お茶会2

GM
*行動順の決定
GM
1d99で大きい順になります。(イニシアチブに入れてください。)
アルビー
1d99 (1D99) > 31
リラ
1d99  (1D99) > 23
ティット
1d99 (1D99) > 97
GM
*お茶会ラウンド2順番:ティット>アルビー>リラ
GM

*お茶会ラウンド2:スティブナイト(手番割り込み③)

GM
xxx
スティブナイト
*ティットの心の疵『エゴ』を猟奇で抉る。
スティブナイト
横槍はないらしいのでそのまま判定。
スティブナイト
2d6+5=>7 判定(+猟奇) (2D6+5>=7) > 6[4,2]+5 > 11 > 成功
[ ティット ] エゴ : 0 → -1
スティブナイト
PKに抉られ、●状態の疵の関係欄にPKの名前があるようになったため、ティットは『絶望侵蝕』。
noname
ティット
共にやってきた仲間達の窮状など知りもせず、真っ先にひとりはぐれた悪魔は、黒結晶が昏く光沢を放つ森の中を勝手気ままに進んでいく。
ティット
まるで散歩でもしているかのように、その足取りは軽い。どうせその内にはぐれた仲間と合流するだろうと言わんばかりの楽観がその様子ににじみ出ていた。
ティット
――そもそも、合流出来なくたって悪魔は困らない。
ティット
この世界へ飛ばされ一番初めに出会った男と少女。
たまたま出会い、道行きを共にした異邦人。
ティット
それなのに、どうしてこの2年もの年月をあの二人と重ねてしまったのか。
ティット
それは、成り行きとちょっとした興味から始まった。
ティット
そう。
興味があった。
やや癪に障るが、それは認めよう。
ティット
少女も男も、それまでティットが接した人間よりも…………なんというか………輪郭がはっきりとしない人間だった。
ティット
あやふやで月が満ち欠けを繰り返し形を変えていくような、染料を何色も掛け合わせ色が混ざっているような、見透かせなさがあったのだ。
ティット
こう!と判を押すことが出来ず、それがすっきりしなくて……気持ちが悪く、正体を見定めてやるまでは傍で観察することにした。
ティット
…………その結果がこの体たらく。
気がつけば二年もの月日が経っていたのです。
ティット
え? ほんとに?
ティット
そりゃあ、悪魔にとっては二年なんざ瞬きをする間ですがね?
でもさー、計りかねてそれだけの月日をおとなしくお供したってのは、ちょっといただけないね?
ティット
そりゃあ、オイラはさっきの黒いお姫様とは違って気は長いしじっくり事に当たるほうさ?
だが、こんなのは計画とは呼べないからね。
ティット
ティットちゃん、反省。
ティット
どうにも、あいつらに巻き込まれ流されている気がしてならない。
ティット
それが、気持ち悪い。
ティット
あーあ、まじでこのままはぐれてやろうかな………。
ティット
などと誘惑が脳裏を掠めるが、それでは何のためにこれまで同行したのかわからない。
ティット
思えば、最初から気に入らなかったのだ。
ティット
そもそも、ティットの知る人間という生き物は、もっとシンプルな動物だった。
ティット
生物としての欲求。プラグマティックな欲望。
大抵がその原則の上に積み重なり、貪欲に野望の範囲を広げて行けども、その枠を踏み越えることはない。
ティット
――なかった。
ティット
その愚かしさを哂い、唆し、火を点けては破滅に誘うのが、時の流れの理から外れ漂流する悪魔の無聊の慰めだった。
ティット
しかし、この堕落の国へと飛ばされてわかった。
ティット
自分の元居た世界は、とてもとても若かったのだ。
ティット
その世界では悪魔は理を外れ、人々が触れることの叶わない真理の近くにいた。
ティット
その特権は知だ。
ティット
人々が知り得ないもの、理解が及ばないもの、それを手にしていたからこそ、悪魔は枠の外に居られた。
ティット
それが、どうだい?
今や、悪魔の知らない知識を、把握しきれぬ観念を、ただの人間が当たり前のように手にしている。
ティット
こうして、比類なき存在は気がつけば横並びに並列されているって寸法さ。
ティット
なかなか洒落たオチじゃない?
ティット
そんな訳で……、実は弱っているのですね。
ティット
あ、ここだけの話ですからね?
ティット
胸に秘めておいてくださいよっと。
ティット
………………。
ティット
特に、あの男は始末に悪い。
ティット
アルビー・ミッドフォート。
得体の知れない、あの男…………。
アルビー
「うん、無事に解決してよかったね」
公爵家から受けた依頼の報告後。
アルビー
リラにはにこやかにそう言ったが、内実はそう穏やかとも無事とも言えない。
アルビー
殺した。
アルビー
騙して、裏で手を回して、搦め手を使って、リラの預かり知らぬところで手を汚して、物事が表向き平穏に片づくように仕組んだ。
アルビー
清廉潔白な善人の救世主の顔をして、アルビーは賞賛を受ける。
アルビー
それが終わって、人気がなくなったあと。
一人、宿屋の裏の物陰に佇んで。
暗い顔で、銃の解体や組み立てをしていた。
ティット
パチパチパチ。
張り詰めた夜の空気を破るように手のひらを打つ乾いた音が響き渡る。
ティット
悪魔は軽薄に、軽快に、男が佇む物陰へとスルリと身を滑らせる。そして阿るように人懐こく笑うと、
ティット
「いやぁ、鮮やか! 度重なる裁判を越えてやり口がどんどん洗練されてくね~、あっぱれ!」
ティット
「無駄なく手際よく、効率的に」
ティット
「どうかな? 自分でも満足いく出来だったんじゃない?」
アルビー
「……相変わらず神出鬼没だね」
アルビー
手元の銃を組み立て直し、シュンとその場から消す。
アルビー
「お褒めに預かり光栄……って言えればいいんだけど」
アルビー
「……まあ」
アルビー
「仕事は、犠牲が少なく円滑に終えるに越したことはない」
アルビー
「それだけの話だよ」
ティット
「あら、そう?」
ティット
「それは殊勝な心掛けね。みーんな、アンタのこと、清廉潔白な聖人君子のように誉めそやし、感謝と信頼と称賛の目で見上げてるっていうのに」
ティット
「公爵家の覚えもめでたく、信頼も厚い。このままいけば、出世株上位に入るかもしれないぜ?」
アルビー
元の世界でもそんな感じだったなぁ……とか思いながら。
アルビー
「君は?」
アルビー
「君はどう思ってるの? 公爵家の覚えがめでたいのは、君も一緒みたいだけど」
アルビー
「俺がだいたいの方針を決めて、ここまでやってきたけど」
アルビー
「ティットが他にやりたいことがあるなら、俺はそれを止められないよ」
いつも他者に話を吹っ掛けて、自身の欲についてなかなか語ろうとしない道化に、そう言う。
アルビー
「だから、意志の表明はちゃんとしてね?」
ティット
「あらまあ、お優しいこと!」
ティット
「いいのいいの、オイラはさー、あれよ?」
ティット
「寝てる間に作りかけの靴を仕上げたり、家事を行ったりする妖精さんみたいな? 人の願いを叶えるブラウニーみたいなもんよ」
ティット
「好きに使ってくれていいのさ」
アルビー
「……まあ、なんか。君のそういう在り方は、ある程度はわかってるつもりだけど」
ストレナエの村で最初に出会った頃の印象は、共に時を過ごす上で変化した。
アルビー
辛辣な弾劾者でも奔放な自由人でもなく、道化の役割に縛られた者。
それが目の前の悪魔の在り方だ。
アルビー
「でも、妖精さんにだって心はあるでしょ?」
アルビー
「乗り気じゃないことならやめていいし、やりたいことをすればいい」
アルビー
「俺は……今のこれがやりたいことで、自分で選んだ道だけど」
アルビー
「ティットにとってはどうなの、って話だよ」
ティット
「さてね?」
ティット
『君は?』
目の前の男は、悪魔の姿を真正面に捉え、問いかけた。
ティット
見透かすような目をこちらへと向ける。
ティット
その瞳に反射し、自らのカタチが映し出され像を為すような、そんな感覚に捕らわれ吐き気を催す。
ティット
これまで、そんな風に尋ねられたことなどなかった。
ティット
いや、あったのかもしれない。
ティット
あったとしても、それは悪魔に届くことはなかったのだから、ないのと変わらない。
アルビー
困惑しているのかな?と思う。
アルビー
(まあ、自分の本当にやりたいことだなんて、一生かけて考えていくものだしね)
ティット
省みる、という行為は比較の対象があってはじめて生まれるものだ。
ティット
ティットにとって人間とは下段にある生命。
限りある時間に捕らわれた囚人。
本能と欲望に支配された奴隷。
アルビー
野に投げ出されたようなティットの困惑は、なんとなくわかる気がした。
自分にもそういうところがあるので。
アルビー
保守的な一家に生まれ、厳格な父が求める『良き長男』の像に応えようとしてきた。
ティット
人間だってそうだろう?
