銃弾が放たれた先にいた、末裔たちは、なぜ自分達が助けられたのかもわからないまま、

どやどやと我先に地下室から逃げていく。
シャルル
「私の無抵抗なアレクシアを返していただけますか?」
ティモフェイ
顎でアレクシアをさししめす。
ティモフェイ
「好きにしろ」
ティモフェイ
「…………」
ティモフェイ
「そうも彼女を案じるなら」
ティモフェイ
「鎖にでもくくって、繋ぎとめておけば良かろうに」
ティモフェイ
であれば引き剥がされることもない、とでも言うように。
シャルル
「頭沸いてんですか?」
ティモフェイ
実際のところ、鎖でつなぎとめたところで何の意味もないのだが。
ティモフェイ
「さて」
ティモフェイ
「どちらがかね」
シャルル
トイに歩み寄る。
ティモフェイ
ティモフェイの手元から、虹の儀礼剣が霧散する。
シャルル
銃はホルスターに戻し、両手を差し出して。
シャルル
「楽しかったですか?」
トイ
「アッハッハ」
トイ
「アッハッハッハ」
トイ
「慈善事業だ、やりがいがある!」
トイ
アレクシアをシャルルの方に渡す。
シャルル
「ありがとうございます。」
シャルル
アレクシアを受け取り、抱き上げて。
アレクシア
シャルルの腕の中、身じろぎもしない。
シャルル
「遅くなりました、申し訳ございません。……入り口を隠した者がいたようでして。」
シャルル
「一度、帰りましょう。」
アレクシア
血まみれのまま返事もせずに、するりと腕が落ちた。
シャルル
「…………。」
シャルル
「帰りましょうねぇ。」
シャルル
2人に背を向けて歩き出す。
トイ
はやすような口笛。 
ティモフェイ
面白くもなさそうな顔で見送る。
シャルル
ちらりと振り返り。
トイ
「愛しあってるね~~!」
トイ
「信頼しあってるねえ、」
トイ
「慈しみ合ってるね~~!」
トイ
「おめでとーさん!」
トイ
パチパチと拍手で見送る。
シャルル
にこ、と口元だけ笑って。
シャルル
地下室を去る。
ティモフェイ
彼らの去ったあと。
ティモフェイ
「……満足したか」トイに問う。
トイ
ごろり。地下室の冷たい床に寝転ぶ。
トイ
「………」 大の字になって天井から、自分に向かって降る雪を見て
トイ
「……わかんね」
ティモフェイ
「……あまり、他人を巻き込むものではないよ」
ティモフェイ
それはアレクシアのことを示すのか、連れてこられた末裔たちのことか。
トイ
「しごとだよ、しごと……」
トイ
うっとおしそうにそうかえす。

代金としてもらったオルゴールの音を聞いている。それはきっと、価値あるものだった。
ティモフェイ
またため息。それ以上は何も言わない。
ティモフェイ
トイが動くまで、棒立ちのまま侍っている。
[ アレクシア ] 自罰思考 : 0 → -1
GM

第3シーン:アレクシア

GM
*第3シーン シーンプレイヤー:アレクシア
アレクシア
「…………」
アレクシア
血まみれ。掠れるような息。
アレクシア
それでも、まだ生きている。六ペンスコインの、救世主の力。
シャルル
「……消毒液と傷に塗る薬を部屋に準備してください。」
シャルル
虚空に告げる。
シャルル
傷ついた主人を抱えて、足早に部屋へと向かう。
シャルル
その間、気遣いの言葉は告げず。ただ前を見ていた。
メイド5
虚空にそう告げられればメイドは言われた通りのもの。
いや。それ以上に救世主が望むだけのものを携えて部屋のドアをノックするだろう。
シャルル
アレクシアをベッドに横たえて、治療の準備を始める。
持ってきたものの中にもいくつか使えるものはあったが……。
シャルル
扉を開けてメイドを迎える。
シャルル
「ありがとうございます。」
シャルル
ここでは、堕落の国で手に入る以上のものが届くらしい。
メイド5
部屋の入り口でそれらすべてを手渡す。
手出しは一切しない。
自分が仕える2人を目を細めて眺めたあと一礼して退室する。
シャルル
治療行為は手慣れたものだ。
