Dead or AliCe『16JAcks』

『双子の』ルビーとマリーの51質問ログ


何処とも知れず、何時とも知れず。

何とも知れず、誰とも知れず。

尋ねるものあれど、聞くものはなく。

只々、名も無き、夢の中のお話。



『双子の』マリー
「……」
『双子の』マリー
「…………」
『双子の』マリー
「ここは?」

眼前に見えるは、あの日のあの場所。

ホテル『ジャック・オブ・ハート』の中に作られたナイトプール。

かつての頃、何人かの末裔達と一緒に、手慰みの駆け引きを楽しんだ場所。
『双子の』ルビー
「なんだ?時間でも戻ったか?」

純白のチェアと、ラウンドテーブル。

それから、テーブルに積まれたカードの束。

他にはめぼしいものも見当たらず、何人の気配もしない。

カードを手に取る。

それはまさに、いつかの駆け引きに使われた、趣味の悪いクエスチョンカード。
『双子の』ルビー
「この質問に答えろって?」

聞かせる相手もいないのに──
『双子の』マリー
「……いや」
『双子の』マリー
「わかったよ。やるか」

ここが、本当にホテルの中ならば。

風と波に乗って、救世主にその声が届くかもしれないと。

そんな、叶うはずもない期待を込めて。

カードを一枚ずつ、めくっていく。


・1.自分の救世主のいいところ5つ教えて!
『双子の』マリー
「人の話は素直に聞くよね」
『双子の』ルビー
「“好きにやろう”とかいいつつ、相談無しで無茶することもない」
『双子の』マリー
「そもそも無謀な挑戦とかもしないね。喧嘩の売り方はまあわかってる」
『双子の』マリー
「あとは私達を偏見で見ないとことか?」
『双子の』ルビー
「変に使命感に役割に囚われないのも良かった。救世主はそういうのが多いからな」
『双子の』ルビー
「んじゃ、これで5つだ。良かったかな?」
『双子の』マリー
「…………」
『双子の』マリー
「なんか、手のかからない子どもを褒めてるみたいな……」
『双子の』ルビー
「実際そういう人だったろ」
『双子の』ルビー
「“良い子”だったんだろ、あの人は。趣味が悪いだけで」

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・2.一番戦いたくない相手は?
『双子の』マリー
「ホテルの参加者たちの中で、ってことだよね?」
『双子の』ルビー
「実際戦った奴らは除くとして」
『双子の』ルビー
「……侯爵夫人……グリフォン……フィクス……いや」
『双子の』ルビー
「103号室の連中。特に末裔、イモムシのジャンの方だ」
『双子の』マリー
「私は彼とお茶会するのを結構楽しみにしてたけど」
『双子の』ルビー
「裁判するのは嫌だよ」
『双子の』ルビー
「あいつ自分は雑魚だとか思ってる側だろ。だから手段を選ばない」
『双子の』ルビー
「そのうえでどう動くと良いかをなんとなくわかってる。とぼけたツラの方が詐欺だ」
『双子の』ルビー
「もっと言や、あいつイモムシの末裔だろ?連中、生半可な毒は通じないからやり辛いんだよな」
『双子の』マリー
「タイマン(2対1)をしたら負けると思う?」
『双子の』ルビー
「それこそお茶会の成果次第だろ」
『双子の』ルビー
「勝利に貪欲と言えば聞こえは良いが、悪く言えば眼前の敵以外から目を逸らしてんだよ、あれは」
『双子の』ルビー
「そのへんを叩いて動揺を誘う……くらいかな」
『双子の』ルビー
「いずれにせよ、素面でやり合いたくはないね」

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・3.優勝したらどうする?
『双子の』マリー
「もう負けてんだけどな、私達」
『双子の』ルビー
「脱落者用のカードは質問変えろよ。手抜き仕事め」
『双子の』ルビー
「ま、優勝してもそう変わんねえよ。堕落の国で諾々と生きて、行く末を見届けるさ」
『双子の』マリー
「末裔よりゃ救世主の方がよっぽど生きやすいからね。30日の責務があったとしても」
『双子の』マリー
「救世主の力を得れるならそれに越した事は無い」
『双子の』マリー
「……とはいえ赤い招待状がある以上、延々堕落の国に留まることはできないだろうけども」
『双子の』ルビー
「ホテルの力で生み出された救世主が、ホテルに引き戻されてちゃ世話ねえな」
『双子の』マリー
「あれ、所謂“エース”達でも容赦なく呼び立てられるものだと思う?」
『双子の』ルビー
「さあな。歴代参加者の記録でも見ればわかるんじゃねえの?」
『双子の』ルビー
「暇な観客の中には、記録を付けてる奴でもいるんじゃないか」
『双子の』マリー
「大学に保管されてたりして」
『双子の』ルビー
「有り得るかもな」
『双子の』ルビー
「ま、何にしろ俺達にはもう意味のない話だ」

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・4.救世主との関係を一言でいうと?
『双子の』マリー
「一言か。一言ね」
『双子の』ルビー
「どうだろうな。見世物同士とは、いつだか言ったことがあったが」
『双子の』ルビー
「その割には情熱的な別れをしちゃったもんな?」
『双子の』マリー
「うるせえなこいつ」
『双子の』マリー
「…………案外、手のかかるやつだなってお互いに思ってたんじゃないの?」
『双子の』ルビー
「あー…………あ~…………」
『双子の』ルビー
「お互いにかぁ」
『双子の』ルビー
「……はあ~~~~~」
『双子の』マリー
「ため息をつくと幸せが逃げるんだよ」
『双子の』ルビー
「うっせえなあもう。次の質問行こうぜ」

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・5.救世主との出会いと初対面の印象を教えて!
『双子の』マリー
「出会いね。最初にあの人を見たのはそこらの救世主をのしてるとこだったな」
『双子の』マリー
「それ自体は変哲の無い裁判だったんだけど、6ペンスコイン取ってかなかったんだよ、あの人」
『双子の』ルビー
「その落とし物を届けたのが最初だったけな」
『双子の』ルビー
「なんでわざわざ届けに行ったんだっけ?」
『双子の』マリー
「コインに執着しない救世主なんて初めて見たから」
『双子の』マリー
「気になって、コインを手土産に魂胆を聞きに行ったんだよ」
『双子の』マリー
「末裔がコインを隠し持ってても何にもなんないし、木っ端救世主に拾われるのも癪だろ」
『双子の』ルビー
「そうだった。それで俺達の夢がどうこうって聞かれたんだったな」
『双子の』マリー
「変な人だったね」
『双子の』ルビー
「変な人だった」
『双子の』マリー
「何にせよ、救世主っぽくはなかったよ。私の知ってる連中はもっとピリピリしてるもんだったから」
『双子の』ルビー
「まさか本当に大したことを考えてないとは思わなかったけどな」
『双子の』マリー
「変な人だったね」
『双子の』ルビー
「変な人だった」

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・6.ぶっちゃけ救世主とXXできる?
『双子の』マリー
 
『双子の』マリー
 
『双子の』マリー
「くそっ見間違いじゃねえ」
『双子の』マリー
「何これ?三月兎が考えた質問?」
『双子の』ルビー
「はいはい」
『双子の』マリー
「もう一度あれをやれって?御免だね。ホテルで出た食事をもう一度積まれても嫌だ」
『双子の』ルビー
「そりゃ大変だったな」
『双子の』ルビー
「次行くか……」
『双子の』マリー
「え?あんたは?」
『双子の』ルビー
「え?双子枠が今答えましたが?」
『双子の』マリー
「?」
『双子の』ルビー
「?」
『双子の』マリー
「あんたそうやっていつも自分だけいいカッコしぃすんのムカつくぞほんとに」
『双子の』ルビー
「そこまで言う!?」
『双子の』マリー
「YESかNOで答えりゃすむ話じゃねーか 観念しろ」
『双子の』ルビー
「自分が嫌な事を人にやらすな」
『双子の』マリー
「下心とかない?」
『双子の』ルビー
「無いってことにしたじゃん!」
『双子の』マリー
「これで解答扱いされてなくて後から答えなおしっていうのも馬鹿らしいでしょ。ほら言えっ」
『双子の』ルビー
「……」
『双子の』ルビー
「たぶんそう。部分的にそう」
『双子の』マリー
「YESかNOっつってんだろ!」

