お茶会2
スティブナイト
それは先程までの軽やかな音ではなくて。それだけで、セシリアのものではないとわかる。
スティブナイト
息をつく音。結晶の生えた木にもたれかかって座る音。
スティブナイト
満身創痍で、隙だらけのように見える。
イーデン
全身に黒結晶を張り付かせて、酷く憔悴している。
スティブナイト
ワインと、他にもいくつかの液体が混ざったような。
スティブナイト
「俺が俺をこういう姿だと定義しているように」
スティブナイト
「お前が自分のことを天使だと定義してるなら」
スティブナイト
「……信じる者は救われる、だっけ?」
スティブナイト
「そういうこともあったかもしれない」
セラ
「そういうことばかりなら、よかったのですが」
セラ
「堕落の国であなたのような救世主を相手にしていては、そうもいかない」
スティブナイト
「コインの実力以上に力が出せるとは、まぁ」
スティブナイト
「……まぁ、そんなに見ないけどね」
スティブナイト
「そういう力を信じて公爵家はお前たちをここに寄越したんだろ」
スティブナイト
「公爵家がここに寄越すのは、そういう夢とか希望とか」
スティブナイト
「真面目にラストアリスを目指すとか」
スティブナイト
「そういうのを信じる奴が多いんだよ」
セラ
「あなたの相手をさせようという救世主だ。 それなりの脅威度でなければならない。 それならば、ラストアリスも視野に入る」
スティブナイト
「……別にコインの枚数とはそんなに関係なくて」
セラ
「連携の取れたチームである必要もある。それは絆と呼ばれてもおかしくない」
スティブナイト
「ただ盲目的に何かを信じる奴ばかりだったんだよ」
スティブナイト
「公爵家から送られてくる奴"だけ"」
セラ
「僕は自分が嫌われているという発想はありませんでした。 なかなか新鮮な考え方です」
スティブナイト
「お前、あんな人道的な兵器を開発してる連中のこと」
スティブナイト
「本当に信じてたなら、笑い話だけど」
セラ
「善人にも悪人にも好かれる存在はいるでしょう?」
スティブナイト
「この森が都合よく利用されてるってことを薄々勘付いてる」
セラ
「あなたの討伐依頼は総力戦に見えましたたが……」
スティブナイト
「それで公爵家がどうなっても、興味はないし」
スティブナイト
「救世主にこの世界を救われたくないから」
スティブナイト
「世界が停滞することで利益を得てる奴がトップにいるとかね」
スティブナイト
「有名でやる気があって、世界を救うことを真面目に考えてるようなやつに広報をやらせ」
スティブナイト
「その気になった奴を公爵家に集め」
スティブナイト
「育ったやつからこの森に送り込む」
スティブナイト
「そいつらは確かにお前のことを信じてたかもしれないね」
スティブナイト
「誰かが仕組んだものだとしたら?」
スティブナイト
「お前が集めた信仰が、ただの都合のいい道具だとしたら」
イーデン
その仲間は、今はあなたの足元に蹲っている。
イーデン
間近に迫る敵対救世主に向ける殺意すらない。
イーデン
人生の全てを踏み躙られ、届かぬ救いを求めるばかりの哀れな男。
スティブナイト
「ただの都合のいい救済装置だと思われているんなら」
スティブナイト
「お前の天使性って、なんだろうね」
イーデン
あなたを本当の天使だと言っておきながら。
イーデン
あなたに救ってもらえるとは、心の底からは、信じられていない。
スティブナイト
お前の足元で小さく蹲るぼろぼろの存在を。
セラ
三月兎を救えなかった。カノンを救えなかった。ミキを救えなかった。スティブナイトを救えなかった。イーデンを救えなかった。 その他にも、たくさん。
