Dead or AliCe『16JAcks』

入場

OP
Shuffle, Deal and Up
不条理、非道理、配り直して

Stand, Hit and Bust
主と僕、あなたはどちら?

罪を束ねて天へと昇るか
徳を重ねて底へと下るか
上下あべこべ、ヴァンテアン・ゲーム
導入
果て無く続く荒野の果て、その終着点よりも少し前。

雲を貫きどこまでも聳える、場違いに豪華な高層建築。
導入
それはホテル『ジャック・オブ・ハート』。

その広い1階のエントランスに今、末裔も救世主も犇めいている。
導入
この地で行われる儀式にして祭事、希望にして悪夢を見届けるため。

或いは単に、観客に振る舞われる無料の食事を宛にして。
導入
好悪明暗綯い交ぜに、全ての視線はエレベーターの様子を写すモニターに注がれている。
GM
*
GM
ホテルの中央を大きく貫く、広間のようなエレベーター。
GM
その扉が静かに開き、ホテルマンが歩み出る。
104号室のホテルマン
誰も居ない場所へ向けて一礼。
104号室のホテルマン
「……此度お招きに応じて頂きました、客室104号室のお二方」
GM
エレベーターの扉から、新たな人影が現れる。
104号室のホテルマン
「イスタ様、プルネウマ様」
イスタ
ちいさな人影が、ふたつ。
イスタ
手をつないで、離れないようにして。
イスタ
こどもの歩幅で、歩きだす。
プルネウマ
その隣を歩く。
プルネウマ
ふらふらとした、どこかへ行ってしまいそうな足取りで。
イスタ
「たのしみだね」
イスタ
わらう。
イスタ
手を離さず。腕を絡めて。
プルネウマ
「…………」
プルネウマ
なにも答えない。
プルネウマ
絡められた手はそのまま。
まるで人形のよう。
プルネウマ
1回戦や2回戦のときとは雰囲気が違う。
プルネウマ
そのまま進む。
イスタ
そうして、立ち止まり。
イスタ
まっすぐ、向こうの扉を見ている。
GM
その見つめる先。
GM
対面に位置する扉からも、ホテルマンが現れる。
108号室のホテルマン
こちらも、誰も居ない場所へ向けて一礼。
108号室のホテルマン
「此度お招きに応じて頂きました、客室108号室のお二方」
108号室のホテルマン
エレベーターの扉から、新たな人影が現れる。
108号室のホテルマン
「I-Carus様、スペードの56様」
イカロス
ーー蒼空色の刃が、床を鳴らす。
決勝に赴く足取りは変わることなく、堂々と。
イカロス
舞台へ上がるのはこれにて三度。
此度のゲームはこれで最後。
イカロス
「……さて、頂点を決める戦いの開幕だ。」
スペードの56
――一歩、二歩。音を鳴らさず、静かで軽やかな足取りが後に続く。
スペードの56
ただ、こちらは初めとは打って変わって、道化もまた堂々と。
スペードの56
「そうですね。いつだって頂点は一つだけ」
イカロス
「然り!然るべき王座を取り戻し!天を覆う雷雲は払われた!
我らを妨げるものも唯一つ!」 
スペードの56
「そうですとも。残るは目前。あれに見えるは哀れな幼子か。
 或いは、なにものの生存をも許さぬ災害か」
イカロス
「……災厄<あらし>が立ちはだかるというのなら、さしずめ我らはその中心にて輝く希望!」
イカロス
「ーーさあ、喝采せよ!我らの名を呼ぶがいい!」
スペードの56
「希望果てた大地であろうとも、蒼空(そら)の夢を見続ける者!」
スペードの56
「その名は――」
その先を、ワタシは言わない。名乗らずとも、最早階下の皆が知っているから
イカロス
「ーーそう!我が名は王者I-Carus!」
スペードの56
「呼べ、この名を!仰げよ、この希望!堕落の国に王者は在り!」
104号室のホテルマン
「ええ、ええ。ありがとうございます」
108号室のホテルマン
「此度のヴァンテアンゲームも、とうとう……最終戦となりました」
104号室のホテルマン
「従いましてホテルより支給されます6ペンスコインも、60枚となります」
108号室のホテルマン
「──あるいは、61枚となる方もおられるでしょう」
104号室のホテルマン
「ジャックとエース、領分を分かつカードを再びお預かり致します」
108号室のホテルマン
「そして──再び、お引き下さい」
GM
担当のホテルマンから、それぞれのペアに差し出される深紅のカードとチップトレイ。
GM
それがこれから始まる戦いの命運を左右する事を、ただ4人残った参加者たちはもう知っている。
スペードの56
「口上も済みましたし、では早速一枚」ひょいっと取ります
スペードの56
「あれですね、最後くらいせーので開けてみます?」
イカロス
「ハ、面白いことを思いつく。いいだろう。」
その隣に立ち、もう一枚のカードを手にして。
スペードの56
「おっ、言ってみるもんですね。ではせーの」ぺらぁっ!
イカロス
声に合わせてカードを裏返し。その絵柄を見せつけるように。ぺらっ。
スペードの56
ジャックでした
スペードの56
「…………」
イカロス
「残念だったな。」エースをひらひら
スペードの56
終わった。パシらせられるチャンスが。全て
スペードの56
「……まっ、こうなるでしょうね」
イカロス
「当然の結果と言えような。」
スペードの56
ではそちらどうぞ
104号室のホテルマン
対面側でも、ホテルマンがカードとトレイを差し出している。
プルネウマ
「…………」
三月兎の末裔の方を見ている。
イスタ
わらう。
イスタ
そうして。カードを手に取る。
プルネウマ
同じように、カードを手に取る。
プルネウマ
ジャック。
イスタ
エース。
イスタ
まあ、どちらでも。もう。変わらない。
プルネウマ
何も変わらない。
イスタ
それを確認して、コインを手に取る。
イスタ
61枚。
イスタ
それを持った、その瞬間。
イスタ
風が。
イスタ
吹き始める。
イスタ
会場は灰色に曇り。
イスタ
ときおり、金がきらめいて。
イスタ
その速度を増していく。
スペードの56
「……む、これは……」遠目に、少し手を前に出して風を受ける
プルネウマ
60枚のコインを手に取った姿は、たちまち見えなくなる。
 
