お茶会2
GM
2d6 (2D6) > 7[6,1] > 7
GM
6 黒結晶が舞っている。避けないならば、ぶつかってあなたを傷付けようとしてくる。
GM
1 黒結晶に覆われた死体を見つける。死体は干からび、表情は絶望に満ちている。
GM
お前たちふたりが仲良く名前を呼んだもうひとり。
エンフォーサー
もはや仲間の一人もなく、空も見えず、救世主であると認識する他者の影もなく。
エンフォーサー
それでも自分は救世主の見た目をしているのだから、こうしてスティブナイトを目指して歩いている。
スティブナイト
身を隠すことすらできなくなっていた。
スティブナイト
だからお前が目指せばその先に、それはいた。
スティブナイト
「お前が歩いている間に、向こうは随分と楽しいことになってるみたいだ」
エンフォーサー
「それはカンダ?ああ、カンダってのはうるさいほうね……」
エンフォーサー
「ツグハが、そうか。カンダにやられたか」
エンフォーサー
「勝てる戦力ではなくなったからね」
エンフォーサー
「正体不明と言われていたが、女であるように見える」
エンフォーサー
「現実?ふふ。それは君もってことかな」
エンフォーサー
「もうちょっと声も違ったような気がするし」
エンフォーサー
「まあ、見た目に関しては私も人のことを言えた義理ではないが」
エンフォーサー
「もともとそういう契約でここに来て、今まで援助を貰っているわけだからね」
エンフォーサー
「あれだけの兎を使っておいて、収穫はありませんでしたなんて報告はちょっとね」
エンフォーサー
「世に期待される救世主としてはちょっと、だろ?」
エンフォーサー
「同じ末裔のくせにああも使い捨てられるとはね~。いくら三月兎が増えやすいとは言え」
スティブナイト
「まあ、おかげでこのざまだけどね」
エンフォーサー
「もうひと押しぐらいすれば倒れたりしてくれないかな」
スティブナイト
じゃあ、こっちも剣にしてしまおう。
スティブナイト
同じ形で勝敗を決めたら、嫌でもわかるだろ?
エンフォーサー
足元の黒結晶を踏み散らし、50コインの救世主らしい速度で肉薄して斬りつける。
スティブナイト
黒結晶が壁になる。高い音を立てて、それを弾く。
スティブナイト
足元を踏みしめて。砕いて跳ねた黒結晶を大きく育てる。
エンフォーサー
そう言いながら振った二の太刀も弾かれる。
スティブナイト
コインの枚数はお前と比べて10枚多い。
スティブナイト
それに、防御を全て捨てて、攻撃に賭けている。
エンフォーサー
「自分の身体のように扱って……いや、そういうものが君の本質なのかな」
エンフォーサー
受けた衣装が千切れ、遅れて再生する。
エンフォーサー
自分の身を押し込める鎧を何度でも精製して、その身を固める。
エンフォーサー
純粋な力で上回られる、押し込まれる。傷がつく。
スティブナイト
そのまま黒結晶を育てて、持ち上げる。
スティブナイト
お前の足が地面を離れて、宙に浮く。
エンフォーサー
肉が裂ける痛み。皮膚が、筋繊維が、修繕した端からみちみちと音を立てる。
スティブナイト
そう言う間にも、ひとつ、ふたつ、結晶が刺さる。
エンフォーサー
苦悶の表情に無理やり浮かべた笑みがまた歪む。
エンフォーサー
「救世主なんて、もともとどいつもこいつも」
エンフォーサー
イカれてる、という文句はうめき声に変わる。
エンフォーサー
そういう事を口にすると、思い浮かぶものがある。
エンフォーサー
じゃあどうして、こんなことをしているの、というごくシンプルなもの。
エンフォーサー
こんな痛みを受けてまで、この世は守りたいものだったか。
エンフォーサー
知らない世界。狂ったルール。力のないくせに頼ることだけは一丁前な末裔たち!
エンフォーサー
自分は、これらのどれにも価値を見い出せていない。
スティブナイト
「全部を敵に回して、なにもかもを傷付けて、来るものすべてを殺して」
スティブナイト
「意味のあることなんか、この世にはないよ」
スティブナイト
お前の右目の、黒結晶の生えたところに。
スティブナイト
そしてそれに触れれば、それは意のままに。
エンフォーサー
抑えきれない苦しみと痛みと、押し込んでいた絶望が。
スティブナイト
成長して、恐らくお前の脳があるほうへ、結晶の先端が伸びていく、のが。
スティブナイト
頭の中を傷付け、肉を切り裂いて、脳を掻き回して。
エンフォーサー
こうやって大声を出したのはいつ以来だったか。
エンフォーサー
鉄壁の衣装の奥にあった何かがずっと前に感じていた痛み。
エンフォーサー
新鮮な苦痛。死への恐怖。理不尽への怒り。
スティブナイト
「こうして、力を振るって、苦しんでる顔を見たら」
エンフォーサー
骨が黒結晶に押しのけられて、歪み、ひび割れて、肉が裂けて新しい血痕を地面に残す。
エンフォーサー
無事な方の目が見開かれて、スティブナイトを見た。
スティブナイト
「お前のどこまで入ってると思う?」
エンフォーサー
腕ぐらいなら、腸ぐらいなら、いくらでも再生したことがある。脳はどこまで再生できる?
