お茶会2

GM
*お茶会MOD『錯綜』
GM
行動順を1d99で。
エンフォーサー
1d99 (1D99) > 31
ツグハ
1d99 (1D99) > 99
カンダ
1d99 (1D99) > 46
GM
*PK割り込み3
GM
2d6 (2D6) > 7[6,1] > 7
GM
6 黒結晶が舞っている。避けないならば、ぶつかってあなたを傷付けようとしてくる。
GM
1 黒結晶に覆われた死体を見つける。死体は干からび、表情は絶望に満ちている。
GM
お前たちふたりが仲良く名前を呼んだもうひとり。
GM
見当たらなくて、それで?
GM
今はどこ?
エンフォーサー
森の深くにひとり。
エンフォーサー
もはや仲間の一人もなく、空も見えず、救世主であると認識する他者の影もなく。
エンフォーサー
それでも自分は救世主の見た目をしているのだから、こうしてスティブナイトを目指して歩いている。
スティブナイト
身を隠すことすらできなくなっていた。
スティブナイト
だからお前が目指せばその先に、それはいた。
スティブナイト
「まだ迷子?」
スティブナイト
「お前が歩いている間に、向こうは随分と楽しいことになってるみたいだ」
エンフォーサー
「帰り道がわからなくてね」
エンフォーサー
「それはカンダ?ああ、カンダってのはうるさいほうね……」
エンフォーサー
「ツグハが、そうか。カンダにやられたか」
スティブナイト
「……へえ?」
スティブナイト
「帰るつもりなんだ」
エンフォーサー
「勝てる戦力ではなくなったからね」
エンフォーサー
「帰りたいのが正直な気持ちだよ」
スティブナイト
「賢明な判断なんじゃない?」
エンフォーサー
「ところで君は、随分と……」
エンフォーサー
「幼児退行?」
エンフォーサー
「そんなだったかな」
エンフォーサー
「正体不明と言われていたが、女であるように見える」
スティブナイト
「元からこうだよ」
スティブナイト
「誰も現実を見てないだけで」
エンフォーサー
「現実?ふふ。それは君もってことかな」
エンフォーサー
「もうちょっと声も違ったような気がするし」
エンフォーサー
「あれが君の理想かい」
スティブナイト
「…………」
スティブナイト
「うん」
エンフォーサー
「その姿を隠したかったんだね」
エンフォーサー
「まあ、見た目に関しては私も人のことを言えた義理ではないが」
スティブナイト
「このまま帰るつもり?」
スティブナイト
「あんまり報告されたくないな」
エンフォーサー
「帰してくれるならね」
エンフォーサー
「報告を求められたらするよ」
エンフォーサー
「もともとそういう契約でここに来て、今まで援助を貰っているわけだからね」
エンフォーサー
「あれだけの兎を使っておいて、収穫はありませんでしたなんて報告はちょっとね」
エンフォーサー
「世に期待される救世主としてはちょっと、だろ?」
スティブナイト
「すごい組織だよね、公爵家も」
エンフォーサー
「同じ末裔のくせにああも使い捨てられるとはね~。いくら三月兎が増えやすいとは言え」
スティブナイト
「まあ、おかげでこのざまだけどね」
エンフォーサー
「効果があってよかったよ」
エンフォーサー
「もうひと押しぐらいすれば倒れたりしてくれないかな」
スティブナイト
「やってみる?」
エンフォーサー
手に集まる光が剣を成す。
スティブナイト
伸ばした手に黒結晶をまとう。
スティブナイト
じゃあ、こっちも剣にしてしまおう。
スティブナイト
同じ形で勝敗を決めたら、嫌でもわかるだろ?
エンフォーサー
陰湿だな~!
エンフォーサー
足元の黒結晶を踏み散らし、50コインの救世主らしい速度で肉薄して斬りつける。
スティブナイト
黒結晶が壁になる。高い音を立てて、それを弾く。
エンフォーサー
「便利すぎないか?」
スティブナイト
足元を踏みしめて。砕いて跳ねた黒結晶を大きく育てる。
スティブナイト
「これしかなかったから」
エンフォーサー
そう言いながら振った二の太刀も弾かれる。
スティブナイト
コインの枚数はお前と比べて10枚多い。
スティブナイト
それに、防御を全て捨てて、攻撃に賭けている。
エンフォーサー
「自分の身体のように扱って……いや、そういうものが君の本質なのかな」
エンフォーサー
一方こちらの力は。
エンフォーサー
受けた衣装が千切れ、遅れて再生する。
エンフォーサー
自分の身を押し込める鎧を何度でも精製して、その身を固める。
エンフォーサー
けどもまあ、限度がある。
スティブナイト
盾にして、剣にして。
スティブナイト
それはただの「真似事」であり、
スティブナイト
けれどお前よりずっと早く、強い。
エンフォーサー
純粋な力で上回られる、押し込まれる。傷がつく。
スティブナイト
剣がお前の腹を貫いた。
エンフォーサー
「…………!」
スティブナイト
そのまま黒結晶を育てて、持ち上げる。
スティブナイト
お前の足が地面を離れて、宙に浮く。
スティブナイト
体重のすべてが傷口にかかる。
エンフォーサー
「ぐ、あ……っ」
エンフォーサー
肉が裂ける痛み。皮膚が、筋繊維が、修繕した端からみちみちと音を立てる。
スティブナイト
「まだ喋れる?」
エンフォーサー
「お望みならね」
スティブナイト
そう言う間にも、ひとつ、ふたつ、結晶が刺さる。
エンフォーサー
苦悶の表情に無理やり浮かべた笑みがまた歪む。
スティブナイト
「まだ正気?」
スティブナイト
「そうじゃなくなったら言ってね」
エンフォーサー
「救世主なんて、もともとどいつもこいつも」
エンフォーサー
イカれてる、という文句はうめき声に変わる。
エンフォーサー
「くそ……」
スティブナイト
「狂ってる」
スティブナイト
「そうだろ?」
エンフォーサー
「そうさ」
エンフォーサー
「救世主だけじゃない」
エンフォーサー
「この世全部、……」
エンフォーサー
そういう事を口にすると、思い浮かぶものがある。
エンフォーサー
じゃあどうして、こんなことをしているの、というごくシンプルなもの。
エンフォーサー
こんな痛みを受けてまで、この世は守りたいものだったか。
エンフォーサー
知らない世界。狂ったルール。力のないくせに頼ることだけは一丁前な末裔たち!
スティブナイト
「それについては同感」
スティブナイト
「だからここにいる」
エンフォーサー
自分は、これらのどれにも価値を見い出せていない。
スティブナイト
「全部を敵に回して、なにもかもを傷付けて、来るものすべてを殺して」
エンフォーサー
「意味はあったか?」
スティブナイト
「いいや」
エンフォーサー
「そうだろうね」
スティブナイト
「意味のあることなんか、この世にはないよ」
スティブナイト
「死ぬまでの暇つぶし」
エンフォーサー
「知っていた」
スティブナイト
「あるいは、まあ」
スティブナイト
手を伸ばす。
スティブナイト
お前の右目の、黒結晶の生えたところに。
スティブナイト
そしてそれに触れれば、それは意のままに。
スティブナイト
痛覚と絶望がお前の全身に走る。
エンフォーサー
息を呑んだ。
エンフォーサー
抑えきれない苦しみと痛みと、押し込んでいた絶望が。
スティブナイト
成長して、恐らくお前の脳があるほうへ、結晶の先端が伸びていく、のが。
エンフォーサー
頭蓋を軋ませながら広がっていく。
スティブナイト
今のお前にならわかる。
スティブナイト
頭の中を傷付け、肉を切り裂いて、脳を掻き回して。
エンフォーサー
こうやって大声を出したのはいつ以来だったか。
スティブナイト
それはお前の頭の中で育っていく。
エンフォーサー
鉄壁の衣装の奥にあった何かがずっと前に感じていた痛み。
エンフォーサー
新鮮な苦痛。死への恐怖。理不尽への怒り。
スティブナイト
「こうして、力を振るって、苦しんでる顔を見たら」
スティブナイト
「多少は無力感も紛れるのかもね」
スティブナイト
「さあ、どうしようか?」
エンフォーサー
骨が黒結晶に押しのけられて、歪み、ひび割れて、肉が裂けて新しい血痕を地面に残す。
スティブナイト
その結晶を掴んだ。
エンフォーサー
「が」
スティブナイト
「今から」
エンフォーサー
直に神経に触れられる痛み。
スティブナイト
「どうすると思う?」
エンフォーサー
無事な方の目が見開かれて、スティブナイトを見た。
スティブナイト
「想像できる?」
スティブナイト
「今、この結晶が」
スティブナイト
「お前のどこまで入ってると思う?」
エンフォーサー
脳のどこかまで。
エンフォーサー
腕ぐらいなら、腸ぐらいなら、いくらでも再生したことがある。脳はどこまで再生できる?