次のカードをめくられてしまった。


・7.今の救世主以外にペアになるならどの救世主?
『双子の』マリー
「ヴァンテアン・ゲーム参加者の中から選ぶなら、だろ?うーん」
『双子の』マリー
「あの中で一番“まし”なのは、102号室のシニ様かな」
『双子の』マリー
「末裔を区別しないでしょう、彼女。その点ではシャノン様と同じくらいには付き合い安い」
『双子の』ルビー
「出来て部下Dくらいの扱いだろうけどな」
『双子の』マリー
「あくまで私達が選ぶなら、だかんね。ソース君を押しのけて入れる気はしないよ」
『双子の』ルビー
「ペアになる以上は一蓮托生ってのがな」
『双子の』ルビー
「出来損ないの無駄飯喰らいを選ぶ物好きはそういないさ」
『双子の』ルビー
『双子の』ルビー
「一応他の連中の名前も挙げてみるか?108のイカロス様」
『双子の』マリー
「私達じゃあの王者様には追い付けないでしょ」
『双子の』マリー
「ついてこれない奴は見捨ててとっとと先行っちゃうよ、ああいう人」
『双子の』ルビー
「俺達じゃ出来て太鼓持ち程度だもんな」
『双子の』マリー
「少なくともあの打ち上げはできんわ」
『双子の』ルビー
「あれは頭おかしい」
『双子の』マリー
「頭おかしいね」
『双子の』ルビー
「頭おかしい」
『双子の』ルビー
『双子の』ルビー
「106のつぐみ様」
『双子の』マリー
「うーん……」
『双子の』マリー
「……シニ様のさらに次に選ぶなら、かな」
『双子の』マリー
「イカロス様同様、あっちのお眼鏡に叶うかはわかりませんけど」
『双子の』ルビー
「観客虐殺してただろ。あれはいいの?」
『双子の』マリー
「あれはさ……あの御人も、堕落の国に失望してるんじゃないの?」
『双子の』マリー
「だから、そのへんが私達向き。あくまでシニ様の次にね」
『双子の』ルビー
「そういうもんかね」
『双子の』ルビー
「ま、どっちにせよあの眠り鼠みたいな『特別枠』に滑り込めなきゃ話にならんか」
『双子の』ルビー
『双子の』ルビー
「105のミムジィ様」
『双子の』マリー
「逆に聞くけど。相性良いと思う?」
『双子の』ルビー
「ぜんぜん」
『双子の』マリー
「私達が彼女の在り様に付き合ってたらすぐ潰れちゃうよ」
『双子の』マリー
「彼女自身、なんでこれまで生き残ってこれたのかが不思議なくらいだもの」
『双子の』ルビー
「そこはあのグリフォンの舵取りが上手かったって話でねえの?」
『双子の』マリー
「あの人は舵取ってないと思うけどなあ……」
『双子の』ルビー
『双子の』ルビー
「104。プルネウマ」
『双子の』マリー
「あいつ嫌い」
『双子の』ルビー
「俺も」
『双子の』マリー
「あいつもつぐみ様みたく『特別枠』以外への対応が雑な奴だけど、そもそものメンタルが違うじゃん」
『双子の』マリー
「こっちの場合は、本当にその他大勢の末裔をなんとも思ってないんじゃない?」
『双子の』マリー
「少なくとも、あいつの言う“人間”ではないんだろうね、私達は」
『双子の』ルビー
「関わるだけ損だ。こっちに来ない事を祈るしかないな」
『双子の』マリー
「災害ってやつはこれだから……」
『双子の』ルビー
『双子の』ルビー
「103のペペル」
『双子の』マリー
「論外」
『双子の』ルビー
『双子の』ルビー
「101のネ様」
『双子の』マリー
「あの人よくわかんないんだよななんか……」
『双子の』マリー
「いや、パッと見はそこまでヘンじゃなくって、あの……末裔とのやり取りが奇妙なだけなんだけどさ」
『双子の』マリー
「なんか、訳分かんないとこに地雷埋まってそうなんだよな、この人」
『双子の』ルビー
「乙女心ってやつ?」
『双子の』マリー
「私に聞くかそれ?」
『双子の』マリー
「末裔と組んだ経緯が一番想像できない。どんな出会いだったんだろうね」
『双子の』ルビー
「ろくでもないのは違いないだろうさ」

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・8.どんなところで育ったの?
『双子の』ルビー
「はあっ……」
『双子の』ルビー
「するか。故郷の話」
『双子の』マリー
「はいはい」
『双子の』マリー
「あれを表現するなら、そうだな。辺境の寄り合い所だよ」
『双子の』マリー
「異界から流れ着く品々を、モックスフォンド大学へ輸送する途中の中継地点」
『双子の』ルビー
「辺鄙な村と比べりゃ人の出入りは多かったし、色んな種族も見た。時折救世主までいたな」
『双子の』マリー
「そこで生まれる奴も居たし、そこに骨を埋める奴もいたよ。私達もその中の二人」
『双子の』ルビー
「だもんで、異界の情報誌だの御伽衆の元ネタの本だの、そういうのが稀に流れてきてだな」
『双子の』ルビー
「そのへんの末裔よりは、『不思議の国のアリスが出版されてる世界』についちゃ詳しいさ」
『双子の』マリー
「堕落の国で生きていく上では大して役に立たないけどね」
『双子の』マリー
「おかげで不思議の国や鏡の国のあるべき姿、みたいなのはよく知ってるよ」
『双子の』ルビー
「ジジイ共がまた原理主義者でな。不思議の国かくあるべしという様を語り継げとよく言われたもんだ」
『双子の』ルビー
「……まぁ、堕落の国では、恵まれた方の出身だろうな」
『双子の』マリー
「それも今や廃墟だけど」
『双子の』マリー
「救世主の暴挙の前には、末裔数十人の集まりなんて塵も同然だもの。ねえ」

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・9.自分の名前の由来を知ってる?
『双子の』ルビー
「このルビーとマリーって名前か?呼びやすいからだ」
『双子の』ルビー
「最初の一文字が、元の名前と同じでな」
『双子の』マリー
「あれ、これ言ったっけ?双子の末裔やるって決めた時に、前の名前も捨てたって」
『双子の』ルビー
「どうだったかな」
『双子の』ルビー
「元の名前が何だったか、の答えなんかには期待するなよ」
『双子の』ルビー
「俺達ももう忘れちまったから」

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・10.救世主に会う前は何してた?
『双子の』マリー
「時折訪れた村で、『不思議の国のアリス』の物語を語ってたよ」
『双子の』マリー
「そうすると、子供や年寄りがまあそれなりに喜ぶから。そんで一泊止めてもらう」
『双子の』ルビー
「そんな吟遊詩人みたいなことしてたっけか?」
『双子の』マリー
「他に何もやりようがなかったから。ウケなかったらそのへんの地べたに寝るよ」
『双子の』マリー
「この隻眼にあれこれ“誂えられた”身体じゃ、肉体労働にも不向きだもの」
『双子の』マリー
「ああ、あとヤバい亡者の情報を具申するって名目で遠征に連れてってもらったり」
『双子の』ルビー
「デマだけどな」
『双子の』ルビー
「よく生きてたなってびっくりするよ」
『双子の』マリー
「だからさ、“幸運”だったんだよ。ヴァンテアン・ゲームに至れるまでの日々は」
『双子の』ルビー
「冗談」
『双子の』マリー
「これからどうしようね。お金は本当に持ってないし」
『双子の』ルビー
「詩人紛いでも続けるか?」
『双子の』ルビー
「一杯奢ってでもヴァンテアン・ゲームの話を聞きたがる物好きはいくらでもいるさ。それこそ、救世主にもな」
『双子の』マリー
「串刺姫だの救世主ミムジィだのネームバリューも精々利用させてもらうとしますか」

