[ パストラム ] 魔力 : 8 → 10
パストラム
「……とはいえさ~」
パストラム
「そのまんまだとめちゃくちゃレムニンって感じじゃん」
レムニン
「まあ、確かに…………」
レムニン
なんか、ちょっと時間置いて冷静になってくると恥ずかしくなってきたな……
レムニン
最初から恥ずかしいが……
パストラム
「僕が言う優しさってほとんど侮蔑とか……愚かだなって気持ちとかだから」
パストラム
「レムニンにそれだけを向けるのは大変だよ」
パストラム
「できないことはないけど」
パストラム
ミゼットって僕だし、僕はおまえだし。
レムニン
「大変な注文をしてしまった気がする」
パストラム
まぁつまり弟子はそのように見ていたということである。
パストラム
兄弟子なんだけど。
レムニン
こいつまったく年功序列とかわからないタイプの存在だしね。
パストラム
わかんないです。
レムニン
僕はわかる(バカバカしいとは思っているが)
パストラム
レムニンのこと尊敬してる奴見るとウケるって思う。
レムニン
なんで……?
パストラム
完全な下位互換というわけでもないだろうに……
レムニン
尊敬するからって対象を上位互換と認めているわけでもなくないか?
パストラム
ていうか、全員等しい存在だし。
レムニン
そうなるのかあ
パストラム
「……っていうかさ」
パストラム
「僕が人に優しくするときって何か絶対目的があるんだけど」
パストラム
「おまえに教えるようなこともないから、難しいんだよな……」
パストラム
「何か知りたいことない?」
レムニン
「え……?」
レムニン
「君の身体の造りがどうなってるかとか……?」
パストラム
「あ~、いいね」
レムニン
結構教えてもらった気もするけど。
パストラム
「弟子くん僕の顔見てくれなかったからな」
レムニン
「それはどういうこと?」
パストラム
「さあ……?」
パストラム
「なんか全然こっち見てくれなかった」
パストラム
「指とか見てた」
レムニン
「乙女か?」
レムニン
「指フェチか……」
パストラム
「乙女ってそうなの?」
パストラム
「普通に胸とかも見てた」
レムニン
「好きな人の顔見られないという現象はあるらしい」
レムニン
「ただのスケベかもしれん、それは」
パストラム
「なんだったんだろう……?」
パストラム
なにもわかっていない。どうだったんですか?
レムニン
「今度本人に聞いてみたらどうだ?」
レムニン
答えてくれない気もする。
パストラム
答えてくれない気がする……
レムニン
「何の話だったっけ」
パストラム
「おまえ、ミゼットとかになれないの? 見た目だけ」
レムニン
「え? 小さくなれって意味?」
パストラム
「いや……小さくてもレムニンはレムニンだった」
パストラム
「まぁこの大きさよりはマシだけど」
レムニン
「着替える?」
レムニン
「あとまあ、髪の色ぐらいなら変えられるかな……」
パストラム
「おお~……」
パストラム
「だいぶ印象変わるかも」
パストラム
「着替えは……そのへんに干してなかったかな」
パストラム
小さい服のほうが乾きやすくて便利。
パストラム
そういえばこの3ヶ月で寝巻きや部屋着などを色々買って縮めたり作ったりしたなあ。
レムニン
結構こういうとこはマメだよね
パストラム
逆にあの過ごしにくそうな服でずっといたのか? ってなった。
パストラム
だって普通に嫌だろ、同じ服毎日着てるの……
パストラム
人間は汗とかかくんだろ。
レムニン
考えたことなかったな……
パストラム
嘘でしょ
パストラム
え? 精液とかかけるわけじゃん?
パストラム
そのまま過ごさせるわけ?
レムニン
なんか適当に水かけたりしてた
パストラム
雑~
レムニン
まったくごもっともなんだけど、君に雑って言われるのなんか釈然としないな。
パストラム
僕は丁寧な管理をしていたし、これからも一応するつもりだが?
レムニン
自分自身に関してももうちょっと丁寧になってほしい
パストラム
え……? どこを……? どう……?
レムニン
……
パストラム
少なくとも服に関しては何着かあるよ僕は。
レムニン
「これとかどう?」
レムニン
ミゼットが持っていたなんか楽そうな服を指す。
レムニン
ジャージというらしい。
パストラム
「良さそう」
パストラム
「このあたりの服っぽくないし……」
パストラム
ズボンの特定の部位を見ている。
パストラム
「きつくなさそうだし」
レムニン
一言多いわ。
レムニン
「じゃあそれで」
パストラム
なんで。
レムニン
説明したくない
パストラム
じゃあ、行使判定をしますか……
パストラム
3B10>=5 (判定:精神) (3B10>=5) > 2,9,3 > 成功数1
パストラム
2のところは諸々の補正があって成功。
3に魔力2足して3成功。
[ パストラム ] 魔力 : 10 → 8
パストラム
「じゃあ」
パストラム
「"小さくなれ"」
レムニン
「っ……」
レムニン
息が詰まるような感覚とともに、縮小が始まる。
レムニン
床が広がっていく錯覚に、平衡感覚が一時的に失われる。
レムニン
たちまち、突きつけられる指を見上げなくてはならなくなってしまう。
パストラム
その指がそっと伸びてきて、あなたを支える。
パストラム
弟子にしていたのと同じように。
レムニン
「ん……」
レムニン
自力で立てない、というほどではないが、近づく指に甘んじて支えられる。
パストラム
横に置いたジャージが着られるくらいの大きさまで小さくなる。
パストラム
「どう?」
パストラム
「前よりうまくなったんじゃない?」
レムニン
「……そ、そうだね……」
レムニン
「ずいぶんと慣れたな」
パストラム
「たくさん魔法使ったから」
レムニン
「僕の与り知らないところで……」
パストラム
「ふふ」
パストラム
「嫉妬しちゃう?」
レムニン
「…………」
レムニン
「する」
パストラム
「するんだ」
レムニン
「咎めようとは思わないけど」
レムニン
「僕の前では見せない顔をそいつに見せていると思うだけで……」
レムニン
「変な気持ちになる」
パストラム
「これから見せるから」
レムニン
すこしだけ身体がこわばる。
レムニン
「うん……」
パストラム
「じゃあ、ほら」
パストラム
「着替えて?」
レムニン
「……わかった」
レムニン
指から一度離れて、用意されていた着替えに近づく。
レムニン
一度、ちら、とパストラムを見上げて。
レムニン
もたもたと服を脱いでいく。
パストラム
大変そうな服だな、と思う。
レムニン
これ、いつも以上に恥ずかしいな……
パストラム
3ヶ月ここで暮らしているうちに、なんとなく階級の高い人間が着る服だということはわかったが。
レムニン
