イスタ
新しい部屋に案内されて、とりあえず軽く血を流して、それから。
プルネウマ
「はぁ」
「…………産むとかなんとかってことは、こどもが?」
プルネウマ
「あー…………」
モデル的に、処女懐胎で生まれるのは君の方なんだけど、とか言う気力もなく。
プルネウマ
「こういうときは」
「コウノトリさんの話で誤魔化してもいいんだけどさあ」
プルネウマ
「あいにく、鳥さんはさっき落としちゃったし」
「君が孕んでるならもっといいやり方があるね」
プルネウマ
「逆に試してないのが驚きなんだけど」
「『出会った時』のやりかたで、確認したくなったりしなかったの?」
プルネウマ
中身の暴き方は、これまでも散々やっている。
プルネウマ
「じゃあ一緒にみてあげる?」
空っぽであろう、その中身を。
空ならお揃い、そうでないなら本物の奇跡。
プルネウマ
……そのとおり、起こす気力がない。
体力の問題ではなく、魂が回復しきってない。
この身体自体も曖昧なものだ。
プルネウマ
「そうだねえ」
「私ができることは、今、あんまりないから」
「やるなら、君がやるしかない」
プルネウマ
「そっかあ」
「こういう姿になるのはそこまで珍しくないんだけどねえ」
プルネウマ
「ぼろぼろになってる私も、悪いもんじゃないでしょう」
イスタ
「いま全然手に力入らなくてよかったなって」
プルネウマ
「力が入ったらいつでもどうぞ」
煽るように、肩を掴んでいる手を撫でる。
イスタ
その手はそれを避けるように、あなたの両頬へ。
プルネウマ
「まあ、まだあるからねえ、裁判」
どこまで理性が持つのか。それともずっと正気でいられないままなのか。
今の時点ではわからない。どちらも。
プルネウマ
「そうしたら、待ってみようか?」
「腹が大きくなるまで」
「なにかが出てくるまで」
プルネウマ
「そりゃ、普通に考えてみれば勝つ方が断然早いだろうけど」
プルネウマ
君の身体も、君のあり方も、君の運命も。
プルネウマ
風で突き動かすことはできるけど、コントロールまではしていない。
イスタ
あのままあんたが見えなくなったらどうしようって思った。
プルネウマ
もう少しで、この子の目の前からも消えるところだった。
プルネウマ
人間になれる、まことの愛を見つける可能性はある。
プルネウマ
その楽しみ(出産)に自分が立ち会えるかどうかはともかく。
プルネウマ
プルネウマにとっても、楽しみであることには変わりはない。
プルネウマ
何もなければ、自分と同じ。
何かがあれば、自分には想像の及ばないもの。
プルネウマ
どちらに転んでも楽しいことには変わりがない。
イスタ
たしかめる。たしかめていく。手は首筋を通って、肩、胸を撫でて、
プルネウマ
ここから生み出したものも、過去にはあった。
プルネウマ
娶られ、犯され、孕んだことがあった。
そう望まれればそうあった。
プルネウマ
なーんのいみもないのに。
人間はそこに意味を見出した。
プルネウマ
でも、この子の腹からなにかがでてきたら、自分は人間と同じように意味を見出すんだろうな。
プルネウマ
その一方で、自分も揃えたくなる気持ちも、なくはない。
何かが出てこなければ、そうしたい。
プルネウマ
同じ虚無を孕んだものであっても、それはそれで嬉しいもの。
イスタ
ぽんぽんと、かるく、そうっとたたいてみる。
イスタ
この中を見せてくれたときの気持ちが忘れられない。
イスタ
ことばでは言い表せない、仄暗さと、うれしさと、ぞくぞくするような気持ち。
プルネウマ
子を宿す母親を見る天使のように。
子を宿す母親を見る悪魔のように。
精霊は天使でも悪魔でもないのだけど。
プルネウマ
「ここでまた見せるのは恥ずかしいから、今はなしね」
[ イスタ ] ひねくれもの : -1 → 0
プルネウマ
ひとりはその身になにかを宿し。
ひとりはその身になにかを信じ。
プルネウマ
それは姿からはわからない。
中身も思いも、外から見えない。
プルネウマ
二人が笑う姿は、祝日を待つこどものようでもあり。
終末を待つ怪物のようでもあった。
プルネウマ
凪の時間はやってこない。
代わりに嵐がやって来る。
更に強まって、更に繋がって。