GM
*お茶会第2R 行動順決定
メアリ
1d100 (1D100) > 66
グラセ
1d100 (1D100) > 21
ナナ
1d100 (1D100) > 38
GM
第2R行動順 メアリ>ナナ>グラセ
GM
*お茶会第2R メアリ
スティブナイト
*メアリは『絶望侵蝕』状態であるため、PKが行動の対象と内容、使用する能力値、使用アイテムを指定する。(クエストには挑戦できる
スティブナイト
*指定:グラセの心の疵「白く濁る」を才覚で抉る。
メアリ
黒結晶を持ったまま、傷付いたナナを置いて。
メアリ
何処かにいる“もうひとり”を探す。
メアリ
“そうしなければいけない”気がした。
グラセ
漂う冷気の一端をとらえたならば、根源を手繰ることは容易い。
メアリ
今までどうしてきたっけ。
メアリ
誰と、どうして日々を過ごしたんだっけ。
メアリ
冷たい空気を感じる。
グラセ
あなたが“もうひとり”を見つけると同時に。
メアリ
「ああ、そこにいたんですね」
グラセ
“もうひとり”もまた、あなたを認める。
メアリ
点々と垂れる、血の轍。
メアリ
見えないもう一人の姿。
グラセ
「そうだな」
グラセ
「わたくしはここにいた。お前たちが何処ぞに行っている間もな」
メアリ
「それは申し訳ないことを」
グラセ
淡々と、いつもの調子で立っている。
グラセ
「ナナは捕まえられたか?」
メアリ
「捕まえられてしまったようです」
メアリ
「“この森”に」
メアリ
「眼窩には結晶、両手も同じようにそれに覆われていました」
グラセ
「そうか」
メアリ
「大変なことになりましたね」
グラセ
「ああ」
グラセ
「……。それで」
グラセ
「そういうお前は、どうだ」
メアリ
「さて、何かおかしいところでもございますか?」
グラセ
「ナナを置いてきたんだろう」
メアリ
「ええ、すぐ迷子になるから」
グラセ
「だから、手を引いてでも連れ帰ってくると思っていたのだがな」
グラセ
携える杖が、緩慢に地表の結晶を叩く。
メアリ
「じゃあ離れてしまったのではないですか?」
メアリ
「森が彼女の手を引くから」
メアリ
「手が空いていなければ、手は繋げない」
グラセ
「なるほど。繋ぎようがなかったのだと」
グラセ
「まあ、随分上等な言い回しはいつものことではあろうが」
メアリ
「そういうことですね!」
グラセ
「おめおめと帰ってきた、と」
メアリ
「いいえ」
メアリ
「お目目と帰ってきました」
メアリ
赤い瞳を見せた。
グラセ
「……」
メアリ
「お話をしたんです」
メアリ
「お話をしたんですよ」
メアリ
「けれど、“上手く行かなかった”。」
メアリ
「そういうことですね」
グラセ
「“それ”が、お前の言う“上手く行かなかった”結果か」
グラセ
「……」
グラセ
曖昧な溜息をひとつ。
メアリ
「どうしますか?」
メアリ
「私が憎い?」
メアリ
「私を害したい?」
メアリ
「私を殺したい?」
グラセ
「お前は、そうされたいのか?」
グラセ
顔色も変えないままで述べる。
メアリ
「特には?」
メアリ
「けれど──先程怪我をしてから、どうやら自制が効かないようで」
メアリ
「あなたの目が欲しい」
メアリ
「あなたの冷たい雪原の色が欲しい」
メアリ
「冷ややかな雪の温度が恋しい」
グラセ
「そうか」
グラセ
「まあ。お前にはもとより、そういうきらいがあったからな」
メアリ
「ご理解いただけているようで何より」
グラセ
「……本当に、厄介な森であることだ」
グラセ
あなたの欲する眼差しは、凍り付いたような温度をたたえて、あなたを射る。
グラセ
「……」
グラセ
「お前のことは、まあ。狂っているとは思っているが」
グラセ
「その“きらい”は、ナナや、普遍の者が持ち得るものに過ぎない」
グラセ
「それを、暴かれただけのこと」
グラセ
「この森が、そういう場所であるだけのこと」
グラセ
「それで一々、憎んでどうする」
[ 黒結晶B ] HP : 19 → 0
[ ナナ ] 前科 : 0 → 5
[ ナナ ] 絶望 : -1 → -2
スティブナイト
*指定:グラセの心の疵「白く濁る」を才覚で抉る。 ※再掲
メアリ
*クエスト2に挑戦します
GM
*横槍を行いますか?
ナナ
*メアリがお目目を返してくれないのでありません
GM
では、判定
メアリ
2d6+4=>7 判定(+才覚) (2D6+4>=7) > 6[5,1]+4 > 10 > 成功
[ グラセ ] 白く濁る : 0 → -1
メアリ
*聖遺物「アリスのゆびぬき」を取得します
[ メアリ ] アリスのゆびぬき : 0 → 1
メアリ
「信頼って何だと思いますか?」
メアリ
「信じるってどう言うことだと思いますか?」
グラセ
「さあ」
グラセ
「……いや。そうだな」
グラセ
「信じることとは、見えないものをみとめること」
グラセ
「定かでないものを、在るものとして心にいだくこと」
グラセ
「あるいは」
グラセ
「……」
グラセ
「お前たちが、そうあったこと」
グラセ
「わたくしには、分からないがな」
メアリ
「でも、それがその結果です」
メアリ
「そうあった、そうあっただけ」
メアリ
「見えないものを認めること」
メアリ
「定かでないものを、在るものとして心にいだくこと」
メアリ
「けれど結局見えないものは信じるに足りなかった」
グラセ
「…………」
メアリ
「定かでないものは、定かではなかったために崩れ去った」
メアリ
「あなたはそれを、信じていなかった」
メアリ
「あなたはそれを、分からなかった」
メアリ
「理解しようとしていた?」
メアリ
「そうではないでしょうね」
グラセ
「そうだな」
グラセ
「そうだ」
グラセ
「わたくしは、お前たちを理解しようとしなかった」
グラセ
「わたくしは、お前たちを信じていなかった」
グラセ
「だから。これがその結果であるとするなら」
グラセ
「それだけの話だ」
グラセ
「わたくしは、定かでないものは信じない」
グラセ
「見えないものはみとめない」
グラセ
「これまでも、これからも、そうであるだけ」
グラセ
いつでも、変わらない温度で、女は言葉を紡ぐ。
グラセ
例えば、荒野で一夜を明かしながら、互いの話に耳を傾け合った時でも。
グラセ
共連れが他の救世主に心を乱された時。その傍に在った時でも。
グラセ
いつでも変わらない、冷たい眼差しで。
グラセ
ふたりを、
グラセ
見守っていただけ。
