GM
~お茶会ラウンド1~
GM
*行動順の決定
ナナ
1d100 (1D100) > 58
メアリ
1d100 (1D100) > 10
グラセ
1d100 (1D100) > 65
GM
グラセ>ナナ>メアリ
GM
*PKの心の疵を公開します
GM
*お茶会R1 グラセ
グラセ
森の静寂を踏み荒らして歩く。
ナナ
ぱきりぱきりと砕ける結晶の音が心地よく、不気味な森を歩いているが足取りは軽い。
グラセ
「しかし、あれは相当手練れだな」
グラセ
「影響の規模を見れば当然ではあるが……」
ナナ
「うん、コインもかなり多そうだよね。被害にあってるの、末裔だけじゃないし」
グラセ
2d6 (2D6) > 10[5,5] > 10
黒の森シーン表
5:開けた場所。巨大な黒結晶のクラスターがある。長い時間をかけて大きくなったようだ。この辺りが救世主の居住地だろうか?
絶望の森シーン表
5:道に迷う。木々の向こうに人影が見える。あなたを見ているそれは幻? 本物? 一体誰?
GM
あの救世主……スティブナイトの姿を探し、一行は静寂を踏み潰し続ける。
GM
その視界の端に、人影がよぎる。
GM
それは、見覚えがあるような誰かの後ろ姿。
GM
森の木々の間を懸け、どこかへと消えていく。
GM
その姿は、しかし、”ナナとメアリの視界にのみ”映っていた。
ナナ
「!」
メアリ
人影。そちらへ引かれるナナに従う。
ナナ
木々の向こうに、なぜかあたしの髪色が見える。
服も、背格好も、何もかも同じような姿。
メアリ
グラセ様は氷を用いて回避が可能だろうが、ナナはひとりでは危ういところがある。
メアリ
ここで頭数を減らすのは避けたい。
ナナ
足を止めて思慮する前に、そちらへとザクザク歩を進める。
グラセ
辺りを見回していて、だから、ふたりの様子に気づくのに一拍遅れた。
グラセ
「! ……」
GM
一瞬視界から逸れれば、この森では姿を見失うには十分な時間だ。
グラセ
木立の先に、修道服の切れ端が吸い込まれるのが見えた。
グラセ
「ふむ……」
グラセ
概ね、ナナがふらりと何処かへ行ったのだろう。
珍しいことではない。
グラセ
こういったときは、あまり探し回らない方が得策ではあろう。
GM
そう遠くには居ないはずなのに、二人の気配も感じられない。
音も、光も、この森を満たす黒結晶に吸い込まれているかのように。
グラセ
「……不気味だな」
スティブナイト
「そう思うんなら、そんな不気味な場所に来なければいいのに」
グラセ
「丁度、お前のことを考えていたよ」
スティブナイト
気配も足音も何もなく、気づけばそこに佇んでいた。
グラセ
「お前は、こういう方が好みなのか?」
グラセ
振り返る。
スティブナイト
それが”本物”かどうかはともかく……放つ拒絶の気配も、合わない視線も、先程と同じ。
スティブナイト
「五月蝿い奴らが彷徨いているよりはマシ」
グラセ
「騒がしいやつは苦手か」
グラセ
「……ふん」
グラセ
「結構繊細な方か?」
スティブナイト
「さあ。今お前が踏み潰してる結晶と同じくらいかな」
グラセ
「それは失礼。しかし、足の踏み場がないからな」
GM
気づけば周囲の光景も異なっている。
グラセの足元を覆うように散らばっている黒結晶はこれまでよりも密度も多く敷き詰められ、踏み砕かずに歩く事はできそうにない。
GM
そして破片が広がる地帯の中心には、巨大な黒結晶のクラスターが伸びていた。
スティブナイトは、それに凭れ掛かるように立っている。
グラセ
「まあ存外、わたくしの勘は外れないものなのかもしれない」
グラセ
「これは、お前に似ている、と思った」
スティブナイト
「天井の染みが人の顔に見えるタイプ?」
グラセ
「想像力を鍛えるには悪くない方法だぞ?」
スティブナイト
「その鍛えた想像力で幸せな妄想ができたらいいね」
グラセ
「そうだな」
グラセ
「……。一面に蔓延り、触れれば人を侵すくせ」
グラセ
「強くあたられれば割れてしまう」
グラセ
「お前自身も結構、面倒くさいと思うが」
スティブナイト
「お前はこの森に占いをしに来たのか?」
スティブナイト
「想像力の鍛えすぎも困りものだね」
グラセ
「お前も本当に面白いやつだな」
グラセ
凍り付いた顔はにこりともしない。
スティブナイト
お互いに笑いもしない。
明るくもなく、同意もしない。
スティブナイト
温度の無い会話だ。
グラセ
乾いて、冷ややかであることだけが、共通している。
グラセ
「本気で、想像力だけかと思うか?」
スティブナイト
「観察して、会話して、俺の事を理解した発言って言いたいの?」
スティブナイト
「だとしたらコミュニケーションの達人だな。さぞ友達も多いんだろう」
グラセ
「そうやって理解されたいのか?」
グラセ
ふむん、と唸る。
スティブナイト
「そう見える?」
グラセ
「さあ。残念だが、わたくしは友達がほとんどいないものでね」
グラセ
「もっと単純に、救世主としての話だ」
グラセ
「救世主の心の疵は、強力であるが、故に見え過ぎてしまう」
グラセ
*スティブナイトの心の疵「黒結晶」を抉ります。
 クエストNo.1に挑戦します。
スティブナイト
*配下が横槍。
黒結晶B
2d6+2+2=>7 判定(+脅威度) (2D6+2+2>=7) > 3[2,1]+2+2 > 7 > 成功
黒結晶B
1d6 (1D6) > 3
黒結晶B
HP-1
グラセ
*ティーセットを使用。
[ グラセ ] ティーセット : 1 → 0
グラセ
2d6+4-3+2=>7 判定(+猟奇) (2D6+4-3+2>=7) > 7[1,6]+4-3+2 > 10 > 成功
GM
クエストが達成されたため、PKのデータが公開されます。
[ スティブナイト ] 黒結晶 : 0 → -1
スティブナイト
「は──」
スティブナイト
スティブナイトの背が、巨大な黒結晶から離れる。
スティブナイト
歩みを進め、グラセに迫る。
グラセ
「……」
スティブナイト
「認めてやるよ。お前の言っている事は正しい」
スティブナイト
「黒結晶は、俺の心の疵から湧いてきたものだ。それが何を意味するかくらい分かるだろう?」
スティブナイト
「だけど、やっぱり想像は想像だよ」
スティブナイト
グラセに向かい、手を差し出して── 
スティブナイト
その手を握り。
スティブナイト
そして、僅かに湧き出す。
スティブナイト
「やっぱり、実際に触ってみないとね」
GM
握られた手から直接湧出した黒結晶が、その肌を刺す。
グラセ
「……ッ」
GM
鋭い痛みと共に襲い来る、氷とは違う種類の冷たい感覚。
GM
諦め、不安、怒り、嘆き、恨み。
寄生虫が肌を突き破り血管に侵入するように、それらの感情が身体の中に侵入しようとするのを感じる。
グラセ
凍り付いた体から鮮血が滴ることはなく、その形の通りに孔が開く。
グラセ
好きにさせてやろう、と思っていたが。
明確な不快感に、これは不味いと直感する。
グラセ
思い切り、手を引き剥がす。
グラセ
「……急に触れるとは、礼儀がなってないんじゃないか?」
スティブナイト
「身体に触れるのと心に触れるの、どっちのほうが失礼だと思う?」
グラセ
ぱきり、と足元が砕けて、己が退いたのが分かる。
グラセ
「言えているが、救世主とはそういうものだからな」
スティブナイト
「まあでも、これでご理解頂けたかな。これがどういう物体なのか」
スティブナイト
「実感してみれば、お前はとっさ手を放す。それが答えだよ」
GM
黒結晶に蝕まれかけた残滓は、未だ不快感として身体に残っている。
グラセ
「……お前のそれは。触れ続けるには、耐えがたいものだ」
グラセ
「黒の森。或いは“絶望の森”」
グラセ
「お前は、何に絶望したんだ」
GM
手に残る残滓から感じられるものは、眼の前の景色にすら目を瞑りたくなりそうな、心の疲弊。
視界を動く何もかもが不幸の前触れに感じる諦念。
GM
そして、世界の全ての滅びる様を心の底から願う、恨み。
グラセ
かつても、幾許かだけ、触れたことのある感情だった。
スティブナイト
「何に絶望したのか?」
スティブナイト
「心当たりが多すぎて、覚えてられないよ」
グラセ
理解しているからこそ、耐えがたい。
スティブナイト
「代わりに、何を望んでいるかは分かっている」
スティブナイト
「みんな絶望すればいい」
スティブナイト
「触れ続けるには耐え難い物に、一生触れて過ごせば良い」
スティブナイト
「音を出す事に耐えかねて、みんな静かになればいい」
スティブナイト
「痛みに苛まれて、生きることに苦しんで、辛い思いをして欲しい」
スティブナイト
「お前に絶望してほしいよ」
