裁判

GM
*裁判フェイズ
GM
*仕込の宣言
ナナ
*最高のバター、とうみつを入手
スティブナイト
*眠り鼠のポット 免罪符
[ スティブナイト ] 眠り鼠のポット : 0 → 1
[ スティブナイト ] 免罪符 : 0 → 1
グラセ
*免罪符と最高のバターを入手
メアリ
*ウサギのお守り 水パイプを入手
GM
*行動順の決定
ナナ
1d6 (1D6) > 6
グラセ
1d6+3 (1D6+3) > 1[1]+3 > 4
メアリ
1D6+4 (1D6+4) > 1[1]+4 > 5
スティブナイト
1d6+3  (1D6+3) > 2[2]+3 > 5
スティブナイト
1d6+3 (1D6+3) > 3[3]+3 > 6
メアリ
1d6+4 (1D6+4) > 3[3]+4 > 7
GM
*裁判R1 手札補充
ナナ
*s2,s3,c4,c5,d5
グラセ
*d2 c3 c2 h2 s6 d8
メアリ
*h4,h6,s7,c10,h7
GM
*裁判R1 ナナ
ナナ
*c5威風 対象はメアリ
メアリ
*回避
メアリ
2d6+4=>7 判定(+才覚) (2D6+4>=7) > 10[4,6]+4 > 14 > 成功
ナナ
2d6+4+4=>14 判定(+猟奇) (2D6+4+4>=14) > 7[4,3]+4+4 > 15 > 成功
ナナ
1d6+3  ダメージ (1D6+3) > 5[5]+3 > 8
GM
防弾コートで1点軽減し、7点のダメージ
[ メアリ ] HP : 18 → 11
ナナ
―――裁判が開廷する
暗い頭の中でループする思考とは別に、堕落の国に来てから身に着けた裁判の経験が体を動かす。
ナナ
メアリもグラセも、いつものような動きができていないように見える。
ナナ
それならばと、真っ先に動き出した右手は変わり果てた黒い結晶。
ナナ
それを振りかぶる。
ナナ
メアリめがけて、仲間だった救世主に向けて。
振り下ろされる。
ナナ
「う゛ぅーーーーっ……!!」
メアリ
弾こうとナイフを投げて、けれどもそれは何の意味もなく。
メアリ
──おそらくこの森では黒結晶の方が、明らかに強い力を持つ。
メアリ
それを分かっていてナイフを投げた。
ナナ
振り払われた手のように、ナナの動きを止めることも逸らすこともできない。
ナナ
ギチギチ、ガリガリと。
全身が軋むのは、結晶のせい?
それとも、メアリに攻撃を向けてるせい?
メアリ
「痛い……」
メアリ
微笑む。痛い、痛い、痛い。
メアリ
痛いはずなのに、どうしてか、随分と苦しみは薄い。
メアリ
「殺したいのでしょう」
メアリ
「もうやめるのですか?」
メアリ
「あなたの覚悟ってそのくらい?」
メアリ
「随分お安いことで!!」
メアリ
「そんな事では殺してしまいます」
メアリ
「殺されちゃいますよ!!あははは」
ナナ
「ほ゛ら゛、ほ゛ら゛、ね。あだじはま゛だ、役゛に立゛つよ」
メアリ
高らかに笑う。
ナナ
「倒゛じだら、あだじが、ナナが……ね!でぎるっで……」
メアリ
「あなたのお喋りを聞いている暇はありません!」
メアリ
「次です!」
ナナ
「メ゛アリも褒めてぐれるがなぁ……」
メアリ
「さあ」
メアリ
「私を殺してからですね」
ナナ
その言葉にどんよりとした笑みを返した。
GM
*裁判R1 メアリ
メアリ
*こしょうをナナに使用
メアリ
*s7 霞斬をナナへ
メアリ
2d6+4+1-2=>7 (2D6+4+1-2>=7) > 8[2,6]+4+1-2 > 11 > 成功
GM
1点+看破2+衰弱2=5点ダメージ
ナナ
*s2防壁
ナナ
2d6+3=>7 判定(+愛) (2D6+3>=7) > 5[3,2]+3 > 8 > 成功
ナナ
5-3-1で1点かな
[ ナナ ] HP : 25 → 24
メアリ
2d6+4+1+2=>7 判定(+才覚) (2D6+4+1+2>=7) > 6[1,5]+4+1+2 > 13 > 成功
ナナ
*3+2の5点に対してs3防壁
ナナ
2d6+3=>7 判定(+愛) (2D6+3>=7) > 8[6,2]+3 > 11 > 成功
ナナ
同じく1点ダメージ
[ ナナ ] HP : 24 → 23
メアリ
ナイフを構える。
メアリ
繰り返した来た動作。
メアリ
この後どうなるかは、彼女は良く知っているはず。
メアリ
ナイフがいくつもいくつも空に煌めく。
メアリ
それのいくつかはナナの漆黒の手に弾かれるが──
メアリ
幾つかの光は柔らかい体に突き刺さる!
ナナ
ナイフの軌道を大雑把に手を振るって弾き落とす。
ナナ
そのいくつかが柔らかい体に突き刺さる。
が、その切っ先はほんのわずかな傷をつけるだけ。
ナナ
それをうっとおしそうに払いのける。
メアリ
「ええ、ええ」
メアリ
「そうでなければ困ります!」
メアリ
「この程度避けていただいて」
ナナ
見知った軌道。
それ以前に、このナイフがそこまでの威力に達さないことを知っている。
メアリ
「この程度で膝を付かないでいただいて!」
ナナ
「んん゛ん゛!も゛ぉ~~~……」
メアリ
「でも、でも、でも」
メアリ
「すこ~~し動きづらいでしょう!」
メアリ
グラセを見た。
メアリ
「ね?」
ナナ
不満げな声をあげる。
メアリ
「動きづらい、つまり逃げにくい」
ナナ
「それや゛だっで言゛っだじゃん!」
メアリ
「聡明なあなたならこの事態を正しく理解できるはず!」
GM
*裁判R1 グラセ
グラセ
*h2 鋭気
[ メアリ ] こしょう : 1 → 0
グラセ
*d8 集気
グラセ
2d6+4=>7 判定(+猟奇) (2D6+4>=7) > 11[5,6]+4 > 15 > 成功
グラセ
次に与えるダメージ +4+7点(チャージ凶器分加算)
[ グラセ ] 次与ダメ : 0 → 11
グラセ
視線を受け止めるは、冷たい女。
グラセ
「理解か。そうだな」
グラセ
メアリがナナの凶器を凌ぎ、傷つき。
そしてナナはメアリの妨害で、大きく隙ができている。
グラセ
グラセであれば、メアリの言葉を理解したろう。
グラセ
弱ったものから、隙の出来た者から仕留めるべきだと。
メアリ
理解しても、実行するかは別という訳。
メアリ
別に構いやしませんけど!
グラセ
そう。その女は、かけられた言葉に身じろぎもしなかった。
ナナ
グラセがこちらを見ているような気がした。
もう顔も見えないのに。
グラセ
もう、仲間じゃないから。
グラセ
とうに、仲間という絆しを、手放したから。
グラセ
こんなにも解りやすく、この状況が表しているように。
グラセ
「わたくしは、理解しているつもりだ」
メアリ
「ええ、あなたは聡明ですから」
グラセ
「ああ」
グラセ
「誰もが敵」
グラセ
「誰もが孤独であるならば」
グラセ
「“手を下さない”ことが、最良と判断する」
メアリ
「左様で」
ナナ
「私゛も゛?」
グラセ
ふたりに向け、冷風が吹き付ける。
グラセ
背後に、音を立てて氷柱が立ち上がる。
グラセ
「誰もが、孤独だ」
グラセ
「お前も、また」
ナナ
「……そっがぁ……」
メアリ
「ええ、もちろんあなたも」
メアリ
「私も」
ナナ
みんなこの暗い森で一人ぼっちでいる。
GM
*裁判R1 手札破棄
ナナ
*捨てなし
メアリ
*hJ 捨て
グラセ
*c2 c3 捨て
GM
*裁判R2 手札補充
ナナ
*d4,c6,hQ,[c4,d5]
グラセ
*(d2 s6)c8 s8 cJ sA
メアリ
*h6,h7,c10,hA,SA
GM
*裁判R2 ナナ
ナナ
*c6威風 対象グラセ
ナナ
2d6+4+4=>7 判定(+猟奇) (2D6+4+4>=7) > 6[5,1]+4+4 > 14 > 成功
ナナ
1d6+3+2+2  ダメージ (1D6+3+2+2) > 2[2]+3+2+2 > 9
ナナ
威力+看破+発狂で2+3+2+1で8点ですね
GM
鉄壁の衣装で2点軽減され、6点ダメージ
[ グラセ ] HP : 16 → 10
ナナ
「う゛うーーー……」
ナナ
結晶と化した右手で歪に歪んだ右目側を撫でまわす。
右手に指が残っていれば、それはかきむしるようなものだっただろう。
ナナ
私を拾ってくれたはずのグラセは、もういないという事実。
じゃあ目の前に居るのは?
ナナ
この顔のない女王様はだれ?