炉端の石や、咲き乱れては朽ちる草花、羊の群れ、そういったものを、自分と同じ高さで、対等な生き物として扱いはすまい。
アルビー
敷かれたレールの上を走るように一流の学校に通い、官僚になった。
ティット
そして、ティットは同種に出会ったことがなかった。
アルビー
それが『自分の果たすべき義務』のように思えたから、迷った末に親友の手を取らなかった。
ティット
ティットは相手の姿を反射しまざまざと映し出す鏡だったけれど。
ティット
ティットを映す鏡はなかったのだ。
アルビー
規範という道標がないのは不安だ。
そんな自分が、よく疎ましくなる。
それは、ただの思考停止した従順さではないか、と。
アルビー
(でも、そこにレールが敷かれていたとしても)
アルビー
(自分の意志でその道を行くと決めたのは、俺だから)
ティット
けれど、目の前の男はなぜか、時折こうして悪魔をまっすぐに見つめて、反射するように問いかける。
アルビー
(……だから、定められた軛から逃れられなくても、そこに人の尊厳は生じうるんだよ)
ティット
青い瞳に映し出された自己と対面する。
しそうになって……あわてて、身をひるがえした。
ティット
それは、得も言われぬ不快で気色の悪い、嫌な感じがした。
ティット
「オイラはさ~、興味がある訳よ」
ティット
「アンタたちの道行きに。その結末にね。だから、それを見届けるのが目下のオイラの目的。やりたいことね」
アルビー
何にも縛られないような眩しい人がこの世にいても、自分はそうはなれない。
だから、その軛や呪縛の中でも選択して、もがくべきだと、そう思っている。
ティット
「特に、アンタの終点には大いに興味がそそられるね」
アルビー
「はは、なるほど?」
ティット
「ねえ、あんたの最終目標ってどこに設定されてんの?」
アルビー
「どうなるかな」
アルビー
「最終目標ね……」
アルビー
「それって、結局こう答えるしかなくない?」
アルビー
「……ユートピアだよ」
ティット
「まあ!壮大な夢ね!」
アルビー
「どんなに道程が遠くても、理想は常にそこであるべきだと思うから」
ティット
………………けれど。
ティット
一つ一つ積み上げて是正し構築すること。
それが果たしてこの堕落し崩壊を待つばかりの、この世界で実を結ぶものなのか。
ティット
ティットはそれは無理だろうと思う。
アルビー
「……まあ、俺が途上で死んでも、ティットは長生きだし、要領もよさそうだ」
アルビー
「『看取って』なんて言わないけど、もし君の気まぐれが続いたままで、そのときまで傍にいたら……」
アルビー
「そのときは、悲劇か喜劇か、好きに判定してみてよ」
ティット
この世界はバケツの底が抜けた壊れた世界だ。
蓄積し積み重ねることで少しずつでも確実に歩を進める、そういう世界とは隔たりがある。
そういう世界だと思う。
アルビー
「ティットのセンスのいい口上が聞きたいな」
ティット
ティットの元居た世界は黎明の時代にあった。
どんなに厚い霧に包まれていても、その歩みが牛歩の如き緩やかさであっても、一歩ずつ着実に積み重ねられる余地があった。
振り返って、悪魔はそう考える。
ティット
この国はもう駄目だ。
正攻法など通じまい。
ティット
それを可能とする手段はひとつだけ。
ティット
しかし、目の前の男がその手段に賭けようとしているとも……悪魔は思えなかった。
ティット
意識の上ではどうだか知らない。
ティット
だが、万が一にも、その射程に手は届くまい。
ティット
もしも、それを本気で狙っているのなら、きっと様々な行動が今とは異なっていたはずだ。
ティット
そうであったのなら。
ティット
はじめから、葛藤を見せはしなかっただろう。
この男ならば。
ティット
今後、そのように変化するのでは遅い。
ティット
はじめからそうでないのなら、万が一つも芽などない。
そう、悪魔は推察する。
ティット
だから、
ティット
「応ともさ」
ティット
「いいぜ、悲劇か喜劇か、オレ様が判定してやろう」
ティット
「楽しみにしといてよ。あ、でもそうなったときはもうアンタは既に聞く由もないが」
ティット
それをこの目で確認するために、この旅に付き合ってきたのかもしれないなと、悪魔は思った。
アルビー
悪魔の内心を、知ってか知らずか。
「聞こえなくても、楽しみにしてるからね」
笑って、そう答えた。
GM
スティブナイト
シーン表を使用する。
スティブナイト
2d6 シーン表 (2D6) > 9[5,4] > 9
スティブナイト
5 開けた場所。巨大な黒結晶のクラスターがある。長い時間をかけて大きくなったようだ。この辺りが救世主の居住地だろうか?
4 木々が重なったか、夜が来たか、辺りが暗闇になる。あなたに孤独感が襲いかかる。隣に誰かいるだろうか?
スティブナイト
三月兎の声が止んだ森は静かなものだ。
スティブナイト
ティットが歩む道にも、狂った兎の亡骸がちらほらとあることだろう。
スティブナイト
その亡骸を踏みしめるような音。
スティブナイト
奥から、人影。
スティブナイト
「…………ごほッ……………………」
スティブナイト
「…………」
ティットの姿に気づき。
スティブナイト
「…………お姫様のおかげで森が滅茶苦茶だよ」
そう言った。
ティット
葉の代わりに木々から生えた鉱石が折り重なり陽光が届かぬ昏い森の中、散歩するように歩を進める。
ティット
足取りは軽く
ティット
ステップは軽快に
ティット
仲間たちの居場所はわからないが、先程聞こえてきた破壊音によって、当たりをつけることは容易となった。
ティット
その音はかつて聞いたことがあった。
記憶に残っている。
ティット
多少距離があっても目視できた。
空から降ってくる何かを包んだ白いモノ。
ティット
喧騒。
ティット
そして、お開きとなった会場に残されたパーティーの後の残骸が、ほら、ここそこに。
ティット
あーあ、後片付けは怠っちゃったの?
ティット
しかし、随分と派手に散らかしたもんだ。
正直ちょっと意外だね。
ティット
そんな訳で、はぐれた仲間と合流すべくパーティ会場跡へと足を進めた。
ティット
ガサリ、と。
何かを踏みしめるような音が響き、人影が現れた。
ティット
「おやおや………」
わざとらしく目を瞠る。
ティット
「はぁい! お姫様。随分とくたびれたご様子だこと」
ティット
「お姫様……? オイラはあれを王子様だと思ってたんだけど、なるほど、お姫様に見立てるたぁ、なかなかいいセンスしてるじゃないか! 確かにお姫様でも通用するよね、ははっ」
ティット
勘違いをしている。
ティット
まさか、この惨状を巻き起こした人物が彼女であるとは、悪魔であれど想像はできなかった。
ティット
「派手にやられちゃったね~」
ティット
「気分はどう?」
スティブナイト
「…………」
スティブナイト
「最悪」
スティブナイト
「いつものことだけどね」
ティット
「そりゃお気の毒」
ティット
「アイツもな~、随分と張り切った手段に出たもんだ。あーあ、また覚悟ガンギマリってな顔してんだろうな~、やだやだ」
勘違いをしている!