スティブナイト
「その果てに辿り着くものが、何か」
イーデン
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 愛
イーデン
2d6+0=>7 判定(+愛) (2D6+0>=7) > 6[5,1]+0 > 6 > 失敗
[ イーデン ] HP : 18 → 17
スティブナイト
2d6+5=>7 判定(+猟奇) (2D6+5>=7) > 6[3,3]+5 > 11 > 成功
[ セラ ] 天使 : -1 → -2
[ セラ ] 前科 : 0 → 5
GM
*心の疵「天使」を「絶望」に変更してください。
セラ
貧しい堕落の国、30日ルール、何人いるのかわからない救世主達。
セラ
パンディオンの元にいたときから、こんな生活は長く続かないと、知っていた。
セラ
それでも、今日を、そして明日を生きたかった。
セラ
そのためにできることを探した。 そのために裏切る相手を探した。 そのために犠牲にする相手を選んだ。
セラ
それでも、誰かに信じてもらわなければ生きていけないから。
セラ
誰かから信仰されなければ存在を保てない。誰かからの信頼を得なければ自我を保てない。 誰かから好意を得なければ呼吸ができない。 誰かから有益だと思われなければ肉体を保てない。
セラ
信じてくれるなら、誰でもよかった。 髪の毛一筋分だけでも他人よりも自分を特別だと思う相手を探さなければならない。 そのためにはあらゆることをしなければならない。
セラ
あらゆること? 私は天使であり救世主なのに?
セラ
神とそれに仕える天使以外の全ては、私に頭を垂れるべきであるのに?
セラ
そんな立場はこの堕落しきった国では何の意味も持たない。
セラ
存在するためには、喜んで頭を垂れ泥を啜り薄汚い精液を飲み下さなければならない。存在が消えることが恐ろしい。
セラ
それは自分が死ぬというだけではなく、元の世界で自分を取り巻いていた神や天使や人の子達が、堕落の国においては存在しなかったことになるのと等しいと思う。
イーデン
仲間へと放たれるその凶器を、澱んだ瞳で見つめている。
イーデン
自分に、その力がないことを知っているから。
セラ
成長して体重を支えられなくなった翼は、ただ、結晶を育む床として。
セラ
それは、最後までイーデンに助けを求めることはしなかった。
セラ
お互いに理のある提案、というような言い方をしていたが。
イーデン
パンディオンを打ち倒し、精霊たちを解放する。
イーデン
その提案に乗らなければならない理由は、当時のイーデンとセシリアにはなかった。
イーデン
コインを精霊たちに返してやる必要もなかった。
イーデン
パンディオンの溜め込んだ資産をそのまま独占する。
イーデン
その権利すら、あの裁判の勝者にはあった。
イーデン
持つべき者、搾取された精霊たちにそのコインを返し、
セラ
あの頃の精霊らしく小さな体から、すっかり人間のように、大人のように、男性のように変わった体に、結晶が蔓延る。
セラ
死体が虫に食われるように、死体から植物が生えるように。
セラ
「あなたは自分の絶望に夢中で、僕のことなんてどうでもいいんだ」
セラ
「でも他にちょうどいい相手がいなかったから、仕方ないでしょう?」
セラ
「配られたカードで勝負するしかないってやつですよ」
セラ
「いえ、もう少しマシな手だと思っていたんですが」
セラ
「自分は駄目な奴だと認められて気持ちいいですか?」
イーデン
目の前の存在はもはや天使でもなんでもなく。
セラ
「信じたから、信じてもらえると思っていたのに」
セラ
「あなたのことが大事だと、伝え続けてきたのに」
セラ