それは、こちらに来る前から慣れ親しんだもの。
アレクシア
血の色も、肉の色も。シャルルにとっては見慣れたものだろう。
シャルル
消毒し、薬を塗って。
シャルル
それでも、目の前の女性の痛々しい姿に少しだけ眉が動く。
シャルル
手早く処置をすると、替えの服を取り出して着せる。
アレクシア
「……しゃ、る、」ようやく。薄っすらと開く瞼。
シャルル
「……はい、此処におりますよ」
シャルル
「申し訳ありませんが、強い痛み止めは控えさせていただきました。」
アレクシア
「……ああ」
アレクシア
「……悪い……」
アレクシア
掠れた声。けれど、語調は僅かながらにしっかりとしてきつつある。
アレクシア
「……悪、かった。……」
シャルル
「…………。」
シャルル
「仕方ない、とは申しません。しかし……」
シャルル
「あの状態では、蹴ることも噛みつくこともできなかったでしょうから。」
シャルル
「…………本当に。」
シャルル
「私の判断ミスです。」
シャルル
ベッドの傍らに膝をついて覗き込む。
アレクシア
「…………いい」
アレクシア
「……守ってくれとは言わん、と」
アレクシア
「そう、言った」
シャルル
指先で頬に触れる。
実際は触れているとはいいがたいのではあるが。
シャルル
「酷い顔ですね。」
アレクシア
「……だろうな」
シャルル
「おそらく……痕は残りますよ。」
アレクシア
「……それで困るやつはいない」
シャルル
「ふふ、お揃いですね。」
シャルル
「手足もお揃いにしますか?」
アレクシア
「……お前」
アレクシア
「冗談が過ぎる」微かに笑う。
シャルル
「んふふふふ。」
アレクシア
「六ペンス。……10枚でもあれを生き残れるか」
アレクシア
「驚きだ」
シャルル
「アレクシアが頑張ったからですよ。それに……」
シャルル
「殺そうってんじゃない。アレは、嬲りたかっただけでしょうから。」
シャルル
「殺さないのは彼の技量です。」
アレクシア
「……ありがたいような気も、……クソくらえという気もするな」
シャルル
「さて……」
シャルル
「お茶でも入れてきましょうか。準備していただいた茶葉があるので。」
アレクシア
「……よかろう」痺れたような動作で、それでも起き上がる。
シャルル
「おや、もう起きられますか。」
シャルル
「無理はしないでくださいね。……これからですし。」
シャルル
そう告げると。
湯を沸かし、茶の準備を始める。
アレクシア
「……まだ死んでいないからな」
シャルル
並んだ茶葉からいくつか、あれとそれとを混ぜて。
シャルル
ポットに湯気が立つ。
シャルル
「…………無事でよかった。」
アレクシア
「……悪いな」
シャルル
上品なティーカップと香るポットが、アレクシアの元へと運ばれる。
アレクシア
ベッドを離れはしなかった。床に足をつけ、そこまで。
シャルル
「帰りたいと、泣き叫ばれたらどうしようかと。」
アレクシア
「……馬鹿者」
シャルル
カップにお茶を注ぎ、ソーサーと共に差し出す。
アレクシア
受け取り、膝の上へ。
アレクシア
「……さて」
アレクシア
ゆっくりと。常のようには力の入らない指先で、カップを持ち上げて、一口。
アレクシア
「お前、もう落ち着いてるか」
シャルル
「ご覧の通りですよ。」
シャルル
「ふふふ。」
アレクシア
「なら、封筒を」
シャルル
「畏まりました。ティーカップももう一つ準備いたしますね。」
アレクシア
「シャルル。その前に、わたしをテーブルまで」
アレクシア
「客が来るからな」
シャルル
「…………。」
シャルル
「承知いたしました、エルレンマイヤー卿。」
アレクシア
「よろしい、わたしのベルジール殿」
シャルル
一礼をすると、さほど大きくはないテーブルに白いテーブルクロスを敷いて。
シャルル
別の場所にあった花瓶を真ん中に、椅子を向かい合わせに。
シャルル
戸棚の茶菓子を花柄の皿に並べて、カップを伏せて。
シャルル
