お茶会1
GM
1d99で大きい順になります。(イニシアチブに入れてください。)
アルビー
1d99 お茶会順番 (1D99) > 26
リラ
1d99 お茶会順番 (1D99) > 19
ティット
1d99 お茶会順番 (1D99) > 29
GM
*お茶会ラウンド1順番:ティット>アルビー>リラ
*お茶会ラウンド1:ティット
ティット
1d6 【シーン表】 (1D6) > 5
ティット
1d6 【シーン表】 (1D6) > 6
GM
6 気付けば、あなたの周囲には誰もいない。いつの間にかはぐれたか、それとも救世主が見せる幻覚だろうか?
ティット
*併せて、スティブナイトの心の疵【朧】を猟奇で抉ります。
[ 黒結晶 ] HP : 22 → 21
黒結晶
2d6+5+2=>7 判定(+脅威度) (2D6+5+2>=7) > 9[6,3]+5+2 > 16 > 成功
ティット
2d6+4-4=>7 判定(+猟奇) (2D6+4-4>=7) > 9[4,5]+4-4 > 9 > 成功
[ スティブナイト ] 朧 : 0 → -1
ティット
「おーい、リラちゃ~ん!班長~!!」
はぐれた。
この森をねぐらにしている救世主に見つかることなど気にも留めず、わざとらしくパーティメンバーの名前を大声で呼びながら森の中を進んでいく。
ティット
「うーん、これは完全にはぐれたね~」
合流出来ればいいのだが、合流できた場合は間違いなく叱られるな。
ティット
じゃあ、もう、今の内に単独行動で好き勝手してしまおうか?
ティット
どっちにしろ、あのなんとも言えない圧を纏った微笑で迎えられるし、生暖かく気遣われるのかもしれないし。
ティット
この世界に飛ばされて以来、なんだかんだとずっと行動を共にしてきたわけで、久しぶりにひとりになると、晴れ晴れと解放感!
ティット
うーん、辛気臭い森の空気が落ち着くね!
懐かしい。
スティブナイト
「お前の住処でもないのに居心地よくしないでくれるかな」
ティット
「えー。固いこと言いっこなしよ?いいじゃん~ちょっとくらい郷愁に浸らせてくれたって~」
ぶーぶー。
スティブナイト
男とも女とも分からない黒い姿。中性的な声。
ティット
「ふーん。オイラはそういうの得意なんだけど、正反対で逆に相性がいいかも?」
スティブナイト
「いいや……」
「案外似た者同士で相性が悪いかもしれないね」
「お仲間とはぐれた……というより、それを心から望んでいたような様子だ」
ティット
「おっと、急に踏み込んできた。奥ゆかしいってのはオイラの誤認だったかも?」
スティブナイト
「せっかちなやつがこんなところに住んでると思う?」
スティブナイト
「まあ、見るものすべて殺してたら、そうも捉えられるか」
ティット
「せっかちなのと臆病なのは両立するでしょ」
ティット
「現に、オイラ達がこの森に踏み込んで早々に牽制しにやって来たわけだし」
スティブナイト
「自分の身体を弄られるようなものだ」
「振り払わないほうがおかしいさ」
ティット
「待てが出来ないのも臆病さの表れかな?」
スティブナイト
「繊細と呼んでほしいね」
悪意を持って笑う。
ティット
「自分のテリトリーに虫が数匹入り込むのも許せないってのは度量が小さいんじゃない?」
スティブナイト
「ご謙遜を。」
「名のある救世主様が3人もだ。もはや輪姦だろ」
スティブナイト
「もっとも、なにを入れたところで全部千切ってやるつもりだが」
ティット
「まあ、ハレンチね!うちの風紀委員長が眉を顰めるのが目に浮かぶね~。リラちゃんの教育にも悪いしさ~」
ティット
「っていうか、そういうのって誘い受けとか言うんでしょ?」
一時交流した、ある救世主が言ってた。
ティット
「嫌だわ!許せないわ!と憤慨しながら、ちょーっと期待してたりして……?」
スティブナイト
「お前、色好みって雰囲気じゃなさそうだが」
「そういうのが『みなさん』に受け入れられると思って茶化してるのか?」
ティット
「おたくのようなバリケートで自分の周りを囲って閉じ篭っている奴は得てして、それを踏み越えて自分を滅茶苦茶に破壊する台風を心の底で待っていたりするもんさ」
ティット
「でもいいんだよ~ん。オイラみたいなキャラクターはこういう態度も諦めとともにそういうものとして処理されるからさ」
ティット
「もー、アイツら慣れちゃって眉一つ動かさねーの。慣れって嫌だね~」
スティブナイト
「お前の口車か本音かに、乗ってみようか?」
ティット
「あら、美人!」
ひゅ~、と口笛を吹いた。
スティブナイト
「よく言われる」
「ひとつも嬉しくはない」
ティット
「意外とオイラ達、相性いいんじゃない?どう?かわいい系って守備範囲に入ってる?」
スティブナイト
「俺は至極どうでもいいけど」
「ルッキストたちは喜ぶだろうよ」
ティット
「いいね~、アンタのこと、オイラ結構好きだな」
ティット
「えー、そうだな~……」
「アンタ可愛いからさ、そこそこ真面目に答えてやるけど、オイラに主だった望みも欲望も実はないのね?」
ティット
「なんで、オイラの返答はアンタ次第なワケ。オイラは鏡。向かい合った人間の欲望を反射して返すモノ。鏡に映った相手が自分の欲に絡め取られて破滅するとオイラはとっても愉快!」
ティット
「…………だから、オイラの前に姿を映し、踊ってよ」
それが望み。
ティット
うん。
望んでいることは事実だ。
間違ってはいないでしょ?