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・11.家族構成を教えて!
『双子の』ルビー
「覚えてねえな」
『双子の』マリー
「記憶に無いね」
『双子の』ルビー
「一つだけはっきりしてるのは、俺達は血縁関係じゃあないってことだ」

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・12.家族の思い出を聞かせて
『双子の』ルビー
「覚えてないって言ったろ?」
『双子の』マリー
「というか、本当に知らないんだよ。件の寄り合い所は託児所にもなってたんだ」
『双子の』マリー
「私達はそこで育てられたの。実の両親の顔なんて見たことも無い」
『双子の』ルビー
「亡者狩りに出かけてそのまま帰らぬ人に、って話だっけ?どうでもいいけど」
『双子の』ルビー
「質問の意図を多少汲んでやるとしたら、幼少期の思い出ってところか」
『双子の』ルビー
「そうだな……」
『双子の』ルビー
「同い年に代用ウミガメの野郎がいたよ。よくグリフォンと一緒になっていじめたもんだ」
『双子の』ルビー
「1回戦の時にちょいちょい話題に出したのはそいつの事だ」
『双子の』マリー
「それ、後で眠り鼠のお偉いさんに夢ン中でこってり絞られたってやつ?」
『双子の』ルビー
「記憶に無いですね」
『双子の』マリー
「思い出ねえ。イモムシお兄さんが世話役だったのは覚えてるよ」
『双子の』ルビー
「すぐ人にあだ名付けるんだアイツ」
『双子の』マリー
「そうだったねえ。どんな呼ばれ方してたかも忘れたけど……」
『双子の』マリー
「…………」
『双子の』ルビー
「……けっ。次行くぞ」

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・13.同族に対してどう思う?
『双子の』マリー
「同族ねえ。帽子屋でしょ?」
『双子の』ルビー
「とりとめのない話の種を常に探してる連中だろ。“双子の末裔”なんか恰好のエサじゃないか」
『双子の』ルビー
「井戸端会議の話題はいつだって根も葉もない噂話だからな」
『双子の』マリー
「つってもな」
『双子の』マリー
「とうにご存じの通り、私達は異端中の異端です故」
『双子の』マリー
「同族だからどう、っていうのはそんなに関係ないよ。他の末裔共と大体同じさ」
『双子の』マリー
「強いて言えば、オシャレマウント取ってくるのはウザいかな」
『双子の』マリー
「ま、今着てるこれはそこそこ上等な方だけど。低俗な“帽子屋避け”には十分ですわ」
『双子の』ルビー
「この服自体も“誂えられた”ものだけどな……」

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・14.好きな夕飯のメニューは?
『双子の』マリー
「急に俗っぽくなった?」
『双子の』ルビー
「選り好みできた覚えがないな。末裔なんてみんなそうじゃねえの?」
『双子の』マリー
「ホテルで食べたご飯は美味しかったよ」
『双子の』マリー
「ポテトのポタージュスープは結構好きだったな。私」
『双子の』ルビー
「二度と食えないものを好みって言っていいのか?」
『双子の』マリー
「いいじゃない。好物の意味は『一番多く食べたもの』じゃないでしょ?」
『双子の』マリー
「忘れられない味だって、立派に『好きな物』よ」
『双子の』ルビー
「そりゃよかったな。ホームシックならぬポタージュシックにならなきゃいいが」
『双子の』マリー
「あんたは?あそこだと何が美味しかった?」
『双子の』ルビー
「……ハチミツ」

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・15.嫌いな末裔の種族は?
『双子の』ルビー
「チェシャ猫だな。隠れ潜んでこっちを監視してはすぐどこぞにチクりやがる」
『双子の』マリー
「めちゃくちゃ早口で答えたな……」
『双子の』ルビー
「前の質問の流れで昔の事思い出してたら、そいつが真っ先に出てきたんだよ」
『双子の』マリー
「そりゃよかったね」
『双子の』マリー
「私は……まあどれもそんなに大差ないけど……」
『双子の』マリー
「強いて言えば白兎かな。あいつらみんな救世主に献身的だからさ」
『双子の』マリー
「見てると腹が立ってくるんだよね」
『双子の』マリー
「……両方いなかったな、あのヴァンテアン・ゲーム」
『双子の』ルビー
「良いじゃないか。余計な先入観が入らなくて」
『双子の』マリー
「グリフォンには先入観モロ出しだったくせに」
『双子の』ルビー
「だってあいつらはさ。ほら、ずるいよ」

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・16.救世主の秘密を一つ教えて
『双子の』マリー
「なんかあったかなあ……お互い過去を詮索しなかったから」
『双子の』ルビー
「ちょっと捻って考えてみるか。104の神霊様は雷と勇者が嫌いなんだろ」
『双子の』ルビー
「そういう路線でいくとだな……」
『双子の』マリー
「あー……そうだなあ」
『双子の』マリー
「……少しのアルコールですぐ酔ううえにやたら悪酔いするんだよね、あの人」
『双子の』マリー
「それはそれは散々ぐだついて、末には酔い覚ましで洗面器に張った水をごくごく飲んだりしてた」
『双子の』マリー
「……そんくらいかな……」
『双子の』ルビー
「それ以上の詳細は割愛します」

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・17.救世主の正直勘弁してほしいこと
『双子の』マリー
「付き合っててめちゃくちゃにしんどいことは……まああの一件以外だとそうはなかったけど」
『双子の』マリー
「なんかあった?」
『双子の』ルビー
「察しが悪い」
『双子の』マリー
「そこは問うても仕方ないだろ」
『双子の』ルビー
「忠告して治るものならさっさと忠告してる」
『双子の』ルビー
「『正直勘弁してほしい』ってのは、治らない悪癖をあげつらうもんだ」
『双子の』マリー
「故人の悪口を言うのあんま気分良くないんだけどな……」

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・18.今の救世主といてよかったなと思ったこと
『双子の』マリー
「……」
『双子の』マリー
「よかったこと、か」
『双子の』ルビー
「贅沢三昧はできたな」
『双子の』マリー
「ホテルは確かに良いところだった」
『双子の』ルビー
「当面の目標に困らなくなったのも良い」
『双子の』マリー
「漠然と生きるだけだと消耗するものね」
『双子の』ルビー
「あとは……何だろうな」
『双子の』マリー
「案外そんなに無いんじゃない?」
『双子の』マリー
「ホテルから生きて出られようと、私達が帽子の無い帽子屋なことに変わりは無いし」
『双子の』マリー
「コイン40枚での戦い方を覚えたところで、活かす機会もないでしょう」
『双子の』ルビー
「ホテルに来る前と後で価値観が変わったってワケでもない」
『双子の』ルビー
「後に残ったものはそう大してないだろうさ」
『双子の』マリー
「まあ、でも」
『双子の』マリー
「なんだかんだ、救世主様の庇護にいた時間は、二人だけの時よりは幾分楽だったよ」

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・19.ホテルまではどうやって来た?
『双子の』マリー
「ヴァンテアン・ゲームの噂自体はそこそこに聞いてたんだよね」
『双子の』マリー
「だからシャノン様を煽って、開催地のホテルまでたどり着いてさ」
『双子の』マリー
「あとはホテルの前で待ち伏せて、ノコノコやって来た奴から白招待状を奪った」
『双子の』ルビー
「そういや、俺達も行く先々でヴァンテアン・ゲームの噂を広めて見せたが」
『双子の』ルビー
「結局効果はあったのかね?招待状の争奪戦に」
『双子の』マリー
「どうかしら。招待状を奪ってそうな救世主はそこそこいたけど」
『双子の』マリー
「ま、あったと思うようにしましょう。その方が気分が良いし」
『双子の』マリー
「観客も無暗にいたし……いやほんとどっから来るんだろうなあれだけの観客が……」
『双子の』ルビー
「観客にも救世主が紛れ込んでたりしてな」
『双子の』ルビー
「ミムジィ様がチェシャに身をやつしたって話があるくらいだ、変装なんざ楽勝だろ」
『双子の』マリー
「そうだったら面白いね」
『双子の』マリー
「つぐみ様の粛清でついでに死んでたりしたら尚の事」

