GM
辺りに響くのは、お前たちが踏み出した足が地面の結晶を割る音だけ。
GM
風も吹かず葉擦れの音ひとつしない不自然に静かな森に、その音が響いては、木々の隙間に吸い込まれて消えていく。
GM
黒く枯れた木には半透明の黒い結晶が生えており、手をつけば触れたところを傷付けるだろう。
GM
枯れた森ならもう少し空の光も差し込むだろうものだが、どうしてか、異常に薄暗い。
イーデン
呼吸のたび肺腑を満ちる、死と絶望のにおい。
イーデン
ここまで大それたことを仕出かす存在のことが。
セシリア
「脅威度6相当の救世主……と言えば、停滞期とされる我々を超えてゆく力の持ち主ですから」
セシリア
「対面せずとも、『格下』である我々を脅かすほどの力があってもおかしくはない……ですが」
イーデン
「ここまで結晶が生い茂っているとなると」
セシリア
「相手の胃袋の中に飛び込んでいるようなものですからね」
セシリア
「早めに、スティブナイトを見つけられればいいのですが……」
イーデン
「いつお出迎えがあってもおかしくはねえ」
セラ
「格上の救世主と戦うのは初めてではありませんし、皆が力を合わせれば大丈夫ですよ」
セシリア
勝てるかどうかは分からない。けれど少なくとも、この天使の信頼を疑ってはいない。
セラ
ぽん、とイーデンの背を軽く叩く。 咎めるでも、励ますでもなく。
イーデン
分厚い外套に覆い隠されたその線の細さを、いつからか意識するようになったろうか。
セシリア
森の情報を聞いてから、イーデンはいつにも増して気鬱になっている。
セシリア
無理もないことだ。だが、そのぶん自分たちが支えなければ、と思う。
GM
もう少し森を歩けば、イーデンのその言葉のとおりに。
GM
無音。だが、お前達は殺気を纏った音が鳴ったのを感じる。
GM
一瞬遅れて、それが「黒結晶が割れたときの衝撃」から来るものだとわかる、その瞬間。
GM
周囲の黒結晶が、お前たちに向かって襲いかかる。
セシリア
前に出て、反射的に受けようとして、腕を掴まれる。
イーデン
自分たちの中で、速度で最も不利を取る女を導くように、森を駆ける。
GM
足元で結晶が砕けて、霧のように細かい粒子が散らばる。
イーデン
速度で遅れる女の足元に降りかかるそれを見て、
GM
お前たちが駆け抜ければ、ほどなくして結晶は止み。
イーデン
腕に女を抱いたままに、周囲の気配を探っている。
セシリア
男の腕に抱き上げられながら周囲を見回す。
セシリア
小声で囁きかけて、視線はスティブナイトを探す。
スティブナイト
「この森はあんまりよくない場所だと思うけど」
スティブナイト
男とも女ともとれない、少し掠れた声。
イーデン
フードの奥より、悪性救世主の動向を窺う。
セラ
「この結晶が及ぼす影響、僕たちよりもあなたの方がよくご存知でしょう!」
スティブナイト
「お前たちが倒してたのも知ってる」
セラ
「倒したというよりは、介錯した、と思っています」
セラ
「あなたが何もしなければ、あんなことはせずに済んだ」
イーデン
常ならそのように皮肉でも吐いたかもしれなかった。
セシリア
「決死の行動で、私たちにあなたのことを伝えてくださいました」
セシリア
「そして、公爵家はあなたを改めて討伐するように私たちに依頼した」
セシリア
言い返すでもなく、説明するように言葉を返して、その姿を改めて見つめる。
セシリア
「……あなたの森は、周辺を蝕みその領域を広げ」
セシリア
「犠牲者を増やしています。ですから、放置しておくことはできない」
セラ
「公爵家だけではありません。 このままあなたを見過ごすことはできない」
イーデン
外套の中で得物を握り直す。呼吸をしている。息を殺すようにしながら。
イーデン
無言のままに、目の前の救世主を睨みつけている。
セシリア
思ったより、状態がよくない。この森に入ってきたときから。
セシリア
そうして、躊躇いつつも、沈黙するイーデンの代わりに肯いた。
スティブナイト
「外にいたときとは随分様子が違って見えるけど」
イーデン
「この森がここまで拡大することも、ない」
スティブナイト
名前を聞けば、また息を吐く。どこか妖艶に。
スティブナイト
「俺は本当に帰ってほしいと思ってるよ」
イーデン
セシリアが守り、イーデンが攻め、セラが補助をする。
イーデン
ここまで旅を重ねてきた二年間の結実が、この陣形に宿る。
スティブナイト
「そういう戦い方は、俺とは合致しないな」
スティブナイト
……つまり、この眼前の姿から発せられているわけではない。
スティブナイト
お前が踏み出したなら刃が届く。この救世主がそれを避けることはない。
イーデン
平衡を崩しかけて、足を前に出し、森の地面を踏み締めて。
GM
初めから誰もいなかったかのように、静寂が広がる――実際、いなかったのだろう。
イーデン
「格上救世主ってのは、どいつもこんなか」
イーデン
「あいつの帰ってほしいは……まあ、本音かもわからんが」
イーデン
「この森がどうだかってのは、的外れでないように思える」
イーデン
「……出直して改善するようには、思えない」
セシリア
選択肢として、本当に取るべきは、遠くへ逃げることだ。
セシリア
そして、イーデンは逃げる自分を許すかどうか。
セシリア
「生きて帰りましょう。……スティブナイトを倒して」
イーデン
ずっと理解していた。ずっと自覚していた。
イーデン
仲間の裏切りに全てのコインを奪われた時よりも。
イーデン
救世主を騙し討ちにコインを奪った時よりも。
イーデン
仲間を信じられないことを知っている。
仲間に信じられていることを理解している。
イーデン
仲間を失うことを知っている。
仲間を失いたくないと願っている。
イーデン
絶望に抗う無意味を知っている。
絶望に抗った末に掴んだ勝利を覚えている。
イーデン
この弱さで、誰を守りきれるとも思えない。
イーデン
守られながら戦って、それで、あの救世主を討ち倒すことが叶えば。
GM
こんな絶望しかない世界で、お前が生きる意味は何だ?