ティット
「だからお姫さま。オイラと一曲踊って下さる?」
隣に立つスティブナイトに向かってダンスを誘うように恭しく手を差し出した。
スティブナイト
「だが、俺は鏡に映る自分の姿なんて耐えられない」
スティブナイト
「この世でもっとも俺のことを嫌悪できるのはきっと俺自身だ」
ティット
「そうだろうね!アンタはそういうタイプ」
スティブナイト
「鏡なんて見る前に粉々にしてしまうよ」
ティット
「だからこそ、オイラはアンタを踊らせたい」
「お分かり?」
ティット
「で?どうするの?オイラのことを粉々にする?」
スティブナイト
「そうされたいなら、鏡に映るようなやつにやってもらったら?」
スティブナイト
「俺の知ってる話じゃ、『鏡』はお姫様とも、お妃様とも、王子様とも」
「踊るなんてことはなかったね」
スティブナイト
「お前は壁にかけられて、踊る人間を見るだけだ」
ティット
「鏡に映っている自覚もなく、勝手に踊ってくれてるとオイラも気楽なんだけどさ~今は世情がそれを許してくれなくって」
ティット
「ここでは鏡までダンスホールに駆り出されるワケよ。嫌だね~。深刻な人手不足ってヤツ?」
スティブナイト
「鏡がワルツを踊るなんて」
「実に堕落の国らしい」
スティブナイト
「まさに狂った宴会だ」
「俺は御免だね。招待状にはバツを付けて送り返すことにしよう」
ティット
「中々洒落た喜劇でしょ?だが、残念なことに、お姫さまの憂いを晴らすには至らなかったようで」
ティット
「この宴の主役はアンタだっていうのに、お姫さまは気難しい。お城の兵隊たちがアンタの気を引こうとたくさんの催しを企画してるってのにね」
スティブナイト
「灰被りはガラスの靴を蹴り飛ばす権利もないらしい」
ティット
「そりゃあそうさ!お姫さまにはなーんの権利もない!!」
スティブナイト
「それでも嫌なら、参加者の目玉を一人一人鳩にくり抜いてもらうしかないだろ?」
ティット
「お姫さまに意思なんてだーれも求めていないのさ。お姫様に求められてるのは綺麗なお人形でいること。あるべきものがあるべき場所に納まる予定調和。アンタの役どころは、倒されるべき悪い魔女か、哀れな悲劇のお姫さま。そのいずれか、あるいは両方?」
ティット
「悪辣な化け物に見えたあの子には、実はこーんな悲劇のバックストーリーが!そんな風に悲劇に陶酔し気持ちよく涙を流されるのがお嫌なら、みんなが顔を顰め罵倒し気持ちよく石を投げるに足る邪で醜い悪役を演じてみせるがいい。さあ、メインステージはこちらだよ」
ティット
上手く演じることが出来ないのなら、可哀想なお姫さま役に抜擢してやろう。
だって、この物語の主役はアンタだもの。
スティブナイト
「南瓜の馬車は乗らないことにしているんだ」
スティブナイト
黒結晶の破片がティットの後方から乱れ飛ぶ。
ティット
「わー!!」
「ぼうりょくはんたーい!!」
ティット
風がうねり、乱れ飛ぶ黒結晶の破片を払い除ける。
ティット
「堪え性がなーい!もっとお喋りを楽しもうよ~」
スティブナイト
目の前にいた女の姿はなく、一人の声が森に響くだけ。
スティブナイト
それはいつでも殺せるという意思なのか。
それともいつかは『誰かに』殺されるという導きなのか。
ティット
「可愛らしいこと。やっぱり、あれはお姫さまなんじゃない?」
ティット
「しかしな~、うちで王子さま役が出来る人材は一人しかいないわけよ」
ティット
「しかも、あれはもう可愛げがない。お姫さまの呪いを打ち破るどころか、顔色変えずに蜂の巣にしちゃうよな~」
ティット
「ついでに言えば、お姫さま役はもう一人いるわけで……」
ティット
「やっぱり、選ばれるのは黒鳥の姫君ではなく白鳥のお姫さまかな。それとも……あの王子さまに救えるお姫さまはいないのか」
ティット
「それともお姫さまでは王子さまを救えないのか」
ティット
エンドマークをつけなければ、それがどんな物語だったのか分かり得ない。
ティット
あの黒いお姫さまと違って、気は長い方なのだけど。
ティット
ここらでそろそろ、終わらせてしまったほうがいいんじゃない?
*お茶会ラウンド1:スティブナイト(手番割り込み①)
スティブナイト
*アルビーの心の疵『善悪』を猟奇で抉る。
リラ
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 愛
リラ
2d6+3=>7 判定(+愛) (2D6+3>=7) > 5[4,1]+3 > 8 > 成功
[ スティブナイト ] ティーセット : 2 → 1
[ スティブナイト ] 子山羊皮の手袋 : 2 → 1
スティブナイト
2d6+5+4-6=>7 判定 (2D6+5+4-6>=7) > 8[4,4]+5+4-6 > 11 > 成功
[ リラ ] HP : 25 → 24
スティブナイト
PKに抉られ、●状態の疵の関係欄にPKの名前があるようになったため、アルビーは『絶望侵蝕』。
スティブナイト
お茶会中、PCの「心の疵を抉る」以外の行動ができなくなる。
対象PC、疵と判定に使用する能力値、アイテムの使用はPKが指定する。また、クエストには挑戦できる。
[ アルビー ] 善悪 : 0 → -1
スティブナイト
2d6 (2D6) > 6[4,2] > 6
スティブナイト
4 薮。木々は黒く枯れ、かつて葉があったところには代わりに鉱石が生えている。
2 薄暗く冷えた森を歩く。どれほど歩いても黒い光景が続いている。それは不安を煽り、陰鬱な気持ちになる。
スティブナイト
黒結晶の生える木々が、お前たちを否定するように並び立っている。
スティブナイト
お喋りな『それ』はどこへ消えたのか。
スティブナイト
それほど深くないと聞いていたはずなのに、探しても見つからない。
アルビー
道化の姿は見当たらない。
常は姦しい声も、森の静寂に吸い込まれたように、耳には届かない。
リラ
「あ、あれ?」
瞬きの合間に、ティットが消えている。姿は見えず、静けさが二人を包む。
アルビー
(……まずいな。注意はしていたつもりだったけど)
やはりこの森には人を惑わせ、引き離す何らかの呪のようなものが働いているのだろうか?