魔法使いはハッタリの効いた服を着るのも魔法の一貫です。
レムニン
三角帽子を外してローブを落として下着だけの姿になって、
レムニン
ジャージに袖を通していく。
レムニン
ちゃんと洗われて干されているのに、なんとなく生ぬるい感じがする。
レムニン
只人の温度だ。
レムニン
ついでに髪の色も魔法で変えて……
レムニン
「…………」
レムニン
パッと見だとレムニンその人とはわからない感じになった。
レムニン
「……どうですか」
パストラム
おー、だいぶわからなくなったな。
パストラム
髪の色がミゼット色だ。
パストラム
……っていう感想を直接言葉にすると雰囲気がぶち壊れて全部台無しになりそうなので飲み込んだ。
パストラム
代わりに指先でそっとその黒い髪を撫でる。
レムニン
なんかこの服着ると……がくっと魔法が弱まった感じがするな。
パストラム
「いい子」
パストラム
「よくできました」
レムニン
「……んっ」
レムニン
撫でてくる指に、自ら頭を擦り付ける。
レムニン
(は……)
レムニン
(恥ずかしい)
パストラム
「かわいい……」
パストラム
その手であなたの身体を抱えて、手のひらの上に乗せて持ち上げる。
パストラム
「それで……」
パストラム
「何が知りたかったんだっけ」
レムニン
「あ……」
レムニン
直接、性的に触られたわけでもない。
レムニン
やわらかく掌に持たれて、持ち上げられて、語りかけられただけで。
レムニン
自分の奥底にある何かを叩かれたような気持ちになる。
レムニン
「え、っと……」
レムニン
「パストラムの……ことが……」
パストラム
「うん」
レムニン
まるで本物のミゼットのように、ひとりでに、言葉に自信がなくなっていく。
レムニン
「パストラムの、身体の仕組みが……」
レムニン
「し……知りたい、って……」
レムニン
恐る恐る、相手の表情を見上げて伺う。
パストラム
囁く様な笑い声。
パストラム
「いいよ」
パストラム
「どこが知りたい?」
レムニン
「……う……」
レムニン
顔を見れないでいたという弟子の気持ちが、なんとなくわかってしまう。
レムニン
どんな顔でこっちを見ているのか、知りたいという気持ちと、知りたくないという気持ちが、両方ある。
レムニン
口元だけを見ると、そのささやく唇の動きが、やけに官能的に見えた。
レムニン
「それは…………」
レムニン
最初に訊くところは決まっていたのに、いざこういう場に置かれると、声が詰まって出てこなくなる。
レムニン
「あのっ、ええと……」
レムニン
「む…………」
レムニン
「……むねを…………」
パストラム
えっ、何もないのに………………ということはわかっているだろうに……………………
パストラム
言いません。わきまえているからです。
レムニン
様式美というものがあって…………………………
パストラム
あるんだろうなあって思います。
パストラム
「うん」
パストラム
片手で胸のリボンをほどきながら、もう片方のあなたの乗っている手を、胸元まで寄せる。
パストラム
「中が見たいの?」
レムニン
「…………はい……」
レムニン
もちろん散々見ている。
レムニン
見てはいるのに……
レムニン
まるで初めて見せてもらっているような気持ちになる。
パストラム
「そう……」
パストラム
「じゃあ、外してみてよ、ボタン」
パストラム
あなたの身体の四分の一くらいはありそうなボタンを指先でつついて示す。
レムニン
「わ……わかった」
レムニン
大きめの鍋の蓋ぐらいはありそうなボタンを、両手で掴む。
レムニン
そうして、上下に引っ張ってみる。
レムニン
「んっ……」
レムニン
いままさに人が着ている服というのは、布が両側から引っ張られているので。
レムニン
それを他人が外そうとすると、その引っ張る力に勝てるだけの強さで押さなければならない。
レムニン
「んん……!」
レムニン
体重をかけて、ボタンホールにボタンを通させようとするが、うまくいかない。
レムニン
もたもたと、時間だけが過ぎ去っていく。
パストラム
「もしかして思ったより大変?」
パストラム
「ごめんね」
パストラム
ふふ、と笑うような声が上からして。
レムニン
「う……っ」
レムニン
憐れまれている。
パストラム
あなたを片手に乗せて、片手でボタンを外していく。
レムニン
「あ……」
パストラム
外れたボタンの奥に真白い肌が見える。
レムニン
自分が汗を額に垂らしても外せなかったボタンは、あっけなく外された。
パストラム
あなたも縮められていなければ、片手で外すことは容易だったはずのボタン。
パストラム
すぐに奥の肌を見せようとはせず、全てのボタンを外しきって。
レムニン
ボタンが外されたところで、その服に手をかけて剥がすことはできない。
レムニン
ただそれを見守らされる。
パストラム
あなたが通るくらいの隙間を作って、あなたごと手を入れる。
パストラム
服の隙間から光が差し込むが、中は薄暗く。
パストラム
仄かに透き通るような甘い香りがする。
レムニン
「わっ……」
レムニン
甘い香りに包まれる。相手の支配する空間に招かれたのだと、実感させられる。
レムニン
「よ、よく見えないよ……」
パストラム
「だよねぇ~……」
パストラム
そうっと上の方を開く。
レムニン
「不思議な気分だ……」
レムニン
手を伸ばして、そっと遠慮がちに肌に触れる。
パストラム
そこに光が差し込んで、真白い肌に触れているのがわかる。
パストラム
どこまでも平坦な肌。
レムニン
小さいこともあって、自分がどこに触れているのか、わからなくなりかける。
レムニン
へそも胸の突起も見当たらない。
パストラム
横を見ても下を見てもなにもない。
パストラム
白い平面。
レムニン
「……きれいだな」
レムニン
素朴な感想。
パストラム
「そう……?」
パストラム
「きみたちからしたら、変でしょう」
レムニン
きみたち……。
パストラム
「特に、ほら」
パストラム
「胸の突起で興奮するとか」
レムニン
「確かに、違和感はあるね……」
レムニン
あるべき場所にあるべきものがないと、どうしても落ち着かない気持ちにはなる。
レムニン
「でも……きれいかどうかは、そういうのとは、関係ないところにあるから……」
パストラム
「そうなんだ……?」
レムニン
「……そうなんです」
レムニン
「逆にきみは、人間の身体を見て、変だって思ったりはしないの?」
パストラム
「うーん……」
パストラム
「あんまりよくわからない」
パストラム
「人間だなあとは思うけど……」
レムニン
「君にとっては比較するようなものではないか」
パストラム
「うん」
パストラム
「自分の体はつくりものだって自覚が結構あるから……」
レムニン
「そう」
