プロローグ
GM
鬱蒼と茂る森。
その木を切り拓いて作られた、中規模の拠点にあなたがたはいる。
GM
辺りを埋め尽くさんばかりに並ぶのは、箱に詰められた物資と。
三月兎の末裔
あなたがたのほうを見れば、三月兎はあなたがたに手を振る。
GM
ドードーの末裔が紙の資料を見比べて、公爵家エージェントと話す。
雇われのグリフォンの末裔たちがそれらの周辺で、飛び立つ支度を整えていた。
GM
しばらくして、そのうちの一人、リーダー格の公爵家エージェントが近付いてきて、あなたがたに声をかける。
GM
「救世主様方。こちら、いつでも出発できます」
GM
「改めまして、この度は依頼を受けていただき、本当に感謝しております」
GM
「なにせ、この状況で頼れるのはあなたがた以外にいませんから……」
三月兎の末裔
布を抜け出して、わーっとかけてくる。
三月兎の末裔
「ねえ! もしかしてぼくたちのアリス!?」
三月兎の末裔
「アリス、こんなにおっきくなるんだ~!」
イーデン
フードを目深に被ったまま、二人が話すさまを見ている。
セシリア
ストレナエが乗っ取っていた屋敷で読んだ資料。
セシリア
あれは公爵家の計画であって、かれらはその兵器であって。
イーデン
……正直、まだ生きていること自体驚きではあったが。
セシリア
心を和ませるための賑やかしではないだろう。
三月兎の末裔
「すご~い!」などと。そう言ったところで。
公爵家
グリフォンのトランスポーターが慌てて迎えに来る。
公爵家
「すみません」と小声で言って、目をそらして。
セシリア
……それは、あるいは我々にとってもそうなのですが。
公爵家
「ありがとうございます……では、もう少しだけ」
公爵家
そうして保護者のようにその三月兎の側につく。
GM
「……では、説明をこのまま続けてもよろしいでしょうか」
GM
……まぁ、とはいえ。今更説明することもそこまでないでしょう。
GM
あの後、改めて公爵家から救世主「スティブナイト」の討伐依頼が来ました。
GM
森の内部の情報がある程度報告され、あなたがたが得ている情報は以下のとおりです。
イーデン
じゃれつく三月兎には目を向けず、説明を聞いている。
GM
・討伐対象の「スティブナイト」は、あなたがたが見た通り、黒い結晶を操る能力を持つ救世主だ。ここ1年で急速に脅威度を上げている。
・過去に何度か救世主に討伐依頼を出したが、美希のパーティを含め、今まで全滅している。
・周辺ではこの森は「絶望の森」と呼ばれており、公爵家はこの一体を危険地帯指定している。
GM
ここからは美希パーティの調査による追加情報です。
GM
・危険地帯指定されているのにも関わらず、末裔や救世主達がこの森に入っていくのは、どうやらスティブナイトが幻覚を見せて森に人をおびき寄せているためである。
GM
・特に、「大事な人」「失った人」「過去のトラウマ」の幻覚が見られることが多い。美希パーティも幻覚を見た。
GM
・黒結晶には発狂とは別の、何らかの精神をおかしくする効果がある。
GM
・森に長くいると黒結晶に侵蝕される。長時間いると危険である。
GM
・スティブナイトは意図的に見た目を隠蔽している。持ち帰ったメモ(というかプロフ帳)からスティブナイトの外見などに関わるいくつかの記述が消えている。
GM
そして、公爵家から提案された支援物資は以下のとおりです。
GM
基本的には、持ち帰ったメモから、あなたがたと公爵家の間で議論検討したものではありますが。
◆クエストNo.1 情報収集
概要 :森を探索し、スティブナイトの情報を集める。行方不明になった人々の情報などを公爵家が提供し、情報収集を支援する。
目標値 :7
消滅条件:成功で消滅
成功 :PKのデッキを即座に公開する。また、このクエストに成功したPCは、裁判開始から3Rの間、手札の最大所持枚数が1枚増える。
失敗 :特になし
放置 :公爵家はあなたがたが何かしら情報を得て帰還することを心待ちにしているが、なによりもあなたがたの命が大事だ。達成できなかったところで、気にする必要はない。あなたがたが無事でさえあるのなら。
◆クエストNo.2 物資支援
概要 :公爵家から物資が投下される。
目標値 :7
消滅条件:なし
成功 :このクエストに成功したPCは、価値15までの宝物(凶器・衣装・小道具)、もしくは聖遺物を1つ入手する。この際、脅威度の条件は無視してもよい。
聖遺物は調達での入手も含め、各陣営1つまでを上限とする。
失敗 :特になし
放置 :余った資源は他の依頼に回される。それで助かる命があるかもしれない。ここで支援を断り、その結果あなたがたがこの依頼を達成できずに全滅すれば本末転倒であるが。
特記事項:このクエストはPC全体でラウンド1に1回、ラウンド2に2回行える。
◆クエストNo.3 戦術補助