リラ
「ど、どうしましょう……ティットがいくらふざけがちだからといって、こういう場で姿を消すことはありませんでしたよね……?」
心配げな声で尋ねる。
リラ
「これもスティブナイトの力なんでしょうか……?」
アルビー
「うーん……。あの子のことだから、必ずしもないとは言えないんだけど」
アルビー
「いつもみたいに、ひょっこり戻ってくると信じたいけど……心配だね」
アルビー
「はぐれないつもりでいても、この森にはそういう磁場が働いている予感がある」
アルビー
「それとも、俺たちがさっさと一緒に帰れるように、君がご協力いただける?」
スティブナイト
「じゃあ一緒に妥協案でも考えてみようか?」
アルビー
「あまり好きな言葉じゃないな」
いつも、妥協してきた気がするから。
スティブナイト
「悪い救世主は倒せませんでしたが」
「悪くなりそうな救世主は討伐できました」
「ってことにするとか」
スティブナイト
大きな黒結晶の塊がリラに向かって飛ぶ。
アルビー
「………………ッ!」
即座に頭上の銃から放たれた弾がそれを撃ち抜いて弾き飛ばす。
リラ
「あ、ありがとうございます…………」
油断していたわけではないはずなのに、こういうふとした瞬間の動作が鈍くなってしまう。
スティブナイト
砕かれた黒結晶が、パラパラと細かい粒状になり――
スティブナイト
「――山の噴火はなぜ恐ろしいか知ってる?」
唐突な問い。
スティブナイト
答えが返ってくる前に、粒状になった黒結晶が、見えなくなる。
スティブナイト
…………『見えなくなるほどに』小さくなる。
スティブナイト
「ガラスを吸ったことはあるかい、救世主」
スティブナイト
次にお前たちが息をした瞬間、呼吸器官に極小の結晶が突き刺さる。
アルビー
肺腑を焼くような痛み。
即座に己の迂闊さを察し、呪う。
リラ
胸に熱がせりあがるのを感じる。
――まずい! 何とかしないと……!
リラ
緊急時に、脳に閃光がまたたいてリラは咄嗟に手を重ね合わせた。癒しの波動を――!
アルビー
無骨な近代兵器しか攻撃手段を持たない能力は、こういう際の対処方法がない。
臍を噛みながら、視線で頼むようにリラを向いた。
リラ
ここでやらないと、ずっと役立たずのままでしょう――!
スティブナイト
アルビーとリラは、互いの姿が見えなくなる。
スティブナイト
咳き込む声で、近くにいることは分かるが、闇の中、どこにいるか見当もつかない。
リラ
「くっ……!」
アルビーさん! と。
いち早く修復したらしいリラが彼の名を叫ぶ。
スティブナイト
黒結晶による喉の損傷はそこまで深くはないが、アルビー一人を放ってはおけないだろう。
スティブナイト
「なるほど、治癒できるのはあの小娘だけか」
スティブナイト
『若い女』がアルビーの目の前に立っている。
アルビー
迂闊に掃討してはリラに当たる。
リラの光が確かに喉の痛みを和らげたのを感じながら、目の前のその人と対峙して……
アルビー
「こ、れは……」
かすれた声で、言葉を紡ぐ。
スティブナイト
「優男はふくよかな方が好みってことかな」
スティブナイト
「あの小娘はそういうために隣に置いてるの?」
アルビー
祈りの効力か、次第に回復していく喉。
「程度が知れるよ」
リラ
晴れない暗闇の中で、微かに、聞きなれた耳当たりのいい声と、聞きなれない女性のような声が会話しているのを耳にする。どうやら、アルビーは無事だったらしい。そのことに胸を撫でおろす。
スティブナイト
「お高い方々に合わせるほどの教養はないんでね」
リラ
いくら指を組み合わせ、光を発しても闇を消し去ることができない。祝福の力は、単なる祝福でしかなく。
スティブナイト
「末裔に慕われ輝く救世主様のことだ」
「俺みたいな下品なやつと、本来は話したくもないんじゃないか?」
「なあ?」
リラ
この場において、祈りはあまりにも無力だった。まるで、自分自身のように。
アルビー
自分が立っている場所と、君が立っている場所。
そこには何の隔たりもないのだと言って、傷つけるために吐いた言葉の数々を撤回したい。
アルビー
彼はあまりにも怜悧で、己の傲慢と、断絶の線を知っていた。
アルビー
「……自分で下品と言うなら、そうなんだろう」
嘘だ。そう思わせるに至った環境の方に問題があるに決まっている。
アルビー
「君みたいな細くて折れそうな女の子が、そんな汚い言葉遣いをするものじゃない」
スティブナイト
「お前からすれば下水道同然の産道から生まれたもんでね」
スティブナイト
「卑しい言葉でしか自分を表せない」
スティブナイト
「きっと、俺のような迷惑な救世主を殺しまくれば、お前たちが生きる世界の空気は浄化されるんじゃない?」
アルビー
喉の痛みは癒えたはずなのに、胸がじくじくと痛む。
アルビー
震えを押し殺しながら。
誰より、自分に言い聞かせるように。
スティブナイト
「じゃあ、お前を困らせるようなことを言ってみようか」
スティブナイト
「黒結晶さえ制御できれば、お前は俺を救うことができるかもしれない」
スティブナイト
「そして、もっと困らせるようなことを言ってみよう」
スティブナイト
「お前が銃を使わずとも、俺をねじ伏せることは可能だ」
スティブナイト
「これまでの行いを悔い改め、許しを請うて涙を流す俺を、ずたずたにして、殺戮できる」
スティブナイト
「問おう。お前の『するべきことは何だ』?」
スティブナイト
「巨大な組織に屈服して生ぬるい正義に浸かって屍となるまで屠ることか?」
スティブナイト
「お前を称えてくれるわけのわからない他人に脳みそを刺激され、潰れた目で死体の道を歩むことか?」
アルビー
ずっと、戦っている。
押し込めて、見ないふりをしている。