グラセ
「……」
グラセ
「これで、満足か?」
メアリ
「それは、どういった眼差し?」
メアリ
「見守っていた?」
メアリ
「けれど──何らかの感情が伴わない“見守り”は、見守り、というよりも」
メアリ
「ただ、“見ていただけ”ではないでしょうか!」
メアリ
「見ていただけ、ただ、見ていただけ」
メアリ
「私たちの“推定”信頼を、ただ見ていただけ!」
メアリ
「じゃあ、あなたの目の中には」
メアリ
「失った“信頼”も残っているのでしょうか!」
メアリ
「それを取り出せば、分かりますか?」
メアリ
「信頼と云うものが、どういうモノであったか!」
グラセ
「お前がそれで満足するというならば、良いだろう」
グラセ
「ただ」
グラセ
「お前の手元に残るものも」
グラセ
「そこに新たに生まれるものも」
グラセ
「空だけだ」
メアリ
「そうでしょうとも!」
メアリ
「ずっと空、ずっと空洞」
メアリ
「だからこそ、そこに眼球を詰めるのです!!」
グラセ
「はは」
グラセ
「……そうだな」
グラセ
「それこそが“しあわせ”」
グラセ
「到底埋まらないものを、何かで埋めなければならない」
グラセ
「そうでなければ、救いようがない」
グラセ
顔をもたげる。
メアリ
「救われないでしょうとも」
メアリ
「救いなんて求めていませんもの!」
グラセ
「…………そうか」
メアリ
「お話は以上でしょうか!」
メアリ
「まだ、何かございますか!」
グラセ
「――いいや」
グラセ
「なにもない」
グラセ
「なにも、ないよ」
グラセ
手を伸ばす。
グラセ
ひどく冷たい温度が、あなたの体温を奪う。
グラセ
メアリの手を取った。
メアリ
拘束。その手を掴んで、引き寄せざまに──
メアリ
“黒結晶”を迷うことなく右目に突き刺す。
メアリ
二度目だ。
メアリ
二度目。
メアリ
何の感慨もない、繰り返した行動だ。
メアリ
なのに、突き刺す瞬間に得た感情は、
メアリ
ひどく空虚な気持ちだった。
メアリ
あんなに欲しかったのに。
メアリ
あんなに、待ち焦がれていたのに。
メアリ
ああ、なんて。
メアリ
むなしいのだろう。
グラセ
呻き声は、ずっと昔に、喉の奥で凍り付いた。
グラセ
手ずから導いてやろうと思ったのだが。
思いの外、信じられていないものだと。
メアリ
凍り付いたから、聞こえない。
グラセ
信頼とは。
グラセ
信頼とは、なんだったか。
メアリ
信頼とは。
メアリ
なんだったのでしょうね。
グラセ
さあ。
メアリ
容易く壊れる砂の城。
メアリ
朝日に溶ける氷の王国。
グラセ
残されるのは、空で、虚ろ。
メアリ
空洞であるならば、埋めてあげましょう。
メアリ
抉られて、真っ赤に、真っ黒に染まったはずの視界が揺れる。
メアリ
──誰かの人影だ。
メアリ
誰かがそっちを見ている。
メアリ
それはいつか、分かたれたものの姿に似ている。
グラセ
見られている。
メアリ
何も言わない、ただ見ている。
メアリ
あなたのやっていたことと、同じ。
グラセ
厭なまぼろしだ。
メアリ
ただ──見守っている。
メアリ
どろどろと溶け崩れながら、そちらを見ている。
グラセ
孤独は、ただ独りでは成立せず。
グラセ
故に、これが孤独。
グラセ
共に在ろうとせず。
グラセ
理解しようとせず。
メアリ
孤独なグラセを見ている。
メアリ
こどくなばけものが、見ている。
メアリ
それは交わることがない。
グラセ
そうして、誰もが孤独になる。
メアリ
ふたつの孤独は交わることがなく。
メアリ
ただ、ふたつ並んでいる。
メアリ
故に、これが孤独。
グラセ
これまでも、これからも。
グラセ
知っている。“しあわせ”とは、慰めに過ぎないのだと。
グラセ
先を照らすかのような、偏のしるべも。
グラセ
みんなただの誤魔化しで、ただ、虚しさをもたらすだけ。
グラセ
この世界は、絶望で満ちている。
グラセ
とうのむかしに。
グラセ
しっていたよ。
メアリ
ばけものは、何も言わない。
メアリ
そして、黒結晶を携えた女ももう何も言わなかった。
GM
沈黙からは何も産まれない。
GM
そこには人型のものが2つ、転がっている。
GM
歩いていない。
GM
立っても居ない。
GM
2本の足で、そこに居るだけ。
GM
そこに居るだけだから孤独で
孤独だから絶望的で
絶望的だから、そこにいるだけ
GM
近寄らない
混じり合わない
進んでいかない
GM
じゃあ、なんでそこに居るの?
GM
それは、人もばけものも
GM
居ないでいることは、できないから。
GM
 
GM
*お茶会第2R ナナ
スティブナイト
*ナナは『絶望侵蝕』状態であるため、PKが行動の対象と内容、使用する能力値、使用アイテムを指定する。(クエストには挑戦できる)
スティブナイト
*指定:グラセの心の疵「白く濁る」を猟奇で抉る。
ナナ
森の奥、メアリが出てきた方向とは別のところからフラフラと現れる。
ナナ
涙の止まった表情は暗く、
ナナ
錆のようなくすみと黒結晶に覆われた体が”手をひかれて”しまったことを物語る。
メアリ
ただ、佇んでいる。
グラセ
そこに在ったのは伽藍洞。
グラセ
伽藍洞がふたつ。
グラセ
或いは、これでみっつ。
ナナ
「あ゛…………」
ナナ
メアリとグラセを見つけると、怯えるようにグラセの背中に回り込む。
グラセ
「……」
グラセ
眼孔から、雪解けのような透明が頬を伝っていた。
グラセ
頬に触れる。
グラセ
「……ナナ」
ナナ
「グラゼ……メ゛アリがぁ゛……」
ナナ
錆の浮いた声が、親にいじめられたことを言いつけるような非難の色を帯びる。
ナナ
その瞳はグラセの頬を伝うそれを見ていない。
グラセ
「ああ」
ナナ
「メ゛アリがナナの゛眼゛ぇどっだの゛ぉ……返゛し゛てくれな゛いの゛」
グラセ
「そうらしいな」
グラセ
「痛むか」
ナナ
「ナナがごんなの゛に刺゛されだどきも゛助゛けてぐれながっだの゛」
ナナ
「グラゼは、ぞんなごどじない゛よね゛……?」
グラセ
見ていただけ。聞いていただけ。
グラセ
傍に居ただけ。
ナナ
「ナナを助゛けてぐれるよ゛ね゛?」
グラセ
救世主の心の疵は、その在り方。
ナナ
「……ナナが最゛初゛に刺゛されだ時も゛」
ナナ
「メ゛アリにじだみだいに、グラゼはナナを゛」
ナナ
「助゛けようどじてぐれだよね゛?」
スティブナイト
*指定:グラセの心の疵「白く濁る」を猟奇で抉る。 ※再掲
GM
*横槍はありますか?