「そんな事言わずに頑張ろって思っちゃったんだけど~~」
イーデン
全身に黒い結晶を纏わせたままに、堕ちた救世主からの罵倒を聞く。
イーデン
そのように反駁することすら、もはや、無為。
イーデン
拒むことはかなわないと、そのように、思う。
セラ
「ねぇ、当ててみてくださいよ。 いいでしょ? 内心当てクイズくらい僕にもやらせてくださいよ」
セラ
「人の機嫌を取るポーズすらしてくれないんですね」
セラ
「自分は散々機嫌を取らせて、そのくせ望んでないみたいな顔をしてきたくせに」
セラ
「まぁいいですよ、教えてあげましょう。僕は慈悲深いですからね」
イーデン
神の御使いに救いを求める哀れな信徒の仕草に似て。
セラ
「あなたは、あなたの大事な人達に、生きていたいと思って欲しくないですか?」
セラ
「セシリアと、セシリアと、セシリアと一緒に死ねば幸せだったんですか?」
セラ
「あれ、セシリアの人数足りてるかな?まぁいいか、アハハ!」
イーデン
押し込めた空気の奥に、荒らぐ呼吸をどうにか隠そうとして。
セラ
「あなたはそうじゃないかもしれないけど、大体のものは生きたいと思っているんですよ」
イーデン
誰もが生きたかったはずだ。死にたくなかったはずだ。
イーデン
自分が殺し、犠牲として積み上げた救世主たち。
セラ
「まぁ、いいですよ。 人間なんて所詮そんなものです」
セラ
「あなたが特別悪いわけではない。あなたは何も特別ではない」
セラ
「僕は天使であっても、なくても優しいですから、あなたを許します」
イーデン
自分の身に降りかかることは、すべてよくあることだと。
セラ
「僕にとってもはや、あなたはどうでもいい存在だ」
セラ
「おしゃべり上手な男でもないし、このくらいで失礼しますよ」
セラ
「もう、僕はあなたの機嫌を取る必要はないのだから」
イーデン
そのことを、誰よりも正しく理解している。
セラ
「僕が許すことを、あなたは知っているはずだ」
セラ
そう言って、薄い被膜の翼を広げる。 幾分細身になった男の体はふわりと浮いて、何処かへ消えた。
イーデン
その消えゆくさまを見届けることすらなく。
イーデン
その最中の記憶にすら、不明瞭で不可解な部分がいくつもあって、
イーデン
俺たちの旅の始まりは、果たしてどこにあった?
イーデン
今は捻くれた希望だけが、ただ、男の胸の裡にある。
*
あなたは痛む身体を引きずって、森の中を歩いている。
*
遠く、発狂した三月兎たちの狂騒が聞こえてくる。
*
三月兎たちに見つかれば、また何をされるか分からない。
*
公爵家の放った人道的で道徳的な兵器は、実にあなたに対して効果的だった。
*
あなたと感覚の繋がっている、広がり続けるこの黒結晶の森。
スティブナイト
森のあちこちの結晶がひび割れ、ワインやら何やらの液体に漬けられている、のが。
*
絶望の森などと呼びならわされるあなたの庭。あなたと感覚の繋がっているあなたの領域。
*
三月兎たちに無残に踏み荒らされて、崩れつつある。
*
三月兎などよりももっとあなたにとって嫌なものが。
セシリア
あなたが支配し、操っているはずの結晶が。
スティブナイト
三月兎に嬲られた身体はそれだけで容易にバランスを崩す。
セシリア
あなたとは対照的に、軽やかに、ちょっとした散歩のように。
セシリア
「すいません、ここはどうもいつも暗くて」
セシリア
そうして、初めに会った時よりはずいぶん小さくなったあなたの前で、
セシリア
足元に敷き詰められるように広がった黒結晶のひとつを、拾い上げる。
スティブナイト
黒結晶が触られたときにびくりと身を震わせて、
スティブナイト
腕にそれが刺さったときに顔を顰めた。
*