スティブナイト
「お前の見えている世界には、本来はもっとより多くの人間がいる」
スティブナイト
「いるんだよ。平凡にすらなれないやつが」
スティブナイト
「それをなかったことにするなんて」
スティブナイト
「きっとお前にはできやしないんだ」
アルビー
――己が、この道を歩んで切り捨ててきた、全てのものへの裏切りだからだ。
noname
『進み始めるとブレーキがないのは、お前の悪い癖だぜ、アル?』
noname
『物事には多面性がある。俺の口癖だったよな?』
noname
『いいや。この際、小難しい理屈の話は』
noname
『そうやって腑分けして、殺して、生かして、殺して、生かして、その先で』
noname
『いったい、何を救おうとしてるんだ?』
アルビー
「………………るさい」
毎晩一睡も貪れないまま、勝手にそんな問いを捏ねまわそうとする頭。
何度も聞いた幻聴だ。
何度も振り払った幻聴だ。
アルビー
「………………頼むから、」
臓腑から捻りだされた声は、細く、上ずっていた。
アルビー
「黙ってくれ……」
あたかも、弱者の懇願のように。
スティブナイト
お前の皮膚と心を削り、みすぼらしい姿へと変えていく。
アルビー
「あ、ぐぅ、っ、はあ、っツ……!」
痛い。
痛い痛い痛い痛い。
アルビー
刺された足が上手く自重を支えられなくなって、身体が傾ぐ。
濡れた草が細面の皮膚を撫でる感触。
アルビー
痛い。
スティブナイトの姿は見えなくなってしまった。
自分が醜態を晒したせいだ。
アルビー
(……行か、なきゃ)
脳みそがぐちゃぐちゃに攪拌されているのに、もはや代謝のような義務感が、身体に立てと命じる。
アルビー
激痛が走る中、地に腕を立てて、震える身を無理に起こそうとして、
アルビー
意識を失うこともできずに、そこに横たわっていた。
GM
黒い雨が完全に止む前に、リラからは見えていただろう。
GM
スティブナイトとどのような会話をしていたか。
GM
2人ではなく、1人と1人に引き裂かれたような違和感。
GM
黒結晶は、『救世主』と『救世主』を、静かに映している。
*お茶会ラウンド1:アルビー
GM
*絶望侵蝕の状態であるため、、PCの「心の疵を抉る」以外の行動ができなくなり、対象PC、疵と判定に使用する能力値、アイテムの使用はPKが指定します。
スティブナイト
*リラの心の疵『善』を才覚で抉れ。ティーセットを使用すること。
アルビー
2d6+4+2=>7 判定(+才覚) (2D6+4+2>=7) > 7[2,5]+4+2 > 13 > 成功
GM
クエストの処理をここでまとめてやっちゃいますね…………
GM
ティットの手番でNo.1が達成されたため、PKの情報が…………もう開示されている!
GM
そしてこのクエストに成功したPCは、裁判開始から3ラウンドの間、手札の最大所持枚数が1枚増えます。
[ ティット ] 手札+1 : 0 → 3
[ アルビー ] ティーセット : 2 → 1
[ アルビー ] アリスのゆびぬき : 0 → 1
GM
はい。リラの疵も-1にしてください。PKの抉りではないため、絶望侵蝕はしません。
[ リラ ] 善 : 0 → -1
[ リラ ] 善 : 0 → -1
リラ
リラはそのまま立っている。一人だけ傷つかず、きれいな姿のまま。
リラ
ステージから弾き飛ばされた少女。しかし、ずっと声は聞こえていた。同じ雨に降られていたから。
アルビー
地に横たわるその姿は、あたかも生気を失った屍のようだ。
リラ
「あ…………」
行かないと。理性がささやく。
回復の手段はリラにしかない。
アルビー
……向き合いたくない目の前の現実に暗い幕を下ろすように、閉ざされた瞼。
リラ
聞いたことのない声だった。見たことのない姿だった。
リラ
彼が、私には、聞かせなかっただけ。見せてこなかっただけ。
リラ
温度のない雨が体温を奪っていく。かじかんだ脚では動けない。動きたくない。
リラ
ずっと助けてもらった。なのに、私は「知らなかった」から動けないの?
リラ
さび付いたブリキの足を動かして、ようやく少女は動き出す。
リラ
その姿はとうてい「お姫様」とは言えなかった。
リラ
あんなに大きく見えた彼は、こんなにも小さく、弱い。
リラ
「アルビーさん、大丈夫……」
「怪我はわたしが、治しますから」
リラ
だから、なんだっていうんだろう。私に何が言えるんだろう。
アルビー
意識を失ったように、目を閉じて微動だにしなかった彼は。
リラ
「優しいじゃないですか…………」
空元気のように快活に響いていた声は、森の中に静かに落ちる。
アルビー
「そんな『アルビーさん』は、最初からどこにもいない」
アルビー
今にも降り出しそうな雨のような声だった。
リラ
「そんな……そんなことないですよ」
リラの瞳が右往左往する。傘を忘れてしまった少女のように、所在なさげに。
リラ
「だって……わたしに優しくしてくれたでしょう……?」
リラ
「今までのことが、全部嘘だったわけ、ないですよ。二年一緒にいて……」
リラ
「アルビーさんの言ったことが本当でも、アルビーさんはわたしに優しくしようと、正しくいようとしてくれたじゃないですか」
リラ
「それも全部嘘だったなんて、言わないでください……」
縋るような、弱弱しい声。
アルビー
「でも、きっと俺以外の誰かの方が、もっと上手くやれた」
リラ
リラの知っている「アルビーさん」とは、いつでも背筋を伸ばして、優しげな笑顔で、たまに人をたぶらかして、いつだって前を向いている人だ。
リラ
彼が下を向いたところなんか見たことがなくて。
リラ
――それでも。
彼には笑っていてほしかった。
リラは口を開く。
リラ