スティブナイト
「そうなればいいなと思ってる」
GM
もし、この絶望の領域が拡大を続け、堕落の国の覆ったのなら。
GM
その願いは叶うだろう。
グラセ
「……それは、それは。大それたお願い事だな」
グラセ
「……」
グラセ
「それが、お前の望みというなら」
グラセ
「スティブナイト。やはり、お前を殺さなければいけないな」
グラセ
杖を掲げて、突き下ろす。
スティブナイト
「最初から、それ以外の選択肢なんてなかっただろ?」
グラセ
結晶が砕けて。結晶を破って、白く濁った棘が現れる。
グラセ
心の疵は心の疵を砕いて、スティブナイトの足元を崩す。
スティブナイト
体勢を崩されたスティブナイトに、その棘が突き刺さる。
スティブナイト
「痛いな」
スティブナイト
「でも、痛いだけだ」
スティブナイト
「なあ。さっき、黒結晶で傷をつけたらどうなるか少しでも分かっただろ?」
GM
先程までスティブナイトが背を預けていた巨大な結晶が、何かを映す。
GM
それは、ここではないどこかの光景。
スティブナイト
「あれに身体を貫かれたら、どうなると思う?」
GM
そこに映っていたのは、ここいは居ない二人の仲間の姿。
GM
そして、そのうちの一人。
GM
ナナの胴体が、巨大な黒結晶に貫かれている瞬間。
スティブナイト
「想像力を働かせてみなよ」
スティブナイト
「──良い想像が、できると良いな」
スティブナイト
GM
スティブナイト
*お茶会R1 スティブナイト
スティブナイト
*ナナの「裁判中毒」 を抉る。
GM
*1日目 終了
1Rグラセ 舞台裏
GM
導かれるままに影を追って、しかしたどり着いた場所には何もない。
ナナ
”今”のあたしの姿をしている。
それはたまたま、偶然似ているだけかもしれない。
GM
人影も、スティブナイトも、「自分のような何か」──あるいは「もう一つの自分」──も、そこにはない。
ナナ
それでも、もしかしてあたしと同じような、あたしのような存在が。
メアリ
森の中を彷徨う。
メアリ
人影にはもとより興味はない。
メアリ
追うような人影などない。
メアリ
どうせあれ──この森の救世主は影など見せやしないだろう。
ナナ
何かに囚われるように森の中を追いかけた先は、森。
ナナ
しかしどこにもその姿はなく、自分の影すらわからない結晶の森の中にたたずんている。
ナナ
「…………っ」
ナナ
急に一人で勝手に動き回ってしまったかもしれないと足を止める。
メアリ
ナナの後ろにいる。
メアリ
「お出かけでしょうか」
ナナ
「ミギャ!!」
メアリ
「幽霊の正体見たり……」
メアリ
「私ですけど~~?(圧)」
メアリ
「単体行動は控えるように」
ナナ
「メアリ幽霊じゃないじゃん」
ナナ
単独行動を諫められて、バツが悪そうにメアリをゆさゆさと揺らす
メアリ
「幽霊になるかもしれませんよお~~」
メアリ
「そうやってえ~~~~~」
メアリ
「単体行動するとお~~~」
メアリ
揺さぶられている。
メアリ
「追いかける時にうっかりと」
メアリ
「誰がそうなってもおかしくはない」
ナナ
「う……」
メアリ
「かも~~~!」
ナナ
メアリに真面目に説教されている。
メアリ
「でも私たちつよいですからね ワハハ」
ナナ
かと思えばこれだ。
メアリ
「で、何を追いかけてここまで?」
ナナ
「えっ……」
メアリ
「何を追いかけてここまで?」
ナナ
「あの、……あたし」
ナナ
「あたしとそっくりの」
ナナ
「後ろ姿」
メアリ
「何かご用事が?」
ナナ
「…………」
メアリ
「何かご用事が?」
メアリ
畳みかけるように繰り返す言葉。
ナナ
確かに、追いついてどうするつもりだったのか。
何の用事があったのか。
ここは敵地のど真ん中なのに?
ナナ
「…………や……」
メアリ
「ふむ。反省はしているようで?」
メアリ
「やりたいことと、それに伴うリスク」
メアリ
「ちゃんと考えられるようになるとよりいいですね」
ナナ
「はぁい」
ナナ
メアリの言うことは正しい。
ここは敵地の真ん中で、救世主ははぐれないでなるべく固まっていた方がいい。
ナナ
それは、どんな場所でも通じることだ。
メアリ
「あなたが死のうと別にまあ、どうでもいいのですけど」
ナナ
「もう勝手にどっかいったりしないから」
メアリ
「頭数が減ると困るのですよ、今は」
メアリ
「はい」
メアリ
「そのようにしてくださいね」
メアリ
「で、話を戻してもいいですか?」
メアリ
「“あなたは何を探している”?」
ナナ
「えっ?」
メアリ
「自分がここにいる以上、先に見た影は幻に違いないのに」
ナナ
お話は終わったはずじゃ。あたしが怒られて、反省して。それでおしまい。
ちがうの?
メアリ
「どうして追いかけたのかと問うています」
メアリ
指を二本立てる。
メアリ
「ひとつ、何となく追いかけてしまった。
これはまあ、野生動物の本能のようなものなのでよろしいでしょう」
ナナ
口から応答を出力するよりも、メアリの踏み込みに言葉が追いつかない。
メアリ
「──ふたつ、“自分を探す明確な理由がある”。
理由は聞きません。ただ、あなたには何らかの事情があり、ここを突かれると不味いという学びを得られる」
メアリ
「どちらでしょう?」
ナナ
言葉につまる。開閉する口からは何も生み出されない。
ナナ
「なん、と……う……」
メアリ
「戦力としてあなたを喪いたくないという気持ちからです」
メアリ
「責めているわけではない。事実の確認です」
ナナ
頭のはしではそうだとわかっていたことを。
あたしのなかで求めていたちいさな疵の、さらに端っこにあるようなところが気になって。
ナナ
そんなことないのに追いかけてしまった。
期待しているわけでも、見つけたからって何になるわけでもないのに。
ナナ
「りょう、ほう。両方……」
ナナ
「あたしだって、そんなのわかってるよ」
ナナ
「この森の中なんだからそんなわけないって」
メアリ
「理解しているなら構わないですよ」
メアリ
「今回は何も無くて良かった」
メアリ
「戻りましょう、と言っても帰り道がなかなか……」
メアリ
「………」
メアリ
隠し持っていた目玉を瓶から取り出す。
ナナ
追いかけられて嬉しかったような惨めだったような、よくわからないぐちゃぐちゃとした気持ちを抱えながら。
ナナ
「あ、メアリの……」
メアリ
ぽん、と宙に放れば空高く昇って見えなくなる。
ナナ
コレクションだ。見せてもらったことがある。
メアリ
「これで“視野を広げましょう”。」
メアリ
「肉眼で追うよりはマシ、程度のものですが」
ナナ
「よく見える?」
メアリ
「上空からならグラセ様もそのうち見つかりましょう」
メアリ
「さて……私の目玉ではないもので」
ナナ
「じゃあ、どっちに行ったらいいか教えて」
ナナ
そう言って勝手にメアリの手を取る。
メアリ
「もうしばらく時間がかかる」
メアリ
「お散歩でもしましょう」
ナナ
「はぁい!」
メアリ
「ナナの手は冷たいですね」
ナナ
「ここあんまりあたたかくないからね。しばらく握ってたらメアリの手で温かくなると思うよ」
メアリ
「おやおや、温もりを奪われている」
メアリ
愉快そうに笑う。
ナナ
「温度が同じになれば大丈夫だよ」
ナナ
「返してあげられるのはメアリのだった温度だけど」
メアリ
誰かと過ごすということは、多かれ少なかれ何かを捧げ、奪われ奪うものではある。
メアリ
手を繋ごう、を拒否しなかったということはそれを了承したということ。
メアリ
「奪っておいて返品とは」
メアリ
冗談めかした返答。
ナナ
この世界に来るまで、望まれたことを与えることもできず、誰にもとられることのなかった手。
ナナ
その手が否定されずに繋がることの喜びを、この世界でのみ知る。
ナナ
言葉になっていなくとも、その選択が何かを生み出す。
ナナ
「握り返してもあげられるよ!」
メアリ
「はいはい」
メアリ
繋いだ手は振り払われることはなく。
メアリ
それが同じ温度になって暫く。
メアリ
探し人の姿を捉えた目玉を懐にしまって、
メアリ
彼女と再び合流することになるのだろう。
GM
手をつないで、横に並んで、歩く。
GM
それがグラセを見つかるまで続く前に。
GM
ナナの動きが止まって、メアリの手が僅かに引っ張られる。
ナナ
「…………」
メアリ
「何……?」
GM
ナナは動く事ができない。
その体を縫い留めるように、地面から生えた巨大な黒結晶が胴体の中心を貫いていた。
メアリ
『戦力としてあなたを喪いたくないという気持ちからです』
メアリ
先に吐いた言葉が頭を過る。
ナナ
足が止まっている。
メアリの言葉がきこえる。
メアリ
これをどうにか出来る?