ティット
「アンタも面倒くさいのに捕まって可哀想に」
スティブナイト
「…………面倒、ね」
スティブナイト
「はあ…………」
スティブナイト
「どうやらあの『二人』は、別れちゃったらしいよ」
スティブナイト
「こっちも向き合ってみたんだけどね」
「鏡を叩き壊すようなやつと、鏡の中に幻覚を見ていたやつ」
「どちらもろくなもんじゃない」
スティブナイト
「今頃は…………」
「俺のことでも探してるかな?」
スティブナイト
「それとも、あんたを探してるのかもね」
スティブナイト
「ものすごい形相で」
ティット
「ふーん。……じゃ、アンタとここにいれば、向こうから見つけてくれるかしらん。そりゃらくちん」
ティット
「別れちゃった、ねぇ……」
ティット
「鏡を叩き壊す野蛮な男にショックでも受けちゃったかね?まあ、この惨状じゃあ、ショック受けもするか…………?」
でも……今更、ショックを受けて否定するような真似をするだろうか?
ティット
聞き分けの良い『いい子』の顔を思い出し脳裏に描く。
ティット
「まあ、いいか」
ティット
「多少揉めたところで、結局は地固まるだろうさ。うちの連中はお利口でお行儀がいいからね」
スティブナイト
「…………いいや、もう元には戻らないだろう」
「あんたを見つけて、二つに裂いちゃったりするかもね」
スティブナイト
「選んでおいたほうがいいんじゃない?」
「どっちを鏡として映したいか」
スティブナイト
「……ああ、選択肢はもう一つあるな」
スティブナイト
「鏡から抜け出して、『一人』をはじめてやってみるか」
ティット
「………………面白いこと言うね」
ティット
「何? アンタもオイラと踊りたいってクチ?」
ティット
「可愛いお姫様に粉かけられて悪い気はしないかな~」
スティブナイト
「いや――」
黒結晶を吐ききって、剥がした顔。
スティブナイト
「踊るのはお前たちで、俺は舞台裏に引きこもるつもりだよ」
「最初から」
スティブナイト
「だが、まあ…………」
「誰かが最期まで踊っていられたら」
スティブナイト
「俺はその手を取ってやってもいい」
スティブナイト
「一人立っていたやつの言うことを聞いてやってもいいな」
スティブナイト
「そして願いを聞き入れるとしよう」
スティブナイト
「ランプの魔人のごとく。」
ティット
「………………」
ティット
「ははっ」
ティット
「最期に残った勝者の頬にキスをして、その頭に王冠を乗せてやろうって? 流石はお姫様だね」
ティット
「世界を救った勇者に与えられる定番のご褒美だ」
ティット
「随分と貞淑だこと」
スティブナイト
「他人事みたいに言うんだな」
「選ばれるのはお前かもしれないだろうに」
スティブナイト
「鏡様は、王冠を被ったことがないのかい?」
ティット
「あらっ!アタシと張り合おうっての!?」
口の前に開いた手のひらを当てて、まあ、と瞬き。
ティット
「なーんて……、いいよいいよ、その役はアンタに譲る。だってさ~」
ティット
「アイツら、冠もメダルもトロフィーも、あんまり興味がないみたいだし?」
ティット
「でも、ほら!」
ティット
「お姫様のキスと真実の愛ってやつなら、スカした王子様や不安定なお姫様の凍えたハートも射貫けるかも? がんばってみる?」
ティット
「いいね、みんなが大好きなハッピーエンドさ」
スティブナイト
「ハッピーエンドは置いておいて」
「…………そこにお前はいるのか?」
スティブナイト
「お前のことを知る必要は一つもないが」
「俺が思うに、お前はいつも傍観者側みたいだな」
スティブナイト
「主だった望みも欲望も実はない――だったか」
スティブナイト
「心底気持ち悪いなあ、救世主様」
スティブナイト
「アリスや、アリス。物語の主役は貴方ですよ」
スティブナイト
「貴方の代わりなど誰もいない」
「貴方は貴方であるためにここに呼ばれたのです」
スティブナイト
「貴方がそう望まなくても、ね」
ティット
………………主役?
ティット
そんなことは、在り得ない。
ティット
ここにあるのはただの鏡。
ティット
客体が主体となるなど、馬鹿げた話。
そんなことはありはせぬ。
ティット
否。
ティット
ありえてはならない。
ティット
「いいよいいよ」
ティット
「言っただろう?オイラは鏡。大道具のひとつさ」
ティット
「舞台に在って、しかし登場人物ではない」
ティット
「花形は主役のみなさまにお任せしますよ」
スティブナイト
「おまかせなんてできやしないよ」
スティブナイト
「お前もすっかり花形だ」
スティブナイトが近づく。
スティブナイト
「人手不足と言ってたな」
「逆だろう。人手が多すぎるのに、お前はまだ『救世主』をやっている」
黒結晶の雨が降る。
スティブナイト
「主役と並んで歩くのは、別の主役なんだよ、アリス」
「倒れていった大道具たちもそう思ってるだろうさ」
スティブナイト
「なあ、鏡よ、鏡」
スティブナイト
「お前が世界で一番になってみたくはないか?」
ティット
キラキラと、鈍色の艶めいた光沢を放ちながら結晶の雨が降る。
ティット
昏い森の中。光源などどこにも無い筈なのに。
ティット
キラキラと。
ティット
放った光が反射して、その姿を幾重にも映し出す。
ティット
まるで、万華鏡のように。
ティット
鏡よ、鏡
ティット
鏡は誰?
ティット
それは悪魔の役目
ティット
けれど、同じ高さで、隣り合うのであれば。
ティット
お互いの瞳に、その姿が映る。
ティット
さながら、鏡のように。
ティット
誰かを通して、映し出される己の姿。
ティット
それが目の前に現れる。
ティット
息を呑んだ。
ティット
そして――、映し出された鏡像と対峙する。
ティット
映った、その姿は――、
ティット
――……。
ティット
「――ははっ」
ティット
「お姫様は挑戦的だ」
ティット
「そんなにオイラを踊らせたいの?」
スティブナイト
「足元を見てみたら?」
スティブナイト
「浮足立ってるよ、救世主様」
スティブナイト
「踊らせてあげなきゃかわいそうじゃないか」
ティット
「………………、へぇ」
普段のおどけた調子とは違う、低く乾いた声が漏れる。平坦なその音の中に、ナイフの切っ先のような鋭利さが混じる。
ティット
「それはダンスのお誘いかな? アンタが躍ってくれるのお姫様。――その、ズタボロの貧相なナリで?」
嘲るように鼻を鳴らした。
スティブナイト
「お前が立っていられたら、一曲踊ってやってもいい」
スティブナイト
「ワルツの舞台は…………そうだな、公爵家なんてどうだ?」
ティット
「随分と強気だね。面白い、受けて立ってやろう。お姫様のお手並み拝見だ」
スティブナイト
「期待してるよ、鏡の国のアリス(王子)様。」
スティブナイト
雨は止み、そこに女の姿はない。
スティブナイト
ただ、道がある。
地を伝う黒結晶の、終幕への道のりが。
スティブナイト
この道を往けば、すべてを終わらせることができるだろう。
スティブナイト
その道の先端で、誰かと会うとしても。
スティブナイト
行き止まりは、示されている。
ティット
「………………」
ティット
まんまと挑発され、誘導される我が身が滑稽で、不愉快さがじわりと、書き損じたペン先から滲むインクのように胸中に広がる。
ティット
胃もたれを催す苦い味を舌先で転がす。
ティット
この道を往けば、後戻りはできない。
ティット
頭の中で警鐘が響く。
ティット
何故進むのかを理解せぬまま、悪魔は足を踏み出した。
ティット
引き返すことのできない、その道を。
GM

*お茶会ラウンド2:ティット・アルビー

GM
*お茶会特別処理
GM
*ティット・アルビーの判定を先に行い、それからロールになります。
GM
まずはティットから。
GM
*お茶会ラウンド2:ティット
GM
* PKに抉られ、絶望侵蝕の状態であるため、PCの「心の疵を抉る」以外の行動ができなくなり、対象PC、疵と判定に使用する能力値、アイテムの使用はPKが指定します。
GM
*まずはクエストの宣言をどうぞ。
ティット
*クエストNo.3を行います。
スティブナイト
*アルビーの心の疵『道』を猟奇で抉れ。ティーセットを使用すること。
スティブナイト
横槍は?
リラ
*横槍~~~!!!