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・20.今の救世主が亡者化したら殺せる?
『双子の』ルビー
「今の、ではないけど」
『双子の』ルビー
「戦力的な意味は……コイン依存だから関係ないか」
『双子の』マリー
「心情的な話でしょ」
『双子の』マリー
「……ん……殺せるかか……」
『双子の』マリー
「……たぶんそう。部分的にそう」
『双子の』ルビー
「さよか」
『双子の』マリー
「どうだろうな。躊躇はすると思う」
『双子の』マリー
「けど、亡者なんて所詮末裔の天敵に変わりは無いからさ」
『双子の』マリー
「だからたぶんYES。っていうことにしとこうよ」
『双子の』ルビー
「そりゃよかった」
『双子の』マリー
「あんたは?」
『双子の』ルビー
「やれるさ。そうするしかないだろ」
『双子の』ルビー
「亡者なんて、死者を冒涜する災害でしかないんだから」

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・21.ひとりで生きていける?
『双子の』マリー
「できるわけないじゃん」
『双子の』ルビー
「できるわけないな」
『双子の』ルビー
「そうでなければ双子の末裔なんて名乗っちゃいない」
『双子の』マリー
「これほど答えの分かり切ってる質問も珍しいね」

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・22.救世主が末裔だったとしても一緒にいたと思う?
『双子の』マリー
「いないな」
『双子の』ルビー
「いないだろう」
『双子の』マリー
「そもそも出会ったのが、あの人が救世主の責務をやってる場面だ」
『双子の』マリー
「十把一絡げの末裔となんて、私達は向き合わないだろうし」
『双子の』ルビー
「会えたとして、救世主の力目当てでなければ同行しないだろうさ」
『双子の』ルビー
「これも分かり切った答えだったな」

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・23.救世主よりも優れていると思ってることは?
『双子の』マリー
「……難しいこと聞くな」
『双子の』ルビー
「察しの良さ?」
『双子の』マリー
「あんたは良くないだろ。あんたはそんなに良くない」
『双子の』ルビー
「え?」
『双子の』マリー
「強いて挙げるとするなら……」
『双子の』マリー
「こっちのが人生に迷い慣れてた」
『双子の』マリー
「だから、私達の方が諦めが早い。そこじゃないかな。優れているとしたら」
『双子の』ルビー
「良いことか?それは」
『双子の』マリー
「場合によってはね」
『双子の』マリー
「あの人の場合、諦めが悪いでもなく、諦め方をよく知らないんだもの」
『双子の』マリー
「生き辛いよ、それはきっと」
『双子の』ルビー
「故郷ではそんなことを知らずとも十分だったんだろうさ」
『双子の』マリー
「うらやましいね。本当に」
『双子の』マリー
「本当にだよ」

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・24.救世主には適わないなと思っていることは?
『双子の』マリー
「……初めの方でも話したけどさ」
『双子の』マリー
「良い人なんだよな、あの人。趣味が極端に悪いだけで」
『双子の』マリー
「だから、生きていくうえで何に対しても期待が出来る……いや、出来たんだよ、あの人」
『双子の』マリー
「生き易いよ、それはきっと」
『双子の』ルビー
「さっきと逆の事言ってるけど?」
『双子の』マリー
「分野ごとに得手不得手が違うのは当たり前だろ」
『双子の』マリー
「同じように、生き易い場面と生き辛い場面があるんだよ」
『双子の』マリー
「私達はネガティブだけど、あの人はポジティブなんだよ。根本的に」
『双子の』マリー
「……だから、私達を生かしてくれるよう、相手に頼み込めたんだろ」
『双子の』ルビー
「あーはぁ……」
『双子の』ルビー
「いかにもネガティブマンらしい言い分だな」
『双子の』マリー
「それが性根だもの」
『双子の』ルビー
「違いない」

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25.救世主のかわいいなって思ったところは?
『双子の』マリー
「これかけひきんときにもう答えてんだよな。回答使いまわしでいい?いいよね。すぐ含み笑いするとこ」
『双子の』ルビー
「酔った時の行動を誤魔化そうとする辺りが萌えだと思います」

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・26.聞かれたら困る質問はどんなもの?
『双子の』ルビー
「これまでの質問の時点でもう結構困りまくってるが!?」
『双子の』マリー
「この質問でやっと折り返しってとこでしょお?困る質問っつってもな……」
『双子の』ルビー
「あ~~~……一つあったぞ」
『双子の』ルビー
「『貴方達二人はどういう関係なんですか?』」
『双子の』マリー
「あ~……あったな」
『双子の』マリー
「人には、双子の末裔は生まれた時より双子であるものと説明してたけど」
『双子の』ルビー
「やけに恋仲を推してくる奴とかもいたな」
『双子の』マリー
「それはないわ。それだけはない」
『双子の』ルビー
「そこまで悠長な関係じゃないよ、俺達は」

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・27.救世主が他の末裔と組むことになったらどう思う?
『双子の』ルビー
「普通にあり得るんじゃないか?」
『双子の』マリー
「面白い夢を抱えてる奴ならあの人のお眼鏡には適うでしょ。面白い夢ってのがどんなんかはともかく……」
『双子の』マリー
「私達には、シャノン様以外に選べる余地なんてほとんどなかったけど」
『双子の』マリー
「あちらは、選ぼうと思えばいくらでも選べたのだから」
『双子の』ルビー
「まあ、他と組むこともあるだろう」
『双子の』マリー
「他と組むこともあるでしょうね」
『双子の』マリー
「……って言うと拗ねるんだよな、あの人……」
『双子の』ルビー
「まあ……そりゃ怒るだろうな」
『双子の』ルビー
「死地を共にした相手に『私じゃなくても良かったんでしょう?』って聞かれたら、腹は立つだろ。普通」
『双子の』マリー
「死地。死地ねえ」
『双子の』マリー
「そういうことにしておくか」

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・28.好きな亡者食は?
『双子の』マリー
「似たような質問さっきもしなかった?」
『双子の』ルビー
「ホテルで食べた食事はダメっつうことなんだろ」
『双子の』マリー
「そんなら……まあ……肉かな」
『双子の』ルビー
「穀物っぽいのは子供の頃はたまに食っちゃいたが、そんでも水増しはされてたし」
『双子の』ルビー
「そうでないものは、味のしないスープだったり、干されてカラカラなもんだったりだ」
『双子の』マリー
「ご馳走といえば、“比較的に”新鮮な肉だったよ」
『双子の』マリー
「大人も子供もみんなそんなもんさ」

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・29.救世主にやめてほしいと思っていることは?
『双子の』ルビー
「この質問も答えた気がするけどな」
『双子の』マリー
「じゃあさっきはルビーが答えたから、こっちが言おうか」
『双子の』マリー
「なんかスキンシップ多くない?あれ割と嫌」
『双子の』マリー
「頭を撫でられるとかあの一件以外にも、こう、割と色々さ」
『双子の』ルビー
「さいですか」
『双子の』マリー
「あんたそういうの無かったの?」
『双子の』ルビー
「あんまり物理的に近づかないようにしてたから……」
『双子の』マリー
「私が割食ってんじゃんそれ!」