エンフォーサー
「優しく抜くのを、手伝ってくれるなんてのは?」
エンフォーサー
この距離で剣を振れば当たるのに、何もできない。
エンフォーサー
「救世主は、見た目通りとは限らないだろう」
エンフォーサー
ぼんやりと言いながら、服の合間からも血が漏れる。
エンフォーサー
ひときわ大きくて、けれどカンダには及ばない大声が出る。
エンフォーサー
目が弾け、神経を裂き、脳の奥まで絶望のかけらが刺さって壊す。
エンフォーサー
目を押さえながら苦悶の悲鳴を上げて黒結晶の上をのたうちまわる。
スティブナイト
破片がいくつも刺さって、転がる度に深くめり込んでいく。
エンフォーサー
救世主の身体が、力が、その身を癒やすのを、制御できなくなった肉体の反応が傷つけていく。
エンフォーサー
黒結晶に手をついて、また裂ける。血と絶望が流れていく。
スティブナイト
身体の下の黒結晶が伸びて、足と胴を縫い留める。
エンフォーサー
疵の力が笑顔を作って、疵が悲鳴を上げる。
スティブナイト
こんな静寂の中だから、よく聞こえる。
エンフォーサー
もう嫌だ。もう痛い思いをしたくない。抑え込めない思いが溢れ出る。
エンフォーサー
クソったれが、なんで俺がこんな目に。
スティブナイト
救世主はこの国を助けるためにいる。
スティブナイト
あのふたり、どこにいったんだろうね?
スティブナイト
*エンフォーサーの心の疵「心」を猟奇で抉る。
スティブナイト
2d6+5=>7 判定(+猟奇) (2D6+5>=7) > 4[1,3]+5 > 9 > 成功
[ エンフォーサー ] 心 : -1 → -2
[ エンフォーサー ] 絶望侵蝕 : -1 → -2
[ エンフォーサー ] 前科 : 5 → 5
[ エンフォーサー ] 絶望 : -1 → -1
エンフォーサー
もう嫌だ、救世主も、この国も、弱いあいつも、弱い自分も!
エンフォーサー
その手に集まる力も、もはや外面を保てない。
スティブナイト
それは容易に黒結晶によって弾かれる。
エンフォーサー
弾かれて、くだけて、破片がまた身を裂いた。
エンフォーサー
その衝撃だけで吹き飛んで、地面を転がった。
スティブナイト
その回転を止めるように、あるいは勢いを利用して深く貫くように、黒結晶が先に生えて、お前を待ち構えていた。
エンフォーサー
その身体の腕も足もあらぬ方向に曲がり、白い髪はもはや赤い髪と言えるほどに血まみれで。
エンフォーサー
息があるのが不思議なほどで、鳥のようなマントだけが血溜まりに浮かぶ島のように白くある。
エンフォーサー
全部どうでもいい。ずっとどうでもよかった。
スティブナイト
絶望ははじめからお前の中にあった。
エンフォーサー
エンフォーサーなんて名前になる前に絶望していた。
スティブナイト
そういう紛らわせられる能力の名前を、愛って呼ぶんだっけ?
エンフォーサー
きっとこの森にいる誰にも見つけられないものだ。
スティブナイト
それをしばらく見つめてから、踵を返して去っていく。
エンフォーサー
暫くして、ゆっくりながらもその身体を修復した。
エンフォーサー
糸の繋がった人形のように、不器用に立ち上がる。
エンフォーサー
水晶の飾りをたっぷりつけたエンフォーサーが立ち上がって、一人歩き出す。
エンフォーサー
水晶のいくつかは歩くうちに落ちて、いくつかはその身体に飲み込まれていった。
エンフォーサー
その足取りはどこに向かうのか、今はまだ、本人にすらわからない。
スティブナイト
ここがなんて呼ばれてるか、知ってる?
GM
*状態〈絶望〉中のため、「心の疵を抉る」以外の行動ができなくなります。
ツグハ
2d6 (2D6) > 11[5,6] > 11
GM
5 開けた場所。巨大な黒結晶のクラスターがある。長い時間をかけて大きくなったようだ。この辺りが救世主の居住地だろうか?