グラセ
死んだか。或いは、既に死んでいたか。
或いは、死んだ方がよかったか。
グラセ
少なくとも。あなたの前に居るのは、仲間だったグラセではない。
ナナ
「違゛う……ぢがう゛ーー!!」
ナナ
感情の振れ幅も動きもまるで一定ではない、獣のようにくってかかる。
ナナ
相対しているメアリに背中をみせると、グラセに掴みかかり引き倒す。
グラセ
蝋人形がそうなるように、怪力に従って倒れる。
グラセ
あなたの下にあるものは、最早ただの凶悪な、人を殺す形。
グラセ
凍り付き、二度と融けない、ひとでなし。
グラセ
穴が空くほど見詰めてみても、濁り切って、見通せない。
ナナ
氷の人形に、金属の人形が右手を打ち付ける。
ナナ
役立たずとなった右手を、何度も。なんども。
グラセ
あなたの手を伝うのは、奇妙な感覚だろう。
グラセ
まるで肉の皮に、氷の塊を詰めていたみたい。
グラセ
中身が、砕けていく。少しずつ、粉々に。
グラセ
「かくあるべきだ」
グラセ
「かくあるべきだった」
グラセ
「わたくしたちは、ずっと、はじめから」
ナナ
その言葉にびくりと反応し、動きを止める。
ナナ
ぜろぜろ、ひゅーひゅーと。
本当は必要としていないはずの呼吸音は乱れて細く。
錆と金属の匂いを吐き出す。
ナナ
その氷の詰まった肉袋を遠ざけるように立ち上がった。
ナナ
感情が揺れる。
よろよろとよろめくナナの姿は、今度は何かに怯えている。
ナナ
「嫌゛ぁ……や゛だぁ……」
ナナ
己のしたことにか、目の前のグラセの言葉にか、この裁判そのものか。
GM
*裁判R2 メアリ
メアリ
*cA 救済 自身へ
メアリ
3D6 (3D6) > 12[5,1,6] > 12
[ メアリ ] HP : 11 → 23
[ メアリ ] HP : 23 → 21
メアリ
*h6 霞斬 対象:グラセ
メアリ
2d6+4+1-2=>7 判定(+才覚) (2D6+4+1-2>=7) > 10[5,5]+4+1-2 > 13 > 成功
メアリ
*4点軽減分で2点
[ グラセ ] HP : 10 → 8
メアリ
2d6+4+1+2=>7 判定(+才覚) (2D6+4+1+2>=7) > 9[3,6]+4+1+2 > 16 > 成功
メアリ
*4点マイナス(軽減)2点!
[ グラセ ] HP : 8 → 6
[ ナナ ] 衰弱@R1メアリ : 3 → 2
メアリ
油断しているだろうグラセに刃を向ける。
メアリ
ナイフをひとつ、ふたつ。
グラセ
起き上がるまでの間は、明確な隙。
メアリ
今度は狙って正確に投げる。
メアリ
しかし死に至るようなものではない。
メアリ
殺したら死んでしまう。
メアリ
殺したら終わってしまうのだから。
グラセ
氷の障壁が幾らかを弾いて、掻い潜った幾らかが人影に突き立つ。
グラセ
「……」
メアリ
「あなたも私の刃の向かう先」
メアリ
「楽しいですね」
メアリ
「楽しいですね!」
グラセ
久しいな、と胸に突き立つ刃を見て。思う。
グラセ
いつか、初めて出会った時以来か。
グラセ
口にはしない。話すための、口がない。心がない。
グラセ
ものごとは、そういうことになっている。
グラセ
「楽しいならば、良かったな」
メアリ
「ええ、あなたは楽しくはない?」
グラセ
「王は、楽しさとは無縁だからな」
グラセ
「なにも思うことはないよ」
グラセ
ナイフの上から、霜が張り付く。開いた傷口を埋めるように。
メアリ
「あら」
メアリ
「なら死んでしまった方が楽かもしれませんねえ」
メアリ
ナイフを放り投げた。
グラセ
「そうだな」
グラセ
だからこうして、確実に、死に近づいている。
GM
*裁判R2 グラセ
グラセ
*s6 二天
グラセ
*c8 集気
グラセ
2d6+4=>7 判定(+猟奇) (2D6+4>=7) > 5[2,3]+4 > 9 > 成功
[ グラセ ] 次与ダメ : 11 → 18
グラセ
*cJ 極撃 対象:ナナ
ナナ
*アリスのゆびぬきを使用
GM
ゆびぬきの効果で 極撃の効果が無効化されます。
GM
ダメージ算出は行われず、判定の失敗もないため、与ダメージ増加効果は消えません。
[ ナナ ] アリスのゆびぬき : 1 → 0
グラセ
かくあるべきだった。
グラセ
どうしてと、胸の内のなにかを痛めてしまうよりは。
グラセ
楽しいと、胸の内のなにかを塗りつぶしてしまうよりは。
グラセ
はじめからこうなっていたほうが、マシだったのかもしれない。
グラセ
「救世主は、」
グラセ
「堕落の国の為に生まれた存在」
グラセ
歪から生まれた、非の打ちどころがなく、整った氷の槍。
グラセ
その切っ先が、ナナを捉える。
グラセ
「故に、一切の私情は殺すべき」
グラセ
「救世主はかくあるべき」
グラセ
「……」
グラセ
「――わたくしは、かくあるべきだ」
グラセ
己が心の臓に杭を打ち込んで。
グラセ
ナナの頭部に、凶器を打ち込む。
ナナ
その槍の切っ先に据えられた救世主は、ナナと呼ばれる救世主は。
ナナ
何かに怯え続けている。
ナナ
「嫌゛ぁ!やめで……違゛う……!やだぁ!ごんなの、グラゼじゃない!メ゛アリじゃない!!!」
ナナ
かぶりを振ってしゃがみこむ。
大好きな裁判中にもかかわらず。
大好きだったはずの裁判なのに。
ナナ
あたしが役に立つはずなのに。
ナナが役に立つはずなのに。
ナナ
私は役立たずだから。
ナナ
かすれ、擦れ、軋んだ声が、泣きわめく子供のように響く。
ナナ
「や゛だぁ……」
ナナ
世界を、周囲を、自分の行動を否定する。
ナナ
「死゛にだぐないよ゛ぉ……」
ナナ
そんなことはない。
死んだ方が良かったんじゃないかな?
ナナ
なぜ生きている?
ナナ
全身にまとわりつく黒結晶が、一人のちっぽけな助けを覆いつくすように閉じ込める。
ナナ
そのほんの一瞬が槍の行く手を阻む。
グラセ
次いで、酷く耳障りな衝突音。
グラセ
立派な鏡を落としてしまったときみたいに、
甲高い音を伴って、白と黒のかけらが飛び散っていく。
グラセ
心と心を触れ合わせば、無事ではいられない。
グラセ
こんな風に。
GM
*裁判R2 手札破棄
メアリ
*捨てなし
ナナ
*c4,hQ捨て
グラセ
*d2 sA 捨て
GM
*裁判R3 手札補充
ナナ
*c7,h10,sJ,[d4,d5]
メアリ
*d7,h7,c10,cK,hA
グラセ
*(s8) s5 h5 h8 s9 dJ
GM
*裁判R3 ナナ
ナナ
*sJ回復 対象 ナナとグラセ
ナナ
2d6+3=>7 判定(+愛) (2D6+3>=7) > 8[4,4]+3 > 11 > 成功
ナナ
1d6+3+1 (1D6+3+1) > 5[5]+3+1 > 9
ナナ
割り振りは~、ナナに3点グラセさんに6点
ナナ
*c7狂愛
ナナ
グラセさんには6+看破2点+発狂+1点で9点
[ ナナ ] HP : 23 → 25
[ ナナ ] 衰弱@R1メアリ : 2 → 0
[ グラセ ] HP : 6 → 0
GM
*判決>グラセ
グラセ
2d6+5-5 判決表 (2D6+5-5) > 9[3,6]+5-5 > 9
GM
9~11 HPを1点回復して立ち上がる。
[ グラセ ] HP : 0 → 1
[ グラセ ] 前科 : 5 → 6
ナナ
メアリに背中を向けたまま、恐怖そのものとなったグラセに再び向かう。
ナナ
「はぁ゛——―――っ、はぁ゛ーーーーっ!」
ナナ
荒い息使いに手を伸ばそうとして、右手が使い物にならないことを思い出す。
ナナ
左手を伸ばす。
必要なときに差し伸べることも伸ばすこともできなかった手。
汚れた手が、グラセを掴む。
ナナ
怖い。目の前の恐怖を取り除くために必死に。
死へと向かって。
グラセ
また、なされるがまま。
グラセ
まるで獣。隙を見せれば蹂躙され、噛み殺される。
ナナ
「う゛ぅう゛ぁぁぅ……ぎ……!」
ナナ
グラセの冷たい体温が手を通して伝わる。
あたしの左手が死に侵されていく。
ナナ
寒さか恐怖かわからない震えと共に強く握りこむ。
グラセ
べきり。
グラセ
ナナが掴んだのは、左の腕。
ナナ
「グ、グラッ、グラゼが、グラゼがあだじのごど……」
ナナ
本来仲間をいやすために向けていた力を、破壊的な出力へと変えた攻撃。
ナナ
枝を折るようなあっけない感触が手に伝わる。
グラセ
掌握されたそれはほとんど砕けて、神経を僅かに残してぶら下がる。
グラセ
「どうした」
グラセ
「何も間違いではない」
グラセ
「わたくしは、お前を殺そうとした」
グラセ
「それだけのこと」
ナナ
「……ぞ、う゛、だげど、お……」
ナナ
握り込み過ぎて形が崩れた左手と共にうろたえる。
ぶらりと垂れ下がったグラセの腕を治すものは。
ナナなのに。
ナナ
「うう゛ーーーーーっ!」
グラセ
もうほとんど残らない腕と、襤褸になったナナの左手を見下ろす。
ナナ
うなり、頭を振りながら二歩三歩とよろめく。
ナナ
それでも、グラセの腕を握り潰した罪がある左手は、私の力で元のとおりを形作っていた。
グラセ
お前が。
グラセ
お前が、今のように怯える様は、出会ったあの頃以来に見る気がする。
グラセ
「『案ずるな』」
グラセ
「『お前は何も間違ってはいない』」
グラセ
いつか掛けた言葉と、同じだけのもの。
グラセ
お前の右手と、左手は。
グラセ
時には力を貸し。時には、三人を繋ぎ止めてきた手だった。
グラセ
「……ナナ」
グラセ
ナナ、お前は。
グラセ
「その程度では。わたくしは、そう易々とは死なん」
グラセ
お前は随分と、人らしくなったな。
グラセ
腕を欠いた女王は、そうして未だ、お前たちの前に立っている。
ナナ
いつかの言葉に、今度はぼんやりとした笑みを浮かべる。
GM
*裁判R3 メアリ
メアリ
二人を見て。
メアリ
声を聴いて。
メアリ
そうして、何も言わずに──
メアリ
向けられた背をめがけてナイフを投げる。
メアリ
*ナナにh7 死病
メアリ
2d6+4+1=>7 判定(+才覚) (2D6+4+1>=7) > 5[1,4]+4+1 > 10 > 成功
ナナ
*c4防壁
ナナ
2d6+3=>7 判定(+愛) (2D6+3>=7) > 9[6,3]+3 > 12 > 成功
ナナ
5点から4点軽減で1点と猛毒3ラウンドかな
[ ナナ ] HP : 25 → 24
[ ナナ ] 猛毒@R3メアリ : 0 → 3
メアリ
ナイフがその背に突き立つ。
メアリ
それを投げる動作に躊躇いは無い。
メアリ
そのナイフに殺傷力はさほどなく。
メアリ
刺さった場所から、毒を広げていく。
ナナ
メアリへ向けていた無防備な背中にナイフが突き刺さる。
メアリ
「背中が向いています」
メアリ
「油断ですか!」
ナナ
「………?」
メアリ
「お目目が付いていない……」
メアリ
「いいえ!私が抉ったのでした!!」
メアリ
嬉しそうに笑う。
ナナ
ゆっくりと顔を向ける。
背中に突き刺さるナイフは、ほとんどがせり出している黒結晶に弾かれた。
メアリ
嬉しそうに語る。
ナナ
それでもわずかについた疵から嬉々とした毒が流れ込む。
ナナ
「……ぁんで……」
ナナ
「なん゛でナ゛ナ゛が、グラゼどお話゛じでるのに邪魔する゛の!!」
ナナ
足元をふらつかせながら今度は激昂する。
ナナ
「メ゛アリどはおしゃべりじでない゛のに!グラゼとお話゛じでだのに!」
メアリ
「別に私はお喋りしたいわけではないですけど」
ナナ
会話らしい会話などしていない。
コミュニケーションなど取れていない。
何一つ通じ合っていない。繋がっていない。
メアリ
「そもそもあれって会話に入るんですか?」
メアリ
「壁打ちじゃないですか」
メアリ
「一方的な独り言をぶつけているだけ」
メアリ
「だってあなたは人の話を聞いていないもの」
ナナ
「違゛う゛ぅ!うう゛うぅうぅう゛ーーー!」
ナナ
うなる。吠える。
ほら、話を聞いていない。
メアリ
「どこが?」
メアリ
「具体的な反論は?」
メアリ
「どこが“違う”んですか?」
ナナ
「………?」
メアリ
「違うんでしょう」
メアリ
「違うって言ったじゃないですか」
ナナ
足を止めて、自分の顔を撫でる。
黒結晶と化した右手が、黒結晶の突き出した右目にあたりキキンと硬質な音を立てる。
ナナ
「……わが、わがんな゛い」
ナナ
ナナはお話してたのに。私はお話してたよ。あたしは本当にグラセとしゃべってたかな?