リラ
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 才覚
リラ
2d6+0=>7 判定(+才覚) (2D6+0>=7) > 8[2,6]+0 > 8 > 成功
リラ
1d6 (1D6) > 3
ティット
*ティーセット使用します。
[ ティット ] ティーセット : 1 → 0
GM
ティーセットで+2、横槍で-3で振ってください。
[ リラ ] HP : 24 → 23
ティット
2d6+4+2-3=>7 判定(+猟奇) (2D6+4+2-3>=7) > 5[1,4]+4+2-3 > 8 > 成功
GM
成功。
[ アルビー ] 道 : 0 → -1
GM
クエストNo.3 戦術補助も成功しました。
続いてアルビーの処理を行います。
GM
*まずはクエストを宣言してください。
アルビー
クエストNo.2、物資支援を行います。
スティブナイト
*ティットの心の疵『エゴ』を才覚で抉れ。ティーセットを使用すること。
スティブナイト
横槍は?
ティット
リラ
*横槍屋さんなのでします
リラ
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 才覚
[ リラ ] HP : 23 → 22
リラ
2d6+0=>7 判定(+才覚) (2D6+0>=7) > 3[2,1]+0 > 3 > 失敗
GM
失敗のため、ティーセット使用して+2で振ってください。
アルビー
2d6+4+2=>7 判定(+才覚) (2D6+4+2>=7) > 9[5,4]+4+2 > 15 > 成功
GM
成功。
GM
クエストNo.2 物資支援も成功しました。
対象のアイテムを宣言してください。
アルビー
ラストヤリイカを取得します。
[ アルビー ] ラストヤリイカ : 0 → 1
GM
*ロールの前に疵の処理を行います。
GM
[ ティット ] エゴ : -1 → -2
スティブナイト
●状態の疵を抉られ、成功したため、ティットは状態〈絶望〉になる。
スティブナイト
*〈絶望〉時の処理を行う。
スティブナイト
前科を+5する。
[ ティット ] 前科 : 0 → 5
スティブナイト
抉られた●の心の疵の名前を「絶望」に変更する。
[ ティット ] 絶望 : 0 → -1
スティブナイト
他PCについて、状態○の心の疵の関係欄に〈絶望〉したPCの名前がある場合、その心の疵の状態を●にする。今回は該当しない。
スティブナイト
GMは配下1体を選び、HPを〔〈絶望〉したPCの現在HP〕点減少する。この処理の結果HPが0になったとき、配下は〈昏倒〉する。
[ 黒結晶 ] HP : 1 → 0
GM
黒結晶はすべて昏倒。
スティブナイト
よかったね。PKがとても倒しやすくなったみたいだ。
スティブナイト
『スティブナイト』の首を取るのは誰かな?
スティブナイト
それとも、
スティブナイト
黒い森を出て、やることがあるなら。
スティブナイト
俺は応援してやってもいいけどね。
GM
アルビー
悪魔が道を歩む中。
アルビー
あなたの視界を、銃弾が掠めていく。
ティット
死角から飛び出た銃弾に首を竦め、弾道の発射位置へと目を向ける。
アルビー
銃弾が狙ったのは、あなたではなかった。
アルビー
あなたの背後。
アルビー
三月兎爆弾の残骸。
アルビー
発狂して爆ぜた兎たちのうちの、不運な死にぞこない。
アルビー
微かに動いていたそれを目ざとく見つけて、即座に命を止めた。
ティット
「……おっと」
銃弾が己の背後の残骸を処理したことを確認し、肩を竦める。
アルビー
「やあ、ティット」
場違いのように柔和に微笑む。
アルビー
その様子は常と変わらないものに見える。
あるいは、長く過ごしてきたあなたには、纏った雰囲気の違いはわかるかもしれないが。
ティット
「ナイスタイミング!班長殿」
いつものように、にっこりと笑い返す。
ティット
まるで何も気がつかないように。
あるいは――。
ティット
その真意はまだ見えはしない。
ティット
「随分と派手にやっちゃったみたいね!どしたの? なりふり構っていられない程、お姫様に追い詰められちゃった?」
アルビー
「……この爆弾の話なら、俺じゃないよ」
ティット
「………へ?」
アルビー
「リラちゃんがやった」
アルビー
「恐らく、彼女とも裁判になるだろうね」
アルビー
「スティブナイトを倒す前に」
ティット
絶句。
ティット
暫く固まった後、
アルビー
色がないほど淡々と。
事実を述べる。
ティット
「まじで………………?」
アルビー
「ああ」
アルビー
「俺の責任だね」
ティット
「ほぉ~……」
ティット
「それはそれは………………」
ティット
「さすがのオイラも、これにはびっくり」
アルビー
「…………ちゃんと」
アルビー
「けじめはつけるさ」
アルビー
「これまでの過ちの、全部」
ティット
「へぇ~」
ティット
「ねぇ、王子様」
ティット
「今の心境は?」
にっこりとあなたへ笑いかけた。
アルビー
「……心境は関係ない」
アルビー
「やるべきことをやるだけさ」
ティット
「そ~んなこと言わずにさ! ねぇ、教えてよ!! ここまでアンタ等に付き合ってきたお駄賃代わりにさっ!」
アルビー
「本当に、関係ないんだ」
ガラスのように澄んだ瞳。
アルビー
「嘆いても、喚いても、何かが戻ってくるわけじゃない」
アルビー
「……そもそも、戻すべきでもない」
アルビー
「だから、俺にできるのは清算だけ」
アルビー
「これまで、誤った道を歩いて」
アルビー
「善悪を腑分けして、選別して、こんな地獄の中を苦しめて生かし続けてきた分」
アルビー
「殺して」
アルビー
「殺して」
アルビー
「殺して」
アルビー
「最後の一人になるまで、殺し続ける」
アルビー
「それしか、償う方法がないからね」
ティット
「………………へぇ?」
ティット
「それはまた……」
ティット
「今更な決意だこと」
アルビー
「そうだね」
アルビー
「俺もそう思うよ」
ティット
「自分にそれが出来ると思う?」
アルビー
「……ねえ、ティット」
問いには答えず。
アルビー
「出会ったばかりのこと、覚えてる?」
アルビー
「見知らぬ荒野で初めて会って……」
アルビー
「三人であの村に行って、それから二年」
アルビー
「色んな話をしたよね、俺たち」
ティット
「まあね~、……すっかり腐れ縁だわね、オイラ達」
ティット
「なーに? 感傷的なモードなの? かわいいリラちゃんに反旗を翻されるとは思ってもみなかったよね?うん、オイラも正直思わなかったね。びっくりよ?」
アルビー
「……いや、そうじゃなくて」
アルビー
「思えば、ティットとは、最初からそういう話をしてたなって」
閉じた目を、開く。
アルビー
「『ゲーム』と」
アルビー
「『名前』の話」
ティット
「………………」
アルビー
「俺とゲームがしたかったら、君がやりたいときに誘ってよ、なんて言ったけど」
アルビー
「違うよね」
アルビー
「あの荒野から、ずっと」
アルビー
「俺たちは、ゲームをしてた」
アルビー
「そうでしょう、『名当ての悪魔』」
アルビー
「――いや」
アルビー
射抜くように告げる。
散りばめられたヒントから導き出し、ずっと温めてきたその名を。
アルビー
「ルンペルシュティルツヒェン」
ティット
あなたがその名を告げると、瞬く間に悪魔の気配が遠のいた。玩具箱のような騒がしい気は立ち消えて、まるで、凪のように静まり返る。
ティット
賑やかしの悪魔の居たその場所に、立ち尽くすのは影法師。のっぺらぼうのその顔に、どのような表情を浮かべているのか窺えない。
ティット
「………………」
ティット
「…………ああ。そうだな、オマエがその名に辿り着くことは驚くに値しない。オマエはその名を知っていた。オレも、オマエが知っていること知っていた」
ティット
「ヒントは十分に与えていたしね。最低限のヒントは与えなければならない。それもルールの内。道化者はつらいね」
ティット
「……それで?」
ティット
「今、オマエがその名を呼ぶ、その目的は?」
アルビー
「…………名を当てた者は、所有権を得られる」
アルビー
「さながら魔法のランプのように人の望みを叶える、君という存在の」
アルビー
「その『ルール』は間違っていないよね」
アルビー
「なら、俺の目的なんて一つに決まっている」
アルビー
「ルンペルシュティルツヒェン」
アルビー
「『俺のもの』になって」
アルビー
「この世界の、生きとし生ける者を殺し尽くす歯車となれ」
アルビー
あくまで道具の話をするように。
あなたがこれまで接してきた有象無象の人間たちのように、言う。
ティット
「………………ハハッ」
ティット
「この世界の、生きとし生ける者全てを…………?」
ティット