GM
お茶会MOD『錯綜』の効果により、行動順をランダムに決定します。
GM
どちらか片方だけ振ってもいいし、2d6でまとめて振ってもお得だし、両方指定してもいいし、振らなくてもいいです。
セラ
2D6 (2D6) > 8[5,3] > 8
GM
5.開けた場所。巨大な黒結晶のクラスターがある。長い時間をかけて大きくなったようだ。この辺りが救世主の居住地だろうか?
GM
3.森だというのに、風の音もなければ、風で葉が擦れる音すらしない。ここはひどく静かで、不自然で、不気味だ。
GM
元よりこの森がお前たちを返すつもりもなかったが。
セラ
「まずは公爵家からの物資を探しましょうか。 どこかに投下されているはずです」
セラ
自らの領域に住まう救世主なら、このくらいは訳もないだろう。
セラ
なにより、相手は脅威度6相当。 この程度当たり前にできて当然。
セラ
仕方なしに歩き始める。 自分の立っていた位置は変わっていないように見えた。であれば、公爵家の物資は回収できるだろう。
GM
元は普通の森だったようで、倒壊した小屋があったり、少し開けた場所があったり。
セラ
寂しい場所だ。イーデンでなくとも暗い気分になる。
GM
グリフォンのトランスポーターが、ある程度わかりやすく、木にも引っかからないような場所に、上空から荷物を投下していたようだ。
セラ
目立つ色のパラシュートは、遠目からでも確認できた。
セラ
* スティブナイトの心の疵『朧』を抉ります。 同時にクエスト2に挑戦。
黒結晶B
2d6+2=>7 判定(+脅威度) (2D6+2>=7) > 7[5,2]+2 > 9 > 成功
[ セラ ] ティーセット : 2 → 1
セラ
2d6+4+2-3=>7 判定(+才覚) (2D6+4+2-3>=7) > 6[5,1]+4+2-3 > 9 > 成功
[ スティブナイト ] 朧 : 0 → -1
[ セラ ] アリスのゆびぬき : 0 → 1
セラ
木箱を開き、中の物資を確認する。 数日はこの森で生活できそうだ。
セラ
とはいえ、数日こんな場所にいて正気を保っていられるかは疑問だが。
GM
これは美希達が必要だとリストアップしたものだった。
GM
お前の身長よりもずっと高い。大きく成長した黒結晶。
セラ
触れるわけにはいかないが、何か情報を得られないかと近付く。
GM
お前が歩みを進めれば、その黒結晶の大きさも、力も、理解できる。
GM
森の中、そこだけは開けていて――いや、木々がそこにあることすら許されてないと言ったほうが正しいかもしれないが。
セラ
結晶の花を、さくりさくりと踏みながら足を進める。
セラ
靴があるとはいえ、あまり踏むのもよくないのではと思うが、避けて歩くのは難しそうだ。
GM
お前が近づけば、黒結晶の一面がお前の色を反射する。鏡のように。
スティブナイト
そこに立っている。絶望の色を纏った救世主が。
セラ
イーデンとセシリアはいない。 一人でできる範囲の最善を行わなければならない。
スティブナイト
その音が耳元からではなく、目の前のこの姿から発せられていること。
セラ
で、あるのなら。手傷を負わせるか、何かしらの情報を得たい。
セラ
「……それはそうでしょう。 僕は天使ですから」
セラ
「スティブナイト、あなたの情報はなかなか得られなかった。 情報収集能力に長けたミキをしても」
セラ
「もしかすると、僕と同じような存在ではありませんか?」
セラ
「実体がなく、自分や他人の都合に合わせて姿を変えられる、そんな……精霊のような存在」
セラ
「それは、自分でそう思っているだけでしょう」
セラ
「精霊の全てが善なるものではありません。自らの力を制御できないものもいる」
セラ
「……もちろん、違うというのなら信じましょう」
セラ
「あなたの言葉は、そのままあなたの心の疵を現す」
スティブナイト
最初に見たときより、細く、小さく。
スティブナイト
『おんな』の肉付きをしていることを
スティブナイト
「お前みたいな奴に寵愛をもらうと、褒めそやされるようなところでね」
セラ
「あなたはそれを、好ましく思っていないような言い方だ」
セラ
「あなたの体は、新しい命を授かることができる、素晴らしいものだ」
セラ
「あなたが望むなら、今から命を授けてもいい」
スティブナイト
「結局そんな寵愛なんてものはなくて」
セラ
「あなたが僕を天使だと信じるのなら、あなたに寵愛を授けてもいい」
セラ
「本当に僕を信じてくれるのなら、全てをなげうって、あなたのために生きてもいい」
スティブナイト
「お前たちならわかるんじゃない?」
セラ
手を腹から離して、スティブナイトの両手を取る。
セラ
「それなら、あなたがまた誰かを信じられるようになるまで」
セラ
「でも、あなたが何かを信じられないというのなら、僕は信じられるようになって欲しい」
セラ
「心を閉ざして全てを諦めていては、悲しいばかりになってしまう」
セラ