メアリ
「分からないのに反論したんですか?」
ナナ
「メ゛アリは、知゛っでる?」
ナナ
「あだじが、違゛うってなんで思っだが、知゛っでる?」
メアリ
「さあ」
メアリ
「だから聞いてるんですけど」
メアリ
「あなたはまた、誰かに答えを求めて」
メアリ
「わからないと癇癪を起こす気でしょうか!」
ナナ
「え゛え゛ー?……えへへへ」
ナナ
ふらふらと支離滅裂なまま、メアリの方へと歩みを進める。
[ ナナ ] HP : 25 → 24
メアリ
それに何か返すことは無い。
メアリ
コミュニケーションは成立しない。
GM
*裁判R3 グラセ
グラセ
*h5 二天
グラセ
*s5 背水 対象:メアリ、ナナ
グラセ
2d6+4=>7 判定(+猟奇) (2D6+4>=7) > 6[4,2]+4 > 10 > 成功
グラセ
1d6+3 (1D6+3) > 3[3]+3 > 6
グラセ
*メアリに6+18+2-1=25点、ナナに6-1=5点
[ ナナ ] HP : 24 → 19
[ メアリ ] HP : 21 → 0
GM
*判決>メアリ
メアリ
2d6+5-5 判決表 (2D6+5-5) > 9[3,6]+5-5 > 9
GM
9~11 HPを1点回復して立ち上がる。
[ メアリ ] HP : 0 → 1
[ メアリ ] 前科 : 5 → 6
グラセ
*s9 集気
グラセ
2d6+4=>7 判定(+猟奇) (2D6+4>=7) > 5[3,2]+4 > 9 > 成功
[ グラセ ] 次与ダメ : 18 → 0
[ グラセ ] 次与ダメ : 0 → 7
グラセ
「お前らは本当に、随分と仲がいいな」
メアリ
「やきもちですか?」
ナナ
えへへ、とどんよりした笑みをグラセにも向ける。
グラセ
二人を囲みこんだ氷の柱が、ミシミシと音を立てて張り詰める。
メアリ
その音を聞いている。
グラセ
「そうかもしれん」
メアリ
のに、何もしない。
メアリ
その後どうなるか理解していて、
メアリ
何の動作もしない。
メアリ
あの時、背を警戒しなかった時と同じ。
ナナ
自分に向けられた言葉というほどでもないのに。
グラセに声をかけてもらえたというだけで。
ナナ
何度目か、メアリに背中を見せながらふらふらと歩きだす。
グラセ
「お前は、わたくしに怒ることはほとんどなかったな」
ナナ
あれほど自信にあふれ、いつも望んでいた裁判の場において。
グラセ
視線はまずひとつ、ナナを見る。
ナナ
おおよそ全く裁判に向かっていない様をずっと晒している。
グラセ
よろめく姿に、正確に切っ先を定める。そして。
グラセ
「そして、お前の真実の言葉を引き出すのもまた、ナナだった」
グラセ
メアリを見る。
グラセ
「わたくしは、羨ましかったのかもしれんな」
グラセ
切っ先を、定める。
グラセ
なにもせず、警戒を怠って。自身の責任を手放して。
グラセ
或いは、それほどに信頼を寄せられていた、かつての姿に向けて。
メアリ
「隣の芝生は青く」
メアリ
「隣の領地は広く見える」
メアリ
「だからこそ、ヒトは侵略を繰り返すのでしょうとも」
メアリ
「そのようにできている」
メアリ
「ずっと、届かぬ誰かと何かが羨ましい」
メアリ
「そうでしょうとも」
グラセ
「そうだな。愚かなまでに、そのようにできている」
グラセ
「……。そして」
グラセ
「一度届いて、失ったものほど」
グラセ
「ことさら、未練がましくなるのかもしれないな」
メアリ
「そうですね」
メアリ
「ああ、あなたは存外──人間らしい」
メアリ
今更知った。
メアリ
もう手遅れだ。
グラセ
「――」
グラセ
はぜる音に、声は描き消えて。
グラセ
いくつもの氷柱が二人を貫き、その場に繋ぎ止める。
グラセ
それは或いは、未練がましく。
GM
*裁判R3終了 手札破棄
ナナ
*h10捨て
グラセ
*h8捨て
メアリ
*捨てなし
GM
*裁判R4 手札補充
ナナ
*d3,d6,d10,dK,[d5]
ナナ
*錬金を獲得
グラセ
*(s8 dJ)d9 h9 Joker
メアリ
*d7,c10,hK,cK,hA
GM
*裁判R4 ナナ
ナナ
*d10吸精 対象メアリ
ナナ
2d6+3=>7 判定(+愛) (2D6+3>=7) > 7[1,6]+3 > 10 > 成功
ナナ
1d6+3  ダメージ (1D6+3) > 3[3]+3 > 6
[ メアリ ] HP : 1 → 0
GM
*判決!>メアリ
メアリ
2d6+5-6 判決表 (2D6+5-6) > 3[1,2]+5-6 > 2
GM
~2 ランダムな能力値で判定し、成功すれば〈昏倒〉する。失敗すれば〈死亡〉する。
メアリ
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 才覚
メアリ
2d6+4+1=>7 判定(+才覚) (2D6+4+1>=7) > 3[1,2]+4+1 > 8 > 成功
メアリ
*逆転 2を1に
GM
*ファンブル!