ナナ
あたしの足が止まったから、メアリの足が止まったんだ。
ナナ
メアリが何か言ってる。
メアリ
これを、砕いて。
メアリ
今更間に合う?
ナナ
大きな衝撃が襲ってくるわけでもない。
大げさに血が噴き出すわけでもない。
ナナ
ただ、二人で歩くことはできないといわんばかりに、黒い結晶が胴体を縫い止めている。
GM
黒結晶は、心を突き刺す。
GM
メアリの言葉は届かない。
繋いだ手から滲む体温も感じない。
GM
隣に誰が居たとしても。
GM
ナナの心はただ一人、暗く冷たい空間に突き落とされていた。
GM
*二日目 開始
GM
黒結晶は、森のどこにでもある。
GM
土の上からも、転がる石塊からも、枯れ木の枝の上にも。
GM
二人並んで歩いていればどこかには死角があり、その死角にも、黒結晶はあった。
GM
そしてそこから大きく長く伸び、杭のようになったものが
GM
今、メアリと手をつなぎ歩いていた、ナナの胸を貫いている。
ナナ
警戒をしていなかったわけではない。
でもいま、あたしの胸には黒い結晶が生えている。
ナナ
息が詰まる。声が出ない。
本当はそんなことと関係なくしゃべれるけど、予想外の出来事に体が追いついていない。
メアリ
莫迦のように見ている。
ナナ
メアリと繋がっていない方の手を結晶にあてて。
片手間にも見える動きで体から抜こうと。
ナナ
当然、抜けるものではない。
メアリ
『握り返してもあげられるよ!』と、握られていた手を見ている。
メアリ
その手はひどく遠い。
GM
そして、ナナの存在もその場から遠のいていく。
GM
意識は今肉体のある場所から離れ。
GM
深く、暗い、底の方へと
GM
墜ちていく。
ナナ
体が思うように動かない。
何もない真っ暗な中へ放り出されたような感覚。
ナナ
忘れられない。
あの。
嫌な。
感覚。
ナナ
意識だけが落ちているはずなのに、風を切る音が聞こえる。
ナナ
重力に引っ張られる加速と遠ざかる小さな光が。
見えた気がした。
GM
断絶。
GM
どこまでも、どこまでも、どこまでも墜ちていく。
GM
それは長かったような気がする、それは遠かったような気がする。
GM
ただ誰かの心配そうな顔も、声も、繋いだ手の感触も届かないほど深く。
GM
そして孤独な闇へ、ナナは落下し
GM
そして衝撃もなく、着地する。
GM
何も見えない。何もわからない。ただ──
GM
誰かがいる。
スティブナイト
「よお」
ナナ
「うわっ」
ナナ
肉体が落ちたわけではないはずなのに、体に残る落下の感触と浮遊感。
GM
今はそれがない。地に足がついているのも感じる。
だけど身体には傷一つない。
GM
あれが物理的な落下だったのであれば、あり得ない。
GM
そこにある結果が、この空間がどんな場所なのかを示している。
ナナ
「………」
ナナ
こういうことをしてくる相手が初めてというわけではない。
ナナ
よくわからない攻撃をしてくるのは、亡者でも救世主でもたくさんいた。
スティブナイト
「殴りかかってくるような、無駄な事をされなくて安心したよ」
ナナ
「だって最初にやったし」
ナナ
「ねぇこんなのつまんないからもっとちゃんと戦ってよ」
スティブナイト
「面倒臭い」
スティブナイト
「それに、必要のないことはしない」
ナナ
「これが必要なこと?」
ナナ
真っ暗な闇に、あたしとこいつだけ。
スティブナイト
「手間を省くためには、必要なことだけど」
スティブナイト
「俺は、何もしない」
スティブナイト
音もなく、スティブナイトの足元に黒結晶の塊が生成されると──
スティブナイト
黒い人影は、そこに座り込んだ。
スティブナイト
「じゃ、頑張れ」
GM
スティブナイトはそこから動く様子を見せない。
GM
だが生成された黒結晶が僅かに放った暗い輝きが、少しだけ周囲の様子を照らした。
GM
床のリノリウム、機会制御された金属扉、一定間隔で配置されていた非常用アラーム。
GM
”ナナ”にとって、見覚えのある光景。
ナナ
無機質な壁。
やけに明るく白かった照明は消え、結晶のぼんやりとした暗い灯りで照らされている。
スティブナイト
「出口の場所なら知ってるんだろう?」
スティブナイト
「お前がどこに行こうが、引き止めやしないさ」
ナナ
出口。
出口の場所。
ナナ
「し、知らない。あたしここから出たことないし」
ナナ
出たことは、ない。
自分の足で歩いて出たことなんてない。
GM
そう、”人が使う出口”の場所なんて知らない。
GM
だけど、”そうでないものにとっての出口”ならば。
ナナ
脳裏によぎる。
いや、最初から知っている。わかっている。
ナナ
あの場所からの出口で。
”この世界”への入口だったところ。
スティブナイト
「お前はどうやってここから出た?」
スティブナイト
「憶えてるんだろ」
ナナ
「……知らない。覚えてない。いつの間にかここにいたんだもん」
ナナ
嘘。
ナナ
「……あたしは役に立つから、あんなところ使わない」
ナナ
体が落下する感覚を。
風を切って落ちる音を。
憶えている。
スティブナイト
「知らないなら、ここからは出られない」
スティブナイト
「もう元の場所には戻れない」
スティブナイト
「だけどここは、お前を閉じ込めるための空間じゃないんだ」
スティブナイト
「だから、必ず出口はあるんだよ」
ナナ
「…………」
ナナ
こんなやつの話なんてまじめに受け止めてなんていられない。
見知った床を、壁に手をつきながら歩き出す。
ナナ
じんわりと照らし出された床と壁が永遠に続きそうな闇の向こうに続いている。
ナナ
部屋から出る時は何かの試験か実験をするときだけ。
ナナ
はじめのうちは毎日のように部屋の外に連れ出されていたのに。
やがて出入りにつきそう人も減り。試験や実験の人数も減り。
ナナ
そうして、今度は部屋を出る機会も減り。
ナナ
『不可』

        『実用未満』

 『期待値を下回る結果』
ナナ
『対費用効果が……』
    『予算の無駄遣いだよ』
  『使えない』
ナナ
『失敗作』
スティブナイト
そうして壁をなぞって歩くお前の手が、硬質な鉄のプレートに触れる。
スティブナイト
『廃棄処分集積場』と刻印されたそれは、今お前が立つ場所の意味を示す。
ナナ
体が強張るのを感じる。
ナナ
何なのかわからない、漠然とした恐怖と不安が全身からあふれ出す。
ナナ
なぜかはっきりと見える『廃棄処分集積場』の文字列。
ナナ
「……はい、き」
スティブナイト
お前の目の前には大きな穴がある。
スティブナイト
”出口の場所なら知ってるんだろう?”
スティブナイト
先程伝えられた言葉が、頭の中を反響する。
ナナ
違う。違う。ちがう!
ここはそんな場所じゃなくて。
ナナ
怖い。
ナナ
人間でいうところの”本能”のように、そんなもの存在しないはずなのに。
”出口”に背を向け、来た道を引き返す。
ナナ
 
ナナ
壁を伝って1歩2歩、と踏み出した。
ナナ
その手を。
ナナ
何かが掴む。
ナナ
何かと手を繋いでいる。
ナナ
「……いや」
ナナ
繋がれた手はゆっくりとあたしをひっぱっていく。
ナナ
やだ!はなして!
ナナ
声も出ない。
ナナ
手にひかれるまま、足が進む。
ナナ
あたしはそんなところ行きたくない!
ナナ
『廃棄処分集積場』の扉が開く。
ナナ
足は止まらない。ただぼんやりとしたまま手に引かれて。
ナナ
目の前には真っ暗な穴が広がっている。
ナナ
深く、暗く、いらないものの、失敗作の、行きつく先が広がっている。
ナナ
嫌だ!やだやだやだ!私こんなとこ行きたくない!