スティブナイト
「一気に抜いたら痛いかも」
スティブナイト
「でも、このままだと」
スティブナイト
「侵蝕されちゃうね」
スティブナイト
「どうしよっか?」
エンフォーサー
「優しく抜くのを、手伝ってくれるなんてのは?」
スティブナイト
「俺、全然握力なくて」
スティブナイト
「見た目通りでしょ?」
エンフォーサー
この距離で剣を振れば当たるのに、何もできない。
エンフォーサー
「救世主は、見た目通りとは限らないだろう」
エンフォーサー
ぼんやりと言いながら、服の合間からも血が漏れる。
スティブナイト
「うん」
スティブナイト
「縛られてるのは俺だ」
スティブナイト
「だから」
スティブナイト
指が黒結晶をなぞって、瞬間。
スティブナイト
黒結晶の塊が、粉々になる。
スティブナイト
そうしたらどうなると思う?
エンフォーサー
ひときわ大きくて、けれどカンダには及ばない大声が出る。
エンフォーサー
目が弾け、神経を裂き、脳の奥まで絶望のかけらが刺さって壊す。
エンフォーサー
目を押さえながら苦悶の悲鳴を上げて黒結晶の上をのたうちまわる。
スティブナイト
破片がいくつも刺さって、転がる度に深くめり込んでいく。
エンフォーサー
救世主の身体が、力が、その身を癒やすのを、制御できなくなった肉体の反応が傷つけていく。
エンフォーサー
「ぐ、う」
エンフォーサー
目はまだ開かない。
スティブナイト
「転がったら痛いよね」
スティブナイト
「じゃあ転がれなくしよう」
エンフォーサー
黒結晶に手をついて、また裂ける。血と絶望が流れていく。
エンフォーサー
「ふざ、け」
スティブナイト
身体の下の黒結晶が伸びて、足と胴を縫い留める。
エンフォーサー
疵の力が笑顔を作って、疵が悲鳴を上げる。
スティブナイト
貫いて、さらに太さを増して。
スティブナイト
鈍い音がする。
スティブナイト
骨が折れた音。
エンフォーサー
コインの力で逃げ切れない痛み。
スティブナイト
こんな静寂の中だから、よく聞こえる。
エンフォーサー
もう嫌だ。もう痛い思いをしたくない。抑え込めない思いが溢れ出る。
エンフォーサー
クソったれが、なんで俺がこんな目に。
エンフォーサー
もう嫌だ、こんなのは。
エンフォーサー
誰か助けてくれ。
エンフォーサー
誰が助けてくれるっていうんだ。
スティブナイト
救世主はこの国を助けるためにいる。
スティブナイト
じゃあ、お前のことは?
エンフォーサー
「クソ、クソ……」
スティブナイト
一体誰が助けてくれるって?
エンフォーサー
誰も助けない。
スティブナイト
あのふたり、どこにいったんだろうね?
エンフォーサー
あの、ふたりは。
スティブナイト
*エンフォーサーの心の疵「心」を猟奇で抉る。
カンダ
*横槍を
カンダ
しませーん。
エンフォーサー
*お前はカス
カンダ
*鏡見て言いな!
エンフォーサー
*ギャハハ
スティブナイト
*じゃあ振るね
スティブナイト
2d6+5=>7 判定(+猟奇) (2D6+5>=7) > 4[1,3]+5 > 9 > 成功
[ エンフォーサー ] 心 : -1 → -2
[ エンフォーサー ] 絶望侵蝕 : -1 → -2
[ エンフォーサー ] 前科 : 5 → 5
[ エンフォーサー ] 絶望 : -1 → -1
エンフォーサー
絶望に堕ちてわかる。
エンフォーサー
もうカンダもツグハもダメだ。
エンフォーサー
俺も。
エンフォーサー
もう嫌だ、救世主も、この国も、弱いあいつも、弱い自分も!
エンフォーサー
公爵家も、この森も、全部が憎い。
エンフォーサー
顔を上げた先にいる、女も。
エンフォーサー
黒い血を零しながら立ち上がる。
エンフォーサー
その手に集まる力も、もはや外面を保てない。
エンフォーサー
隙だらけの、ただの暴力。
スティブナイト
それは容易に黒結晶によって弾かれる。
スティブナイト
「…………」
スティブナイト
「まあ」
スティブナイト
「わかるけど」
エンフォーサー
弾かれて、くだけて、破片がまた身を裂いた。
スティブナイト
その手を結晶が貫く。
エンフォーサー
その衝撃だけで吹き飛んで、地面を転がった。
スティブナイト
その回転を止めるように、あるいは勢いを利用して深く貫くように、黒結晶が先に生えて、お前を待ち構えていた。
エンフォーサー
暫く、動かなかった。
エンフォーサー
その身体の腕も足もあらぬ方向に曲がり、白い髪はもはや赤い髪と言えるほどに血まみれで。
エンフォーサー
息があるのが不思議なほどで、鳥のようなマントだけが血溜まりに浮かぶ島のように白くある。
スティブナイト
「もういい?」
エンフォーサー
答えはない。
エンフォーサー
深い絶望の中にいる。
スティブナイト
「もう、どうでもよくなった?」
スティブナイト
「そうだね」
スティブナイト
「俺もだよ」
エンフォーサー
全部どうでもいい。ずっとどうでもよかった。
スティブナイト
それが今、わかっただけ。
スティブナイト
絶望ははじめからお前の中にあった。
エンフォーサー
思い出しただけ。
エンフォーサー
エンフォーサーなんて名前になる前に絶望していた。
スティブナイト
紛らわせてただけ。
スティブナイト
そういう紛らわせられる能力の名前を、愛って呼ぶんだっけ?
スティブナイト
そんなもの。
エンフォーサー
これが愛って言うのなら。
エンフォーサー
そんなもの。
スティブナイト
どこにあるんだろうね。
エンフォーサー
どこにもなくていい。
エンフォーサー
きっとこの森にいる誰にも見つけられないものだ。
エンフォーサー
この森は、そういうところ。
エンフォーサー
愛を塗りつぶす絶望に塗れた森。
スティブナイト
それをしばらく見つめてから、踵を返して去っていく。
エンフォーサー
……
エンフォーサー
暫くして、ゆっくりながらもその身体を修復した。
エンフォーサー
糸の繋がった人形のように、不器用に立ち上がる。
エンフォーサー
水晶の飾りをたっぷりつけたエンフォーサーが立ち上がって、一人歩き出す。
エンフォーサー
水晶のいくつかは歩くうちに落ちて、いくつかはその身体に飲み込まれていった。
エンフォーサー
その足取りはどこに向かうのか、今はまだ、本人にすらわからない。
エンフォーサー
森の奥に消えていく。
スティブナイト
ここがなんて呼ばれてるか、知ってる?