GM
6 気付けば、あなたの周囲には誰もいない。いつの間にかはぐれたか、それとも救世主が見せる幻覚だろうか?
カンダ
とりあえず近くにいたツグハに手を出して、一通りの気は済んだ。
カンダ
次はエンフォーサーを探しに行こう。ツグハが見かけなかったというなら、逆方向か?
カンダ
インクを浮かばせ、気配を探る。
先程まで隣にいた者への注意なんておざなりにして。
カンダ
「君もおかわりはいいって言ってたじゃん?」
カンダ
「いやぁ、とりあえずは満足したかな。だがエンフォーサーには、付けなきゃいけないオトシマエがある」
ツグハ
「じゃ、そそのかしたのエンフォー君のほうなんだ」
ツグハ
「てっきりスティブナイトかと思ってたけど」
ツグハ
「そりゃそうか。あいつ五月蠅いの苦手だもんな」
カンダ
「あれっきり、私の前にゃ一回も顔出しやしなかったね。最終的には引きずりだすけどさ」
カンダ
「ちなみにこのインク、こうなってる奴にしか見えないんだぜ」
カンダ
「責任転嫁したい時はエンフォ野郎のせいにして、実績にしたい時は私のせいにする!」
カンダ
「たらい回されたい時は何時でも言ってね!」
カンダ
「……そういう訳で、ここから個別行動って事でどう?」
ツグハ
「まあ私はエンフォー君はどうでもいいんだけど」
ツグハ
「私がたらい回したい時はどうすればいいのさ」
ツグハ
「罪状は、連続殺人とか、麻薬使用とか器物損壊とか」
ツグハ
「これ以上罪を重ねる前に出頭すべきじゃない?」
ツグハ
「あんたの父母兄弟は国賊となるので皆泣いておるぞ」
ツグハ
茨が這う。ツグハの足元から、カンダを囲うようにしゅるしゅると。
ツグハ
その蔓は棘に入り混じって、黒結晶の欠片がささくれたように突き上がっている。
カンダ
話しながらも視線を巡らせる。
こと逃げるという話になると、ツグハの──それも今の状態の──力は非常~に面倒だ。
カンダ
「ところで、一回ヤっただけで彼女面する女ってどう思う?」
カンダ
「私も同じ気持ちだな、前半分の方だけね!」
カンダ
この調子で囲われてはいよいよ逃げ場が無くなるだろう。
一か八か駆け出して、蔦の上を飛び越えようと跳ねる。
ツグハ
獣の往く道を塞ぐように、黒結晶交じりの茨がバリケードを構築していく。懸命に走るその背を追い立てながら。
ツグハ
*カンダの心の疵「絶望」を抉り、クエストNo.2に挑戦します。
ツグハ
2d6+4=>7 判定(+愛) (2D6+4>=7) > 9[5,4]+4 > 13 > 成功
ツグハ
かつて救世主と呼ばれた男は、救いを求る人々を祝福し、教えを残した。
ツグハ
“貧しい者。悲しむ者。柔和な者。義を求める者。憐れみ深き者。心清き者。平和を作る者”。
ツグハ
“彼らは幸いである。天国は彼らのものである故に。”
ツグハ
──茨は過たずカンダの行く先を覆い尽くした。
カンダ
普通の茨ならいざ知らず、この茨に混じっているのは黒結晶。有刺鉄線よりもタチが悪い。
ツグハ
「法ってのはみんなで良い子ちゃんするためにあるもんでしょ?」
ツグハ
「好き勝手やり返されたところで、文句を言うことすら許されないんだよ」
カンダ
「みんな普段は法なんて守ろうとしない、如何に掻い潜るかばっかり考えてるくせに」
カンダ
「破ったヤツに石投げる時だけ熱心なんだよな」
ツグハ
「“人を不義に定めてはいけない。そうすれば、貴方がたも不義に定められることはない”」
ツグハ
「ありがたい教えなのに、だあれも守っちゃいない」
カンダ
「君んとこの神様は、人に聞く耳を持てとは教えてくれなかった訳?」
ツグハ
「“聖なるものを犬にやるな”、とは教えてくれたよ」
カンダ
「どんなバカでも、どうにかしようとするのが法の理念」
カンダ
「その点じゃ、神様より法のほうが懐が深いみたいだ」
ツグハ
「じゃあ、閻魔大王様に舌を抜いてもらわないとねえ」
ツグハ
「でも堕落の国で死んだ奴が、閻魔様に会えるかどうかわかんないしさ」
ツグハ
歩みを進める。その間も茨は伸び続け、カンダの体を隙間無く覆い尽くして行くだろう。
カンダ
「ヤットコもないのにどうやって抜くって!?」
カンダ
逃げ場はずっと探し求めていたものの。
右、無し。
左、無し。
背後、無し。
カンダ
身に纏わりつく茨を引っ張り、顔と顔とを近づける。
カンダ
あと一歩、ほんの一歩前に進めば、横をすり抜けて逃げ出せる。
ツグハ
馬鹿言うなよ。在るだろ、お前の行きつく先は。
ツグハ
死んだら全部チャラだなんて、虫が良すぎる話だよな?