怖いよどうなるの教えてよ何をするの。
ナナ
ナナ
手をひかれる感覚がなくなる。手と手をつなぐ感覚だけがある。
ナナ
そう、だって、こんなところ――
ナナ
そんなことを考えた瞬間に。
ナナ
穴にぐいと引っ張られた。
ナナ
あっ
スティブナイト
お前の足が宙に浮く。
スティブナイト
ゆっくりとした速度で。優しい手付きで。まるで友達のような顔をして。
スティブナイト
お前は世界から引きちぎられた。
スティブナイト
そしてお前は墜ちていく。
スティブナイト
風景は変わり、乾き、光に満ちて、荒れ果てた。
スティブナイト
この世界で最初に見た荒野を墜ちていく中で、声が聞こえる。
スティブナイト
「お前はこんな場所に来たかったのか?」
ナナ
「…………」
ナナ
わからない。
だって外の世界なんて知らないもん。
スティブナイト
「ここで何が行われているのか知っているのか?」
ナナ
知らない。
だって私は求められたことができなかったもん。
スティブナイト
「殺し合いだよ。最後の一人になるまでの奪い合いだ」
ナナ
殺し合い。
私がするはずだったこと。
ナナ
でも私はそれができないから。
ナナ
棄てられた。
スティブナイト
「お前はコインを持っている」
スティブナイト
「そして、最終的に必要になるのはそのコインだけだ」
スティブナイト
「最後の一人に近づけば、近づくほどに、”お前自身”は不要なものになっていく」
スティブナイト
「その手は」
スティブナイト
「お前をどこに連れて行くと思う?」
ナナ
わからない。
どこに連れていかれるの?
GM
墜ちていく荒野の下で、誰かが戦っているのが見える。
GM
無数の氷と、無数のナイフが激しくぶつかり合っている。
GM
地を裂き山を削るような激しい戦いだ。だけど、そこに3人目の姿は無い。
GM
代わりに、視界の端に、打ち捨てられたものが見える。
GM
鉄くず、ぼろきれ、瓦礫が積み重なった山の中、いらないものの、失敗作の、行きつく先に。
GM
それは錆びた人影。
GM
*ナナの「裁判中毒」を抉る (再宣言)
メアリ
*横槍
メアリ
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 愛
メアリ
2d6+3=>7 判定(+愛) (2D6+3>=7) > 7[6,1]+3 > 10 > 成功
メアリ
1d6 (1D6) > 4
スティブナイト
*ティーセットを使用
スティブナイト
*子山羊皮の手袋を使用
[ スティブナイト ] ティーセット : 2 → 1
[ スティブナイト ] 子山羊皮の手袋 : 2 → 1
スティブナイト
2d6+5+2+2-4=>7 判定(+猟奇)+補正値 (2D6+5+2+2-4>=7) > 7[4,3]+5+2+2-4 > 12 > 成功
[ メアリ ] HP : 21 → 20
GM
そして全ては森に戻る。
GM
何も変わっていない。
時間だって数秒も経っていない。
GM
胸には黒結晶が突き刺さり。
GM
手は繋がれたまま。
GM
そして──
[ ナナ ] 裁判中毒 : 0 → -1
[ ナナ ] 絶望侵食 : 0 → 1
GM
*お茶会R1 ナナ
GM
*ナナは『絶望侵蝕』状態となったため、PKが行動の対象と内容、使用する能力値、使用アイテムを指定する。(クエストには挑戦できる)
スティブナイト
*指定:メアリの心の疵「師の教え」を猟奇で抉る。ティーセットを使用。
ナナ
*クエストNo2に挑戦します。
ナナ
*横槍ありますか?
グラセ
*横槍します。
グラセ
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 猟奇
グラセ
2d6+4=>7 判定(+猟奇) (2D6+4>=7) > 11[5,6]+4 > 15 > 成功
[ グラセ ] HP : 19 → 18
グラセ
1d6 (1D6) > 5
ナナ
*ティーセットを使用、猟奇で判定します。
[ ナナ ] ティーセット : 1 → 0
ナナ
2d6+4+2-5>=7 (2D6+4+2-5>=7) > 4[2,2]+4+2-5 > 5 > 失敗
メアリ
カランと硬質な音が響く。
メアリ
ひとつ、ふたつと銀の煌めくは黒い結晶を砕くことなく地に落ちる。
メアリ
どれもが届かない。
メアリ
なにひとつ響かない。
メアリ
何の意味もない抵抗。
メアリ
どうしてこんなことをしているのだろう。
メアリ
切り捨てればいいじゃないか。
メアリ
もう終わりだと、助からないと見捨てればいいじゃないか。
メアリ
負傷した者が一体何の数になる。
メアリ
この先どうなるかすらわからない彼女をここで拾い上げたところで。
メアリ
カラ、カラと音が鳴る。
メアリ
無駄なことだと分かっているのに、この手は止まりはしなかった。
メアリ
ただ、無意味な音を鳴らすだけ。
メアリ
──肩で、息をする。
ナナ
びくり、と。
体が大きく震えた。
ナナ
ナナの体は人間のそれとは違う。
液体金属が人の形をかたどった兵器。
ナナ
腕が裂けても。脚を落とされても。
なんてことはない。
それは胸を貫かれても、同じだった。
ナナ
視線をあげる。
ナナ
「……メアリ、なにやってるの?」
メアリ
「さて」
ナナ
胸が貫かれたまま問いかける。
ナナ
添えていた手に力を込めると、貫いていた結晶はあっさりと折れた。
メアリ
やりたいことと、それに伴うリスク。それを偉そうに説うた女は転がった銀のナイフを踏み砕く。
ナナ
胸に空いた穴には黒い結晶がぎらぎらとわずかな光を反射させていて。
メアリ
「勝手に歩いていくからそうなると申し上げたはず」
ナナ
呑み込まれるように、何もなかったかのように疵が塞がる。
メアリ
それを、見つめる。
メアリ
いつもと変わらない表情だ。
メアリ
「御気分はいかがですか?」
メアリ
「あなたのお散歩の果てで拾った成果は?」
ナナ
「え~?」
メアリ
彼女の散歩の結果。
メアリ
私の無意味な抵抗の結果。
ナナ
「最悪」
ナナ
見たことのない表情で笑う。
ナナ
森の暗さか、その髪は彩を欠きくすんでいる。
メアリ
笑いたいのはこちらの方。
メアリ
偉そうな言葉を吐いて、結局はこうなった。
メアリ
「どうして欲しい?」
メアリ
「何をして欲しい?」
メアリ
「これはアンケート。ご希望に添えるかはさておき」
メアリ
ゆるりと人差し指を振る。
ナナ
「何言ってるの?」
メアリ
「言葉も分からなくなりましたか?」
ナナ
「メアリっておっかし~」
ナナ
「あたしが森の中勝手にあるき回って怪我しただけでしょ?」
メアリ
「“面倒くさく”なりましたか?と聞いています」
メアリ
先に彼女の体に消えた結晶。
メアリ
あれがもし、あの黒い救世主の力の一部だとして、それを取り込んだとして。
メアリ
“同調”するのではないか、の憶測の答えを探している。
ナナ
「うーんとね、」
ナナ
「手、はなしていい?」
ナナ
「怖いから」
メアリ
首を傾げる。
メアリ
「おかしなことを仰る」
メアリ
“自由な両手”を振る。
メアリ
彼女の片手は、
メアリ
──“黒い結晶”を握っている。
メアリ
私の手の代わりに。
メアリ
それはそうだろう。届かなかったのだ。
メアリ
先の不意打ちに対応できず、伸ばした手は空を切ったのだから。
ナナ
「あれっ!?ほんとだぁ~!」
ナナ
そうやって驚いて見せて、握りしめていた結晶をその辺に捨てる。
ナナ
「てっきりメアリが繋いでくれてたと思ってたのに」
メアリ
「残念ながらそうではなかった」
ナナ
「違うんだ~」
メアリ
「どうしてでしょうね」
ナナ
「どうして?」
ナナ
「ねぇなんで?」
メアリ
「私が至らなかったから、等と殊勝なことを云っておきましょう」
ナナ
「ふぅーん……メアリが悪いんだ?あたしが森を勝手に歩き回ったのに?」
ナナ
「じゃあ手を離して、何をしてたの?」
ナナ
「刺さってるあたしを見てた?」