ナナ
いくつもの氷柱が体を貫く。
ふらりと歩み出した体はその勢いに弾かれ元居た場所、よりもさらにメアリの方へと。
ナナ
そこは、私以上に氷柱で激しく傷ついたメアリの胸元。
全身から血を流しながら、まるでの笑みを浮かべているように見える。
ナナ
「メ゛アリ、痛゛ぞう……」
ナナ
そう言いながら
ナナ
血が失われゆくメアリの体に、
ナナ
右手を
ナナ
振り下ろした。
メアリ
その手を見た。
メアリ
そうして、片手に握ったナイフをそちらに向け──
ナナ
「ね゛、あだじが治゛じてあげるがらね゛」
メアリ
からん、と音を立てて落とす。
メアリ
それはたしかに、致命傷を与えた。
メアリ
それがたしかに、心臓を揺らした。
メアリ
これが、何よりも欲しかった。
メアリ
これは多分、何より欲しかった安らぎだった。
メアリ
これを求めてここまで歩いてきた。
メアリ
最初から別に、欲しかったのは仲間ではなかった。
メアリ
それを求めるには遅すぎた。
メアリ
それに手を伸ばすにはきっと、歪み過ぎていた。
メアリ
だけど──そんなこれでさえも。
メアリ
一時の、死ではない安らぎを覚えたこともあったのだ。
メアリ
だから、死ぬのならばここが良かった。
メアリ
この2人のどちらかの手が良かった。
メアリ
「ああ、」
メアリ
「上手にできましたね」
メアリ
だから、まるで。
メアリ
遠い昔に言ったような誉め言葉を投げる。
メアリ
「ナナ、私は本当は、ずっと前から壊れていた」
メアリ
「そうしてそれは生き永らえている限り、どうしても治らない歪みがあった」
メアリ
けれど、その一撃を以てしても。
メアリ
まだこの体は起き上がるらしい。
ナナ
肉を打つ。心の臓を打つ。その拍動を止めるために。
メアリ
疵なんてもののせいで。
メアリ
疵なんてものが、まだ無傷であるせいで。
ナナ
裁判における最適な動きを、私の言葉とは裏腹に、この体は実行している。
ナナ
「ぞう……?」
メアリ
先程、自分の体を貫いた氷の欠片。
メアリ
地面にまだ残るそれを引き抜く。
メアリ
そうして、それを──
ナナ
メアリが褒めてくれた。メアリがあたしのことを。
今日はメアリに叱られたから。
メアリ
自身の、目に突き刺す。
メアリ
これで終わり。二つ目の疵。
ナナ
「やっだぁ。嬉゛じい」
メアリ
この堕落の国に、いい人なんていないでしょう。
メアリ
いいや、そうでもなかった。
ナナ
目の前の状況と、全くそぐわない笑顔を見せる。
メアリ
この疵は、“逆転”して。
メアリ
その意味をひっくり返す。
メアリ
「楽しかったですよ」
メアリ
「この森に来た時、あのいけ好かないあいつが、私たちを害そうとした時」
メアリ
「あなたはこの氷で助けようとしてくれた」
メアリ
「何度も、何度だって、手を伸ばして」
メアリ
「グラセ──あなたの手は無意味だったことはなかったんですよ」
メアリ
その手が届かずとも。
メアリ
それが、結果につながらずとも。
グラセ
「……」
メアリ
目の前の、どうしようもなかった女は。
メアリ
死の直前にその異常性を喪った。
グラセ
有り様を、惨状を、グラセと呼ばれた人は見ている。
メアリ
疵がすべて抉れたから。
メアリ
結果として、こうなった。
メアリ
これが、一瞬だけ許された安らぎ。
メアリ
もう手遅れの慈しみ。
メアリ
けれどもこうなることでしか口に出来ない、
メアリ
どうしようもない“さようなら”。
メアリ
時は巻き戻らず、死は覆らない。
グラセ
「らしくないな」
メアリ
だからこそ、何を言うことを躊躇わない。
メアリ
「そうでしょう」
メアリ
「そうでしょうとも」
メアリ
「でも、このままではあなたがあんまりにも救われない」
メアリ
「あなたのその氷の手でも、救えた存在はあった」
メアリ
「ナナ、」
メアリ
「あなたも、そうふらふらするものではない」
メアリ
「癇癪を起こさずに、きちんと考えれば色々なことを出来る子でしょう」
メアリ
「もっと頭を使いなさい、惑わされないで居なさい」
メアリ
「そうすれば、たぶん」
ナナ
名前を呼ばれ顔をあげる。
メアリの眼窩に突き立った氷から、はたはたと血が顔に堕ちる。
メアリ
「あなたが欲しいものが手に入るのに」
メアリ
もっと早くこう言えばよかった。
ナナ
弱くなっていく心音と共に紡がれる言葉を、その胸元で聞く姿は母に抱き着く子のようで。
メアリ
もっと早く歩み寄ればよかった?
メアリ
けれども異常性の霧に惑わされた頭では、
メアリ
それがずっと叶わなかった。
ナナ
最期の教えを嬉しそうに聞き入っている。
メアリ
その頭を撫でる。
メアリ
「手を繋いでくれて、ありがとう」
ナナ
「う゛ん、わがっだ!」
メアリ
「いい子」
メアリ
話す度に、唇から血が伝う。
メアリ
もう長くはない、長くはない。
メアリ
砂時計の砂が落ちるまで、あとわずか。
ナナ
メアリの血に濡れた右手をまるで知らないもののように。
ナナ
ボロボロに崩れた左手を頭を撫でる手にそえる。
グラセ
限られた時の中で。全てが、手遅れで。
グラセ
そして手遅れだからこそ、顧みて尊ぶことができる。
メアリ
「グラセ、」
メアリ
「ナナ、」
メアリ
「先に行っていますから」
メアリ
さて、死後の世界なんてものが。
メアリ
果たしてあるのかは知らない。
メアリ
信じたことも無い。
メアリ
「どうか、ゆっくり来てください」
メアリ
「この話の続きをしましょう」
メアリ
確証のない言葉だ。
メアリ
そんなこと、叶うはずもない。
ナナ
メアリの顔を見上げながら、まるでさいごのおやすみみたいなことを言うんだなぁ、と。
思った。
グラセ
「…………」
グラセ
「そうだな」
グラセ
不確かな言葉に、そうして。“いつもの”相槌を返す。
メアリ
それに、微かに笑った。
メアリ
「祈らせてください」
メアリ
「願わせてください」
メアリ
「二人の道行きに──幸多からんことを」
メアリ
いつも形だけ修道女の恰好をして。
メアリ
それらしいことを一度も言わず、
メアリ
何かに願うことも、
メアリ
何かを祈ることもしてこなかった女は、
メアリ
最期にそれを残して、
メアリ
──静かに目を伏せた。
ナナ
抱き着いていたメアリの体から力が抜ける。
温度が消えてゆく。
ナナ
頭の上にあった手が、ずるりと落ちる。
グラセ
メアリ。
グラセ
お前もまた、人間らしい。
グラセ
だからわたくしたちは。
グラセ
人殺しで。爪弾きもので。狂人の寄せ集めで。
ナナ
「………」
グラセ
そしてただの、“人”の寄せ集めだったのだ、と。
グラセ
過ぎた時を見送って、そう思えるのかもしれない。
ナナ
「……ぁぇ……」
ナナ
口から僅かに声が漏れる。
ナナ
*吸精の回復分 対象をグラセに。
ナナ
*d5狂愛
ナナ
ダメージは2点+1(呪物)+2(看破)+1(発狂)で6点
[ グラセ ] HP : 1 → 0
GM
*判決!>グラセ
グラセ
2d6+5-6 判決表 (2D6+5-6) > 5[2,3]+5-6 > 4
グラセ
*免罪符使用。
GM
6~8 ランダムな能力値で判定し、成功すればHPを1点回復して立ち上がる。失敗すれば〈昏倒〉する。
グラセ
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 猟奇
グラセ
2d6+4=>7 判定(+猟奇) (2D6+4>=7) > 10[5,5]+4 > 14 > 成功
[ グラセ ] HP : 0 → 1
[ グラセ ] 前科 : 6 → 7
[ グラセ ] 免罪符 : 1 → 0
メアリ
そうして、誰かの死で一瞬止まった時は。
メアリ
再び、森の瘴気によってその穏やかさを失う。
メアリ
先程までの光景が嘘だったかのように。
メアリ
一時の夢だったかのように。
メアリ
また、それぞれに武器を手に取るのだろう。
[ ナナ ] HP : 19 → 16
ナナ
*猛毒ダメージを処理
[ ナナ ] 猛毒@R3メアリ : 3 → 2
GM
* 殺意の適用忘れがあったため、この時点でHP処理。
ナナ
*猛毒処理前にとうみつの使用の許可をもらいました
[ ナナ ] とうみつ : 1 → 0
[ ナナ ] HP : 16 → 22
[ ナナ ] HP : 22 → 21
ナナ
*殺意分のHP処理も完了
GM
*裁判R4 グラセ
ナナ
目の前でメアリが倒れている。
伏せられた目、流れ落ちる血。
あたしの顔を伝う鉄の匂い。
ナナ
死んでいる。
呼吸も、鼓動も、笑顔も、言葉も止まっている。
ナナ
あたしの右手と顔は、メアリの血に濡れている。
私の疵が、集めた力の吐き出す先を求めている。
ナナ
「ぁ゛ぇ……?な゛んで……?」
ナナ
あたしが治すって決めたはずなのに。
メアリに言われたことを忘れないように、なんでそうなったのか考える。
ナナ
 
ナナ
「…………」
ナナ
手に残る感触。メアリの言葉。
グラセとの会話。頭を撫でる手。
ナナ
「……や゛ぁ……」
ナナ
急に自分の右手が全く知らない恐ろしいもののように思えた。
ナナ
数歩、メアリの死体から後ずさる。
いやだ。そんな。
それすら言葉にならない。
ただずっと、絞られた弓のように疵がうずく。
ナナ
「グ、ラゼ、グラゼッ!」
ナナ
グラセの服を乱暴につかむ。
ナナ
「ナ゛ナ゛が、ナ゛ナ゛が、メ゛アリ殺゛じちゃっだ!」
ナナ
乱暴に嫌だ嫌だと疵の力をもってだだをこねるようにグラセに当たる。
グラセ
その度に、ミシ、ミシと、梁の軋むような音。
ナナ
疵の力をともなったそれは、混乱した子供のそれではなく救世主が振るう強大な力。
グラセ
およそ、やわらかな常人であれば既にひしゃげている。
グラセ
そのような力を受けて尚、グラセと呼ばれた人は立っている。
グラセ
その責務故に立ち続けて。ナナを見下ろす。
グラセ
「そうだな」
グラセ
「メアリは死んだ」
グラセ
「それは、お前が殺した」
ナナ
「あだじが……」
ナナ
「で、も、……裁゛判、だ、がら」
ナナ
「メ゛アリは、仲゛間でぇ……わ、私゛は……」
ナナ
「ナ゛ナ゛は、治ぞうど、思゛っで……」
ナナ
私のやろうと思ったこととあたしにとって裁判における当然の行動。
自分の中の矛盾した感情と結果。
ナナ
でもメアリはナナに考えなさいって言ったから。
グラセ
「裁判は、殺し合いの場」
グラセ
「味方でない者は、即ち敵」
グラセ