スティブナイト
GM
GM
*ラウンド2 ツグハ
GM
*状態〈絶望〉中のため、「心の疵を抉る」以外の行動ができなくなります。
ツグハ
2d6 (2D6) > 11[5,6] > 11
GM
5 開けた場所。巨大な黒結晶のクラスターがある。長い時間をかけて大きくなったようだ。この辺りが救世主の居住地だろうか?
GM
6 気付けば、あなたの周囲には誰もいない。いつの間にかはぐれたか、それとも救世主が見せる幻覚だろうか?
カンダ
さて。
カンダ
とりあえず近くにいたツグハに手を出して、一通りの気は済んだ。
カンダ
次はエンフォーサーを探しに行こう。ツグハが見かけなかったというなら、逆方向か?
カンダ
インクを浮かばせ、気配を探る。
先程まで隣にいた者への注意なんておざなりにして。
ツグハ
「なあに?もう満足?」
ツグハ
それを妨げるように声をかける。
カンダ
「君もおかわりはいいって言ってたじゃん?」
ツグハ
「ま、言ったけど」
ツグハ
「まだ“休息”し足りないわけ?」
カンダ
「いやぁ、とりあえずは満足したかな。だがエンフォーサーには、付けなきゃいけないオトシマエがある」
ツグハ
「へ~え~」
ツグハ
「じゃ、そそのかしたのエンフォー君のほうなんだ」
ツグハ
「てっきりスティブナイトかと思ってたけど」
ツグハ
「そりゃそうか。あいつ五月蠅いの苦手だもんな」
カンダ
「あれっきり、私の前にゃ一回も顔出しやしなかったね。最終的には引きずりだすけどさ」
ツグハ
「カンダも五月蠅いもんねえ」
カンダ
「今はそうでもないだろ?」
ツグハ
「色使いが五月蠅いよ」
カンダ
「似合ってるっしょ」
カンダ
「ちなみにこのインク、こうなってる奴にしか見えないんだぜ」
カンダ
頭の横で指をくるくる。
ツグハ
「誰のせいでこうなったと思ってんだよ」
ツグハ
「あんたにとってはエンフォー君のせいか」
カンダ
「責任転嫁したい時はエンフォ野郎のせいにして、実績にしたい時は私のせいにする!」
ツグハ
「公務員の鑑だね」
カンダ
「たらい回されたい時は何時でも言ってね!」
カンダ
「……そういう訳で、ここから個別行動って事でどう?」
ツグハ
「せっかく数刻ぶりに会えたのに?」
ツグハ
「まあ私はエンフォー君はどうでもいいんだけど」
ツグハ
「私がたらい回したい時はどうすればいいのさ」
カンダ
「公務員になる」
カンダ
「或いは、スティブナイト前集合とか?」
ツグハ
「今すぐに回したいんだけど」
ツグハ
「罪状は、連続殺人とか、麻薬使用とか器物損壊とか」
ツグハ
「ヤり捨てってなんだっけ?強姦罪?」
ツグハ
「まあいいか、適当で」
カンダ
「……逃走罪も足していい?」
カンダ
一歩下がり、ぱきりと足元の黒水晶が鳴る。
ツグハ
「これ以上罪を重ねる前に出頭すべきじゃない?」
ツグハ
「あんたの父母兄弟は国賊となるので皆泣いておるぞ」
ツグハ
茨が這う。ツグハの足元から、カンダを囲うようにしゅるしゅると。
ツグハ
その蔓は棘に入り混じって、黒結晶の欠片がささくれたように突き上がっている。
カンダ
「父母兄弟ならもう一生分泣かしたさ」
カンダ
話しながらも視線を巡らせる。
こと逃げるという話になると、ツグハの──それも今の状態の──力は非常~に面倒だ。
カンダ
「ところで、一回ヤっただけで彼女面する女ってどう思う?」
ツグハ
「すっごくめんどくさい」
ツグハ
「でも、咎は受けなきゃあ」
カンダ
「私も同じ気持ちだな、前半分の方だけね!」
カンダ
この調子で囲われてはいよいよ逃げ場が無くなるだろう。
一か八か駆け出して、蔦の上を飛び越えようと跳ねる。
ツグハ
茨が追い縋る。
ツグハ
獣の往く道を塞ぐように、黒結晶交じりの茨がバリケードを構築していく。懸命に走るその背を追い立てながら。
ツグハ
*カンダの心の疵「絶望」を抉り、クエストNo.2に挑戦します。
カンダ
*エンフォーサー!横槍するなら今だぞ!
エンフォーサー
*よ、横槍を~~~!!!
エンフォーサー
*するわけね~~~~~w
カンダ
*クソオブザ野郎~~~!!
ツグハ
*どの口が言うんだコイツ?
エンフォーサー
*カスフォーサーと呼んでくれ
ツグハ
*じゃ振るね
カンダ
*はい……
ツグハ
*判定に使用する技能は愛。
ツグハ
2d6+4=>7 判定(+愛) (2D6+4>=7) > 9[5,4]+4 > 13 > 成功
GM
*クエスト2も成功ですね。
GM
*宝物を1つ選んでください。
ツグハ
*アリスの証言を取得します。
ツグハ
かつて救世主と呼ばれた男は、救いを求る人々を祝福し、教えを残した。
ツグハ
“貧しい者。悲しむ者。柔和な者。義を求める者。憐れみ深き者。心清き者。平和を作る者”。
ツグハ
“義のために迫害される者”。
ツグハ
“彼らは幸いである。天国は彼らのものである故に。”
ツグハ
じゃあ、義のために迫害を成した奴は?
ツグハ
地獄に堕ちるんだよ。
ツグハ
決まってんだろ?
ツグハ
──茨は過たずカンダの行く先を覆い尽くした。
カンダ
足が止まる。
カンダ
普通の茨ならいざ知らず、この茨に混じっているのは黒結晶。有刺鉄線よりもタチが悪い。
ツグハ
「ばっかだなぁ~」
ツグハ
「法ってのはみんなで良い子ちゃんするためにあるもんでしょ?」
ツグハ
「それを破って好き勝手する奴なんて」
ツグハ
「好き勝手やり返されたところで、文句を言うことすら許されないんだよ」
カンダ
「そうだねぇ」
カンダ
「みんな普段は法なんて守ろうとしない、如何に掻い潜るかばっかり考えてるくせに」
カンダ
「破ったヤツに石投げる時だけ熱心なんだよな」
ツグハ
「ほんとうにね」
ツグハ
「“人を不義に定めてはいけない。そうすれば、貴方がたも不義に定められることはない”」
ツグハ
「ありがたい教えなのに、だあれも守っちゃいない」
ツグハ
「だから馬鹿らしくなるんだよね」
ツグハ
「わかるよ……なんて言ったら怒るかな?」
ツグハ
「まあ、答えはどっちでもいいけど」
カンダ
「君んとこの神様は、人に聞く耳を持てとは教えてくれなかった訳?」
ツグハ
「“聖なるものを犬にやるな”、とは教えてくれたよ」
ツグハ
「バカに付ける薬はないってことさ」
カンダ
「どんなバカでも、どうにかしようとするのが法の理念」
カンダ
「その点じゃ、神様より法のほうが懐が深いみたいだ」
カンダ
「君も見習ってみるつもりとか無い?」
ツグハ
「それ、本気で言ってる?」
カンダ
「私はいつだって冗談半分だよ」
カンダ
「つまり半分も本気だね!」
ツグハ
「あははァ~……」
ツグハ
「じゃあ、閻魔大王様に舌を抜いてもらわないとねえ」
ツグハ
「でも堕落の国で死んだ奴が、閻魔様に会えるかどうかわかんないしさ」
ツグハ
「私が代わりにやったげるよ」
ツグハ
歩みを進める。その間も茨は伸び続け、カンダの体を隙間無く覆い尽くして行くだろう。
カンダ
「ヤットコもないのにどうやって抜くって!?」
カンダ
逃げ場はずっと探し求めていたものの。
右、無し。
左、無し。
背後、無し。
カンダ
つまり選択肢は一つ、正面突破!
