Dead or AliCe
『16人の救世主』

お茶会-2ラウンド目

メイド4
サイクル1終了です。
メイド4
サイクル2に入ります。
メイド4
手番を決定します。各自1d99でお願いします。
小鴨 チカ
1d99
DiceBot : (1D99) > 42
マキナ
1d99
DiceBot : (1D99) > 55
網倉 霞
1d99
DiceBot : (1D99) > 35
鏖田 ネイル
1d99
DiceBot : (1D99) > 42
鏖田 ネイル
1d9
DiceBot : (1D9) > 7
小鴨 チカ
1d9
DiceBot : (1D9) > 9
メイド8

第1シーン:マキナ

メイド8
お茶会 サイクル2 マキナ
マキナ
色々がありました。いうほど色々ではないかもしれませんが。
マキナ
服を整え、雰囲気を切り替えて。
マキナ
「さてさて」
マキナ
「お相手さんのことをもっと知っておきたいところですねぇ」
小鴨 チカ
「あっちの……」
小鴨 チカ
「目が怖いお姉さんの事はちょっとわかったような気もするけど」
小鴨 チカ
「目が超怖いお姉さんの方がマジで謎」
マキナ
「目が怖い方、多分お姉さんじゃないですよ」
小鴨 チカ
「は?」
マキナ
「まあそれはいいんですけど」
小鴨 チカ
ん?
小鴨 チカ
「待って」
小鴨 チカ
「今の何」
マキナ
「ということでチカくん」無視
小鴨 チカ
「え?」
マキナ
「ちょっとお使いを頼まれてもらえまえせんか?」
小鴨 チカ
ぼくはクラスタ的に中性的な見た目の奴が多いから見分けられるが、あれは女だろ?
マキナ
「お茶会に仲間はずれのまんまじゃかわいそうですもんねぇ」
小鴨 チカ
男の娘モノはずっと回避して生きてきたんだが?
小鴨 チカ
「……」フリーズ。少し考える。
小鴨 チカ
よし!
小鴨 チカ
一旦!置いておこう!!
マキナ
正しいですね~
小鴨 チカ
「で、えっと」
小鴨 チカ
「お使いだっけ?何すればいい?」
マキナ
「簡単なことですよ~」
マキナ
「目が超怖いお姉さんを呼んできてほしいんですよ」
小鴨 チカ
「簡単かなあ!?」
マキナ
「慣れておかないと」
マキナ
「ほら」
マキナ
「この後裁判で戦うんですよ?」
小鴨 チカ
「…………」
小鴨 チカ
それは。
マキナ
「がんばれがんばれ♥」
小鴨 チカ
……その通りだな。
小鴨 チカ
「わかった」
マキナ
「よしよし」
小鴨 チカ
「いって、きます!」
マキナ
「いってらっしゃあい♥」
マキナ
ひらひら手を振ります。
小鴨 チカ
8号室を出て、4号室へ。
小鴨 チカ
こんこんとノック。あやべ全然音でねえ。もっかい。
小鴨 チカ
こんこん!
鏖田 ネイル
応答は無い。
鏖田 ネイル
しかし、中から人の気配はある。コツコツと、何か木を叩く音。
小鴨 チカ
「コンチャーッス!人ー!人居ませんかー!」
鏖田 ネイル
応答は無い。
小鴨 チカ
帰っていい?
小鴨 チカ
「怖いんですけどぉ!」
小鴨 チカ
「何の音ですかぁ~!」
鏖田 ネイル
応答は無いのだ。
小鴨 チカ
マジで帰りたいんだが。これは簡単なお仕事ですか?
小鴨 チカ
「開けますよー!開けます!お邪魔します!」
小鴨 チカ
勢いで開ける!なぜなら、ここで開けられないとたぶん一生開けるタイミングを見失ってしまうから!
鏖田 ネイル
部屋には灯りがついていなかった。
小鴨 チカ
「お化け屋敷ィ~~~!」
鏖田 ネイル
コツコツコツ…………と木を削る音が聞こえる。
鏖田 ネイル
その闇の中では、超怖い目の女が胡座をかいて座っていた。
鏖田 ネイル
その周囲には木屑が無数に散らばってる。それと共に、木彫りの、少女の像が複数。
小鴨 チカ
「ええ…………」
小鴨 チカ
何これ?
小鴨 チカ
マジで何?今日は何これが多すぎませんか?
小鴨 チカ
これが……女子に振り回されるって事か……
鏖田 ネイル
なんらかの執念を感じさせる程写実的に彫られたそれは、元は杭のようで、足元が鋭利に尖っている。
小鴨 チカ
あれでぼくのこと殺せるじゃん。
小鴨 チカ
「あの~……」
鏖田 ネイル
女は今も、一心不乱に像を彫っている。コツコツという音は、ナイフで杭を削っている音だった。
小鴨 チカ
何とか言ってくれ。
鏖田 ネイル
とはいえ、近づけば気配には気付く。
鏖田 ネイル
「…………む」
鏖田 ネイル
この鼻は…………
小鴨 チカ
「ど、どうもぉ……」
鏖田 ネイル
女が指を立てる。その先端が発火して、僅かな灯りになった。
鏖田 ネイル
「いと…………君か」
小鴨 チカ
「ど、どうも」
小鴨 チカ
いと?
鏖田 ネイル
「……何か用かな?この場を思えば、用などいくらでもありそうだが」
鏖田 ネイル
聖像を作っているのを本人に見られるのは流石に恥ずかしいな……仕舞っておこう
小鴨 チカ
「えっと……」
鏖田 ネイル
女は手に持っていた少女像を懐に仕舞う。同時に、床に転がっていた方の少女像達……失敗作が、次々と燃えていく。
小鴨 チカ
「……お、お話しません~?なんて。へへっ」
鏖田 ネイル
「ほう?」
鏖田 ネイル
わ~~~糸田さんに誘われちゃった~~~やった~~~
鏖田 ネイル
これはもしや…………
鏖田 ネイル
糸田さんの記憶を取り戻したのでは!?
鏖田 ネイル
どうしよう……告白されたら……
小鴨 チカ
マジで怖い。
鏖田 ネイル
「お茶会の誘いか。それはここで?それとも、君についていけばいいのかな」
小鴨 チカ
「あ、もしよければ、その、ついてきていただけるとぉ……」
小鴨 チカ
会話は成立するけど、とにかくオーラが凄い。
小鴨 チカ
眼光。眼光がな。
小鴨 チカ
応答を間違えたら即座に殺されそう。
鏖田 ネイル
「構わない。別の場所でも、君の部屋の…………」
鏖田 ネイル
ふと、思案するように顎に手を当てる。
鏖田 ネイル
思案自体は、ずっとしているが。
鏖田 ネイル
「……君の事は、何と呼べばいいかな?」
鏖田 ネイル
メイドが名前を読み上げていたのだが、正直鼻に気を取られてなにも聞いていなかった。
鏖田 ネイル
それに、これは大事な質問だ。
小鴨 チカ
「え。あ……」
小鴨 チカ
名前を呼んでくれるのか。後で殺し合うのに。
鏖田 ネイル
糸田さんが記憶を失ってこの世界に転生して鼻以外の全てを変質させたとして。自分の名前を覚えているかどうかで大きく記憶の状態は違ってくるだろう。
鏖田 ネイル
それに、もしも記憶を取り戻していたのなら……ここで打ち明けてくれるかもしれない。どきどき。
小鴨 チカ
「……チカ、って呼んでくれる?」
鏖田 ネイル
「…………チカ。下の名前か?」
小鴨 チカ
やべ。下の名前言っちゃった。
鏖田 ネイル
そうか、やはり糸田さん、記憶が……
小鴨 チカ
「小鴨チカ。どっちでもいいよ」
鏖田 ネイル
「…………!」
小鴨 チカ
何怖い。
鏖田 ネイル
CHIKA OGAMO
TOMOE ITODA
鏖田 ネイル
分解してアルファベット順に並べれば……
鏖田 ネイル
AACHIKMOO
ADEIMOOOTT
どちらもAから始まりIが一つでMOOが並ぶ。なるほど、全てがつながった。
小鴨 チカ
何か言うたびに、顔が険しくなってってないか?
鏖田 ネイル
「やはりな……」
鏖田 ネイル
「……分かった、君についていこう、チカ」
小鴨 チカ
「……? う、うん」よくわかんないけど、地雷は踏まなかったっぽい。
GM
救世主は狂っている。
鏖田 ネイル
大人しくチカのうしろについていく。頭の先からつま先まで、ねっとりと舐め回すような視線を送りながら。
鏖田 ネイル
やはり鼻以外は変質してしまっているな…………
鏖田 ネイル
「そういえば」
鏖田 ネイル
「私の事は、鏖田さんと呼んでくれ」
小鴨 チカ
「鏖田さん……わかった」
鏖田 ネイル
あっ♥♥♥久しぶりに鏖田さんって呼んでもらえた♥♥♥
鏖田 ネイル
ぶるりと肩が震えた。
小鴨 チカ
ぞわり。
小鴨 チカ
後ろからピリピリと殺気を感じる。感じるけど、たぶん、何もしないのがいちばん生存率が高い行動だ。
鏖田 ネイル
その後も何事もなかったかのように、部屋まで後追いと観察を続けた。
小鴨 チカ
今この瞬間も、命を握られている気がする。こんな事で、本当に勝負になるんだろうか。
小鴨 チカ
8号室の扉を開ける。
小鴨 チカ
「ただいまあ」
マキナ
「遅いですよ~」
マキナ
ドアを開けて、二人を迎える。
小鴨 チカ
悪かったな!怖かったんだよ!
鏖田 ネイル
「…………」
鏖田 ネイル
糸田さんを責めているのか?万死に値するな……
マキナ
室内では、メイドに頼んで既にお茶の準備が出来上がっている。
鏖田 ネイル
殺気を鋭く飛ばしながら、部屋を睥睨する。まず床。ついで天井。次に家具。
マキナ
なんだか殺気を感じる気がします……。
鏖田 ネイル
弄った形跡があるか、何か違和感はないか。ワイヤーの有無。少しでも不自然な所があるかどうかを虱潰しに。
マキナ
部屋の中に、気になる点は見当たらないでしょう。
マキナ
よっぽど上手く罠を隠してあるのか、
マキナ
或いは、なにもないのか。
メイド8
お茶、サンドイッチがテーブルに並んでいます。オレンジジュースもある。
鏖田 ネイル
最後に、マキナ自身。
鏖田 ネイル
……武器を手放さないのは、先程と変わらずか。
マキナ
「さあさあ、どうぞどうぞ」
鏖田 ネイル
「お招きにあずかる事にした。今はお茶会の時間だからな」
マキナ
「えぇ」
マキナ
「ハイティーと洒落込もうではありませんか」
鏖田 ネイル
「その気があれば誘いを受けると、言ったからな」
マキナ
「裁判までは、おだやか~に過ごしたいですもの」
小鴨 チカ
「それは本当にな」
マキナ
「誘いを受けてくれて助かりましたぁ」
鏖田 ネイル
席に座る……前に
小鴨 チカ
ついでに、ぼくが手を震わせずにお茶を飲めるようになるとなおいい。
鏖田 ネイル
ガッ!!!!と、自分に用意された椅子を勢いよく動かした。
小鴨 チカ
やってこい……度胸!