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・30.救世主に影響されたな、と思うことは?
『双子の』マリー
「…………人が夢とか抱負を語ってるとムズムズするようにはなった」
『双子の』ルビー
「元からその気はあったけど。なんつうか、しゃらくさく思うようにはなったな」
『双子の』マリー
「でも、壮大で面白い夢の行く末自体を楽しめるほどの余裕は私達にはないね」
『双子の』マリー
「弾ける瞬間はちょっと面白いかも、くらい」
『双子の』ルビー
「あんま良くない影響だよ」
『双子の』マリー
「良くない影響だねえ」
『双子の』マリー
「また一段と生き辛くなっちゃったな」
『双子の』ルビー
「しがらみが多くなっていくもんだよ。人生なんて」
『双子の』マリー
「それ、誰の受け売り?」

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・31.救世主の面倒くさいなと思うところは?
『双子の』ルビー
「これを『勘弁してほしい』と『やめてほしい』と並べるの不思議に思わなかったのか?」
『双子の』マリー
「あ~そうだな……察しが悪くて、スキンシップが多くて……」
『双子の』マリー
「……ああ、思いついた。『できれば自分を好きになって欲しい』って言われるの、相当困ったよ私」
『双子の』ルビー
「言ってたなあ、そんなこと」
『双子の』ルビー
「気にしないでも良かったのに。どうせ勝手なお願いだろ?」
『双子の』マリー
「人に期待されるのそんな……慣れてないんだよ」

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・32.相手と自分が親子になるなら、どっちが子供がいい?
『双子の』ルビー
「何この質問?」
『双子の』マリー
「何だよこの質問」
『双子の』マリー
「あの人に子供の世話ができそうな気はしないけどな」
『双子の』ルビー
「いやそれは俺達でもだいぶきついが……」
『双子の』マリー
「う……ん…………」
『双子の』マリー
「いやっでも二人いる分私達のがやっぱさあ 楽じゃない?色々」
『双子の』ルビー
「いやまともに付き合うなよこんな質問に大丈夫か?」
『双子の』マリー
「だめかも……」
『双子の』マリー
「質問自体がラリってるとこっちまで引っ張られそうになるんだよな」
『双子の』マリー
「この質問あれだよ。104号室みたいな狂気の引力を感じるよ」
『双子の』ルビー
「そんなに?」

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33.救世主の身体で一番好きなところは?
『双子の』ルビー
「また随分ラリった質問がきたな」
『双子の』マリー
「三月兎が書いた質問だよこれ」
『双子の』マリー
「あの筋肉の付き方が仕上がってるとか、そういう気取った解答できないからね私達」
『双子の』ルビー
「どうしよっかこれ」
『双子の』マリー
「わかったよ。言えばいいんだろキザな答えを」
『双子の』マリー
「眼の虹彩がシャボン玉色でカラフルなあたりが割と好きでした」
『双子の』ルビー
「そうですか……」
『双子の』マリー
「あんたは?」
『双子の』ルビー
「…………」
『双子の』ルビー
「こう…………この…………」
『双子の』ルビー
「くびれが…………」
『双子の』マリー
「次いこっか」
『双子の』ルビー
「あれ!?」

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・34.救世主と末裔、立場を変えられるとしたら変わる?
『双子の』ルビー
「変えてもらえるならいくらでも変わりたいね」
『双子の』マリー
「でもさ、“ペア”での話じゃない?これって」
『双子の』マリー
「つまり正確な質問内容はこうでしょ」
『双子の』マリー
「『末裔がエースで救世主がジャック、その関係を維持したいかどうか』」
『双子の』ルビー
「……うちの場合だと大して変わんないだろう、それ」
『双子の』ルビー
「というか、他所のペアも大して変わってなかった気がするな」
『双子の』マリー
「そういやそうか」
『双子の』ルビー
「だから、俺達が救世主で、あの人がなんかの……例えば帽子屋の末裔?」
『双子の』ルビー
「そういう場面の質問じゃないの?」
『双子の』マリー
「想像できる?そんな場面」
『双子の』ルビー
「いや全然」
『双子の』マリー
「私達は他の世界なんて知らないもの」
『双子の』マリー
「救世主になった自分なんて思いもつかないし」
『双子の』マリー
「シャノン様だってそうじゃん?堕落の国で育った自分なんて想像もできないでしょう」
『双子の』マリー
「だから、相手方を羨むべきかどうかさえも判らないんだよ、私達は」
『双子の』マリー
「……まあ、でも、もしそういう場面を想定した質問だって言うんなら」
『双子の』マリー
「私は変わらない方を選びますとも」
『双子の』マリー
「救世主共と肩を並べるの、嫌だからね」
『双子の』ルビー
「俺だってそうだよ」

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・35.あなたの救世主を殺して堕落の国が救われるとしたら殺す?
『双子の』マリー
「する訳ないじゃん」
『双子の』ルビー
「そもそも堕落の国が救われる事を望んでないんだってば」
『双子の』マリー
「こんな堕落の国でもね、私達にとっては魂の故郷なんだよ」
『双子の』マリー
「万一この国が救われて、不思議の国を取り戻せたとしても」
『双子の』マリー
「それは私達の故郷じゃない」
『双子の』ルビー
「俺達はその瞬間から異邦人だ」
『双子の』ルビー
「不思議の国の事は、今でも語り継がれているだろうが」
『双子の』ルビー
「もし堕落の国が消え去った時、それを語り継ぐ者がどれだけいることか」
『双子の』マリー
「血と屍で築かれて、先祖代々の悲願とやらで埋め立てられた国だよ」
『双子の』マリー
「誰もが忘れたがるだろうさ。そんな過去のことなんて」
『双子の』マリー
「そこで死んでいった人達を、『救世のための尊い犠牲』って枠に押し込めてね」
『双子の』ルビー
「そうなるくらいなら、堕落の国が続いていった方がまだ“まし”だ」
『双子の』ルビー
「だから、世界の良し悪しなんて初から眼中になかったのさ、俺達は」

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・36.救世主と別れる前にしておきたいことはある?
『双子の』マリー
「今の私達に聞くってことはさあ、つまり心残りはあるかって質問?」
『双子の』ルビー
「あるか?」
『双子の』マリー
「…………」
『双子の』マリー
「いや」
『双子の』マリー
「礼の一つは言ってもよかったかもね」
『双子の』マリー
「それだけだよ」
『双子の』マリー
「約束は果たしたから、本当にそれだけ」
『双子の』ルビー
「そうか」
『双子の』ルビー
「そうだろうな」

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・37.亡者化したら相手に殺されたい?
『双子の』マリー
「…………これも“ペア”相手の質問なんでしょ?」
『双子の』マリー
「つまり、もし私達が亡者化したとして、一番すぐ傍にいるのがシャノン様な想定だよね」
『双子の』マリー
「それならさっさと殺してほしいな」
『双子の』ルビー
「そうだな。亡者如きが無暗に意味もなく暴れまわるなんてまっぴらだ」
『双子の』マリー
「まあ、試合の後に亡者化したのなら、ホテルマンが鎮圧するのかもしれないけど」
『双子の』ルビー
「どっちでもいいよ」
『双子の』ルビー
「介錯人を選べるのは、意志ある者だけ」
『双子の』ルビー
「亡者化してからの事なんて、考えるだけ無駄だっつうの」

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・38.救世主に隠しごとをしてる?
『双子の』ルビー
「それはまあ、してんな。それは一杯してる」
『双子の』マリー
「聞かれたなら答えても良かったよ」
『双子の』マリー
「でも昔の事にはお互い突っ込まなかったでしょう」
『双子の』ルビー
「話したくない事も結構あっただろ」
『双子の』ルビー
「そういったラインの見極めをそもそもしないで済んだのは、気楽だったがね」
『双子の』マリー
「“双子の末裔”の真実を知ったところであの態度だもんな」
『双子の』マリー
「私達の過去がどうなんて、シャノン様にとってはそう関係なかったんでしょ」
『双子の』マリー
「1回戦までは、元々私達に興味が無かったそうだし」
『双子の』マリー
「その後だって、ろくに詮索はしなかった」
『双子の』マリー
「無論私達もシャノン様の過去なんて大して興味ないし」
『双子の』マリー
「うちに限っては、細かい事を知る必要もなかった。それで十分じゃない」
『双子の』ルビー
「十分?十分かなあ」
『双子の』ルビー
「……まあいいか。そういうことで」