メアリ
*横槍しまーす
メアリ
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 才覚
メアリ
2d6+4=>7 判定(+才覚) (2D6+4>=7) > 5[4,1]+4 > 9 > 成功
メアリ
1D6 (1D6) > 2
ナナ
*クエスト2に挑戦します 
ナナ
2d6+4-2=>7 判定(+猟奇) (2D6+4-2>=7) > 6[2,4]+4-2 > 8 > 成功
[ メアリ ] HP : 20 → 19
ナナ
*アリスのゆびぬきをくださいな
[ ナナ ] アリスのゆびぬき : 0 → 1
[ グラセ ] 白く濁る : -1 → -2
[ グラセ ] 前科 : 0 → 5
[ 黒結晶A ] HP : 22 → 6
ナナ
ナナは答えを望んでいる。
グラセのことも、メアリのことも見ず。
自分の望む、縋るものになりうる答えを求めている。
ナナ
拾ってくれたグラセならと、一方的に信じている。
グラセ
――救世主の心の疵は、その在り方。
グラセ
心の疵が裏返れば、時には救世主そのものさえ左右する。
グラセ
頬の先から、雫が零れ落ちている。
グラセ
本当は。
グラセ
ほんとうは、しっていた。
グラセ
言い表すための、その名前を。
グラセ
三人を繋ぐ、寄る辺の名前を。
グラセ
自分の望む、縋るものになりうる答えを。
グラセ
零れ落ちている。
グラセ
そう。
グラセ
とうに、零れ落ちた。
グラセ
玉座の上から、見ているばかりで。
グラセ
理解しようともしなかったから。
グラセ
「……」
グラセ
ナナを見下ろす。
グラセ
なまぬるさが、ひたひたとその上に落ちた。
ナナ
自分が欲しがっている答えを貰える、と。淀んだ眼にも期待が満ちていた。
グラセ
まなざし。
グラセ
いつかの民草にも似た。教導者を求めるそれ。
グラセ
与えられるならば、どれだけ“しあわせ”だったでしょう。
グラセ
けれど。病は蔓延った。
グラセ
それは既に、救える者でなく。
グラセ
ただ、遅かった。
グラセ
誰かが、見ていただけでなければ。
誰かが、手を差し伸べていたのであれば。
グラセ
けれど。そうはならなかった。
グラセ
故に。
グラセ
女は、女王となった。
グラセ
差し伸べるためのあたたかな手ではなく。
痛みさえも感じないつめたい手を。
グラセ
傍の誰かを励ます為のあたたかな声でなく。
遠くに届かすためのつめたい声を。
グラセ
涙は、凍り付いていた。
グラセ
凍り付いて、そして、また、
グラセ
空だけが残った。
グラセ
「ナナ」
グラセ
「弱いものに、価値はない」
グラセ
「せいぜい、強いものの糧になるくらいの価値しかない」
ナナ
呆けた顔でグラセを見上げる。
ナナ
グラセから滴っていた雫のように、言葉がナナの表面を滑って落ちる。
グラセ
見えない。
グラセ
誰にも、その表情は見えない。
グラセ
「弱いものであれば、価値がなく、むざむざと出向くまでもあるまい」
グラセ
「それが答えだ。ナナ」
グラセ
「わたくしは、お前を助けなかった」
グラセ
「それが、答えだ」
グラセ
「それが、わたくしの考えていたこと」
グラセ
「これまでも。そして、これからも」
ナナ
「え゛………?」
ナナ
グラセの告げる真実は。
顔をつたってた雫が凍り付くような冷たい言葉。
ナナ
「何゛で」
ナナ
「何゛でそんなごど言うの゛!?」
ナナ
理由はグラセが今さっき口にした。
あたしが弱くて、価値がないから。
ナナ
「あ゛だじは弱ぐなんでない!ぢゃんど役゛にだっでたでじょ!」
グラセ
「いつかはそうであったかもしれないな」
グラセ
「それでは、今はどうだ」
グラセ
「わたくしは、常に、“今”役立つかを求めている」
グラセ
「型の遅れた遺物も。過去栄華を極めたものも」
グラセ
「時が過ぎれば要らなくなる」
グラセ
冷たい言葉。
グラセ
あなたの聞き慣れた、朝方の澄んだ空気のような、でなく。
どこまでも凍り付いた、仄暗い吹雪の渦中にあるような。
ナナ
「………だっで、それば……」
ナナ
空気が冷えていく感覚。体が軋む音。
これはただそういう風に感じているだけなのか、それとも。
ナナ
言葉の冷たさが背筋をつたう。
ナナ
グラセはあたしを助けてくれなかった。
ナナ
「だっで、メ゛アリが……」
グラセ
「ナナ。お前はこの森に、心を奪われた」
グラセ
それは、仕方のないことだった。
グラセ
「それを、“誰かの所為”とした」
グラセ
誰かの所為にしなければ、仕方のないことだった。
グラセ
「お前が、弱いからだ」
ナナ
「……弱゛いがら」
グラセ
「そうだ」
ナナ
あたしがはぐれたから。
あたしが手をはなしたから?
メアリが見てただけだから?
グラセが助けてくれなかったから?
あたしが見てただけだから?
ナナ
「だ、っだら」
ナナ
「だっだら、私゛を拾っだ時みだいに、」
ナナ
「私゛を助゛けでよ」
ナナ
弱くて役ただずたった頃の私を拾ったように。
グラセなら私を助けてくれるはずで。
グラセ
「――……」
グラセ
「わたくしは、お前の“救世主”ではなかった」
グラセ
「やわく、暖のきいた場所でお前を包み込む毛布でもなかった」
グラセ
「それを、思い出しただけだ」
グラセ
「弱さは、仇になると。いつかは綻びになると」
グラセ
「それを思い出しただけ」
グラセ
「お前を拾ったわたくしのことなぞ、忘れるが良い」
ナナ
「………」
ナナ
「じゃあ!じゃあ!!じゃあ゛!!!」
ナナ
「最初゛がら!最初゛がら!!私゛をあ゛だじを!!」
ナナ
「ナナを!!!」
グラセ
そうだ。
ナナ
「騙じてだんだ!!騙じて!!!嘘つ゛ぎ!!!!嘘づぎ!!!!」
ナナ
「ヤダヤダヤダヤダヤダ!!!!」
グラセ
そうだな。
ナナ
じゃあ、私は、あたしは。
はじめから。
ナナ
グラセにとってずっと何の価値もなくて。
ナナ
じゃあ、ナナは。
いらない?