「お前の行ったことは、このルールの上では、何も誤りではないだろう」
ナナ
グラセが肯定してくれる。
グラセ
誤りではない。
グラセ
「お前の手は、人を殺めることのできる手だ」
グラセ
「より効率的に。より的確に」
グラセ
「“敵”を殺すことができる」
グラセ
「ナナ。お前は強い」
グラセ
正しいことを、女王は述べる。
グラセ
「この状況下で、
 スティブナイトを倒すことができる者がいるとするならば。
 お前という“手段”が最適だろう」
グラセ
そう。
グラセ
「それこそが、堕落の国にとって最善の選択」
グラセ
それこそが、正しい。
グラセ
「……」
グラセ
「故にこそ」
グラセ
「わたくしは、お前を殺そう」
グラセ
二人を取り巻く空気が、再び凍てつく。
グラセ
*Joker 二天
グラセ
*h9 集気
ナナ
*集気に割り込みありません
グラセ
2d6+4=>7 判定(+猟奇) (2D6+4>=7) > 8[2,6]+4 > 12 > 成功
[ グラセ ] 次与ダメ : 7 → 14
グラセ
*dJ 極撃 対象:ナナ
ナナ
*dK 遊撃
ナナ
2d6+4=>7 判定(+猟奇) (2D6+4>=7) > 3[2,1]+4 > 7 > 成功
ナナ
ダメージは猟奇分なので4点かな
GM
*判決! >グラセ
グラセ
2d6+5-7 判決表 (2D6+5-7) > 7[6,1]+5-7 > 5
GM
3~5 〈昏倒〉する。
[ グラセ ] HP : 1 → 0
ナナ
グラセの言葉に混乱と戸惑いが巡る。
私は弱いから価値がないはずだったのに。
グラセはあたしを強いと言った。
グラセ
そう。お前は強い。
グラセ
そして、或いは弱い。
ナナ
そしてだから、グラセはナナを殺すって。
ナナ
私は弱い。
あたしは強い。
ナナは強くて弱い。
グラセ
だから、殺さなければならない。
ナナ
グラセは私を、あたしを、ナナを。
殺す。
グラセ
効率的に人を殺す強さを持ち。苦痛に心を乱される弱さを持つ。
グラセ
その歪さは、この国に適している。
グラセ
残酷なまでに。
グラセ
「お前に、」
グラセ
「――お前たちに。その席は相応しくはない」
グラセ
正しくない。
グラセ
この言葉も、この感情も、何もかも。正しくはない。
ナナ
グラセの言葉も、感情も、何を考えているかも。
顔が見えなくなった今、なおさらわからない。
グラセ
ずっと、身体が悲鳴を上げている。
ナナ
そして、それについて考えるだけの猶予をくれないということはよくわかる。
グラセ
呼応するように、ナナの表面を巻き込んで、辺りが氷結していく。
ナナ
だから、今考えられることは一つだけ。
ナナ
こんな体になっても。
ナナ
大事な二人を手にかけても。
ナナ
死にたくないということだけ考えている。
ナナ
「ね゛、ぇ。じゃあね゛……」
ナナ
氷結していく体。完全に凍り付くその前に、軋む体を動かして。
ナナ
「グラゼも゛、敵゛?」
グラセ
「……」
グラセ
寸俊の間がある。
グラセ
「そうだな」
グラセ
「お前を殺すと。害すると云うのだから」
グラセ
そして、それでも尚。
グラセ
仲間だと思う。
ナナ
「そ、っがぁ……」
ナナ
内心わかっていた答えに、安心したのか悲しくなったのか。
体のどこから湧いて出たのかわからない笑顔が顔にあふれた。
グラセ
「そう。だから」
グラセ
「精々。わたくしを恨んで死ぬといい」
ナナ
もう手を取ることも、どうすることもできないから。
何かができるのであれば、あたしが、私が、ナナが。
一番適しているから。
ナナ
「う゛ん」
グラセ
あなたの身体は、どうしようもなく、死の気配を察知するだろう。
ナナ
だからその言葉にうんと応える。
グラセ
氷の槍があなたを孔だらけにして。氷の刃が、あなたの首を落とすような。
そんな、一手先の死を。あなたは察する。
ナナ
「でも゛、生゛ぎだいの」
ナナ
その先に待つ終わりよりも。
一歩を先に踏み出して。
ナナ
血に濡れた右手を。
ナナ
叩きつけた。
グラセ
「ナ、――――」
グラセ
……ああ。
グラセ
こんな絶望の只中に、
グラセ
お前を残しては、
グラセ
いけない。はずだった。
グラセ
空気が固まる。息が詰まる。
グラセ
それはたしかに、致命傷を与えた。
グラセ
女王はそうして、膝をついた。
グラセ
ずっと歩み続けた脚は、膝から砕けてしまったみたいになって。
もう立ち上がれないほど、身体が重い。
グラセ
「ナ、……ナ……」
グラセ
「……。はは……」
グラセ
「裁判、とは、よく言ったものだな」
ナナ
救世主の力をもって、強く打ち据えたグラセに呼ばれ。
思わず体がはねる。
グラセ
項垂れたまま。けれども、先程まで満ちていた殺気はとうにない。
ナナ
それでも名前を呼ばれたことがどうしてもうれしくて。
死の匂い立ちこめる、絶望に染まった森の中の裁判なのに。
ナナ
「あだじ、強゛いよ゛、ね」
グラセ
「……ああ」
ナナ
かつてのように、嬉しそうな声をあげてしまう。
この体が。
歪み、錆びつき、汚れ、染まってしまったこの体が。
グラセ
「お前は、強いよ」
ナナ
「え゛へへ……」
グラセ
それが、こんなにも苦しいのだと。
グラセ
そう言って、お前に理解はできなかろうが。
ナナ
かすれた隙間風のような声を漏らし、四つん這いになる。
グラセ
「……ナナ」
ナナ
グラセの声を少しでも近くで聴くように。
横になった親にじゃれつく子供のように。
グラセ
視界が霞む。
グラセ
吹雪の中で、酷く疲弊した時のように。
止めてはいけない足元が覚束なくなる感覚。
グラセ
「わたくしは、」
グラセ
「お前のような者には、苦しみを、感じてほしくはない」
グラセ
「お前たちの苦痛を請け負うために、わたくしは」
グラセ
「ここまで、歩いてきた」
ナナ
「………」
ナナ
静かに零れ落ちる言葉を聴いている。
ナナ
女王の吐露をただ静かに。
グラセ
「単なる自己満足だろうが。それでも、歩いてきた」
グラセ
無意味であろうとも。無意味なことを、盲信して。
グラセ
「……」
グラセ
懺悔のように、言い訳のように並べ立てて、そうして。
無意味ではなかったのだと、だれかの祈るような言葉を思い出す。
グラセ
そうであれば、どれほど。
グラセ
「――裁判は。罪を断じ、人を断ずるもの」
グラセ
「……滑稽だろう。
 ここに居るのは誰も彼もが、人殺しばかりであるのに」
グラセ
「……しかし」
グラセ
「行いは名前をつけられて、初めて罪に成り」
グラセ
「罪を認めて初めて、許しを求めることができる」
グラセ
「…………ナナ」
グラセ
辛うじて、右腕を持ちあげる。
ナナ
「……う゛ん」
ナナ
ボロボロの左手でそっと握る。
グラセ
人を殺すための手。
グラセ
それを、弱々しく震え、凍えた掌が握り返す。
グラセ
「わたくしは、正しかった」
グラセ
「そして、正しいことこそが、誤ちでもあった」
グラセ
「ナナ」
グラセ
「正しくなくていい」
グラセ
お前が正しくない分だけ、誰かが正しくあればいいだけの話。
グラセ
そうしてその誰かの半身は、ナナの目の前に崩れ落ちる。
グラセ
ナナ。
グラセ
正しくなくとも。お前には、生きていてほしいよ。
グラセ
うわごとのように名前を呼んで、意識を失う。
ナナ
繫がったその手の力が抜ける。
ナナ
その命が尽きたわけではないが、グラセの意識は今ここにはない。
GM
結局のところ。
GM
そこには倒れたものがふたつ。
GM
立っているものがひとつ。
ナナ
「あ゛のね゛、」
ナナ
もう聞こえていないことがわかっていても。
ナナ
「嬉じがっだ、よ゛」
ナナ
グラセが拾ってくれたことも。
メアリが手を引いてくれたことも。
ナナ
そして、でも。
だから。
ナナ
今この森にはひとりぼっちだ。
スティブナイト
残念ながら、それは違う。
スティブナイト
この森にはまだ、もうひとり。
スティブナイト
「なんだ」
スティブナイト
「お前が残ったのか?」
スティブナイト
黒結晶から言葉が響く。
スティブナイト
それは発声ではなく反響。
ナナ
「う゛ん」
ナナ
響く声にぼんやりゆらりと声を返す。
ナナ
「だっで生ぎだいがら」
スティブナイト
「新しい傷が少ないな」
スティブナイト
「あの二人、思ったより弱かったようだ」
ナナ
「違゛うよ゛。だっであだじ強゛いもん」
ナナ
「私゛が一番弱゛いげど」
スティブナイト
「それは運が悪かったな」
スティブナイト
「まぁ、何にせよ結末は変わらない」
スティブナイト
「結局は意味がない」
スティブナイト
「お前達がやっていた事は、全部」
ナナ
「違゛うよ゛」
スティブナイト
「俺の手間が、多少省けた程度の事だ」
スティブナイト
黒結晶の反響。
スティブナイト
その声を発声させている原因。
ナナ
「ぞれはナ゛ナ゛達゛が決める゛事゛だよ」
スティブナイト
それが、ナナの前に姿を現す。
スティブナイト
あいも変わらず全てが黒く、暗く、倦んでいる。
ナナの記憶にある姿よりは、その身体はずいぶんと擦り切れているが。
スティブナイト
「そうだったら良かったな」
ナナ
「……あ゛、うん。ぞうだね゛」
ナナ
「ね゛、いづの間にが、ぞっぐりな格゛好゛にな゛っだね」
ナナ
「ボロボロで……あ゛はは!」
スティブナイト
「どこかの誰かが」
スティブナイト
「随分、人道的な兵器を落としてくれてね」
ナナ
「な、んだっげ……身゛がら出でだ、さび?」
スティブナイト
「お前ほど錆びついちゃいないさ」
スティブナイト
「なに、すぐにおそろいでもなくなる」
ナナ
「ナ゛ナ゛はごうなっでも強゛いも゛ん」
スティブナイト
「ああ、そうだな」
スティブナイト
「そうやって誇っていればいい、そうやって縋っていればいい」
スティブナイト
「どうせ結末は変わらない」
ナナ
「ぜっがぐ頑張っでおそろい゛にじだくぜに゛、やっばり嫌゛になっだんだぁ」
ナナ
けらけらと笑う。
スティブナイト
「お前は死ぬし、そこで倒れてるお前の仲間も死ぬ」
スティブナイト
「もう一度言うが、そこに意味は無い」
スティブナイト
「お前達がやった事も……言ってしまえば、俺がやった事も大して意味は無いんだ」
スティブナイト
「お前達はどうせいずれは殺し合って死んだ」
スティブナイト
「俺がやったのはそれを多少早めたくらいだ」
スティブナイト
「虚しさすら感じるね」
ナナ
「ぞうやっで考え゛な゛い方が楽゛だも゛んね」