カンダ
身に纏わりつく茨を引っ張り、顔と顔とを近づける。
カンダ
あと一歩、ほんの一歩前に進めば、横をすり抜けて逃げ出せる。
カンダ
茨以外の何者にも捕まらなければの話。
ツグハ
希望はない?
ツグハ
世界に意味はない?
ツグハ
何も無いから、何処にも行けない?
ツグハ
馬鹿言うなよ。在るだろ、お前の行きつく先は。
ツグハ
死んだら全部チャラだなんて、虫が良すぎる話だよな?
ツグハ
相応しき罪には相応しき罰を。
ツグハ
道理だろ、執行官。
ツグハ
逃げ場は無い。
ツグハ
茨はその身にしかと絡み付き、大地から離れた脚をそのまま宙へと浮き上がらせて。
カンダ
「……っぎ……」
カンダ
結晶が食い込む。
カンダ
「はは、は……本気で言ってる?」
ツグハ
「私はいつでも程々に本気のつもりだよ」
カンダ
「ひゃ~」
カンダ
「舌を抜かれるのは嘘つきへの刑罰だったっけ!」
カンダ
「これ、どの嘘への罰?」
ツグハ
「面倒だから」
ツグハ
「これまでの合算にしよっか」
ツグハ
「多重債務で首が回らなくなるより良いでしょ」
カンダ
「いっぱいついたからなぁ!舌一枚で済むだけ温情ですね!」
ツグハ
「よかったねえ」
カンダ
「喋れるうちに一つだけ聞いておきたい事があるんだけど、いいかな!」
ツグハ
「なあに?」
カンダ
「……舌が無くなったヤツってどうやってキスすればいいと思う?」
ツグハ
「あはは」
ツグハ
「これを最期にすればいいと思うよ」
ツグハ
間も無く茨が顔を覆った。
ツグハ
擦れた黒結晶の欠片が歯茎に引っかかり、口を無理やりに開かせて、舌の根を締め上げる。
ツグハ
その口の中に、彼女は唇を差し込んで。
ツグハ
裏切者の舌を噛み千切った。
カンダ
インクのような色の血液が飛び散る。
カンダ
そう見えているのは、この2人だけかもしれないけれど。
ツグハ
「ぺ」
ツグハ
口の中に残った肉の塊を吐き出して、そのまま踵で踏み潰した。
カンダ
「わ゛」
カンダ
たしの舌、美味しい? なんて聞こうとしても声は出ず。
カンダ
ちぎれて丸まった舌が気道を塞ぐ。
カンダ
「あ゛、かふ゛、えっ!!」
ツグハ
「まず」
ツグハ
そう一言だけ呟いて、茨の中身を投げ捨てた。
カンダ
「お゛う゛ぉ、ふ゛う、 ふうっ!!」
カンダ
投げ捨てられ、転がり、這い蹲って、嘔吐く。
ツグハ
「はは」
ツグハ
「みっともな」
ツグハ
口元以外、欠片も笑っていない表情と声色で、その様を嘲る。
カンダ
わあ~、しゃべれないって素敵。
カンダ
でもついでに呼吸ができないのがよろしくないなぁ!
カンダ
噛みちぎる位置がちょっと浅かったんじゃない?ひっこぬく代わりにするんならもっと根本からさぁ!
ツグハ
「何言ってんのか全然わかんねえよ」
ツグハ
「は~あ」
ツグハ
「案外面白くないな」
ツグハ
「私刑ってもっと面白いからみんなやってんのかと思ったのに」
カンダ
公刑はもっとつまらないんですよ。聞こえてないだろうけど。
カンダ
ところでそろそろ呼吸がしたいな。
カンダ
それに、最後のキスが一回だけっていうのも味気ないでしょ?
カンダ
インクが弾けて、その勢いで蹲っていた身体が弾んで。
カンダ
つまらなさそうな顔へと手をのばす。
カンダ
口を無理矢理に開かせて、唇を割り入れて、瞳を見る。
カンダ
君が中途半端に千切るせいで大変なんだよ。
カンダ
もう一度、今度はちゃんと根本までやってくれる?
ツグハ
「最期って言ったじゃん」
ツグハ
口の中へ茨が延びる。
ツグハ
黒い結晶を伴った茨は、千切り損ねた舌の根本をもう一度締め上げて、
ツグハ
望み通りに千切って捨てた。
ツグハ
当の相手は、その間ずっと、つまらなそうの顔のまま。
カンダ
鮮血がもう一度滴る。
ツグハ
指の一つも動かさず、宙を見るような瞳でそれを眼差している。
カンダ
今度は息が詰まらない。詰まる程もう残ってない。
カンダ
なら、笑う事ができる。
カンダ
「ぶう、ぶ、う、ふふ、ははははは!」
カンダ
「……ばはは」
カンダ
つまらなさそうな顔してくれるじゃん。
[ ツグハ ] アリスの証言 : 0 → 1
カンダ
どうも不思議なんだよな。
カンダ
人の舌を噛みちぎるって大した事だぜ。
どこの教科書にだって、そんなことしていいですよとは書いてない。
カンダ
その目、もう怖いもんなんてないだろ。
カンダ
なのにどうして笑わないんだ?
[ カンダ ] 絶望 : 0 → -1
ツグハ
「は~あ」
ツグハ
「じゃあ、諸々のぶんの清算を済ませた事だし」
ツグハ
「当初の予定通り、別行動しよっか」
ツグハ
「スティブナイト前集合だっけ?あんたがちゃんと時間通りに来れるかわからないけど」
カンダ
やった~当初の予定だ。うれし~い。
ツグハ
返事には期待していない。ただ自分の喋りたいようにだけ喋っている。
ツグハ
「どうやって時間潰そうかな。こんなとこあと一秒だって長居したくないんだけど」
ツグハ
「まあ」「やりようはあるか……」
カンダ
私の六法全書貸してあげよっか?
カンダ
あっ血とインクだらけでもう読めねぇや。
カンダ
うふふ、面白いね。なんも喋れてないけど。
ツグハ
良かったね。楽しそうで。
ツグハ
口には出さず、眼だけでそう投げかける。
カンダ
エンフォーサーに会いに行けるからね。
カンダ
君と別行動できるって事も、嬉しい事のように感じてきたよ。
不思議だね。
カンダ
それじゃそろそろ行くよ。また後でスティブ前ね。
カンダ
……そういえばこの状態なら、何でも言いたい放題なんじゃない?
カンダ
あばよクソメンヘラ!ビッチ!
ツグハ
なんかムカついたのでその背を蹴りつけておいた。
カンダ
「いあい!」(痛い)
ツグハ
「懲りねえクソ野郎だなあ」
ツグハ
そうして、カンダの行く先とは反対方向へと足を進める。
カンダ
こちらもまた別方向へ。点々と血を垂らしながら進んでいく。
カンダ
いやぁ~
カンダ
仲間っていいもんですね。
GM
GM
*ラウンド2 カンダ
GM
*状態〈絶望〉〈絶望侵蝕〉中のため、抉る疵の指定はPKが行います。
GM
*エンフォーサーの「超越性」を抉ってください。
カンダ
2d6 (2D6) > 11[5,6] > 11
GM
5 開けた場所。巨大な黒結晶のクラスターがある。長い時間をかけて大きくなったようだ。この辺りが救世主の居住地だろうか?