マキナ
ネイルに促してから、自身も座ろうとして
鏖田 ネイル
チカの席に隣接させてから、座る。
マキナ
「!?」
小鴨 チカ
「ひぃあ!?」
小鴨 チカ
殺されるかと思った。
マキナ
突然の奇行に首を傾げて
鏖田 ネイル
「では、お茶をもらおうか」
マキナ
「……チカくん今日はモテモテですねぇ」
鏖田 ネイル
何事もなかったかのように。
鏖田 ネイル
私が糸田さんと隣あうのは必然だが?
マキナ
コワ~……
小鴨 チカ
何て返せばいいんだよ、それ!?
マキナ
座りそこねていたので、座りました。
小鴨 チカ
変な体勢になってた。座りまーす。
小鴨 チカ
近。
GM
糸田巴は紅茶を鏖田に紅茶を煎れて出したことがある。
マキナ
「……あちらの小さい方の人」
マキナ
「霞様でしたっけ」
鏖田 ネイル
糸田さんは、一般的な基準から言えばあまり淹れるのが上手では無かった。
マキナ
「あの方もさっき、チカくんにべたべたくっついてたんですよぉ」
鏖田 ネイル
勿論、間違っているのは一般的な基準のほうである。
GM
安物のティーバッグの紅茶で、お茶請けはチョコパイだった。
マキナ
「なんですかぁ? お二人してチカくんを籠絡しようと?」
鏖田 ネイル
「そうか。よく死ななかったな」
鏖田 ネイル
まぁ、殺す訳はないか。糸田さんだもんな。
小鴨 チカ
「また新しい思わせぶりな情報が来たが?」
鏖田 ネイル
こっちの女の方に何か盛るか抉るかしたのか?あいつはそういう悪質な事をよくやる。
小鴨 チカ
えっなに、あれ殺されるとこだったの?
小鴨 チカ
怖い。女子怖い。女子ですらないかもしれない。そんなことあるか?
鏖田 ネイル
「……チカさんは知らないだろうが、そちらの女は知っているだろう」
マキナ
何を?と首を傾げています。
鏖田 ネイル
「救世主のお茶会とは、心の疵の抉りあいだ。そのために手練手管を尽くす」
マキナ
霞がチカに近づいたのは目的あってのことだった。
マキナ
だけど、こちらの彼女がチカを気にかけている理由がどうにも分からない。
鏖田 ネイル
「心の疵とは、救世主の力の源。救世主同士の会話は、それを削ぐ前哨戦に過ぎない」
鏖田 ネイル
「だが、霞は……あいつは、その場で直接的に殺すからな」
マキナ
「あら~効率的」
鏖田 ネイル
「我々は救世主であり、狩人だ。救世主の流儀と狩人の流儀を混ぜて使う」
マキナ
少し揺さぶってみたものの、流されただけで……一体何を思っているのやら。
小鴨 チカ
「…………」
マキナ
「そうそう、気になっていたのですけどねぇ」
鏖田 ネイル
こうして説明しておけば、糸田さんにも堕落の国の事が伝わるだろう。
お茶会は危ない奴だからね~~気をつけるんだよ~~
小鴨 チカ
こっええ!!!
マキナ
「マキナとあなた方の元いた世界が近いんじゃないかって」
マキナ
「そう仰っていたでしょう?」
マキナ
「でも、そんな物騒な人たちマキナの世界にいたかな~って」
マキナ
「軍隊とか、そういうのとは違いそうですし」
マキナ
「お話聞いてみたいな~って思ったんですよ」
鏖田 ネイル
「…………△△、○○、それからxxxx」
鏖田 ネイル
告げた名前は、転移前の日本の総理大臣、その一つ前の総理大臣、そしてアメリカの大統領。
鏖田 ネイル
「聞き覚えがあれば、同じ世界だろう」
マキナ
「……なるほど」
鏖田 ネイル
「そして、△△はヴァンパイアだ」
マキナ
いずれの名前にも、聞き覚えがあり、
鏖田 ネイル
「お前の世界に吸血鬼はいた。だが、それを隠す権力も持っていた」
マキナ
「……ヴァンパイア?」
小鴨 チカ
「情報過多!情報過多!」
鏖田 ネイル
「それだけの話だ」
GM
狩人は狂っている。
マキナ
それだけは、マキナには聞き馴染みのない単語だった。
マキナ
「えぇ~……」
小鴨 チカ
いま、ぼくは、なにを信じたらいいのか、マジでわからない。
マキナ
「今更知る世界の衝撃真実」
鏖田 ネイル
「まぁ、お前にとっては過去の世界だ。我々は戻る予定だが」
小鴨 チカ
「ぼくも戻りたいなあ~!ぼくも戻りたいという事だけはわかる」
マキナ
「……奇跡の力ってやつでですか」
鏖田 ネイル
そうだね♥一緒に戻ろうね♥
鏖田 ネイル
冷静な顔でお茶を啜っている。
鏖田 ネイル
「大抵の参加者は、それが目当てだろう」
鏖田 ネイル
「付添で参加したようなものや、巻き込まれた者を除けばな」
小鴨 チカ
「やっぱこの世界クソですよねえ?」
鏖田 ネイル
「そうだな」
マキナ
「ほんとクソですよ」
鏖田 ネイル
「だが、元の世界もそう代わりはない」
鏖田 ネイル
全てに価値は無かった。汚泥のような環境だ。
マキナ
「え~?」
マキナ
「ずっとマシじゃないですかぁ?」
マキナ
「あ、でもあなた方のように向こうでも戦ってた方にはあまり変わりなかったり?」
鏖田 ネイル
「……ある吸血鬼は」
鏖田 ネイル
「屋敷の地下に、牧場を持っていた」
マキナ
「牧場」
マキナ
既にうわーという表情になりつつあります。
鏖田 ネイル
「徹底した管理が敷かれていてな。家畜達は番号で管理され、脱走しないように躰の健を切られ、筋弛緩剤を常に投与されていた」
マキナ
うわ~
小鴨 チカ
やばい話じゃん。
鏖田 ネイル
「主が遊び半分で潰すものだから、系けく的に繁殖させても減るスピードの方が早い。それでも牧場から家畜がいなくなる事が無い」
鏖田 ネイル
「”家畜”は、その友人や家族達を名乗る者達が、いくらでも差し出してくるからな」
鏖田 ネイル
「……良い世界だと思うか?」
小鴨 チカ
やばい話だった。
マキナ
「いえ…………」
マキナ
「えぇ…………」
マキナ
サンドイッチをつまんでいた手が止まっている。
マキナ
番号で管理される環境、人権を奪われる場所。
マキナ
マキナはそれに見覚えがある。
鏖田 ネイル
「……お前は」
鏖田 ネイル
「素質がある」
マキナ
彼女が語る世界は、それよりもなお劣悪に聞こえる。
マキナ
「……素質?」
鏖田 ネイル
「我々狩人は、お前のような者の事をフォロワーと呼ぶ」
マキナ
「ふぉろわー」
マキナ
SNS?
小鴨 チカ
フォロワーぼく500人いる。
鏖田 ネイル
「人を家畜扱いする吸血鬼。その下に自ら就いて、足の裏を舐める者の事だ」
マキナ
「まぁ~」
鏖田 ネイル
「あの世界の人間の中では、最も幸福な人種だな」
小鴨 チカ
やっぱり違う世界の話してない?
マキナ
「マキナ今悪口言われてますぅ?」
鏖田 ネイル
「これでも褒めている」
鏖田 ネイル
勿論、それはそれとして死ねばいいと思っている。
鏖田 ネイル
「無自覚に腐るよりは、自覚的に腐っている方がまだマシだ」
小鴨 チカ
「……?」
小鴨 チカ
なんで、マキナさんが責められてんだろ。
マキナ
「あはは」
小鴨 チカ
なんで、ぼくは全く責められないんだ?