すっかり準備が整ってから主人を迎えにあがる。
アレクシア
シャルルの手に縋るようにして、ゆっくりとした動き。
アレクシア
「……痛いが」
シャルル
「痛み止め、いります?」
アレクシア
「まあ、……お前が手を下さない程度だからな」
アレクシア
「死にはすまいよ」
シャルル
「綺麗ですよ、アレクシア。」
シャルル
「理不尽を受けてなお、アナタは気高い。」
シャルル
「さあ、素敵な顔でお迎えしましょう。」
アレクシア
「……当然だ」
アレクシア
シャルルの手から封筒と、ペンを受け取る。
アレクシア
一度、震える手をぎゅっとペンごと握り。
アレクシア
それから、ペン先が紙の上を滑る。
アレクシア
ティモフェイ。
アレクシア
「これを」 虚空に呼びかける。
シャルル
「『お客様』に。」
メイド5
虚空に呼びかければ、お茶を一口飲むほどの時間でメイドがドアをノックする。
メイド5
「承りました」
メイド5
封筒を受け取り、一礼。
シャルル
沸かした湯の温度を確かめながら到着を待つ。
GM
『お客様』は望み通りの時間に茶会の席に招かれる。
ティモフェイ
望み通りの時間、招待状の呼び出しに従って、
ティモフェイ
薄汚れたマントを纏った男が二人の客室に立つ。
ティモフェイ
はたと目を瞬いてから、いつものようにため息を吐いた。
アレクシア
「ようこそ」
シャルル
「主がお待ちです。お席へどうぞ。」
ティモフェイ
首輪から下がった鎖が金属音を立てる。
ティモフェイ
「……丁重なもてなしを、どうも」
アレクシア
「ふふ」
ティモフェイ
垂れ下がった鎖を引き上げて肩に引っ掛け、
ティモフェイ
シャルルに示されるままに茶席へ腰を下ろす。
シャルル
カップに茶を注ぐ。
ティモフェイ
怯えの色はない。反省だとか、申し訳なく思っている様子もその様子からは気取ることができない。
シャルル
「ミルクと砂糖はご自由に。」
ティモフェイ
「お構いなく」
ティモフェイ
背筋はぴんと伸びている。
アレクシア
「なんだ。うちの従者の茶は結構なものだぞ」
シャルル
言えば、あとは邪魔することはなく。
主人の後方に立ち、控える。
ティモフェイ
先程の打擲を思えばいっそ図々しいほどに堂々と、招かれた客として茶会の席についている。
ティモフェイ
「であれば、なおさら」
ティモフェイ
「俺には過ぎたものになろう」
ティモフェイ
「きみが楽しめばよい。彼もそれが望みだろう」
アレクシア
「言われるまでもなく」
アレクシア
痛みの影はない。少なくとも、表に出はしない。
ティモフェイ
招待の意を窺うように、視線をアレクシアへと向ける。
アレクシア
恨むふうもない。ただ、薄い笑み。
ティモフェイ
こちらもそれを恐れてはいないのだろう。
ティモフェイ
そも殺し合う同士だ。
ティモフェイ
何をされても仕方がない、というのは、双方了承が取れているものだろう。
ティモフェイ
それはもちろん、
ティモフェイ
今の自分の身にも同じことが言えるのだが。
アレクシア
「わたしは別に、君を鞭でぶちのめしたりはしないが」
アレクシア
「いくつかお喋りに付き合ってもらいたくてね」
ティモフェイ
「さて」
ティモフェイ
「先程の狼藉の上で、何を問われることやら」
アレクシア
「別に大したことじゃないさ」
アレクシア
「むしろ、わたしが答えてやろうと思ったのでね」
ティモフェイ
「?」
ティモフェイ
僅かに顔を上げる。
アレクシア
「最初にまみえたとき、……満たされるものかと聞いていたかな?」
ティモフェイ
「……ああ」
ティモフェイ
「よく聞いているな」
アレクシア
「それができなければ商売はできんよ」
アレクシア
軽口のように。
ティモフェイ
「商売とはとんと縁がなかったものでね」
ティモフェイ
「やり口を多少知っている、といった程度だ」
アレクシア
「縁があってもな」
アレクシア
「大成しない面構えだ」
ティモフェイ
「違いない」
ティモフェイ
みずからを嘲るように、口端をゆがめる。