ナナ
「……ぅう゛ん、づまんな゛ざぞう」
スティブナイト
「ああ、つまらないよ」
スティブナイト
「退屈で仕方ない」
スティブナイト
「俺はお前達に須らく死んで欲しかったが……」
スティブナイト
「実際死んだからといって、楽しくはないな」
スティブナイト
そう言って、心底詰まらない様子で。
スティブナイト
足元に転がっていた死体の頭部を蹴り飛ばす。
スティブナイト
「特に何の感慨も沸かない」
ナナ
「………」
スティブナイト
「まあ、さっさと終わらせるか」
ナナ
感情的にとびかかるような衝動より、冷気を纏うように冷え込む。
ナナ
「や゛ーい、一人゛ぼっぢ」
スティブナイト
「そうだな」
スティブナイト
「お前が死ねばもっと一人になれるよ」
ナナ
「一人゛がい゛い゛なら゛、一人゛でいれば良がっだのに゛」
スティブナイト
「ああ、そう思う」
スティブナイト
「だから、この森をもっと広げていけば……」
スティブナイト
「そうして、この国の全てを覆ってしまえれば」
スティブナイト
「一人でいられるだろう?」
スティブナイト
「今そうしている最中だ」
ナナ
「あ゛ははは!一人゛で死゛んじゃう方゛がもっど早゛いのに!」
スティブナイト
「ああ、その通りだ」
スティブナイト
「だけど、さっきも言っただろう」
スティブナイト
「俺はお前達に死んで欲しいんだよ」
スティブナイト
「無根拠に抱く希望も、本能に任せた性欲も、なにもかも挫かれて」
スティブナイト
「須らく、絶望して欲しいよ」
ナナ
「ぅう゛ん……よぐわがんない゛や」
スティブナイト
「分からなくてもいいさ」
スティブナイト
「俺はお前にそんなものを求めない」
スティブナイト
「お前は、ただ」
スティブナイト
「絶望して、死んでくれればそれでいい」
ナナ
「あ゛はは!」
ナナ
会話を重ねても何も埋まらない。
ナナ
もうこの森にいる意味も。
ナナ
スティブナイトが言うように、そんな意味はもうなくなる。
ナナ
この手で殺すから。
スティブナイト
そこにあるのは倦んだ絶望と強烈な悪意。
そして全てに対する殺意。
スティブナイト
その衝動が救世主を動かし、膨大な6ペンスコインの力が振るわれて、
そして反動で言葉を吐く。
スティブナイト
「……あぁ」
スティブナイト
「面倒臭いな」
GM
*スティブナイトが裁判に参加します。
GM
*裁判R4 手札破棄
ナナ
*d3捨て
GM
*裁判R5 手札補充
ナナ
*s4,dQ,cQ,sK,[d6]
スティブナイト
*h3,d4,c9,s10,sQ,hK,dA
スティブナイト
*hK 喝上 
ナナ
*sK 遊撃
スティブナイト
*ワンダー「怠惰のアリス」はまだ発動させない。
ナナ
2d6+4=>7 判定(+猟奇) (2D6+4>=7) > 6[2,4]+4 > 10 > 成功
[ スティブナイト ] HP : 1 → 0
GM
*判決! >スティブナイト
スティブナイト
2d6+6-0 判決表 (2D6+6-0) > 6[2,4]+6-0 > 12
スティブナイト
12~ 無罪!HPが0となる際に受けた不利な効果を無効とし、HPは0になる前の値に戻す。前科は増える。
[ スティブナイト ] HP : 0 → 1
[ スティブナイト ] 前科 : 0 → 1
ナナ
*遊撃の追加効果は消失
スティブナイト
2d6+5=>7 判定(+猟奇) (2D6+5>=7) > 3[2,1]+5 > 8 > 成功
スティブナイト
(本来はここに孤軍ガ載って+4)
スティブナイト
成功。 dQを没収
GM
*裁判R5 ナナ
ナナ
*錬金を宣言
GM
*錬金の効果により、このR、ナナの全ての手札がJokerとして扱われます。
ナナ
*cQをJKとして救済に使用 対象はナナ
ナナ
3d6 (3D6) > 9[4,3,2] > 9
[ ナナ ] 猛毒@R3メアリ : 2 → 0
[ ナナ ] HP : 21 → 25
ナナ
*s4をJKとして吸精 対象スティブナイト
ナナ
2d6+3=>7 判定(+愛) (2D6+3>=7) > 10[5,5]+3 > 13 > 成功
[ スティブナイト ] HP : 1 → 0
GM
*判決!>スティブナイト
スティブナイト
2d6+6-1 判決表 (2D6+6-1) > 5[4,1]+6-1 > 10
スティブナイト
9~11 HPを1点回復して立ち上がる。
[ スティブナイト ] 前科 : 1 → 2
[ スティブナイト ] HP : 0 → 1
ナナ
*d6狂愛 スティブナイトを対象にした吸精の回復をダメージへ変換
[ スティブナイト ] HP : 1 → 0
GM
*判決! >スティブナイト
スティブナイト
2d6+6-2 判決表 (2D6+6-2) > 7[2,5]+6-2 > 11
スティブナイト
9~11 HPを1点回復して立ち上がる。
[ スティブナイト ] HP : 0 → 1
[ スティブナイト ] 前科 : 2 → 3
スティブナイト
脅威度が高い、という事は、力の規模が大きいという事だ。
スティブナイト
その身に纏った力の大きさは、気迫、或いは重圧としてその場に圧し掛る。
スティブナイト
それは今まで姿を見せていた、黒結晶で出来た紛い物には無かった。
ナナ
この脅威度まで裁判を重ねてきたからこそ、目の前の救世主の脅威度の高さがよくわかる。
スティブナイト
ただそこに居るだけで相手の行動を鈍らせ、行動の選択肢を狭める。
それはこの森全体が持っている作用と同じ物。
ナナ
本来なら3人で挑んでいるような裁判に、今はたった1人で臨む。
ナナ
体から生える黒結晶がやけに邪魔くさく感じる。
ナナ
相手の場に乗り込んでいるんだから当然。
そう割り切って、スティブナイトの機先を制する。
ナナ
右手を振り下ろす。
スティブナイト
それを避ける事もなく受ける。
スティブナイト
自らが植え付けた黒結晶がマントを貫き、その下の肢体を引き裂く。
スティブナイト
当然のように負傷し、当然のように流血する。
スティブナイト
その上で、当然のように立っている。
ナナ
距離を取られないことは想定内。
ナナ
そのまま裂けたマントの下に、
ナナ
ズタズタの左手を突っ込む。
ナナ
何らか肉体に触れている気がする。
どうだろう、感覚もあまりよくわからない。
ナナ
そのままに掴み、
ナナ
力いっぱい引きちぎった。
スティブナイト
それは朧の中を弄るような感覚がするだろう。
スティブナイト
何かが引き千切られたのは確かだが、何を引き千切ったのかさえ、黒く霞がかって判然としない。
スティブナイト
それでも立っている。
ナナ
まさしく霞を探るような状態で、そのままに蓄えた疵の力を作用させる。
ナナ
本来なら活性化させる作用を逆に働かせるだけ。
ナナ
朧のようなマントの下にどれほどの効果があるかはわからないが。
体を治しながら追撃をあきらめる。
スティブナイト
それが何を潰したのかは分からない。
スティブナイト
だが、おそらくは肉で出来た何かだ。
ナナ
ちらりとぬきとった左手を見るが、なにもないように『見える』。
スティブナイト
潰れた柔らかいものが溢れ、ぼとぼとと地面に滴る音がする。
ナナ
それでもなんとなく手についたものを振り払った。
スティブナイト
だけど。
スティブナイト
救世主は、己の心臓の力で生きているのではない。
スティブナイト
6ペンスコインの力で生かされているのが救世主だ。
スティブナイト
「それで終わりか?」
ナナ
「……」
ナナ
応えないことが答えになる。
ナナ
一度に振るえる力には限度がある。
ましてやこの場ならなおさらだ。
スティブナイト
嘆息する。
スティブナイト
別に殺されるつもりはないし、こいつはこれから殺す。
スティブナイト
だがそれはそれとして、自分が殺されたとしたら。
スティブナイト
手間が省けるという、ただそれだけの事でもある。
スティブナイト
「そうか」
スティブナイト
「じゃあ、こっちの番だな」
スティブナイト
「せいぜい楽に死ねるよう祈っておけよ」
GM
*裁判R5 スティブナイト
スティブナイト
*眠りネズミのポット >ナナ
[ ナナ ] 封印@R5スティブナイト : 0 → 3
スティブナイト
*dQ 屍毒 >ナナ
スティブナイト
衰弱を付与
[ ナナ ] 衰弱@R5スティブナイト : 0 → 2
スティブナイト
*c9鏖殺 >ナナ
スティブナイト
2d6+5+4=>7 判定(+猟奇)+孤軍 (2D6+5+4>=7) > 7[3,4]+5+4 > 16 > 成功
スティブナイト
1D6+5+5+2+4+2+2 ダメージ(救世主強化・衣装)+逆鱗+孤軍+看破+衰弱 (1D6+5+5+2+4+2+2) > 6[6]+5+5+2+4+2+2 > 26
ナナ
*1点軽減して25点
GM
*判決! >ナナ
ナナ
2d6+5-5 判決表 (2D6+5-5) > 11[5,6]+5-5 > 11
GM
9~11 HPを1点回復して立ち上がる。
[ ナナ ] HP : 25 → 0
[ ナナ ] HP : 0 → 1
[ ナナ ] 前科 : 5 → 6
スティブナイト
*窮鼠!!の効果により、最大4回主動作が可能。
スティブナイト
*s10鏖殺 >ナナ
スティブナイト
2d6+5+4=>7 判定(+猟奇)+孤軍 (2D6+5+4>=7) > 3[1,2]+5+4 > 12 > 成功
スティブナイト
2d6+5+4+2=>7 判定(+猟奇)+孤軍 (2D6+5+4+2>=7) > 6[2,4]+5+4+2 > 17 > 成功
スティブナイト
1D6+5+5+2+4+2 ダメージ(救世主強化・衣装)+逆鱗+孤軍+衰弱 (1D6+5+5+2+4+2) > 1[1]+5+5+2+4+2 > 19
スティブナイト
過殺の効果で酌量-1
GM
*判決! >ナナ
ナナ
2d6+5-6-1 判決表 (2D6+5-6-1) > 3[2,1]+5-6-1 > 1
GM
~2 ランダムな能力値で判定し、成功すれば〈昏倒〉する。失敗すれば〈死亡〉する。
ナナ
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 愛
ナナ
2d6+3=>7 判定(+愛) (2D6+3>=7) > 4[1,3]+3 > 7 > 成功
ナナ
*逆転!この1は6!