マキナ
「まぁ、それは確かに」
マキナ
「それにしても、そんな世界にあなたは戻りたいんですねぇ」
マキナ
「大して変わらないって言いながら」
鏖田 ネイル
「目的地、というわけではないが。用があるからな」
鏖田 ネイル
「殺さねばならない奴がいる」
マキナ
「へぇ」
マキナ
「ヴァンパイア?」
鏖田 ネイル
「……わからん」
鏖田 ネイル
「人でないのは確かだ。種族として分類可能なのかもわからん」
鏖田 ネイル
微かに、言葉に熱が籠もる。
マキナ
「ふむ」よく分かっていない。
小鴨 チカ
元の世界に戻っても、この人は殺し合いを続けるのか。
小鴨 チカ
「……なんで逃げないの?」
鏖田 ネイル
「っ……」
小鴨 チカ
「元の世界じゃなくて、別のイイ感じの世界とかじゃだめなの?」
鏖田 ネイル
鉄の心が通ったようだった姿勢が、僅かに揺れる。
鏖田 ネイル
あの時と同じ事を言われてしまった。
小鴨 チカ
特に意図はない。ただ気になったから聞いてみただけだ。
鏖田 ネイル
逃げて、生きて……と。
マキナ
「奇跡の力があれば元の世界じゃなくてもいいですよねぇ」
鏖田 ネイル
それが、糸田さんの最後の言葉だった事を、忘れてはいない。
マキナ
「そんなにしてまで殺したい相手なんですか?」
鏖田 ネイル
心の疵のやりとりにおいて、自分の話をする、というのはリスクを伴う。
鏖田 ネイル
相手からも引き出すために、しない訳にはいかない。だが必要以上にしてもいけない。それは弱点をさらけ出す。
マキナ
「鏖田ネイル様、網倉霞様」
鏖田 ネイル
女はそれを分かっている。
鏖田 ネイル
分かっていても。
鏖田 ネイル
それでも。
マキナ
「お二人の名前はマキナも知っているんですよ」
マキナ
「強い救世主はどうやっても噂になりますからね」
マキナ
「……この世界で生きていくだけなら、あなたたちは困らないでしょう?」
マキナ
「あのコインの量を見れば分かります」
メイド8
脅威度5。現れてすぐに猛烈なスピードで救世主を潰して成り上がってきた。
マキナ
「それでも、命を賭けてこの儀式に参加したんですよね」
マキナ
「巻き込まれたマキナたちと違って」
メイド8
ここへの招待状も、他の救世主から奪ったもの。
マキナ
「そんなにしてまで、殺さないといけない相手なんですか?」
鏖田 ネイル
「………………」
鏖田 ネイル
揺れる。
鏖田 ネイル
隣に、糸田さんがいる。
鏖田 ネイル
その前で、これを口にしていいものだろうか。
鏖田 ネイル
或いは、それを口にする事で、彼女は記憶を取り戻してくれるのだろうか。
鏖田 ネイル
その迷いが、それを漏らした。
鏖田 ネイル
「復讐を……」
鏖田 ネイル
「しなければならない」
鏖田 ネイル
「糸田さんの……」
GM
復讐。
小鴨 チカ
「復讐……?」
マキナ
「……復讐」
GM
何もないところから復讐は生じない。
小鴨 チカ
漫画じゃ、よく見る。実際に言うやつに会った事は、そりゃーない。
GM
その前の過程がある。喪失がある。
マキナ
*ネイルさんの敗北者を抉ります 判定は愛
網倉 霞
*横槍
網倉 霞
Choice[猟奇,才覚,愛]
DiceBot : (CHOICE[猟奇,才覚,愛]) > 愛
網倉 霞
2d6=>7 判定:愛
DiceBot : (2D6>=7) > 9[5,4] > 9 > 成功
網倉 霞
1d6
DiceBot : (1D6) > 1
マキナ
2d6+3-1>=7 愛
DiceBot : (2D6+3-1>=7) > 7[1,6]+3-1 > 9 > 成功
[ 網倉 霞 ] HP : 14 → 13
[ 鏖田 ネイル ] 敗北者 : 0 → -1
鏖田 ネイル
その言葉は、酷くか細かった。
鏖田 ネイル
淡々と、冷酷なトーンで語られた牧場の話よりは、よほど。
マキナ
「復讐……復讐かぁ」
鏖田 ネイル
視線が、ちらりと小鴨 チカの方を向く。
狩人らしくもない、わかりやすい動き。
メイド4
復讐。それは『生きて、逃げて』その言葉を断ち切っての選択で。
メイド4
それは本当に、向けられた愛に答えていると言えるのか。
鏖田 ネイル
「獣の女王」
鏖田 ネイル
「圧倒的で、ただ通り過ぎるだけで全てを破壊し、人の大事にする全ての物を、何の感慨すら持たずに破壊する存在の名だ」
小鴨 チカ
「……?」
マキナ
「……その女王に、あなたも」
小鴨 チカ
……なんだ?なんか、おかしいぞ。
鏖田 ネイル
「あの世界の支配者は人ではなくヴァンパイアだが……」
マキナ
「大事なものを?」
鏖田 ネイル
「あれは支配者ですらなく、災害だった」
小鴨 チカ
この人たぶん……、こんなに口数多いタイプじゃないだろう。
鏖田 ネイル
「…………」
鏖田 ネイル
その問いには、答えない。
鏖田 ネイル
答えられない。
マキナ
沈黙が意味するものが、分からないはずがなく。
鏖田 ネイル
このタイミングでの沈黙は、何よりも雄弁に語る。
マキナ
「……あれだけのコインを集められる方でも」
マキナ
「負けちゃうことがあるんですねぇ」
鏖田 ネイル
そんな愚にもつかない失敗をする程度には。
鏖田 ネイル
女は弱っていた。
マキナ
先程4号室で詰め寄られた時には、この相手は圧倒的な強者に見えた。
マキナ
何も理解できず、ただただ自分から奪っていくものに見えた。
マキナ
だが、なんのことはない。
マキナ
人間だ。
マキナ
感情がある。
マキナ
揺らせば、隙ができる。
マキナ
この世界の戦いにおいては、それは何よりも戦況を左右する。
マキナ
「なんか、もっと遠い世界の方だと思ってたんですけど」
マキナ
「マキナにも分かるお話で助かりました~」
マキナ
笑う。
鏖田 ネイル
その笑みすら視界に入れられない。
鏖田 ネイル
瞳は、縋るように隣の席を追っていた。

第2シーン:小鴨 チカ

メイド4
お茶会 サイクル2 小鴨 知歌
小鴨 チカ
「……わかんないな」
小鴨 チカ
「それでも命かけて復讐ってするもんなの?」
鏖田 ネイル
「……狩人というのは、ゲリラみたいなもの。基本的に劣勢だ」
鏖田 ネイル
「命を賭けねば、まず土俵に立つ事すらできない」
小鴨 チカ
「戦うの前提なの?」
小鴨 チカ
マジでわかんない。
鏖田 ネイル
「従えば、家畜だ。戦わなければ、玩具だ。逃げるか戦うか、それしか選択肢は無い」
鏖田 ネイル
「だが…………」
鏖田 ネイル
「それでも……貴方は」
鏖田 ネイル
「戦うなと言うのか?」
マキナ
「…………」
小鴨 チカ
「わかんないだけだよ」
小鴨 チカ
「ぼくは戦いたくないし、殺し合いもやりたくない」
マキナ
ネイルがチカを見る目には、今日が初対面とは思えない何かが伺える。
糸田巴
本当は、戦わなくたっていいんだよ。
マキナ
正体の分からない感情が見える。
糸田巴
それを今選べないのはわかってる、けど。
糸田巴
そういう選択肢もあるのは、覚えておいて。
鏖田 ネイル
沈黙が、数秒続く。
鏖田 ネイル
その後に、小さな……聞き逃しそうな程に小さな声で、問いかけが溢れる。
鏖田 ネイル
「貴女は、覚えているのか?」
鏖田 ネイル
「…………糸田さん」
小鴨 チカ
「……糸田さん?」
マキナ
「……?」
マキナ
チカを見る。
小鴨 チカ
ぼくに……言ったわけじゃないよな?
鏖田 ネイル
その瞳は、小鴨 チカを捉えている。
鏖田 ネイル
縋るような目だ。狩人が湛えうるようなものではない。
鏖田 ネイル
親とはぐれた迷子のそれに近い。
小鴨 チカ
その顔。
小鴨 チカ
敵に向ける顔じゃないだろ。
小鴨 チカ
まるで、助けを求めてるみたいだ。
小鴨 チカ
「鏖田さん。大丈夫?」
鏖田 ネイル
名前を呼ばれて、反射的に躰が動いた。
マキナ
「……お二人は、どこかで会ったことあるんですか?」
鏖田 ネイル
その手を取る。握る。強く。
マキナ
「チカくんはともかく」
マキナ
「ネイル様」
鏖田 ネイル
「会った、ことが」
鏖田 ネイル
「ある筈なんだ」
鏖田 ネイル
「もしかしたら、忘れているかもしれないと、そう、思って」
小鴨 チカ
「…………」だんだん分かってきた。
鏖田 ネイル
「この世界の、救世主の力は……人を、変質させると、私は、それを知っているから」
マキナ
「…………ですって、チカくん」
マキナ
”そうに違いない”という狂信に囚われた人間もまた、
マキナ
マキナはこの世界で覚えがある。
小鴨 チカ
「…………うん」
鏖田 ネイル
言葉が、溢れる。
鏖田 ネイル
咳き込むように。どもりながら。たどたどしく。考えながら。
鏖田 ネイル
”恐ろしい狩人”の姿はどこにもない。
鏖田 ネイル
「2年と、そう、185日前だ」
マキナ
今の彼女の目は、あの時の少女に似ている気がした。
鏖田 ネイル
「あの時、貴女は7歳10ヶ月21日だった。私は、既にハンターとして活動していて」
マキナ
その、縋るような、目が。
鏖田 ネイル
「ヴァンパイアを追い詰めた先の裏路地に貴女は居た、追い詰められた奴は貴女を人質にとった。貴女は戸惑っていた。私は、私は何の躊躇もなくヴァンパイアを殺そうとした」
鏖田 ネイル
「それで、そして、貴女は…………ヴァンパイアを庇った。私は殺した。貴女は泣いた。それがその時の私の癪に触って、私は貴女を見つけて、貴女を試して、貴女はそれを全て受け入れて、それで私は…………」
鏖田 ネイル
語り続ける。
鏖田 ネイル
”お茶会のセオリー”なんてものは、もうどこにもない。
鏖田 ネイル
何もかもを曝け出している。
メイド8
『心の疵のやりとりにおいて、自分の話をする、というのはリスクを伴う。』
鏖田 ネイル
ただ、思い出して欲しくて。
小鴨 チカ
もしかしてこの人。
鏖田 ネイル
もう一度、名前を呼んで欲しくて。
小鴨 チカ
ぼくが思ってるよりずっと純粋で、繊細で、弱い人なのか?
鏖田 ネイル
頭を撫でて欲しくて。
メイド8
『救世主のお茶会とは、心の疵の抉りあいだ。そのために手練手管を尽くす』
鏖田 ネイル
”大丈夫だよ”と
鏖田 ネイル
もう一度だけ、そう言って欲しかった。
メイド8
『心の疵とは、救世主の力の源。救世主同士の会話は、それを削ぐ前哨戦に過ぎない』
マキナ
「…………」チカを見ている。
鏖田 ネイル
「貴女は……」
鏖田 ネイル
「貴女も奴に殺された時、この堕落の国に落ちてしまったのでは無いかと」
鏖田 ネイル
「それで、躰が変質して、背が伸びて、性別も代わって……元の世界の事も、何もかも忘れてしまって」
鏖田 ネイル
「何もわからないまま、ここにいるのではないかと」
鏖田 ネイル
「そう、思ったんだ」
鏖田 ネイル
「だから、ずっと見ていた。心配していた。会えたと思って嬉しかった」
小鴨 チカ
「鏖田さん……」
メイド8
救世主は狂っている。
メイド8
だが、狂気に至るには、それなりの理由がある。
小鴨 チカ
こんな目を。
小鴨 チカ
ぼくにこんな目を向けてくる人に対して。
小鴨 チカ
ぼくは、この人を殺せるかどうかで悩んでる。
鏖田 ネイル
「教えてくれ」
鏖田 ネイル
「貴女は、記憶を取り戻したのか」
鏖田 ネイル
「貴女は、私の事を覚えているのか」
鏖田 ネイル
「貴女は、あな、」
鏖田 ネイル
「あなたは」
鏖田 ネイル
「いとださんですか?」
小鴨 チカ
「鏖田さん」
小鴨 チカ
向き直る。
小鴨 チカ