GM
6 気付けば、あなたの周囲には誰もいない。いつの間にかはぐれたか、それとも救世主が見せる幻覚だろうか?
エンフォーサー
じゃり、じゃり、と重い足取りに似つかわしい音を立てながら歩く。
エンフォーサー
足を止め、天を仰ぐ。そこに何を探すでも無く……
エンフォーサー
一歩進むごとにこうして歩いていることが嫌になって、開けた場所でとうとうぼんやりと足を止めている。
カンダ
足を止めたその場所は、ネオンカラーのインクに塗れている。
カンダ
あちらも、こちらも、下品で低俗な落書きだらけ。
エンフォーサー
エンフォーサーには見えない。
カンダ
それを見るには資格が要る。
エンフォーサー
インクの水音がするわけでもない。ただただ静かな風景だけがエンフォーサーには見えていた。
エンフォーサー
先程見捨てたカンダが何を書いているか、何を思ったかなんて何もわかりはしない。
エンフォーサー
もう分かるつもりもないのかもしれないけど。
カンダ
それはつまり、まだ一片の正気が残っているということ。
カンダ
なんて可愛そうなんでしょう。
カンダ
今すぐ助けてあげなくちゃ!
カンダ
甲高く乾いた銃声が二つ、結晶の間を反響する。
エンフォーサー
「!」
カンダ
幻覚でもなんでもない、実体としてある鉛玉が立ち止まったままの両膝へ飛ぶ。
エンフォーサー
膝を撃ち抜かれ、その場に崩れ、黒結晶に手を着きながら伏せる。
カンダ
「えぇん、ふぉおお、あぁ!!」
カンダ
銃弾を追いかけるように飛び出す姿は、お前の見知ったもの。
カンダ
そうだろう?
エンフォーサー
「イカれたか」
エンフォーサー
あなたのインクでギラギラとした身体は見えずとも、仲間を撃つ救世主なんていうのはイカれているとしか言いようがない。
カンダ
「ゔぁはははうはは!」
カンダ
おかげさまでね!
エンフォーサー
「ちゃんと喋れよ」
エンフォーサー
その合間にも膝を修復し、立とうとする。
カンダ
その顔面を蹴り抜く。
カンダ
飛び出し、駆け寄った勢いのまま。全体重と救世主としての力の乗った前蹴り。
エンフォーサー
顎に衝撃が走り、唇が歯にぶつかって裂け、鼻を折る脚の一撃が通っていく。血が飛び散る。
カンダ
「ははははは!」
カンダ
ちゃんと喋りたくても、今ちょっと難しくってさぁ!
エンフォーサー
反動で仰け反った身体が、その反動で黒結晶の上に顔面を落とす。
カンダ
お前も似たような滑舌にしてやるよ!
エンフォーサー
遠ざけきれない痛みが、救世主の力を喚び起こす。肉体を修復する。
カンダ
それを踏み抜く。
エンフォーサー
ぐじゃ、と骨と肉と黒結晶のぶつかる音が響いた。
カンダ
つま先ではなく踵で、まっすぐと体重の乗った、踏むことではなく踏み潰す事を目的とした動き。
エンフォーサー
絶望が傷口からぞっと入り込んで、その怖気と痛みにジタバタと悶える。
エンフォーサー
「ぎ」
カンダ
結晶と肉を混ぜるように。
傷が治る度繰り返し、治らぬ疵になるように。
エンフォーサー
痛みを噛み潰して噛み潰して、堪えきれないうめき声。
カンダ
踏んで。踏んで。踏んで。最後に蹴り飛ばして転がす。
カンダ
「えぇん、ふぉあろぅ……」
エンフォーサー
痛みの嵐の中で頭の中はもっとぐちゃぐちゃだった。
カンダ
はは、ひでぇツラ。でもまだ始まったばかりだぜ。
カンダ
なぁ、さっき私は待ってって言ったよな。
お前は聞かずに行ったよな。
エンフォーサー
仲間だった奴に殴られる理不尽と、次の痛みへの予測と、対処法への思考と。脳の各所がそれらへの思考リソースを要求する。
カンダ
私はとっても傷ついたんだぜ。
カンダ
休ませると面倒だな。定期的に蹴っとくか。
カンダ
そんな考えから腹に一発。
エンフォーサー
げぼ、と濁った音を立てて地面を転がる。
カンダ
拘束しておくのが楽かなぁ、ツグハ先生を見習っておこう。
エンフォーサー
鼻から回った血か、それとも内臓のどこかの損傷か。とにかくそれらの血が押し出された息と共に吐き散らかされる。
カンダ
”こうなる”前からいつも携えていたもの……手錠を取り出し、その手にかける。
カンダ
あとは……コイツ何か丁度いいもの持ってないかな。
カンダ
遠慮もなく、転がるエンフォーサーの懐を探る。
エンフォーサー
昔自分が誰かに掛けたもの。暴れる死刑囚に掛けたことのある感触。
カンダ
あ?何これ。
カンダ
そうして手に探り当てたのは、黒い布袋。
ちょうど人の頭がすっぽり覆えるサイズのもの。
カンダ
これ、もしかしてお前の心の疵なの?
カンダ
キモ(笑)
エンフォーサー
懐を探られ、のたうつ。
エンフォーサー
なぜそれが今、出てくるのかと言えば。
エンフォーサー
自分がカンダを見るたびに思い出させられる過去の残滓だからだ。
カンダ
まぁ、丁度良いよな。
エンフォーサー
本当にお前は、本当にお前は迷惑なやつだ。
カンダ
その布袋にどんな思いがあり、どんな疵からそれがあったのか。
そんな事は知る由もない。
エンフォーサー
俺の捨てたものを後生大事に持ちやがって。
カンダ
だって何も話されてはいないんだから。
エンフォーサー
ずっと話さなかった。
カンダ
だから何の遠慮もなく、それをエンフォーサーの頭に被せる事ができる。
カンダ
わぁ、お似合いですぅ。
エンフォーサー
視界が闇に包まれる。
エンフォーサー
このように、布袋を被せられた人間を見る仕事をしていた。
エンフォーサー
もっとも今は被せられる側なんだが。
カンダ
あぁ、そうか。この布袋ってもしかしてアレか?
カンダ
じゃあ、丁度良いやり方があるな。
エンフォーサー
エンフォーサーの首元にはちょうどいい首輪がある。
カンダ
さっきのを一本持ってきたんだよ。
持ってきたっていうか、絡まったまま引きずってきたんだけど。
エンフォーサー
絞首刑にちょうどいい首輪が。
カンダ
その首輪に、蔦を結びつける。
エンフォーサー
見えずとも、わかった。
カンダ
救世主製の丈夫な蔦だ、一人分の体重くらいは余裕だね。
カンダ
蔦の片方をその辺の木の枝に引っ掛けて、準備万端だ。
エンフォーサー
この袋を被せられた者は、首を吊られる。そういうふうになっている。
エンフォーサー
死刑囚が何を思って吊られていくのかを、考える事を止めるようになったのはいつからだったか。
エンフォーサー
とっくに死んでいたような男の身体は、蔦にひっぱられてあっさりと絞首刑の準備を整えられる。
カンダ
こういう時、確かやることがあったよな。
カンダ
あぁそうそう、アレだ、アレ。
カンダ
エンフォーサー君、君宗派どこ?