アレクシア
「まあ、そんなことはどうでもいい。商売人だけが人生ではないさ」
アレクシア
「……それで、そうだな。満たされるかどうかか」
ティモフェイ
「…………」
アレクシア
「わたしは、別に、わたしがこの儀式で満ちるとは思っていない」
ティモフェイ
「では、何故?」
ティモフェイ
何故このような儀式を始めたのか。
アレクシア
「わたしには、満たしてやらねばならん奴らがいる」
アレクシア
「そしてそれは、この国の見知らぬ誰かではない」
ティモフェイ
眉が寄った。
アレクシア
「誰彼構わずたすけてはやれない。きみの言うようには」
アレクシア
「わたしはわたしの力の及ぶことしかできないが」
アレクシア
「できることを惜しむつもりはない」
ティモフェイ
「そのために」
ティモフェイ
「奇跡を?」
アレクシア
「そうだな」
アレクシア
「愚かだと思うかな?」
ティモフェイ
「いや」首を振る。
ティモフェイ
「この世界の救世主など、みなそのようなものだろう」
ティモフェイ
「きみたちは」
ティモフェイ
「むしろ、品位を保っているほうだ」
ティモフェイ
彼とは違って、と小さく付け加える。
アレクシア
「ふ」 軽く笑う。
アレクシア
「きみは」
アレクシア
「彼ときみとを分けられるとでも?」
ティモフェイ
「はは」
ティモフェイ
乾いた笑い声を返答と代える。
アレクシア
「何故救世を謳う。……きみは何をしたい?」
アレクシア
「きみ自身の話だ」
ティモフェイ
すこし、
ティモフェイ
考え込む。視線を宙空にただよわせ。
ティモフェイ
「くだらない」
ティモフェイ
「つまらない話にしか、ならないと思うが」
アレクシア
「……ふ」 再び、やはり軽く笑って。
ティモフェイ
渋るような色が沈黙にある。
アレクシア
*ティモフェイの心の疵『救世主願望』を抉ります
アレクシア
*判定は猟奇
トイ
*横槍を入れます。
GM
それではチョイスから。
トイ
Choice[猟奇,才覚,愛]
DiceBot : (CHOICE[猟奇,才覚,愛]) > 愛
トイ
2d6=>7 判定:愛
DiceBot : (2D6>=7) > 9[6,3] > 9 > 成功
GM
それではアイテムを使用する場合はアイテムの使用を含めて判定をば。
GM
成功ですね。
GM
効果量をどうぞ。1d6です。
トイ
1d6
DiceBot : (1D6) > 2
GM
続いて判定をどうぞ。
アレクシア
*ティーセットを使用
アレクシア
2d6+2+2-2>=7
DiceBot : (2D6+2+2-2>=7) > 6[4,2]+2+2-2 > 8 > 成功
GM
成功ですね。
[ ティモフェイ ] 救世主願望 : 0 → -1
アレクシア
「つまらない話?」
アレクシア
「話がつまらないんじゃあなかろうよ」
アレクシア
「きみが、つまらないんだ」
ティモフェイ
「…………」
ティモフェイ
目の前の覇気のない男がわらっている。
アレクシア
「きみは救世を心から信じているツラではない」
アレクシア
「望みはない」
アレクシア
「失ったのか、元からないのかは知らんが」
ティモフェイ
少女の言葉にあいもかわらず一言の反論もなく、
ティモフェイ
ただ諾々とその言葉を聞いている。
アレクシア
「わたしが彼に嬲られている間」
アレクシア
「暇そうだったな」
アレクシア
「そうしていつまでも無為を貪っていると良い」
ティモフェイ
「ああ」
ティモフェイ
「裁判の瞬間まで」
ティモフェイ
「できることなら、そうしたいくらいだ」
アレクシア
「そこで頷けるところがつまらんところだよ」
アレクシア
「まあ良いさ」
ティモフェイ
肩をすくめる。
アレクシア
「茶は飲んでいっても構わんよ」
ティモフェイ
「いいや」
ティモフェイ
席を立つ。垂れ下がった鎖を持ち上げて。
ティモフェイ
「俺には過ぎたものと言ったろう」
ティモフェイ
「つまらない男を気にかけるより」