グラセ
……。
グラセ
「それが、真実だ」
ナナ
錆びた金属同士が、ざらついた鉱石が、ぶつかりこすれあうような、音が。
断末魔のように響く。
グラセ
暗く吹雪く。
グラセ
繋いだ手がひとたび解ければ。
再び誰かを求めることも能わず、ただ冷たい孤独が残る。
ナナ
誰とも繋がれずに落ちてきた手は、差し伸べられた手の真意にも。
差し伸べられていた手にも気付かないまま。
ナナ
孤独な暗い部屋へと戻ってゆく。
ナナ
声ともつかない金属音は、いつの間にか断続するノイズのようなすすり泣きへと変わっていた。
GM
手と氷が触れあえば何が起きる?
GM
手は凍傷になる。
GM
鉄と手が触れあえば何が起きる?
GM
鉄は錆びる。
GM
触れ合うという事は、相互に干渉しあうと云う事。
GM
その干渉が、常に善きものだとは限らない。
GM
では、心と心が触れ合ったら?
GM
そんなもの。
GM
どちらも疵だらけになるだけさ。
GM
 
GM
*お茶会R2 スティブナイト 03
GM
森の中、メアリ、ナナ、グラセが佇んで、擦れあって、軋んでいる。
スティブナイト
そこに元凶が訪れる。
スティブナイト
「ずいぶん仲良くなれたみたいだ」
スティブナイト
「よかったよ」
メアリ
「ええ、おかげで最低の気持ちです」
グラセ
速やかに、氷の刃が声の方へ飛ぶ。
ナナ
もはや立ち上がってくってかかることすらしない。
スティブナイト
氷の刃が、スティブナイトの形をした黒結晶に穴を穿つ。
スティブナイト
「よせよ、無駄な事は」
グラセ
足を捥ぐ。腕を捥ぐ。
スティブナイト
砕けた欠片になっても声は止まらない。
グラセ
「どうにも抑えられなくてな」
スティブナイト
「これがお前のストレス解消法な訳?」
スティブナイト
「ずいぶん上品なやり方だ」
スティブナイト
別の方向から、代わりがやってくるだけ。
スティブナイト
「物にあたるタイプが一緒じゃ、道中大変だっただろうに」
スティブナイト
「いや……お前らも似たようなもんか」
グラセ
似た者同士のよせあつめ。
グラセ
それを“いつものことだ”と話す口はもうない。
メアリ
何も返事をしない。
スティブナイト
「口数が減ったな」
スティブナイト
「いい傾向だ」
メアリ
瓶に入れた“収集品”を眺めるばかり。
ナナ
うめき声を止め、溶けた闇に染まったような視線を向ける。
ナナ
起き上がる動きは緩慢でぎこちないよちよち歩きのような。
ナナ
おおよそ何の役に立つとも思えない動き。
スティブナイト
「その調子で黙って、塞ぎ込んで、腐っていけよ」
スティブナイト
「世界中がお前達みたいになれば、きっともう少し静かになるさ」
グラセ
「なに。それだけでは、足りなかろう」
グラセ
一矢がまた、足下を穿つ。不愉快な音がこだまする。
グラセ
「もっと簡単に、疾く、静かにする方法がある」
スティブナイト
「まだ八つ当たりし足りないんだ?」
スティブナイト
「刺さりが甘かったからか?面倒臭いな」
スティブナイト
「手近な相手にぐずってないでさ、お前も自分を見つめ直したらいいんじゃないの」
スティブナイト
「ほら」
スティブナイト
スティブナイトが手を翳す。
スティブナイト
それだけで、その意思の示す先にある黒結晶が成長する。
スティブナイト
それは、先程凶器として、或いは掘削機として使われたもの。
スティブナイト
その切っ先のうち、わずかに体内に残ったもの。
スティブナイト
グラセの、眼窩の内側にあったもの。
グラセ
ちかりと。
グラセ
もう感じないはずの痛みに、遅れて気づいた。
スティブナイト
それは痛みよりも根源的で、悪意に塗れ、
スティブナイト
そしてお前の意識を闇に落とすもの。
スティブナイト
*グラセの「血染めの雪」を猟奇で抉る。
スティブナイト
*横槍は?
メアリ
*横槍入れます
メアリ
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 愛
メアリ
2d6+3=>7 判定(+愛) (2D6+3>=7) > 10[5,5]+3 > 13 > 成功
メアリ
1d6 (1D6) > 5
GM
効果量5
スティブナイト
*ティーセットを使用
スティブナイト
*仔山羊革の手袋を使用
[ スティブナイト ] ティーセット : 1 → 0
[ スティブナイト ] 子山羊皮の手袋 : 1 → 0
スティブナイト
2d6+5+2+2-5=>7 判定(+猟奇) (2D6+5+2+2-5>=7) > 4[2,2]+5+2+2-5 > 8 > 成功
[ グラセ ] 血染めの雪 : 0 → -1
[ メアリ ] HP : 19 → 18
スティブナイト
グラセの意識は闇に墜ちて。
スティブナイト
この場には、立ち尽くす木偶が残される。
スティブナイト
「さて」
スティブナイト
元凶の足元に黒結晶がせりだし、そこに腰掛ける。
スティブナイト
目の前には別の黒結晶が、かつてグラセと一緒に眺めたものと同じ形で現れる。
スティブナイト
「お前達も座りなよ」
スティブナイト
「他人の心の闇でも眺めようぜ」
メアリ
ナイフを振り上げるべきか。
メアリ
悩んで、その迷いが“手遅れ”を生み出した。
メアリ
いまさら、何をやっているんだろう。
メアリ
おとなしくその言葉に従った。
メアリ
別にもう、目的は果たされている。
スティブナイト
どうせここにいるのは本体でもない。
”こうなった”グラセにできることもない。
貴方達二人は、それを身をもって知っているだろう。
ナナ
「………」
ナナ
僅かに開いた口からこすれあうような音がこぼれた。