レムニン
ぺとりと、身体をひっつかせる。
パストラム
真白い壁。
パストラム
あなたにもう片方の手を添えて抱きかかえるようにすると、あなたの体が白い肌に挟まれるような形になる。
レムニン
「んっ……」
レムニン
視界がすべて肌に覆われる。
レムニン
「心臓も……ないんだっけ」
パストラム
「近いものはあるよ」
パストラム
「だから、たぶん音は聞こえる」
レムニン
「そうなんだ……」
レムニン
耳を押し当てて、それを聞き取ろうとする。
パストラム
どくん、どくんと。
パストラム
核のようなものが動いて、水を巡らせる音。
レムニン
「聞こえる」
パストラム
「巡ってるのは血じゃないけどね」
パストラム
「蜜の成分が入ってる」
レムニン
「逆に蜜は、血のようなものだと言えるわけだね……」
パストラム
「血であり、汗であり、唾液であり、愛液であり……精液か先走りみたいな役割もするかもね」
レムニン
「多岐にわたってるなあ」
パストラム
「水を飲むと、体内で全部蜜になっちゃうんだよ」
レムニン
なるだろうなあ。
レムニン
「ごはんは?」
パストラム
「水分は蜜になる」
パストラム
「残りは体を動かす栄養になったり、体を作ったり」
パストラム
「この体が千切れて再生することって、あんまりないけど」
パストラム
「触手は結構あるからね」
レムニン
「そこはあんまり人間と変わらないんだね」
パストラム
「でも分解効率がすごいよくて」
パストラム
「老廃物みたいなものにはならないんだ」
レムニン
「へえ」
レムニン
「それはすごいな」
パストラム
「だから僕からしてみたら、人間って非効率だなあと思う」
レムニン
「僕もまあ……毎日非効率さを痛感させられてます」
レムニン
煙に会う度に人間の3大欲求の欠陥について愚痴られるけど、あれほどではないな。
パストラム
三大欲求の欠陥の話結構わかる。
レムニン
「人間が進化したら、君みたいな感じになる可能性もあるというわけか……」
パストラム
「そうかも……?」
パストラム
「でも人間全員の体液がこんなだったら、大変なことになっちゃうだろうなあ」
レムニン
「そこはそうだな……」
パストラム
ぐち、とあなたの頭の上のほうで音がする。
パストラム
指先に透明な体液をまとって、あなたのそばに近付ける。
レムニン
「な、何……!?」
レムニン
その香りから逃れて、手の上で後ずさってしまう。
パストラム
「人間って全員がきみみたいに理性が強いわけじゃないし」
パストラム
その指をもっと近づけて。
パストラム
あなたの頬に触れる。
パストラム
「きみみたいな子でも」
パストラム
「理性が勝てないくらい強い毒を浴びたら耐えられないでしょう?」
レムニン
「ひっ……!」
レムニン
触れられたところから、じん……と熱くなった気がした。
パストラム
「毒の致死量って体積と相関があるんだよね」
パストラム
「いまのきみ」
パストラム
「どれくらいで理性が保てなくなるかな」
レムニン
「やっ……」
レムニン
「こ、怖いよ」
レムニン
こうしているだけでも。
レムニン
香りをかがされて、少しずつ身体が言うことを効かなくなりつつあるのがわかる。
パストラム
指先が、ミニチュアみたいなあなたの手を撫で、足先を撫で。
パストラム
透明な毒で濡らしていく。
パストラム
「……怖いよね?」
パストラム
「どこが優しいと思ったんだろうな……」
パストラム
ひとりごちる。
レムニン
「あっ…………」
レムニン
毒が塗られたところから感覚がなくなり……
レムニン
いや、別の感覚で塗りつぶされていく。
レムニン
少しずつ、自分が自分でなくなっていく。
レムニン
「ひ……ぃぃ……っ」
レムニン
でも、それに抗うことができない。
レムニン
「こわ、い……けど……ぉっ」
レムニン
「でも……」
レムニン
「すごく……ドキドキする……」
パストラム
そういうものなんだなあ。気持ちはわかるかもしれない。縮められた時、結構そんな感じだった気がする。
パストラム
指先が服をめくり、その下の素肌を撫でていく。
レムニン
「ああ……っ」
パストラム
やわく撫でたあと、ゆったりした布でもわかるほど膨らんでいるそれに触れる。
レムニン
「あっ」
レムニン
びくん、と身体ごと跳ねる。
パストラム
「汚しちゃうと困るかな……」
パストラム
片手でズボンを下ろし、手であなたを支えながら上の服をめくる。
レムニン
「ぅ……」
レムニン
人形遊びでもするようにはだけられる。
パストラム
もう一度蜜で指先を濡らして、反り立ったそれを親指と人差指で軽く摘む。
レムニン
「あ!」
レムニン
特別刺激を与えられなくても、ただそうされているだけで、熱がどんどん高まっていく。
パストラム
指の腹でそれを扱く。
レムニン
「~~~~~~っ」
レムニン
とめどなく溢れる雫が、パストラムの指先を包む蜜の中に溶けていく。
パストラム
指先に少しだけ力を込めれば、柔らかい指先の肉があなたのそれを包む。
レムニン
「ひ」
レムニン
仰け反る。
パストラム
小さく水音が立つ。
レムニン
「ぃぃぃぃぃ……、ぁぁぁぁぁ……!」
パストラム
粘度の高い水の音。
レムニン
「ぁぁ……あ……っ!」
パストラム
擦り上げ、先端を指で撫でた。
レムニン
手の中で甲高い声で鳴いて。
レムニン
がくがくと、全身を律動させ。
レムニン
下腹部を包み込む指と蜜の中に、白いものを滲ませていく。
パストラム
それを確認すれば、指をそっと離してその白を舐め取った。
レムニン
「…………っ、ぅぅっ、はあ……」
パストラム
白い唇。
レムニン
「…………」
パストラム
化粧でもしたみたいに、口内に近いところが仄かに赤く染まっている。
レムニン
指先の動きを視線で追い、
レムニン
その仕草に、また別種の胸の高鳴りを覚えた。
パストラム
「ちゃんと綺麗にしなきゃね……」
パストラム
あなたを軽々と手で持ち上げ。
レムニン
「わっ」
パストラム
その手が、唇に近付いていく。
レムニン
近づく顔と唇に、思わずへたり込む。
レムニン
もとから、腰が抜けていて、まともには動けやしないが。
パストラム
あなたを座らせたまま。
パストラム
唇を尖らせて、少し開き。
パストラム
まだ白が少し残るあなたのそれに吸い付く。
レムニン
「うひいい……っ!」
レムニン
局部がまるごと唇に抱かれる。
パストラム
その奥の口内には届かず、唇だけでそれを飲み込んでしまう。
パストラム
薄い皮膚で覆われた柔らかい肉が包む。
レムニン
出したばかりのそれが、天を向き、挟み込む上唇をつんつんと突く。
レムニン
ただ唇で触れられただけだというのに、痛いほどに反応してしまっていた。
パストラム