一回目は荒々しく。
二回目はおどろおどろしく。
三回目は、すべてを飲み込んで。
 
さいしょは両手で数えられないくらい。
のこりは片手で数えられる。
では、さいごは何人?
 
もちろん、まっさら、オールゼロ。
 
かみさま、きゅうせいしゅさま、にんげんさま。
どうか、どうか。
 
だれもいなくなりますように。
 
――さあ。
プルネウマ
あらしがくるぞ。
イスタ
吹き荒れる。
イスタ
空を阻む、暴風。
イスタ
それはわざわい。
イスタ
滅亡。
プルネウマ
恐れよ、恐れよ、恐れよ。
災い来たれり、滅びは此処にあり!
プルネウマ
先程まであった足元もかき消え。
プルネウマ
嵐の目が相手の姿を捉える。
イスタ
あらしの目。灰色の中で、ぎらぎらと輝いて。
イスタ
あなたがたを待ち受ける。
イスタ
「さあ」
イスタ
「たのしいことがはじまるよ」
プルネウマ
「……始めようか、最終戦」
スペードの56
その黄金の嵐を。あらゆる生命を拒むもの――或いは平等に呑み込むもの――を見据えて、防いでいた手をゆっくりと降ろす。吹き付ける暴風になんとか踏みとどまって
スペードの56
「なるほどこれは。まさしく特級の脅威と呼ぶに相応しい」
スペードの56
「ゆえに、この戦いの終焉(おわり)に相応しい。嵐の後は晴れるものと決まっているのですから」
イカロス
「我らは嵐の前に翼ひとつ、肉体ひとつで立ち向かう。」
イカロス
「風よ、吹くがいい!我らが体を吹き破らんとし、いくらでも猛り狂うがいい!」
イカロス
「如何なる嵐であろうとも、その上にはーー蒼空がある!」
108号室のホテルマン
「これで、エースとジャックが決定されました。これは当ホテルより判断されるお客様方の身分であり、領分となります」
108号室のホテルマン
「エースはエースらしく。ジャックはジャックらしく。どうか振る舞われますよう」
108号室のホテルマン
「領分を犯した者には、相応の報いが与えられます」
104号室のホテルマン
「……これより24時間のお茶会の時間の後、再びこの中央エレベーターへとお集まり頂き、裁判となります」
104号室のホテルマン
「こちらそれぞれ2通、お茶会を助けるための招待状となります、お受け取り下さい」
GM
招待状と称された封筒が、各ペアに2つずつ渡される。それは、参加者たちをこのホテルに招いた招待状と似た気配を持つもの。
108号室のホテルマン
「エースの方々。当ホテルに存在する施設は全て、ご自由にお使いください」
108号室のホテルマン
「ジャックの方々。どうかエースの方々の邪魔を為されないように」
104号室のホテルマン
「それでは、客室104号室、イスタ様、プルネウマ様と」
108号室のホテルマン
「客室108号室、i-Carus様、スペードの56様の」
104号室のホテルマン
「……これより、お茶会の時間と相成ります」