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――ホテル『ジャック・オブ・ハート』、客室105号室。
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雲を貫きどこまでも高く聳える豪奢なホテルの一室に、二人、案内されたばかり。
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室内は華やかで、堕落の国にはあり得べからざるほど整った設備。
ミムジィ
「いや~、とんでもないところに来ましたねえ」
スバル
ホテルマンの去ったドアから視線を剥がし、室内を見回す。
スバル
室内には、末裔の身では使用用途のわからないものもいくつか。
スバル
「ミムジィ、せめて荷物を下ろしてからにしろ」
ミムジィ
鞄の中に収まりきれない品々がガチャガチャと音を立てる。
スバル
対して、スバルの荷物は概ね腰回りに一揃い、小さなバッグといくつかのポケットにすべて収まっている。
スバル
「……なんでもお申し付けくださいって言うけど」
ミムジィ
備え付けの電話でホテルマンにコールする。
ミムジィ
「あ、もしもし、ホテルの方ですか? あ、なんかお茶とかお願いできますか? できますか。じゃあお願いします~はい~」
ミムジィ
しばらくして、紅茶と茶菓子が運びいられる。
ミムジィ
「救世主に大事なのはフットワークだからね」
ミムジィ
「せっかく準備してもらったし、飲もっか」
スバル
まず、立ったままポットから茶を注ぐ。二人分。
スバル
それから、翼のたたみ方をごそごそと調整して椅子へ。
ミムジィ
「ミルクティーなんて滅多なもんでるねえ」
スバル
近くにあったシュガーポットを取ってやりながら、
ミムジィ
ミルクも入れて、うんと甘くしたミルクティー。
スバル
「おれにはよくわからんね。甘いものも紅茶も、ろくに経験がないもんで」
ミムジィ
ミムジィ、味よりもカロリーで食べ物を選ぶ。
ミムジィ
「このホテル出るとき鞄に目一杯詰め込んできなよ、お砂糖とか」
スバル
「ま、詰め込んで出たら、適当に売ってやるのがいいだろうな」
スバル
「おれがそんなもん抱えてたら、ろくに飛べん」
スバル
たくさん食べられる、というのは、この国では特別なことだ。とても。
ミムジィ
「こんなとこ呼びつけられたんだから、いただけるもんはいただいておかないと」
スバル
「ま……聞いた限り、そうしとくのがいいだろ、お前は」
ミムジィ
「日に日にコインを増やす私たちに恐れをなしたライバルが……」
ミムジィ
「一歩進んで二歩下がるって言葉をだねぇ~」
スバル
ここで勝ち残れば、ミムジィは帰る。ミムジィの世界へ。
スバル
そこでは、真っ白な砂糖が不自由なく使えるのだろうか。
スバル
温かい紅茶が当然のように飲めるのだろうか。
ミムジィ
外で紅茶が飲めたとしても、この堕落の国で紅茶を飲むのはあと数える限りだろう。
スバル
1d6+3 (1D6+3) > 4[4]+3 > 7
スバル
二人で二杯目の紅茶を飲みながら、スバルの目は再び室内をぐるりと見回す。
スバル
広々とした窓、なめらかな天板のテーブル、先程ミムジィがダイブしたベッド。
スバル
たぶん水場に繋がっているドア。よくわからない箱。
スバル
「……この部屋の設備、お前、ぜんぶわかる?」
スバル
2d6+1>=7 (2D6+1>=7) > 6[5,1]+1 > 7 > 成功
[ ミムジィ ] 情緒 : 0 → 1
ミムジィ
「なんか……学校っていうのがあって……それでみんなでいくやつ……」
ミムジィ
ミムジィの、この世界に来るまでの記憶は曖昧だ。
スバル
出会ったときにはもう、ミムジィはほとんど今のミムジィだった。
スバル
過去を深く聞いたことはない。聞きかけてやめたことはある。
ミムジィ
過去を思い出そうとして、遠くを見る目線は、普段の振る舞いと異なるところがある。
スバル
スバルにその目線の先はわからない。
この国に生まれ、この国に育った末裔は、この国以外のことを知るすべがない。
ミムジィ
引き出しを開けたりしめたり。金庫を開けたりしめたり。
ミムジィ
「すっごい頑丈で重たいから、それで持ち出せなくなるでしょ?」
スバル
2d6+1>=7 (2D6+1>=7) > 7[2,5]+1 > 8 > 成功
ミムジィ
2d6+1>=8 (2D6+1>=8) > 9[6,3]+1 > 10 > 成功
[ スバル ] 情緒 : 0 → 1
ミムジィ
「留守にするときは、何か大事なもの、しまっておくといいよ」
スバル
「いや。そんなとこしまっとくようなもんは、別に」
スバル
「そういや日記って、自分で読み返したりするのか?」
スバル
「…………」 余計なことを聞いたな、と思う。
スバル
2d6+1>=7 (2D6+1>=7) > 7[1,6]+1 > 8 > 成功
[ ミムジィ ] 情緒 : 1 → 2
スバル
「お前にとって……日記は、記録?思い出?」
ミムジィ
「記録でもあるし、思い出でもあるし……」
ミムジィ
「書いてあることだって、正確なことじゃないんだけれど、たぶん」
ミムジィ
「出したら、出したってことは残るからね」
スバル
「自分のもんは、自分の内側に取っておきたいと思うがね……」
ミムジィ
「どれだけ大切に思っていたとしても、忘れちゃうかもしれないから」
ミムジィ