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・39.負けたら救世主には石像になってでも生きていてほしい? それならいっそ死んでほしい?
『双子の』マリー
「……さあ。どうだろう」
『双子の』マリー
「選択権なんてなかったからな、こっちには」
『双子の』ルビー
「勝手に選ばれちゃったもんだからよ」
『双子の』マリー
「でも、これもさっきのと同じだよ。他の世界ことなんて知らないようにさ」
『双子の』マリー
「永遠に生き続けるのと死んでしまうことの、どっちが辛いかなんて想像も付かない」
『双子の』ルビー
「そもそもさ、勝手なんだよ」
『双子の』ルビー
「人に自分の美学を押し付けようなんて」
『双子の』マリー
「だよなー?」
『双子の』マリー
「だからさ、そこだけはさ。もし負ける事になったら、本人にきっちり決めてもらうつもりだった」
『双子の』マリー
「自分の事なんだから自分で決めろよって」
『双子の』マリー
「自分の好きにしろよって」
『双子の』マリー
「それで相手に命乞いの一つでもやってみなよって」
『双子の』マリー
「それを見世物にしてやろうと思ってたのに」
『双子の』マリー
「笑えるな」
『双子の』マリー
「何にも決めらんなかったのは私達の方だよ」
『双子の』ルビー
「……言ったって仕方ないだろ」
『双子の』ルビー
「結果を悔やんでも、内情を汲んでも、死人は立ち上がりはしない」
『双子の』マリー
「わかってるよ」
『双子の』マリー
「人生って上手くいかないもんだね」
『双子の』ルビー
「そうだな」

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・40.救世主が元の世界に帰ることについてどう思う?
『双子の』マリー
「はーーーー」
『双子の』マリー
「よし。落ち着いた」
『双子の』マリー
「基本的に救世主にはさくさく帰ってもらった方が有難いですね」
『双子の』ルビー
「シャノン様は……元の世界に帰ることは、そう気が進まないようだったが」
『双子の』ルビー
「とはいえ、俺達のように故郷が滅んでいる訳でもあるまいしな」
『双子の』ルビー
「何の後腐れもなく見送れただろうさ。とっくに過ぎた話だが」
『双子の』マリー
「それなり長い間一緒にはいたから、生き延びてくれるならそりゃ嬉しいけど」
『双子の』マリー
「そのくらいだよ」
『双子の』マリー
「他所の世界になんて、興味はないから」
『双子の』マリー
「そう言ったでしょう?」

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・41.救世主と連携は上手くとれていると思う?
『双子の』マリー
「全然」
『双子の』ルビー
「全く」
『双子の』マリー
「各々が好き勝手にやってたんだもん。そりゃそうだよ」
『双子の』ルビー
「結局直らなかったな」
『双子の』ルビー
「好き勝手にやった結果、奇跡的に動きが噛み合ったスーパーコンビネーションになる!みたいな淡い期待はないでもなかったが」
『双子の』マリー
「フィクションの世界だけだろそんなもん」

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・42.救世主の元の世界についてどれだけ知っている?
『双子の』マリー
「さっきの隠しごとの質問で大体答えたな。そこまで知らないよ」
『双子の』ルビー
「およそ想像のつかない世界には違いない」
『双子の』マリー
「常識っていうか、倫理観?もあんまりだったよね。どんな世界だったんだろ」
『双子の』ルビー
「少なくとも、堕落の国の末裔が抱える悩みとは無縁の世界だろうさ」

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・43.コインの数が平等なら自分の救世主にも勝てると思う?
『双子の』マリー
「……」
『双子の』ルビー
「……」
『双子の』ルビー
「今日一でわからん質問かもしれんな」
『双子の』ルビー
「そも、『勝てるかどうか』で言えば104号室にも十分勝つつもりではいたよ」
『双子の』マリー
「結果は御覧の有り様ですけど…………」
『双子の』マリー
「勝てるってことにしとこっか」
『双子の』マリー
「死人に口は無いもの。普段なら反論が飛んでくる場所だろうと、言っとくだけ得よ」
『双子の』ルビー
「勝手に殺すな」
『双子の』マリー
「きっとシャノン様は今でも私達を草葉の陰で見守ってくれているわ」
『双子の』ルビー
「ホテルの中だよ」

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・44.救世主の生い立ちを教えてもらったことはある?
『双子の』マリー
「だから無いってば」
『双子の』ルビー
「心の疵の力から想像できんこともないが、しようと思ったことも無いな」
『双子の』マリー
「心の疵の力かあ。シャボン玉でしょ?」
『双子の』マリー
「それを夢になぞらえて、弾ける瞬間も美しいとかのたまうの」
『双子の』マリー
「それに関わる生い立ちとか……」
『双子の』マリー
「…………」
『双子の』マリー
「やめよっか。詮索するのはお茶会相手だけで十分だわ」
『双子の』ルビー
「そうだな」

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・45.救世主の死ぬところは見ていたい? それとも見たくない?
『双子の』マリー
「……はあ~」
『双子の』ルビー
「何度思ったか知れないが、趣味が悪いんだよなこの質問群はよ」
『双子の』マリー
「見たくはないね。見たいと思う方がどうかしてる」
『双子の』ルビー
「おいおい、この質問は『救世主に死んでほしいか否か』じゃないぜ」
『双子の』ルビー
「『救世主が死んだ瞬間を、見届けたいか否か』だろ」
『双子の』マリー
「それでもだろ。それでも」
『双子の』ルビー
「俺は見届けたいよ。その二択なら」
『双子の』ルビー
「死から目を逸らしていたら、“もしかしたら”がずっと頭ん中で渦巻くだろ」
『双子の』ルビー
「いらねえんだよ、そんな“もしも”だなんて」
『双子の』マリー
「あれ、そう?」
『双子の』マリー
「この質問カードやってて意見が決裂したの、初めてかもしんないね」
『双子の』ルビー
「不服か?」
『双子の』マリー
「いや。いいんじゃないの?」
『双子の』マリー
「双子の末裔を名乗っていようと、私達は同じ人じゃないもの」
『双子の』マリー
「何もかもわかり合う相手なんて、気持ち悪いわ」
『双子の』ルビー
「健全なことで」

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・46.本当は救世主のことをもっと知りたいと思う?
『双子の』マリー
「……別に」
『双子の』マリー
「言ったでしょ?その必要はないって」
『双子の』ルビー
「へえ」
『双子の』マリー
「あんたは?」
『双子の』ルビー
「別に」
『双子の』マリー
「そう」
『双子の』マリー
「じゃあ、そういうことにしましょうか」