ツグハ
茨はその身にしかと絡み付き、大地から離れた脚をそのまま宙へと浮き上がらせて。
カンダ
「舌を抜かれるのは嘘つきへの刑罰だったっけ!」
ツグハ
「多重債務で首が回らなくなるより良いでしょ」
カンダ
「いっぱいついたからなぁ!舌一枚で済むだけ温情ですね!」
カンダ
「喋れるうちに一つだけ聞いておきたい事があるんだけど、いいかな!」
カンダ
「……舌が無くなったヤツってどうやってキスすればいいと思う?」
ツグハ
擦れた黒結晶の欠片が歯茎に引っかかり、口を無理やりに開かせて、舌の根を締め上げる。
カンダ
そう見えているのは、この2人だけかもしれないけれど。
ツグハ
口の中に残った肉の塊を吐き出して、そのまま踵で踏み潰した。
カンダ
たしの舌、美味しい? なんて聞こうとしても声は出ず。
ツグハ
そう一言だけ呟いて、茨の中身を投げ捨てた。
カンダ
投げ捨てられ、転がり、這い蹲って、嘔吐く。
ツグハ
口元以外、欠片も笑っていない表情と声色で、その様を嘲る。
カンダ
でもついでに呼吸ができないのがよろしくないなぁ!
カンダ
噛みちぎる位置がちょっと浅かったんじゃない?ひっこぬく代わりにするんならもっと根本からさぁ!
ツグハ
「私刑ってもっと面白いからみんなやってんのかと思ったのに」
カンダ
公刑はもっとつまらないんですよ。聞こえてないだろうけど。
カンダ
それに、最後のキスが一回だけっていうのも味気ないでしょ?
カンダ
インクが弾けて、その勢いで蹲っていた身体が弾んで。
カンダ
口を無理矢理に開かせて、唇を割り入れて、瞳を見る。
カンダ
もう一度、今度はちゃんと根本までやってくれる?
ツグハ
黒い結晶を伴った茨は、千切り損ねた舌の根本をもう一度締め上げて、
ツグハ
当の相手は、その間ずっと、つまらなそうの顔のまま。
ツグハ
指の一つも動かさず、宙を見るような瞳でそれを眼差している。
カンダ
今度は息が詰まらない。詰まる程もう残ってない。
[ ツグハ ] アリスの証言 : 0 → 1
カンダ
人の舌を噛みちぎるって大した事だぜ。
どこの教科書にだって、そんなことしていいですよとは書いてない。
[ カンダ ] 絶望 : 0 → -1
ツグハ
「じゃあ、諸々のぶんの清算を済ませた事だし」
ツグハ
「スティブナイト前集合だっけ?あんたがちゃんと時間通りに来れるかわからないけど」
ツグハ
返事には期待していない。ただ自分の喋りたいようにだけ喋っている。
ツグハ
「どうやって時間潰そうかな。こんなとこあと一秒だって長居したくないんだけど」
カンダ
君と別行動できるって事も、嬉しい事のように感じてきたよ。
不思議だね。
カンダ
それじゃそろそろ行くよ。また後でスティブ前ね。
カンダ
……そういえばこの状態なら、何でも言いたい放題なんじゃない?
ツグハ
なんかムカついたのでその背を蹴りつけておいた。
ツグハ
そうして、カンダの行く先とは反対方向へと足を進める。
カンダ
こちらもまた別方向へ。点々と血を垂らしながら進んでいく。
GM
*状態〈絶望〉〈絶望侵蝕〉中のため、抉る疵の指定はPKが行います。
GM
*エンフォーサーの「超越性」を抉ってください。
カンダ
2d6 (2D6) > 11[5,6] > 11
GM
5 開けた場所。巨大な黒結晶のクラスターがある。長い時間をかけて大きくなったようだ。この辺りが救世主の居住地だろうか?
GM
6 気付けば、あなたの周囲には誰もいない。いつの間にかはぐれたか、それとも救世主が見せる幻覚だろうか?
