「レムニン~」
「なあレムニン」
「覚えておいたほうがいいこととか
やっといたほうがいいこととかある?
……いや、あるな」
一人で問うて一人でひらめいています。
「いまのうちに魔法に慣れておきたい」
「お、随分モチベーションにあふれているね」
もう少し何もしない時間を楽しむ気でいた魔法使いはダラけていた。
「慣れるというと使う側として?」
「慣れないと死ぬって言うし……」
「使ったらいいのか使われても覚えられるのかわかんない。
適性がないとダメになるって話だったけど」
「とりあえずめちゃくちゃ力注がれてみたら感覚掴めるのか?」
「まあそう。
しかしな~僕、魔法のこと全然知らない相手に魔法を教えるのは
始めてなんだよな……
ハイハイしてる赤子に算数教えるぐらい難易度高いかも。
なんて言っててもしょうがないしいろいろ試してみようか。
人を吸って島を出て、ちょっと力も戻ってきた気がする……」
子供が戯れるように指を突きつける。
「“小さくなれ”~」
なった。
「レムニン教えるのめちゃくちゃ下手そ~」
「結論しか言わないから」
水仙の魂を綱引きする話で歩を置いてけぼりにしてたなって思い返しています。
「…………」
「……これはえーと。僕を騙してるわけだ?」
別に教えてもらったわけじゃないけど観察しててなんとなくわかることがあり、
今やってるのってプラセボの延長だよな、と理解している。
ということは今僕は自分のことをめちゃくちゃ小さいと思いこんでいて……?
「うーん、なんか冷静に考えて理屈を分解していくと結構変な感じがしてくる」
「夢の中で夢であることを認識するみたいな……」
「そういうこと」
ひょいと手に乗せる。
「本当は頭を撫でてかわいがって、愛玩されたいと思わせたり。
何らかの方法でじわじわと精神を追い詰めて
僕には逆らえないということを理解させて心を折ったり。
自分が弱く取るに足らない存在だとわからせることで、
自分が小さいという現実を受け入れさせるわけ。
これが騙しのテク。
君は僕のことが大好きなのでそういう手順をスキップして
小さくすることができる」
参考になっていますか?
「大嫌いって言ってるんだけど?」
ちょこんと手のうえにおさまりました。
「まぁ僕もよーし魔法受けるぞ~! って思って受けてるからね」
「じゃあ逆に大きくするには強大な存在だということをわからせればいい?
でも強いものには魔法効かないよね? 難しいな……
小さいものだとやりやすそうだけど」
あれ? じゃあなんで今僕小さくなってんだ?
魔法が使えなくてめちゃくちゃ防御力がないと思い込んでて
なおかつ魔法を使われたがってるからか……
「ていうかこの魔法かなり最強に近いな」
「性転換といい、想像さえさせられればなんでもできちゃうわけだ」
「連続絶頂する催眠魔法で機能停止させられたら
全然普通に僕の上位互換じゃない?」
「かわいいねぇ~」
普段出さないタイプの猫なで声を出しながら
指でミニパストラムの頭を撫でている。
「大好き大嫌いはさておいて信頼があるとハードルは低くなる。
やれることが想像力の限りに存在するので可能性だけなら無限かも。
弱点としては効かない相手にはまったく効かないってとこだね。
特に魔法使い連中はどいつも強固な自分だけの真実──
零次観測地点を有しているから、まともにやっても弾かれがち。
だから実はかなり弱い方なんだよね、タイタニアでは」
むにむに……と頬をつついている。
「連続絶頂させるだけなら君の毒のほうが
全然出力も安定度も違うと思うな~」
なんなんだよその声。怖い。
「あー、まぁここから殺されたりはしないだろうなって思うからな……
応用が効くな~って思ったんだよ、あの島で」
その結果過労死しかけてたわけだけど……
大丈夫なの?
「なに……なんて?