唾液をまぶして、唇を擦り合わせるようにする。
レムニン
「あっ……!」
レムニン
唇のただ柔らかい感触に、湿り気が混ざり始める。
レムニン
「はっ……ああ、あっ……あっ!」
パストラム
ちゅ、ちゅ、と音がする。
レムニン
「んっ! んーっ!」
レムニン
擦れ合う唇の間に揉まれて、燃え上がるようになる。
レムニン
熱の中に融けて、なくなってしまうのではないかと不安になるぐらいに。
パストラム
唇の奥から甘い香りがする。
パストラム
体液は全て同じ液。
レムニン
腰を浮かせる。
パストラム
今、唇に塗られ、あなたにまぶされているこれも。
レムニン
どうしよう。
レムニン
もっとほしい。
レムニン
次第に唇に抱きつくようにして、腰を揺すぶってしまう。
レムニン
唇の間から放たれる香りも、逃すまいと、身体を折って、呼吸で取り込んでいく。
レムニン
与えられる刺激に翻弄されるばかりでなく、自分から貪ろうとしはじめる。
パストラム
好きなようにさせている。
パストラム
あなたを手で支え、時折指で撫でながら。
レムニン
「……ああああ、……っ!」
レムニン
顔に小さな体をもたれかかれさせるようにして、二度目の絶頂。
レムニン
唇の間に、粘ついた雫を落としていく。
パストラム
「ふふ……」
パストラム
笑うと吐息があなたにかかる。
レムニン
「ふぅ……っ!」
レムニン
吐息を浴びせかけられる度に、思考が濁っていく。
パストラム
妖艶に唇についたそれを舌で舐め取って。
パストラム
それから舌を伸ばして。
パストラム
二度果てたあなたのそれに、舌先で触れる。
レムニン
「あうう……っ」
レムニン
指とも唇ともまた違う刺激。
レムニン
「あつい……っ」
レムニン
へこへこと腰が動いて、再び硬くなりつつあるそれを、舌に押し付ける。
パストラム
舌先を丸めてあなたのそれを覆うようにする。
パストラム
それから軽く口で咥え、舌で転がすようにして刺激する。
レムニン
「あっ、……あーっ、あああっ」
レムニン
より濃くなった蜜での愛撫に、がくがくと痙攣する。
レムニン
半開きになった口端から、涎が垂れる。
レムニン
「へん……にっ、なっちゃ……うっ」
パストラム
根本から包むようにして舐め、弱いところを舌先でくすぐり、先端を覆って唾液をたっぷりと含ませて擦る。
パストラム
舌の上に唾液を乗せてあなたのそれを浸す。
パストラム
ふ、と笑うような吐息。
レムニン
「いぃぃぃぃぃっ…………」
レムニン
浸されて、粘膜が、蜜を吸収していく。
レムニン
肌の上をくすぐる吐息にすら、絶頂しかける。
パストラム
手のひらであなたを大事そうに抱えて撫でながら。
パストラム
ちゅう、と吸って、舌と唾液を押し付けて。
パストラム
そのまま舌で擦り上げた。
レムニン
「あーーーっ、あっ、ああああああああああっ!」
レムニン
舌のつぶさな動きも、体格の違いと、刷り込まれた媚薬で、数十倍、数百倍に増幅されて。
レムニン
信じられないような快楽が、身体を貫く。
レムニン
そして、擦り上げられた勢いのまま、びゅ、と勢いよく白精を噴出させた。
パストラム
「ふ……」
パストラム
あなたの体を手で支え、撫でながら。
パストラム
そうっと唇を離して、舌を見せた。
パストラム
その上にあなたの白濁が乗っている。
レムニン
「わ……」
パストラム
「たくさん出たね」
パストラム
そのたくさん、というのも。
パストラム
今のあなたの体では、舌の上を僅かに汚す程度のものでしかない。
レムニン
「そ、そんな……」
レムニン
あなたの言葉を肯定するべきなのか否定するべきなのかもわからずに、言葉が止まる。
レムニン
ただ、目の前に広がる淫靡な光景を、食い入るように見つめてしまう。
パストラム
唇が赤いのはそういうふうに色付けをされているからだ。
パストラム
口を開けば、中身は白い。
パストラム
少しだけ雌蕊の色を帯びて青い舌の上に、白濁がある。
レムニン
ふらふらと。
レムニン
見せつけられる舌に、顔を近づける。
パストラム
質感は人間と似たようなもの。
レムニン
「えっちだ…………」
パストラム
「そうかなあ……」
パストラム
「口内は色付けてくれなかったんだよね」
パストラム
「だからいつもは隠してるんだよ」
パストラム
手を口元に当てがちな理由。
レムニン
食欲が減退しそうな色ではある。
レムニン
「正直……」
レムニン
「僕は君のことが好きだから……」
レムニン
「どんな感じになっててもいいって思ってしまうところは、ある気がする……」
パストラム
「そっか……」
レムニン
多分それは、他のミゼットも同じ気持ちなのだろう。
レムニン
今の自分と彼らに、どれほどの違いがあるのか、わからなくなってきた。
レムニン
「君は自分の口の色、どう思ってるの」
パストラム
「めんどくさいなって……」
パストラム
「びっくりされるから」
レムニン
「はは……君らしいね」
パストラム
「……だって、なんていうか」
パストラム
「きみたちだって血の色に対してどうも思ってないだろ」
レムニン
「それはまあ、そう」
パストラム
「ただ、人間と違うとなにかと面倒ではある……」
パストラム
「別に元からわかられてはいるだろうけどね」
パストラム
「でも結構改めてびっくりされることが多くて……」
パストラム
「爪とかもね」
レムニン
「普段見えるところにないからね」
レムニン
「見えてないところは、きっと人間と同じなんだろうと、無意識に考えてしまうのだろう」
パストラム
「そうなんだよね……」
パストラム
指先を差し出してみる。
パストラム
「気付いてた?」
パストラム
細く白い指。
パストラム
その先の爪は僅かに青に染まっているが、
パストラム
これは何かを塗ったわけではない。
パストラム
人間と同じようにその先の肌を透かしている。
レムニン
這うようにして指に近づく。
レムニン
「これも結構、最初はびっくりした」
パストラム
「あ、気付いてたんだ……」
レムニン
何度も寝てるしな。
パストラム
それはそうだけど。
レムニン
「まあ、考えてみれば、これも当然だよね」
レムニン
爪を掌で擦る。
パストラム
硬い感触。
レムニン
すりすり。
レムニン
「僕の勝手な感想を言えば」
レムニン
「君の身体の特徴にいちいちびっくりさせられるの、好き」
パストラム
「そうなんだ……?」
レムニン
「もっとびっくりさせてほしい」
パストラム
「う~ん……」
パストラム
「花の付け根とか見る?」
レムニン
「え? いいの」
パストラム
「いいよ」
パストラム
「きみだし」
レムニン
「嬉しい」
パストラム
手を持ち上げる。耳の上の、花のところまで。
パストラム
片方の手で髪をかき分ける。
パストラム
