Dead or AliCe『16JAcks』

入場

GM
Shuffle, Deal and Up
不条理、非道理、配り直して
GM
Stand, Hit and Bust
主と僕、あなたはどちら?
GM
罪を束ねて天へと昇るか
徳を重ねて底へと下るか
GM
上下あべこべ、ヴァンテアン・ゲーム
GM
── Dead or Alice『16JAcks』
GM
GM
果て無く続く荒野の果て、その終着点よりも少し前。
GM
雲を貫きどこまでも聳える、場違いに豪華な高層建築。
GM
それはホテル『ジャック・オブ・ハート』。
GM
その広い1階のエントランスに今、末裔も救世主も犇めいている。
GM
この地で行われる儀式にして祭事、希望にして悪夢を見届けるため。
GM
或いは単に、観客に振る舞われる無料の食事を宛にして。
GM
好悪明暗綯い交ぜに、全ての視線はエレベーターの様子を写すモニターに注がれている。
GM
GM
ホテルの中央を大きく貫く、広間のようなエレベーター。
GM
その扉が静かに開き、ホテルマンが歩み出る。
106号室のホテルマン
誰も居ない場所へ向けて一礼。
106号室のホテルマン
「此度お招きに応じて頂きました、客室106号室のお二方」
GM
エレベーターの扉から、新たな人影が現れる。
106号室のホテルマン
「徒ヶ瀬つぐみ様、キュー様」
つぐみ
名前を呼ばれると、静寂。暗闇。突如会場の照明が消える。 
つぐみ
そこに、光が差す。このホテルには設置していなかったはずのスポットライト。これから現れる救世主を照らすためだけの光。
つぐみ
影が浮かぶ。悠々と立つその姿はこれから始まるデスゲームに一切の憂いもない。
つぐみ
「ようやく始まるのね。待ちくたびれて退屈でしんでしまうところだったじゃない」 
つぐみ
堕落の国で数多くの救世主も末裔も傷つけてきた悪評纏う救世主。
つぐみ
眠り鼠の集落を支配し、か弱い少女を配下にして過ごしてきたその女はライトを浴びながら不敵に笑う。
つぐみ
「出てらっしゃい。キュー。この場に居る全員に、誰が一番かを見せてあげましょう」 
キュー

「………ピャア⁉」
キュー
場を満たす、まばゆい光。歓声、怒声。
キュー
それらに身をすくませながら、後に続くは眠り鼠の末裔。
キュー
「ピ……ピ、ピ………」
キュー
ぎく、しゃく……。ぎこちなく、つぐみの後につづく。
つぐみ
じっと見て凛と立っている。貴女もそうしなさいというように。
キュー
(……こわい、こわいこわい、こわい)
キュー
つぐみの言葉を胸のなかで繰り返す。
キュー
……つぐみのほうを見上げた。
キュー
ワインレッドの瞳。そこに映る、自分の姿。
キュー
「きゅ……キュキュキュ、キューは……つぐみさまの…配下でち!」
つぐみ
「そう。一番の私の配下。この私が受け入れてあげた子」
つぐみ
怯えながらも宣言をした自らの配下に満足気に頷くと、ちらと足元から聞こえる怒声に眉を顰める。
つぐみ
「…でも、駄目ね。馬鹿な奴らのせいで、折角のこの子の声が聞こえにくかったじゃない」
つぐみ
そう言い、指を鳴らせば…
つぐみ
心の疵の力。私が一番だということを示す力。 
つぐみ
それは、戦ったその全ての力を奪い上回る。
意識を向けただけで、遥か彼方足元に居る観客たちに”誰かのどうでもいい力で出来た棘が突き刺さる。”
つぐみ
つぐみの足元から溶けるように観客席へと闇が落ちて。腕を。足を。喉を貫いていく。
つぐみ
自らに向けて罵声を浴びせた愚か者たちが串刺になっていく。
つぐみ
一瞬。一瞬で会場は悲鳴に満ちる。…けれど、その少し後にはめっきりと静かになった。 
つぐみ
それを、満足げに確認すると。
つぐみ
「じゃあ、私たちの相手を紹介してくれるかしら?」
キュー
「ヒュッ……」
つぐみ
--
つぐみ
「どんな素敵なお相手なのか、とても興味があるわ」
106号室のホテルマン
「畏まりました」 恭しく一言。
GM
次いで、エレベーターの向かいに位置する扉からもホテルマンが現れる。
108号室のホテルマン
再び、誰も居ない場所へ向けて一礼。
108号室のホテルマン