「それは、救世主(アリス)に限らず、末裔に限らず、文字通り生きとし生ける者全て。そういうオーダーかな? いばらの王子さま」
アルビー
「そう思ってもらって構わないけど」
アルビー
「差し当たりは、救世主」
アルビー
「この堕落の国そのものは、巨大な遊戯盤めいている」
アルビー
「俺は勝つよ」
アルビー
「そして褒賞として、この世界の終わりを望む」
アルビー
「ルンペルシュティルツヒェン」
アルビー
「君は爆弾だ」
アルビー
「最近はどうやら、乗り気じゃなかったみたいだね」
アルビー
「それで、大した威力は出せていなかったけど」
アルビー
「――適切に描いた絵図に基づいて炸裂させれば、その効果は無限大」
アルビー
「積み上げるより、壊す方がよほど簡単なんだよ」
アルビー
「そもそもこの世界はおしまいに向かっている」
アルビー
「傾けるエネルギーの方向がそちらの方が楽なのは、道理でしょう?」
アルビー
「君はお世辞にも勤勉とは言えないけど」
アルビー
「君の力をもっと効果的に使えば……色んな気持ちを無視すれば造作もなかった問題解決が、無数にあったよ」
アルビー
恐らく、その考えはずっと持っていたのだろう。
ただ、性格がブレーキをかけていただけ。
アルビー
「個別の局面で闘争を煽って、殺し合いそのものを招く」
アルビー
「君が煽ったそれを鎮圧することで立場を得、ことを運びやすくする」
アルビー
「そこに何の意味もなくたって、善というラベルはいつだって甘美だからね」
アルビー
「やりようはいくらでもあるし、手札は多いに越したことはないんだ」
アルビー
「何せ、俺が為すべきは、この堕落の国の滅亡だ」
アルビー
「博奕のような争いではなく、長期のビジョンの戦争が必要で」
アルビー
「君はそのための兵器だ」
アルビー
「本気で働いてもらうよ、ルンペルシュティルツヒェン」
服従を促す、甘やかな韻律。
権威そのもののような声。
ティット
「これはこれは…………」
影法師が首を竦める。
ティット
「王子さまはご乱心あそばせた! どうしてそんな結論へと辿り着いたというのでしょう?」
ティット
大仰に両手を広げて、さながら舞台の上に立つ役者のように訴えかける。
ティット
「……解せないね。確かにオマエはこれまでも目的を達成するために効率よく敵を、障害物を、屠ってきたがね。これから行うその虐殺は、何のための下拵えなのかな?」
アルビー
「何の下拵えでもない」
アルビー
「滅亡そのものがゴールだ」
ティット
「オマエが唯一の座を目指してオマエの他の救世主を尽く殺し尽くせというのなら、まだ分かる」
ティット
「それとも何?」
ティット
「全てが嫌になって、諸共すべて灰となれって? 絶望だ!世界よ滅べ! みーんな道連れだ!! そういうやっすい感傷?」
ティット
「アンタ、そういう人間だったっけ?」
ティット
「それとも、極限状態に晒されて地金が出ちゃった?」
アルビー
「地金というなら、そうなんだろうね」
アルビー
「今、心穏やかだから」
善悪などという欺瞞を吐かずに済んで。
生かす人を選別しなくて済む。
アルビー
ずっと苦しかった。
世界の不完全さを目の当たりしながら、生きることは苦痛で。
アルビー
眠れないベッドの中で、幾度となく理想の世界を思った。
アルビー
人と人が慈しみあい、飢えも争いも格差もなく、皆が笑っている。
アルビー
……でも、そこに『彼』のような人はいなくて。
アルビー
他の世界の話を聞いては、思う。
アルビー
「生きている限り、苦しみは消えない」
アルビー
「完璧な世界なんて、存在しない」
アルビー
「ユートピアなんて、どこにもないんだ」
アルビー
「これが俺の答えだけど、お気に召した?」
ティット
「そうだなぁ……」
悪魔は状況にそぐわないのんびりとした声を洩らす。
ティット
「つまり? 何かを成し遂げるための犠牲ではなく、その道の先には何もないと。――否、何もないことを理解したからこそ、終わらせることで救済を施すのだと。そういう理解でオーケィ?」
アルビー
「少し違うけど、まあいいよ」
ティット
「安い逃避と結論づけるか、一皮剥けたと判断すればいいのか、その辺りは一介の悪魔には分からないね」
アルビー
「なんとでも言えばいい」
ティット
「それで? お前が俺を従属させ、この世界の全ての者を殺し尽くしたとしよう。そうすれば、結果的にオマエは『最後のアリス』となるのだろう」
ティット
「完璧な世界などどこにも無いと言ったな。オマエの願う終焉はこの世界にのみ向けられる?それとも、数多の世界、その尽くを滅ぼしてみせようか? 唯一となった救世主はあらゆる物語を書き換えるチカラを手に入れるのだろう? その時、オマエは何を願うのだ?」
アルビー
「当然」
アルビー
「全ての世界の終焉を望むよ」
アルビー
「俺のいたところは、一見堕落の国よりは随分マシだったけど……」
アルビー
「根本的なところでは、何も変わらないから」
ティット
「ははっ」
ティット
「卑小なその身で世界を計り、数多の世界を見限り可能性の全てを摘み取る。これはこれは………。オマエと比べれば悪魔など、小物にすぎぬ。オマエこそが暴虐と悪徳の権化。魔王の名に相応しい」
ティット
「或いはそれは人間の、人間故の業なのだろうか?」
ティット
悪魔は恭しく腰を折り臣下の礼をとった。道化らしい華やいだ仰々しいレヴェランス。
ティット
「悪魔が魔王に従うは必定。――名前も当てられたことだしね。言葉を尽くして見せずとも、オレに拒否権は既に無い。『オマエのもの』となって、この世界の、生きとし生ける者を殺し尽くす歯車となろう」
noname
『ねえ、あんたの最終目標ってどこに設定されてんの?』
noname
『最終目標ね……』
noname
『それって、結局こう答えるしかなくない?』
noname
『……ユートピアだよ』
noname
『どんなに道程が遠くても、理想は常にそこであるべきだと思うから』
ティット
いつか、そんな話をした。
ティット
目の前の男は覚えているだろうか?
………………覚えているのだろうと、悪魔は思う。
ティット
あの夜に自分がどんな言葉を悪魔へ投げかけたのかも。
ティット
おそらく忘れてはいまい。
noname
『そのときは、悲劇か喜劇か、好きに判定してみてよ』
ティット
さて?
ティット
この状況がどちらを指すものなのか、悪魔にはとんとわからない。
ティット
そもそも、”そのとき”は、また訪れてはいない。
ティット
おそらく、そう遠くもないだろうが。
ティット
「人界の魔王様。オマエのしもべに命令を。矢となり、歯車となり、竜巻となって、世界の果てまでお供してやろう」
ティット
あの夜。
アルビー
ティット
この男の進む道を、その歩みの結果を、この目で確認するために、この旅に付き合ってきたのかもしれないと、悪魔は思った。
ティット
その道の先は、今、ここにある。
ティット
あの頃は思いつきもしなかったこの場所で、
ティット
自分達はこうして対峙した。
ティット
そして、道行きはまだ続いている。
ティット
この先を進む。
ティット
その末路を、この目で確認するために――。
アルビー
恭しく礼を取る道化を、彼は見る。
かつての夜と変わらぬ、空色の瞳で。
アルビー
「……やっぱり、逆らわないんだね」
アルビー
「そっちの方が楽だから?」
アルビー
「結局、不満を燻らせながら、流されていたいんだ」
アルビー
「……俺はね」
アルビー
「本気で全てを滅ぼすつもりだよ」
アルビー
「でも」
アルビー
「たかだか悪魔一匹の反抗も御せない者に、そんなことができるとも思えない」
アルビー
「俺は手に入れた君を道具として使う」
アルビー
「道具には、自我も尊厳も自由も必要ない」
アルビー
あなたを真っ直ぐに見つめる。
アルビー
その瞳には、あなたが映っている。
アルビー
「……契約は、この森を出てからでいい」
アルビー
「隷属を拒否するなら」
アルビー
「次の裁判で、俺を殺せばいい」
アルビー
あなたという個人を試すように――挑発するように。
アルビー
「ねえ、『ティット』」
アルビー
目を閉じる。
何かを反芻するように。
アルビー
「道具の身に余る、自由と尊厳が欲しければ」
アルビー
「戦って、掴み取れ」
ティット
「ははっ………、なぁに? アンタ今更、オレの意志の在処を問いたいワケ?」
ティット
「それはちょっぴりいただけない。程度が知れてしまうからね」
ティット
挑発する言葉に、お道化て肩を竦める。
その姿に虚勢は見えない。
今まで見ることのなかった、寛いだような穏やかさすらある。
ティット
「何かが……タイミングが少し違っていれば、その挑発に乗ってやれたかもしれないが」
ティット
「従うさ。不服はない」
ティット
「アンタは少し思い違いをしている」
ティット
鏡よ、鏡
ティット
鏡は誰?