ナナ
結晶に腰かけるでもなく、ぼんやりとグラセをみつめる。
スティブナイト
広がった黒結晶に、暗い光景が映し出される。
スティブナイト
そこに立ちすくんでいる白い人影が、いったい誰なのか分かっている。
スティブナイト
この映像の中で、これから何が行われるかも。
分かっている。
GM
 
GM
その白い人影にとっても、この暗い世界がどういう場所なのか。
外側からは、2度観せられている。
GM
それでも、中を見るのは初めてなはずだ。
この何もなく、暗く、負の感情だけが常に叩きつけられる空間の事は。
グラセ
――むかし。
グラセ
それは、ずっとむかしのことです。
グラセ
ひとり、おんながいました。
グラセ
くにをすくうのだと、こえをあげて。
グラセ
そうして。
グラセ
たくさんのひとをころした、おおうそつきでした。
グラセ
そこは、ただ広いだけの部屋。
多少豪奢に飾り付けられてはいれど、
うすら寒ささえ覚える、何もない部屋。
グラセ
「…………」
グラセ
女は、その光景をよく知っていた。
グラセ
玉座には、今の自分と違って首の確りと繋がっているひとが腰掛けていた。
グラセ
時折、部屋に人影が訪れるが、見ているだけ。聞いているだけ。
グラセ
そこは、なにもしないだけの部屋だった。
スティブナイト
「よお」
グラセ
「……」
スティブナイト
「ここお前ん家?いい趣味してるね」
グラセ
「何か用か」
グラセ
「お前は見ているだけ、なんだろう」
スティブナイト
「ああ、だから何も用はない」
スティブナイト
「お前も寛いでなよ。心配しなくてもいつかは出られる」
スティブナイト
「それに、どうせ」
スティブナイト
「ここじゃあ、お前の知っている事しか起こらないさ」
グラセ
「そうか」
グラセ
「そうだな」
グラセ
「幾ら過去を追想したとて、何も変わらない」
グラセ
「それと同じだ」
グラセ
こつこつと、何度目か、扉が叩かれる。
グラセ
扉を開いたのは、まだ年若く見える人影。
グラセ
『女王様!』
グラセ
そのひとは弾む息のまま駆け込んで、そうして女の前に跪く。
グラセ
興奮した、嬉しそうな声音で、何か口にしていて。
グラセ
詳細はわからねど、少なくとも何か、うまくいったのだと。
そういうことはわかる。
グラセ
『女王様のお陰です』
グラセ
それは、賛辞の言葉で締めくくられる。
グラセ
屈託のない、誠に嬉しそうな姿。
グラセ
それを見る女の顔は、今よりずっと、朱を宿したものだった。
グラセ
「嫌いでは、なかった」
グラセ
「能力は十分ではなかったが、こいつは、よく働いてくれた」
グラセ
「なにより。他のものより、少しだけ強かった」
グラセ
場面が移ろう。
グラセ
打って変わって薄暗く、細く、狭い通路。
グラセ
その突き当りで、カンテラの灯りに照らされる女。
グラセ
対峙するのは、先程の“少しだけ強い”ひとと。
その背後に、津波のような怒声。
グラセ
「結論として」
グラセ
「少しだけ、では十分でなかった」
グラセ
間もなく、津波は女を絡めとり。その姿は見えなくなる。
グラセ
“悪い女王”の行き先を知らせたそのひとは、ただ、それを見ていた。
グラセ
見ていただけだった。
グラセ
女を信じた結果。自分自身の責任を他人に預けた結果。
グラセ
そこに起こった悪いことを、“誰かの所為”にした。
グラセ
場面が移ろう。
グラセ
女は襤褸よりもひどい有り様で、断頭台に掛けられている。
グラセ
群衆の群れが、蠅のようにたかっている。
グラセ
死肉をついばむ鴉のように、ぎらぎらとした目で心をひとつにしている。
グラセ
『嘘吐き』
グラセ
『お前のせいで、旦那は助からなかった!』
グラセ
『人殺し……』
グラセ
女は、何も言わない。
グラセ
大勢の人を殺した。
グラセ
いわれなき人々を殺した。
グラセ
患った国の、病のもとを焼き払い。困窮した国の、穀潰しを殺した。
グラセ
より、弱いものを殺した。
グラセ
「そうするしかなかった」
グラセ
「弱った羊を飼い続ける訳にはいかない」
グラセ
「他の羊を生かすことを考えるべきだった」
スティブナイト
「じゃあ、いいじゃん」
スティブナイト
断頭台に腰掛けて、固定された首を見ている。
スティブナイト
「やるべき事をやったなら、結果も在るべくして在るものだろ?」
グラセ
「ああ」
スティブナイト
「この喚いている連中は、一体何が不満だったんだろうね」
グラセ
「……」
グラセ
「或いは」
グラセ
「不満であることに、満足していたのかもしれない」
グラセ
「起こった理不尽や不幸に、理由をつけずにはいられない」
グラセ
「その先に、わたくしが居ただけ」
グラセ
「お前には、そういう覚えはないのか」
スティブナイト
「不満はそりゃあるさ」
スティブナイト
「だが、特定の誰かにぶつけるようなのは面倒だ」
スティブナイト
「ぶつけるなら全員にぶつけるね」
スティブナイト
そして、実際に実行している。
森の拡大という形で。
スティブナイト
「で、知ったように語るけど。お前は?」
スティブナイト
「この結果にご不満は」
スティブナイト
断頭台に語りかける。
グラセ
「捌け口を考えるだけなら、いくらでも思い付きはするが」
グラセ
「……」
グラセ
「不満でないことに、満足しているのかもしれない」
グラセ
「もし、彼らから見て間違っているものがわたくしであるならば」
グラセ
「そうあろうと思った」
スティブナイト
「じゃあ、聞いてみる?」
スティブナイト
断頭台の前に、人影が増える。
スティブナイト
それはお前だ。
スティブナイト