ティモフェイ
「愛しい相手と、満たしてやりたい相手の未来のことでも、考えていろ」
ティモフェイ
背を向ける。
アレクシア
「では、また後ほど」
アレクシア
立ち上がりはしない。ただ、ティモフェイのどのような行動も妨げない。
シャルル
今まで黙っていた男がすっと前に出て、扉を開く。
ティモフェイ
襤褸のマントを揺らしながら、5号室の扉へと向かう。
シャルル
深い礼。
アレクシア
身体には傷ひとつなく。言葉だけがティモフェイに残る。
ティモフェイ
こちらも会釈を返して、重い足取りで扉を出る。
ティモフェイ
望みのない、つまらない男。
ティモフェイ
いつまでも無為を貪るよりほかない存在。
ティモフェイ
正しい。
ティモフェイ
彼女の言葉はなによりも正しく、
ティモフェイ
それはひび割れに染み入る冷たい水のように、
ティモフェイ
それはもとよりティモフェイの心の中にあった疵を浸して疼かせる。
ティモフェイ
自分が。
ティモフェイ
しくじることがなければ。
ティモフェイ
あるいはもっと早くにその任から逃れて。
ティモフェイ
”つまらない”顛末を迎えることがなければ、
ティモフェイ
果たしてトイトロールは救われたか?
ティモフェイ
――さりとてそれも断じて否なのだ。
ティモフェイ
逃れようがない。
ティモフェイ
自分の知らないところでいつしか組み上げられていた悪意のかたちが、
ティモフェイ
彼の人生をむさぼり尽くしたことを、最期まで知らずに一生を終えるのと。
ティモフェイ
果たしてどちらが幸いであったか。
ティモフェイ
答えの出るはずのない問いかけだ。
ティモフェイ
ただティモフェイは、
ティモフェイ
どれほどつまらない男に成り下がろうと、どれほど人生の末を汚すだけの結果になろうと、
ティモフェイ
トイトロールからは離れられない。
ティモフェイ
救世主願望を挫かれた自分の、
ティモフェイ
彼の存在は、
ティモフェイ
さいごの。
[ アレクシア ] ティーセット : 1 → 0
[ トイ ] HP : 17 → 16
GM
小道具が減り、疵に触れる横槍も減り。
GM
確認いたしました。
GM

第4シーン:シャルル

GM
*第4シーン シーンプレイヤー:シャルル
シャルル
音を立てないよう、扉を閉める。
シャルル
「……お疲れ様でした。」
アレクシア
ふ、と息をつく。
アレクシア
それから。糸の切れたように、崩れる。
シャルル
「手ごたえは……」
シャルル
「アレクシア……!」
アレクシア
「……っ、……」テーブルに手をついて、かろうじて床に落ちることを避けた。
シャルル
振り返り、戻ろうとした矢先。
シャルル
駆け寄る。
シャルル
身体を支えながら、顔を見て。
シャルル
「顔色がよくありませんね。」
シャルル
「ベッドへ。」
シャルル
そのまま抱き上げて、ベッドに向かう。
アレクシア
「…………」
アレクシア
「……手間をかける」
シャルル
「お気になさらないでください。」
シャルル
先ほど、アレクシアのベッドは汚してしまった。
シャルル
自分のベッドへと運んで。
シャルル
「ご立派でしたよ。」
アレクシア
「……ふ」
アレクシア
「まあ」
アレクシア
「舐められたままではいられんだろう」
シャルル
「…………やはり。」
シャルル
「出来ることなら、見せたくありませんでしたよ。」
シャルル
「もう、見せるという範囲ではありませんが。」
アレクシア
「……いい」
アレクシア
「気にするな」
アレクシア
「……言ったろ」
アレクシア
「困るやつはいない」
シャルル
「…………。」
シャルル
「本当に、そう思っているのですか?」
シャルル
「…………まあ、困らないといえば困りませんが。」
シャルル
「私の方が多いですし、傷。」
アレクシア
「……だからどうした」
シャルル
「ふふふ……いいえ。」
シャルル
「…………。」
シャルル
「怖かった。」
シャルル
「怖かったですよ。」
シャルル