ティット
鏡はワタシ
ティット
けれど、世界を渡って環境が一変する。
ティット
世界の秘密を握る特権階級からは引きずり降ろされ、様々な世界の限りない文化、文明の高低さを知り、その狭間で、いつしか人間風情と横並び。
ティット
それまで注視することがなかった(その土壌がまだ故郷では育っていなかった)内面という迷路。
ティット
本能と欲望に支配された奴隷と見做し、盲者と嘲った対象の瞳を通し、映し出される己の姿。
ティット
鏡よ、鏡
ティット
ワタシは誰?
ティット
その姿が鏡に映し出される。
ティット
認めなくてはならない。
ティット
鏡に映った、その本当の姿を。
noname
『……やっぱり、逆らわないんだね』
ティット
逆らわないさ。
noname
『そっちの方が楽だから?』
ティット
楽であるのは確かだね。
noname
『結局、不満を燻らせながら、流されていたいんだ』
ティット
違うさ。
ティット
それは、前提が間違っているんだ。
ティット
悪魔は世界の促進剤。
人間の欲望を煽り、世界を掻き混ぜ、その結果、黎明の時代にある世界を、文明を、推進させる。
その歯車が悪魔の正体だ。
ティット
便利な道具。
夢のチケット。
欲望を煽っては消費されるコイン。
ティット
それはご存じだろう?
ご明察のとおりさ。
ティット
その枷に抗い、その待遇に憤懣を滾らせる。
ティット
そういう在り方を期待したかな?
ティット
自分が歯車に過ぎないのだと、気付くのはそう難しくもなく、それを屈辱と捉えるのは容易かった。
ティット
………………はずだった。
ティット
嘘だ。
ティット
それを屈辱と捉え、憤懣を滾らせることが出来たのならよかった。
ティット
そうであるなら、よかったのに。
ティット
鏡よ、鏡
ティット
ワタシは誰?
ティット
その姿が鏡に映し出される。
ティット
鏡像と向かい合う。
ティット
直視を恐れたその姿――。
ティット
己には、動機がない。
ティット
何もない。
ティット
それが、名前当ての悪魔の正体だ。
ティット
その事実と向き合うことを恐れて、殊更に演じて見せた。
ティット
不満を燻らせ屈辱を感じているという欺瞞を。
ティット
空っぽの悪魔に駆動するためのエンジンは元から搭載されていなかったのさ。
ティット
だから、逆らわないさ。
ティット
元から、求めちゃいなかったのさ。
ティット
自我も尊厳も自由も。
ティット
オマエの言う通り、道具には必要がなかったのだ。
アルビー
「…………そう」
アルビー
「正直なところ、そんな気はしてたんだけどね」
ティット
目の前の男の瞳の中にちっぽけな悪魔の正体が映っている。
ティット
けれど、
ティット
今は目的がある。
noname
『いいぜ、悲劇か喜劇か、オレ様が判定してやろう』
noname
ティット
そう約束した。
覚えているだろう?
ティット
動機を持たない悪魔
ティット
持ち得ない動機の代わりにその約束を地図として、
ティット
この道の先を進む。
ティット
だから、見せてよ。
ティット
その先にある結末を。
アルビー
挑発を投げかけるとき、自問自答した。
アルビー
こんな機会を与えるなんて、俺はあわよくば死のうとしているのか?
アルビー
そうではない、とはっきり言えた。
アルビー
そんな逃げを許せるようなら、とうに己の頭を弾丸で撃ち抜けていた。
アルビー
悪魔一匹御せずに、世界の滅亡が叶うわけがない。
アルビー
口にしたその言葉は本心だったけど、きっとそれだけではなかった。
アルビー
ただの情で、甘さだったのだろう。
アルビー
二年、共に過ごしてきた仲間への。
アルビー
目を合わせて覗き込むと、どこか居心地悪そうにしていた、ティットという彼への。
アルビー
でも、無駄だった。
アルビー
納得のような、諦めのような――憐みのような心地で、『自分のもの』になった道化を見やる。
アルビー
「こうなったからには、最後まで付き合ってもらう」
ティット
「魔王様のご命令とあらば」
アルビー
「俺たち以外の救世主を殺し尽くしたら、最後に君を殺すから」
アルビー
だから、あのときの答えを聞かせてね――なんて、口に出して言うこともなく。
アルビー
「行こうか、『ルンペルシュティルツヒェン』」
呼ばない名前を沈めて、答えを待たずに歩きだした。
ティット
「………ああ」
アルビー
後ろを振り返らなくても、着いてくると知っている。
アルビー
対等な仲間ではなく、
尊厳を持った人間でもなく、
『俺のもの』だから。
ティット
悪魔の主人は歩き出す。
引き返すことのできない、その道を。
アルビー
振り返らず、引き返さず。
ただ前に進んでいく。
ティット
振り返らない、帰り道を持たない背中を眺める。
ティット
遠くない未来に、あの無数の銃口が彼の悪魔にも向けられる。
その銃弾が脳天を打ち抜く前に、
ティット
いつかの答えを聞かせてあげる。
ティット
心に刻んで、走り出す。
既に歩き出したその背は少し遠い。
ティット
「待ってよ、ご主人。おいて行かないで!」
ティット
足取りは軽く、ステップはリズミカルに。
ティット
ただ、道がある。
地を伝う黒結晶の、終幕への道のりが。
ティット
この道を往く。
すべてを終わらせる男の姿を鏡に映すために。
GM
[ アルビー ] ティーセット : 1 → 0

*お茶会ラウンド2:リラ

GM
* PKに抉られ、絶望侵蝕の状態であるため、PCの「心の疵を抉る」以外の行動ができなくなり、対象PC、疵と判定に使用する能力値、アイテムの使用はPKが指定します。
GM
*まずはクエストを宣言してください。
リラ
*クエストNo.2を行います。
スティブナイト
*ティットの心の疵『虚無』を猟奇で抉れ。ロール中に判定と横槍を行う。
GM
リラ
*シーン表を振るぞ
リラ
2d6  (2D6) > 4[3,1] > 4
GM
3 小屋。黒結晶に覆われていて、その重さで半分倒壊している。
1 黒結晶に覆われた死体を見つける。死体は干からび、表情は絶望に満ちている。見ていると絶望的な気持ちになりそうだ。
名当ての悪魔
気がつけば、ぽつねんと、一人で森の中にいる。
名当ての悪魔
森の主は翻弄し一人一人はぐれさせるのがよほどお好みのようだ。
名当ての悪魔
「困るな~、オイラのせいじゃないのに、きっとまた冷たい眼差しで睥睨されちゃうわ!!困るね~ほんとオイラのせいじゃないのに!」
名当ての悪魔
言葉ほど困った風でも弱った風でもなく。
名当ての悪魔
昏い森の中を小気味良く進んでいく。
名当ての悪魔
道なき道を切り開くように突き進んでいくと、行く手の先に黒結晶に覆われた死体が転がっているのを見つけた。
名当ての悪魔
「ハハッ…………」
名当ての悪魔
「あーあ、可哀想に。この森のお姫様は気難しいみたいだからね。……うちのお姫様も易しくはなかったらしいが。ま、いつの世もお姫様は難解だし冒険譚に死は付き物さ」
名当ての悪魔
「……さて、ここで出会ったのも何かの縁。なんか使えそうなものとか持ってないかね?」
等と言いながら所持品を検分すべく無惨な死体へと手を伸ばした。
GM
死体は干からびており、触った瞬間にボロボロと崩れていく。
名当ての悪魔
「あらら………」