思い出の中の姿ではない、今森の中で立ち尽くしている筈のお前の姿。
スティブナイト
ここにはお前が二人いる。
スティブナイト
「”今のお前”から見て、この女は間違っていたと思うか?」
スティブナイト
「この女は死ぬべきか、否か」
グラセ
女が見ている。
グラセ
女は見ている。
グラセ
「わたくしは、間違っていなかった」
グラセ
「けれど、死んだ方が良かった」
グラセ
「人を殺し過ぎた」
グラセ
「この世を見通し過ぎた」
グラセ
死んだ方が良かった。
グラセ
或いは、死にたかった。
グラセ
その方が、ずっと、楽になれた。
スティブナイト
「じゃあ、やるべき事があるな」
スティブナイト
断頭台の綱はまだ繋がっている。
スティブナイト
民衆はまだ叫んでいる。
グラセ
悪魔の鏡。そこにはこの世の物が全て醜く、憎々しく映る。
グラセ
それは或いは、真実の鏡。
グラセ
真実を知って尚、正しくあることほど。生きることほど。
グラセ
辛く苦しく、絶望することはない。
グラセ
縄が凍り付き、力が加わる。
グラセ
細って、解れ。次第に寄る辺を失って。
グラセ
そうして。
グラセ
世界は暗転して、“それ”は堕ちていく。
グラセ
未だ、死ねないままで。
*2Rスティブナイト裏
スティブナイト
「実はさっきのお前達の様子も、こうやって鑑賞しててね」
スティブナイト
「こいつと観てたよ。立場が逆になったな」
ナナ
「……ぞうなんだ。やっばり」
ナナ
「グラゼも見でだだけだっだんだぁ」
スティブナイト
「ははっ」
スティブナイト
実際に何をしていたのか、わざわざ説明するような事はしない。
メアリ
「……………」
スティブナイト
「ま、そんなもんさ」
スティブナイト
「人が複数人いるということは、人が複数人いるという事以上の意味を持たない」
スティブナイト
「そこに居るだけ。立っているだけ。知っているだけ。つまり、見ているだけ」
スティブナイト
「現実は人が複数いるだけで絆の力でパワーアップだの、変な事が起きなくて安心するよ……うわでけー部屋」
ナナ
「わぁ……」
スティブナイト
「あ、俺(仮)だ」
ナナ
「いいなぁ、広゛いお部屋゛」
メアリ
つまらなそうに見ている。
スティブナイト
見せてはいても、嘲るような顔を浮かべていても、スティブナイトも別に楽しそうに見ている訳じゃない。
スティブナイト
ただ、こうして見せる事で。見られていることで。
少しでも傷つけば、手間が省けていいと思っているだけだ。
ナナ
かつて必要だとされて見せられていた、教育用映像を見るようにようにぼんやりとみている。
スティブナイト
「わ~高貴な産まれ。だろうねって感じだけど」
スティブナイト
「ちなみにお前らはさ、こういう話少しでも聞いたことはあったわけ?」
メアリ
「いえ。出自の話はしたことがなかった」
ナナ
「んー、わがんない。ながったど思う」
スティブナイト
「へー、ずいぶん信用されてたんだね」
ナナ
「だっで、ナナに言っでだこど、全部嘘゛がもじれないし」
ナナ
変わり果てた手がざりざり、かちかちと黒結晶に音を立てる。
スティブナイト
「ふーん。まあ安心しなよ。この映像に嘘はつけない」
スティブナイト
「別に真実を映す鏡じゃないから、本人が妄想に取り憑かれてる場合は妄想通りだけど」
スティブナイト
「ま、でもその辺は分かってるか。経験済みなら」
ナナ
波音のような声。
スティブナイト
「わあ国家動乱」
ナナ
「覚えでるよりもずっどヤだっだ」
ナナ
「グラゼも嫌゛なのがな」
スティブナイト
「そうだといいね」
メアリ
見ている。
ナナ
そうだといいのかな?
スティブナイト
「俺は嬉しいよ」
スティブナイト
「お前達が嫌だと嬉しい」
ナナ
嘘吐きと、グラセに投げかけた言葉が映ったグラセにぶつけられている。
ナナ
グラセにも、メアリにも、一方的に理由を預け。
盲目的に信用し。
ナナ
自分が見たままの通りに。言葉をそのままのとおりに受け止めて。
ナナ
差し伸べられた手を取ることもなく。
ナナ
メアリのせい。グラセのせい。
ナナ
頭の中という暗く閉じた部屋の中で、ぐるぐると思考が回転している。
ナナ
悪いのは?メアリ?グラセ?あたし?私?
ナナ
それともナナ?
ナナ
「あえ゛………」
ナナ
ぐちゃぐちゃと、どろどろと渦巻く頭の中。
スティブナイト
「気分悪そうじゃん」
スティブナイト
「背中でもさすってやったら?」
メアリ
「誰が?」
ナナ
「………ゔゔ」
メアリ
「どうして?」
スティブナイト
「わぁ仲の良い事」
ナナ
えづく震えもこみ上げる感覚も存在しない器官のはずなのに。
ナナ
天と地がさかさまになったように視界が揺れている気がする。
ナナ
ナナのせいだから?
メアリ
それを気にしない。
メアリ
その異常に気付かない。
メアリ
どうでもいいことだ。
ナナ
そしてそれを口にする術も、言葉も、経験も持たない。
ナナ
堕ちてくる前も、堕ちてきてからも。
表層に纏った部分を取り繕っているだけで。
ナナ
本質は。何も。
変わってなど。
ナナ
ああその回る視界の先でグラセの頸がギロチンにかけられるのを。
ナナ
ただ、見ている。
メアリ
どうしようもない。
スティブナイト
「ちなみに」 映像の中を指さして、話を向ける。
スティブナイト
「お友達の意見としては、これの答えは?」
ナナ
「………」
メアリ
「さあ」
スティブナイト
「ま、他人の事情なんて興味ないか」
ナナ
「あだじは……私゛は……。ナナは……」
ナナ
グラセは嘘つき。グラセは嫌い。グラセは拾ってくれた。グラセは好き。
ナナ
どっち?