手を伸ばせば撫でられる気がした。きっと抵抗されないと思った。けど、それはしちゃいけない気がした。
小鴨 チカ
きっと、そうだという言葉を求めてる。大丈夫だとか、記憶を取り戻したとか言って、抱きかかえてしまえば、この人は動揺するんだろうな。
小鴨 チカ
でも、ぼくは、こう言うしかねえんだ。
小鴨 チカ
「ごめんね。人違いなんだ」
小鴨 チカ
*心の疵を抉ります ⇒ 糸田さん 判定は才覚
網倉 霞
*横槍します・・・・・・・・・・・・・・・・・・
網倉 霞
Choice[猟奇,才覚,愛]
DiceBot : (CHOICE[猟奇,才覚,愛]) > 猟奇
網倉 霞
2d6=>7 判定:猟奇
DiceBot : (2D6>=7) > 9[6,3] > 9 > 成功
網倉 霞
1d6
DiceBot : (1D6) > 3
小鴨 チカ
2d6+3-3=>7 判定:才覚
DiceBot : (2D6+3-3>=7) > 7[4,3]+3-3 > 7 > 成功
メイド8
成功でございますね。
[ 網倉 霞 ] HP : 13 → 12
網倉 霞
鏖田ネイルという女。
網倉 霞
度々若い女を連れてきては、喪った想い人の幻想を押し付け、
網倉 霞
それが幻想であるとわかれば殺し。
網倉 霞
そういうことをする。
網倉 霞
確か、これで……自分が確認しただけでも、5回。
網倉 霞
返り血が少し増えていたこと、情緒の乱れ方から考えると、あともう1回はあっただろうか。
網倉 霞
わかっていて、放置していたのは。
網倉 霞
依存先(これ)がなければ、とっくに精神が壊れていて。あるいは、もう壊れていて。
網倉 霞
その幻想を見続けることが、
網倉 霞
救いならば、
網倉 霞
それで前を向いていられるなら、
網倉 霞
それを"赦す"ことが必要だと思ったから。
網倉 霞
だから。
網倉 霞
止めないといけなくて。
網倉 霞
扉を開けて、
網倉 霞
それは、その少年の声が聞こえたのと、同時だった。
網倉 霞
「……いま、」
網倉 霞
「なにを、」
網倉 霞
「……、何を言った?」
マキナ
「…………あら」
小鴨 チカ
「……」
マキナ
冷めた目がもう一人の狩人を迎える。
小鴨 チカ
怖いけど。
小鴨 チカ
「人違いだ、って言った……」
網倉 霞
それにかえす言葉はない。
網倉 霞
いや、返せない。
[ 鏖田 ネイル ] 糸田さん チカ : 0 → -1
マキナ
「間違いは正さないといけませんもの~」
小鴨 チカ
「……死んだ人と、別の世界で偶然再会するなんて、できない」
網倉 霞
わかってる。
網倉 霞
わかっていないわけがない。
マキナ
「間違えられたままじゃ、その糸田さんもかわいそうじゃあありませんか?」
鏖田 ネイル
ヒュ、と
鏖田 ネイル
喘息患者のような声が漏れる。
鏖田 ネイル
声、吐息、あるいは風。
鏖田 ネイル
それは精神の断末魔だ。
鏖田 ネイル
僅かな光を灯す事で前を見る事ができた。
鏖田 ネイル
その光の中に、幸せを見出していた。
網倉 霞
それでも、信じさせていたのは。
網倉 霞
あるいは、自分に対する救いを。どこかで。
マキナ
その灯火は、心なく踏みにじられた。
小鴨 チカ
本能的に何かを感じた。立ち上がって一歩下がる。
鏖田 ネイル
手を掴む。
鏖田 ネイル
万力のような力だ。
鏖田 ネイル
配慮は無い。
網倉 霞
扉を閉めることもせず、立ち尽くす。
小鴨 チカ
「おあ」
鏖田 ネイル
そして、溢れる言葉がある。
鏖田 ネイル
「息が出来ない…………」
鏖田 ネイル
その、手を。
鏖田 ネイル
握りつぶした。
小鴨 チカ
「いっ……」
マキナ
「な……!?」
鏖田 ネイル
骨が砕ける音がする。とても人の出せる力ではない。
鏖田 ネイル
真実、女は人ではない。半吸血鬼だ。
小鴨 チカ
「あっ、あ……?」
マキナ
「……っ、やば!」
鏖田 ネイル
もともとのスペックが人ではない。もちろん、そこに6ペンスコインの力が載っている。
マキナ
「メイドさん! メイドさん!」
小鴨 チカ
痛い。強烈に痛い。
マキナ
即座に現れるだろうメイドに、招待状を押し付ける。
鏖田 ネイル
軋み、血管が弾け、鬱血した指先は青色を越して赤色を飛び出させ、更にその内側にある白い物を……
メイド8
「承りました」
マキナ
予め書いておいた名前はネイルと霞の二名分。
小鴨 チカ
「い、いだい!やめて……!」
メイド8
深々と礼をする。
鏖田 ネイル
「糸田さんではない……?」
鏖田 ネイル
「なら死ね」
マキナ
二人を即座に部屋から放り出すために。
小鴨 チカ
「ひっ……」
マキナ
1d12 シーン表
DiceBot : (1D12) > 9
メイド8
9 : 台所。手入れの行き届いた調理道具。食材はメイドに言えば用意してくれる。
小鴨 チカ
間違えた。間違えたのか?
鏖田 ネイル
手を振るう、握りしめた爪の先が掌に穴を開けていて、その穴から血が迸る。
鏖田 ネイル
この女の血を浴びる。それは致命的な結果を齎す。
小鴨 チカ
殺し合う相手とはいえ、せめて正直に、誠意をもって対応したかった。
網倉 霞
何が間違ったのか、と聞かれたら。
網倉 霞
きっと運命だったのだろう。
メイド8
しかし、その血は届かない。
メイド4
招待状の効力により、ネイルは、台所に転移していた。
メイド4
血は石造りの床にばらまかれ、火を上げる。
マキナ
……二人の姿が消えたのを見て、
小鴨 チカ
突然、腕を掴む力が抜ける。勢いでそのまま尻もちをついた。
マキナ
「……チカくん!」
鏖田 ネイル
燃え上がる。どのような燃料よりも激しく、強く。
鏖田 ネイル
「があああああああああ!!!!!」
マキナ
チカに駆け寄る。
小鴨 チカ
「ひっ!?」
鏖田 ネイル
叫び声があがり、四肢が振るわれ、血液が更に飛び散る。
マキナ
「……見せて」
鏖田 ネイル
飛び散っては、発火する。
マキナ
傷口を見る。
小鴨 チカ
「…………はあ、はあっ、はあっ」
メイド4
その炎は何もかもを燃やそうとする。不在というどうしようもない現実を。
小鴨 チカ
マキナさんが傷口を見ている。
鏖田 ネイル
燃え上がる、燃え上がる、燃え上がる……なにもかも、自分の服も、躰も、心も。
小鴨 チカ
ぼくはまだ、それを直視できてない。
マキナ
じ、と見て
鏖田 ネイル
血がまるで意思を持つかのように掌から流れでて、四方八方へと広がり、炎を広げる。
マキナ
掌を傷口に近づける。
小鴨 チカ
「あ、あっ、あ……!」
マキナ
マキナの持つ力。癒やしの力。
鏖田 ネイル
目につく全てを燃やしたかった。
鏖田 ネイル
目に見えないものだって燃やしたかった。
小鴨 チカ
手が持ち上がるだけで、猛烈な痛みが走る。
鏖田 ネイル
自分自身とか。
マキナ
それをチカに用いる。
鏖田 ネイル
この世界の全てとか。
マキナ
「……がんばったね」
小鴨 チカ
けれど、その痛みが少しずつ引いていく。
鏖田 ネイル
自分と糸田さんを隔てる全てとか。
鏖田 ネイル
女に、そんな力は無い。
マキナ
傷を癒やしながら、ぼそりとチカに声をかける。
マキナ
「チカくんは間違ってないよ」
小鴨 チカ
「………………」どんな傷だった?何をしたんだ?そんな疑問は、ぜんぶ後回しだ。
鏖田 ネイル
だから、ただ、癇癪をあげて。地団駄を踏んで。
小鴨 チカ
「…………こ」
鏖田 ネイル
暴れていた。
小鴨 チカ
「怖かった……」
小鴨 チカ
「怖かったよ……」
網倉 霞
ネイルに飛びかかる。身体には麻痺毒を纏って。
網倉 霞
押し倒し、強引に抱きしめて、皮膚に触れさせる。
マキナ
傷口を軽く撫でてから手を離す。
網倉 霞
「ごめん」
網倉 霞
「俺のせいだ」
マキナ
傷口はふさがり、痛みも引いているだろう。
マキナ
痕までは、消えはしないけれど。
網倉 霞
すべてが痛んで、熱くて、鈍くなる世界の中で、
マキナ
「……うん」
網倉 霞
それだけ、囁く。
マキナ
「えらかったですよ、チカくん」
小鴨 チカ
「…………ほんとに」
小鴨 チカ
「ほんとに、殺し合うんだな……」
マキナ
これからもっと怖いことも痛いこともあるんですよ、と
マキナ
今は言わなかった。
マキナ
「……ええ」
マキナ
ただ、頷いた。
メイド4
――糸田巴はいない。それならば、この世界に愛はない。
小鴨 チカ
心臓は激しく胸を叩き、喉は張り付いて声が掠れる。
網倉 霞
正しい愛を知らないから、与え方なんかわからなかった。
網倉 霞
ぐちゃぐちゃなものだけがそこにあった。
小鴨 チカ
癒えたはずの腕が、鈍く痛んでいるような気がした。
メイド8
それがたとえ残酷な道へ導くものだとしても愛は愛として作用する――
網倉 霞
殴って止めるだけの猟奇性も、なかった。
網倉 霞
だから。
鏖田 ネイル
暴れる女が、網倉霞の頭を掴む。あの剛力でだ。
鏖田 ネイル
それを、床に叩きつける。
鏖田 ネイル
何度も、何度も、何度も、何度も。
鏖田 ネイル
踏みにじる。
小鴨 チカ
傷口に触れる。傷は治っているんだと、何度も確かめるように。
鏖田 ネイル
何度も、何度も、何度も、何度も。
網倉 霞
血が広がっていく。
網倉 霞
いつか、あなたに麻痺毒が回るまで。
鏖田 ネイル
胸ぐらを掴み上げ、壁に向かって投げる。
小鴨 チカ
自分に、すがるような目を向けた人だった。
網倉 霞
抵抗はしない。
小鴨 チカ
すぐにでも消えてしまいそうな、儚さを見た。
鏖田 ネイル
叩きつけて、追って。
メイド4
敗北と喪失だけが、
鏖田 ネイル
ただ、自分の感情の発散だけを目的とする暴力を振るい続けた。
メイド4
消えてゆく炎の中で、
鏖田 ネイル
動けなくなり、眠るまで。
メイド4
ただ燻っている。
小鴨 チカ
人違いだと分かったからこそ、あの時、彼女はこちらに好意を向けてくれていたことが理解できた。
網倉 霞
自分から発せられた毒は自分には効かない。
網倉 霞
だからそのすべてを、赦していた。
網倉 霞
足りない愛で。
小鴨 チカ
そんな人が、急に豹変して襲い掛かって来たんだ。
小鴨 チカ
つい今しがたの記憶なのに、すでにぐちゃぐちゃに乱れている。怖すぎて、いっぱいっぱいで、何も余裕なんてなくて。
網倉 霞
それを妨害できないのなら、受けるしかない。
マキナ
「……殺すんですよ」
マキナ
「でなきゃ殺される」
網倉 霞
回避する方法もわからない。
マキナ
「今のでよーく分かったでしょう?」
小鴨 チカ
もう思い出したくない。これはトラウマになって、きっと一生残る。
網倉 霞
俺のせいだ、と。
小鴨 チカ
「………………」顔いっぱいを濡らした涙を拭く。
網倉 霞
意識が血とともにうしなわれるまで、それだけを考えて。
小鴨 チカ
無言で頷いた。
網倉 霞
しかしここには愛はなかった。
メイド4
よく分かっている。
メイド4
足りないことは。
メイド4

第3シーン:鏖田 ネイル

メイド4
お茶会 第二サイクル 鏖田 ネイル
マキナ
狩人二人組を部屋から追い出したあと、
マキナ
向こうから仕掛けてくるか警戒しながら
マキナ
作戦会議をしたりなんだり。
マキナ
その途中、マキナが席を立つ。
マキナ
「……ちょっとお花を摘んでまいりますねぇ」
マキナ
そそ、とお手洗いに向かいます。
小鴨 チカ
お、お花を……!
マキナ
……お茶会や裁判の様子は客席に放送されるとのことだけど、
マキナ
もしかしてトイレも?
マキナ
え?