「今すぐ信じろ、というのは難しいでしょう。 だから……、話して欲しい。あなたのことを」
スティブナイト
「お前の手から誰の手が離れてる?」
スティブナイト
「お前の選択が本当に正しいか、見てみようか」
*お茶会1R セラ:舞台裏
*
「……どちらにしても、準備が必要です」
「まずは公爵家からの物資を探しましょうか。 どこかに──」
セシリア
途切れた声にハッと視線を戻すと、そこにはすでに姿はない。
イーデン
うつむきがちに歩いていたところに、仲間の声が途切れる。
セシリア
イーデンの手を掴んで、そのまま手を引く。
セシリア
足早にセラのいた場所へ歩いて、手探りでその感触を探した。
セシリア
「ただ、私は心の疵の力が、護りに寄ってはいますから」
セシリア
「……だめですね。視覚を混乱させるだけの幻覚ではない」
イーデン
「気配がない。コインを持つ救世主特有の」
イーデン
「それすらも隠し果せる可能性も、ないではないが」
セシリア
この脅威度の救世主が、その程度の軽い分断をしてくると言うのは、甘い観測だ。
セシリア
「どちらにせよ、すぐの合流はできないでしょう」
セシリア
イーデンの手を握ったまま。周囲を見回す。
イーデン
セラとの合流を求める心がある。
敵対者が分断を狙うならその理由がある。
それを妨げなければならないという判断がある。
イーデン
闇雲に探してセラが見つかるか? そんなはずはないだろう。
イーデン
このレベルの救世主が、そのような生半可な分断を仕掛けてくるはずがない。
セシリア
格上の、領域型の、しかも精神を侵食するタイプの救世主。
セシリア
ひとりずつ分断して、始末を狙っているのなら。
セシリア
そして、こうして手を繋いでいるのも、本当は無駄なことだ。
イーデン
分かっていながら、手を振り解かずにいる。
イーデン
せめて周囲の気配を探りながら、引かれるままに歩きゆく。
セシリア
結晶を踏み砕くぱきりぱきりとした音が妙に大きく響く。
セシリア
最悪の予測まで立てて行動しなければならない。
セシリア
セラの姿を、そしてスティブナイトの姿を探して探索を続ける。
セシリア
1d6 絶望シーン表 (1D6) > 1
セシリア
1.黒結晶に覆われた死体を見つける。死体は干からび、表情は絶望に満ちている。見ていると絶望的な気持ちになりそうだ。
イーデン
1d6 黒のシーン表 (1D6) > 6
イーデン
6.黒結晶が舞っている。避けないならば、ぶつかってあなたを傷付けようとしてくる。
セシリア
美希と遭遇し、その最期を見届けた後、ある程度の対策はしてきた。
イーデン
それに触れてはならないことを、救世主の、
GM
そうして、お前たちが歩けば。そこにはひときわ大きな黒結晶が転がっている。
イーデン
降り注ぐ悉くを切り払い、女を守り、守られながら、道を進み。
セシリア
もっとおぞましい、凄惨な屍になっている可能性はあった。
イーデン
その表情のさまから目を逸らしさえすれば、だが。
セシリア
……ただ、これでは、美希の願いを叶えることは、まだできそうになかった。
イーデン
都合良く、周囲に彼女の遺品が転がっているようなことも、有り得ない。
セシリア
遺体を覆うほど成長した黒結晶を破壊するには、
セシリア
あのスティブナイトを殺すほかないだろう。
イーデン
死者の本懐を遂げるために愚を犯してやれるほどには、
セシリア
周囲を確認し、得られる情報がないかを探り、
セシリア
「……残念ながら、ここから得られる情報は何も」
イーデン
得物に張り付いた結晶の欠片を最新の注意でもって振り払い、
セシリア
欠片を吸い込まないように気を付けながら、ごく小さな声で囁いて、次へ向かう。
イーデン
まとわりつくような気鬱に満ちた空気が、自分の身にはよく馴染む。
イーデン
自分の積み重ねてきた生き方が。救世主としての在り方が。
イーデン
ここで膝を折り、心を挫くことを、決して許さない。
イーデン
仲間を巻き込んでさえ、この絶望の森に立つ。
イーデン
そのふざけた理由を投げ捨てられない自分が、
イーデン
今は、最もふざけた存在と称されて然るべきだが。
セシリア
あなたの横で、生きている女が共に歩いている。
セシリア
その空気に馴染むあなたとは対照的に、女の存在は浮いている。
イーデン
その輝かしい女の姿が絶望に呑まれて薄れるさまを、
セシリア
暗闇の中で腕を伸ばし、指先の形を確かめる。
セシリア
足に力を籠め、身体感覚に問題がないかをひとつひとつ検めていく。
セシリア
イーデンの姿を探すさなかで、暗闇の中にその姿を見つける。
セシリア
前のように、似ていると感じはしなかった。
セシリア
その表情は皮肉っぽく微笑み、彼とは似ても似つかなくなっていたから。
セシリア
イーデンは皮肉を言おうとも、笑ったりはしないから。
セシリア
その体が小さくなり、おんなそのものになったことよりも。
セシリア
「……ええ、さすがに。あなたにはコインの数は及びませんが……」