エンフォーサー
じゃり、じゃり、と重い足取りに似つかわしい音を立てながら歩く。
エンフォーサー
足を止め、天を仰ぐ。そこに何を探すでも無く……
エンフォーサー
一歩進むごとにこうして歩いていることが嫌になって、開けた場所でとうとうぼんやりと足を止めている。
カンダ
足を止めたその場所は、ネオンカラーのインクに塗れている。
カンダ
あちらも、こちらも、下品で低俗な落書きだらけ。
エンフォーサー
インクの水音がするわけでもない。ただただ静かな風景だけがエンフォーサーには見えていた。
エンフォーサー
先程見捨てたカンダが何を書いているか、何を思ったかなんて何もわかりはしない。
エンフォーサー
もう分かるつもりもないのかもしれないけど。
カンダ
それはつまり、まだ一片の正気が残っているということ。
カンダ
甲高く乾いた銃声が二つ、結晶の間を反響する。
カンダ
幻覚でもなんでもない、実体としてある鉛玉が立ち止まったままの両膝へ飛ぶ。
エンフォーサー
膝を撃ち抜かれ、その場に崩れ、黒結晶に手を着きながら伏せる。
カンダ
銃弾を追いかけるように飛び出す姿は、お前の見知ったもの。
エンフォーサー
あなたのインクでギラギラとした身体は見えずとも、仲間を撃つ救世主なんていうのはイカれているとしか言いようがない。
エンフォーサー
その合間にも膝を修復し、立とうとする。
カンダ
飛び出し、駆け寄った勢いのまま。全体重と救世主としての力の乗った前蹴り。
エンフォーサー
顎に衝撃が走り、唇が歯にぶつかって裂け、鼻を折る脚の一撃が通っていく。血が飛び散る。
カンダ
ちゃんと喋りたくても、今ちょっと難しくってさぁ!
エンフォーサー
反動で仰け反った身体が、その反動で黒結晶の上に顔面を落とす。
エンフォーサー
遠ざけきれない痛みが、救世主の力を喚び起こす。肉体を修復する。
エンフォーサー
ぐじゃ、と骨と肉と黒結晶のぶつかる音が響いた。
カンダ
つま先ではなく踵で、まっすぐと体重の乗った、踏むことではなく踏み潰す事を目的とした動き。
エンフォーサー
絶望が傷口からぞっと入り込んで、その怖気と痛みにジタバタと悶える。
カンダ
結晶と肉を混ぜるように。
傷が治る度繰り返し、治らぬ疵になるように。
エンフォーサー
痛みを噛み潰して噛み潰して、堪えきれないうめき声。
カンダ
踏んで。踏んで。踏んで。最後に蹴り飛ばして転がす。
エンフォーサー
痛みの嵐の中で頭の中はもっとぐちゃぐちゃだった。
カンダ
はは、ひでぇツラ。でもまだ始まったばかりだぜ。
カンダ
なぁ、さっき私は待ってって言ったよな。
お前は聞かずに行ったよな。
エンフォーサー
仲間だった奴に殴られる理不尽と、次の痛みへの予測と、対処法への思考と。脳の各所がそれらへの思考リソースを要求する。
エンフォーサー
げぼ、と濁った音を立てて地面を転がる。
カンダ
拘束しておくのが楽かなぁ、ツグハ先生を見習っておこう。
エンフォーサー
鼻から回った血か、それとも内臓のどこかの損傷か。とにかくそれらの血が押し出された息と共に吐き散らかされる。
カンダ
”こうなる”前からいつも携えていたもの……手錠を取り出し、その手にかける。
カンダ
あとは……コイツ何か丁度いいもの持ってないかな。
カンダ
遠慮もなく、転がるエンフォーサーの懐を探る。
エンフォーサー
昔自分が誰かに掛けたもの。暴れる死刑囚に掛けたことのある感触。
カンダ
そうして手に探り当てたのは、黒い布袋。
ちょうど人の頭がすっぽり覆えるサイズのもの。
エンフォーサー
なぜそれが今、出てくるのかと言えば。
エンフォーサー
自分がカンダを見るたびに思い出させられる過去の残滓だからだ。
エンフォーサー
本当にお前は、本当にお前は迷惑なやつだ。
カンダ
その布袋にどんな思いがあり、どんな疵からそれがあったのか。
そんな事は知る由もない。
エンフォーサー
俺の捨てたものを後生大事に持ちやがって。
カンダ
だから何の遠慮もなく、それをエンフォーサーの頭に被せる事ができる。
エンフォーサー
このように、布袋を被せられた人間を見る仕事をしていた。
エンフォーサー
もっとも今は被せられる側なんだが。
カンダ
あぁ、そうか。この布袋ってもしかしてアレか?