髪があなたの肌に触れるとわかるが、髪にはうっすらと産毛のようなものが生えていて、一本一本が花の茎のようだった。
レムニン
「こうして小さな目で見ると……結構、髪も違うね」
パストラム
「うん……」
パストラム
「触覚もある」
レムニン
それはかなり難儀だと思う。
パストラム
岩風呂で嫌そうにしていた原因のひとつ。
パストラム
花があり、花を支えるがくがあり、その先の太い茎が頭の中に繋がっている。
レムニン
「花だな……」
レムニン
情報量のないことを言っている。
パストラム
「花だよ」
パストラム
腹を指差す。
パストラム
「中に入ってるのもおおよそこれ」
レムニン
同じかあ。
レムニン
「そう聞くとなんか……いいのか!?って気持ちになるな」
レムニン
「こんな……丸出しで」
パストラム
「よくないんだろうなあと思う」
レムニン
「つい設計者のモラルについて思いを馳せてしまったけど」
レムニン
「花ってそもそも丸出しなんだからおかしくはないんだな」
パストラム
「そうなんだよ」
パストラム
「というか、僕の体を茎というか、ひとつの植物だとすると、こっちのほうが正しい位置にあって」
パストラム
「下にあるやつが設計者の趣味」
レムニン
「そういうことになるよね………………」
パストラム
「人間って、やっぱ」
パストラム
「人間みたいな体位でセックスしたいらしいから」
パストラム
「……それにしたって、別に花は入ってなくてもよかったんじゃない? と思うけど……」
レムニン
「なんというか、すいません」
レムニン
勝手に人間を代表して謝った。
パストラム
「頭に挿れたくないらしい」
レムニン
確かにそれは絵面が大変すぎる。
パストラム
「まぁここに挿れてもそんな気持ちよくないと思うけど……」
レムニン
「大変だからな」
パストラム
「締まらないし」
パストラム
「中はちゃんと締まるようになってるんだよ、それ用に」
レムニン
「業」
パストラム
「必要だから」
レムニン
「大変だな……」
パストラム
「でも普段は、花まで届かないようになってる」
パストラム
「普通に挿入したとき、大半が全然届かなくて」
パストラム
「たまに花の入口が刺激されてちょっと開くかな、くらいの感じなんだけど」
パストラム
「その花のさらに奥が潰されるくらい大きいものが入るのはさすがに想定されてなかったと思うんだよな……」
レムニン
「なんかすいません」
パストラム
「ていうか、なんか」
パストラム
「こないだその奥のもっと奥をめちゃくちゃにされてから、なんか……」
パストラム
「蜜が止まらないんだけど……」
パストラム
「ヤバいやつだよね?」
レムニン
「えっ!?」
レムニン
「そんなことになってたんだ………………」
パストラム
「この体、血なのか汗なのか愛液なのか判断がつかないのが不便なんだよな」
レムニン
「そうかも」
レムニン
ヤバいのかヤバくないのかすらもわからない……いや血でも汗でも愛液でも出っぱなしはやばいな……
パストラム
「おなか押された時に出てたやつも血っぽいものだった説ある」
レムニン
意味がわかると怖い話?
パストラム
そうかも。
レムニン
「診たほうがいいんだろうか……」
パストラム
「診てもらえるとありがたいけど、診られるの?」
レムニン
「正直わからないけど、僕が診るしかなくないですか?」
パストラム
「そうかも……?」
パストラム
え? わかんない。
パストラム
そうなの?
レムニン
「他のやつに身体診られてもいいなら、もっと向いてるの探すけど」
パストラム
「まぁ医療行為ならいい……けど」
パストラム
「診る過程で絶対体液浴びるから」
パストラム
「ある程度強くないとミゼットになるよ」
レムニン
「そうなんだよな…………」
パストラム
「僕がもっと弱かったら治せる人がたくさんいたかもしれない……」
レムニン
大変だな~
レムニン
「まあほら、今みたいな大きさなら」
レムニン
「直接患部を見れるからね……」
パストラム
「あ~……?」
レムニン
でもそれやると頭おかしくなって花にやんちゃ行為してしまわない自信がないんだよな。
パストラム
あの中異常なくらい感じたしずっと蜜溢れ続けてるし、絶対おかしくなると思う。
パストラム
「でも直接患部診てもらうのはいいかもな……」
パストラム
おかしくはなるんだろうけど……
パストラム
「僕の毒にめっちゃ耐性つけて入ったらいいんじゃないのか」
パストラム
「もしくは僕の毒にめちゃくちゃ耐性があって……性欲がミリもない人が……」
レムニン
「そんな都合のいいやつはいないよ……………………」
パストラム
「はい……」
レムニン
それはロボかなんかだと思う。
パストラム
いないのか? ロボ……
レムニン
「なんでこの話してたんだっけ」
パストラム
「なんでだっけ……」
パストラム
「花を見せて……それから……?」
パストラム
色々な会話があった気がする。
パストラム
あなたの視界にはずっと花が映りっぱなし。
レムニン
花に顔を寄せて、においを嗅いでいる。
パストラム
甘く澄んだ匂い。
パストラム
夜風のような。
レムニン
こうして茎で繋がっているのを見ると、飾りじゃないんだなあというのがわかる。
パストラム
花弁も茎も本物。
レムニン
「いいにおい」
レムニン
「ずっと嗅いでたい……」
レムニン
花びらの端っこを掴む。
パストラム
「ん……」
パストラム
「……ずっと嗅ぐと大変なことになるよ」
パストラム
「いや、今は大丈夫かもしれないけど……」
レムニン
「……戻れなくなる?」
パストラム
「うん」
パストラム
「まぁ、今はそんなに毒入ってないと思うけどね」
レムニン
「……そうかな」
パストラム
「興奮すると匂いが変わるんだよ」
レムニン
「ああ……」
レムニン
「じゃあ、今はそうじゃないのか」
パストラム
「うん」
レムニン
「……恥ずかしい……」
レムニン
「僕ばっかり興奮して、気持ちよくなってるってことじゃん」
パストラム
「そういう要望だし……」
レムニン
「そうだけど」
パストラム
「結構意識的に考えないようにしてるんだよ現状を」
レムニン
「あ、そうなんだ……」
パストラム
「そうです」
パストラム
「頑張っています」
パストラム
「でもそろそろこいつレムニンだな……となりはじめています」
レムニン
「余計なことばっかり話すからじゃないかな…………」
パストラム
「それはほんとそうなんだけど」
パストラム
「余計なこと話さずにいられないんだよな……」
レムニン
君はそういうやつだった。
パストラム
「今のうちに甘やかしとくかと思っています」
パストラム
「そろそろ正気に戻りそうなので……」
レムニン
「甘やかして~」
パストラム