マキナ
やだな…………
メイド8
はい。
マキナ
やだな………………
マキナ
だけど生理現象ばかりはどうしようもないので、
マキナ
お手洗いに入って扉を閉じます。
鏖田 ネイル
マキナが客室に備え付けられたトイレ……浴槽とシャワーが併設されたもの……へと入室し、そして実際に”用”を足し始めた時。
鏖田 ネイル
マキナが現在いる場所と、槽とを隔てるカーテンに。
鏖田 ネイル
長身の人影が映る。
鏖田 ネイル
声を掛けるよりも、手を出す方が早かった。
鏖田 ネイル
横合いからの前蹴りがマキナを直撃する。所謂ヤクザキック。体重と、尋常でない筋力が乗ったもの。
マキナ
「────っ!?」
マキナ
足がマキナの身体にめり込む。
マキナ
息が詰まる。
鏖田 ネイル
カーテンを引きちぎり、女が姿を現す。
小鴨 チカ
「っ!?」飛び上がる。
マキナ
壁に叩きつけられ、鈍い音が響く。
小鴨 チカ
まさか……襲撃か!
鏖田 ネイル
マキナが倒れ込んだ際に”汚物”が飛び散り足にかかるが、気に留めない。
マキナ
「──っ、ゲホ、っう」
鏖田 ネイル
「さっきぶりだな」
小鴨 チカ
「ちょ、ちょっと!?」走る。
網倉 霞
走るチカの、その足に。
鏖田 ネイル
胴体を踏みつけ、立ち上がりを封じる。
網倉 霞
罠。ワイヤーのようなもの。
マキナ
息を整える暇もなく踏みつけられ、動きを封じられる。
網倉 霞
透明で細い糸が、あなたの足をひっかけて、バランスを崩す。
小鴨 チカ
「っ、でえっ!?」
小鴨 チカ
転ぶ。痛みが走って、慌てて足を見る。
マキナ
「っ、う」
網倉 霞
転んだその少年の背中に、重さがある。
網倉 霞
――背中に乗られている。
網倉 霞
「動かないで」
小鴨 チカ
「な、……」
マキナ
やっと、状況を理解する。
鏖田 ネイル
「さて」
マキナ
襲撃されている。
鏖田 ネイル
女は、マキナの上にのしかかりマウントポジションを取る。ここの床は狭いが、人一人が倒れ込めるくらいの余地はある。
マキナ
踏みつけにされ、見下されている。
鏖田 ネイル
「言っておくが、例の招待状は使っていない。侵入したのは単純な”テクニック”だ」
鏖田 ネイル
そうである必要があった。
マキナ
短剣は携帯してはいるが……この姿勢で、取り出すところを見逃してもらえることはないだろう。
マキナ
「……それは、館のセキュリティに問題がありますねぇ」
鏖田 ネイル
この儀式限定の摩訶不思議な力によるではなく、それがなくとも”何時でも可能な方法”で襲撃が起こるのだと伝える必要が。
鏖田 ネイル
「セキュリティが良かろうと、部屋の主が素人では同じ事だ」
マキナ
「素人でも安心して過ごすためのセキュリティでしょう?」
鏖田 ネイル
「素人相手なら安心できる、という程度なのがセキュリティだ」
マキナ
まあ招待状があれば、いずれにせよセキュリティもプライバシーもあってないようなものだが……。
鏖田 ネイル
淡々と言葉を告げながら、マキナの口元に布を押し当てる。薬品の臭い。
マキナ
「…………っ、」
鏖田 ネイル
霞が常用しているものを多少用意させた。数秒も嗅げば、躰が火照りだす。
マキナ
鼻に付くにおいに、思わず目をつぶり顔を逸らす。
マキナ
息を止める。
鏖田 ネイル
必要なのは数秒だ。だが、当然その対応は予想できる。
マキナ
無駄なあがきでしかない。
鏖田 ネイル
押し付け続ける。
鏖田 ネイル
これを拒むのなら、窒息しろ。
鏖田 ネイル
言葉にない意思がそこにある。
マキナ
「…………っ、……!」
マキナ
「…………はっ、っ」
マキナ
無駄な抵抗が終わる。息を吸い込む。
マキナ
吸い込んでしまう。
鏖田 ネイル
確認して、布を離した。
マキナ
嗅がされたものが、マキナの肺を満たす。
マキナ
「っ、ゲホ、」
マキナ
「な、」
マキナ
「にを……」
鏖田 ネイル
「理解する必要はない」
鏖田 ネイル
「すぐに、それどころではなくなる」
マキナ
「…………?」
鏖田 ネイル
相手の頬が紅潮していくのを確認し、体勢を動かす。相手の足に足を、手に手を乗せて、全ての身動きを封じた上で
鏖田 ネイル
その手の一つを取る。
鏖田 ネイル
顔の近くに寄せる。
マキナ
身体が、熱い。
鏖田 ネイル
「……華奢な指だ」
鏖田 ネイル
軽く、撫でる。
マキナ
「な、に」
マキナ
ぞわ、と肌が泡立つ。
鏖田 ネイル
その白魚のような指を、口に咥えた。
鏖田 ネイル
舌を柔らかくして撫で、固くして擽り、愛撫する。
マキナ
「……ひっ!?」
鏖田 ネイル
人が快楽を得られるかどうかには、精神状態というものも影響するが……所詮、肉体が齎す電気信号の儚い抵抗だ。
鏖田 ネイル
薬物の効能、加えて吸血鬼の血が持つ魅了能力に抗えるようなものではない。
マキナ
ぬる、と粘膜が指を撫でる。
マキナ
びりびりと、指先から身体に刺激が伝わる。
鏖田 ネイル
密室に水音が響く。
マキナ
指先がびくりと震える。
マキナ
「な」
マキナ
「っ」
マキナ
「なんなん、です、か」
マキナ
息が上がる。
鏖田 ネイル
構いもせずに続ける。
マキナ
襲撃を理解したときから、痛みへの覚悟はしていた。
マキナ
だけど、こんなのは
鏖田 ネイル
息が上がりきり、頬が染まりきり、その背筋に震えが走るまで。
マキナ
全くの想定の外で。
マキナ
「っ、ふ、」
マキナ
「……っ!」
マキナ
なにかに耐えるように眉を寄せ、太ももを擦り合わせる。
マキナ
これは、なんだ?
マキナ
どうしたらいい?
マキナ
そんな考えも、まともにできなくなっていく。
鏖田 ネイル
────震えが
鏖田 ネイル
その震動が、唇を経由して確認される。ちゅぴ、と音を立てて指を開放する。
マキナ
「……っ、あ」
鏖田 ネイル
そしてそこから一瞬の間も置くこと無く。
鏖田 ネイル
取り出した杭の根本で、その爪の先端を叩き潰した。
マキナ
解放されたことに安堵と、少しの名残惜しさ。
マキナ
それも一瞬で。
マキナ
「────っ」
マキナ
「っ、ああああっ!!!」
鏖田 ネイル
血が、じわりと滲む。
鏖田 ネイル
ぐり、と杭を一度捻る。
マキナ
「っ、あ、」
鏖田 ネイル
杭を持ち上げれば、悲惨な見た目になった爪が見える。爪の欠片が杭にこびりついて、ぱたりと床に落ちた。
マキナ
先程までの快感を上書きするように、今度は痛みが全身を走る。
鏖田 ネイル
そこで終わりはしない。
鏖田 ネイル
砕けたマキナの爪の上に、垂直になるように自分の指を立てる。爪の先を、そのひび割れの隙間に添えるように。
鏖田 ネイル
そして、真っ直ぐに突き入れ、突き刺し、肉を掻き回した。
マキナ
「あ、あ」
マキナ
びくびくと、痛みに身体が震える。
マキナ
痛みには強い方だ。
マキナ
それは元からの性質ではなく
マキナ
この国に来てから獲得したもの。
マキナ
だけど、
マキナ
嗅がされた薬によって感覚を鋭敏にされたせいだろう、
マキナ
痛みを、緩和できない。
鏖田 ネイル
喘ぐ様を、冷酷に観察している。
鏖田 ネイル
「ルールはシンプルだ。すぐに分かる」
鏖田 ネイル
つ、と指をマキナの躰に這わせる。
マキナ
「────っ、は、っ」
マキナ
「る」
マキナ
「るーる……?」
鏖田 ネイル
触れるか触れないかの強さで、胸元を撫でる。
マキナ
びく、とまた身体が震える。
鏖田 ネイル
擽る。
マキナ
ネイルの指先に翻弄される。
鏖田 ネイル
快楽を与える。
マキナ
それが痛みへの助走でしかないことが、予想できる。
マキナ
予想できたところで
マキナ
どうにもならない。
マキナ
抗えない。
鏖田 ネイル
そして、そこに息が漏れたのを確認して。
鏖田 ネイル
撫でたのと全く同じ箇所に、爪を立て、突き刺し、肉を抉って線を引く。
マキナ
「あ゛、あああっ!!」
鏖田 ネイル
動物は、学習というものをする。
マキナ
柔らかい肉に、爪が立つ。
鏖田 ネイル
レバーを引けば餌が出てくると学べば、好んでレバーを引くようになる。電流が流れる柵に触れると痛みが走ると知れば、近づかなくなる。
鏖田 ネイル
人間もまた、動物だ。だから、学習させる事ができる。
マキナ
痛みは有効な手段だ。
マキナ
生きるために、人間は苦痛を避ける。
マキナ
マキナのように、生存欲求の強い人間であればなおさら。
鏖田 ネイル
マキナの耳元に、口を寄せる。躰と躰が強く密着する。
鏖田 ネイル
「暴力には」
マキナ
「ひ、い」
鏖田 ネイル
「必ず、目的がある」
鏖田 ネイル
囁く。それすらも、擽るように。
マキナ
息がかかり、ぞわ、と肌が震える。
鏖田 ネイル
「最も多いのは、感情の発散を目的とする暴力だ。それはただ感情のままに振るわれる」
鏖田 ネイル
「次いで多いのは、屈服させるための暴力。それは相手の心を折るための指向性を持つ」
マキナ
「っ、ふ、」
鏖田 ネイル
「ただ乱暴に腕を振り回すのが暴力ではない」
マキナ
ネイルの言葉が聞こえているのかいないのか、
鏖田 ネイル
吐息を一つ吐いて、マキナの耳を口に含む。
マキナ
「──ひう」
鏖田 ネイル
わざと水音を立たせて、中に舌をねじ込む。
鏖田 ネイル
かき回し、それから言葉を継ぐ。
マキナ
ただ声をあげ、身悶えし
マキナ
なすがままにもてあそばれる。
鏖田 ネイル
「今からお前が受けるのは」
鏖田 ネイル
「破壊を目的とした暴力だ」
マキナ
単純な痛みなら慣れている。
鏖田 ネイル
それは、快楽と痛みを結びつけるようなものだった。
マキナ
強制的な快楽にも。
マキナ
だけど、こんな、
マキナ
こんなのは。
鏖田 ネイル
快楽を与え、全く同じ箇所に、極大の痛みを与える。
鏖田 ネイル
つまり、次は────
マキナ
そんな暴力の与え方を、マキナは知らない。
鏖田 ネイル
ネイルの歯……いや、牙が、マキナの耳に食い込む。
鏖田 ネイル
ゆっくりと。
マキナ
「──ひ、」
鏖田 ネイル
定速で。
鏖田 ネイル
絶対に、止まらずに。
マキナ
「い、や、いやあっ」
鏖田 ネイル
ブヅ、と
鏖田 ネイル
嫌悪感を齎す音が、マキナの耳元で発生した。
鏖田 ネイル
顔を持ち上げる。その口元から血が滴っている。
鏖田 ネイル
吸血鬼のような様相だ。
マキナ
「……っ、!」
鏖田 ネイル
今、耳がどんな状態になっているのかはマキナから見えない。だが、それでいい。
マキナ
喉がつまり、悲鳴すらあがらない。
鏖田 ネイル
血は人の想像力を掻き立てる。
鏖田 ネイル
それが多ければ多いほど、人は最悪の想像をするものだ。