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・47.本当は救世主ともっと親しくなりたいと思う?
『双子の』マリー
「………………………………別に」
『双子の』ルビー
「へえ」
『双子の』マリー
「あんたは?」
『双子の』ルビー
「……なっていれば二回戦に勝てたと思うか?」
『双子の』マリー
「悔いたって仕方ないって言ったばっかじゃん!ばっかじゃん!」
『双子の』ルビー
「しょーがねーだろ質問がこういう形式なんだからよ」
『双子の』マリー
「だってそんな……ええ……?」
『双子の』マリー
「わかんないでしょ、それこそ」
『双子の』マリー
「息の合った連携出来てれば、あのあらしを止められたって?」
『双子の』ルビー
「向こうさんの連携を止められはしたかもな」
『双子の』ルビー
「あらしその1を切り裂いた後ろから、あらしその2がやって来て」
『双子の』ルビー
「あいつとそいつでダブルあらしだ!ってやつ」
『双子の』マリー
「私達にあんな芸当できるか!!」
『双子の』ルビー
「別に連携に終始しなくたっていいんだってば」
『双子の』ルビー
「あらし2はペアに任せる、みたいな信頼だってあるだろ」
『双子の』マリー
「信頼ぃ~~~信頼ねえ……」
『双子の』マリー
「……」
『双子の』ルビー
「……ま」
『双子の』ルビー
「それだけ器用なことができていたら」
『双子の』ルビー
「そもそも、双子の末裔なんかやってないよな」
『双子の』ルビー
「なるようにしかならないし、なった結果がこれなんだ」
『双子の』ルビー
「だから悔いても仕方がないんだよ」
『双子の』マリー
「いいの?そういうことで」
『双子の』ルビー
「そういうことにするしかないだろう」
『双子の』マリー
「諦めが早いね。あんたは」
『双子の』ルビー
「それで得をすることもあるさ」

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・48.救世主が元の世界に帰るのを止められるなら止めたい?
『双子の』マリー
「さっきのより踏み込んだ質問ね」
『双子の』ルビー
「俺達はどっちの質問でも大して変わらないが」
『双子の』マリー
「私達としては止める理由はないけど」
『双子の』マリー
「あれって、優勝者が望めば帰還せずに留まることも出来るのかしら」
『双子の』ルビー
「どうだろうな。ホテルの杓子定規な対応を見る限り、そこまで融通が利くかはわからん」
『双子の』ルビー
「むしろ、止めたいと望めば止めてくれるのか?」
『双子の』マリー
「出来るなら棄権してそのまんま外に出れてそうだよな」
『双子の』ルビー
「じゃあだめじゃん」
『双子の』マリー
「どんなつもりでこんな質問カード用意してんだろうなホテルは……」
『双子の』ルビー
「おちょくってんだろ」

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・49.救世主がこの世界に来なかったことにできるならどうする?
『双子の』マリー
「シャノン様が来なかったことにできるなら、か」
『双子の』マリー
「これもこないだのかけひきで答えたな。シャノン様がいなかったら私達は死んでるだろうって」
『双子の』ルビー
「救世主様の幸せを願うなら、初めから居なかったことにした方が良いのかも……ってか?」
『双子の』マリー
「堕落の国くんだりまで来て、人を殺して生き延びて、終いには石になって終わり」
『双子の』マリー
「これより酷い末路はそうそう無いだろうけどさ」
『双子の』マリー
「でもだよ。ホテルでの問答をやって、変に生きる理由とかに目覚めなければ」
『双子の』マリー
「人の夢を台無しにし続けて楽しーく暮らせてたかもしんないよね。あの人」
『双子の』ルビー
「元の世界は退屈だったらしいし、堕落の国を良いところなんてぬかすくらいだしな」
『双子の』ルビー
「ヴァンテアン・ゲームに引き込んだのはまあ俺達だが……」
『双子の』ルビー
「でも俺達と会ってからの事を全部無かったことにするって言ったらまた拗ねるぞ、あの人」
『双子の』マリー
「そうだなあ……」
『双子の』マリー
「人に自分の美学を押し付けようなんて身勝手、だもんね」
『双子の』マリー
「私は正直、どっちでもいいよ。どっちでもいい」
『双子の』マリー
「他人の人生に余計に介入したくない。他人の将来を壊したくないもの」
『双子の』ルビー
「…………」
『双子の』ルビー
「ま、結論としちゃそれだよな、俺達って」
『双子の』マリー
「そうね」
『双子の』マリー
「結局他人が怖くて仕方ないんだわ」

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・50.救世主よりも優先する人はいる?
『双子の』マリー
「私達がお互いそうでしょ。私はルビー」
『双子の』ルビー
「俺はマリー」
『双子の』ルビー
「双子の末裔は二人で一人前だ。ひとりじゃ生きていけないと答えたようにな」
『双子の』マリー
「他の何よりも大切、という以前に、身体の一部のようなものだもの」
『双子の』マリー
「白兎の耳のような。代用ウミガメの甲羅のような、コックの両腕のような」
『双子の』マリー
「一蓮托生となる他にはないと」
『双子の』マリー
「だから、ホテルさんも私達二人とシャノン様でペアとしての参加を認めたんでしょう?」
『双子の』ルビー
「……今更だけどさ」
『双子の』ルビー
「もし一人しか同行を許されないってなったらどうするつもりだったんだ?」
『双子の』ルビー
「ヴァンテアン・ゲーム参加を決めたのはお前だろ」
『双子の』マリー
「そのまま入り口に張り込んで救世主を迎え撃ちでもしてたさ」
『双子の』マリー
「私達みたいに待ち伏せを思いつく奴もいくらでもいたでしょうし。救世主狩りには入れ食いでしょ」
『双子の』マリー
「シャノン様もそういうの躊躇わないもんね」
『双子の』マリー
「まあ、折よく参加できてしまったけれど」
『双子の』ルビー
「良かったな。串刺姫なんかと出会わなくて」
『双子の』ルビー
「とんでもないコインの量だったぜ、あの御人」
『双子の』マリー
「それはまあ、いつも通りの“幸運”ということで」

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・51.あなたにとって救いとは何ですか?
『双子の』マリー
「これで最後か……」
『双子の』マリー
「救い。救いねえ」
『双子の』ルビー
「またバカげた質問だな」
『双子の』ルビー
「言ってただろう?103号室の、ジャンというイモムシの末裔がよ」
『双子の』ルビー
「『もう滅んでしまったものは、救えない』と」
『双子の』ルビー
「俺達はそっちだ。もう救われない側なんだよ」
『双子の』ルビー
「救いが何かと言われれば、ただ無益に死ぬのは嫌だと言うだけだ」
『双子の』マリー
「……」
『双子の』マリー
「救いかあ」
『双子の』ルビー
「どうした?」
『双子の』マリー
「私達がいたことでさ」
『双子の』マリー
「それで結果的に救われた人がいるなら、それが多分私にとっては救いかなって」
『双子の』マリー
「ちょっとそう思い始めてるんだよね」
『双子の』ルビー
「なんだ?綺麗な事を言うようになったな」
『双子の』マリー
「なんでだろうね」
『双子の』マリー
「なんつーかな。結局異端なんだよね、私達」
『双子の』マリー
「異端ならそれらしく、爪弾き者の人生を送ろうとして、双子の末裔なんかを名乗ってさ」
『双子の』マリー
「他の連中とは、上辺の付き合いをしてる方が、私達にとっても他人にとっても良いと思ってんだよ」
『双子の』マリー
「余計に傷つけあうこともなくて」
『双子の』ルビー
「……」
『双子の』マリー
「で、少しでも深めに付き合うとさ。やっぱり」
『双子の』マリー
「結局最後には殺し合いになったり、シャノン様を惑わせたり?」
『双子の』マリー
「あのムカッ腹立つ神霊様にまで心中願望みたいなの背負わせたりさ」
『双子の』マリー
「他人の人生まで台無しにしてばっかなんだよな、結局」
『双子の』マリー
「だから、初めから居なかったことにできるなら」
『双子の』マリー
「私がそうなるのが、一番良いんじゃないかって」
『双子の』ルビー
「あのなあ」
『双子の』マリー
「わかってるよ。わかってるってば」
『双子の』マリー
「だからさ。だから、だからだよ?たまには」
『双子の』マリー
「私が関わって、少しでも人生良くなったって人がいればいいなとか」
『双子の』マリー
「……」
『双子の』マリー
「駄目だな。やっぱ、引っ張られてるね。色々」
『双子の』ルビー
「シャノン様がそうなんじゃねえの?良くなったって人」
『双子の』ルビー
「言ってくれただろう。感謝の言葉を」
『双子の』マリー
「だとしても、もっと上手いこと、やり様はあったよ」
『双子の』マリー
「石になった救世主を元に戻す方法なんて、本当にあると思う?」
『双子の』ルビー
「あのホテルが力を失う時くらいだろう」
『双子の』マリー
「じゃあ、やっぱり私達には無理じゃない」
『双子の』マリー
「あの眠り鼠だってわかったもんじゃない」
『双子の』マリー
「あれだけ石像があるってことは、それだけ生き延びた末裔がいるのに」
『双子の』マリー
「未だにゲームが開かれてるってことは、解決のしようもないことなんだよ」
『双子の』マリー
「救世主達で溢れていても、救世されない堕落の国と同じだ」
『双子の』マリー
「堕落の国の縮図だろ?あのホテルは」