「甘やかすって漠然としてるよな……」
レムニン
それはほんとうにそう。
パストラム
「まぁ」
パストラム
「具体的に言語化できないくらい甘やかされた経験がないのがきみなんだろうから……」
パストラム
手のひらをふたたび目の前に持ってくる。
レムニン
「一般的な定義の甘やかされなら、もう結構してもらった気はする……」
パストラム
「そっかぁ」
パストラム
額にキスをする。
レムニン
「んっ」
パストラム
指で髪をさらさらと撫でて、手のひらで包み込むようにする。
パストラム
触れるようなキスを何度か。
レムニン
弱々しく震える。
レムニン
「すき……」
パストラム
指先が体を撫でる。
パストラム
「うん」
パストラム
「愛してるよ」
パストラム
「愛してる……」
レムニン
「っ……」
レムニン
言葉をかけられるだけでびくりと反応する。
パストラム
繰り返し囁いて、唇を全身に触れさせていく。
レムニン
「……っ、はっ……」
レムニン
再び全身が高ぶっていく。
パストラム
その瞳はあなたをじっと見ているし、あなた越しに全ての人間を等しく見ているようでもあった。
レムニン
「…………っ」
レムニン
その瞳に射すくめられて。
パストラム
「かわいいね」
レムニン
「あ、あっ」
レムニン
触れられずとも、反応してしまう。
パストラム
「かわいい人間たち」
パストラム
「僕はきみたちが愛おしくて仕方がない」
レムニン
そうか。
レムニン
これが“甘やかされる”ということなんだ。
パストラム
「僕を求めて列をなす様も」
レムニン
「あ……、あ……」
パストラム
「手のひらで包めば融けるように自我を失っていくのも」
パストラム
「あるいは、はじめから自我なんてものはなかったのかもしれないね」
レムニン
「うぅぅ……」
レムニン
罪深いことをしていると思っている。
レムニン
こんなことがどうしようもなく屈辱的で……
レムニン
どうしようもなく嬉しい。
レムニン
「あ、あ」
レムニン
指にすがりつく。
レムニン
見上げる。星のような瞳を。
パストラム
「砂粒の全てが星にはなれないことを知っている」
パストラム
「けど、その星を生む砂達を」
パストラム
「あるいは、星なんてどこにもなかったとしても」
パストラム
「そこに砂があり、海があって、空がある」
パストラム
「その光景を、僕は愛しているのかもしれない」
レムニン
一緒くたにされて。
レムニン
均等に扱われている。
レムニン
心の何処かでそうなりたいと思っている。
レムニン
それが願いのすべてではないにせよ。
レムニン
否定することのできない自分の一部分が、慰撫されている。
パストラム
「きみたちが……」
パストラム
「何かを為したとしても」
パストラム
「あるいは、為そうとして、それが風に吹かれて消える程度のものだったとしても」
パストラム
「僕はその全てが愛おしい」
パストラム
僕自身すらその砂のひとつであったとしても。
レムニン
役割は目まぐるしく入れ替わる。
レムニン
僕と君の二人の間でさえ。
レムニン
本当はそう変わりのない二人だったとしても、
レムニン
今は僕が砂粒。
レムニン
「ねえ……」
レムニン
「下ろして」
レムニン
「君の、……足元に」
パストラム
「……いいよ」
パストラム
そうっと下ろす。
パストラム
地面に足がついたことを確認して手を離す。
レムニン
ふらつきながら、あなたを足元から見上げる。
パストラム
真白い足。
パストラム
スリッパも靴下も履いていない素足がそこにある。
レムニン
「……」
レムニン
堂々と晒されたそれに、吸い寄せられるように、近づいていく。
レムニン
つま先に、そっと横合いから触れる。
レムニン
「……好き」
レムニン
「君の頭の上から足の先まで、好きなんだ」
パストラム
「……うん」
パストラム
「僕も、きみが好き」
パストラム
砂浜の砂が、波に攫われ、波に寄せられ。
パストラム
何者かに踏まれ、穴を開けられ、それでもいつの間にか元の平坦に戻る。
パストラム
その砂浜の強さが好きで、
パストラム
それを構成する砂粒を愛している。
レムニン
こんなに遠くに来てしまうと、もう相手の顔を見ようと思ってもなかなか見れない。
レムニン
樹のようにそびえる、白い脚の柱の輪郭を視線でなぞる。
パストラム
つるりとした肌。
レムニン
でもこれこそが、砂にふさわしい目線の高さだと思う。
レムニン
つま先の指の間に、顔を埋める。
レムニン
「好き……」
レムニン
ちゅ、ちゅ、と吸い付く。
パストラム
「ん……」
レムニン
指を抱きかかえて。
レムニン
湿った息を吐きながら、舌を這わせていく。
レムニン
こんな浅ましい行為が、見下ろす側からはどう見えているのか。
レムニン
想像するだけで、動悸が激しくなる。
パストラム
もう片方の脚先で、背中を撫でるようにする。
レムニン
「あっ……!」
レムニン
過剰なまでの反応。
パストラム
頭を指でなぞり、首筋を通って、背中を押す。
レムニン
「うあ、っ……!」
レムニン
手指とは性質の異なる力強さを感じる。
パストラム
腰から背中にかけてをあやすように擦る。
レムニン
「ひぃ……っ」
レムニン
足にすがりつくように寝そべって、身体を押し付ける。
パストラム
僅かに体重をかけて、その小さい体を押す。
レムニン
「はっ……あっ、ああ……っ!」
レムニン
拇指球に身体全体を抱かれる。
レムニン
へばりつくようにしていた身体が、平べったく押される。
レムニン
その腹の下で、みなぎったものが、指の合間に擦りつけられる。
レムニン
「……っ、すきっ……すきいっ……!」
パストラム
指を少し動かして、それを刺激する。
レムニン
「ひうう……!」
レムニン
足の白さも。つるりとした感触も。
背中にのしかかる重さも。
レムニン
流麗な曲線も。見下ろす視線も。
レムニン
その全部が愛おしい。
パストラム
「うん」
パストラム
凪いだ声色。透き通る夜の香り。
パストラム
「愛してる」
レムニン
「…………っ!」
レムニン
その一言で。
レムニン
足の間に挟まれた全身が、びくりと痙攣して。
レムニン
惨めな姿のまま、とくとくと、足指の間に精を漏らしていく。
レムニン
「あっ……ありがとう……ござい……ます……ぅ、っ……」
レムニン
そのまま、ぐったりと力を失う。
パストラム
あなたが落ち着くまで、足で背中をさすっていた。
レムニン
 
レムニン
「…………」
レムニン
元の姿に戻って、ベッドに座り込んでいる。
パストラム
横でそれを見ている。
レムニン
「ふ~~~……」
パストラム
とりあえずジャージはもう一回洗っておくか……
レムニン
「甘えるって大変だな………………」
レムニン
これって甘えでいいのか?