この森のどこで起こっていることも、あなたは把握できる。否。
*
あなたの意志にかかわらず、否応なしに把握してしまう。
セシリア
細かくひびの入った黒結晶は、あなたに突き立てられると同時に、女の膚も傷つけている。
セシリア
黒結晶が交じりいって、ぼろぼろとこぼれ。
セシリア
そして、あなたに突き立てられた黒結晶に、すいつくように降りかかる。
セシリア
黒結晶は森を広げるために、人間の心の疵と絶望によって増殖してゆく。
スティブナイト
やめろ、という言葉は口から出ない。
セシリア
セシリア・アンティカイネンは異常性に満ちた救世主。
スティブナイト
それが無意味であるということを知っている。
セシリア
恋心でもって自分を規定し、希望でもって仲間を信じる。
セシリア
ただし、セシリアのこの『希望』と呼ばわる疵は。そもそも。
セシリア
イーデンとセラ、その二人の救世主に囲まれなければ、懐き得なかったものだろう。
スティブナイト
絶望の色の瞳が諦めたようにお前を見ている。
セシリア
だが、自分の目の前に、希望を抱いている救世主がふたりいた。
セシリア
だから安心して叶わぬ恋に溺れたままでいられた。
セシリア
愛する相手を見ると、人間の脳の中では脳内物質が分泌される。
セシリア
ドーパミンが増殖し、ユーフォリア(多幸感)を感する。
セシリア
相手の情報をより取り入れようと、瞳孔が開く。血液が巡り、頬が紅潮する。
セシリア
瞳孔が開いているのだとしたら、それは暗い森の中にいるからだ。
スティブナイト
問う声は小さく掠れて、震えている。
セシリア
恋をした人間はミラーニューロンが働くことによって、相手の真似をする。
セシリア
オキシトシンが分泌されることで幸福を感じ、空腹や眠りや苦痛さえ鈍くなる。
セシリア
「分かりました。あなたの口から聞いたから」
セシリア
押し込められていく。女の疵が、あなたへと伝染していく。
セシリア
それと同時に、あなたから抜け出していくものがある。
スティブナイト
乾いた笑いだか、吸い込んだ息の音だか。
セシリア
あなたは女がとっくに分かっていることを知っている。
セシリア
この苦しみがここから消えてなくならないことを。
セシリア
あなたの心の疵の影響を受け、脳内物質などこの女にはもう働いていない。
セシリア
*スティブナイトの『黒結晶』を愛で抉ります。
黒結晶A
2d6+5+2=>7 判定(+脅威度) (2D6+5+2>=7) > 9[6,3]+5+2 > 16 > 成功
セシリア
2d6+4-6=>7 判定(+愛) (2D6+4-6>=7) > 12[6,6]+4-6 > 10 > 成功
GM
*セシリアは価値が……えっと……いくつ? わかんないんだけど小道具を一つ入手できます。
セシリア
>PCがお茶会中の判定でスペシャルを起こした場合〔自身の所有する六ペンス/2〕までの価値の小道具を1つ入手します。
セシリア
それは、黒結晶を踏みしめる女の足元からではなく。
スティブナイト
もとからこの黒結晶のちからががこの女によって歪められていたことを。
セシリア
あなたの目の前で、巨大な結晶の槍が形成されていく。
セシリア
抉られた希望が女の中でのたうっている。
砕かれた恋心が女の中でまだ暴れている。
スティブナイト
見開いた目は次第に諦めの色に変わっていく。
スティブナイト
諦観。絶望。それを心に宿した救世主の、その色。
スティブナイト
この力があれば。これで歯向かうものを全員倒せば。まだ。
スティブナイト
何も持たない弱者ができる、最後の抵抗だった。
スティブナイト
むせて、口からこぼれ落ちるのは黒結晶。
セシリア
そしてその直後に、あなたを致命的な脱力感が襲う。