「わ、わたしは……アルビーさんがよかったんです……」
あなたがよかった。
リラ
「アルビーさんが正しくなくても……あなたが優しかったのは本当だって……」
リラ
「その分、アルビーさんが私の頭を撫でて『大丈夫だよ』っていってくれてた。言わせてたんですよね」
アルビー
少女の謝罪は、鈍く麻痺した心に突き刺さる。
アルビー
「俺は、大切な人を、この手で傷つけてばかりで」
アルビー
「こんな情けないとこ、見られたくなかったなぁ……」
苦笑のような、自嘲のような。
リラ
リラは、はくりと口を動かして、そのまま何も言わずに閉ざす。
リラ
私はあなたに頼られたかった。なんでも頑張ってしまうあなたの拠り所になりたかったんです。
リラ
しかし、突きつけられた事実は変わらず。リラは途端に理解する。
リラ
(――やっぱり、わたしじゃダメなんだなあ……)
リラ
(ごめんなさい、アルビーさん……)
(あなたには、本当はもっと、ふさわしい人がいた)
リラ
(それなのに、私がたまたまそこにいたから……)
(そうして、それを嬉しく思う自分もいた)
リラ
リラは何も言えずに立ちすくむ。結局、傷ついた彼を癒すことなどできずに、ただの木偶の坊として、そこに立っている。
*お茶会ラウンド1:スティブナイト(手番割り込み②)
スティブナイト
*リラの心の疵『善』を猟奇で抉る。
アルビー
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 才覚
アルビー
2d6+4=>7 判定(+才覚) (2D6+4>=7) > 5[2,3]+4 > 9 > 成功
[ アルビー ] HP : 21 → 20
スティブナイト
*ティーセットと子山羊皮の手袋を使用。
[ スティブナイト ] ティーセット : 1 → 0
[ スティブナイト ] 子山羊皮の手袋 : 1 → 0
スティブナイト
2d6+5+2+2-4=>7 判定 (2D6+5+2+2-4>=7) > 8[5,3]+5+2+2-4 > 13 > 成功
スティブナイト
PKに抉られ、●状態の疵の関係欄にPKの名前があるようになったため、リラは『絶望侵蝕』。
スティブナイト
また、●状態のPCの疵を抉り、成功したため、同時にリラは状態〈絶望〉になる。
[ リラ ] 前科 : 0 → 5
スティブナイト
抉られた●の心の疵の名前を「絶望」に変更する。
[ リラ ] 絶望 : 0 → -1
スティブナイト
他PCについて、状態○の心の疵の関係欄に〈絶望〉したPCの名前がある場合、その心の疵の状態を●にする。今回は該当しない。
スティブナイト
GMは配下1体を選び、HPを〔〈絶望〉したPCの現在HP〕点減少する。この処理の結果HPが0になったとき、配下は〈昏倒〉する。
[ 黒結晶 ] HP : 19 → 0
GM
PCが〈絶望〉したため、クエストNo.5を開示します。
スティブナイト
2d6 (2D6) > 7[5,2] > 7
スティブナイト
5 開けた場所。巨大な黒結晶のクラスターがある。長い時間をかけて大きくなったようだ。この辺りが救世主の居住地だろうか?
2 薄暗く冷えた森を歩く。どれほど歩いても黒い光景が続いている。それは不安を煽り、陰鬱な気持ちになる。
スティブナイト
体温が下がっていくような気がする。
スティブナイト
黒結晶の雨に温度はないのに、何もかもがもとに戻らない気がする。
スティブナイト
お前たちの間にある見えない溝はゆるやかに深くなっていく。
スティブナイト
じわじわと、ふたりを舞台へ押し上げるかのように、黒結晶が移動しているような気がする。
黒結晶
黒結晶が、生き物のように、リラへと掴みかかる。
リラ
「え……」
リラは突然の大声に呆然としている。
アルビー
泥のような安寧を貪り、沈んでいた身体が、跳ね起きる。
黒結晶
突き飛ばされたことで顕になった黒結晶の断面が、弱った男を映している。
リラ
黒結晶に鏡のように映る、弱った顔。
「どうして……!」
リラ
そんな顔をしているのに、また助けてくれるの!
黒結晶
策もない、考えもない行動では、その横から迫る黒結晶に気づかない。
黒結晶
リラとアルビーを隔てるように、黒結晶が生えて、二人を物理的に引き剥がす。
黒結晶
突き飛ばされた衝撃をそのまま返すように、アルビーのみぞおちに角張った黒結晶が生えて、その身を打ち飛ばす。
リラ
「……ッ! やめて!」
泥濘に浸かっていた思考がようやく戻ってきて、現実を捉える。
スティブナイト
リラの方からは反射でアルビーを見ることができないが、アルビーの方からは向こう側をはっきりと見ることができる。
舞台裏
アルビー
「…………!」
脳みそが安物の豆スープになったように働かない。
アルビー
それでも、リラがスティブナイトと二人きりのこの状況が、どれだけ不味いかはわかる。
アルビー
肉を切らせて骨を断つ。
あの毒のような粉を吸うことになろうとも、この黒結晶を粉砕して、分断をどうにかした方が利口だ。
アルビー
(リラちゃんを、スティブナイトと二人きりにするわけには……)
アルビー
手を翳す。
いつも通り、銃を呼び出すため。
アルビー
――いつもは、念じればすぐに出るはずの銃。
noname
「問おう。お前の『するべきことは何だ』?」
アルビー
『善悪』を腑分けして、『善』を護って、『悪』を殺して、殺して、殺し続けて。
アルビー
人々を監視し、『悪』に裁きを与え、排除するための、冷酷な法のように。
アルビー
わからないまま、わかったことにしていた。
アルビー
必死に蓋をしていたそれを開けたが最後、冷酷な銃口は向く先を見失って。
アルビー
……その力で守る先も、見失ってしまった。