エンフォーサー
エンフォーサーの首元にはちょうどいい首輪がある。
カンダ
さっきのを一本持ってきたんだよ。
持ってきたっていうか、絡まったまま引きずってきたんだけど。
カンダ
救世主製の丈夫な蔦だ、一人分の体重くらいは余裕だね。
カンダ
蔦の片方をその辺の木の枝に引っ掛けて、準備万端だ。
エンフォーサー
この袋を被せられた者は、首を吊られる。そういうふうになっている。
エンフォーサー
死刑囚が何を思って吊られていくのかを、考える事を止めるようになったのはいつからだったか。
エンフォーサー
とっくに死んでいたような男の身体は、蔦にひっぱられてあっさりと絞首刑の準備を整えられる。
エンフォーサー
暴れる者を、落ち着く者を、ただ泣いている者を見た。
カンダ
布袋の真ん中あたりに、口づけするくらいに口を寄せてささやく。
カンダ
そして素敵な幻聴が聞こえるような物質を脳にひとふり。
カンダ
ちょっと声の響きが神聖っぽくなりすぎちゃったかな?
エンフォーサー
死刑執行までの日々で、最後の言葉を考えたりするんだろうか。彼らは。
カンダ
そりゃ勿論、素敵な仲間に対してどれだけ申し訳なく思ってるかとか……
カンダ
あぁいや、ダメだな。さっきの配合じゃあ……
カンダ
”こいつの聴きたい言葉”しか聞こえないだろう。
カンダ
上手く聞き取れなかったかもしれないが、きっとそれは。
エンフォーサー
あの時の自分は、それなりに正しい事をしていると思っていた。
エンフォーサー
それはこの世界に来てからもそうで、正しいことをしようと。
エンフォーサー
ああ、もうめんどくせえなあ。いい子ちゃんぶってすいませんでした、とか言えばいいか?
エンフォーサー
何人か首を吊るのを見送って、こっちでも救世主の首を吊ったりした。
エンフォーサー
でも俺はどっちも真面目にやってたんだぜ。
エンフォーサー
懺悔することなんて、ああ、そうだな。
エンフォーサー
でも一つにはまとめられないから、でもあえてまとめるなら。
エンフォーサー
生きててごめんなさい。あの時殺してごめんなさい。見捨ててごめんなさい。
エンフォーサー
言葉とは裏腹に、救世主のガワとしてのエンフォーサーの身体が暴れる。
カンダ
何にせよ、ずいぶん都合の良い事を聞いているんだろう。
カンダ
今のうちにせっせと足元に黒水晶を積み上げ、その上にエンフォーサーを乗せる。
エンフォーサー
もう救世主を止めてしまいたい、そう思ってとっくに絶望している心に逆らって、コインの力が、身体が、救世主であろうと首の縄を掴む。
カンダ
*エンフォーサーの「超越性」を猟奇で抉る。
[ ツグハ ] HP : 27 → 26
ツグハ
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 愛
ツグハ
2d6+4=>7 判定(+愛) (2D6+4>=7) > 12[6,6]+4 > 16 > 成功
ツグハ
*スペシャルの効果で女王のタルトを取得します。
[ ツグハ ] 女王のタルト : 0 → 1
カンダ
2d6+4-2=>7 判定(+猟奇) (2D6+4-2>=7) > 12[6,6]+4-2 > 14 > 成功
[ カンダ ] 眠り鼠のポット : 0 → 1
[ カンダ ] 最高のバター : 0 → 1
[ カンダ ] アリスの証言 : 0 → 1
[ エンフォーサー ] 超越性 : 0 → -1
カンダ
お前はもう、そのくらいじゃ死ねないんだよ。
エンフォーサー
本来であれば、落下の衝撃で首の骨が折れて死に至る。
エンフォーサー
しかし人間の身体の習性を残しているから、うっ血して頭が破裂するような心地になる。酸素を求めて肺が暴れる。
エンフォーサー
首吊り自殺に失敗している最中の人間のように、首の輪をがりがりと指先が引っ掻く。
エンフォーサー
死にたい。死んでしまいたい。ずっと前から。まだ死ねない。
カンダ
ゲタゲタと笑いながら見守る”仲間”は、勿論助ける様子はない。
カンダ
あぁ傑作だ!なぁエンフォーサー、お前そんなもの持ってたんだから知ってるよなぁ!
カンダ
死刑を実際に執行されて、それでも生き残った死刑囚はどうなる?
エンフォーサー
救世主という死刑囚は皆、全員、確実に死ななければならない。
エンフォーサー
刑が悪い。刑がぬるい。法に欠陥がある。
カンダ
法に欠陥は無い。(いや、いくらでもあるが……)
カンダ
だがお前のそれは、法のせいにするにはちと厳しい。
カンダ
お前、私にアレを投下させる時に言ったじゃないか。
エンフォーサー
そんなコト言ったかな。忘れてしまったよ。
エンフォーサー
でもまあ、救世主なんて化け物に、法はもったいないオモチャだってことがわかった。
エンフォーサー
この身体もそろそろそれをわかってくれるはずだ。
エンフォーサー
ぶらりと四肢を重力に任せて垂らし、きしきしと静かな音を立てながらぶら下がっている。
カンダ
まぁいいさ、気が済むまでぶらさがってな。
30分だっけ?それくらいぶら下げとく事になってんだろ。確実に殺すために。
エンフォーサー
カンダの声が聞こえるような気がするけど、頭の中がまだぐちゃぐちゃしていてよくわからない。カンダと話しているような気がするけどよくわからない。
カンダ
三日三晩吊るしても、お前は元気だと思うがね。
カンダ
あと、ちょっと重い女ひっかけちゃって。助けてくんない?