概要 :公爵家の膨大な資料から、最適な戦い方を割り出す。
目標値 :7
消滅条件:なし
成功 :PC全員は、お茶会中の好きなタイミングで、技能を一つ入れ替えることができる。
技能変更をするタイミングが2R目である場合、「条件:脅威度6」までの技能、もしくは「遺失物技能」を習得することが可能である(能力値の条件は満たすこと)。
失敗 :特になし
放置 :資料を運ぶトランスポーターのグリフォンの末裔が精神汚染される確率が下がるかもしれない。そんなことを気にしている余裕があなたがたにあるかはさておき。
特記事項:このクエストはPC全体で1ラウンドに1回、裁判中に1回行える。
◆クエストNo.4 三月兎爆弾投下
概要 :公爵家が飼っている三月兎の末裔の集団を投下し、麦藁の冠により森を破壊する。三月兎はその後発狂し、死亡する。
目標値 :7
消滅条件:成功で消滅
成功 :PKのHPを1にする。
失敗 :PC・PKのHPを1d6点減少する。
放置 :三月兎の命が守られる。あなたがたは三月兎に感謝されるかもしれない。あるいは、何も考えていない三月兎もいるだろうが。
GM
*クエストNo.1「情報収集」クエストNo.2「物資支援」クエストNo.3「戦術補助」クエストNo.4「三月兎爆弾投下」が公開されました。
GM
そして、まぁおおよそが隠蔽されていたものの、なんとなく、少しだけ救世主がどんな人物であるかがわかりました。美希情報で。
*スティブナイト 心の疵情報:
◆黒結晶
体内に入ると肉体・精神に有害となる鉱石を生やして敵を傷付ける。周囲には黒く冷たく、美しい汚染地帯ができる。力がある救世主ですら、浴びると危険だ。
キーワード:他者への絶望、世界への絶望
//誰も信じない。全員殺すべきだ。
◆朧
何者であるかを知るものがいない。性別も、顔も。体格が変わったという噂もあるが、真偽は確かではない。近付いて生きて帰ってきたものはいなかったから。
キーワード:自分への絶望
//ずっと騙してきた。自分の肉体が嫌いだ。
GM
というわけで、今わかる情報はこんなところです。
GM
これ以上の情報を得るならば、現地に行く必要があるでしょう。
セシリア
あの時、非人道的だと感じて眉をひそめた計画を、まさか自分たちが活用することになるとは。
セシリア
公爵家とつながりを持った時点で、予測してしかるべきではあったが。
GM
「……脅威度6の救世主に、ほとんど無力な末裔や亡者がどれだけ助力できるかはわかりませんが」
セシリア
果たして、自分たちは『うまくやれる』だろうか?
セシリア
イーデンよりもさらに長身になったセラに抱き上げられ、はしゃぐ三月兎の末裔を見上げ。
三月兎の末裔
持ち上げた身体は一年半前より一回り大きいが、軽い。
イーデン
三月兎のはしゃぐ声を聞きながら、考え込んでいる。
セラ
歌うように言って、軽い体をあやすように揺らす。
セシリア
セラに会った時に斃したパンディオン、
公爵家へのパイプができるきっかけとなったストレナエ。
セシリア
『うまくやれなかった』と判断して、あるいはやむを得ず対立して、自分たちが倒してきた救世主たちのことを思い出す。
イーデン
いつにも増して、沈み込んでいるように映る。
イーデン
二人と共に、救世主として活動を重ねてきた。
イーデン
公爵家の庇護を受けてより、特にここ一年を通じて、少しずつ和らいできていた。
セシリア
『大事な人』『失った人』『過去のトラウマ』
セシリア
その言葉を思い返しながら、イーデンの周りに重く凝った空気を見つめている。
イーデン
それを芯に、自らを支えるかのような気配があった。
セシリア
「いえ、確実に、厳しい戦いになるでしょう」
セシリア
何か致命的なものが潜んでいるのではないかと。
セシリア
この森の空気はどこか、あなたに似ているのだから。
セラ
三月兎に歌を歌う。 それはいつか、ストレナエのいる村で歌った歌だ。
セラ
そうして、しばらくの時を過ごした仲間たちにはわかるはずだ。
セシリア
優しい歌声が、暗い森の中に場違いに響く。
イーデン
軽やかなボーイソプラノから、今は穏やかに響くテノールの歌声。
三月兎の末裔
一緒に歌う。あのときの歌を曖昧に覚えている。
イーデン
まとわりつくような重苦しい絶望に不似合いな、優しく旋律。
セシリア
「物資は与えられていて、準備はおおむねできているでしょう」
セシリア
「あとは、向かうと言っていただければ、すぐにでも」
公爵家
グリフォンの末裔が改めて、セラに目で合図をした。
セラ
「そうですね、次は……、帰ってきてからかな」
三月兎の末裔
そう言って、グリフォンの末裔に連れて行かれる。
セラ
忙しなく働く末裔達の雑踏に見えなくなるまで。
GM
今度は大人しく支度しているのが、あなたがたの視界の端にうつって。
セシリア
意識して微笑みを浮かべ、隣の男を少しでも勇気づけるように。