カンダ
まぁいいやどこでも。
エンフォーサー
暴れる者を、落ち着く者を、ただ泣いている者を見た。
カンダ
布袋の真ん中あたりに、口づけするくらいに口を寄せてささやく。
エンフォーサー
自分は今どんな顔をしているのか。
カンダ
「えん、ふぉ、はぁ……」
カンダ
あ、喋れねえや。
エンフォーサー
カンダの声だ。
カンダ
でもこの距離なら、聴かせる事はできるな。
カンダ
頭に触れる。
カンダ
そして素敵な幻聴が聞こえるような物質を脳にひとふり。
カンダ
『何か懺悔する事はあるか?』
エンフォーサー
「ふ、ふふふ」
エンフォーサー
懐かしくて笑う。
カンダ
ちょっと声の響きが神聖っぽくなりすぎちゃったかな?
カンダ
ま、いいや。それっぽけりゃさ。
エンフォーサー
死刑執行までの日々で、最後の言葉を考えたりするんだろうか。彼らは。
エンフォーサー
「そうだな」
エンフォーサー
「懺悔してほしいことはあるか」
カンダ
そりゃ勿論、素敵な仲間に対してどれだけ申し訳なく思ってるかとか……
カンダ
あぁいや、ダメだな。さっきの配合じゃあ……
カンダ
”こいつの聴きたい言葉”しか聞こえないだろう。
カンダ
『──────』
カンダ
声が聞こえる。
それは何を喋った?
カンダ
上手く聞き取れなかったかもしれないが、きっとそれは。
カンダ
かつてお前が、誰かに対して言った事だよ。
エンフォーサー
「…………」
エンフォーサー
あの時の自分は、それなりに正しい事をしていると思っていた。
エンフォーサー
それはこの世界に来てからもそうで、正しいことをしようと。
エンフォーサー
ああ、もうめんどくせえなあ。いい子ちゃんぶってすいませんでした、とか言えばいいか?
エンフォーサー
もう何も考えたくないな。
エンフォーサー
何人か首を吊るのを見送って、こっちでも救世主の首を吊ったりした。
エンフォーサー
でも俺はどっちも真面目にやってたんだぜ。
エンフォーサー
懺悔することなんて、ああ、そうだな。
エンフォーサー
めちゃくちゃある。死ぬほどある。
エンフォーサー
でも一つにはまとめられないから、でもあえてまとめるなら。
エンフォーサー
「ごめんなさい」
カンダ
『お前は裁かれる』
エンフォーサー
生きててごめんなさい。あの時殺してごめんなさい。見捨ててごめんなさい。
カンダ
『そして終わる』
カンダ
『二度と現世に舞い戻る事はない』
カンダ
『魂ごと消え去るがいい』
カンダ
こいつ今何聞こえてるんだろ。
カンダ
わかんね~。そろそろ吊るか?
エンフォーサー
言葉とは裏腹に、救世主のガワとしてのエンフォーサーの身体が暴れる。
カンダ
何にせよ、ずいぶん都合の良い事を聞いているんだろう。
カンダ
今のうちにせっせと足元に黒水晶を積み上げ、その上にエンフォーサーを乗せる。
エンフォーサー
もう救世主を止めてしまいたい、そう思ってとっくに絶望している心に逆らって、コインの力が、身体が、救世主であろうと首の縄を掴む。
エンフォーサー
その姿は暴れる死刑囚の如し。
カンダ
お?ははは
カンダ
安心しろよエンフォーサー。
カンダ
すぐわかる。
カンダ
へらりと笑って。
カンダ
足元の黒水晶を蹴り崩した。
カンダ
*エンフォーサーの「超越性」を猟奇で抉る。
カンダ
*クエストは2
エンフォーサー
*よっ、横槍はありませんか~!?
ツグハ
*え~ じゃあ横槍しま~す
[ ツグハ ] HP : 27 → 26
ツグハ
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 愛
ツグハ
2d6+4=>7 判定(+愛) (2D6+4>=7) > 12[6,6]+4 > 16 > 成功
ツグハ
ワッハハ
GM
*スペシャル!
GM
小道具を1個入手です。
GM
価値25まで?
GM
マジ?
GM
クエストより強いじゃん
ツグハ
1d6 (1D6) > 2
ツグハ
*スペシャルの効果で女王のタルトを取得します。
[ ツグハ ] 女王のタルト : 0 → 1
カンダ
2d6+4-2=>7 判定(+猟奇) (2D6+4-2>=7) > 12[6,6]+4-2 > 14 > 成功
ツグハ
は?
カンダ
ヤッター!!!
GM
エンフォーサー
GM
えーっとスペシャルで……?小道具……?
カンダ
*スペシャルの効果で眠り鼠のポットを取得
カンダ
*クエスト2の効果で最高のバターを取得
[ カンダ ] 眠り鼠のポット : 0 → 1
[ カンダ ] 最高のバター : 0 → 1
[ カンダ ] アリスの証言 : 0 → 1
カンダ
(増やし忘れてた分の証言)
[ エンフォーサー ] 超越性 : 0 → -1
カンダ
 
カンダ
エンフォーサーの身体が落下して。
カンダ
木にひっかけた蔦の縄がぴんと張り。
カンダ
吊られた身体が空中で跳ねるのを見る。
カンダ
ははは。
カンダ
ほら、分かっただろエンフォーサー。
カンダ
お前はもう、そのくらいじゃ死ねないんだよ。
エンフォーサー
本来であれば、落下の衝撃で首の骨が折れて死に至る。
エンフォーサー
しかし救世主の身体は、丈夫だ。
エンフォーサー
しかし人間の身体の習性を残しているから、うっ血して頭が破裂するような心地になる。酸素を求めて肺が暴れる。
エンフォーサー
首吊り自殺に失敗している最中の人間のように、首の輪をがりがりと指先が引っ掻く。
カンダ
わ、面白い動き(笑)
エンフォーサー
死にたい。死んでしまいたい。ずっと前から。まだ死ねない。
カンダ
ゲタゲタと笑いながら見守る”仲間”は、勿論助ける様子はない。
カンダ
あぁ傑作だ!なぁエンフォーサー、お前そんなもの持ってたんだから知ってるよなぁ!
カンダ
死刑を実際に執行されて、それでも生き残った死刑囚はどうなる?
エンフォーサー
赦免される。
エンフォーサー
罪は赦されてしまう。
エンフォーサー
そんな事があってたまるか。
カンダ
でも、刑はもう執行されてしまった。
カンダ
され終えてしまったのだ。
エンフォーサー
救世主という死刑囚は皆、全員、確実に死ななければならない。
エンフォーサー
刑が悪い。刑がぬるい。法に欠陥がある。
カンダ
法に欠陥は無い。(いや、いくらでもあるが……)
カンダ
だがお前のそれは、法のせいにするにはちと厳しい。
カンダ
お前、私にアレを投下させる時に言ったじゃないか。
カンダ
人じゃないからいいんだってさ。
カンダ
法は、人間のためにあるんだぜ。
エンフォーサー
そんなコト言ったかな。忘れてしまったよ。
エンフォーサー
でもまあ、救世主なんて化け物に、法はもったいないオモチャだってことがわかった。
エンフォーサー
この身体もそろそろそれをわかってくれるはずだ。
エンフォーサー
ぶらりと四肢を重力に任せて垂らし、きしきしと静かな音を立てながらぶら下がっている。
カンダ
はは、無駄な抵抗~
カンダ
まぁいいさ、気が済むまでぶらさがってな。
30分だっけ?それくらいぶら下げとく事になってんだろ。確実に殺すために。
エンフォーサー
カンダの声が聞こえるような気がするけど、頭の中がまだぐちゃぐちゃしていてよくわからない。カンダと話しているような気がするけどよくわからない。
カンダ
三日三晩吊るしても、お前は元気だと思うがね。
カンダ
吊られるのに飽きたらちょっと面貸せよ。
カンダ
仕事がまだ終わってないだろ?