「此度お招きに応じて頂きました、客室108号室のお二方」
GM
エレベーターの扉から、新たな人影が現れる。
108号室のホテルマン
「I-Carus様、スペードの56様」
イカロス
ーーホールの床を慣らすのは、サイバネ義足の硬質な音。
その足取りは軽やかに、それでいて堂々と。 
イカロス
「困ったものだな。こうも客席が静まり返っては。盛り上がりに欠けるじゃないか。」
スペードの56
――一歩、二歩。愉快な音を鳴らし、軽やかな足取りが後に続く。
惨劇の後には場違いか、あるいは、よく似合った狂気のさまで。
スペードの56
「全くですねぇ、いやしかし。ここはひとつ、見せてあげようじゃありませんか、ダンナ様」
イカロス
「当然だ。相手はかの悪名高い串刺し姫ーーだが、それでこそ我らの相手にふさわしい、そうだろう?」 
スペードの56
「左様でございます。何時の世も、人々が望むのはヒロイックな王者の快進撃。されば、この会場の状況もまた一興」
イカロス
「悪逆非道の姫を斃し、勝利するのは我々だ。
さあーー皆の者、刮目せよ!王者の名を呼ぶがいい!」 
GM
歓声が上がる。
求められたとおりに、あるいは単に、周囲の熱に浮かされて。
スペードの56
「希望果てた大地へ、蒼空(そら)の夢を齎したる者!
我が王の名は――I-Carus(イカロス)!」
イカロス
「ーーそう、我が名は王者I-Carus!」
スペードの56
「呼べ、この名を!広めよ、この希望!堕落の国に彼は在り!」
イカロス
ーー王者I-Carus!
かの世界で、空中競技、スカイ・スクランブルの頂点に立った男。
イカロス
空中サーキット上で行われる、妨害ありのアクロバティック・レース!
競走・球技・格闘、全てが合わさったこのスポーツは、まさに空競界の最高峰!
イカロス
ーーだが、その名声それも全て過去のもの。不運な事故は、彼から命以外の全てを奪い去った。
イカロス
しかし!王者の翼はまだ折れていない!イカロスは今再び空へと舞い上がる! 
イカロス
この、堕落の国ーーヴァンテアン・ゲームの地で!
108号室のホテルマン
「ええ、ええ。ありがとうございます。」
108号室のホテルマン
「此度ヴァンテアン・ゲームの開催にあたり、救世主様と末裔からなるペア8組、合わせて16名の方々にお集まり頂きました」
108号室のホテルマン
「それぞれに生死を賭けて競い合って頂き、最後に残った1組の方々に当ホテルより景品が授与されます」
106号室のホテルマン
「景品とはつまり、救世主様には元の世界への帰還。そして末裔には、救世主の力を”自分のもの”とすること」
106号室のホテルマン
「ですがそれを得るためのチップは”オールイン”が当ゲームのルール」
106号室のホテルマン
「敗者の結末は必ず”生きる”か”死ぬ”か。そしてその選択は、勝者に責務として委ねられます」
106号室のホテルマン
「その責務を放棄する事はできません。例え、相手がどのような状態であっても」
106号室のホテルマン
「尚、棄権なされた場合は通常通り敗者として扱いますので、予めご了承下さい」
108号室のホテルマン
「そして繰り返しになりますが、当ゲームは”オールイン”」
108号室のホテルマン
「お持ちの6ペンスコインは全てチップとして当ホテルに預けて頂き、決闘においてはホテルから配布される”指定枚数”のコインを用いて頂きます」
108号室のホテルマン
「こちらが決闘用のコインと、証となります」
GM
それぞれのペアの元に担当のホテルマンが歩み寄る。
GM
その手にはカジノで見るような重厚な造りのチップトレイと、2枚の赤いトランプ。
106号室のホテルマン
「この第1回戦でホテルより配布されるコインは、引いた証がエースであれば11枚。ジャックであれば10枚」
108号室のホテルマン
「これより始まるお茶会の時間、エースとジャックの間には多少の……一般的な救世主と末裔の間にあるものと同程度の立場の差が生じます」
106号室のホテルマン
「それでは、コインをお預けください。そしてどうか、お引き下さい」
つぐみ
「そう。ここまで全部調べていた通りね」
つぐみ