えーっと……精神抵抗力が強くてそう簡単には騙されないってこと?」
「そうすると物理的な攻撃である僕の毒のほうが効く」
「なるほどな……」
「……この毒ってタイタニアでも通用するの?」
撫でられたりつつかれたりしています。
「暑いんだってば」
「そういうこと。
言葉をはねのけられても、物質は拒むことが難しい。
剣や矢を無効化する魔法は結構あるけど
君の毒みたいなものはわりと防ぐ手が限られてくるし
じゅうぶん魔法使い相手にも通用すると思うよ~
君が魔法を修めるなら、その毒を強くする方向性で
考えてみるのもいいかも~」
お椀のように両手のひらをすぼめて、
その間にパストラムを持つ。
顔に近づけて、むにと唇を頭に押し付けた。
「のぼせちゃう?」
口元だけで笑う。
「極めたらレムニンより手っ取り早く強くなれそうってこと?」
「いやなんかでも20年生きてるとか言ってたな。
どれくらい修行したら強くなれるんだ?」
年数のことがわかんないからよくわからない。
20年って死ぬほど長い気がする……。
「……のぼせる……っていうか」
「こわい……」
ぺちぺち触手で口元を叩いている。
これくらい小さいと毒分泌しまくっても効かないだろうな……
あらゆるものが大きいし落下したら死ぬよなと思う。
あ~こういう想像力だよな怖さって。
知ることというのは怖いものを増やすことであるなあ。
「落下と誤飲と無力感からくる恐怖って感じ」
「暑いから思考力も奪われてる……」
「おまえの思い通りに催眠にかかっているなあという感覚がかなり強い」
冷静に解説してるけどけっこうどきどきしている。
「人の願いを叶えたり、逆に人を殺したりして。
自分の存在にできるだけたくさんの意味を背負わせる。
それを繰り返す必要がある……
基本的には長く積み重ねるほど強い。
強い妖精は普通に三桁年四桁年生きてるし。
まあ何がやりたいかだよね……
無目的に強くなってもしょうがない。
戦いの話なら地力の差があっても
相性差であっさり死ぬこともあるし」
ふー、と湿った息を浴びせかける。
「こうやって弱体化してマウント取られてしまうと、
あとはされるがままだよね。
催眠もかけ放題……
まあこれ以上何かをする必要なんてもうないんだけど。
文字通り手中にあるわけだし」
くるりと手の中でパストラムの体をひっくり返して。
足を口に含んでしまう。
塗れて熱を孕んだ舌が、太腿を撫ぜる。
「君も怖いという感情があるのかい?
そういうところは人間的かも。
もっと見せてほしいな、そういうところ……」
「力がとりあえずあって困ることなくない?
あ、力の税とかあったりして面倒なのかな」
「でも人殺すのは嫌だな~……」
なんて喋ってないと目の前の感覚に集中しちゃうので、
結構意図的に喋って思考を回している。
「……とりも縮めてるけど、
これもしかして管理の楽さだけじゃなくて趣味も兼ねてるだろ」
「そりゃあ……怖いっていうか……」
くらくらする……のぼせる……だけじゃないんだろうなこれ。
「……わかんないな、なんて言ったらいいんだろうな……」
びく、と僅かに身が跳ねる。
身じろぎをする。
太腿の内側が仄かに甘い。
顔が近いからたぶん花の香りもしている。
時折苦しげに息を吐く音が、小さく聞こえる。
「強いことがバレると頼られるし因縁もつけられる。
過ぎたるはなんとやらだよ」
じゅる、と音を立てて舌が動く。
内腿をくすぐり、腹にも登り、味を確かめる。
「うん。趣味。
手足が動かないようにするよりも……
動けるのに無力っていう状態のほうが
より屈辱的でいい」
脚をくぐらせた舌先が、パストラムの眼前でゆらめく。
唾液にてらてらと光っている。
「このまま口に含んで食べてしまっても、
この船のみんなは誰もそれに気付けないんだろうね」
「……っ、ひゃ……っ」
つるりとした腹を撫でれば声が出る。
でかい生き物みたいだなあという冷静な感想に
いやこんなでかくてぬるぬるした存在がいてたまるかってセルフツッコミを入れた。
……いるな。僕だな。
一旦こういう状態になったらなんてことない言葉でも催眠の効果が強まる気がして、
そう考えるとぞわぞわしてくる。
というかそろそろわかってきたんだけど、
魔法がどうこうっていうかこいつ純粋に楽しんでないか……?