死体から手を離し、塵を払いのける。
リラ
――無防備なその姿に、差し向けられる大量の裁ちばさみたち。
それらは小屋の方向から飛んできている。
リラ
黒結晶を踏みつける一つの足音。
リラ
彼女の後に続くものはなく、ただ一人きりの救世主。
リラ
一人きりの救世主、その口元には赤い血が滲んでいる。どこかワインの甘い匂いを漂わせて、彼女は『仲間だったもの』へと微笑む。
リラ
「ティット……。ティットはいつもすぐいなくなるから、心配してたんだよ」
リラ
芳醇なワインの匂いの中、彼女の瞳は正気のまま彼のものを見据えている。
これで終わるはずがないよね? ティットだもん。
名当ての悪魔
大量の裁ちばさみが己目掛けて飛んできた。
名当ての悪魔
横目でそれを流し見ると、悪魔を守るように突風が舞い上がる。風圧で方向が逸れた裁ちばさみは標的を失い地に落ちた。
名当ての悪魔
黒結晶を踏みつけ接近する足音に振り返ると、悪魔は気安げに笑みを浮かべた。
名当ての悪魔
「ごめんごめん。探してくれてたの?オイラが心配で?」
へらりと笑み崩れるその表情はいつも通りの道化の顔。
名当ての悪魔
けれど、何かが決定的に変わってしまっている。
名当ての悪魔
「随分と酒気を帯びてますこと。でも残念。酔いが足りてないようだ。………………リラちゃん、お酒に強かったのね?」
名当ての悪魔
口の前に手のひらを当てて、びっくり顔を作る。
リラ
「………………」
リラ
その笑みは変わらないように見える。何も知らない者から見たら、きっといつも通りの『ティット』。
リラ
おちゃらけていて、なんでもすぐ揶揄って、場を引っ掻き回す道化。
リラ
けれど、リラはリラなりにこの存在を信頼し、観察してきたつもりだ。
リラ
――だから、わかる。
リラ
「……そう、私はいつも心配だった。ううん、と言っても最近なのかもしれないけど」
リラ
冷静なまま、少女の唇がゆっくりと開いていく。
リラ
「最近、私を見てどこかつまらなそうにするようになったよね、ティットは」
リラ
「ううん、初めから、ティットはおどけてるだけ。楽しそうにしているフリをしていたよね」
リラ
――少なくとも、私の前ではそうだった。
リラ
アルビーさんの前では、少しだけ新たな刺激の前に立たされた子どものような表情を浮かべていたかもしれないね。
リラ
どうかな、私はあんまり頭がよくないから、二人の間にあったものはわかってないかも。
リラ
でも、そう見えたのは本当で。
リラ
私はそれが嬉しくて、少し寂しかった。
リラ
「でも、今のティットは違う。……雰囲気が丸っきり変わった」
リラ
「ねえ、ティット」
少女の唇が不器用に笑みを形作る。
リラ
「今は楽しい?」
名当ての悪魔
「………………オレが楽しいかどうかは、リラちゃんにとってそれほど重要なことなのかな?」
大げさに首を捻り、肩を竦めてみせる。
名当ての悪魔
いつも通りの笑顔。いつも通りの口調。
誂えた仮面のようにいつも通りだ。
名当ての悪魔
けれど、気配が、空気が、一人称が、
名当ての悪魔
いつもと異なるのは、隠しても漏れ出てしまう変化などではない。
名当ての悪魔
あえて、見せているのだ。
――そうと分かるように。
ゆい
名当ての悪魔
「ねぇ」
名当ての悪魔
「リラはどう思う?」
名当ての悪魔
「オレは今、楽しそう?」
名当ての悪魔
問い掛けて、悪魔は嗤った。
リラ
変わらない笑顔。変わらない口調。
――彼がそうしてパフォーマンスしていたもの。
リラ
――そんな『アルビーさん』は、最初からどこにもいない。
リラ
全部、嘘だったんだ…………
リラ
彼のように、ティットもそうだったのだろう。
リラ
偽りだったというのかもしれない。
リラ
――それで嫌いになれたら、楽だったのに。
リラ
しくしくと胸の中心から剥き出しになる黒結晶が痛む。
リラ
「……重要だよ、だって私はティットが大好きだから」
リラ
「……大好きだから、楽しくいてほしいし、心から笑ってくれたら嬉しい」
リラ
「どう思うも、こうもない」
リラ
「ティットは寂しそうだよ、今も昔も…………」
名当ての悪魔
「へぇ~……リラちゃんたら、周りをよく見てること。そうだな、オマエはいつでも周りの空気を窺っていた」
名当ての悪魔
「以前にも言ってくれたよね?覚えてる?」
名当ての悪魔
「初めての裁判前にリラちゃん膝枕してくれたよね」
名当ての悪魔
「オイラのこと、真面目だってさ。リラちゃんはそう言ったことをまだ覚えてるかな?」
リラ
「覚えてるし、……今でもそう、思ってる」
リラ
「私が空気を窺うのは、それしか取り柄がないからだけど。ティットもよく周りを見ていて…………」
リラ
「私を気遣ったり、私が足手まといな分、ティットが動いてくれてたりした」
リラ
「それはあの時だけじゃないから。今もそう思う」
リラ
「あなたは真面目で、優しい」
名当ての悪魔
「………………ははっ」
名当ての悪魔
「さて、問題です」
名当ての悪魔
「あの時、オレはオマエの言葉を聞いて、何を考えていたでしょうか?」
名当ての悪魔
一本突き立てた人差し指を顔の隣でくるりと回した。
リラ
わからない。けれど、この状況。この態度。決していいことではないと思う。わからない、と答えたら本当に嫌われちゃうかな。
リラ
かつて、ティットは私の世間知らずな楽天的な態度を、彼なりに褒めてくれたことがある。
リラ
――ねえ、逆に聞くけど、本当に私にそれが残っていると思う?
リラ
もう、全然残ってないんだ。
リラ
だから、私はティットの問いに適当なことを言えるし、馬鹿正直にならない強さと、それに付随する弱さも知っている。
リラ
だって、どう答えたって、私はティットを殺すために努力するし。
リラ
こんな問答、毒にも薬にもならない。私のやるべきことは変わらない。ティットも楽には殺されてくれないだろう。
リラ
(……でも)
――
『何を言っても、ティットは変わらないかもしれないし、あれはもう嫌ってるんじゃない?』
――
『それでも嫌われたくないんでしょう? 相変わらず、無自覚に強欲で傲慢だよね』
リラ
(うん…………)
リラ
口を開く。それはもうやけっぱちかもしれない言葉だった。
リラ
「ごめんね、ティット、わからない……」
リラ
「私はずっと、あなたたちの考えてることがわからない」
リラ
「それでも……それでも好きで、ううん……多分そこが好きだった」
名当ての悪魔
少女の吐露する言葉を受けて、
名当ての悪魔
悪魔はにこやかに哂う。
名当ての悪魔
「オレはね…………」
名当ての悪魔
「オマエの信頼と労いの言葉を受けながら、こう考えてたのさ」
名当ての悪魔
「ああ、屈辱だなぁ。業腹だ。この屈辱感の返礼は、いつか必ずこの小娘へとくれてやろう――ってね」
名当ての悪魔
「ところが結局、その機会を迎える前に、小娘の心は折れてしまったご様子。なかなか儘ならないもんさね」
悪魔は首を竦めて見せた。
名当ての悪魔
「で? 心配してオレを探しに来てくれたオマエは、オレをどうしたいの?」
名当ての悪魔
「健気なお嬢ちゃん、オレを助けてくれるつもりなの?」
にっこりと笑う。いつものように。
リラ
いつも通りの態度。いつも通りの言葉。
リラ
(本当に?)