アルビー
何も掴めない空の手の、善人とも悪人ともつかない弱い男が、一人きりだ。
スティブナイト
「王子様は助けに来られないみたいだけど」
リラ
「次は私? あなた、私といたって楽しくないでしょうに……」
リラ
「ダンスは一人で踊ってよ……」
もうそんな余裕はないので。
スティブナイト
「俺が思うに、『あの鏡』はお前らが踊るような姿を見てたはずだけど……まあ、あんなやつの言うことは当てにならないか」
スティブナイト
「あの男はもうなにもしなくても潰れると思うから」
「対象をお前に移しただけだよ」
スティブナイト
リラへと近づく。その姿は、リラと同い年くらいに見える。
リラ
「……つぶれな、」
と言いかけて。あの弱った顔を思い出す。
リラ
そうして、目の前のスティブナイトが、自分とほぼ変わらないことに気が付く。
リラ
「……ねえ、あなた、どうしてこの森にいるの?」
スティブナイト
「あの男だったら、『スティブナイトがこの森にいるのはどうして?』というお前の問いに、どう答えると思う?」
リラ
痛いところを突かれた、と思った。
目の前の人物はきっと聡くて、リラのこれまでの態度・言動からすべてを察しているのだろう、と。言葉にはできずとも理解する。
リラ
「おとぎ話に出てくるような『悪い人』だったらよかった……」
リラ
「アルビーさんは、きっと『悪』だと言ってくれる」
リラ
「そうでしょう? だって、あなた……こんなに傷ついて、ボロボロじゃない……」
少女の声は、目の前の、『弱った少女』へと向けられる。
スティブナイト
「その後に続く言葉がなければ完璧だった」
スティブナイト
「俺が傷ついて、ボロボロだとして」
スティブナイト
「それで?」
「優しく手を引いて公爵家へとでも連れて行くつもりかな?」
スティブナイト
「お前が救世主として祈り、末裔共が頭を垂れて跪けば、俺の罪もなかったことにしてくれると?」
リラ
――救世主と末裔という絶対の差はあっても、この関係に愛はありますよ。
――あのこたちが私をどう思っていても、私はあのこたちの女王様になっているんですから。
リラ
あの時のリラは「わからない」と一蹴したけれど。
リラ
ストレナエだけだはない、アルビーも、ティットもスティブナイトも。
リラ
――わからなかったのは、わからないふりをしていたのは私だけ。
リラ
「…………あなたの罪はなかったことにはならない」
リラ
「できないよ……だって、私、そうやって救世主を殺して、生きてきたから」
リラ
「寂しいでしょう、こんな場所で、ひとりぼっちは……」
リラ
どうしたらいいんだろう、わからない。暗闇で北極星のように道をさししめしてくれる彼はいない。
その傍らで、きゃいきゃいと場を盛り上げて、自分を慰めてくれた彼ももういない。
リラ
「光のささないこの森では凍えてしまう……」
ねえ、そうでしょう?
スティブナイト
「どうやら俺とお前は別の人種らしい」
スティブナイト
「俺はその逆。人のいる場所に出たら業火に焼かれて灰になるだろうね」
スティブナイト
「人に触れられるだけで傷つくやつが」
「優しさを裏切りの準備だとしか思えないようなやつが」
「一人きりの静寂すらままならないやつが」
スティブナイト
「お前たちには理解できないか」
「もしくは、理解すると不都合だから、排除する」
リラ
何を言っているのか理解できず、ただ一言「別の人種だ」が突き刺さって抜けない。
リラ
頭の中で、その言葉がこだまのように反響している。
スティブナイト
「共生できない。俺と、それ以外の関係はたった一言で表せる」
スティブナイト
「お前の生きてきた道は、きっとその真逆だろう?」
スティブナイト
「広くて穏やかな大通りは、さぞ歩きやすかったことだろうさ」
スティブナイト
「仲間と疵を舐め合い、末裔どもに感謝され」
「救世主を殺したことを少しだけ後悔して」
「折り合いという言い訳でごまかしてきた」
スティブナイト
「回り回って――今、お前を苦しめている」
スティブナイト
「違うなら、俺はもう諦めるさ」
「そこの王子様のように『正しさ』を教えてはやれないんでね」
スティブナイト
「……まあ、今の王子様は白馬から落ちて、なにも教えてくれないだろうけど」
リラ
繰り返す。二人の間にある溝は大きく、まるで寄り添うことなどできない。
リラ
昔から、私にはそれしかできない。人が喜ぶことをして、こうされたら気に入ってもらえるだろうなと機を窺って。『いいこ』でいる。
リラ
そうしたら、皆、手をつないでくれた。その温かさに身を委ねて、『ああ、これでよかったんだ、正しかったんだ』と思って。
リラ
でも自分の在り方を好ましく思っていたわけではない。
リラ
でもそんなものは救世主になったって手に入らなかった。
リラ
あこがれていたものには決してなれない、まがいもの。
リラ
――焦がれて手を伸ばしたって、決してなれはしないのに。
スティブナイト
「それでも」
「どうしても教えて欲しいなら、一つだけ方法がある」
スティブナイト
「お前が『最後のアリス』になることだ」
スティブナイト
「『そうなる』なら、『いらないもの』があるだろう?」
リラ
「『最後のアリス』…………」
何度か耳にした程度の噂話。どうせ、おとぎ話の類のさみしい夜を乗り越えるための笑い話。
リラ
もう空は澱んでいて、決して晴れることはなく。
リラ
導の星は瞬かず、道化の笑い声も、彼女には届かない。
リラ
――仕方がない、この世には絶望しかないのだから。
リラ
「あははっ、あははは…………」
リラが抱いた希望は、いつか絶望に変わるだけの小さな行い。結局、それに意味なんてなかった。
リラ
でも、それを変える手段があるかもしれないのだ!