メアリ
頷きもしない。
ナナ
「……どっぢも」
ナナ
会話のかみ合わない答えが応え。
メアリ
「いつだって、間違っているのは世界の方」
メアリ
彼女の言葉に、そう返す。
メアリ
「私たちは、いつも間違っていなかった」
ナナ
「………」
ナナ
「……ぞうがも」
ナナ
何が正しいとも、間違っているとも。
自分のことすらわからないのに。
自分のことすらわからないから。
メアリ
「私たちはきっと、死んだほうがよかった」
メアリ
「誰一人、欠けなく」
メアリ
「この森に、辿り着く前に」
ナナ
「……ぞうだっだ、ばずなのにえ゛」
ナナ
この世界に堕ちてきてしまった。
ナナ
救世主になってしまった。
ナナ
「でも、ごごに来゛ちゃっだんだ」
スティブナイト
「安心しなよ」
スティブナイト
「帰る方法はないが、居なくなる方法はある」
スティブナイト
「ほら、その手段の1つが目覚めたぞ」
GM
そしてお前は目覚める。
GM
そこは黒い森の中で、お前はそこに立っていて、目の前には救世主たちが居て。
GM
そのどれも、首がまだ繋がっている。
スティブナイト
「さて、それじゃあ」
スティブナイト
「お前には、やるべき事があるよな」
GM
 
GM
*お茶会R2 グラセ
GM
*グラセは『絶望侵蝕』状態となったため、PKが行動の対象と内容、使用する能力値、使用アイテムを指定する。(クエストには挑戦できる)
GM
*指定:メアリの「師の教え」を猟奇で抉る。
GM
黒結晶に映し出されていた映像が途切れるのと、グラセと呼ばれていた救世主が目を覚ましたのは同じタイミングだった。
GM
スティブナイトと、メアリ、ナナ、グラセ。
全ての役者がそこには揃っている。
グラセ
目が覚める。うたかたがはぜる。
グラセ
ひとはそうして、おだやかな微睡みから、黒く冷たい現実に引き戻される。
グラセ
「……」
グラセ
首が重い。
グラセ
未だ其処に、未練がましくぶら下っているから。
ナナ
かつての記憶を見せられていただけ。
ナナ
赤黒く錆の蔓延った兵器にはおおよそ関係のない内容のはずなのに、伏し目がちになった目はグラセを直視することができない。
ナナ
「………」
ナナ
グラセに駆け寄ることも縋りつくこともせず、逸らされる視線は首から上を否定しているようにも見えるかもしれない。
メアリ
「随分お二人とも、この森に“馴染まれた”ようで」
ナナ
錆びついた機構が軋み擦れるような声が喉の奥からはい出そうとする。
ナナ
「グラゼ……」
ナナ
潤滑油の存在しない関係に滑らかな言葉など続くはずもなかった。
グラセ
「――ふ、」
グラセ
細った溜息を吐く。
ナナ
視線がグラセとメアリの間を不安げに往復する。
グラセ
「そうだな」
グラセ
「随分と、馴染んでしまったかもしれないな」
グラセ
「或いは、元有るべき有り様に戻っただけ」
メアリ
「ふたりでは、不満だと?」
メアリ
「まだ、何か語り合いたいですか?」
グラセ
どこを見ているかも分からない顔は、
ナナを、メアリを、見ているかさえ定かでない。
メアリ
ナイフを握る。
ナナ
怯えるように身構える。
グラセ
「……。今更だろう」
メアリ
「ええ、今更」
メアリ
「こうして生きてきたんですもの」
メアリ
「ねえ?」
グラセ
「そうだな……」
グラセ
かんばせと思しきそれが、女の持つ切っ先を向いた。
グラセ
「こうして生きてきた」
グラセ
「わたくしも、ナナも」
グラセ
「そして、お前も」
メアリ
「そう、だから」
メアリ
「今更、なんですよ。すべて」
メアリ
何処か、あきらめたようで。
それでいて、穏やかささえ感じられる声。
グラセ
ああ。北風がひうとなくように云う。
グラセ
「お前は、賢しいよ」
グラセ
「だから、解っている」
メアリ
「今更気付きましたか」
メアリ
「私は、正しかった」
メアリ
「そうでしょう」
グラセ
「……」
グラセ
「ああ」
グラセ
「言葉を尽くさずとも、お前は解っている」
メアリ
「そうなって初めて、判るでしょう」
メアリ
「こうすることしか、安らぎは無い」
メアリ
「ここでしかきっと、生きていかれない」
メアリ
「殺し、殺される間しか、目を塞ぐことが出来ない」
メアリ
「無事だと考えてしまうでしょう」
メアリ
「後悔や、過去のことに足を取られてしまうでしょう」
メアリ
「可哀想に。ほんとうに哀れだと思います」
グラセ
「そうだ」
グラセ
「広く視野を持ったならば」
グラセ
「見たくないものまで、見てしまう」
メアリ
「ええ」
メアリ
「きっと、これは間違いでした」
メアリ
「私が師から学んだこと」
メアリ
「視野が広がると、苦しい」
メアリ
「見たくないものまで見えると煩い」
メアリ
「あまりにも、煩わしい」
グラセ
「広すぎる世界に耐えかねて」
グラセ
「終いには、薄暗闇の中でしか生きれない」
メアリ
「ええ」
メアリ
「この森のような、ね」
グラセ
誰かの、何かが変わってしまったわけではない。
グラセ
ただ。うたかたから、目覚めただけ。
ナナ
2人に比べておおそよほとんどを”わからない”と答えるであろうナナは。
2人の会話に視線をうろうろさせる。
スティブナイト
「お褒め頂いて嬉しいね」
グラセ
「……――悪魔の鏡」
グラセ
「或いは、真実の鏡」
ナナ
どこに行きつくでもないその視線のように、自分の中で思考がループする。
グラセ
「この世のどんなに美しいものでも、それを通せば醜く映る」
ナナ
グラセもメアリも好きで。
メアリもグラスもあたしに必要で。
グラセもメアリもあたしを助けてくれなくて。
メアリもグラセも、あたしがきらい?
ナナ
聞かなければよかった。
聴くべきではなかった。
気付くべきではなかった。
知るべきではなかったことに囚われて。
ナナ
かつての部屋の中のように自分へ閉じこもる。
グラセ
「わたくしは、それこそが真実だと思う」
メアリ
「あるいは、この世に美しいものはなにひとつ」
グラセ
結ばれた絆も。まぜあった温もりも。
グラセ
「あるいは、そうだ」
メアリ
「ぜんぶまやかし」
グラセ
「その裏側は、見るに堪えないものばかり」
ナナ
「ぢが、……」
ナナ
感情的にこぼれた言葉は乾ききっている。
あたしの中ですら、何がどう違うのかも、本当に違うのかすらもわからなくなる。
GM
ナナの視界に、錆びた己の手が映る。
ナナ
元の形も、うわべの形もわからなくなった。
ナナ
ただ、右手だったところについているモノ。
ナナ
もう、誰と繋がることもできない。
ただの醜い。
塊。
グラセ
「違うと思えることは、“しあわせ”」
グラセ
しあわせな者は、果たして、もう残っているのだろうか。
メアリ
「仕合わせ、とはまた」
メアリ
「皮肉なものですね」
グラセ
「ああ」
メアリ
「くだらないお話は」
メアリ
「ここまでで結構ですね?」
メアリ
「どちらの真実がただしいか」
メアリ
「戦って決めましょう」
メアリ
「そうしてきたでしょう」
メアリ
「そうして、生きてきたのでしょう」
グラセ
幽鬼は、顔を持ち上げる。
GM
*指定:メアリの「師の教え」を猟奇で抉る。 ※再掲
グラセ
*クエストNo.4に挑戦します。
ナナ
*思考ループ中で横槍はありません。
グラセ
2d6+4=>7 判定(+猟奇) (2D6+4>=7) > 7[4,3]+4 > 11 > 成功
[ メアリ ] 前科 : 1 → 5
[ 黒結晶A ] HP : 6 → 0
[ スティブナイト ] HP : 20 → 1
グラセ
細った、冷たい刃。
グラセ
それが、あなたが先程穿たれた背の、その後ろに。
グラセ
「――痛いんだ」
グラセ
くだらないお話が終わってしまう間際、あなたを襲う。
メアリ
感じたのは、痛みだ。
メアリ
痛い。そうして、そうして。
メアリ
くだらない、本当にくだらない、
メアリ
“師の教え”なんてものから解放される。
メアリ
痛みを以て!