リラ
わからない。私はあなたたちの本心を見抜けない、いつものように。
リラ
そうして、ずっとずっと寂しくて悲しい。
これもいつも通り。
リラ
「ねえ、ティット」
リラ
「一つだけ、間違ってる」
リラ
「私に折れる心なんてないよ。そんな大層なもの、端から持ち合わせてないんだ」
リラ
「私は、皆から嫌われないように全部を取り繕ってただけ。背骨がない。指針がない」
リラ
「何もない…………」
リラ
「ずっと逃げたくて仕方がない」
今もそう。あれだけのことをしておいて、私はいまだに怖いのだ。
リラ
だから、逃げないように。
あの子たちの血を啜った。自分の罪を刻み付けるために。
リラ
そうすることでしか立っていられないから。
リラ
「ティットは、私と違って揺らがず、逃げようとしないから」
リラ
「そこが好きで、羨ましかった」
リラ
「ティットに何を言われようと、私は今更止まらない。もう聞いたよね、この森に散らばるあの子たちについて」
リラ
「やるべきことをやるの。そして、あなたが寂しがらずにすむ世界を私が作る」
リラ
「私がやるのは、それだけ」
リラ
*ということでそろそろ判定をしようかな!!!!
アルビー
*横槍
アルビー
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 愛
アルビー
2d6+3=>7 判定(+愛) (2D6+3>=7) > 3[1,2]+3 > 6 > 失敗
GM
横槍は失敗。
GM
そのまま判定をどうぞ。
リラ
2d6+4=>7 判定(+猟奇) (2D6+4>=7) > 7[5,2]+4 > 11 > 成功
[ アルビー ] HP : 20 → 19
GM
成功。
GM
宝物または聖遺物を指定してください。
リラ
*証言GETするぜ!!!!
[ 名当ての悪魔 ] 虚無 : 0 → -1
[ リラ ] アリスの証言 : 0 → 1
名当ての悪魔
「ハァ……………」
悪魔はわざとらしく肩を落とし溜息をつきながら、ガシガシと頭を掻く。
名当ての悪魔
「その分厚いキラキラフィルターはまだ健在なんだね~」
名当ての悪魔
「まあ、いいけど。…………押し付けがましいのは、誰かさんの影響もあるかな」
視線を横に流しながら眉を下げて笑ってみる。
名当ての悪魔
「いや、最初からだったか」
名当ての悪魔
「まったく、オマエ達はよく似ているよ。その腹立たしいものの見方も。暴走の仕方もさ」
名当ての悪魔
「――さて。三月兎どもを爆散させて、リラちゃんの夢見る世界はどれ程の血を要求するのかな?――寂しがらずに?へぇ、それはお気遣いありがとう。キマってるね、ほんと」
名当ての悪魔
「あーあ、これは認めざるを得ない」
名当ての悪魔
「オマエ達と比べれば、オレは小物に違いない。配役は、そりゃあ道具が精々ってもんさ」
名当ての悪魔
「………………アンタ、それ程の影響を受けるくらい」
名当ての悪魔
「この二年間、全身全霊で見つめていたんだね」
名当ての悪魔
零すような声音は、場違いなほど穏やかだった。
その理由は、悪魔自身にも分からない。
リラ
言葉全てを受け止める。今更何を言われても揺らがないし、それはきっとこの道化もわかっているはずだ。
リラ
「……アルビーさんだけじゃないよ」
見つめていたのは。
リラ
「ティットもだよ」
名当ての悪魔
「知ってるよ」
返す言葉はひどく優しげに昏い森の中響く。
リラ
「うん。そっか。ごめんね、今まで」
凪いだ声音。
名当ての悪魔
リラ
「そして、ありがとう」
背後に浮かぶは無数の鋏。まるで目の前の悪魔のように、指を振る――
アルビー
ゆらり、と。
暗い森の中に黒コートを紛れさせて、人影が揺らめく。
アルビー
男の背後に浮かぶ無数の銃。
模倣より遙かに数が多いその口から吐き出された銃弾が、悪魔に至る前の鋏を撃ち抜いていく。
アルビー
その無慈悲なまでに正確無比な鉄の雨は、死角からリラ本人にも向けられていた。
名当ての悪魔
ぴゅう! と、お気楽な口笛の音色が響く。
リラ
決して酩酊してはいない。むしろ、三人でいたときよりも冷静に状況判断ができる。
リラ
もう自分を守ってくれる人はいないのだから。
アルビー
悪魔を庇うようにその前に立つ。
背に大軍のような数の銃口を背負いながら。
リラ
降り注ぐ銃弾に、しかしリラは避けない。平静なまま、その攻撃を受けていく。
リラ
傷ついていく身体。痛みはない。
傷ついた瞬間に治しているからだ。
名当ての悪魔
悪魔はにこにこしながら対峙する両者を、主人を背に庇われつつ眺めている。
アルビー
その表情に、崩れ落ちて地を這っていた頃の弱さはない。
リラ
かつて共に立った人たち。自分だけが、弾かれたように、彼らと相対している。
アルビー
そこにあるのは、研ぎ澄まされた殺意と……
アルビー
「リラちゃん」
諭すような声。
アルビー
「いいんだ、もう」
アルビー
「俺が不甲斐なくて、優しい君をたくさん苦しめたね」
アルビー
「その責任は、俺がちゃんと取るから」
アルビー
「君は、頑張らなくていい」
――
『ねえ、どう思う? まさか、この期に及んで寂しいの?』
リラ
そうかもね。
――
『帰りたい?』
リラ
そうかもね。
リラ
でも、帰れないよ。
リラ
私たちは元のようには戻れないし、戻る気もない。
リラ
「アルビーさんとティットは変わらず仲がいいですね」
本当にそう見える?/でも前からそうだった。
リラ
「私はアルビーさんに責任を取ってもらいたくてこうしているわけじゃありません」
アルビー
「そうかもしれないね」
それは、何に対しての応えか。
アルビー
「……どちらにせよ、お互いやることは一つだって思ってるみたいだけど」
アルビー
「ねえ」
悪魔の方を見やる。
名も呼ばずに。
親愛の響きも感じさせない声音で。
アルビー
「初仕事だよ。サポートはよろしく」
名当ての悪魔
「ほい来た! ご主人、なんなりとご命令を。主命とあらば、海を割って星を降らせ、ご希望の品を御前に」
仰々しく、道化らしく、主に向かって恭しく礼を取る。
リラ
「…………」
二人の間のひりついた温度。
アルビー
『ティット』に対する情愛は拭ったように消えている。
当然だ。
リラ
しかし、もう関係のないことだ。何にせよリラに入る隙はない。
アルビー
そんなものを残していて、道具として使えるわけがない。
リラ
「思い出は何があっても綺麗なまま、輝き続けます」
リラ
「私の胸の中で、あなたたちはあなたたちのまま、永遠に輝き続ける」
リラ
「アルビーさん。ティット」
リラ
「これからすべてを壊す私から、あなたたちに捧げられるのは、この『愛』だけ」
リラ
「もう疲れたでしょう、この現実と向き合うのは」
リラ
「それもひとえにあなたたちが優しくて、繊細で、よく冴えているから」
リラ
「だから、私がその目を隠す」
リラ
「何も怖がらず、委ねてください」
「今までも、私の祈りは痛くなかったはずですから」
リラ
「私があなたたちの眠りを守ります」
名当ての悪魔
道具はただの道具。
意志も意義も要らない。
名当ての悪魔
道具に求められることは、使えることだけ。
だから仕えるのさ。
名当ての悪魔
仕事は首尾よくきっちりと。
名当ての悪魔
他には何も求めず、求められず。
名当ての悪魔
いつか来る、終わりの日まで――。
名当ての悪魔
歯車は絶えず回り続ける。
アルビー
「死こそが唯一の救いなら、俺はその最後尾でいい」
アルビー
悪魔に。
「君にも、それに付き合ってもらう他ないけど……」
アルビー
そして、少女を真っ直ぐ見据える。
「リラちゃん、君はここで殺す」
アルビー
その眼差しには、確かに。
深い情愛が込められていた。
リラ
「――じゃあ、仕方ないですね」
かつてのように笑って。
リラ
ゆっくりと、彼らの模倣をした武器が背後に展開されていった。
GM