リラ
「救世主であることも、生きていくことも、絶望でしかないのなら――」
リラ
「はは、こうして、この森に進んだ救世主は帰ってこなくなったんだね……」
リラ
「いいよ。あなたの舞台で踊ってあげるわ、スティブナイト」
スティブナイト
女はいつの間にか黒幕のように姿を消し、開けた場所に立つのは一人の少女。
スティブナイト
観客席にいる男の前に、絶望した少女が立っている。
*お茶会ラウンド1:リラ
GM
* PKに抉られ、絶望侵蝕の状態であるため、PCの「心の疵を抉る」以外の行動ができなくなり、対象PC、疵と判定に使用する能力値、アイテムの使用はPKが指定します。
スティブナイト
*アルビーの心の疵『善悪』を愛で抉れ。ティーセットを使用すること。
[ リラ ] ティーセット : 1 → 0
リラ
2d6+3+2=>7 判定(+愛) (2D6+3+2>=7) > 10[6,4]+3+2 > 15 > 成功
スティブナイト
●状態の疵を抉られ、成功したため、アルビーは状態〈絶望〉になる。
[ アルビー ] 前科 : 0 → 5
スティブナイト
抉られた●の心の疵の名前を「絶望」に変更する。
[ アルビー ] 絶望 : 0 → -1
スティブナイト
他PCについて、状態○の心の疵の関係欄に〈絶望〉したPCの名前がある場合、その心の疵の状態を●にする。今回は該当しない。
スティブナイト
GMは配下1体を選び、HPを〔〈絶望〉したPCの現在HP〕点減少する。この処理の結果HPが0になったとき、配下は〈昏倒〉する。
[ 黒結晶 ] HP : 21 → 1
アルビー
さりとて目を逸らすこともできずに、黒結晶越しのスティブナイトとリラを見ていた。
リラ
黒結晶の境が消え、隔てるものが何もなくなっても、二人の距離はかけ離れている。
リラ
「ねえ、きっと今も見てるんでしょう。スティブナイト」
男の声には答えないまま、ぼそりと呟く。
リラ
――ごめんね。私、あなたたちのことが大好きだった。あなたたちを助けたいと思った。
リラ
でもね、救世主を倒したところで、あなたたちのことは助けられなくて、結局私のしたことに意味はなかったよね。
リラ
ごめんね。私が弱くて駄目だから、あなたたちをずっと傷つけて、消費してる。
リラ
「――だからお願い! 力を貸して!」
張り裂けんばかりに上空に向かって叫ぶ。暗闇をつんざく鋭い声は、強力な武力をこの地に降りさせる。
リラ
かくれんぼはもうできない。恨んでくれて構わない。
アルビー
必要に迫られてやるならば、それは自分がやるべきことで。
アルビー
しかし、振るう力を失った男には止める手段がない。
リラ
最期に見る夢が、せめて安らかにありますように――。
以前のリラならば祈ったもの。しかしもう祈りはしない。
リラ
痛くて、辛いことが、安らかであるはずがないんだから。
アルビー
ただ、目の前の優しく明るかった少女が、『それ』をするのを、呆然と見ていた。
上空を見れば、グリフォンの末裔が、鳥の群れのように。
布にくるまれて、空中でほどけて、ちらばって。
まるで絵本の始まりみたいに。
ばたばたと落ちてきて、静寂が広がる空間を、荒らしていく。
その中には、お前の見知った顔もあったかもしれない。
『お前たちがかつて、あの場所で聞いたことのある音』。
破壊音。
亡者化し、人喰い三月と成り果てたものの咆哮。
それに食い荒らされる別の三月兎。
スティブナイト
二人の近くで、どさりとなにかが落ちる音。
スティブナイト
「…………ッが、…………ぐっ……………………」
リラ
苦しみに喘ぐ少女のような声に相対する、もう一人の少女の瞳は冷酷に凪いでいる。
リラ
頭の中に、地図を作る。
大丈夫、できるよ。今までずっと傍らで見ていたから。
リラ
……すると、少女の背後に浮かび上がる無数の裁ちばさみ。獲物を一匹たりとも逃さぬような監視の目。
リラ
チャーミングな悪魔のように指を振るえば、ほら!
スティブナイト
「ッ、」
黒結晶での防壁は間に合わない。
スティブナイト
裁ちばさみがスティブナイトを『裁断』する。
スティブナイト
容赦のない猟奇の暴力で、やわい体が吹き飛ばされる。
スティブナイト
黒結晶の破片が嘔吐物のように吐き出される。
[ スティブナイト ] HP : 20 → 1
リラ
ぱきりぱきりと黒結晶を踏みしめ、吹き飛ばされたスティブナイトの元へ足を進める。
アルビー
目の前で繰り広げられる饗宴を前に、舞台の上にのぼる力を失った観客は何もできない。
リラ
頽れたその華奢な体、いまだ荒い息を漏らすその上体にまたがる。
スティブナイト
「ッ、ゴほっ、…………」
「いつも、こんな感じなのか?」
スティブナイト
「野蛮だな……」
「こっちのほうが、さっきよりやりやすくて助かるね」
スティブナイト
その目はリラではなく、アルビーに向けられている。
アルビー
「やめて、リラちゃん…………」
吐息交じりの、独り言のように小さな小さな、か細い声。
アルビー
「どうして……?」
それは自分の役割ではなかったか。
リラ
「スティブナイト。あなた、言ったでしょう。救世主がいることにも、この国が、世界が滅びゆくことにも意味はなくて」
リラ
「可哀想にね。あなたは賢くて、真面目で、酔う才能がないから」
リラ
「だから、私があなたを楽にしてあげる」
そう言うと、リラは少女に刺さっていた鋏を抜き取る。
スティブナイト
「…………死ねば、楽に、なれると、でも?」
スティブナイト
黒結晶がリラの視界にだけ、薄く広がる。
スティブナイト
膜のようなそれは、跨がられているスティブナイトをベールのように隠して。
スティブナイト
女の姿は見えなくなるが、黒結晶の痕跡によって追うことは容易だろう。
スティブナイト
きっと、今の状態であれば、お前たちはあの女を追って倒すことができる。
スティブナイト
いつもの3人であれば、ほぼ確実に。
GM
いつもであれば。あんなに弱った救世主が逃げたのであれば。
GM
いつものお前たちであったのならば、どのようにしていただろう?