「趣味……が、悪すぎる……」
思考とは裏腹に甘く蕩けたような声しか出なくて、
言葉が途切れ途切れになる。
甘い匂いがする。
自分でもそれがわかって、それがさらに恥ずかしいなと思った。
特に致命的なところを触られたわけでもなんでもないから、
つまり防衛反応とかではなくこうなってるってことだ。
「今更」
味わう度に舌の熱さが高まっていくようだった。
甘い香りをより味わおうというようにじゅ、じゅと
啜るように唇と舌が動く。
一度引き抜いて、指に身体をぶらさげさせて、
外気に触れさせる。
塗れて光る昏い口の内側を見せつけるように。
「非力に足掻く下等生物を君だって愛らしいと思うだろう。
それと同じさ……」
もう一度口に身体を含む。
唇に挟まれながら、ゆっくりとパストラムの
全身が引きずり込まれて、最後には完全に
レムニンの口の中に消えてしまう。
唇を閉じてしまえば、真っ暗闇の体内洞窟。
舌先が、小さなパストラムの顔をひと撫でする。
舌肉と粘膜が、ぎゅうう、ときつく抱きしめる。
唾液溜まりのぬかるみに沈めて、溺れさせようとする。
口腔という狭い部屋、パストラムという食べ物から
味を、そして声を絞り出させようとしている。
「ふ。……」
空いた手を、自分の脚の間に運んだ。
「愛らしいっていうか……愛してるっていうか……
足掻いてくれたら嬉しいけど、
興奮は……っ、しないよ、別、に……」
言いながら、口が近付いてくるのに何も抵抗できなくて、
それに恐怖でも怒りでも苦しみでもないなにか違う感情を抱いて、
レムニンの指を小さい雫で濡らした。
非力に足掻く下等生物に興奮しないっていうか、たぶん、逆だ。
その点では性癖は噛み合ってるのかもな。やだな。
僕のほうが強いのにな。僕のほうが強いからか?
「……っ、あ、わ……っ!?」
考えているうちにぐらりと体が舌で持ち上げられ、
視界が真っ暗になっていたことに遅れて気付く。
「ぅあ……っ、ひ、……んんん~~~っ……」
舌で転がされれば悲鳴が漏れ、
舌先が顔に触れればぞわりと腰から甘く痺れる感覚が声を発させて、
潰されれば空気が押し出されて声が出る。
「……ぁ、……は、ぁ……」
唾液をまぶされて、自分を通り過ぎていった唾液が、
甘ったるくなっているのだろうということがわかる。
口内に甘い香りが満ちる。
体が熱を持っているのが体温をうつされたからってだけではないことが、
嫌になるくらい自覚できた。
体が甘く溶けるような感覚がして、思わず暗闇の中肌を触って確かめ、
唾液で濡れていて手が滑り、それでまた甘ったるい声が出る。
そろそろ認めないといけないんだけど、これはすごくいいらしい。
おそらく普通に刺激されるよりよほど。
(あ……動いてる……生きてる……)
粘膜や舌に小さな手や触手が触れてくる感覚がある。
知恵や尊厳のある生き物を、自分の体の中で溺れることしかできない存在に貶めることがこんなに楽しい。いつだったか。タイタニアを訪れたまれびとを、優しく世話して、二ヶ月をかけて信頼を築き上げた後、小さくして、口に含んで、一本一本手足を噛み砕いてやったときはよかった。どうしてこんなことをされているのか。なぜ大好きな男の子に食べられなくちゃいけないのか。自分の存在がこんなくだらないことで消えてしまうのか。そんな絶望がたまらなく美味しかった。その味をこの場でもう一度感じたいと思ってしまう。ダメなのに。せめて二ヶ月以上は保たせないと。