メアリ
 
メアリ
「御想像にお任せしましょう」
メアリ
「私があなたのために必死に手を伸ばすとお思いで?」
メアリ
「私があなたのために徒労と理解していながら──何かをすると、お思いで?」
メアリ
息を吐くように微かに笑う。
ナナ
「ううん。だって、何もしてくれなかったんでしょ?」
メアリ
「そうでしょうね」
メアリ
見えない方がいい。知られない方がいい。
メアリ
弱点なんてものは、持つべきではない。
ナナ
「ねっ、助けるわけでも見捨てるわけでもなくって」
ナナ
「なにもしないで見てたんでしょ~?」
メアリ
「あなたが思うならそうですね」
メアリ
「相も変わらず、うるさい子」
ナナ
「ほらやっぱり、メアリっておかしい。変なの」
メアリ
「この世界におかしくない者などいませんよ」
メアリ
「皆多かれ少なかれ狂っている」
メアリ
手を伸ばそうか。
メアリ
いいや、そんなことを私は考えない。
ナナ
「救世主はみなすべからく狂っている。だっけ?」
メアリ
「そう」
ナナ
「そうだね、そういうことにしておこっか。メアリは狂ってるから、あたしのことをただじっと見てたんだね」
メアリ
歩き出す。
メアリ
「くだらない会話は終わりです」
メアリ
「足を動かす」
ナナ
 
ナナ
 
ナナ
背を向けて歩き始めたメアリの背に
ナナ
手を伸ばそうとして、やめた。
ナナ
「くだらなーい。くだらないね」
メアリ
「ええ、その通り」
ナナ
「全部くだらない?」
メアリ
「あなたがそう思うなら」
メアリ
足音は揃わない。
メアリ
手は伸ばされず、繋がれることはない。
メアリ
ただ、それだけの話だった。
GM
まっすぐ歩いて、振り返らない。
GM
この森で、そんな歩き方をしているヤツなんて格好の的だ。
GM
黒結晶の1つが伸び、メアリの背中を狙う。
それは”本人からは”見えない位置。
ナナ
「くーだらない。くーだらない」
ナナ
小さくそうつぶやきながらメアリの背後から伸びる結晶を――
ナナ
見ている。
ナナ
ただ見ている。
ナナ
何もしないで、見ているだけ。
1Rナナ裏
グラセ
ナナの胴体が、黒結晶に貫かれている。
GM
メアリが、その黒結晶を必死に叩いている。
スティブナイト
それを見せられているし、それを見せている。
グラセ
そんな鏡の向こうを見て。
グラセ
見ても尚。
グラセ
女は、血相を変えるでもなく。
グラセ
その光景を見ている。
グラセ
氷の槍に、確りと、濡れたように黒い鼠を捉えたまま。
グラセ
「……」
スティブナイト
「どうなると思う?」
スティブナイト
鼠が静かに問う。
グラセ
「……彼奴は、」
グラセ
「ナナは。柔軟な奴だからな」
グラセ
良くも悪くも、そういう評価を抱いている。
スティブナイト
「お陰で貫きやすかったね」
スティブナイト
「──」
画面の中でナナを貫いていた結晶が折られ、同じタイミングで僅かに眉が動いた。
グラセ
スティブナイトの形をしたそれに、ずぶりと、棘が深く沈む。
スティブナイト
「痛いんだけど」
グラセ
「……触れ難いものに触れた時、
 最も侵される可能性が高いとするならば」
グラセ
「それは、ナナだったかもしれないな」
グラセ
批難には一瞥もくれず、応じない。
グラセ
仲間の、日頃と比べれば異様なやりとりを見ても。
スティブナイトに激高するでなく。
グラセ
ただ、増して冷えた温度だけが黒結晶に伝播していく。
スティブナイト
此方も、棘に塗れても苦情を言う他には動かないまま。
スティブナイト
「侵すとか、人聞きが悪いな」
スティブナイト
「少しものが良く見えるようになるだけさ」
グラセ
ぱきん。
グラセ
足元の結晶がはぜる音。
グラセ
一歩、スティブナイトに踏み出した音。
スティブナイト
煩わしげに眉をしかめる。
グラセ
伴って、煌々と結晶が散る。
グラセ
結晶の破片は、光を反射して。
グラセ
ふたりぶんの影を映しとる。
グラセ
細やかな欠片は、巧妙に、穴の隙間から入り込んで。
グラセ
ともすれば眼差しと、心の臓に突き刺さる。
グラセ
「見え過ぎることは、或いは不幸だろう」
グラセ
「考えて、妄想がすぎることも、或いは不幸といえる」
スティブナイト
「じゃあ目を閉じてれば幸せになれるって?」
スティブナイト
「試しに、閉じたままこの森を歩いてみなよ」
スティブナイト
「5秒くらいで幸せになれるかもね」
グラセ
「或いは、そうだ」
グラセ
“しあわせ”を指して云う。
グラセ
「如何に愚かしく思えても、そういう風にできている」
スティブナイト
「意味のない言葉だなって感じ」
スティブナイト
切り捨て、吐き棄て、嘲笑う。
スティブナイト
「お前が眼を閉じていても、開けていても、何も変わらない」
スティブナイト
「眼を開けても幸せにはならない。眼を閉じても幸せにはならない」
スティブナイト
「瞼の開閉で世界は変わらない」
スティブナイト
「お前がどう宣ったところで……ほら」
スティブナイト
「そういう風にできてるだろ?」
黒結晶に映る映像を指差す。
グラセ
「……」
スティブナイト
「俺がやってる事なんて、むしろ親切だと受け取って欲しいね」
スティブナイト
「足元をよく見えるようにしてやれば、ほら」
スティブナイト
「そもそも歩く必要なんてないんだって、気づけるだろ?」
スティブナイト
「それとも」
スティブナイト
「もう少し足してやったほうがいいか?」
グラセ
言葉に導かれ、眼差しを持ち上げる。
グラセ
虚像の向こうにある、メアリの背中。
スティブナイト
その映像の中で、スティブナイトの言葉に呼応するように黒結晶が伸びる。
スティブナイト
後ろを振り向かず歩く者に向け、”よく見えるようになった奴”を増やそうと。
グラセ
「仮に、だ」
グラセ
「底のない泥濘に産まれ堕ちたと理解したとして」
グラセ
「故に、先を行く必要がないと知ったとして」
グラセ
「それは幸せではあるまいよ」
グラセ
「お前の語る絶望とは、詰り。そういうことだとして」
グラセ
「……。極論」
グラセ
「幸せは、盲目であること」
グラセ
「都合良く盲目である者が、幸せに近くあるのだとわたくしは思う」
グラセ
「然るに」
グラセ
「“能く”見える者が、代わりに見通せば良いだけのこと」
グラセ
手を伸ばす。
グラセ
その手は、向うには届かず。
グラセ
代わりに、辺りの塵を、空気を凍らせる。
グラセ
澄み渡る。
グラセ
スティブナイトを凍結させんとするほどの温度の低下は、
ともすれば、周囲にさえ影響を及ぼす。
グラセ
――。
グラセ
脊椎にまで染み入るような、悪寒にも似た寒気。
グラセ
木立の向こうから、急激に、二人の立つ場所へ流れ込む温度。
グラセ
そうしてそれは、微かばかりであるにせよ。黒結晶を鈍らせる。
グラセ
ぱきりと、凍結した氷の割れる音が鳴る。
メアリ
氷の砕ける微かな音。
メアリ
何かの残滓が指を掠める。
メアリ
それの纏う冷気は決して不快な感覚のない、
メアリ
刺すような刺々しさのない、どこか懐かしい雰囲気を纏っている。
メアリ
それもそうだ。
メアリ
いつも一緒に居て、これに守られてきた。
メアリ
だからそれに振り返ろうともしない。
メアリ
また、“そうだったのだろう”。それだけ。
メアリ
それを信頼と呼ぶのだろうが、それを語ったことはない。
ナナ
伸びていた結晶が、満たされた冷気で砕ける。
ナナ
誰が見ているでもないはずなのに、わぁとでも声の出そうな顔をして。
ナナ
砕けた結晶をじっと見つめている。
ナナ
ただじっと、見ている。
スティブナイト
氷の砕ける音と共に、伸びていた黒結晶も砕け散った。
スティブナイト
一度は、そうなった。
スティブナイト
一度だけだ。
スティブナイト
この森は黒結晶に満ち満ちている。
スティブナイト
2つ、3つと伸ばすのはそう難しい事じゃない。
スティブナイト
だけど、お前は振り返らないんだろう?
スティブナイト
その感情を、何て呼ぶんだっけ?