スティブナイト
そういうことを言う回路はもうとっくに擦れて消えていた。
セシリア
「イーデンの作る世界は、イーデンの望む世界は、正しいわ」
[ スティブナイト ] 黒結晶 : 0 → -1
セシリア
女は笑いながら、あなたの前から立ち去った。
セシリア
黒結晶を通じてあなたに伝わってくるのは。
スティブナイト
ここにいるのは何の力も持たないただの女。
スティブナイト
自らの絶望から出たものひとつ取り払えずに。
スティブナイト
泣きわめき、叫び、怯え、許しを請う、その気力すら。
セシリア
あなたの森の中で、高らかに愛などというものを叫び続けている。
セシリア
ふと足を止めて、その羽ばたきの音へ耳を澄ませる。
セシリア
近づいていく。無防備とも思えるような足取りで。
セシリア
「イーデンは、様子がおかしかったんです」
セシリア
「イーデンが、公爵家の男相手に、身体を売っていた、と」
セシリア
「そういう話が出たことがあったでしょう」
セシリア
「しなければいけないんじゃないか、って」
セラ
「イーデンもいつも言っていたでしょう、上手くやれと」
セシリア
「恐らく、スティブナイトの力のせいでしょう」
セシリア
「彼女の力が干渉して、完全にはうまくいかなかった」
セシリア
「そうですね、イーデンは、それで怒ってしまったんですね」
セシリア
「このままスティブナイトを倒せれば、イーデンを今度こそ助けることができる」
セラ
言葉の通り、セシリアから力を感じる。 スティブナイトと同じ力。
セシリア
この森を支配しているのは、スティブナイトではなく、この女なのではないかと思えるほどの。
セシリア
「恐らく、彼女の心の疵の根幹、もっと深く食い込んだ部分」
セラ
「僕は、セシリアの行動を間違っているとは思いません。上手いやり方ではありませんが」
セラ
「イーデンの苦しみは、人格の深くまで根付いていた。 彼に幸福を感じさせるには、長い年月が必要だ」
セラ
「でも、心の疵を使う救世主の、心の疵を治すことはできるのか?と考えると」
セシリア
イーデンの状態は、以前よりもずっと良くなっていた。
セシリア
そういう希望を、自分は持っていたはずだった。
セラ
そういう希望を、自分は持っていたはずだった。
セシリア
希望は抉れ、イーデンに愛を返してもらえず。
セシリア
本当は、この辛さが、痛みが、苦しみが、猜疑が、悲しみが、
セシリア
愛を返してもらえないからではないことを、本当は分かっている。
セシリア
「そうすれば、また三人で、一緒に戦える」
セラ
「あなたに出会ったばかりの頃、僕はずっと思っていたんです」
セラ
「どうしてこんなに賢い女が、愚かなふりをしているのかと」
セラ
「あなたは誰よりも賢い。イーデンよりも、僕よりも」
セシリア
「愚かであることで……鈍くなることで、私は強くなってきた」
セラ
「イーデンの絶望と同じように、心の疵に深く刻み込まれ、動かせないものだった」
セラ
「僕は幻想を信じて生きていけるほど、夢の住民ではない」
セラ
「しかし幻想の住民だから、何かを信じることでしか生きていけない」
セラ
「だから、確実に存在するものを信じることにした」
セシリア
けれどその言葉は、以前よりもずっと力なく。
セシリア
もう、懐いている愛だけでは立っていられないからだ。
セシリア
イーデンのそばに、他の女がいなくて、愛されていれば、この辛さは消えるのではないか?
セシリア
ほかに仲間がいなくて、二人きりであれば、この辛さは消えるのではないか?
セシリア
スティブナイトから力を奪い、彼女を殺せば、すべてが元通りになって、この辛さは消えるのではないか?