「封筒の事を、忘れるほどに。」
シャルル
「アナタが傷つくことではなく……。」
シャルル
「壊れてしまうのではと。」
シャルル
「アナタは……『私達』とは違う。」
シャルル
目を伏せる。
シャルル
先ほどと同じように、ベッドの脇に膝をついて。
アレクシア
そちらを見る。
シャルル
「怖いに決まってるじゃないですか。」
シャルル
「凌辱から目をそらし、暴力に胸を痛め……殺人を『大罪』と思う人が。」
シャルル
「こんな世界、耐えられるわけがない。」
アレクシア
「……それでも」
アレクシア
「この国に堕ちた以上は、……そこで生きるしかないんだ、シャルル」
シャルル
「アナタを返して差し上げたかった。綺麗なままで。」
シャルル
「…………。」
シャルル
「はは…………。」
シャルル
「いや…………。」
シャルル
「違うな。俺は…………」
シャルル
「アレクシア。」
アレクシア
「…………なんだ」
シャルル
「一緒にいる時間が、楽しかったから。」
シャルル
「こんな、楽しいもあるって、思えたから。」
シャルル
「最後まで、一緒にいたいと思ったのかもしれないな。」
アレクシア
「……お前な」
アレクシア
「……そういうことは、帰った先で言ってろと」
アレクシア
「言ったはずだぞ」
シャルル
「それじゃ意味がないんだ。」
シャルル
「堕落の国に来て、真っ暗な穴から少しましな世界に転がり落ちて……」
シャルル
「アレクシア。アナタに会えた。」
シャルル
「私が守りたいのは、アナタなんですよ。」
シャルル
*アレクシアの代替品を愛で舐めます。
ティモフェイ
はい
ティモフェイ
横槍をします
GM
横槍の宣言をお願いいたします。
ティモフェイ
*横槍を入れます。
ティモフェイ
Choice[猟奇,才覚,愛]
DiceBot : (CHOICE[猟奇,才覚,愛]) > 才覚
ティモフェイ
ないな~
ティモフェイ
2D6>=7
DiceBot : (2D6>=7) > 10[4,6] > 10 > 成功
GM
効果量を
ティモフェイ
1d6 効果量
DiceBot : (1D6) > 2
[ ティモフェイ ] HP : 18 → 17
シャルル
2d6+2-2=>7 判定:愛
DiceBot : (2D6+2-2>=7) > 6[1,5]+2-2 > 6 > 失敗
トイ
一方 6号室…
トイ

トイが、アレクシアを見世物にした代償に、手に入れたオルゴールの音を聞いている。
トイ
澄んだ金属のしらべ。きれいだ。
トイ
背を丸めてねじを巻きながら。
トイ
扉の開く音に気付く。茶会に呼ばれていたティモフェイが返ってきたのだ。
ティモフェイ
陰鬱な表情。
ティモフェイ
首輪に繋がれたままの鎖を腕に引っ掛けて、
ティモフェイ
澱んだ瞳でトイを見る。
トイ
「おい!!」
醜くしゃがれた、怒鳴り声
トイ
「どこいってたんだ」
トイ
「んだァ、そのしけた面は…」
ティモフェイ
「…………」
ティモフェイ
「茶会に」
ティモフェイ
「呼ばれていた」
ティモフェイ
「……軽い話を、してきただけだ」
トイ
「はあ~~~~!?」
ティモフェイ
つかつかと6号室に入って、扉をしめる。
ティモフェイ
叫び声をあげたトイを振り返る。
トイ
なんで自分は呼ばれなかったんだろう。一瞬、そんなことを考えてからだが静止する。
トイ
いやいや、救世主のお茶会は、そういう…親睦を深めるやつではない。
トイ
呼ばれなかったことにきずつくひつようはない。
ティモフェイ
「……顔を合わせたときの」
ティモフェイ
「俺の言葉が、気になったらしい」
ティモフェイ
「俺としては」
ティモフェイ
「あれは、むしろきみに問いかけたものだったが」
ティモフェイ
「…………」
ティモフェイ
「まあ」
ティモフェイ
「救世主の事情を知っておいて、損がないのは」
ティモフェイ
「そうか……」
ティモフェイ
自分には気の進まないことであるけれど。
トイ
「お前の言葉…?