スティブナイト
黒結晶が伸び、冷気で鈍り……しかし今度は止まりはせず、その背を貫く。
スティブナイト
お前は見もしなかった。
スティブナイト
お前は見ているだけだった。
ナナ
再び伸び始めた結晶を前に、右手の得物を握る。
ナナ
「………」
ナナ
その手を振り上げもしないまま。
ナナ
その黒い結晶がメアリにたどり着くのを見ていた。
スティブナイト
2つ、3つと、続けて黒結晶が伸びて
スティブナイト
その全てが、メアリに向けて冷たいものを流し込む。
スティブナイト
それは不快を煮詰めたような冷気。
スティブナイト
心をかき回し、濁し、沈めていくもの。
スティブナイト
1Rナナ裏-2
スティブナイト
「うわ寒」
グラセ
「不幸であるものが、多く在る必要はあるまいよ」
スティブナイト
「話が噛み合わないと思ったら、そこか」
スティブナイト
「多いも少ないもない。この世界に、不幸じゃない奴なんて居ないんだよ」
スティブナイト
「何も見もしない奴の頭が幸せ、って部分だけは同意するけど」
スティブナイト
「そういう奴がどういう奴か分かってる?」
グラセ
「そうだな」
スティブナイト
「幸せでいて、何も見ようとしない。視界が狭くて、不注意で、迂闊」
スティブナイト
「そういうのを、弱さって言うんだよ」
グラセ
肯定はなく。
グラセ
そしてそこに、否定もない。
スティブナイト
「暑いのも嫌だけど、寒いのも嫌いだ」
スティブナイト
ばきりと音を立てて、身体に刺さっていた棘が砕ける。
スティブナイト
そこら中で黒結晶がうごめいて、氷を砕いていく。
グラセ
砕かれれば砕ける。それ以上に戒める力はない。
スティブナイト
眼の前に居るのはこの森一体を黒く覆ってしまうような救世主。
スティブナイト
救世主の力が影響を及ぼす範囲の広さは、持つ力の大きさに直結する。
スティブナイト
強さの前に、弱さは蹂躙される。
グラセ
そうだな。
グラセ
肯定はなく。
そしてそこに、否定もない。
スティブナイト
*お茶会R1 スティブナイト 2シーン目
スティブナイト
*メアリの「師の教え」を抉る。
GM
メアリの意識は深い闇へと墜ちていく。
GM
長い浮遊感の中で、空間のそこかしこから声が聞こえる。
聞き取れないような呻き、囁き、叫び。
GM
身体に纏わりつく重い泥のように不快感に満ちたそれは、心をかき回し、そこにドス黒いものを混ぜ込んでいく。
GM
そして浮遊感が無くなり、足元に地面の感触が戻った頃、それは居た。
スティブナイト
「よお」
メアリ
一体何があったか、理解が出来なかった。
メアリ
あたりを見渡す。
メアリ
「ここは一体……?」
スティブナイト
「さあ?」
スティブナイト
「俺は知らない。だが、お前の知ってるどこかだよ」
メアリ
「さあ!?」
メアリ
「………」
GM
一寸先も見えない暗闇は、気づけばうっすらと辺りが見えるくらいに明るんでいる。
メアリ
鬱蒼とした森が広がる。
メアリ
人の気配はあまりない、暗い森。
メアリ
影がゆらり、ゆらりと木々の向こうを通り過ぎて──こちらに目をくれもしない。
メアリ
人々はこちらを見て何事かを囁いている。
メアリ
『気味の悪い子だ』『この前はまた動物を殺したらしい』、そういう言葉だけがかすかに聞こえる。
スティブナイト
「何ここ。お前の故郷?」
スティブナイト
「ずいぶん過ごしやすそうな場所じゃん」
メアリ
見回して、過去の森だと理解した途端──表情が元に戻る。
メアリ
「ああ、懐かしい」
メアリ
「そうですね。こんなところに連れてきて一体何をするつもりなんでしょうね」
スティブナイト
「別に、何も」
メアリ
視線の先に、この女によく似た少女が蹲っている。
スティブナイト
「俺がお前に何かする必要はない」
メアリ
少女は地面を見ている。
スティブナイト
「俺はお前を唆さないし、嘘を吹き込みもしないし、そもそも何も伝える必要もない」
スティブナイト
「絶望は、与えるまでもなくそこにあるものだからだ」
メアリ
「つまり私の思い出話をしに来たってことですか?わざわざこうして幻を見せてまで……」
スティブナイト
「探せばどこかには出口もあるさ」
スティブナイト
「もう少し見て周りなよ。久しぶりの故郷だろ?」
メアリ
「あれは、そうですね」
メアリ
「私の師が死んだ朝の出来事でしょうね」
メアリ
「ああして俯いていたこともあるんですよ」
メアリ
懐かしむような声音。
メアリ
「あれはあなたのいう絶望だったのかもしれません」
スティブナイト
「今はもう俯いてないって?」
スティブナイト
「辛いことはもう乗り越えて、今はもう平気です。過去を振り返らず、上を向いて生きていけてる?」
スティブナイト
「とても、そんな奴の顔には見えないな」
メアリ
「そうでしょうとも」
メアリ
「悔いが残っている。ずっと」
メアリ
「私の師はいつも、私に言っていました」
メアリ
「“視野を広く持ちなさい”」
メアリ
「けれど幼い私には、その意味が理解できなかった」
スティブナイト
「視野ねぇ」
メアリ
「だから視野、を辞書で引いた」
メアリ
「“目が及ぶ範囲”だと知った」
メアリ
「ひとのふたつの目では限界がある、だから目を増やせばいいと思った」
メアリ
「けれどその行為によって“視野が広く”なった感覚は得られなかった」
メアリ
「結局、師は私に何を伝えたかったのだろう、と」
メアリ
「今も分からないまま、惰性で同じ行為を続けている」
メアリ
「ずっと同じ光景の中にいる。
 分からなくて──地面を見つめているあの頃と同じ」
スティブナイト
「ふぅん」
メアリ
「ありふれた出来事でしょう」
スティブナイト
肯定もしない。否定もしない。
メアリ
肯定も否定もいらない。
スティブナイト
スティブナイトは言葉通り、何もすることがない。
メアリ
「あの頃に殺して貰えればよかったのかもしれませんね」
GM
代わりに、周囲の風景が変わった。
GM
蹲り、地面を見つめる少女が見える。それは変わらない。
GM
ただ、今はそれを”見下ろす”視点だ。
GM
視界の下、自分の口があるべき場所から、先程聞いたものと同じ音が聞こえる。
GM
『気味の悪い子だ』
メアリ
そうでしょうとも。
メアリ
でも、あなたたちは知らないんでしょう。
メアリ
私は動物たちを無差別に殺していたわけではない。
メアリ
“師匠が死んだ原因を知りたくて”体の仕組みを理解したくて。
メアリ
傷付いて死にかけた動物を探しては“そうしていた”だけであったことを。
メアリ
けれどそんなことを伝えてどうする。
メアリ
その事実は誰にも知られることはなかった。
メアリ
おそらくこの先もずっと。
GM
視界が再び変わる。
GM
目の前に少女の顔が見える。
GM
”視界の主”が何事かを言っている。
メアリ
「先生、しんでしまうんでしょう」
メアリ
少女が呟いた。
メアリ
少女の手にはナイフが握られている。
メアリ
視線が上下に揺れる。首肯。
メアリ
視線の主が頷いたのだろう。
メアリ
少女はナイフをこちらに向けた。
メアリ
──しかしそのナイフはけして、作業に使うようなナイフや所謂“なめらかに何かを切る”のに適したナイフではなかった。
メアリ
食卓に並べられているようなナイフだ。
メアリ
それを、少女の手は握っていて──
メアリ
その切っ先がこちらを向く。
メアリ
「じゃあ、先生の“視界”がほしい」
メアリ
「“視野”は広い方がいいんでしょう」
メアリ
「じゃあ、目を増やせばいい」
メアリ
視界の主は頷きも、首を振りもしない。
メアリ
だから、手を振り下ろす。
メアリ
否定をしないから。それを、拒否しないから。
GM
そこから伝わるのは光景だけではない。
GM
その”眼”から伝わる、痛み、熱、息苦しさまでも。
GM
全てがおのれのものとして伝わる。
スティブナイト
「視野は広がりそうか?」
メアリ
刺すような痛みがある。
メアリ
抉られるような不快感がある。
スティブナイト
その視界には存在しない姿から、声がかかる。
メアリ
「さあ……」
スティブナイト
「じゃあ、次だな」
メアリ
吐き捨てるように返事をして、笑う。
GM
再び視界が変わる。
メアリ
血を流す方の視界に、暗闇ではないものが映し出されている。
メアリ
いままで抉ってきた人の目だ。
メアリ
恨むようにこちらを見ている。
GM
そうでない視界には、目前に迫る刃が見える。
GM
ひとつ。ふたつ。それ以上の。
GM
視界の数と、刃の数。
メアリ
それを受けたとして、死ねるはずもない。
メアリ
ただ、痛みがあるだけだ。
メアリ
“教え”を守った先にはこれしかない。
メアリ
不出来な弟子であったから?
メアリ
言葉を正しく理解しようとしなかったから?