カンダ
一人じゃ面倒だしさあ。
カンダ
あと、ちょっと重い女ひっかけちゃって。助けてくんない?
エンフォーサー
俺の知ってるカンダはもっと……なんだっけな……こんなだっけ?
エンフォーサー
まあ、どうでもいいか……
カンダ
些細な事さ。
カンダ
ちょっとゲームモードが変わったくらいかな。
カンダ
じゃ、そういうことで。
カンダ
私またその辺ぶらついてるから。気が済んだら来いよ。
カンダ
スティブ前集合な。
エンフォーサー
ハチ公かよ。
カンダ
似たようなもんだ、全然動かないんだから。
カンダ
ゲタゲタ笑って、気配が遠ざかる。
エンフォーサー
さっきはまあまあ動いてたぜ、なんて思ってももう伝わらない。
エンフォーサー
ずっと伝わらないでいたのかもしれないけど。
エンフォーサー
最初っから自分は誰かと分かり合うつもりなんてなかったから。まあこうなるのもやむなしか。
エンフォーサー
まあいいか、疲れたな。後少しだけ眠るか。
GM
GM
*ラウンド2 エンフォーサー
GM
*状態〈絶望〉〈絶望侵蝕〉中のため、抉る疵の指定はPKが行います。
GM
*ツグハの心の疵「花吐き乙女」を愛で抉ってください。
エンフォーサー
*わ~い!間違えたは~い!
エンフォーサー
2d6 (2D6) > 8[3,5] > 8
GM
3 小屋。黒結晶に覆われていて、その重さで半分倒壊している。
GM
5 道に迷う。木々の向こうに人影が見える。あなたを見ているそれは幻? 本物? 一体誰?
エンフォーサー
黒結晶に侵された木の枝に、黒結晶の生えた蔦が一本ぶら下がっていた。
エンフォーサー
そこから暫く歩いて、小屋や小屋だったものがぽつぽつと点在する地点に──ぼんやりと佇む誰かがいる。
ツグハ
「おや」
ツグハ
枝にぶら下がった蔦を見る。カンダに引っ付けた奴以外はそんな遠くにやってない筈だけどな。
ツグハ
ということはここらあたりでなんかに使われたか、そうでなけりゃ普通に面倒がって外したか。
エンフォーサー
ツグハが少し歩けば、黒い布袋が片隅に落ちている。
ツグハ
「あんたに聞けばわかるかな?」
エンフォーサー
そこから更に歩けば、そこにいるのはエンフォーサー。
エンフォーサー
「何がだい」
ツグハ
「カンダの追加の罪状とか?」
エンフォーサー
「ああ、それなら殺人未遂かな」
ツグハ
「いつものことか」
エンフォーサー
「カンダ、あいつはもうダメだな」
ツグハ
「そうだねえ」
ツグハ
「エンフォー君も大概ズタボロに見えるけど」
エンフォーサー
「ひどい有様だ」
エンフォーサー
「苦労して作ったガワだったんだがね、もう保たないよ」
エンフォーサー
「まあ、どうでもいいことだろう……」
エンフォーサー
「で、どうするんだ」
エンフォーサー
「ツグハ君はやるのか。まだ」
ツグハ
「私は公爵家のわんちゃんだしい~?」
ツグハ
「行く当てもなくこんな世界を放浪するなんてまっぴらごめんよ」
エンフォーサー
「ははは」
エンフォーサー
「でも死ぬぜ」
エンフォーサー
「行けば死ぬよ」
ツグハ
「行かなくたって生き地獄だもん」
ツグハ
「本当の地獄とどっちがマシなんだか」
エンフォーサー
「誰かに使われていれば、考えることが減るからな」
ツグハ
「そうそう」
エンフォーサー
「もう止めにしないか?」
エンフォーサー
「このまま帰って公爵家に救援を求めるのはどうだ」
エンフォーサー
「このままであれに勝つ自信があるのかい」
ツグハ
「あそこに私達以外のアテがあると思う?」
ツグハ
「爆弾どころか、爆撃機だってもうどこかに堕ちていそうなのに」
エンフォーサー
「そんなもの」
エンフォーサー
「とっくにもうどこにもないだろう」
エンフォーサー
「俺は降りるよ」
ツグハ
「あ、そ」
エンフォーサー
「スティブナイトの事はまあ、頑張ってくれ」
エンフォーサー
「そういえばツグハ君は会ったか?あれに」
エンフォーサー
スティブナイトに。
ツグハ
「けっこう可愛かったよ」
エンフォーサー
「んん……」
エンフォーサー
「そんなことが分かるぐらい近くに?随分と余裕があったんだな……」
ツグハ
「弱ってるうちを狙うのが一番楽だからね」
ツグハ
「生憎逃げられちゃったけど」
エンフォーサー
「ふうん……ツグハ君の好きそうなガキだったから、てっきり」
エンフォーサー
「まあ俺はそのガキに目をやられたんだがね、ハハハ」
ツグハ
「災難だったね」
ツグハ
「エンフォー君は降りた後で行く当てはあんの?」
ツグハ
「多分ないんだろうけど」
エンフォーサー
「あるわきゃない」
エンフォーサー
「やってられっかって気持ちです」
ツグハ
「そっか。そうだね。そうかもね」
エンフォーサー
「ツグハ君は使いっ走りの人生で満足かい?」
エンフォーサー
「何か得るものはございますか?」
ツグハ
「さあ……」
ツグハ
「愛とか?」
ツグハ
「うーん。全然笑えないな」
エンフォーサー
「俺は結構笑えたね」
エンフォーサー
「愛って、どんなのさ」
エンフォーサー
「『救世主様!私達のために死んでくれてありがとうございます!』なんてクソみたいな空に向かって泣かれる事?」
エンフォーサー
大仰な手振り。
エンフォーサー
「いい救世主がいたんだって49日ぐらい話題になって、その後誰からも忘れられること?」
エンフォーサー
「末裔なんぞに媚びたって、そんなもんだぞ」
ツグハ
「別に……いいんじゃない?それでも」
ツグハ
「死人が誰かに必要とされることなんて」
ツグハ
「それこそ本物の救世主でもなければ無いんだから」
ツグハ
「いつだか誰かにも言って見せたけど」
ツグハ
「愛っていうのは見返りだからさ」
エンフォーサー
「ふむ」
エンフォーサー
「そのためなら別に死んでもいいと」
ツグハ
「よくないよ」
ツグハ
「よくはない」
ツグハ
「でも、献身ってそう言う事でしょ」
エンフォーサー
「そうかな、そうかも……」
エンフォーサー
「つまり君は献身がしたいと。愛のために」
ツグハ
「……………………」
ツグハ
「そうだねえ」
エンフォーサー
「命や身を賭してまで愛が欲しい?」
エンフォーサー
「そんな身体になってまで?」
エンフォーサー
「いやあ~ツグハ君の献身は、並大抵の愛じゃあ見返りにならないだろうねえ」
エンフォーサー
「あっそうだ!どうせならスティブナイトでも愛してみたら?」
エンフォーサー
「救世主は救世主同士!うまくいくんじゃね~の?」
エンフォーサー
「絶望を救う愛!感動的だな~!」
ツグハ
「あははは」
エンフォーサー
「見た目もちょうどいいじゃん」
エンフォーサー
「好きだろ、ああいうの」
ツグハ
「そうだねえ」
ツグハ
「乗り換えるにはちょうどいいかも」
エンフォーサー
「ヒューヒュー」
エンフォーサー
「末裔なんかよりずっといい」
エンフォーサー
「30日の期限をさ、2人でやりくりするんだ。必死んなってこの国を駆け回って……」
エンフォーサー
「末裔なんぞから貰えるリスペクトなんてそれに比べたら……」
エンフォーサー
「それこそ本当に、愛で何も考えなくてよくなるんだ」
エンフォーサー
「本当に……」
ツグハ
「いいかもね」
ツグハ
「本当にそんな仲になれる奴がいたら」
ツグハ
「ま、スティブナイトはここを離れることは無いだろうし」
ツグハ
「他人を許容する気もないんだろうけど」
エンフォーサー
「じゃあダメか」
ツグハ
「…………だから結局は公爵家に擦り寄るしかないのさ」
ツグハ
「別にそれで不満ってこともないんだから」
エンフォーサー
「本当に?」
エンフォーサー
「すぐ死んで新しくなる彼らの愛でいいんだね」
ツグハ
「…………いいんじゃない?」
ツグハ
「この世に永劫不滅のものなんてないんだし」
エンフォーサー
「いいんじゃない、は無いだろう。自分のことなのに」
エンフォーサー
本当はもっと、しっかりとした何かが欲しくなったりはしないのか?