[ ナナ ] 自我 : 0 → -1
GM
*ナナは発狂。
ナナ
*結果には特に影響ありません
GM
*ナナは昏倒。
スティブナイト
スティブナイトが手を翳す。
スティブナイト
ナナの足元の地面から黒結晶が生え、その足を貫く。
スティブナイト
スティブナイトが腕を振るう。
ナナ
足を切って身をかわすことすらできない。
スティブナイト
奔流のように猛り狂う黒結晶が、ナナに向かって迫り来る。
スティブナイト
「ほら」
スティブナイト
「避けるか防ぐかしてみろよ」
ナナ
いつものように身を守ることも、メアリのように華麗にかわすこともできず。
ナナ
守るべき相手を失った体に黒結晶が突き立つ。
ナナ
放たれた黒結晶の激流は近くの木にナナの体を縫い止めた。
ナナ
その通り道には貫かれた足が膝から下だけが残されている。
スティブナイト
「まだ生きてる?」
ナナ
悲鳴も上げることすらできず呼吸とも言えない不規則な金属の不協和音が喉から漏れている。
ナナ
錆びつき今にも折れそうな腕で這いずりながら、双眸はスティブナイトを睨めつける。
スティブナイト
「そうか」
スティブナイト
その縫い留められた木もまた、森の一部。
スティブナイト
その幹が黒結晶で覆われ、生成された大きな棘がナナの身体を貫く。
スティブナイト
一つの棘は、ナナの胸を。
もう一つの棘は、ナナの下半身を。
スティブナイト
それぞれ背中側から大きく身体を貫通してせり出し、身動きを封じる。
スティブナイト
「じゃあ、こうしたら死ぬかな」
スティブナイト
その二つの棘が、ゆっくりと動き出す。
スティブナイト
上半身を縫い留めるものは左へ回転、下半身を縫い留めるものは右へ回転。
ナナ
標本のように体を刺しぬく黒結晶は、いくら救世主と言えど普通ならば致命傷だろう。
スティブナイト
「楽に死ねるよう祈ってろって言ったしさ」
スティブナイト
「一撃目で死んでたらまだ楽だったのに」
スティブナイト
「お前、そんなに生きてたい?」
ナナ
「う゛う゛ぅ゛ぅ゛ーーーーーー!!!」
ナナ
ゆっくりと回転を始める2つの黒結晶に金属でできた獣のような声が響く。
ナナ
吐き出されるのは血でもなく、キラキラとした黒結晶の破片。
ナナ
激痛で見開かれた瞳。それはもうスティブナイトすら見ていない。
ナナ
左手がペた、ぺたと力なくその身を引きちぎらんとする黒結晶に抵抗する。
ナナ
当然それは何の意味も成さずーー
ナナ
二つの支点でゆっくりとその体は引きちぎられていく。
ナナ
「-------っ!!」
ナナ
声にならない叫びがあがる。
ナナ
怒りでも懇願でも哀しみでもない。
ナナ
ただ大きく甲高い金属音が森に響いた。
スティブナイト
「煩いな……」
スティブナイト
その声もさることながら。
黒結晶をべたべたと触る左手。
スティブナイト
その動きとその感触が煩わしいものだから。
スティブナイト
その辺に落ちていた、丁度良い刃物で斬り落とした。
ナナ
もうここに繋がる手はない。
ナナ
視野は限りなく狭く。
ナナ
導く声もない。
ナナ
何もかもをこの森に失ってきたナナの体は、そして2つに分かたれた。
スティブナイト
足元にどうでもいい物体が転がる。
スティブナイト
もはや決着もついた。
どうせ蹴飛ばしても楽しくはない。
スティブナイト
それでも、どうやら
スティブナイト
この物体はまだ生きているらしい。
ナナ
体を引きちぎられようと、意識を失おうと、自分が何者か考えることができなくなっても。
ナナ
それでもなお動く。
生きている。
ナナ
果たしてこれは、生きているのだろうか?
スティブナイト
「分からないな」
スティブナイト
「そうまでする程、生きていて良いことがあったか?」
ナナ
何のために生きていたのか、何のために生きていたいのか。
スティブナイト
「あそこに転がってる死体はずいぶん物分りが良かったのに」
ナナ
その理由すらも投げ出して、己が己である証明すら手放してまでしがみついている生は。
果たして本当に自分の考えなのだろうか。
ナナ
これは、私の、あたしの、ナナの、誰の?
ナナ
自分というものが液体に溶けて消えてなくなるように。
スティブナイト
別に、ここからとどめの刺しようなんていくらでもあるだろうが。
スティブナイト
「……面倒になってきたな」
スティブナイト
「んー、あー、うん、そうだな」
ナナ
ただ、何か手放したくない約束を握りしめるように意識がとぎれた。
スティブナイト
「おめでとう」
スティブナイト
「お前は生き残ったよ」
GM
とりあえず、今は。
GM
*裁判終了 PKの勝利です
GM
 
GM
*亡者化判定
GM
発狂した人~ (で死んでない人~)
グラセ
はい。
ナナ
はい!
GM
亡者化判定です。
ナナ
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 愛
グラセ
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 愛
ナナ
2d6+3=>7 判定(+愛) (2D6+3>=7) > 9[4,5]+3 > 12 > 成功
グラセ
2d6+0=>7 判定(+愛) (2D6+0>=7) > 7[6,1]+0 > 7 > 成功
GM
両者成功。
GM
亡者になった方はいませんでした。
スティブナイト
よかったね。
GM
 
GM
*エピローグ
GM
救世主達の意識が覚醒する。
スティブナイト
そこには気怠げな表情で、黒結晶で出来た椅子に深く座り込んでいる者。
GM
そして拘束されている者、拘束されるまでもなく身動きができない者。
GM
それから死体。
グラセ
救えなかったな。
グラセ
救えなかった。
ナナ
ぼんやりと覚醒した頭と視界が地面に転がっていることをかろうじて認識させる。
グラセ
転がった半身と、黒尽くめを伏したまま眺め、思う。
メアリ
死体は何も語らない。
その手にはナイフすらもない。
ナナ
体をうごすどころか顔の向きを変えることすらできない。
ただ視界に、ぼんやりとグラセとメアリと、スティブナイトが見える。
スティブナイト
そのナイフは、スティブナイトの手の中で弄ばれている。
メアリ
死体は形を保っていた。
ナナ
正確にはメアリではなく、メアリだった死体。
メアリ
けれど、戦いの余波の跡はある。
メアリ
けれど、死体は何も語りはしない。
グラセ
そのどれにも、わたくしでは及ばなかった。
無意味でなかったとして。コールタールの如、絶望を払うには。
ナナ
この手で殺した死体が何も言わずに転がっている。
グラセ
同じ底無し沼に在る者同士では、足を引っ張り合うことしかできない。
ただ、それだけのこと。
メアリ
けれどその顔は、今まで見た中で最も穏やかだった。
メアリ
──まるで、微笑んでいるような。
グラセ
悪いな、メアリ。
ナナ
ただ這いつくばった状態で、ふわふわとした頭で死なない方法を考えている。
ナナ
考えている、ふりをしている?