エンフォーサー
俺の知ってるカンダはもっと……なんだっけな……こんなだっけ?
カンダ
ちょっとゲームモードが変わったくらいかな。
カンダ
私またその辺ぶらついてるから。気が済んだら来いよ。
エンフォーサー
さっきはまあまあ動いてたぜ、なんて思ってももう伝わらない。
エンフォーサー
ずっと伝わらないでいたのかもしれないけど。
エンフォーサー
最初っから自分は誰かと分かり合うつもりなんてなかったから。まあこうなるのもやむなしか。
エンフォーサー
まあいいか、疲れたな。後少しだけ眠るか。
GM
*状態〈絶望〉〈絶望侵蝕〉中のため、抉る疵の指定はPKが行います。
GM
*ツグハの心の疵「花吐き乙女」を愛で抉ってください。
エンフォーサー
2d6 (2D6) > 8[3,5] > 8
GM
3 小屋。黒結晶に覆われていて、その重さで半分倒壊している。
GM
5 道に迷う。木々の向こうに人影が見える。あなたを見ているそれは幻? 本物? 一体誰?
エンフォーサー
黒結晶に侵された木の枝に、黒結晶の生えた蔦が一本ぶら下がっていた。
エンフォーサー
そこから暫く歩いて、小屋や小屋だったものがぽつぽつと点在する地点に──ぼんやりと佇む誰かがいる。
ツグハ
枝にぶら下がった蔦を見る。カンダに引っ付けた奴以外はそんな遠くにやってない筈だけどな。
ツグハ
ということはここらあたりでなんかに使われたか、そうでなけりゃ普通に面倒がって外したか。
エンフォーサー
ツグハが少し歩けば、黒い布袋が片隅に落ちている。
エンフォーサー
そこから更に歩けば、そこにいるのはエンフォーサー。
ツグハ
「エンフォー君も大概ズタボロに見えるけど」
エンフォーサー
「苦労して作ったガワだったんだがね、もう保たないよ」
エンフォーサー
「まあ、どうでもいいことだろう……」
ツグハ
「行く当てもなくこんな世界を放浪するなんてまっぴらごめんよ」
エンフォーサー
「誰かに使われていれば、考えることが減るからな」
エンフォーサー
「このまま帰って公爵家に救援を求めるのはどうだ」
エンフォーサー
「このままであれに勝つ自信があるのかい」
ツグハ
「爆弾どころか、爆撃機だってもうどこかに堕ちていそうなのに」
エンフォーサー
「とっくにもうどこにもないだろう」
エンフォーサー
「スティブナイトの事はまあ、頑張ってくれ」
エンフォーサー
「そういえばツグハ君は会ったか?あれに」
エンフォーサー
「そんなことが分かるぐらい近くに?随分と余裕があったんだな……」
エンフォーサー
「ふうん……ツグハ君の好きそうなガキだったから、てっきり」
エンフォーサー
「まあ俺はそのガキに目をやられたんだがね、ハハハ」
ツグハ
「エンフォー君は降りた後で行く当てはあんの?」
エンフォーサー
「ツグハ君は使いっ走りの人生で満足かい?」
エンフォーサー
「『救世主様!私達のために死んでくれてありがとうございます!』なんてクソみたいな空に向かって泣かれる事?」
エンフォーサー
「いい救世主がいたんだって49日ぐらい話題になって、その後誰からも忘れられること?」
エンフォーサー
「末裔なんぞに媚びたって、そんなもんだぞ」
ツグハ
「それこそ本物の救世主でもなければ無いんだから」
エンフォーサー
「そのためなら別に死んでもいいと」
エンフォーサー
「つまり君は献身がしたいと。愛のために」
エンフォーサー
「命や身を賭してまで愛が欲しい?」
エンフォーサー
「いやあ~ツグハ君の献身は、並大抵の愛じゃあ見返りにならないだろうねえ」
エンフォーサー
「あっそうだ!どうせならスティブナイトでも愛してみたら?」
エンフォーサー
「救世主は救世主同士!うまくいくんじゃね~の?」
エンフォーサー
「30日の期限をさ、2人でやりくりするんだ。必死んなってこの国を駆け回って……」
エンフォーサー
「末裔なんぞから貰えるリスペクトなんてそれに比べたら……」
エンフォーサー
「それこそ本当に、愛で何も考えなくてよくなるんだ」
ツグハ
「ま、スティブナイトはここを離れることは無いだろうし」
ツグハ
「…………だから結局は公爵家に擦り寄るしかないのさ」
エンフォーサー
「すぐ死んで新しくなる彼らの愛でいいんだね」
ツグハ
「この世に永劫不滅のものなんてないんだし」
エンフォーサー
「いいんじゃない、は無いだろう。自分のことなのに」
エンフォーサー
本当はもっと、しっかりとした何かが欲しくなったりはしないのか?