セシリア
「あなたは、逆に慣れていないのではないでしょうか」
セシリア
「私たちや、美希たちのこともそうですが」
セシリア
「あなたは囲まれて、討伐されようとする方が多いはずですから」
セシリア
「こうして分断されて、心の疵を狙われる『お茶会』はされたことがないでしょう」
セシリア
「あなたのような救世主は、配下を抱えていることも多い」
セシリア
「ですがあなたの森は、生命の一切を許容しないように見えました」
スティブナイト
「お前たちが殺したああいうのとか」
セシリア
「つまり、救世主を黒結晶で侵蝕し、森を広げる存在にすることでしょうか」
セシリア
「あなたはあれを、私たちが殺したと、そう表現するのですね」
スティブナイト
「死んだら、数が減ったなって思う」
スティブナイト
「殺したのは事実なんじゃないの?」
セシリア
「確かに、助けられなかった、という意味では、殺した、と言えるかもしれません」
セシリア
「彼女自身が死を選んだ。そのように私は受け取っています」
セシリア
「私たちに情報を渡し、森をそれ以上広げないために」
セシリア
「あなたがそれを、私たちが殺したと受け止めるのは……」
セシリア
「……あなたが、深く絶望しているからでしょう」
セシリア
「私たちに、あなたを倒す期待と希望をかけたこと」
セシリア
「それは、あなたには受け容れられないことでしょうから」
セシリア
果たして、彼女のように振る舞えるかどうか。
セシリア
この暗闇の中で、スティブナイトと相対している状態とはまるで違う。
セシリア
自分の生きる支えであり、最も大切なものを喪っている。
セシリア
森の討伐を任されたのが、自分たちと美希たち、順序が逆だったとしたら。
セシリア
生き残ったのが、自分だけだったとしたら。
セシリア
そういったものを、操る救世主であると聞いていた。
スティブナイト
「……まぁ、死んだものの話をしても」
スティブナイト
「今からあいつが救われるわけじゃなさそうだし」
アウレール
『参謀本部に抜擢? すごいじゃないか!』
アウレール
『そうだな、セシリアはよく考えたら、同期の中で一番成績がよかった』
アウレール
『さすがだな、……忙しくなるだろうが、応援しているよ』
アウレール
地方星域の支局に回されて、めっきり会う機会は少なくなった。
アウレール
私のことを応援してくれたけれど、私のそばで働くことはなかった。
セシリア
私は、彼の部隊を辺境の海賊の討伐に当たらせる作戦にサインを書いた。
セシリア
作戦は成功したが、部隊の多くが死亡し、彼もその一人だった。
テレンス
『君には期待している。優秀だと聞いている』
テレンス
テレンスは私の前の長官……私が入ってそう時間の経たないうちに暗殺された。
セシリア
彼が死んだあと、警察局はより秘密主義になっていった。
セシリア
私の仕事は増えた。扱える権限は増え、責任は多くなっていった。
マリネッタ
『いつでもご命令ください! 我々はあなたの盾となり、矛となり、お守りいたします!』
マリネッタ
マリネッタ。参謀本部付きの護衛部隊の隊員。
シグネ
……シグネ=アンティカイネンは私の双子の妹。
シグネ
『勉強ができるのはお前の方、前で切ったはったをするのは私の仕事』
シグネ
『セシリアが判断したことは、きっと正しい』
セシリア
シグネの態度は、周囲の私に対する態度をそのまま象徴するようだった。
セシリア
みんなが私の判断を正しいと言ってくれた。
セシリア
作戦の成功率は担保されていたし、組織が問題なく継続できる程度の割合だった。
セシリア
数えきれない死体の数を、私は数字だけで追った。
セシリア
私は、シグネとマリエッタが戦っていたブロックの酸素供給を絶っていた。
セシリア
見捨てられるかれらを納得させるための説明を、私はしなかった。
セシリア
でも、彼らはきっと驚愕と、絶望の中に落とされたはずだ。
セシリア
酸素が絶たれ、死にゆくなかで、私への怨嗟を叫んだはず。
シグネ
だから、聞いていないはずの叫び声が耳にこびりついている。
シグネ
『セシリア! 私たちを見捨てるのか!……裏切ったのか!』
シグネ
『……お前なんか、信じるべきではなかった!』
セシリア
信じられるべきではない。私は信用されるべきではない。
セシリア
そんなことはずっと知っている。私にその資格はない。
セシリア
かれが、私のことを信じられないから安心した。
セシリア
かれが、私のことを信じられないことを、苦しいと思ってくれるから、安心した。
セシリア
そうやって、自分が冒した罪も、耳元で叫ぶ妹の声も、見ないふりをしたまま。
セシリア
意味がないほうが。罰などないほうが。そこからすら見放されたほうが。
セシリア
それでも、目の前から幻影は消えることはない。
セシリア
耳元から、怨嗟の叫び声が消えることはない。
スティブナイト
*セシリアの心の疵「希望」を猟奇で抉ります。
イーデン