セシリア
イーデンが、セラを殺せるか、と言っていた。
セシリア
俺の益になるために、天使を殺せるのかと。
セシリア
そう私に問うて、私はなぜ彼がそんなことを言うのか分からなかった。
セシリア
私たちに必要な天使を、大切な仲間である天使を殺して、
セシリア
彼のために無意味で不利益で破滅的な愛を示せば、
セラ
「僕はね、イーデンの目の前でスティブナイトに襲われました」
セシリア
あの状態のイーデンから離れては行けなかった。
セシリア
森に来たイーデンが、言ってしまえばいつもよりも、格段に使い物にならないと。
セシリア
だから、かれを守らなければならなかった。
セシリア
そうすれば、イーデンが立てなくても、セラを守れたかもしれない。
セシリア
優先されるべきは、常にイーデンであって、
セシリア
目の前の天使が、いや、天使であったものが。
セシリア
どうしてこんなことを問うているのか分かる。
セラ
* セシリアの心の疵『希望』を才覚で抉ります。
セラ
* ティーセットと~~~~~~~子山羊皮の手袋も乗せちゃおうかな
[ セラ ] ティーセット : 1 → 0
[ セラ ] 子山羊皮の手袋 : 1 → 0
セラ
2d6+4+2+2=>7 判定(+才覚) (2D6+4+2+2>=7) > 7[1,6]+4+2+2 > 15 > 成功
[ セシリア ] 希望 : -1 → -2
[ セシリア ] 前科 : 0 → 5
セシリア
それでよかったはずのものが、
そうではなくなってしまった。
セシリア
本当はよくなかったものを、よしとしてきたのが、
できなくなってしまった。
セシリア
髪は黒く染まり、膚は結晶に埋めつくされつつあり、
セラ
「いくら末裔を助けても、いくら救世主を助けても、いくら仲間を助けても」
セシリア
夢のようなその言葉を、セラが言っていたことがあった。
セシリア
ラストアリスになれるのは、きっとただ一人だと思っている。
セラ
「あなたは、イーデン以外のものを見ていない」
セシリア
だから、イーデンのために、すべてを使い潰すつもりで。
セシリア
自分の命さえ捧げられるつもりでここまで来た。
セシリア
セラは違うということを知りながら、彼を私の愛に利用してきた。
セシリア
本当はそれを分かっていたはずなのに。それでよしとしてくれたのに。
セラ
「頼れるのが、あなたと、イーデンしかいなかったから」
セシリア
私たちは、一番肝心な時に、セラを守れなかった。
セシリア
絶望だけがここにある。私はそれをよく知っている。
セシリア
けれど、セラとイーデンは、希望を抱いてくれている。
セラ
希望だけがある。 あらゆる存在は生きていくために希望が必要だ。
セラ
それがどんなに荒唐無稽なものであっても、捨てることができない。死ぬまで抱えていてしまう。
セシリア
信頼に信頼を返せない。
希望に希望を返せない。
セラ
信頼して欲しかった。
希望を抱いて欲しかった。
セシリア
女の目はただ冷えていて、セラの言葉にただ納得している。
セシリア
「私もイーデンを愛することしかできない」
セシリア
「あなたは、信じてもらうために、信じるしかなかった」
セシリア
「あなたは、それでもいいって思ってくれてた」
セラ
「あなたの愛のお陰で、心の痛みを誤魔化せた」
セシリア
思い込もうとすることは、できるかもしれない、と思う。
セシリア
私が苦痛なのはいいけれど、
あなたが苦痛を感じているのは耐えられない。
セシリア
そして、イーデンのコインも手に入れられれば、
セシリア
ラストアリスほどとまではいかなくても、私の力はより高まるだろう。
セシリア
そうすれば、今度こそ、イーデンを助けることができる。
イーデン
正しくその足取りを、察知していたことだろう。
イーデン
それでも、重い身体を辛うじて動かす男の、
イーデン
黒結晶に侵されきった姿が、あなたの目に映る。
セシリア
仲間とは断絶し、孤独に苛まれ、身体を結晶に侵され。
セシリア