グラセ
深々と、突き刺さる。
メアリ
「煩わしい、煩わしい!」
メアリ
「くだらない感傷も、枷もすべて!」
メアリ
「意味がないものになりました!」
メアリ
「殺しましょう!ころしあいましょう!」
メアリ
「やはり、殺し合いが全てを解決する!」
メアリ
捲し立てるように。
メアリ
畳みかけるように。
グラセ
「……」
グラセ
「痛い」
メアリ
「ええ、痛い!」
グラセ
「苦しい」
メアリ
「苦しくはない!」
メアリ
「痛みは解放ですから!」
メアリ
解放された気分だ。
グラセ
「……そうだな」
メアリ
気分がいい!
メアリ
「今なら何でも出来そうです!」
メアリ
場違いなほどに明るい声。
メアリ
両手を広げて、くるりと回る。
グラセ
氷が折れてはじける。
グラセ
「痛みが解放であるならば」
グラセ
「そうであるならば、或いは救いなのかもしれない」
メアリ
「ええ、ええ!」
メアリ
「そうでしょうとも!!」
グラセ
「お前も、わたくしも」
グラセ
「鏡のかけらが、深く食い込んでいることさえ」
メアリ
「そうです。そうなんです」
メアリ
けらけらと、可笑しくもないのに笑う。
スティブナイト
「で」
スティブナイト
「話は纏まったわけ」
スティブナイト
「誰から死ぬ?」
ナナ
その言葉にループしている思考が強制的に切り替わる。
暗い孤独の中に、自分のことをどうにかできるのはナナ自身だけ。
ナナ
顔の見えないグラセとも、けらけらと笑うメアリからも距離をとって身構える。
ナナ
兵器としてか、表層に纏ったものか、それとも生きているからか。
ナナ
死んでいるべきだった。そうなのかもしれない。
ナナ
「……でも、もじがじで、ぞう゛じゃない゛がも……」
ナナ
零れる言葉が何を発しているかすら、自分でもよくわからない。
ナナ
すでに己を確かめることすら怪しくなっている。
メアリ
その言葉をもう、拾い上げることもしない。
メアリ
その問いの答えを、導く事さえしない。
メアリ
いつか、解いた手はもう二度と繋がれることはない。
グラセ
「……いずれは、何もかも終わる」
グラセ
「故に、順をつけることに、意味はなかろうが」
グラセ
「どうにも、癪に障る」
グラセ
スティブナイトを見る風にして、特段に感情を表さない声色でいう。
グラセ
足元がぱきりぱきりと、静かに凍てつく。
グラセ
「なあ」
グラセ
氷は死んだ木を這い、その端までを凍結させ。
グラセ
「お前だけ他人、というのも」
グラセ
「さみしかろう?」
スティブナイト
「いや別に」
グラセ
みしりと。大きな音と共に。
スティブナイト
「お前達が死んでくれれば、死んでくれて嬉しいなって思うよ」
グラセ
曇り空に、輝き尖る凶器がはぜる。
グラセ
「つれないな」
グラセ
それが合図。
GM
それは予め決められていた符号。
GM
公爵家の者が見て取れば、”袋”を担いだグリフォンの末裔が飛び上がる。
スティブナイト
「殺しに来た相手に協調性を期待するなよ」
GM
その”袋”の中身は?
GM
少なくとも、クリスマスプレゼント程は素敵じゃない。
GM
だけどきっと、誕生日パーティよりも騒がしい。
GM
空中からバラ撒かれた三月兎が、森のあのあちらへ、こちらへ、今救世主達がいる場所以外のいろんなところへ。
GM
森中が一気に騒がしくなる。子供のはしゃぐ甲高い声、走り回る音、木々がなぎ倒される音、亡者のうめき声、悲鳴。
GM
こんな有様じゃあ、ここ以外の場所はどうなってる?
スティブナイト
こいつの顔色が一つの答え。
スティブナイト
「お前っ……!」
グラセ
「期待していないさ」
グラセ
「ただ、期待以上ではあったかもしれないな」
グラセ
「弱いものでも、役に立つ」
スティブナイト
どこか遠くから破壊音が鳴り響くたび、目の前のそれが細かく震える。
スティブナイト
それは恐らくは、救世主を模しているだけの黒結晶なのだろう。
スティブナイト
だが模しているからこそ、ある程度は本人の状態を反映する。
スティブナイト
「ずいぶんと上品な手を使うじゃないか」
スティブナイト
それが声を発する間にも、黒結晶が欠けて欠片となって落ちていく。
スティブナイト
汗をかき、歪み、口角が釣り上がる。
GM
あの拠点に用意されていた三月兎は、どれくらいだっただろう?
何割が無事に着陸できて
何割が亡者にならずに済んで
何割がまだ生きている?
GM
きっと、どれもそう多くはないさ。
グラセ
「言ったろう。お前を殺すと」
グラセ
「お前もまた、死ぬべきだ」
スティブナイト
「……っああ、その通りだよ」
スティブナイト
息継ぎの間に漏れ出るような声色。
グラセ
そうして誰かを殺した誰かも、また。かくあるべきだと思う。
スティブナイト
「それはそうさ、お前は正しい」
スティブナイト
「だが」
スティブナイト
「この世界にいる殆どの連中は、間違えている」
スティブナイト
「この森に来る前のお前達みたいに、間違えたまま生きている」
スティブナイト
それは善意なんて欠片もなく、憐れみでもなく、同情でもない。
スティブナイト
「だから俺が死なせてやる」
スティブナイト
「確かに俺は死ぬべきだが。それまでに俺以外の全ても、死なせてやるさ」
スティブナイト
「間違えた連中が、間違えたまま生きているのは、我慢がならない」
スティブナイト
それは逆恨みだとか。憎悪だとか。八つ当たりだとか。
スティブナイト
そういう怠惰な感情がないまぜになったもの。
スティブナイト
「お前達も」
スティブナイト
「さっさと死ねよ」
スティブナイト
そしてそれは、ただの黒結晶になった。
GM
あの救世主は、別に死んだ訳ではないだろう。
GM
この森のどこかに、ダメージを負った状態でいるかもしれない。
GM
でも。
GM
じゃあ。
GM
それで。
GM
お前達は、お手々を繋いで、仲良くそれを探しにいける?
GM
 
GM
*お茶会フェイズ終了前に、クエスト『戦術補助』による技能の入れ替えが可能です
ナナ
*入れ替えありません
グラセ
*Jの刹那を極撃に入れ替えます。
メアリ
*Jの装備技能の「万能」→「未練」へ