マキナ
身体中が熱い。
マキナ
それが痛みによるものなのか快楽によるものなのか、もはや区別がつかない。
鏖田 ネイル
「……次は、どこにしようか」
鏖田 ネイル
額、鼻、脇、順番に触れていく。
マキナ
「……や、」
マキナ
「いや、」
マキナ
「やだ」
鏖田 ネイル
快楽を与えない程度に、しかし、ほのかにその予感だけは感じさせる程度に。
マキナ
期待、してしまう。
マキナ
後に来るのは痛みでしかないのに。
マキナ
そも快楽に慣れている身体は、
マキナ
それを求めてしまう。
鏖田 ネイル
この破壊は、かつて初めて会った糸田さんに対して行ったものだ。
マキナ
いや、いやと繰り返しながらも
鏖田 ネイル
そして糸田さんに出会う前は、いろんな人間にやっていた。
鏖田 ネイル
糸田さんは”この程度の暴力”なんてものともしなかった。
鏖田 ネイル
全てを受けた上で、笑い、許し、「大丈夫だよ」と言ってくれた。だから全てを捧げた。
マキナ
触れられれば肌は粟立ち、
マキナ
指先が震え
鏖田 ネイル
あの人は神聖だった。
鏖田 ネイル
この売女とは違う。
マキナ
つま先を丸めて。
鏖田 ネイル
こうして醜い姿を見る事で、それを実感できる。
鏖田 ネイル
売女が快楽を感じているので、その箇所に爪をねじ込む。
マキナ
短い悲鳴。
マキナ
快楽に、苦痛に、絶えず喘いでいる。
鏖田 ネイル
「思う存分声をあげろ」
鏖田 ネイル
「あの少年は霞が相手をしている」
鏖田 ネイル
「ここには来ないさ」
鏖田 ネイル
撫でる。
鏖田 ネイル
突き刺す。
鏖田 ネイル
繰り返す。
マキナ
「う」
マキナ
「ち、」
マキナ
「ちか、くん」
マキナ
「たす、」
マキナ
「たすけ、て」
鏖田 ネイル
「そうだな」
鏖田 ネイル
「もう、仕上げに入るか」
マキナ
弱々しく、チカを呼ぶ。
鏖田 ネイル
そう云って、杭を取り出す。
鏖田 ネイル
このために特別に用意したものだ。
鏖田 ネイル
その根本は、他の杭のような平坦なものではなく……酷く、淫猥な形をしている。
マキナ
取り出されたそれを、怯えに満ちた目で見る。
鏖田 ネイル
そしてその反対側は鋭く、その上で意図的にささくれ立っていた。
鏖田 ネイル
荒い表面は何もかもを削りとり、傷つけるだろう。
マキナ
あるいは、涙で潤んだその瞳には期待が浮かんでいるのかもしれない。
マキナ
いずれにせよ、あなたがやることは変わらないだろう。
鏖田 ネイル
それをどのように使うつもりなのか────
鏖田 ネイル
それを、今まで丁寧に、丁寧に、言葉でなく実行によって説明させてきた。
鏖田 ネイル
だから、もう言葉は綴らない。
マキナ
「や、」
鏖田 ネイル
何の感慨もない。
マキナ
首を振る。
鏖田 ネイル
冷たい顔だ。
マキナ
「やだ、やだ」
鏖田 ネイル
暴力を、楽しんですらいない。
鏖田 ネイル
淡々と、工場の流れ作業をしているようなものだ。
マキナ
「や、もう、」
マキナ
「やめ、て」
マキナ
「やめて、ください」
鏖田 ネイル
服を捲りあげる。
鏖田 ネイル
下着を剥ぐ。
マキナ
散々叫んで掠れた声で懇願する。
マキナ
「おね、がい」
マキナ
「し、ます」
マキナ
「やだ、」
鏖田 ネイル
「悦べ」
鏖田 ネイル
それだけを口にして
鏖田 ネイル
手を動かし始める。
マキナ
「ひ」
鏖田 ネイル
*マキナの空疎を才覚で抉ります。
小鴨 チカ
*横槍ーーーーッ!!!
小鴨 チカ
Choice[猟奇,才覚,愛]
DiceBot : (CHOICE[猟奇,才覚,愛]) > 愛
小鴨 チカ
*ティーセットを使用。
小鴨 チカ
2d6+2=>7 判定:愛
DiceBot : (2D6+2>=7) > 11[6,5]+2 > 13 > 成功
小鴨 チカ
1d6
DiceBot : (1D6) > 3
鏖田 ネイル
*ティーセットを使用
[ 網倉 霞 ] ティーセット : 1 → 0
[ マキナ ] ティーセット : 1 → 0
鏖田 ネイル
2d6+3+2-3>=7
DiceBot : (2D6+3+2-3>=7) > 8[2,6]+3+2-3 > 10 > 成功
[ マキナ ] 空疎 : 0 → -1
鏖田 ネイル
順番だ。
鏖田 ネイル
まず、根本を使う。
鏖田 ネイル
それから、先端だ。
鏖田 ネイル
もう一度だけ、同じ事を言う。
鏖田 ネイル
「悦べ」
鏖田 ネイル
もう二度と、お前が人に愛される事はない。
鏖田 ネイル
明日から、お前自身がそれを恐れるようになるのだから。
マキナ
「────、」
マキナ
ひときわ大きな叫びが、客室に響いた。
[ 小鴨 チカ ] HP : 13 → 12

第4シーン:網倉 霞

メイド4
*お茶会第二サイクル 網倉 霞
網倉 霞
「聞こえる?」
網倉 霞
チカの背中から、聞こえる声。
小鴨 チカ
「…………」
網倉 霞
指があなたの耳元を撫でて、
小鴨 チカ
音が、聴こえる。
網倉 霞
そうっと、息が吹きかけられる。
小鴨 チカ
だからこそ、ぼくが行かなきゃいけないのに……
小鴨 チカ
「ふ、うっ」
小鴨 チカ
力が入らない。
小鴨 チカ
「は、離して……」
鏖田 ネイル
扉の向こう、トイレがある筈の場所から聞こえたのは、最初は打撃と衝撃の音。
網倉 霞
「離して、」
網倉 霞
「どうする?」
鏖田 ネイル
それから、漏れ聞こえるような人の声。
鏖田 ネイル
そして、それからは。
網倉 霞
「助けに行ける?」
網倉 霞
首をくすぐる手。
鏖田 ネイル
水音。喘ぎ声。
小鴨 チカ
「……い、行ける!」
マキナ
「────あ、」
鏖田 ネイル
再度の衝撃音。
マキナ
「ひ、」
小鴨 チカ
「とにかく放してよ!」
マキナ
咳き込む音、
網倉 霞
返すことばはない。
マキナ
短く悲鳴。
網倉 霞
あなたが起き上がれないように、手を持って。
鏖田 ネイル
水袋を潰すような音。
マキナ
「い、や」
網倉 霞
丁寧な手付きで、仰向けにさせる。
マキナ
「────、」
網倉 霞
「ねえ」
マキナ
「あ、ああ」
小鴨 チカ
「っ……」
マキナ
絶えず、声が漏れ聞こえる。
マキナ
それは快楽に悶えているようでも、
網倉 霞
あなたの顔の前には、傷で赤く染まった胸元。
マキナ
苦痛に悲鳴をあげているようでもあった。
網倉 霞
「今、何されてるんだろうね」
鏖田 ネイル
その音量は徐々に上がっていく。
マキナ
いずれの声なのか、扉の向こうのチカには認知できない。
小鴨 チカ
「え」
網倉 霞
「ほら、耳をすまして」
網倉 霞
「聞いて」
小鴨 チカ
目を開ける。そこで初めて、その姿を見る。
マキナ
「あ、あ、」
マキナ
「っ、ん」
マキナ
「っあ」
小鴨 チカ
「……ど、どうしたの、その傷。大丈夫?」
マキナ
「や、ぁ」
小鴨 チカ
見当違いなことを言った。
網倉 霞
「ふふ」
網倉 霞
「俺の心配、してくれるんだ?」
網倉 霞
囁くように。
小鴨 チカ
「そりゃ……」
網倉 霞
壁越しの音を、遮らないように。
小鴨 チカ
「……いや、ぼくがヘンか」
網倉 霞
――手をのばす。
小鴨 チカ
「やめぇ」
網倉 霞
あなたの服と、その下の肌のあいだに滑り込む。
鏖田 ネイル
──水音が、粘着質なものになっていく。
小鴨 チカ
「やめえって!」
小鴨 チカ
「だってさあ、殺し合いたくないんだよ!」
マキナ
「────ひ、」
網倉 霞
「…………」
網倉 霞
「……わかんないだろうね」
小鴨 チカ
「何が……!」
網倉 霞
手は肌を滑り、あなたの胸へ。
小鴨 チカ
「やめーってぇ!」
網倉 霞
くすぐる。
網倉 霞
柔らかな手付き。
小鴨 チカ
「ひいっ、ひい!」
小鴨 チカ
「くすぐりはっ、よわっ、やめ!」
網倉 霞
その手は下に。
小鴨 チカ
まるで、じゃれあってるみたいだ。
マキナ
チカの声に重なるように、マキナの声も絶えず客室まで漏れ聞こえる。
網倉 霞
脇腹を撫でて、太ももを触り。
小鴨 チカ
あっちの声が、こっちに聞こえるってことは。
小鴨 チカ
こっちの声も、あっちに聞こえてんだ。
網倉 霞
「……まあ、気にしてる場合じゃないと思うよ、あっちは」
マキナ
「た」
マキナ
「たす、け」
マキナ
「て」
マキナ
「いや、」
網倉 霞
あなたの思考を読むかのように。
小鴨 チカ
「! ……」
マキナ
「いや、ひ、」
マキナ
「も、」
マキナ
「やめ……」
網倉 霞
そうして、その手は。
網倉 霞
あなたのズボンのチャックに手をかける。
小鴨 チカ
「う、あ……」
網倉 霞
「……糸田さん、ってさ」
小鴨 チカ
「っ……!?」
小鴨 チカ
また「糸田さん」。
網倉 霞
「何を犠牲にしてもいいくらい、大事な人でね」
網倉 霞
ズボンをはだけさせて、さっき替えられたばかりのそれに手をかける。
網倉 霞
「……死んだ人と」
網倉 霞
「別の世界で偶然再会するなんて、できない」
網倉 霞
「できない、んだ」
小鴨 チカ
「や……め……」
網倉 霞
「それがわからないほど、愚かじゃない」
小鴨 チカ
力が入らない。
網倉 霞
静かに、静かに。
網倉 霞
囁くようにあなたに語る。
小鴨 チカ
「ぼっ」
小鴨 チカ
「ぼくにとっては、知らないどっかの誰かだ……!」
網倉 霞
妖艶な、温度のない笑みを浮かべて。
網倉 霞
「うん」
網倉 霞
「でも」
網倉 霞
「それを、信じることくらいは」
網倉 霞
「させてあげて、ほしかった」
小鴨 チカ
「あ、あのなあ!」
小鴨 チカ
「こっちは勝手に勘違いされて、正直に答えたら『じゃあ死ね』だぞ!?」
網倉 霞
「そうだね」
網倉 霞
「……そう、」
網倉 霞
「…………ごめんね」
小鴨 チカ
「……じゃあ、放してよ……」
網倉 霞
服のチャックに手をかける。あなたではなく、自分の。
小鴨 チカ
あっ。
小鴨 チカ
「ちょ、ちょ、ちょ」
網倉 霞
それを下ろしきる。
網倉 霞
赤い痕がいくつもついている、
網倉 霞
女のかたちをした肌。
小鴨 チカ
「~~~~っ」
網倉 霞
胸にはわずかに膨らみがあって、
小鴨 チカ
「やっぱ、女じゃんかぁ……!」
網倉 霞
視線を下ろしていけば、足の付根はあなたのそれと密着している。
網倉 霞
「そう思う?」
小鴨 チカ
「どういう~~~~~!?」
網倉 霞
「……元は、そうじゃなかった」
小鴨 チカ
「は?」
網倉 霞
「あの人が言ってた、糸田さんっているでしょ」
小鴨 チカ
……マキナさんの、声が聴こえない。
小鴨 チカ
どうなった?
