プロローグ

GM
鬱蒼と茂る森。
GM
その木を切り拓いて作られた、中規模の拠点にあなたがたはいる。
GM
辺りを埋め尽くさんばかりに並ぶのは、箱に詰められた物資と、布でくるまれた三月兎。
GM
ドードーの末裔が紙の資料を見比べて、公爵家エージェントと話す。
GM
雇われのグリフォンの末裔たちがそれらの周辺で、飛び立つ支度を整えていた。
GM
しばらくして、そのうちの一人、リーダー格の公爵家エージェントが近付いてきて、あなたがたに声をかける。
GM
「救世主様方。こちら、いつでも出発できます」
GM
「改めまして、この度は依頼を受けていただき、本当に感謝しております」
GM
「なにせ、この状況で頼れるのはあなたがた以外にいませんから……」
ルキオン
「こちらも大丈夫だ。準備は出来ている」
鈴木草太
「構わないよ。どのみち、オレたちもこれは放っておけないからさ」
アンリミテッド
「私達にお任せください!」
鈴木草太
貰った報告を確認したところ、想像以上の事態になっているらしい。無視をすることは出来ない。
GM
そうですね。公爵家のその後の調査によると、おおよそ以下の感じでした。
GM
まず、黒の森について。
GM
・黒の森は暗く、あらゆる草木が枯れ果て、黒い結晶がそこかしこに生えている場所です。そこまで広くはなく、端から端まで歩くのには長くても半日程度でしょう。
GM
・広くはないし迷わないはずですが、なぜか帰ってこれた者がほとんどいないようです。
GM
・たまに何かに吸い寄せられるようにして森に入っていく者がおり、近くにあった集落が壊滅しています。
GM
・黒の森に入った場合、末裔はまず帰ってこれません。救世主はごくまれに帰ってこられますが、発狂していたり、そのまま自殺や失踪をしたり、ほぼ無反応の無気力状態、植物状態になったりします。
GM
プロフ帳の救世主も、なんだかとても鬱っぽかったですね。
GM
今は公爵家で治療しているらしい、けれど、治療は難航しているそうで。
GM
また、プロフ帳の救世主はごく軽度だったものの、他の帰ってきた救世主には、「黒結晶」と呼ばれる結晶が肉体から生えていたり、体の一部が結晶に置き換わっていたりしていました。
GM
公爵家は、これは恐らく救世主の仕業だろう、というところまで推測し、この現象を発生させている救世主をコードネーム「スティブナイト(stibnite)」と名付けました。
GM
が、スティブナイトについてはほとんどわかっていないようです。
GM
本当の名前も素性もわからず、いくつか目撃情報がありますが、証言が食い違っています。
GM
よくわからないが、放っておくとこの森一帯を滅ぼしかねない、とても危険な存在であることは確かなようです。
GM
あの後、何度か救世主に依頼をしましたが、いずれも全滅でした。
GM
……と、おおよそこのような情報があなたがたに伝えられています。
アンリミテッド
集落に危害が及んでいる以上、放置はできません!
鈴木草太
「…情報を聞く限り、心を惑わすタイプの異能を扱う救世主が潜んでいそうだよね」
アンリミテッド
「気を引き締めていかないと……!」
鈴木草太
「映画とかだったらさ。
そんな危ないところにわざわざ入って行かないで、燃やしちゃえば良いのに…って思うんだけど…そうも行かないからなぁ…」
鈴木草太
原因に逃げられたら、また別の森がそうなる。
鈴木草太
この世界での森は貴重だ。軽はずみに失うわけにはいかない。
ルキオン
「気軽に逃げられそうな相手でもない。縄張りに足を踏み入れたら、決着まで持っていく覚悟が要るだろうね」
GM
「ああ~……」トランスポーターが口を開く。
GM
「試してみたらしいっすよ」
GM
「なんか……燃えなかったって……」
GM
「いや、噂っすけどね」
鈴木草太
「…だとしたら、森全体が相手の領域になっているね」
アンリミテッド
「コインも相当奪ってきてるだろうし……」
三月兎の末裔
たたかい!?
三月兎の末裔
わーい!
三月兎の末裔
と、飛び出してきたのはトランスポーターに抱えられた三月兎。
三月兎の末裔
この間逃げ出して確保したやつ。
鈴木草太
「…そういえば、この子はどうしてここへ?」
鈴木草太
三月兎のこどもを見て。
GM
トランスポーターは隣の公爵家を一瞥し。
三月兎の末裔
「あのねえ!」
三月兎の末裔
「いまからねえ、たのしいところ、いくんだって!」
アンリミテッド
「え……?」
鈴木草太
「………このあたりには遊園地も公園もない筈だよ」
鈴木草太
どういうつもり?と、トランスポーターたちを見る。
GM
エージェントが慌ててやってきて、飛び出してぴょんぴょん跳ねる三月兎を抱えて去っていきました。
三月兎の末裔
「ばいばい!」
三月兎の末裔
そう言って振られた手も布にくるまれて見えなくなります。
ルキオン
「……?」
GM
公爵家が眉を顰めて、それから。
GM
「こちらが今回我々ができるサポートです」
GM
あなたがたに紙を手渡す。
GM
*クエストを公開します。
アンリミテッド
紙に書かれた内容を確認し、目を見開く。
ルキオン
「……これは……」
GM
「…………わかってるっすよ、まぁ、俺達も」
GM
「でも、しょうがないから」
アンリミテッド
「…………」
GM
「森が全滅するのとどっちがマシかっつったら…………」
ルキオン
「…………それだけの状況という事だね」
GM
「……ええ」公爵家が口を開く。
GM
「使うかどうかの判断は、あなたがたにお任せいたします」
ルキオン
「わかった。支援、ありがとう」
GM
「我々はあなたがたの合図があり次第、すぐに出発し、投下いたします」
鈴木草太
「…その手段は頼まないで済むように頑張ろう」
鈴木草太
他の2人に向けて。
アンリミテッド
「……うん」
ルキオン
「それを止める権利が僕らに与えられた。それは幸運な事だ」
鈴木草太
その手段が出てきたことを責めはしない。
元来、救世主の庇護下にない末裔たちはそうしてこの世界を生きながらえているのだから。
ルキオン
「……でも、責任は重大だ。どちらの選択からも、選択が引き起こす事からも目を逸らすことはできない」
アンリミテッド
綺麗事を通してすませられるなら、それに越したことはない。
アンリミテッド
だけど、手を汚さずにいられるほどこの世界は生ぬるくはなく。
鈴木草太
「…うん」
アンリミテッド
それでも……できるだけ善いことを、と。
鈴木草太
どちらを選ぶにせよ、”その選択の結果は最も犠牲が少なくなるものを選ばなくてはならない”。
アンリミテッド
そうして私達は戦ってきた。
鈴木草太
それが力あるものの責任で。
けれど、それでもオレたちには無視できないものがある。
アンリミテッド
「……まずは、どんな相手か調べてみよう」
アンリミテッド
「私達ならちょちょいとやっちゃえるかもしんないし!」
鈴木草太
「…そうだね。よく調べて、考えながら動こう」
鈴木草太
願わくば、三月兎たちを犠牲になどしないで済むように。
ルキオン
「賛成だ。一歩ずついこう」
GM
「……ありがとうございます」
GM
「それでは……」
GM
「よろしくお願いいたします、救世主様方」
GM
公爵家の末裔と、トランスポーター達が頭を下げて、あなたがたを見送り。
GM
そうしてあなたがたは拠点を出発しました。