「それなら書いて残して、金庫にしまうくらいがいいんじゃない?」
ミムジィ
「忘れたものって、忘れたことも忘れちゃうからね」
スバル
2d6+1>=7 (2D6+1>=7) > 9[5,4]+1 > 10 > 成功
ミムジィ
2d6+1>=10 (2D6+1>=10) > 5[4,1]+1 > 6 > 失敗
[ ミムジィ ] 情緒 : 2 → 3
スバル
「……自分の外に出して、これで残した、って安心したら」
スバル
「おれはたぶん、それを……うまく、大事にできなくなっちまう気がする」
スバル
「でもおれには、自分の内側以上に安心なところはどこにもない」
スバル
「それがいつか変わっていったり、忘れてしまうものでも」
ミムジィ
「日記って、別に全部書くわけじゃないでしょ」
スバル
「……書きたいとか、書いておくべきだとか、そう思ったことだから?」
ミムジィ
「私にとっては、昨日の私と、今日の私が、結構別物で」
ミムジィ
「何なら他人かもって思えるくらいだから」
ミムジィ
「そのときの私は、これを書こうと思ったんだな、って思う」
ミムジィ
「だからそこに書いてある出来事よりも、自分自身を確認してる」
ミムジィ
「スバルってつけた人は、スバルってつけたかったんだろうねえ」
スバル
2d6+1>=7 (2D6+1>=7) > 8[4,4]+1 > 9 > 成功
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なんだか気持ちが昂ぶってきた。自身の情緒+1。
[ スバル ] 情緒 : 1 → 2
ミムジィ
2d6+1>=9 (2D6+1>=9) > 7[4,3]+1 > 8 > 失敗
[ ミムジィ ] 情緒 : 3 → 4
スバル
「なんでだろうな。そこらへんの、まあ、言っちまったらどうでもいい赤ん坊に」
スバル
「自分のくにの言葉で名前をつけるってのは」
ミムジィ
「喋ってて、なんでそんなこと言うんだろうなって想像するし」
スバル
ようやく立ち上がって、その後ろからバスルームを覗き込む。
ミムジィ
覗き込んだタイミングで、無駄にシャワーから水を放水しているのが見つかる。
ミムジィ
「ほら、シャワーって出てるでしょ、シャワーって」
ミムジィ
「多分これ心の疵の力みたいなものでしょ」
スバル
「あっ、お前っ」 手袋ごと、手首までシャワーの水流に突っ込まされた。
スバル
それはそれとして、お湯だな……と思っている。
ミムジィ
「お湯のシャワーはすごくいいから、楽しみにしてていいよ」
スバル
「……先使え」 なんかちょっと疲れたふう。
スバル
別に動揺はしない。外でもなくはないことだ。
ミムジィ
活発的に救世主的活動をしていると色々ある。川で水浴びもするし。
スバル
ミムジィは外敵に過敏だ。スバルはその細かい網目が、少しだけかからない場所にいる。
ミムジィ
それからしばらくシャワーを浴びる音が聞こえる。
ミムジィ
その時間は短い――そう判ずることができるかはともかく。
ミムジィ
時間にして3分くらいで、キュッキュとバルブの締める音。
ミムジィ
濡れた髪や身体――特に下半身は毛に覆われている――を拭く方のほうが時間を要しているくらいで、
ミムジィ
装いはきっちり着込み、動きやすい格好だ。
ミムジィ
添えつけられたバスローブは着ず、いつもどおりの旅衣装だ。
ミムジィ
シャンプーやら何やらが充実しているものの、石鹸一つで済ました様子。
スバル
中を覗いても、ボトルの類は何が何やら。石鹸のことだけはわかる。
ミムジィ
「髪洗う用のとか、髪をいい感じにする用のとか、わかれてる」
スバル
首の後ろにボタンがふたつ。翼の下、背の中程から腰にかけてにボタンがみっつ。
スバル
後ろ開きのシャツを脱いで、バスルームに入っていく。
ミムジィ
「青い方と合わせていい感じにしてね。回したら出るからね」
スバル
上がってくるまで、ミムジィよりは時間がかかる。長湯というより、単に慣れない。
スバル
「あれがなんか、肌に当たるとぞわぞわっとする……」
ミムジィ
グリフォンの骨って折れそうで怖いし……。
スバル
とはいえ、そんなに大量に溜める発想はない。
ミムジィ
はちみつをたっぷりかけたスコーンで飲んでいる。
スバル
2d6+1>=7 (2D6+1>=7) > 4[3,1]+1 > 5 > 失敗
[ スバル ] 情緒 : 2 → 3
ミムジィ
2d6+1>=7 (2D6+1>=7) > 2[1,1]+1 > 3 > 失敗
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何気ない所作にドキッ!ランダムな対象1人の情緒+1。
ミムジィ
Choice[ミムジィ,スバル] (choice[ミムジィ,スバル]) > スバル
[ スバル ] 情緒 : 3 → 4
スバル
ちなみにその後、あなたは失敗したぶんの情緒が上昇します。
ミムジィ
大げさに動き、腕の鰭がワイングラスにぶつかる。
スバル
それで済むなら、出会って、別れて、それで終わっていた。
スバル
何も変わらないまま、おれは『おれ』のまま。
[ ミムジィ ] 情緒 : 4 → 5
ミムジィ
その間を埋めるのは、割れたグラスを片付ける音。
ミムジィ
どれだけ正義と呼ばれるものを積み重ねようとも、
ミムジィ
罪と呼ばざるを得ないような殺しは避けがたい。
ミムジィ
同情に値する相手とも、恐れるに値する相手とも。