メアリ
「きっと、判らないままなんだと思います」
スティブナイト
「そうだろうな」
メアリ
「だって、死んでしまった人が何を考えていたかなんて……もういないのですから、その答えを聞くすべなどない」
メアリ
「最後の機会すら、私は上手く使えなかった」
メアリ
「くだらない話だ」
スティブナイト
「いいこと教えてやるよ」
スティブナイト
「死人は蘇らない」
メアリ
「だったら、きっとこの疵は痛いままです」
メアリ
「それをどうにかする気もない」
メアリ
「いいえ、自分ではどうにもできない」
メアリ
「だから疵のまま治らない」
スティブナイト
「一度初めてしまった習慣もやめられない」
スティブナイト
「悲劇のように始めて、喜劇のように繰り返すだけ」
スティブナイト
「お前はもう、どこに行けない」
スティブナイト
「なら前に進む必要なんてあるのか?」
メアリ
「さあ……」
スティブナイト
「じゃあ」
スティブナイト
「やめてしまえばいい」
スティブナイト
「そろそろ潮時だろ」
メアリ
「そうかもしれません」
スティブナイト
「俺はお前に何もしない」
スティブナイト
「だけど、道具くらいは貸してやるよ」
スティブナイト
眼の前に黒結晶が差し出される。
スティブナイト
それは刃のように鋭利なもの。
スティブナイト
「お前はそれを手に取るだけでいい」
スティブナイト
「怠惰なお前にも、それくらいはできるだろ?」
メアリ
それを見下ろす。
メアリ
いつも蓋をして、考えないで来たこと。
メアリ
振り返れば、虚しさに足を取られる。
メアリ
──黒結晶を手に取った。
スティブナイト
それは、虚しさを解決する手段ではない。
スティブナイト
だけど、終わらせる事はできる。
スティブナイト
*メアリの「師の教え」を抉る。
ナナ
*横槍をしないで見ています
グラセ
*横槍します。
グラセ
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 猟奇
グラセ
2d6+4=>7 判定(+猟奇) (2D6+4>=7) > 7[5,2]+4 > 11 > 成功
グラセ
1d6 (1D6) > 1
[ グラセ ] HP : 18 → 17
スティブナイト
猟奇で判定(宣言し忘れ)
スティブナイト
2d6+5-1=>7 判定(+猟奇)-横槍 (2D6+5-1>=7) > 11[6,5]+5-1 > 15 > 成功
[ メアリ ] 師の教え : 0 → -1
スティブナイト
黒結晶をその手に掴んだ瞬間に
GM
再び視界が変わる。
GM
先程とは違う森の中。
GM
状況は、あの闇の中に墜ちた時と何も変わらない。
GM
ただ、その手に持ったもの以外は。
GM
GM
*お茶会R1 メアリ
GM
*メアリは『絶望侵蝕』状態となったため、PKが行動の対象と内容、使用する能力値、使用アイテムを指定する。(クエストには挑戦できる
GM
*指定:ナナの心の疵「裁判中毒」を才覚で抉る。ティーセットを使用。
メアリ
*クエスト3に挑戦します
グラセ
*横槍します。
グラセ
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 愛
グラセ
2d6+0=>7 判定(+愛) (2D6+0>=7) > 8[6,2]+0 > 8 > 成功
グラセ
1d6 (1D6) > 6
[ グラセ ] HP : 17 → 16
メアリ
2d6=>7 判定(+才覚)※効果量打消し (2D6>=7) > 10[4,6] > 10 > 成功
[ ナナ ] 裁判中毒 : -1 → -2
ナナ
「………」
メアリ
手に黒結晶を持っている。
メアリ
目の前のナナを見た。
ナナ
メアリの背中に刺さった黒結晶をじっと見つめていた。
それは時間にしてもほんのわずかな時間。
ナナ
「なに?」
ナナ
「どうだった?」
メアリ
「ずっと前から思っていました」
メアリ
その問いに返事はない。
メアリ
「どうしたら、私はあなたたちの瞳を手に入れられるんだろう」
メアリ
「普通に当たればきっと──相打ちに近い状態になるでしょう、と」
ナナ
「えっまだそんな風に考えてたんだ」
メアリ
「さすがにそれはリスクが高すぎる」
ナナ
「うんうん、だからあきらめたと思ってたんだけど」
メアリ
『やりたいこととそれに伴うリスク、それを考えられるようになるといいですね』。
メアリ
ちゃんと考えています。
メアリ
「そして今日、そのチャンスが来た」
メアリ
「幸運にも」
メアリ
「たとえ目がついていても、その光景をどうにもしないなら……それに対し働きかけをしないなら」
メアリ
「そんな目要らないですよね」
メアリ
「だから、ちょうどいい」
ナナ
「えっ……」
メアリ
「それも、私の視界にしてしまいましょう」
ナナ
「だって、メアリだってそうだったじゃん!」
メアリ
「それを、あなたは見た?」
メアリ
「それを自分の目で確認した?」
メアリ
「自分でそれを、確認しようとした?」
メアリ
「本当に事実を知ろうとした?」
ナナ
「メアリだって見たくないから振り向かなかったくせに!」
メアリ
「見たくないからじゃない」
メアリ
「“信頼していた”からですよ」
メアリ
「その違いもお分かりにならない」
メアリ
その声に嘲るような色も、咎めるような気配もない。
メアリ
平坦な声だ。
メアリ
「私はずいぶん待った」
メアリ
「ええ、ずいぶん待ちましたとも」
ナナ
「……だ、だって、メアリが自分で言ったじゃん!あたしだってそれを信じたのに……」
ナナ
迫るメアリに一歩小さく後ずさる。
メアリ
「だったらそれが事実でいいでしょう」
メアリ
「あなたが“信じた”のならば」
メアリ
手に取ったナイフをくるりと回す。
メアリ
……今回はもっと、いいものがあったのだった。
メアリ
躊躇いなく踏み込み、“それ”を閃かせる。
ナナ
あたしの一歩とメアリの一歩は全然違って。
ナナ
手の届く範囲も何もかもがちがう。
ナナ
見ているものも見えているものも。
信じた相手も信じた言葉も。
メアリ
信じた?
メアリ
信じた。
メアリ
聞こえるものだけ、見えるものだけを。
メアリ
自分が助けてもらえなかった、と。
メアリ
手を伸ばしてすらもらえなかった、と。
ナナ
だって私のいる部屋はこんなに狭くって。
ナナ
見える世界なんて何にもない。
ナナ
私の前には世界なんて広がってなかったもの。
メアリ
一度、空を切る。
ナナ
尻もちをついた。
ナナ
「………やだ」
メアリ
共に過ごしてきた日々に、果たしてどれくらいの価値があったのだろう。
メアリ
“見えないもの”“言葉にはしないこと”を信じられないような、たったそれだけの日々であったなら。
メアリ
絆なんてその程度のものなのだろう、と女は考える。
メアリ
「みんないやだったでしょうね」
メアリ
「嫌だと泣き叫んだでしょうね」
ナナ
「やだやだやだ!!!それやだ!!やめて!!!」
メアリ
「でもその悲鳴に一体どのくらいの価値があり」
ナナ
漠然とした恐怖におびえる。
メアリ
「──聞き慣れた悲鳴が、果たして私の脚を止められるものか」
ナナ
子供のように手を振り回す。
メアリ
「試してみましょうか?」
メアリ
静かな声。
メアリ
ナナを諭した時と同じ声だ。
メアリ
そしてその、黒結晶を握る手は。
ナナ
「それきらい!!いらない!!あたしはそんなのいらない!!!」
メアリ
ナナとつないだはずの手だ。
ナナ
ただわめく。救世主とも兵器とも思えないような、子供じみただだのよう。
メアリ
尻もちをつくナナを押さえつける。
メアリ
手を振り上げる。
ナナ
繋いでいたはずの手を遠ざけるように腕を伸ばした。
メアリ
その手を掴んで──
メアリ
彼女の目にナイフを押し込んだ。
メアリ
迷いのない動作だ。
メアリ
掴んだ手は拘束に過ぎない。
メアリ
それ以外に何の意味も持たない。
ナナ
「あああああああああ!!!!!!!」
メアリ
悲鳴に何の感情も持てない。
ナナ
「い゛や゛ぁ!!!!やだぁ゛ぁぁぁぁぁl!!!!」
メアリ
ごり、と結晶で眼窩を抉る。
メアリ
「ナイフじゃないから切れ味が悪い」
メアリ
舌打ちした。
ナナ
メアリの行為でも、痛みでもなく。
メアリ
面倒だ。早く取り出してしまいたい。
ナナ
流れ込んでくる。
ナナ
黒い。
ナナ
何かが。
ナナ
怖い。
メアリ
そして抉った目の奥に、暗闇ではない何かが映る。
メアリ
『それを、あなたは見た?』
メアリ
視界の奥の口が呟く。
メアリ
『それを自分の目で確認した?』
メアリ
『自分でそれを、確認しようとした?』
メアリ
『本当に事実を知ろうとした?』
メアリ
呟き続けている。
メアリ
ただ、言葉が並んでいる。
メアリ
平坦な声だ。
メアリ
ナナを諭した時と同じ。
メアリ
『頭数が減ると困るのですよ、今は』
メアリ
聞いたことのある声が、聴いたことのある言葉を繰り返す。
メアリ
『みんないやだったでしょうね』
メアリ
『ナナ、あっちに川があります』
メアリ
『ナナ、また迷子ですか?』
メアリ
『お散歩でもしましょう』
メアリ
『ナナの手は冷たいですね』
メアリ
『そんな目要らないですよね』
メアリ
平坦な声が続く。
メアリ
平坦な声が続く。
メアリ
声は止まらない。
ナナ
「あああ゛あ゛あ゛っ!!!!とっでぇ゛!!!!!!ごれどってぇ゛!!!!!!」
メアリ
「いいですよ」
ナナ
”目の前”から響く声。
”眼前”から返る声。
ナナ
同じ声が耳と頭の中を渦巻く。
メアリ
結晶を引き抜いた。
ナナ
眼なんてあたしにとってはただの表面にすぎなくって。
ナナ
戦うために必要ってわけでもなくて。
ナナ
別にメアリにあげても元通りにできて。
ナナ
でも。
ナナ
いまの”それ”は。
ナナ
あたしの――
ナナ
――私の。
ナナ
「う゛う゛う゛ゥぅぅぅぅぅ……」
メアリ
“それ”を拾い上げる。
ナナ
ぐちゃぐちゃと乱れる視界と、どこか他人事のような痛みと。
メアリ
──赤い瞳だ。
ナナ
私の上のメアリの重みと。
メアリ
「目的が果たされて、よかったです」
メアリ
押さえつけていたナナを解放する。
ナナ
そんな状態でも、抉られた片目を補うように。
体が自然と形作る。
メアリ
それに構いもしない。
メアリ
だって、そうしないと“教え”を守ることが出来ない。
ナナ
「うううーーーっ!うーーーーーっ!!」
ナナ
呻く。流れ込む真っ暗な恐怖と、失った。
何かと。
ナナ
何を?