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 愛
イーデン
2d6+0=>7 判定(+愛)] (2D6+0>=7) > 5[1,4]+0 > 5 > 失敗
スティブナイト
2d6+5=>7 判定(+猟奇) (2D6+5>=7) > 9[4,5]+5 > 14 > 成功
[ イーデン ] HP : 19 → 18
[ セシリア ] 希望 : 0 → -1
セシリア
あなたのことを冷静に見定めようとしていた女の姿はない。
セシリア
そんなものに、資格など必要ないことは知っている。
セシリア
セラという天使と共にいながら、セシリアはそう信心の強い女ではなかった。
セシリア
大いなるものに罪や罰や資格が規定されていることを、もとより信じてはいなかった。
セシリア
だが、理性というのはやはり、希望の言い換えに過ぎない。
セシリア
自分の心を守るために、それらを信じないことができる。
セシリア
死んだひとびとの絶望の叫びがそこにある。
セシリア
過去に囚われている。過去に足を掴まれている。
セシリア
そこにいるはずの、イーデン・クロフツへ向かって。
イーデン
脳の裏で思考が回る。こんなことをする意味はない。
イーデン
冷静な思考は理解する。敵の術中に落ちたことを受け入れた上で、次の対策に出るべきだ。
イーデン
そうしてなすべきを優先して動いたことが、
セシリア
黒結晶に満ちた森で、意識を刈り取られて無防備に昏倒したのだ。
セシリア
細かな黒結晶の欠片が、いくつも肌に触れている。
セシリア
いつしかあなたの足元ではなく、腕の中から。
イーデン
あれほど恐れた絶望の塊に、触れることさえ今は怖くない。
セシリア
なぜなら、黒結晶はもう、女の膚の内側からも。
イーデン
その叶わないことを思い知りながら、ただ孤独に繰り返し、
イーデン
そうして最後は、すべてが当然のように、こうなるのだ。
セシリア
あなたの腕に抱かれたまま、悲鳴を上げてあなたを突き飛ばした。
セシリア
零れ落ちそうになるはずの体が、再び追いすがる。
セシリア
あなたを、黒結晶の埋まる森へと押し倒す。
イーデン
鉱石はコートを容易く貫いて、男の背を深く深く抉る。
セシリア
あなたの体の上で、女の手が、自分の顔を確かめる。
セシリア
黒水晶を覆い隠すように、肩に羽織っていた外套をかぶる。
イーデン
あなたと男の間に存在した権力勾配はもはや存在しない。
イーデン
思考が完全に停止している。そのことすら悟れぬままに。
イーデン
ただその事実だけを、回らぬ頭が諒解していた。
GM
*セシリアは状態〈絶望侵蝕〉中なので、PCの「心の疵を抉る」以外の行動ができなくなります。
セシリア
*次回はイーデン・クロフツの『絶望』を愛で抉ります。
セシリア
そういう思考が動くことで、私のあなたへのこの思いが。
セシリア
自分の罪悪感と自責から逃れるためのものであったような気がして。
セシリア
右目は黒結晶に覆われて、パキパキと小さな音を立てる。
イーデン
女を侵す結晶を振り払うために伸べられた手も。
セシリア
あなたの瞳の中に、ここにいない女の虚像が結んだ瞬間。
セシリア
「あなたの絶望を消すことなどできないと知っていた」
セシリア
否定された希望が抉れた疵の中でのたうっている。
セシリア
違う声を聴いている。過去に囚われている。
セシリア
互いの過去には触れられない。互いの過去には触れてこなかった。
イーデン
ただ耐えるだけで前に進んできた。この女も或いは。
***
ノイズの中に、三月兎の弾けるような笑顔が写り込む。
***
絶望の森の中を、はしゃぎながら駆けていく。
***
長身の輝く天使がそれを抱えて、あなたの方をふたりで見つめる。
セシリア
だが、それは、果たして今目の前にいる女のものか?
***
あなたの上に柔らかい女の身体が跨っている。
イーデン
救世主の力であれば、当然、よくあることで。
イーデン
それに惑わされることも、当然自分は初めてではない。
セシリア
無数の絶望があなたの心と体を蝕んでいる。
イーデン
イーデン・クロフツという男を作り上げてきた四年。
セシリア
苦しみが消えていくという苦しみがあるだけだ。
セシリア
あるいは、苦しみが消えたという苦しみが。
セシリア
突き飛ばしたはずの女が、するりと起き上がり、あなたに優しく触れる。
セシリア
『あなたの役に立てる。あなたを助けられる』
セシリア
だから、こんなことを覚えている必要はある?
セシリア
『あなたの心とほとんど一緒になっている』
イーデン
髪の色も肌の色も、その振る舞いも、何もかもが。
セシリア
『大丈夫、あなたは何も恐れる必要はない』
セシリア
『だって、あなたを責めさいなむばかりでしょう』
セシリア
『あなたは辛く、苦しく、希望のない道程を歩んできた』
セシリア
『あなたは、私を助けたいと思ってくれる?』
セシリア
でも、それなら、代わりにそこにあったのは?