パストラム
「甘やかすのも大変なんだなと思いました」
パストラム
甘やかしだったのか?
レムニン
「思ったより面倒をかけたな……」
パストラム
「え? いや……」
レムニン
「面倒ではなかった?」
パストラム
「別に」
パストラム
「いつも思ってることだし」
レムニン
「まあ……それはそうだろうけど………………」
パストラム
「あっそういう感じなんだ~とは何度か思ったけど……」
パストラム
「まあでも、そうなるよなって感じではあった」
レムニン
「恥ずかしいです……」
パストラム
「そっか」
レムニン
「反応薄い」
パストラム
「いや、まぁそりゃ」
パストラム
「日頃理性で自分を律しまくってる人が欲望を出しまくったら恥ずかしいんだろうなということは想像に難くない」
レムニン
「一般的な見解をありがとう」
レムニン
「変にそこで慰めたりしないところがきみのいいところです……」
パストラム
「慰めるようなことないだろ」
レムニン
そういうとこだぞ
パストラム
「別に」
パストラム
「みんなそうだろうとも思うし」
レムニン
「いやなんか」
レムニン
「君の前では本当に欲望のタガが外れまくってる日々なのが」
レムニン
「本当に恥ずかしい……」
パストラム
「みんなそうだよ……」
レムニン
「う、うるせ~~」
パストラム
「僕の前で欲望が出ない奴のほうがおかしいんだって」
レムニン
「みんなそうだからこそ耐えたいんだって」
パストラム
「頑張ってるな~って思います」
レムニン
「それはどうも……」
パストラム
「帰ってこれるからすごいよ」
レムニン
「それは君もセーブしてくれてるからじゃない?」
パストラム
「どうだろう」
レムニン
「本気で僕を壊そうとしてきていたら、耐えられるかどうかは自信がない」
レムニン
「まあ、それは条件設定がフェアではないか……」
レムニン
いつも壊そうと思って壊してるわけではないだろうしな。
パストラム
「本気で壊そうとしたら本気で対抗してくれるでしょ」
レムニン
「確かに…………」
パストラム
まぁその本気を超える無意識というのが結構発動しちゃって壊しちゃうんだけど。
レムニン
「どうこの魔法を消せるかという方向に意識が盛り上がってしまう気はする」
パストラム
「はい」
パストラム
ロジック考えてると冷めるらしいしな……
レムニン
「おかげさまで、もう弟子相手に余計な嫉妬はしなくてすみそうだ」
レムニン
ほんとか?
パストラム
「弟子はセックスしてないからね」
パストラム
「弟子にするセックスってこんな感じでいいの?」
レムニン
「え?」
レムニン
それ僕に聞くの?
パストラム
「だってどう考えても穴に対して棒が小さすぎるだろこれ」
パストラム
「弟子くんにセックスしてやったほうがいいとかいうけど」
パストラム
「どうしたらセックスになるのかわかんないんだよ……あ、縮めなきゃいいのか」
レムニン
「縮めること前提になってる」
レムニン
その認知!歪んでいる!
パストラム
「なんか縮められたそうだったんだもん」
レムニン
「こいつ僕より息をするように人を縮めるようになってる 怖い」
レムニン
いやミゼットがそもそもそうなんで今更なんだけど。
パストラム
「いや……全然わかんないんだよね」
パストラム
「意図的に縮めるのはわかるんだけど」
パストラム
「……あー……?」
パストラム
「僕に恋すると自分のこと小さい生き物だと思いこんじゃうのか……」
レムニン
「どうもそういうことになっているみたいだな……」
パストラム
「なんで……?」
レムニン
「僕の悪影響が濃く出てるかも」
パストラム
「なるほどな」
レムニン
「まあ実際、恋したほうの負けという名言もあるとおり」
レムニン
「最初に恋したほうは、イニシアティブ的に大きな遅れを取ることになるから」
レムニン
「それを明示する魔法であるということなのだろう」
パストラム
「なるほどなあ」
レムニン
「話は戻るけど、弟子は童貞(実質)だからまあ何されても満足でしょ」
パストラム
実質。
パストラム
「ちょっと抜いてあげるくらいでもセックス判定になるってことか」
レムニン
「そういうこと」
パストラム
「……胸見せただけじゃダメだったのか?」
レムニン
勝手に弟子を代弁してしまっている。
レムニン
「接触がないとな~」
パストラム
「触ったじゃん」
レムニン
説明がめんどくさい
レムニン
「まあ、抜いてるうちに要求が過大になって生ハメを要求することはあるかもしれないな」
パストラム
「生ハメ」
レムニン
「そうなったらその時考えてください」
パストラム
「別にいいけど……」
パストラム
「どうせ奥まで入ってこないでしょ」
パストラム
すごい罵倒。
レムニン
さすがにちょっとかわいそうになった。
パストラム
「いやそもそも結構な人数が奥まで入れないんだってば」
レムニン
どうもそうらしい
パストラム
「……デカさって強さに比例するの?」
レムニン
「調べたわけじゃないから断言できないが、多分関係ないと思う」
パストラム
「そうなんだなあ」
パストラム
煙とかいろんな強い魔法使いのアレがデカかったら大変だよなと思う。
レムニン
「でも外れ値のペニスを持っていることで世界観が歪んで魔法の発現につながるということはあるかもしれんな」
レムニン
「でもそれで覚える魔法って多分ペニスの魔法なんだよな」
パストラム
「ペニスの魔法」
パストラム
「レムニンなんでペニスの魔法じゃないんだ?」
レムニン
「喧嘩売ってんのか?」
パストラム
「素直な疑問を問うているだけです」
レムニン
「僕はまあこんなもんかと思ってたから、世界観に影響が出なかったんだと思う」
レムニン
真面目に応えるべき疑問だったかこれ?