あ?それでてめーなんて答えたんだ?」
ティモフェイ
「俺が答えた、というよりかは」
ティモフェイ
「彼女の話を聞かされた」
ティモフェイ
「帰るべき場所があるらしい」
ティモフェイ
「満たしてやりたい、者たちがいると」
ティモフェイ
淡々と語る。
ティモフェイ
しかしかわいた声の奥底に、
ティモフェイ
しずか、わずか、かすかな、
ティモフェイ
寂寞。
ティモフェイ
あるいは、郷愁。
ティモフェイ
許されはしない感情を、トイトロールの前で露わにすることはないけれど。
トイ
ベッドから跳ね起き、ティモフェイに寄る。
両の手で挟むように彼の頭を掴み、マスクを寄せる。
ティモフェイ
寄せられる。
ティモフェイ
トイトロールのマスクを見返す。
トイ
「てめえ」
ティモフェイ
「ああ」
ティモフェイ
「つまらない男と言われたな」
トイ
「てめえは…」
ティモフェイ
「まったく、正しい評価だ」
トイ
「………
……一方的に…言われて なんの反論もせず」
トイ
「それでのこのこ帰ってきたってのか?」
ティモフェイ
「そうなるな」
ティモフェイ
「まあ、正鵠を射ている」
ティモフェイ
「反論しても仕方のないことだろう」
ティモフェイ
「結局、最後は暴力だろう? この世界」
トイ
頭を掴み、そのままドアの方へ打ち付ける。
トイ
大きな怒鳴り声。
「やりかえして来いッッ!!」
ティモフェイ
ゴヅンと鈍い音が響いた。
ティモフェイ
額から滲んだ血がドアを汚して、
ティモフェイ
それが目を伝い、頬を滴り落ちていく。
トイ
「おまえの毎日葬式みてーな辛気くっせえ顔なんか一秒たりともみたくねえ!」
ティモフェイ
「…………」
トイ
「やるまで帰ってくるなッ!」
激しい怒鳴り声。
トイ
ベッドに逃げるように倒れ込む。毛布をめくり、頭からかぶる。
トイ
毛布のうえに、雪が降る。
トイ
ゆきがふかく、うっすらと積もっていく。
ティモフェイ
その降り積もる様を見つめている。
トイ
雪のはげしさは、トイの感情の荒れ方のあかしだ。
ティモフェイ
「……俺は」
ティモフェイ
血で汚れて歪んだ扉に手をかける。
ティモフェイ
「俺がきみとともにあるのは」
ティモフェイ
「それでも最後の、矜持のつもりだよ」
ティモフェイ
言い残して、雪降る客室を出た。
GM
アレクシア
ただ、それを聞く。
シャルル
「…………。」
アレクシア
ふと笑う。
アレクシア
「馬鹿だな」
アレクシア
「……慕う女性がいたんだろ」
アレクシア
「この館が最後だ」
アレクシア
「戻れるなら」
アレクシア
「忘れられる」
アレクシア
「違う世界だなんて、ばかばかしい夢だったと思え」
シャルル
「…………アレクシア。」
シャルル
「ふふ…………。」
シャルル
「そうですね、エルレンマイヤー卿。」
シャルル
シャルルにはファミリーネームがない。
シャルル
それは、彼の世界では珍しくなく。
シャルル
そして、この世界でも珍しい事ではなかった。
シャルル
だから、名乗る必要はなかったのだ。
シャルル
あの人の、ベルジールという名を。
シャルル
アレクシアがその名を呼ぶたびに。
シャルル
故郷を思い出した。帰るべき場所を。
シャルル
だから、迷いそうになったときは。こうする。
シャルル
『エルレンマイヤー卿』
シャルル
シャルルとアレクシアの、それは。
シャルル
お互いを繋ぐ、あるいは分ける。
シャルル
合図のようなものだ。
少なくとも……彼にとっては。