エンフォーサー
もう少し確かめやすくて、もう少しだけ自分に優しいものを。
エンフォーサー
でもただ愛されたいお前は、誰かを愛せるのか?
エンフォーサー
そんなもの、愛ではなくて、ただ双方向にやり取りしている"商い"だ。
エンフォーサー
献身だのなんだの取り繕っていても、お前はただ寂しいんじゃないか?
エンフォーサー
「元の世界でもまことの愛を探して人は苦労してるっていうのに」
エンフォーサー
「アイツラの愛でいいっていうんだから」
エンフォーサー
*ツグハの『花吐き乙女』を愛で抉ります クエスト5挑戦
エンフォーサー
2d6+4=>7 判定(+愛) (2D6+4>=7) > 11[6,5]+4 > 15 > 成功
[ ツグハ ] 花吐き乙女 : 0 → -1
ツグハ
だって、他に愛し合う方法なんて知らないんだよ。
ツグハ
誰かに必要とされるのを、愛されてるって思う事、なんか間違ってるのか?それ。
エンフォーサー
いいんじゃないの、君がそれでよければね。
ツグハ
己の権威を知らしめるための下僕みたいな扱いだって。
ツグハ
誰かの代わりに殴られるための身代わりの身分になったって。
ツグハ
まあ、法の神様曰くの児童虐待とかいう名分で、そんな愛とも引き離されちゃったんだけど。
ツグハ
『誰からも要らない子』にされるのって、すごく寂しいんだぜ。知ってた?
ツグハ
だから、花吐き病なんてのに罹るくらいに、愛なんてもんを追い求めてさ。
ツグハ
花吐き病って、片思いを拗らせた奴が罹る病気なんだってさ。
ツグハ
そうそう、この花は恋に恋するとか、愛に愛するとか、そういう奴の末路なんだよ。
エンフォーサー
この女はずっと愛に片思いをしているんだな。
ツグハ
だって、今一番近くに居るの、あんただもん。
エンフォーサー
例えばこのひととき。ツグハ君を本気で愛してみようか?
エンフォーサー
仲間のよしみで。ずっとしなかったことを。
エンフォーサー
この黒水晶に囲まれた森でできることなら、そこそこに。
エンフォーサー
でもツグハ君は女の方がいいだろ~?
ツグハ
男の人が何されて喜ぶのかとか、知らないだけだし。
エンフォーサー
別にいいさ。何ならたまには奉仕されてみるのもきっと楽しいぜ。
エンフォーサー
両腕をそっと広げて、ツグハの身体を抱き締める。
エンフォーサー
「ツグハ君は、きっと誰からでも頼りにしてもらえるさ」
エンフォーサー
「スティブナイトを倒したら、どんな末裔も君を放っておかない」
エンフォーサー
「この世から針がなくなるまで飲んでもいいよ」
エンフォーサー
「そうかな、正直に話してるつもりだぜ。本当に」
エンフォーサー
「今まではずっと、つまらない男だったろうからね俺は」
エンフォーサー
「まあこの森のせいでさ、体面も何も取り繕え無くなっちまったから、言いたいことを言うこととしよう」
エンフォーサー
「スティブナイトもそのぐらいは待ってくれるさ」
エンフォーサー
そうしてから暫く、エンフォーサーだった男はツグハに、今までの思い出を交えながら愛を囁いた。
エンフォーサー
エンフォーサーが忘れたと思っていた事も、この男が覚えていた。
エンフォーサー
そうして、自分や末裔たちは、ツグハを必要とし、愛するんだと囁いた。
エンフォーサー
あなたよりずっと前に誰かを愛して、別れて、今もまた。
カンダ 舞台裏
カンダ
ハミングしながらその辺の黒水晶に卑猥な落書きをしている。
カンダ
そういや同じ黒水晶使えば、黒水晶に彫刻できるのかな。
カンダ
お、いける じゃあこう……丸二つに棒一つ……
カンダ
うーむ。芸術的な出来だな。 銘も彫っておこう。
カンダ
子供が書いたような、ひどくデフォルメされた人形。
カンダ
花に飾られたものが一人。
目元に布をかぶせたものが一人。
本を手に持ったものが一人。
GM
ここに。この先に。愛があるというのだろうか?