報酬は、一人の救世主の帰還と、一人の末裔の救世主の力。

八人が減って、一人増える。

“問題となるのは個の性質ではなく、唯記号としての数量”。

白い招待状が出回れば、その奪い合いでさらに減る。

赤い招待状が出回れば、誰であろうがさらに減る。

囲われたが最後、誰もが平等に最期を迎える。

石碑の中で永久の悪夢に沈むか、悪夢から醒めて現世に戻るか。

他に進むべき道はない。

ここは、堕落の国の“行き止まり”だ。

これは、堕落の国が存続するためのシステムなのだ。

そうに違いない。

そうと知っていて、我々は彼女をここへと連れてきた。
『双子の』マリー
「ああなってしまった時点で、どうしようもない失敗なんだよ」
『双子の』マリー
「結局、また私達が生き延びるために、死なせっ……終わらせちゃったんじゃないか」
『双子の』マリー
「先人の死を無碍にしないために、って続けて」
『双子の』マリー
「先人、って枠の人だけが、どんどん増えていく」
『双子の』マリー
「そうまでして」
『双子の』マリー
「そうまでしてさあ」
『双子の』マリー
「本当に、生きてて」
『双子の』ルビー
「悪い訳ないだろ」
『双子の』ルビー
「救世の時を望まなくたって」
『双子の』ルビー
「滅びの時を夢見なくたって」
『双子の』ルビー
「生き続けることの何が悪い」
『双子の』ルビー
「罪を背負った者に生きる資格など無いと断ずるなら」
『双子の』ルビー
「とうの昔に末裔も救世主も絶滅しているさ」
『双子の』マリー
「…………」
『双子の』ルビー
「マリーさんはものを難しく考える天才だよね」
『双子の』ルビー
「前にも言ったろ?何にでも理由を求めるのはナンセンスだって」
『双子の』ルビー
「哲学なんてやってるうちに、人間なんてどんどん世界に置いてかれちまうんだよ」
『双子の』ルビー
「んなもんに浸るのは、よっぽどの暇人か、さもなければ疲れきった時だけで十分」
『双子の』マリー
「疲れてんのかな」
『双子の』ルビー
「どう見てもそうだろ」
『双子の』マリー
「……」
『双子の』マリー
「普段は、察しの悪い癖に」
『双子の』マリー
「人の事は見てるってのは本当なんだな」
『双子の』ルビー
「長いこと付き合えば嫌でも解るよ」
『双子の』ルビー
「どうしようもなく疲れたなら、仕方ないさ。人生の幕を下ろしてしまっても」
『双子の』ルビー
「この国じゃあ、自死を糾弾するような、狭量な神様もいない」
『双子の』ルビー
「理由がなくちゃ生きられないってんなら、そんな最期だって立派な末路さ」
『双子の』マリー
「そしたらあんたはどうすんだよ」
『双子の』ルビー
「一緒に死ぬしかないだろうな」
『双子の』ルビー
「と、ちょっと前までは思ってた」
『双子の』ルビー
でも最近は色々背負わされすぎてるだろ?
『双子の』ルビー
「それも奈落に放り投げるのも、勿体ないって思ってる」
『双子の』ルビー
「だから俺は泥を啜ってでも生きるよ」
『双子の』ルビー
「好き勝手に生きることを望んでくれた人もいることだし」
『双子の』ルビー
「つう、訳でな」
『双子の』ルビー
「俺にとってせめてもの救いがあるとすれば」
『双子の』ルビー
「無益なままに死ぬ事無く、長生きしたいってのに尽きるのさ」
『双子の』ルビー
「それはお前とシャノン様との二人がいなけりゃ至れなかった境地だ」
『双子の』ルビー
「人生良くなった奴の実例としちゃ、それでも十分だろ」
『双子の』マリー
「…………ルビーはさ」
『双子の』マリー
「馬鹿だよね」
『双子の』マリー
「本当は一人でも生きていけるでしょうに」
『双子の』ルビー
「買いかぶりだよ」
『双子の』ルビー
「お前がいなけりゃ、あのままゴミ救世主に飼い殺しにされて終わってただろうし」
『双子の』ルビー
「独りだけであの廃墟を迎えた日には、そのまま無気力に死んでたさ」
『双子の』マリー
「今からでも独り立ちはできるでしょ」
『双子の』マリー
「何で私なんかに付き合ってんの?」
『双子の』ルビー
「そういうわけにもいかないだろ」
『双子の』ルビー
「俺のが一つ年上なんだから」
『双子の』マリー
「……いつまで」
『双子の』マリー
「同じ話を引きずってんだよ…………」



『双子の』マリー
「……はあ」
『双子の』マリー
「これで全部。51枚か」
『双子の』ルビー
「半端だな。トランプになぞらえても53枚だろ?」
『双子の』マリー
「さあね。ホテルのやることなんざ」
『双子の』マリー
「…………」
『双子の』ルビー
「どうした?」
『双子の』マリー
「最後のブラックジャックで引いたカードが」
『双子の』マリー
「ちょうど、2枚だったなと思い出して」
『双子の』マリー
「いや」
『双子の』マリー
「関係ないよな」

そう口に出して、間もなく。

床が抜ける。

二人はどこまでも落ちていく。

救世主《アリス》が、棚井戸を落ちていくように。

どこまでもどこまでも、果てしなく。

そして、自分の姿さえも見えない、真っ暗闇に包まれたとき。

『双子の』マリー
「はっ、」

薄暗い朝。

今にも雲の塊が落ちてきそうな空模様。

心臓を押さえ、鼓動を確かめながら、ござの上に寝ころんで一泊過ごしたことを思い出す。
『双子の』マリー
「夢かよ」
『双子の』ルビー
「まさか」
『双子の』ルビー
「51枚だろ?」
『双子の』ルビー
「俺達2人をはじいた分が残り、ってこたないよな?」
『双子の』マリー
「……」
『双子の』マリー
「まさか」
『双子の』マリー
「タルトを盗んだハートのジャックは、きっかりたったの1人だけだろ」

顔を見合わせる。

双子の末裔は、ただの二人の帽子屋。真実心が通い合う者ではない。

ましてや、同じ夢を見るなどと。
『双子の』ルビー
「だったら、あとの1枚はなんだ」
『双子の』マリー
「…………」
『双子の』マリー
「ハートのエース、だったりして」

同じ夢を見る悪戯などが、思い当たる節もなく。

ただ、カードをめくった時の感触と、喋り疲れたように渇きを訴える喉と。

目元の赤い腫れのみが、真相を雄弁に物語っていた。
『双子の』マリー
「そうでなければ、ほんとに何の意味もない51枚?」
『双子の』マリー
「ばかばかしい。そんな偶然あるもんか」
『双子の』ルビー
「俺に愚痴られても困るよ」
『双子の』ルビー
「夢の話で喧嘩するのは、眠り鼠だけで十分だろ」

そうして、不可思議な出来事に首をかしげながらも、身なりを整えて立ち上がった。

また新たな一日が始まる。

得体の知れぬ夢のことなど、一刻もすれば忘れてしまい。

いつ救われるとも知れぬ堕落の国、晴れ渡ることのない曇天の中で。

二人の人生は続いていく。

いつの日かが、いつか来るまで。