セラ
* 世間話に今意識が行っていましたが……イーデンが困っていますしね……
セラ
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 愛
セラ
2d6+3=>7 判定(+愛) (2D6+3>=7) > 3[1,2]+3 > 6 > 失敗
セシリア
2d6+4=>7 判定(+愛) (2D6+4>=7) > 6[1,5]+4 > 10 > 成功
イーデン
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
イーデン
フードを抱え込み、頭を俯かせ、膝尾をつき。
セシリア
あなたの前に跪き、俯いたこうべに手を乗せる。
セシリア
『あなたを苦しめる人の名前を、憶えている必要があるんでしょう』
セシリア
『あなたを苦しめるものになってしまっていることも』
セシリア
『あなたにとって、どれほど大事なものなのかを知っています』
セシリア
『あなたを苦しめる、すべてのものから解放しましょう』
セシリア
『そうすることで、はじめて私は救われることができる』
セシリア
『そうすることで、はじめてあなたは救われることができる』
イーデン
結晶が背を抉り、血を滴らせ、はらはらと落ちる。
セシリア
あなたの絶望を、すべて塗りつぶそうとして。
イーデン
残ったそれが、内側から臓腑を喰い荒らし、脳を侵す。
イーデン
――それを自分は、誰よりも知っているはずなのに。
[ イーデン ] 絶望 : 0 → -1
[ セラ ] HP : 21 → 20
[ スティブナイト ] HP : 20 → 1
スティブナイト
*イーデンの『絶望』を猟奇で抉る。
セシリア
*ほかの女の気配を感じたので横槍を入れていきます
セシリア
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 愛
セシリア
2d6+4=>7 判定(+愛) (2D6+4>=7) > 7[1,6]+4 > 11 > 成功
[ セシリア ] ヤリイカエリート : 1 → 0
スティブナイト
*ティーセット、子山羊皮の手袋を使用。
スティブナイト
2d6+5+2+2-8=>7 判定(+猟奇) (2D6+5+2+2-8>=7) > 3[1,2]+5+2+2-8 > 4 > 失敗
[ スティブナイト ] アリスのエプロン : 1 → 0
[ セシリア ] HP : 26 → 25
[ イーデン ] 絶望 : -1 → -2
[ イーデン ] 前科 : 0 → 5
GM
*〈絶望〉状態のPCが発生したので、クエスト5が開示されます。
◆クエストNo.5 蜘蛛の糸
概要 :自分を犠牲にして隙を作り、この森からまだ絶望していない仲間を逃がす。
目標値 :9
消滅条件:成功で消滅。
成功 :裁判中、自分の手番の補助動作より前のタイミングで使用できる。
自身のHPを1D6点減少させ、また、1Rの間自身は技能を使用できなくなる。
その後、同じ陣営のPCを1人選び、裁判から離脱させることができる。
失敗 :特になし。
放置 :当然、こんな行いはしない方がいい。あなた自身にも大きな隙ができるし、絶望した仲間を救うことはほぼ不可能になる。また、味方の協力なくして裁判に臨めば、あなたやあなたがたに待ち受けているのは死か、それよりも悲惨な末路だろう。まだ理性が残っているのなら、わかるはずだ。
特記事項:このクエストのファンブル値は4になる。
このクエストを組み合わせて「同じ陣営のPCの疵を抉る」判定を行う場合、その判定には抉られる対象となったPCも横槍を入れられる。
セシリア
何度かのノイズを伴いながら、あなたの中の声はどうしようもなく消えていく。
セシリア
森の中には黒い結晶が満ち、あなたの体を傷つけている。
セシリア
だがその絶望は、もうあなたには馴染まない。
セシリア
遠く、どこかで何かが爆発するような音がした。
セシリア
「大丈夫、私たちはスティブナイトに勝つことができますよ」
セシリア
「公爵家の方々も、そのために力を尽くしてくださっている」
セシリア
森の中に兎たちが落ちて、その役目を果たす。
イーデン
想いを遂げれば最後、もう生きていかれないと。
セシリア
その心の疵は、満たされればきっと見るも無残に弱くなり、
セシリア
堕落の国で生きていくことなど叶わないだろう。
セシリア
この堕落の国に、夢から覚めたささやかな幸福など、
イーデン
だから、自分がこの女を愛すことはなかった。
セシリア
恋に焦がれ、恋に酔い、愛に身を捧ぐ女は。
イーデン
『 』への想いもまた、それを後押ししていた。
セシリア
あなたを壊してでも、その恋を果たそうとする。
セシリア
あなたを愛し、あなたに愛してほしいという、
セシリア
なにもなくなって、女が満ちるはずの場所に、
セシリア
それを上書いた女の姿までもが曖昧になり、
セシリア
それでも愛せる理由が、生まれることはない。
セシリア
あなたを塗りつぶして、共に来てくれることを疑っていない。
セシリア
切り裂かれ、赤く開いた血の中にも、すでに黒結晶が混じりいる。
セシリア
過去を奪い、絶望を奪い、尊厳を踏みにじる女の。
セシリア
あなたを苦しめるものは、私がすべて振り払ってみせるのに。
セシリア
女の糸はまだ、もしかしたら結び直せるかもしれない。
セシリア
あなたを愛する女が、その手で、あなたを救おうと、