それでも女は、絶望の中でまだ信じることができた。
セシリア
相手に虚像を信じさせることにも躊躇いはない。
セシリア
苦しみから逃れるために、
スティブナイトの力から逃れるために、
抉られた希望をのたうたせ、あなたに襲い掛かった。
セシリア
いくらでも理由を述べ立てることができたが、
イーデン
でも、彼もいなくなった。自分は彼を救えなかった。
イーデン
だから、彼の言葉に従ったのでは、もう、ない。
イーデン
*セシリアの心の疵『恋心』を愛で抉ります。
イーデン
2d6+0=>7 判定(+愛) (2D6+0>=7) > 5[3,2]+0 > 5 > 失敗
セシリア
女の力に呼応して、波紋のようにさざめいていた黒結晶は、
セシリア
ぴたりと動きを止めて、本来の形を取り戻し、
イーデン
皮膚を貫かれ、内に蔓延るそれと共鳴し、肉を食い荒らされる心地がある。
セシリア
恋は、愛は、脳を酔わせて痛みを鈍らせる。
セシリア
絶望は、そんな酔いなど嘲笑うように刈り取っていく。
イーデン
過去を、人生を、自己を形成するすべてを。
イーデン
暴虐に塗り潰されてなお、この脳は酩酊しない。
セシリア
ただひとりの女を見つめ、酩酊し幸福になるはずだった。
セシリア
そのためにトラウマを消した間隙には、ただ、
セシリア
なみなみと絶望があふれ出しているだけだ。
イーデン
だからせめて、自分の知るやり方で愛そうとする。
セシリア
愛を返してくれて、一緒に死んでくれるのだったら、それでよかった。
セシリア
暴かれて、あなたの腕の下で女が身悶える。
セシリア
あなたのすべてを読み解き、あなたのすべてになろうとしても、
セシリア
あなたを見る女たちがなにを考えていたのかは知らない。
セシリア
アドレナリン、ノルエピネフリン、ドーパミン、フェニルエチルアミン、オキシトシン。
セシリア
恋は脳を誤魔化し、快楽を感じさせ、絶望を和らげる。
イーデン
セシリア・アンティカイネンは、自分が愛した女ではない。
イーデン
失いたくなかったはずなのに。幸せにしてやりたかったはずなのに。
セシリア
それが、セシリア・アンティカイネンではないことを。
セシリア
あなたがその女をどうしようもなく愛していて、自分はその女ではないことを。
イーデン
組み敷かれる女にも、正しく伝わっている。
イーデン
ついぞ自分が持ちえなかった愛を、女へと注ぐ徒労に励む。
セシリア
女の手があなたの頬をなぞる、いとおしそうに。
イーデン
あなたは黒水晶を通じて、男とつながっている。
セシリア
ほんとうにそうか、分からないだろうけれど、
イーデン
性愛を抱いてはならなかった女。
愛情と性愛を抱いていた女。
愛情を抱いてはならなかった女。
セシリア
壊さないと、あなたは幸せになれないから。
セシリア
いつかその欠片が零れ落ちていくさまを見た。
セシリア
だから、それを覚えているのは、私だけだ。
セシリア
根幹を破壊してしまえば、そこには何も残らない。
『 』
あなたを抱き、あなたと身を重ね、あなたを愛そうとする男が。
『 』
空虚な希望に突き動かされるままに、女を愛そうとして
セシリア
あなたは自分のことも、周りのことも、
ひとつも分かっていない。
セシリア
でも私は、あなたの愛にはもう救われない。
セシリア
壊れてしまったものは、もう元には戻らない。
セシリア
元に戻らないことなど、壊した瞬間から知っていた。
セシリア
「でも、私には、『その時』が来たみたい」
セシリア
ほんとうに体を重ねたのは、私にとってはこれがはじめて。
セシリア
そんなものが欲しかったんじゃないって初めから分かっていた。
セシリア
愛したからといって愛してもらえるわけではない。
セシリア
ことこの堕落の国において、心の疵はそれを浮き彫りにする。
セシリア
耳元で、だれかの声が鳴りやまないだけだ。
『 』
その声を掻き消す酩酊を、もはやこの男はあなたに与えない。
『 』
生きるには苦しすぎる、この森に訪れることになったのか。
2R イーデン シーン裏