今は甘く噛むだけで我慢しよう。ほら。顎に少し力を込めただけで君の身体はばらばらにちぎれてしまうんだよ。怖い? 苦しい? 嫌? もっと別な感情? 尖らせた舌で、身体の隅々まで愛撫する。触手の付け根。腋。首。髪。舌先の感覚はますます研ぎ澄まされて、顔を舐め上げれば、どんな表情をしているかまでつぶさに判別できそうだった。口蓋と舌の間で挟んでとらえたまま、こくりと唾液を嚥下する。甘ったるい。パストラムの味。この喉の動きの意味を、パストラムはわかっただろうか。このまま船の中を散歩して、誰かに、みんなが大好きなパストラムが飴玉に成り下がっている様を見せ付けてやりたい。でもさすがにダメだな。僕の下がこんなことになってるから……先にイかないように、船室のベッドの上で転がって、仰向けになったりうつ伏せになったり身体を丸めたりして、発情を逃がす。
そして、ひときわ強く、舌と頬の筋肉で、中のものを締め上げる。
「“イけ”」
繰り返し。
「“イけよ”」
冷たく叩きつけるような声で。
やっぱお守り持っとかないとな……とどこか冷静に思う。
いやこんな状況で効果あるんだろうか。
こういう状況でも効果があるようなものじゃないとダメだな。
この毒は魔法使い相手にも機能する、つまりはそういうことだろう。
性癖歪んでるな、たぶん互いに。
重力の向きがレムニンの動作に合わせて変わったような気がするけど、
頬や舌で転がされ、引っ張られて、もうよくわからなかった。
触手をいろんな方向に伸ばして、それが舌で絡め取られ、全身を舌で愛撫される。
奥で喉の筋肉が動く音がして、唾液の波が引き、
何が起こったか理解してまた濡れる。
どれくらい体の水分が毒に変わって放出されたのかわからない。
たぶんレムニンはわかっているのだろう、
答えが知りたい気持ちと知りたくない気持ちが半々くらい。
「……ぁ、やだ……っ、や、あ、あ……っ♡」
自分から発せられる声が妙に甘くて、
あっ本当に演技以外でこんな声出るんだな、と思う。
いつもなら面白がる余裕があっただろうに、今はそれがひどく恥ずかしくて、
それすらも興奮材料に変わっていって、口内を甘くする。
自分の触手同士が擦れて、逃げようとして舌に阻まれる。
じたばたともがく気力ももうないから、曖昧に抵抗して、
だんだんそれもできなくなって反射で体が跳ねるのに身を任せる。
頬の壁。上顎の天井。舌の床。
それがレムニンの意思ひとつでせり上がり、うねり、
自分を包み込むさまに、得体の知れない感覚がある。
声がする。
その声に抗う術は持っていない。
「う、ぁ、あ♡ あっ♡ ぁ、~~~~……っ♡」
がくがくと足が震えて、その振動が舌と頬に吸われ、声が裏返る。
花を伝う雫の感触がする。それでまた跳ねる。
まだ痺れるような甘い感覚が全身にあって、吐く息すら甘ったるくて、
しばらく蔦一本動かせずにいた。
圧迫。暗闇。酸欠。恐怖。
君が媚毒で人を試すように僕もこうして人を試す。
そうして得られる確からしさこそが魔法を強くする。
舌で身体をこね回すのをやめて、内側から響く声に静かに耳を傾ける。舌のベッドに寝かせて、口腔内の粘膜を揺らさせるままにする。それから、溢れる蜜に舌先を押し付けて、ぢゅううとガムの味を絞るように吸った。
それにも満足すれば、口を開いて、小さなパストラムを掌に落とす。
「どうだった?」
それから、ゆっくりと下へと下ろしていく。腹近くまで。
「僕はこんなことになっちゃったよ……