ナナ
「あ、あう、ううあっ……」
メアリ
「あら、眼の代わりに何かが詰め込まれている」
メアリ
「じゃあますますこれは要らないですね」
ナナ
ひた、と片手を当てれば、滑らかな表面ではなく。
黒い結晶が自由に天を突いている。
ナナ
「が、え゛じてっ!」
メアリ
「入るところもないのに?」
ナナ
ノイズが混じったような歪でかすれた声。
メアリ
「返して、とは収まるべきところにきちんと空白がある人の言葉ですよ」
メアリ
「ないじゃないですかあ!」
ナナ
ざあざあ。ざらざら。
メアリ
開いた距離、そして為された略奪。
メアリ
手を繋いだ時間はもう戻らない。
ナナ
「ぢがう!ごんなの゛いら゛ない゛!!」
メアリ
「何をしても、“いやだ”、“要らない”、“分からない”。」
メアリ
「駄々をこねてばかり」
メアリ
「もういいですか?まだ何か私に言いたいことがありますか?」
ナナ
「ぢがうも゛ん!ナナの゛!がえじでよぉ゛!!」
メアリ
「それはもう聞きました」
ナナ
天を突く結晶に手をかけて。
乱暴に引き抜く。
メアリ
その行為に興味はない。
メアリ
瓶に入れた瞳を見ている。
ナナ
「ほ゛らぁ!ごごにも゛どじでぇ!」
ナナ
よろよろと立ち上がる。
メアリ
「なんで?」
メアリ
「それをすることで、私に利がありますか?」
ナナ
「だって゛、だって゛それナナの゛……」
メアリ
「今は手元にあるので私のものです」
ナナ
「…………」
メアリ
「お喋りは終わりです」
ナナ
「や゛、や゛だぁ……」
ナナ
空けたはずの眼窩には黒結晶が輝きを失った瞳のように。
ナナ
あるべき場所はもうないということを、ナナ以外にはっきりと示している。
ナナ
暗くて狭い部屋に戻ったナナには。
ナナ
それがわからない。
GM
何も分からないし、何も見えない。
GM
だって目は無くしてしまった。
GM
帰り道すら見つけられなくなった。
GM
進む事もできなくて、帰り方もわからないなら。
GM
誰かに拾ってもらう事もできないなら。
GM
その場所で、朽ちていくしかないのだ。
1Rメアリ裏
スティブナイト
「そら」
スティブナイト
「末路が見れるぞ」
グラセ
「……」
グラセ
砕かれれば、砕ける。
グラセ
それをどうして止められようか。
グラセ
而して。
グラセ
それをどうして、見過ごせようか。
グラセ
今しがた女が力を振るい、穿ち砕いたと思われたのは、
スティブナイトの形をした黒結晶。
グラセ
或いはそのものを砕いていようとも、偽物には代わりがなかったかもしれない。
グラセ
何れであっても違わないのは、止められなかったこと。
スティブナイト
「”信頼していた”からだって」
スティブナイト
「よかったね」
スティブナイト
「お陰で楽だった」
グラセ
「それは、何より」
グラセ
「……信頼されていたとは思わなかった」
グラセ
メアリがナナに迫る、その様を見ている。
スティブナイト
「楽だからだろ」
スティブナイト
「誰かを信じる、信じて任せる──そう言っておけば、自分はなにもしないでいられる」
スティブナイト
「ダメだったら、信じてたのに裏切られたって事で、責任も回避できる」
スティブナイト
「便利だよな、信じるってさ」
グラセ
「信頼とは、つまりは、心を許すこと」
グラセ
「己が事を、相手に委ねること」
グラセ
「……」
グラセ
「それは。つまりは、弱さといえる」
スティブナイト
「だから、こうなる」
スティブナイト
結晶の向こうで、刃が振るわれている。
グラセ
「ああ」
グラセ
仲間が仲間を組み敷く有り様。
スティブナイト
「あれが信じてたのは、お前か」
スティブナイト
「今も信じてると思うか?」
スティブナイト
「助けてくれるはずだってさ」
グラセ
「どうだろうな。分からない」
グラセ
「どうあろうとも、わたくしが成すことは変わらない」
グラセ
幼子の絶叫。
グラセ
「目を背けて、自らの眼で認めずにいること」
グラセ
「それをしあわせや、“しんじること”と言うのであれば」
グラセ
「弱さが、すなわち“そう”であるならば」
グラセ
「信じている、と言えるのかもしれない」
スティブナイト
「”そう”させた一因に、お前があるんなら」
スティブナイト
「感謝しなきゃな」
グラセ
「それは、……」
グラセ
「…………」
グラセ
否定は、できないのかもしれない。
グラセ
メアリは。出会って間もなくは。
少なくともあのように、敵地で背を晒すような真似はしなかっただろう。
グラセ
ナナは。臆した振る舞いで。
今ほどに、進んで危険に身を晒すことはなかった。
スティブナイト
「頼りになる仲間であろうとしたか?」
グラセ
生温い、快いばかりの温室にさらされれば、人は変わる。
スティブナイト
「それとも、手駒として保護して、管理しようとした?」
スティブナイト
「どちらにせよ結果はこれだ」
グラセ
それを信頼とは、女は思わない。
グラセ
「そうだな」と、低い声で呟く。
グラセ
「……メアリはまだ、余力があろうが」
グラセ
女は顔色も変えず。或いは。
グラセ
「…………」
グラセ
或いはそう、努めている。
グラセ
ナナの有り様を認めてなお、そのように振舞っている。
スティブナイト
「あいつらこの後、どうするだろうね」
スティブナイト
「また手を取り合って歩けると思う?」
グラセ
逡巡。
グラセ
「そうだとすれば。それこそ、真に気が触れているだろうな」
スティブナイト
「わかってるじゃん」
スティブナイト
「だけど、まだ底じゃない」
スティブナイト
「まだ十分じゃない」
スティブナイト
「”お前達”は──」
スティブナイト
それは、目の前の相手に向けた言葉ではない。
より広く、より遠く、恐らくは、自分以外の全てに向けた言葉。
スティブナイト
「まだ苦しむべきだ」
スティブナイト
そして救世主の姿は消える。
スティブナイト
その身に纏わりついていた結晶も、映像も、朧のように。
グラセ
追い縋ることはない。
[ 黒結晶B ] HP : 19 → 0
[ ナナ ] 前科 : 0 → 5
[ ナナ ] 絶望 : -1 → -2
GM
 
GM
*お茶会第1ラウンドの、全てのPC手番が終了しました。
GM
MOD「勇断」の効果により、全てのPCの合意があれば、この時点でお茶会を終了して裁判に突入することができます。
GM
お茶会の終了を望みますか?
ナナ
*グラセが助けてくれるかもしれないから続行しま~す
メアリ
*目がまだあるので続行しましょう!
グラセ
*グラセはお茶会終了を望みます。
GM
全員の合意が得られていないため、お茶会を続行します。