小鴨 チカ
まずいんじゃ、ないのか。
網倉 霞
「俺はさ、その子のお父さんのことが、好きで」
マキナ
少し前、裏返った高い声をあげてから、
マキナ
それまで絶えず聞こえてきた、マキナの悲鳴はない。
小鴨 チカ
助けてくれ。
小鴨 チカ
誰か、ぼくを助けて、
小鴨 チカ
ぼくを助けに、行かせてくれ。
網倉 霞
囁く声はしずかで、扉の向こうで声があがればきっとわかる。
網倉 霞
「…………」
小鴨 チカ
「……ぜんっぜん」
小鴨 チカ
「話が、頭に、入ってこねえよ……!」
網倉 霞
「そう?」
網倉 霞
「じゃあ、今」
網倉 霞
「何を考えてる?」
小鴨 チカ
「……、ま、マキナさんのことを」
小鴨 チカ
嘘じゃない。
網倉 霞
「そう、」
網倉 霞
「……勃つんだ、こんな状況でも」
網倉 霞
「こういう状況だから、いいのかな?」
小鴨 チカ
「………………」
小鴨 チカ
「は、なして、ほしいって」
小鴨 チカ
「助けたいって思ってるのは、ほんとだし……」
網倉 霞
「うん」
小鴨 チカ
「ほんとなんだよ……」
網倉 霞
「じゃあ、」
網倉 霞
「助けて、何したい?」
小鴨 チカ
「何って!」
網倉 霞
喋っている間も、ゆるゆると手を動かしている。
小鴨 チカ
「あっちがピンチなんだから、まず最初に『助けたい』だろ!」
小鴨 チカ
これは、話に付き合っていいんだろうか。
小鴨 チカ
たぶん、ダメだ。突き飛ばさないといけないんだ。
小鴨 チカ
でも、だって、ぼくの生きてきた世界は。
小鴨 チカ
こうやって、敵意を消して静かに迫ってくる相手を、暴力で振り切れるようにはできてない。
網倉 霞
あなたをおさえつける力は、人より大きいわけではない。
小鴨 チカ
…………
小鴨 チカ
……言い訳か?
網倉 霞
年齢はあなたと同じくらいに見える。力の差があるわけでもない。
小鴨 チカ
理由つけて、ただ怠けてるだけじゃないか?
小鴨 チカ
お前の本心はどうだ。
小鴨 チカ
こうやって、放せ放せと口先だけを動かして。
小鴨 チカ
放してもらえるなんて、思ってないだろ。
網倉 霞
あなたの指の間をなぞる。
網倉 霞
静かな愛撫だ。水音ひとつたてずに、行われるもの。
小鴨 チカ
自分と、仲間への言い訳だ。
網倉 霞
隣の音をひとつもこぼさないように。
小鴨 チカ
「放して欲しい」だとか「助けに行かなきゃ」だとか。
小鴨 チカ
そう思ってるから、そう言ってるから、そんでもって自分は非暴力主義だから、いい子でいられるって。
小鴨 チカ
で、やってることは、結局体を委ねてら。
小鴨 チカ
くそが。
小鴨 チカ
かっこよさから逃げ続けて、カッコ悪くてもいい感じのキャラ作って。
小鴨 チカ
命がけで、ツケ払って。
小鴨 チカ
1分1秒、仲間の身体と心と信用を削りながら。
小鴨 チカ
自分だけぬるま湯の中にいる!
小鴨 チカ
「マキナさん……マキナさん!」
小鴨 チカ
それでも体は動かない。
網倉 霞
叫ぶその口を、
網倉 霞
唇で塞いだ。
網倉 霞
舌を入れて、口内をかきまわす。
小鴨 チカ
「んんっう……!」
網倉 霞
――ああ、嫌だな、と思う。
小鴨 チカ
意識が、再び目の前の相手へ。
網倉 霞
こういうことがしたいわけではない。
小鴨 チカ
男の娘モノは避けてきたんだよ!
小鴨 チカ
TSモノも避けてきたんだよぉ!
小鴨 チカ
処理しきれねー!こうやってリアルの方から人の性癖開拓するの、やめませんか!?
網倉 霞
自傷に近い。
マキナ
「────あ、」
小鴨 チカ
「!」
小鴨 チカ
声が、聴こえた。
マキナ
弱々しく声が上がる。
小鴨 チカ
はっと体を浮かす。また意識がそちらへ。
マキナ
悲鳴にも満たない、息も絶え絶えの
マキナ
小さな声。
網倉 霞
触ってほしいと思っていた。
網倉 霞
でも、これじゃなくて。
網倉 霞
一瞬口を離して、また塞ぐ。
網倉 霞
水音。
マキナ
「……っ、ぅ」
マキナ
マキナの声よりも、そちらの方がもはや大きく聞こえるかもしれない。
小鴨 チカ
口が塞がる。
マキナ
それくらいにか細い声。
網倉 霞
これは暴力のための行為だ。
網倉 霞
だから、空虚なもので。だから、これでよくて、
網倉 霞
でも、
小鴨 チカ
息がつまる。もがく。水中みたいだ。
小鴨 チカ
水面から浮き上がっても、またすぐに引きずり込まれる。
網倉 霞
目の前の少年がずっとあの少女のことを想っているのを、わかっている。
網倉 霞
自分にそうしてくれる人は、もうどこにもいない。
小鴨 チカ
意識が、あっちとこっちを行き来する。
網倉 霞
だから。
網倉 霞
だから、ここに立っている。
網倉 霞
復讐を。
網倉 霞
自分にはこれしかない。
網倉 霞
目的もなく参加した奴とは違う。
小鴨 チカ
ずっとダメな人生だった。ぼくはずっと、衝動に逆らえない人生だった。
網倉 霞
ここで死ぬわけにはいかない。
小鴨 チカ
幼稚園でやらかして、小学校でやらかして、中学校でやらかして、高校でやらかして、インターネットの世界ですらやらかして。
マキナ
扉の向こうからもやはり、水音が響いている。
マキナ
それに混ざって、
マキナ
「あ、あ」
網倉 霞
ぐちゃぐちゃになった思考が、舌の動きになる。
マキナ
断続的に上がる悲鳴。
網倉 霞
死んだ人と。
網倉 霞
別の世界で偶然再会するなんて、できない。
小鴨 チカ
何度も親に呆れられたし。
小鴨 チカ
女子ネットワークで何言われてるかわかんなくてこえーし。
網倉 霞
狂いきれなくて、でももうとっくに正気ではなくて、
小鴨 チカ
たびたび炎上凍結されるし。
網倉 霞
その曖昧さを中途半端に自覚する。
小鴨 チカ
つーか、ぼくの自撮り裏垢特定したアンチ、ぼくが表垢でイラスト投稿するたびにぼくのエッチな自撮りを捨て垢リプライで張り付けるのマジやめろ。
小鴨 チカ
そーゆー世界から逃げのびてきたのに……
小鴨 チカ
まっさらな世界でも、結局やらかすんだなあ。
網倉 霞
*チカくんの女性恐怖症を抉ります
マキナ
*横槍を……
マキナ
どうやっていれんの!?
マキナ
Choice[猟奇,才覚,愛]
DiceBot : (CHOICE[猟奇,才覚,愛]) > 才覚
マキナ
2d6=7
DiceBot : (2D6=7) > 8[4,4] > 8 > 失敗
マキナ
あ、すみません……成功です……
メイド8
こちら成功でございますね。
マキナ
1d6
DiceBot : (1D6) > 5
網倉 霞
2d6+3-5=>7 判定:才覚
DiceBot : (2D6+3-5>=7) > 6[1,5]+3-5 > 4 > 失敗
[ マキナ ] HP : 21 → 20
鏖田 ネイル
「悦べ」
マキナ
「──ひ」
鏖田 ネイル
扉の向こうから、そんな低い声が聞こえる。
鏖田 ネイル
続いて────
鏖田 ネイル
まず、根本。
鏖田 ネイル
水音が激しくなる。
マキナ
「あ、」
マキナ
「っ、あ、あ、」
鏖田 ネイル
それは、昇り詰めるまで、一切の容赦が無く続けられる。
マキナ
水音に合わせて、マキナの声が上がる。
マキナ
「ん、あ」
マキナ
鼻にかかったような、甘くとろけた声。
マキナ
「いや、」
マキナ
「や、もぅ……」
鏖田 ネイル
止まらない。
小鴨 チカ
「ん、んう……!」声が、また声が聴こえる。
マキナ
「ゃ、いや、いやっ」
鏖田 ネイル
相手の声でも、顔でも、懇願でも、それは判断されない。
マキナ
「あっ」
鏖田 ネイル
ただ躰の反応だけがそれを決める。
マキナ
「も、」
マキナ
「イ──っ、」
マキナ
「た、」
マキナ
「すけ」
マキナ
「て」
小鴨 チカ
たすけて。
マキナ
「ちか」
鏖田 ネイル
そして。
マキナ
「く、ん」
鏖田 ネイル
それが確認されたなら。
小鴨 チカ
ぼくに。
鏖田 ネイル
次は”先端”が使われる。
鏖田 ネイル
「悦べ」
小鴨 チカ
こんな、情けない男に。
鏖田 ネイル
それは二度目の言葉だった。
マキナ
「────っ」
マキナ
ひ、と息を呑む。
小鴨 チカ
そうだ。
小鴨 チカ
ぼくは。いつもいつもいつも。
小鴨 チカ
いい子ぶるな。何もせずに、自分だけ綺麗であろうとするな。
小鴨 チカ
かっこわるくていいから、汚くていいから。
小鴨 チカ
マキナさんを、助けろ!