イーデン
大切だったもの。救いたかったもの。救えなかったもの。注いだ慈悲。伸ばした手。すり抜けた。失った。
イーデン
「俺の在り方を喰い荒らして、踏み躙って」
セシリア
「セラは、まだ私たちには必要でしょう?」
イーデン
「お前が受け入れなければならない由縁は、消え失せた」
セシリア
言葉を紡ごうとするが、それがおかしいことは分かっていた。
セシリア
あなたが自分を責めさいなむ絶望は、あなたが自分を貶める絶望は、
セシリア
「そうしたら、あなたも分かってくれるはず」
イーデン
自分を塗りつぶしたもの。自分の全てを奪ったもの。
イーデン
このどうしようもない絶望と憤怒の源流は、あの救世主の力にある。
イーデン
心の疵の力に侵されて、操られて、当初の目的も忘れ、
イーデン
馬鹿げた同士討ちに興じようとしている、哀れで愚かな救世主。
イーデン
絶望を塗り潰した絶望が、愛したかったはずの女を憎む。
セシリア
好き勝手な言葉を吐いて、女は歩み去っていく。
R1 セシリア シーン裏
スティブナイト
「正直こうなることはそんなに予想してなかったっていうか」
セラ
「セシリア……彼女はイーデンに片思いをしています」
セラ
「イーデンは、最近は丸くなったんですが、以前は結構ヤンチャで……」
スティブナイト
「てっきり仲良しこよしのカップルと子供を授ける天使だと思ってたけど」
セラ
「イーデンはセシリアに、処女だとめんどくさいからとそのへんの末裔に膜を破らせたりしていて……」
セラ
「セシリアは、大人しくそれに従ったりしていて」
セラ
「なんか、こうなるのもちょっと仕方ないかなっていうか」
スティブナイト
「自分と似たような面した男だなって思ったんだけど」
セラ
「あまり詳しくは知らないんですが、昔色々裏切られまくって絶望したみたいですね」
セラ
「正直心配すべき場面だと思うんですが、ちょっと日頃の行いがあれなので……なんか冷静になってしまいました」
スティブナイト
「あの女にこんなことになるようなことした覚えないんだけど」
セラ
「セシリアは、結構恋心で細かいことをねじふせるところがありましたしね……」
セラ
「ダメですよ! え!? そういうの分かるところ出身じゃないんですか!?」
スティブナイト
「だから俺はこうなってるわけだし」
スティブナイト
「正直天使視点だと繁殖できればなんでもいいのかなって思ってた」
セラ
「堕落の国にいる以上片目くらいは瞑りますけど、気にはなります」
スティブナイト
「快楽があるのはどうなんだっけ?」
セラ
「許容したくないですが、現実と折り合いを付ける必要はありますからね」
セラ
「セシリアのやろうとしていることは、いいことなのか、悪いことなのか、判断が難しい」
セラ
「いえ、ひとまず跨るのはやめてほしいですが」
スティブナイト
「俺も場所を選べって個人的な気持ちはあるよ」
セラ
「きっかけがあったとはいえ、宿屋かどこかのほうがいい……」
スティブナイト
「熱いしうるさいし擦れるから嫌……」
スティブナイト
「ここまで来るのに踏まないことないからね」
セラ
「できるだけ、子供の姿でいましょうか。 そうすれば、宙に浮いていられる」
スティブナイト
「お前にとってはそうかもしれないけど」
スティブナイト
「もうちょっと具体的に言うなら、自分の身体」
セラ
「身体……、幻は見せられるけど、本体を変えることはできないとか?」
スティブナイト
「コインを集めたら、自分より力が強い奴らも倒せるって知って」
スティブナイト
「そうしたら、何か、変わるかもと思ってた」
セラ
「心の疵が変わらない限りは、どうしようもないでしょうね」
セラ
「例えば、あなたがコインの全てを失って僕の前に現れたとしたなら、望む姿に変えられたかもしれませんが」
セラ
「そうではないし、今からコインを捨ててくれる気はないでしょう?」
スティブナイト
「そういう奴らを殺せる力は、悪くはない」
スティブナイト
「それで心の疵に縛られることになっても」
セラ
「結晶たち全ての感覚が流れ込んで来たとしても?」
セラ
「僕はあなたより大きいし、男性の形を取っている。 姿を変えるのも嫌という」
セラ
「殺されたくはないし、あなたを助けたいと思っていますよ」
スティブナイト
「公爵家のとても人道的な爆弾だろう」
セラ
そう言われて、即座に逃げなければならないのだが。
スティブナイト
「お前たちはかわせるかもしれないけど」
スティブナイト
「俺は身動きが取れなくなるだろう」
セラ
討伐依頼を受けた邪悪なる救世主は倒さなければならない。
セラ
しかし、もう、話してしまった。 知ってしまった。
セラ
ただ、そこに佇み、黒い救世主をじっと見ている。
セラ
それがどれくらいの意味があるのかは分からない。
セラ
それ以上近付くことはせず、触れることはせず、しかし、立ち去ることもできず。
セラ
もはや空を飛ぶ機能を失った、大きいだけの翼を広げ続ける。
スティブナイト
……いや、いっそめちゃくちゃにしてくれたって別にいい。
スティブナイト
どちらもしないこの眼前の「男」が。
セラ
瞳を閉じ、翼を広げ、地を震わす衝撃に耐えている。
イーデン
2d6 (2D6) > 9[4,5] > 9
GM
4.薮。木々は黒く枯れ、かつて葉があったところには代わりに鉱石が生えている。
GM
5.道に迷う。木々の向こうに人影が見える。あなたを見ているそれは幻? 本物? 一体誰?