君が良すぎてさ……」
むわりとした熱気と独特の臭気。
脚衣がはだけられ、レムニンの肉の塔が、すでに外に晒されていた。
ただでさえ長大だったものは、今やパストラムの背丈の数倍となり。
生々しく震え、先端からは涎を垂らすものが、パストラムを見下ろしている。
決して、媚毒の影響だけではあるまい。
「ひ、ぁ、あ――――……♡」
蜜を吸われてまた絶頂する。それでまた口内を揺らした。
それから取り出されて、おもちゃのように手のひらの上をころんと転がる。
「……これが催眠で、精力自体は変わってないなら……
普通のセックスより手っ取り早くて、効率がいい」
「体液の無駄もない……し、理にかなっては、いる」
「でも、安全性を……検討する必要があるなって……」
言い終わって、あらく呼吸をする。
体ががくがくと震えて、手のひらの上で上半身を起こすのがやっとだ。
まだ快楽の波が引かない。たぶん腰が抜けて動けない。
口だけが回る。頭がぎりぎり追いついているかどうか。
体は快楽に溶けていて、全身が気持ちよかったとレムニンに伝えたがっている。
そんな陳腐でわかりきった感想を伝えてどうしろっていうんだ?
でも僕みたいなのがその陳腐さに負けてるのがいいんだろうな。
手のひらが揺れたから、ほとんど力の入らない手でしがみついた。
だんだんと視界を埋め尽くしていくそれを見上げる。
噎せ返る匂いに脳を殴られたような感覚がして、
自分はいつもこういうことしてるのかなと思った。
「……いや……入らないだろ。どうするつもりなんだ……」
「効率。効率か、ふふ。
パストラムらしい返事で嬉しいな」
がんばって言葉を紡ぐ様子に、小休止を与えたことが正解だったと悟る。僕はパストラムと違って相手がキャパシティ超過で陳腐な反応を返してもがっかりするような感性はないが、パストラムに関して言えば屈しない姿勢を見せてくれることがとても嬉しい。それだけで思わず射精してしまいそうになるのを我慢する。
「入れるだけが行為じゃない。
入れられるような身体に変えてやってもいいけど、それはまたね……」
己の脚を広げる。
パストラムを掌に捉えたまま、反り返った幹に押し付ける。
生臭く湿った、高熱の柱が、パストラムの全身にのしかかる。
血管の隆起やカリの段差もが、生々しく小さな体を苛むだろう。
「身体痛めたら、治してやる、からっ……
安全性はっ……それで、勘弁して……」
幹にそって、パストラムを握った手を上下に動かす。
さすがに、ふう、ふうと呼吸が乱れる。
自慰を始めている。
パストラムを巻き込んで。
「茶化すなよ……」
なんなんだ。
ちょっと休憩があれば思考が戻ってくる、というより戻すようにしている。
意識的に頭を回して、理性を取り戻そうとする。
人に理性的であることを強いるなら自分もそうでなければならない。
催眠状態下でのなるべく正確な状況把握の方法について
今学んでおかないとまずいなと思ったんだけど
なんかもうそういう感じでもない気がするんだよなレムニンは……。
だってこれ趣味だろ。何も教育じゃないだろ。
これが教育って言って通るならあらゆるセクハラが許される。
「……っ、うぁ……っ、な、なに……?」
段差が体に擦れて声が出る。
普通に触るだけではなんてことない小さな凹凸が、
いろんな液体が混じって湿った体に押し当てられて、
それで出てくる声がどこまでも甘くて自分でも驚く。
何が楽しいんだこれ? 普通に邪魔じゃないか?