鏖田 ネイル
────だけど。
鏖田 ネイル
寸前で間に合う、なんて。
鏖田 ネイル
そんな都合の良い事は起きなくて。
マキナ
「──あ、」
鏖田 ネイル
そんな決意が固められた時。
鏖田 ネイル
もう、それは”突き入れられた後”だった。
小鴨 チカ
「…………っ!」
マキナ
ひときわ高く、悲鳴が上がる。
小鴨 チカ
「う、わあああああ!!!」力を込めて、霞の身体を押しのける!
小鴨 チカ
そのまま走る。トイレとは逆方向、部屋の外へ。
網倉 霞
それは妙に軽くて、突き飛ばされる。
小鴨 チカ
「はあっ、ひいっ、はあっ!」部屋の扉を開けて、そこから逃げ出す。
小鴨 チカ
走って。走って、振り返りもせずに全力で。
小鴨 チカ
胸が痛くなって、ここがどこかもわからなくなったところで。
小鴨 チカ
「め、メイドさん……招待、状を……!」
メイド8
「承りました」
メイド8
招待状を受け取り、封を切る。
メイド8
ただちに効力が発揮され、そこにマキナが転移される。
マキナ
「──……?」
マキナ
マキナがチカの元に現れる。
小鴨 チカ
「マキナさん……」
小鴨 チカ
「マキナさん、マキナさん」
マキナ
焦点の合わない瞳が、チカを捉える。
マキナ
血、涙、愛液、
マキナ
様々な体液にまみれて、
小鴨 チカ
「……ごめん」
マキナ
服は引き裂かれ、
小鴨 チカ
「ごめん、遅くなって。ごめん、頼りなくて」
マキナ
足の間に、木の杭が突き立っている。
マキナ
そこからは、一際多く血を垂れ流していた。
小鴨 チカ
「ごめんね。ごめんね」
マキナ
「…………」
マキナ
「……いいよ」
マキナ
「べつに」
マキナ
マキナは愛され方を知っている。
小鴨 チカ
ぼくは、無傷だ。
マキナ
人に愛される振る舞いを。
マキナ
みんながちやほやしてくれるのは、それに惹かれているだけで。
マキナ
マキナ自身が愛されることはない。
小鴨 チカ
傷付いたマキナさんと、無傷のぼく。
小鴨 チカ
その対比が、ぼくを惨めにさせた。
マキナ
マキナも誰かを愛したりしない。
マキナ
求めたりしない。
小鴨 チカ
言葉のかけかたもわからない。どう言えばいいのかもわからない。
小鴨 チカ
マキナさんを傷つけないで、元気にさせるような魔法の言葉を探す。
マキナ
チカが触れた柔らかな白い胸も、無残に抉られている。
小鴨 チカ
そんなものは、ないのかもしれない。
小鴨 チカ
「ごめん……」
マキナ
首を振る。
マキナ
「いいよ……」
マキナ
「なお、せるし」
小鴨 チカ
治せないだろ。
小鴨 チカ
そう思っても、それは言葉に出せない。
マキナ
ぼんやりと、視線を落とす。
小鴨 チカ
元通りになんて、なるわきゃねーんだ。
小鴨 チカ
ぼくが、遅かったからな。
マキナ
突き立ったままの杭を見つめる。
マキナ
手を伸ばす。
マキナ
「──っ、」
マキナ
力の入らない腕で、無理やりそれを引き抜こうと
マキナ
「い、」
マキナ
痛みに歯を食いしばり、
マキナ
「っ、」
小鴨 チカ
何も出来ずに立っている。
小鴨 チカ
手伝ったほうがいいのか、何もしないほうがいいのか。
小鴨 チカ
受け入れた方がいいのか、忘れた方がいいのか。
マキナ
それを、引き抜く。
マキナ
肉が裂ける音。
マキナ
どろどろと、血が流れる。
小鴨 チカ
「……」目が泳ぐ。逸らすでもなく、直視するでもなく。
マキナ
杭を投げ捨てる。
小鴨 チカ
「マキナさん…………」
マキナ
堕落の国の環境の中、それでも手入れしてきた髪も、爪も
マキナ
身体も、
マキナ
全てがずたずたに傷つけられている。
小鴨 チカ
ぼくは、もう期待されてないんじゃないだろうか。
マキナ
「だい、」
マキナ
「じょうぶ」
マキナ
「だから」
小鴨 チカ
何をしても、裏目に出るんじゃないだろうか。
小鴨 チカ
大丈夫とは、ぼくなんて要らないって意味なんじゃないだろうか。
小鴨 チカ
全部が責められてるように感じる。被害妄想か現実かもわからない。
マキナ
チカを見つめるマキナの目には、なんの感情も宿っていない。
小鴨 チカ
せめて、何かを求めて欲しい。
小鴨 チカ
伝えて欲しい。
小鴨 チカ
伝わらないんだ。
小鴨 チカ
読み取れないんだ、ぼくは。
マキナ
力なく、壁に身体をもたれさせる。
マキナ
膝を抱える。
マキナ
「ここどこ」
小鴨 チカ
1d12
DiceBot : (1D12) > 11
小鴨 チカ
「えっ……!」
小鴨 チカ
問いかけられた。
小鴨 チカ
小さな、とっても小さなことだけど、ぼくに仕事をくれた。
小鴨 チカ
周囲は廊下。見回して、扉の前の文字に気付く。
小鴨 チカ
「……図書室前、みたい」
マキナ
「そう」
マキナ
「……休みたい」
小鴨 チカ
「……うん、休もう。歩ける?」
小鴨 チカ
できれば、歩けないって言って欲しい。
マキナ
ゆるゆると、首を横に振る。
小鴨 チカ
本当は、つらいはずだ。歩くのは。
小鴨 チカ
だから。
小鴨 チカ
「……手、貸してもいい?」
小鴨 チカ
役に立たせてほしい。
マキナ
「……ん」
マキナ
小さくうなずく。
小鴨 チカ
「あ、ありがとう」いや、ここでお礼言うのは変だな。
小鴨 チカ
ゆっくりとマキナさんの腕を取る。
マキナ
ボロボロの爪がチカの目に入る。
マキナ
いたずらにチカをくすぐった爪は、無残に砕かれている。
小鴨 チカ
「………………」
マキナ
促されるまま、立ち上がる。
マキナ
時折痛みにか身体がこわばり、
マキナ
しかし声をあげることもなかった。
小鴨 チカ
爪。
小鴨 チカ
あんなにきれいだったのに。
小鴨 チカ
爪だけじゃない。あちこちだ。どこまで戻せるんだろう。
小鴨 チカ
消えない傷、残るんだろうか。
マキナ
マキナ自身にも、それは分からない。
マキナ
ここまで執拗に、痛めつけるために痛めつけられたことはない。
小鴨 チカ
ゆっくり、ゆっくり、図書室の中へ。
マキナ
チカに従う。
マキナ
マキナが歩いたあとに、ぼたぼたと垂れ落ちた血の痕が残る。
マキナ
傷を治す間、マキナはずっと無言だった。
メイド8
網倉 霞
追うことはしなかった。
網倉 霞
押しのけられた時、一瞬目が合った。
網倉 霞
その瞳は。
網倉 霞
いままでに誰にも見せたことがないくらい、
網倉 霞
あるいはこの人間がする表情としてはおかしいくらい、
網倉 霞
怯えと、嫌悪感と、諦観と、
網倉 霞
なにか。
網倉 霞
そういった感情がまざった色をしていた。
網倉 霞
それを見ていたのは、あの少年だけ。
網倉 霞
……べつに同情がほしかったわけではなくて。
網倉 霞
だから、期待してたわけでは。
網倉 霞
きっと。
網倉 霞
きっと、なくて。
網倉 霞
ただ、糸田さん、と呼ばれるくらいの、何かを、
網倉 霞
なにかを、
網倉 霞
……いや、そんなものはなくて、だから、
網倉 霞
「……やだな」
網倉 霞
溜息。
鏖田 ネイル
トイレの扉が蹴り開けられる。
鏖田 ネイル
「逃したな」
網倉 霞
「ん」
網倉 霞
「戻ろう」
鏖田 ネイル
「……どう思う」
鏖田 ネイル
女の方は、手応えがあった。
鏖田 ネイル
肉体は修復できるだろうが、心についた罅は塞がるまい。
鏖田 ネイル
だが、途中で姿が掻き消えたという事は、そうしようとする気力が少年の方には残っていたという事だ。
鏖田 ネイル
女の口調は淡々としている。
鏖田 ネイル
だが、暴力の気配は無い。
鏖田 ネイル
相手がなんらかの失敗をしたという事は、もう分かっている。
鏖田 ネイル
だが、だからといって暴力を振るうような。
鏖田 ネイル
そんな無駄な事は、狩人はしない。
網倉 霞
「女の、悲鳴で」
網倉 霞
「動けたみたいで」
網倉 霞
淡々と。
網倉 霞
それだけ。
鏖田 ネイル
「厄介だな」
鏖田 ネイル
「恐らく、多少余力が残るぞ」
鏖田 ネイル
女がいくら痛めつけられて所で、所詮他人事だ。
鏖田 ネイル
あの少年は確かに優しい心とやらは持っていたようだが。
鏖田 ネイル
糸田さんではない。
鏖田 ネイル
利己的で、薄汚い人間だ。自分に疵が無いなら余裕がある。
網倉 霞
「でも、もう追うだけの時間はない」
網倉 霞
身体を休めたほうが効率的だ。
鏖田 ネイル
「そうする他ないな」
網倉 霞
相手の消耗具合のことを考えながら。
網倉 霞
同時に、手放したコインの枚数のことを思っていた。
網倉 霞
自分の手からものが溢れていくのは、嫌だな。
網倉 霞
もう逃したくない。
網倉 霞
ただひとつを掴むために、ここに立っている。
鏖田 ネイル
霞の頭を掴む。
鏖田 ネイル
くしゃりと、髪をかき回す。
鏖田 ネイル
必要だと判断したら、こういう事もする。
鏖田 ネイル
まぁ、これで十分だろうが。
網倉 霞
「…………、」
鏖田 ネイル
「戻って、寝るぞ」
鏖田 ネイル
交代制で仮眠を取る。いつものルーチン。
網倉 霞
「……うん、」
網倉 霞
「…………ありがと」
鏖田 ネイル
「無駄口を叩くな」
鏖田 ネイル
それは自分には必要ない言葉だ。
網倉 霞
無駄口だ。無駄口でしかない。
網倉 霞
その言葉に中身が伴っているとは思わない。
網倉 霞
かたちだけを真似た愛なんて、何の意味もない。
網倉 霞
だから、それっきり、何も言わずに。
メイド4
しばらくの間、静かな時間が流れた。
メイド4
言葉の語られぬ時間の中に何を想うのか。
メイド4
しかしついた疵を埋めるようなものはみあたりはしない。
メイド4
――裁判に至る。
メイド4