イーデン
自分はきっと、あの女を、あの天使を、あの救世主を殺すことだってどうでもいい。
イーデン
心に残った希望が、どうしようもなく疼いていた。
セラ
スティブナイトに向けて差し出した手は、ノイズに阻まれ、ただ虚空を撫でる。
セラ
爆撃の音は遠い。 このあたりは比較的安全な場所だと判断する。
セラ
小さく息を吐き、結晶を少しでも踏まないように歩き始める。
セラ
「イーデン……、しっかりしてください。イーデン……」
イーデン
そのさまは、発見された時の美希よりも酷い。
セラ
ただ状況を伝える。 慰めや励ましに意味がないことを知っている。
イーデン
黒結晶の破片のぶつかり合う、耳障りな音がする。
イーデン
「セシリアじゃないんだから、合ってるか」
セラ
「……賢く、夫を愛する、献身的な黒髪の女性でした」
イーデン
「四肢を断たれ、三月兎とセシリアの狂乱のもと」
イーデン
「セシリアの指示に従って、飾り立てられたそのセシリアを抱いた」
イーデン
「流石に俺も、これを正しい記憶と受け止めているわけではないんだが」
セラ
「そう歪められてしまった、ということですか」
セラ
イーデンの体は深く結晶に侵食されているように見える。 長話をする猶予はあるのだろうか。
イーデン
この男がそんな風にあなたに笑ってみせることが今まであったろうか。
セラ
長話などせずに、一度引き換えしたほうがいいのかもしれない。 あるいは、今すぐにスティブナイトを打ち倒すべきかもしれない。
セラ
このようなイーデンを見るは初めてだ。 よほど心の疵の具合が悪いのだろう。 合理的に判断すべきだ。
セラ
そう思いながら、ただ微笑みをたたえて、話を待つ。
イーデン
けれど、本人もその内容には納得していないように。
セラ
「セシリアに思える、別の女性がいたんですね」
イーデン
「お前が知る、俺へのセシリアへの態度と比べても」
セラ
「昔のセシリアと、今のセシリアを切り分けて考えなければ」
イーデン
「上の兄二人よりも、自分の方が出来が、よかったと」
イーデン
「でも、序列を覆せるほどではなかったと……」
イーデン
セシリアではない人物のことは、明確に思い出せる。
セラ
想像してみる。 才覚型の救世主と、イーデンと、堕落の国に向いていない、体を売るよう命じられていた女。
セラ
似たような関係はどこにでもいる。 どのような付き合いだったかは想像に難くない。
セラ
「公爵家の彼と、僕の知るセシリアは、そのようなことをしていませんね」
セラ
事実が異なっていたとしても、少なくとも、そのように扱われる女はいるのだ。
イーデン
そのように扱われる女を、そのように扱うことで役立てて、共にいた。
セラ
「セシリアは、堕落の国に向いていないなんて言えない」
イーデン
「末裔のふりをして、救世主の寝首を掻くのが良いと……」
イーデン
「だから、俺がした方がマシだと思ったんだが」
イーデン
自分が誰よりも酷く当たっていたはずの女を。
イーデン
誰よりも追い込み、責め苛んだはずの女を。
イーデン
その只中に、男が極めて不自然な言動を繰り返す。
セラ
「……では、妹であり、娘のような存在でもあったわけだ」
セラ
結晶に侵されたその背を、撫でてやることはできない。
イーデン
いつか以上に、弱々しい男が、大して残ってもいなかった胃の内容物を吐き散らす。
イーデン
胃液に汚れた口元を、黒結晶の生えた腕で拭う。
イーデン
「なんでセシリアを連れ帰ってきたかって」
イーデン
「娼婦の娘なら、娼婦として使えるだろうって!」
イーデン
「まだ――まだ十にも満たないか、その程度の、頃に」
イーデン
心の疵の力と、それを引き出す六ペンスを得たから。
セラ
「十にも満たない子供には、荷の重い仕事です」
セラ
「娼婦の仕事は、病気をうつされることもあります」
イーデン
「でも、あいつじゃあ、うまくやれないから」
イーデン
「俺ばかりに背負わせるのが、嫌だから、と」
イーデン
もはやあなたに語りかけられるものではなくなっている。
セラ
「セシリアは堕落の国に向いていると思いますよ」
セラ
「そうでなければ、あなたの思い出の中の女達を」
イーデン
「酩酊への没入でもって、自らの在り方を規定している」
イーデン
自分の知らないところで身体を売っていたセシリア。
イーデン
自分が追い詰めて身体を売らせたセシリア。
イーデン
きっと、もう、自分はセシリアを愛せない。
イーデン
「……ワインの村で、はらわたを弄ばれるよりも」
イーデン
「嫌なことを、嫌だと、わざわざ考えていたら」
イーデン
澱んだ色の血を溢れさせて、頬を伝い落ちる。
イーデン
「多少の頭の固さと、気持ち悪さもあったが」
イーデン
「お前、だって、本物の天使なんだろう?」
イーデン
*セラの心の疵『天使』を猟奇で抉ります。
*クエストはNo.3を実行。
セシリア
*どうしてほかの人に助けを求めるんですか?横槍します
セシリア
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 才覚
セシリア
2d6+0=>7 判定(+才覚) (2D6+0>=7) > 9[5,4]+0 > 9 > 成功
[ セシリア ] ヤリイカ : 1 → 0
イーデン
2d6+4-2-2=>7 判定(+猟奇) (2D6+4-2-2>=7) > 8[5,3]+4-2-2 > 8 > 成功
[ セシリア ] HP : 25 → 24
GM
*お茶会終了までの間に技能を1つ入れ替えられます。
[ セラ ] 天使 : 0 → -1
セラ
セラは、肌をほとんど露出していない。胸くらいは。
イーデン
髪より先に、膚の下を荒れ回る黒結晶の硬い感触。
セラ
「僕は確かに、本物の天使で、神の御使いで、人を救う存在です」
セラ
「僕に奇跡を望むのなら、それだけの心の疵のはたらきが必要で」
セラ
「そのために何が必要か、あなたは知っている」
イーデン
自分が本当は、セラを信じることができていないことを。
セラ
「……でも、仲間として、友人として、言えることはある」
イーデン
この世界への、仲間への、深い絶望と断絶を
セラ
「その苦しみを抱えたまま、生きていけるというのなら」
イーデン
肯定することも否定することもできなかった。
イーデン
天使としてのセラにならば、救われることが叶ったかもしれないが。
イーデン
救世主として巡り会わなければ、共に過ごすことはできなかった。
イーデン
出会わなければ良かったとは、まだ、言えない。
GM
1ラウンド目のPC全員の行動の終了時、PL全員の合意があった場合、お茶会を終了して裁判に突入することを選べます。
イーデン
*この胸にはまだ希望が残っています! 勇断しません!
セラ
* してもいいんだけど……二人がこう言っていて……