元の大きさに戻して触らせたほうがよくない? よくないんだろうな。
考える思考と裏腹に体がびくびくと震えて感じている。
触覚の刺激と、口内くらいに熱いそれと、におい。
先走りが頬を濡らす。
その全てが快楽に変わっているのを感じる。
「茶化してないさ」
このやりとり前にもやったな。
「ん、ふ……知恵と尊厳がある生き物をさ……
オナニーの道具にするのが一番いいんだよね……」
素直に告げる。
竿を伝って滴る汁が、やがて相手の全身を濡らしていく。
最初はパストラムも身動きできる余地があった掌の圧迫は
次第にそれを許さない強さになっていく。
握りしめられ、一緒に扱かれながら、少しずつ上に登っていく。
「あ~~ごめんね。じゃ、出す、から……」
僕結構だめなやつかもしれない。
パストラムは真面目に魔法を勉強したいって思ってるのにな。
達する直前に、手の中のパストラムの身体を
砲塔の直上にぶらさげる。
そして。
ごぷ、と重い音を鳴らして。
おびただしい量の精の塊が、断続的に、
掌中のそれへと、叩きつけられた。
さすがにその性癖はわからない。難儀だな。
あー僕のこと理解に苦しむ怖いって言ってるやつの気持ちって
結構こんな感じなんだろうな。
あつい。くるしい。
生命の危機みたいな感覚がある。
指の隙間でギリギリ呼吸をする。透明な液が流れてきて空気を失って溺れかける。
「…………は、あ? っうわ……!」
なにがごめんねなんだよと聞く前に洪水のようにそれが押し寄せる。
においで噎せて、ひゅ、と呼吸をする。
触手で払いのけようとして失敗して、それを飲み込み、また噎せた。
体液に精気があるって言ったっけ? そういうこと?
いやさすがにそれは騙されすぎだろうなと思う。
暫く手の中で呼吸を整えて、それから口を開いた。
「……僕ってもしかして、自分が思ってる以上に純真無垢だったりする?」
「あ~~~~……❤」
我慢してたからいっぱい出る。
下手をすればその水圧だけで捻挫しかねない勢いだ。
数十秒をかけて吐き出して
頭から爪先まですっかりと汚してしまう。
出し切ってぶるる、と余韻に身体を震わせる。
それから、かかってしまった汚れを指で軽く拭ってやった。
顔とか、窒息したら大変だ。
「いや~ほんとごめん楽しくなっちゃって……
ひょっとして結構ギリギリまで魔法の勉強かもって
信じてたりした?
それはほんとうにすいません 許してほしいです」
ちゅ、と額にキスする。詫びのつもりだろうか。
「結構ギリギリまで信じてたかも……
え、いつから? いつから勉強じゃなくなってた?」
「そういうつもりならちゃんとそういうつもりだって言えよ。
なんか騙されてばかみたいだろ……」
額に唇の感触がして、うう、と小さく身じろぐ。
太腿を擦り合わせてまだ残る痺れるような甘い快楽を紛らわせようとして、
拭われて離れかける指を、名残惜しそうに触手が撫でる。無意識に。
「…………はやくおろせよ」
理性はのぼせる前に早めに解放されたいと言ってる。
「え、そういうつもりだって言ってたら
協力的になってくれてた?」
いくら経験豊富でも小さくされて悪戯されるという
イレギュラーな事態だと流されてしまうということなのか
単に本当に純朴すぎるのかはちょっと微妙なところだ。
さてさすがにひどい仕打ちをしてしまったし
そろそろ戻してやろうと思ったのだが
指に人懐っこく触れてくる触手に、一瞬固まってしまう。
「…………
いや、かわいすぎるでしょそれ。
もうちょっと遊ばない? せっかくだから……」
もうちょっとの後、解放されて、
元の大きさに戻されたのだという。よかったね~