グラセ
まだすぐには、お前の所へ向かえそうにない。
ナナ
およそ人の生きた状態とは程遠く、ただ自分の認識だけが生きていると思っている。
メアリ
さて、さて、死後の世界なんてものは。
メアリ
本当に存在しうるのか。
メアリ
それでも待っています、と言ってしまったからには。
メアリ
そうしなければいけないでしょうね。
メアリ
けれども、こんなものはまぼろしだ。
メアリ
聞こえもしない。
メアリ
死体は何も語らない。
メアリ
語る口がない。
グラセ
そう信じられることが、所謂“しあわせ”だとして。
ナナ
死後の世界なんてわからない。
ナナ
ただ、自分を失うということだけがわかっている。
スティブナイト
なんにせよ
スティブナイト
物語の続きは、生きている者の口から語られなければならない。
スティブナイト
面倒な事に。
スティブナイト
「おはよう」
スティブナイト
「元気?」
ナナ
それが怖い。
ナナ
「----」
ナナ
かすれた金属音と鉱物がぶつかる音。
ナナ
ごぼりとこぼすように乾いた黒結晶を口から吐き出す。
ナナ
「………ぞ、ん゛な、わ゛げ、な゛い゛」
グラセ
「……ああ」
グラセ
「会話する気があるとは思っていなかった」
スティブナイト
「殺して、終わり」
スティブナイト
「に、するのも面倒になってきてさ」
スティブナイト
「そこに転がってるのがなかなか死ななくて」
スティブナイト
「どうようかって思ってたとこ」
ナナ
「だ、で、い゛われ゛だ、も゛ん」
ナナ
だだをこねるように呻く。
ナナ
「がんがえ゛、れ゛な゛ぐ、なる゛」
ナナ
「や゛、ら゛」
グラセ
死にながら。死を肯定しながら。“生きてくれ”、と。
グラセ
結局は、誰も彼もが同じだったのかもしれない。
グラセ
「……」
グラセ
「気紛れで、怠惰」
グラセ
「お前の方が余程、王様に向いていると見える」
スティブナイト
「あ、そ」
スティブナイト
「じゃあ王様らしく命令するね」
スティブナイト
この煩いのを放置しておくつもりはない。
スティブナイト
さりとて、どうすれば死ぬのか探りながら試行錯誤、なんて面倒なことは御免だ。
スティブナイト
ならば最も簡単な方法にして、当初の目論見と同じことをすれば良い。
スティブナイト
「はい、立って」
スティブナイト
その言葉はグラセに向けられる。
スティブナイト
正確には、その躰の奥深くまで侵襲しきった黒結晶に対して。
グラセ
そうまでして指図せずとも、敗者に意思を持つ権利はなかろう。
スティブナイト
その通り、意思を持つ権利はない。
グラセ
さりとて、最早這うことしか能わないような体は、お前の命令に従う。
スティブナイト
だが同じくらい、手放す権利もない。
スティブナイト
お前の意識はどこまでもクリアだよ。
グラセ
そうだな。
スティブナイト
「じゃ、そこに転がってる、それ」
スティブナイト
「殺しておいて」
グラセ
“しあわせ”とは、まるでさかさ。
グラセ
杖が足元の結晶を抉りとり、よろめきながら、お前たちの方へ。
スティブナイト
「ああ、刃物使う?」
スティブナイト
ほら、と投げ渡される。
グラセ
「……」
ナナ
耳に入る言葉が示す意味を、わからないと手放すことができない。
ナナ
グラセの言葉でしがみついている生を。
グラセの手によって断たれる。
ナナ
ほら、投げ出されたのはメアリのナイフだ。
グラセ
カランと音を立てた方へ俯く。それを、つめたい心の疵が拾い上げる。
スティブナイト
「それが終わったらさ」
スティブナイト
「森から出てって、帰っていいよ」
スティブナイト
「ああ、でも黒結晶出せるようになってるはずだから」
スティブナイト
「目についたもの全部それで刺してってよ」
スティブナイト
「とりあえず死ぬまで、よろしくね」
ナナ
ナナが殺したメアリの武器で、ナナを拾ってくれたグラセに殺される。
ナナ
終わっちゃうんだ。
グラセ
「そうか」
グラセ
お前の言葉などどうでも良いような、気のない返事をする。
スティブナイト
「そうだよ」
スティブナイト
椅子から立ち上がり、踵を返す。
スティブナイト
あとは見届ける事すら必要ない。
グラセ
お前はそういうが。結局のところ。
グラセ
胸の奥に刺さる“これ”はお前のものでもあり。己のものでもある。
グラセ
故に、それで何か人に施したのだと思っているのならば。可笑しいな。
グラセ
足取りはそのまま、違えるようにして、仲間の下へ辿り着く。
スティブナイト
「それじゃ」
スティブナイト
「お元気で」
ナナ
こちらへ近づく足音と離れていく足音。
スティブナイト
離れる足音は去って行った。
ナナ
明確な死の足音がこちらへと迫る。
死を与えようとしていた足音は去っていく。
グラセ
「……ナナ」
ナナ
死にたくはない。生きていたい。こうやって思考をすることを手放したくない。
ナナ
「グラ、ゼ」
ナナ
名前を呼ばれ、ほんのわずかに声が喜色を示す。
グラセ
「お前は、強いよ」
グラセ
跪いて、裾を汚す。
尤も、既にぼろぼろで、対して代わり映えもしない。
ナナ
グラセの声が上から降ってくる。
いつもと同じ声色で。
ナナ
白い手足も、衣装も、黒く汚れ、ボロボロだ。
ナナ
グラセはもっと、白いままでいてほしかったななんてことを考えている。
ナナ
ぼんやり見上げる視線は、しかし白のヴェールで遮られた。
ナナ
「で、じょ?」
グラセ
その表情は、やはり窺えない。何を考えているのか、定かではない。
ナナ
自然と笑みがこぼれる。
グラセ
表情豊かな、嬉々として口角を吊り上げてみせるもうひとりは、
ただ横たわるのみ。
グラセ
人と上手く関わることは、生来苦手だった。
グラセ
わたくしには、荷が重いな。メアリ。
ナナ
今これからグラセに、あれほど恐れていた死を、廃棄を、終わりを、すべての終点を加えられるというところなのに。
メアリ
でも、ここまで来たでしょう。
メアリ
たしかに、私たちはここまで。
ナナ
グラセに拾われたことを、メアリを仲間したことを、裁判を重ねて自信をつけたことを、3人で宿に泊まったことを、過ごした日々を。
ナナ
思い出している。
メアリ
それは幻ではなくて。
メアリ
たしかにあった、日々のあかし。
ナナ
何も増えることがない日々から落とされて。
堕ちてきた世界で得たものの方があまりに多い。
グラセ
そうだな。
グラセ
ここまで来た。
グラセ
かつて生きていたときよりも、ずっと多くを携えて。
ナナ
「グラ、ゼ。手゛……」
ナナ
そうやってわずかに持ち上げた手は、どちらも繋がる先はない。
メアリ
さて、その咎の半分を。
メアリ
私に預けてみては。
メアリ
そこにナイフなんて無ければ。
メアリ
あいつが死ななければ、と。
ナナ
そうだ、伸ばされた手を取ることができなかったから。
ナナ
こうなったのかな?
メアリ
過ぎたことは過ぎたこと。
メアリ
すべては喪ってから気付く。
メアリ
それに先に気付けていれば、この世になくしものなんてないはずで。
メアリ
だから、多分。
メアリ
私たちはここが終着点だったのだろう。
グラセ
とても人を殺めるのには向かない得物。
メアリ
とても人を殺めるのには向かない得物。
グラセ
それでもお前は、これで幾人もを屠ってきた。
メアリ
それでも私は、これで幾人もを屠ってきた。
グラセ
故にこれは、お前の罪。
メアリ
故にこれは、我々の罪。
ナナ
そう、きっと、みんなの罪。
グラセ
そうだな。
グラセ
だが。
グラセ
だが、メアリ。
グラセ
お前に。お前らに。“それ”をくれてやるものか。
ナナ
ただ言葉もなく流れているだけの時間だったのに。
グラセ
切っ先でなく。手のひらがナナの頬をなぞる。
ナナ
なんだかグラセとメアリと話をしているような気がして。
ナナ
無性にうれしくなった。
ナナ
ひんやりとしたグラセの手。
ナナ
何度も触れてもらったような気もするし、ほんの僅かな回数だったかもしれない。
グラセ
手のひらは、だれかとだれかを結び付けるためのもので。
グラセ
けれどもこの指先は、痛みを感じないためのもの。
全てを引き受けるためのもの。
グラセ
メアリ。お前の我儘の分だけ、わたくしもそうするよ。
ナナ
グラセの体温と、メアリの体温を。その両手に携えていたことがある。
ナナ
不確かな記憶。あるいは夢みた幻。もしくはほんの些細な思い出。
グラセ
「ナナ」
ナナ
それでも二人の繋がりが、混ざり合った熱となって自分の中にあったのだ。
ナナ
「ぅ゛ん」
グラセ
「わたくしは、お前たちを愛しているよ」
ナナ
「ぁ゛ぃ゛がと」
ナナ
その言葉に愛を返す。
メアリ
死体は何も語りはしない。
メアリ
語ることが出来ない。
メアリ
けれど、生きていたのであれば、きっと。
メアリ
少し笑ったのだろう。
ナナ
愛?愛だ。
愛だったんだろうか?愛着がある。
どんな愛が?3人の繋がりがある。
ナナ
愛でつながっていたんだ。きっとそう。
ナナ
そう思えば、怖くないような気がした。
グラセ
静かに、水面をうつように、波紋の広がるように。
女の頭上に霧が収束する。ひとときの小休止を終え、終止符を打つために。
グラセ
ナナの胸元に、手放したもうひとりの証を寝かせる。
グラセ
お前に、この罪はやれない。
グラセ
どうしようもなく、絶望でしかないこの世界の中で。
グラセ
そうすることがほん少しだけ、救いのように思えるから。
グラセ
我儘に付き合ったのだから、そのくらい良いだろう。
ナナ
置かれたナイフを胸元に感じながら、そっと目を閉じる。
ナナ
きっと、そうした方がいい。
ナナ
閉じた目の向こうには、暗闇が広がっている。
ナナ
何もわからない、真っ暗な終わりへと向かう道。
ナナ
グラセとメアリの手に引かれるなら怖くなかった。
ナナ
ひとりぼっちじゃあない。
そう思えるだけで、救われる。
グラセ
それは本来、誰かの首を落とすはずだったもの。
グラセ
メアリ。
グラセ
ナナ。
グラセ
持ち合わせていたのは、お前たちのための声でなく。
お前たちのための温度でなく。
グラセ
故に、偏に不器用であったかもしれないが。
グラセ
それでも。
グラセ
お前たちを、愛している。
グラセ
 
GM
そうして2つが終わった。
GM
そうして2つが終われなかった。
GM
終われなかった者達が、上を向くような事も無く、希望を抱く事もなく。
GM
あとは只々彷徨うばかり。
GM
出口も無く。
GM
前も向けず。
GM
明かりも差さず。
GM
深い森のような、絶望の中。
GM
 
GM
DoA「絶望の森」
GM