スティブナイト
足音。声。聞こえなくはない。まだ。
スティブナイト
力がすべて失われているわけではなかったが。
スティブナイト
遠くで黒結晶が、自分の意志と関係なくざわめいて。
スティブナイト
身を捩ろうとして、それが叶わないことを知る。
スティブナイト
少し頭を働かせれば、人を殺めることができた。
スティブナイト
それが、救い……と言うには、微々たるものだし。何の利益にもなりやしないが。
スティブナイト
そうしてこの森を作り。人を無差別に殺して。
スティブナイト
公爵家に目をつけられれば、今までよりもっと簡単にコインを得られた。
スティブナイト
どれだけこの結晶の力が大きくても。
スティブナイト
自分がどこまでも弱い女であるということは変わらなかった。
セラ
黒い羽の救世主は、結晶を踏まぬように地に降りた。
セラ
「アハハ! 目がチカチカしない色になりました」
スティブナイト
「まぁ、お前がどうにかならなくても」
スティブナイト
「あいつらはダメだったような気もする」
セラ
「たどり着かなかったもしもに興味はないですよ」
セラ
ふー、よいしょ、と言って、スティブナイトの隣に腰を下ろす。
セラ
「あ、そうだ! 受胎告知してあげましょうか? 僕そういうことできるんですよ!」
セラ
「いや、もうできないか! アハハハハハハ!」
セラ
「困ったなぁ、今子を産ませるには、セックスしかないや、アハハ!」
セラ
「ど~しよ!? あ!! でも今そんなに子供産んで欲しくないかも!?」
セラ
「今となっては、快楽セックス大いに結構! みたいな気持ちになってきていますよ」
スティブナイト
「仲間はああだし、天使らしさもないし」
セラ
「避妊しろ避妊! そして子を産まなくなって死に絶えろ!!」
セラ
「大変でしょう、こんなに広い自分を守る森を作って、定期的に救世主が来て、踏みにじられて、三月兎の爆弾まで落とされて」
スティブナイト
「快楽セックス容認派の気持ちも今ならわかる」
セラ
「どうでしょうね、あなたは分かってしまうんじゃないですか?」
スティブナイト
「嫌だと思うその気持ちすら、たぶん」
セラ
「慣れてるから大丈夫とか言って自傷するやつ~」
セラ
「まぁいいですよ、僕も今となってはどうでもいい」
セラ
「やっぱりそういうのって、医者とかに任せたほうがいいですね~」
スティブナイト
黒結晶に触れる、その手を引き寄せる。
スティブナイト
「それと同じくらい壊す方法も浮かぶだろ」
セラ
「今なら僕を袖にする権利と、僕を死ぬまでこき使う権利が与えられます!」
スティブナイト
「死ぬまでこき使えたほうが、なにかと便利ではあるけど」
スティブナイト
「どうなってほしい、とも思わない」
スティブナイト
「使われるために必要なものがあるなら」
セラ
「それは、僕をずっと側に置いてもいいってことですよ」
スティブナイト
「どこかに行くならそれでもいいし」
スティブナイト
「どのみちこの3人がこの先総力戦で俺に襲いかかってくることはないだろ」
スティブナイト
「死人が出るならそれ以上裁判をするつもりもそんなにないし」
スティブナイト
「あんまり長引かないほうがいいし」
スティブナイト
「最初に命令するのは、『落ち着くまで森の外に出てろ』とか」
スティブナイト
「いたらお前、殴られるだろ、あいつらに」
スティブナイト
「……強姦されるところ見られて嬉しいやつなんかいないだろ」
スティブナイト
「どうせ狙いは俺だし、森が破壊されて逃げられるとは思わない」
セラ
隣りにいるおんなを見る。 この混乱の元凶。 この絶望の元凶。
スティブナイト
「……なんでこんな広がっちゃったんだろうね」
セラ
「あなたの本当の名前を聞いてもいいですか?」
スティブナイト
「人から恐れられてるのは、悪くはないから」
スティブナイト
「それ以外の名前を名乗ろうとは、あんまり」
GM
*「戦術補助」で、技能をひとつ変更できます。
『 』
*J仕込OUT
凡庸IN 5-7指定します