リラ
仲間の元へ駆け寄って笑顔を浮かべたであろう少女は、女の残した痕跡を眺めて、
リラ
「…………逃げちゃった」
この惨状を起こした人物とは思い難い、幼げな声を零す。
リラ
少女は振り向いて、ようやく男と顔を合わせる。
リラ
「アルビーさん、わたしね。薄々わかってたんです」
リラ
「この世にはっきりとした『善』も『悪』もなくて……」
リラ
「私は、ただ自分に都合の悪い存在を『悪』って言ってただけだって」
リラ
「アルビーさんの優しさに、寄生してたんです」
アルビー
「あれは、ただの俺のエゴだ」
好ましいと思った少女に、傷ついてほしくなかっただけ。
アルビー
こんな苦痛まみれの世界で、それでも笑っていてほしかった。
アルビー
こんな笑顔を、させたかったわけじゃない。
リラ
「……ううん。エゴだとしても、嬉しかったから」
リラ
「私はアルビーさんじゃないとダメでしたけど、アルビーさんは、あの時いたのが私じゃなくても、きっと手を差し伸べていたでしょう?」
リラ
「だから、私が優しさを啜って……あなたを苦しめた」
リラ
「アルビーさんはアルビーさんで、私のお兄ちゃんでも、お父さんでもないのにね」
アルビー
「……君のことを、もう一人の妹みたいに思ってたよ」
リラ
「あはは……嘘でもうれしい」
本当にうれしそうに笑う。ずっと、甘えられる場所が欲しかったから。
アルビー
「あのとき一緒に流れ着いたのが、リラちゃんとティットでよかったって、何度も言ったでしょう?」
本心だ。
アルビー
あの時いたのが私じゃなくても、きっと手を差し伸べていた。
それは、きっとそうだろうけど。
アルビー
「スティブナイトに、何を吹き込まれたの」
リラ
「うん。ちゃんと覚えてますよ」
あのとき一緒に流れ着いたのが、リラちゃんとティットでよかった。
リラ
その言葉はこんな暗闇の中でも、宝物のようにきらきらと胸の中で輝いている。
リラ
「でも、それじゃアルビーさんはずっと休めないから」
あの、地面に横たわる姿。弱弱しい声。初めて聞いたもの、初めて見たもの。
リラ
「わたし、アルビーさんとティットが泣かなくていられるように頑張ります。私が今まで笑えたのは二人がいたからなんです」
noname
「アルビーさんは、私が迷っても、間違っても、捨てないでいてくれますか…………?」
noname
「もちろん。捨てたりなんかしないよ」
noname
「リラちゃんが迷ってたら手を引くし、間違ってたら『それは違うよ』って教えてあげる」
アルビー
その道は間違っていると言って、手を引いてやりたい。
アルビー
……でも、それは先ほど自分自身で打ち砕いた、『アルビーさん』の役目だ。
リラ
「あなたと、あなたたちといられて幸せでした」
アルビー
目の前の少女はいつもそうだった。明るくて、頑張り屋で、真っすぐな子。
リラ
リラはそう言って、頭上に武器を構えようとして、弱ったように笑うと。
リラ
腕を下ろして、踵を返す。
……武器はその場には浮かばない。
リラ
スティブナイトを追うこともせず、そのままただふらふらと森の中へと入っていった。
――もうその顔に、笑みはない。
アルビー
声をかける資格を持たない男は、その背中を見送る。
アルビー
地に蹲るようにして、腰にある黒光りする『それ』に気づく。
アルビー
「……ぁ、はは」
一挺だけ、手元に銃がある。
弾は能力で装填していたけれど、これは実銃。
最初に『彼』を撃った、あの銃だ。
アルビー
ずっと、そんな資格もないのに、人を裁いてきた。
アルビー
『善』の枠組みから出る度胸もなく、卑怯なまま。
アルビー
自らの心の力に語り掛けるように、呟く。
「……誰も殺す資格がなくても」
アルビー
だって、冷徹な処刑官の顔をして、一番の大罪人だったのは自分だ。
アルビー
四方を監視し哨戒する銃を操りながら、その銃口が己にも向いていることを思わなかった日はない。
アルビー
銃を持ち上げ、こめかみに当てる。
ひやりとした感触が心地いい。
アルビー
(何も考えず、眠れるんだな…………)
安堵のような、幸いのような。
アルビー
そんな、救われるような心地で引き金を引く。
アルビー
パン!と弾けるような音がして、脳天に衝撃が走る。
アルビー
両の目から涙が止まらない。肩が震える。
「うぅ……、っ」
アルビー
子供のように顔をくしゃくしゃにして、恥も外聞もなく泣きじゃくる。
アルビー
「ぅ、あア、あぁっ、あ゛あ゛あ゛あ゛!」
理性をなくした獣のような絶叫が、森の静寂に響く。
noname
『お前のアクセルの踏みどころは、そうじゃないだろ?』
アルビー
幻聴は、耳元に寄り添うように優しく聞こえた。
noname
『お前にそんな楽な道を選ばせちゃくれないよ』
noname
『だって、死んだら楽になっちまうだろ?』
noname
『そこで死を選べるような奴なら、俺の手を取ってた』
noname
『問われるまでもなく、お前の中にあるはずだ』
アルビー
気丈に振る舞っていたリラの、辛そうな顔。
アルビー
今、ここにいない彼女に。
直接告げる資格のない言葉を吐く。
アルビー
「『最後のアリス』になって、この世を書き換えたって」
アルビー
「――そこに世界があって、人がいるなら、苦しみは消えない」
アルビー
だって、元いた世界でもそうだった。
飢えがあって、格差があって、貧困があって、戦争があった。
アルビー
「楽にしてあげるしか、終わりはないんだ」
アルビー
パン!とまた音がして。
自分は生きたまま、苦しみに満ちたままそこにいて。
アルビー
呼び出す。
呆気なく、問題なく、いつも通り――それ以上に滑らかに、大量の銃が彼の周りに姿をあらわした。
アルビー
試射などしなくても、それが命を止められるものだとわかる。
自分の心のことだから。
アルビー
ようやく、安心して、己のこめかみを弾丸で撃ち抜けるだろう。
アルビー
舞台に上がって。
先ほどまでの弱弱しげな姿とは別人のように律動的な足取りで、彼は森を歩いていく。
GM
1ラウンド目のPC全員の行動が終了しました。
GM
お茶会MOD『勇断』により、プレイヤー全員の合意があった場合、お茶会を終了して裁判に突入することを選べます。
GM
『勇断』が行われなかったため、お茶会2ラウンド目が開始されます。