エンフォーサー
もう少し確かめやすくて、もう少しだけ自分に優しいものを。
エンフォーサー
でもただ愛されたいお前は、誰かを愛せるのか?
エンフォーサー
そんなもの、愛ではなくて、ただ双方向にやり取りしている"商い"だ。
エンフォーサー
献身だのなんだの取り繕っていても、お前はただ寂しいんじゃないか?
エンフォーサー
「元の世界でもまことの愛を探して人は苦労してるっていうのに」
エンフォーサー
「ツグハ君はしあわせものだなあ」
エンフォーサー
「アイツラの愛でいいっていうんだから」
エンフォーサー
*ツグハの『花吐き乙女』を愛で抉ります クエスト5挑戦
GM
*横槍は~?
カンダ
*横槍
カンダ
*やんなーい
ツグハ
*別にいらねえしな……
エンフォーサー
2d6+4=>7 判定(+愛) (2D6+4>=7) > 11[6,5]+4 > 15 > 成功
[ ツグハ ] 花吐き乙女 : 0 → -1
GM
*クエスト5成功ですね。
ツグハ
「まことの愛ぃ?」
ツグハ
「知らねえよ、そんなもん」
ツグハ
だって、他に愛し合う方法なんて知らないんだよ。
エンフォーサー
へらへらと笑っている
ツグハ
誰かに必要とされるのを、愛されてるって思う事、なんか間違ってるのか?それ。
エンフォーサー
いいんじゃないの、君がそれでよければね。
ツグハ
いいんだよ。それでよかったんだから。
ツグハ
己の権威を知らしめるための下僕みたいな扱いだって。
ツグハ
誰かの代わりに殴られるための身代わりの身分になったって。
ツグハ
私はそれで必要とされていたんだからさ。
ツグハ
まあ、法の神様曰くの児童虐待とかいう名分で、そんな愛とも引き離されちゃったんだけど。
ツグハ
『誰からも要らない子』にされるのって、すごく寂しいんだぜ。知ってた?
ツグハ
だから、花吐き病なんてのに罹るくらいに、愛なんてもんを追い求めてさ。
ツグハ
花吐き病って、片思いを拗らせた奴が罹る病気なんだってさ。
ツグハ
そうそう、この花は恋に恋するとか、愛に愛するとか、そういう奴の末路なんだよ。
エンフォーサー
この女はずっと愛に片思いをしているんだな。
エンフォーサー
かわいそうに。
ツグハ
かわいそうでしょ。
ツグハ
慰めてもいいよ。
エンフォーサー
慰められたいか?
ツグハ
だって、今一番近くに居るの、あんただもん。
ツグハ
他の誰に頼もうってのさ。
エンフォーサー
例えばこのひととき。ツグハ君を本気で愛してみようか?
エンフォーサー
仲間のよしみで。ずっとしなかったことを。
ツグハ
あんたに何ができるの?
エンフォーサー
この黒水晶に囲まれた森でできることなら、そこそこに。
エンフォーサー
でもツグハ君は女の方がいいだろ~?
エンフォーサー
ありあわせの愛で我慢する?
ツグハ
別にそれだって構わないよ。
ツグハ
男の人が何されて喜ぶのかとか、知らないだけだし。
エンフォーサー
別にいいさ。何ならたまには奉仕されてみるのもきっと楽しいぜ。
エンフォーサー
両腕をそっと広げて、ツグハの身体を抱き締める。
エンフォーサー
「ツグハ君は、きっと誰からでも頼りにしてもらえるさ」
エンフォーサー
「スティブナイトを倒したら、どんな末裔も君を放っておかない」
エンフォーサー
「俺も君を随分と頼りにした」
ツグハ
「本気でそう思ってる?」
エンフォーサー
「本当に思ってる」
ツグハ
「嘘ついたら針千本だよ」
エンフォーサー
「この世から針がなくなるまで飲んでもいいよ」
ツグハ
「救世主っぽい口説き文句」
エンフォーサー
「そうかな、正直に話してるつもりだぜ。本当に」
エンフォーサー
「今まではずっと、つまらない男だったろうからね俺は」
エンフォーサー
「まあこの森のせいでさ、体面も何も取り繕え無くなっちまったから、言いたいことを言うこととしよう」
エンフォーサー
「スティブナイトもそのぐらいは待ってくれるさ」
ツグハ
「げ……ほ、がは、ぐっ」
ツグハ
「じゃあ、これまで押し殺してた物」
ツグハ
「全部吐き出してみせたら?」
エンフォーサー
「そうさせてくれるかい?」
エンフォーサー
「ツグハ君。他ならぬ君に」
ツグハ
「どうせ他に誰も聞いちゃいないさ」
ツグハ
「喜んで」
エンフォーサー
そうしてから暫く、エンフォーサーだった男はツグハに、今までの思い出を交えながら愛を囁いた。
エンフォーサー
エンフォーサーが忘れたと思っていた事も、この男が覚えていた。
エンフォーサー
そうして、自分や末裔たちは、ツグハを必要とし、愛するんだと囁いた。
エンフォーサー
……けれど、この男は。
エンフォーサー
あなたよりずっと前に誰かを愛して、別れて、今もまた。
エンフォーサー
あなたを置いて去りゆく者だ。
カンダ 舞台裏
カンダ
「んーんーんんーんーんんんー」
カンダ
ハミングしながらその辺の黒水晶に卑猥な落書きをしている。
カンダ
そういや同じ黒水晶使えば、黒水晶に彫刻できるのかな。
カンダ
ためしてみよ
カンダ
ごりごり……
カンダ
お、いける じゃあこう……丸二つに棒一つ……
カンダ
ちんこ!
カンダ
うーむ。芸術的な出来だな。 銘も彫っておこう。
カンダ
カン……ダ……参……上……と
カンダ
名前がひとつじゃ寂しいなー
カンダ
”エンフォーサーはカス”
と書いた
カンダ
うーむ……せっかくならやっぱ3人分だな
カンダ
”彼女募集中♡ ツグハ”
と書いた
カンダ
ゲラゲラ笑っている
カンダ
…………
カンダ
それらの落書きから、少し距離を離して
カンダ
拙い人の似姿を彫り始める。
カンダ
子供が書いたような、ひどくデフォルメされた人形。
カンダ
花に飾られたものが一人。
目元に布をかぶせたものが一人。
本を手に持ったものが一人。
カンダ
それらが手を繋いでいる。
カンダ
ひひひ……
カンダ
うひひひひひ……
カンダ
嘘を書くのは楽しいな
GM
ここに。この先に。愛があるというのだろうか?
GM
あるいはそれが愛であったとして、
GM
それは、求めたものだっただろうか?
GM
求めたものだったとして。
GM
応えてくれるのだろうか?
GM
……この国にあるのは孤独だけだよ。
GM
すぐにわかる。