パストラム
「昔からでかかったんだ」
パストラム
少なくともこっちは結構真面目に聞いています。
レムニン
「セクハラ?」
パストラム
「え? 別に?」
レムニン
この幼女が……
パストラム
幼女?
パストラム
「なんというか」
パストラム
「レムニンがいつものレムニンでちょっと安心したところはある」
パストラム
「結構このままミゼットになったらどうしようと思ってた」
レムニン
「怖いよ~」
レムニン
「わかんない……もう膝までミゼットになってるかも……」
パストラム
「怖い」
レムニン
すげえ弱音出た。
レムニン
「まあ……僕にはまだやることがあるからな……」
パストラム
「そうだぞ」
レムニン
「まあなんか」
レムニン
「ひとしきり甘えきると、我に返っちゃうんだよな」
パストラム
「あ~……」
レムニン
「こいつ別にそんな大したやつじゃないぞって」
パストラム
「そうだぞ」
レムニン
「ほっといたら勝手に自分に火をつけて燃やして死んでそうだからな」
パストラム
「ほんとそう」
パストラム
「こんなやつを崇めるのヤバいよと思っている」
レムニン
「そのへんわかってないと騙されてミゼットになってしまうんだなあ」
パストラム
「わかってても都合よく変になんか信じてミゼットになっちゃうやつもいそう」
レムニン
「こんなお人形さんが勝手に火をつけて死んだり勝手に海に落ちて死んだりするようなポンコツだと普通わかんないからな」
レムニン
「額にアホとか描いておいたほうがいいかも」
パストラム
「見た目がいいとみんな騙される」
パストラム
「肝心の魔法使うときに困るんだよそれ」
レムニン
「それは確かにな……」
レムニン
「僕もあのジャージ着てガクッと弱体化したのを感じたから、額にアホとか書かれても同じことが起こると思う」
パストラム
「だよね」
パストラム
「なんというか、思い込みと思い込ませ能力だなあとなった……」
パストラム
アレ着てる時のレムニンびっくりするくらい口調違ったしな。
パストラム
「僕も着る服は選ぼうと思います」
レムニン
「身だしなみに気を使ってえらい」
パストラム
「なに着てもかわいいんだけどね」
レムニン
「ものすごい自己肯定力」
レムニン
「街に繰り出すときは着ぐるみとか着たほうがいいかも……」
パストラム
「あ~……」
パストラム
「それいいかも……」
レムニン
いいんだ。
パストラム
「こういう……普通にかわいい服で外に出るとね」
パストラム
「最悪ミゼットが増えます」
レムニン
「いやすぎる」
レムニン
「僕も普段から下等生物下等生物言うてますけどね」
レムニン
「街の角にいるおいしいパン焼いてくれるおじさんが、ある日急に君の手の中で転がされてたりしたら」
レムニン
「相当落ち込むと思う」
パストラム
「うん……」
レムニン
「僕はこういうやつを飼ってるんだなあ」
パストラム
「そうなんですよ」
パストラム
「僕もなぜかこんな魔法が発現してしまって……」
パストラム
「はあ~……」
パストラム
「もうちょっとしたら恋の魔法使いって呼ばれたりすんのかな」
パストラム
「嫌だな……」
レムニン
「ガンバ」
パストラム
「なんとかしてよ~呪言~」
レムニン
「やめろ」
レムニン
「僕その二つ名マジでいやなんだよ」
パストラム
「なんで?」
レムニン
「言霊って魔法の初歩の初歩だからね」
レムニン
「君も使ってるじゃん」
レムニン
「それが二つ名になるの、こう……」
レムニン
「料理人だったら“千切りの”みたいな感じだよ」
パストラム
「みんなが使ってるものの中のすごいやつってことだからいいんじゃないの?」
パストラム
千切りがうまいやつはすごいぞ。
レムニン
「まあ……すごいのかもしれんけど……」
レムニン
「自分の二つ名ってみんな多かれ少なかれ恥ずかしいと思っているのかもな」
パストラム
「そうかも……」
パストラム
「僕も恋とかみんな使ってるでしょって思うし……」
レムニン
それはちょっとわかんないな
パストラム
最低限度の愛がないと魔法なんて使えないし……
レムニン
それはそうかも。
レムニン
「小人作りすぎて小人の魔法使いって呼ばれるのとどっちが嫌?」
パストラム
「どっちも嫌……………………」
パストラム
「あ、でも」
パストラム
「小人にならなくても恋させることはできるから」
パストラム
「あと小人の魔法使いだとなんだかよくわからないだろうから」
パストラム
「有利かも」
パストラム
わかりやすい方で呼ばれるに決まってんだよな。
レムニン
情報アドバンテージを考えてる
レムニン
まあ普通に恋なんじゃないでしょうか……
パストラム
嫌だ~
パストラム
「そういえば今回ひとつ気になったことがあって」
パストラム
「連続絶頂した後にこんな出してるの、魔法? それともめちゃくちゃ精力があるの?」
レムニン
「え……?」
レムニン
「わざわざ魔法でそういうことすると思います?」
パストラム
「しないだろうな」
パストラム
「精力があるの、魔法使い的に有利な気がするし」
レムニン
「一生セクハラされてる」
パストラム
「めちゃめちゃセックスできてめちゃめちゃ魔力得られる」
パストラム
「効率の話をしてるんだけど?」
レムニン
「はい」
パストラム
「じゃあ効率じゃない話でもするか」
パストラム
「誘いたくなったら誘ってもいいんだなって」
レムニン
「……ほう?」
パストラム
「他人とセックスしてきた後とかでも誘っていいんだなーって思いました」
パストラム
「誘ったけど勃たなかったみたいなこととかなさそうだし」
レムニン
「ああ」
レムニン
「そこ気にすることあったんだ」
パストラム
「そりゃまあ」
パストラム
「疲れてるなら後日のほうがいいのかなとかさ」
レムニン
「まあ……」
レムニン
「君とするときはいつも元気出るからね」
パストラム
「そうなんだ…………………………」
レムニン
「なんなら……」
レムニン
肩に腕を回す。
レムニン
「今からだってできる」
パストラム
「ん……え?」
パストラム
「今……? 今から?」
パストラム
「あれだけやったあとに?」
レムニン
「さんざん大きい君を味わったから、普通の君も抱きたくなってきた」
レムニン
甘いものを食べたあとはしょっぱいものを……という例えは君には通じないんだったな。
パストラム
その言葉だけでなんかお腹の辺りがぎゅっとなるし、なんかじわっとした感覚もある。
パストラム
「…………はい」
レムニン
笑う。
レムニン