ティモフェイ
その合図を銃爪としたように、
ティモフェイ
不意に、轟音とともに5号室の扉が吹き飛ばされる。
ティモフェイ
文字通りの木っ端微塵に扉が砕け、
ティモフェイ
木片が舞い、廊下を漂う冷たい空気が二人の客室に流れ込み。
ティモフェイ
そしてつまらない男――無粋な救世主が、虹の儀礼剣を提げてそこに立っている。
ティモフェイ
シャルルとアレクシアを、
ティモフェイ
というよりむしろアレクシアの様子を一瞥して、
シャルル
咄嗟に
ティモフェイ
その男はああ、と得心がいったように息を漏らした。
ティモフェイ
「さすがに、虚勢か」
シャルル
布団をあげて、テーブルを蹴り上げる
シャルル
身体にしみついた、防衛反応。
ティモフェイ
そのテーブルを虹の切っ先が叩き切る。
シャルル
「き……っさま!」
ティモフェイ
それを床に転がしてさらに踏み込みながら、
シャルル
脇から銃を引き抜いて向ける。
ティモフェイ
「邪魔をしてすまないね」
ティモフェイ
その銃口に虹の剣先を突き込んで。
シャルル
「…………撃ち殺すぞ。」
ティモフェイ
「できるものなら」
シャルル
引き金を引く。
ティモフェイ
虹の切っ先で、その銃口を叩き上げ
ティモフェイ
銃弾を逸らして、さらに一歩。
ティモフェイ
刃はシャルルの首元に当てられる。
シャルル
「…………。」
ティモフェイ
「別に」
ティモフェイ
「まだ殺しにきたわけではないよ」
シャルル
苛立ち。
ティモフェイ
そしてちら、とアレクシアを窺う。
アレクシア
ゆるい動作で起き上がる。
ティモフェイ
そのさまにいまだ表情ひとつ動かさず、
ティモフェイ
「……トイトロールにとっては」
ティモフェイ
「俺はつまらない男などではなく、いっぱしの救世主」
ティモフェイ
「世界を救うに値する価値のある男、らしい」
シャルル
「…………。」
アレクシア
「そうか」
アレクシア
「ならばなおさら」
アレクシア
「意見の相違は、裁判で決するものだ」
ティモフェイ
「正しいな」
ティモフェイ
切っ先を引くより前に足をあげ、シャルルの腹に蹴りを入れる。
シャルル
「っ……!」
ティモフェイ
虹の剣を閃かせてその銃身を叩き斬ると二人に背を向け、
シャルル
腹は生身だ。腕で防ぐこともできない。
ティモフェイ
先の茶会から去ったときのように重い足取りで5号室から出ていく。
ティモフェイ
いまだ手には虹の儀礼剣を握りしめたまま。
シャルル
「…………ふふ……ふふふふ……。」
ティモフェイ
背を向けてなお隙の感じられない、
ティモフェイ
暴力に慣れた者の立ち振る舞い。
アレクシア
その背を見送りながら。
アレクシア
「ベルジール」
アレクシア
「今はキレるなよ」
シャルル
「…………。」
シャルル
糸の切れた人形のように。虚空を見て。
シャルル
使い物にならなくなった銃から弾倉を引き抜き、放って。
シャルル
「…………はい。仰せのままに。」
シャルル
こんなに。こんなに。呼ばれる事が、苦しい。
シャルル
何もできなかったのが悔しい。
シャルル
「いやぁ、死んだかと思いました。」
シャルル
「あはは……。」
シャルル
「…………すみません。」
シャルル
今度はベッドに背を持たせかけるように、床に座り込むと。
シャルル
破壊された扉の方を、じっと見ていた。
アレクシア
「謝るな」
アレクシア
「……いいんだ」
アレクシア
ただ、そうとだけ言う。
アレクシア
それきり、黙った。
GM