「良いわ。別に欲しくて集めていたものでもないし。”勝手に集まった”だけだもの」
つぐみ
目の前のホテルマンに自らの六ペンスコインを全て渡す。
キュー
「つ、つぐみさまぁ~……」
キュー
後に続いて、自分のもっていたコインも。
106号室のホテルマン
過ぎるほど丁寧な所作でチップトレイに受け取り、礼を取る。
106号室のホテルマン
そして、差し出される赤いトランプ。
つぐみ
迷う様子もなく、一枚引く。
つぐみ
「エース。当然ね」
つぐみ
手に取った札を翻し確認すれば、なるべくしてなったというようにホテルマンへと見せる。
キュー
残りの一枚を引く。そしてもちろんこちらはジャック。
キュー
(ほっ……)それなのに、どこか安心した様子だ。
つぐみ
「それで?私たちはこれでもう良いのかしら?」 
つぐみ
そうなるべきことがそうなるべくして起きたこと。そのような素振りでホテルマンへと聞く。
106号室のホテルマン
「ええ。今しばらくお待ちくださいませ」
108号室のホテルマン
そして一方で、こちらでもやはり、チップトレイとカードが差し出されている。
スペードの56
「元より承知の上ですからね。御随意に、ダンナ様」
スペードの56
ワタシは元々コイン持ってません。全部ダンナ様が持ってます
イカロス
「ああ、これで互いに同条件。対等な試合ということだ。」
イカロス
……まあ、多少の差があろうが私は勝利するだろうがね!
イカロス
同様にコインを預ける。そこの道化の分もまとめてな
108号室のホテルマン
コインのぶん軽くなった手のひらに、差し出される赤いトランプ。
スペードの56
「ダンナ様。一つ、引く前に」そこでひとさし指をぴっと立てる
スペードの56
「引いたカードのジャック、エース、それによって力関係に変化が起きる、というのは御承知の通りでしょう。ゆえ」
スペードの56
「引いたら全力でエースしますので恨みっこなしでお願いします」
イカロス
「……お前はそういう奴だろう、分かっているさ。」顔の前に手をやり、あからさまなやれやれポーズ
スペードの56
「流石は我が王、寛大な所も気に入っておりますよ」
イカロス
「それでこそ、賭けが面白くなるというものだろう。……とはいえ、エースに選ばれるのは私だろうがな。」
イカロス
そして、迷いなくカードを引く。目の前で札を裏返し。
イカロス
「……当然の結果だな。」手の中にあるのは、エースの札。
スペードの56
見れば二度手を叩き、自分もさっと引いて……当然ジャック
スペードの56
「やはりこうなりましたか。ワタシは信じておりましたよダンナ様」
108号室のホテルマン
「これで、エースとジャックが決定されました。これは当ホテルより判断されるお客様方の身分であり、領分となります」
108号室のホテルマン
「エースはエースらしく。ジャックはジャックらしく。どうか振る舞われますよう」
108号室のホテルマン
「領分を犯した者には、相応の報いが与えられます」
106号室のホテルマン
「これより24時間のお茶会の時間の後、再びこの中央エレベーターへとお集まり頂き、裁判となります」
106号室のホテルマン
「こちらそれぞれ2通、お茶会を助けるための招待状となります、お受け取り下さい」
GM
招待状と称された封筒が、各ペアに2つずつ渡される。それは、参加者たちをこのホテルに招いた招待状と似た気配を持つもの。
スペードの56
「ふむ、これはこれは」いただきましょう サクッと
つぐみ
受け取るようキューに視線を向ける。
キュー
はっ!!
キュー
「つぐみさまのぶんも、4通いただくでち~!」
キュー
サッ!シュバッ! 2通をつぐみに手渡した。
スペードの56
マジですか、ワタシもそれやろ
つぐみ
--
イカロス
好きなようにするがいい…
スペードの56
「ではどうぞ、ダンナ様」はい、貰ってきましたよ
つぐみ
目を細めて受け取る。良い子ね。
イカロス
「気が利くな、フィクス。」受け取るよ
106号室のホテルマン
「エースの方々。当ホテルに存在する施設は全て、ご自由にお使いください」
108号室のホテルマン
「ジャックの方々。どうかエースの方々の邪魔を為されないように」
106号室のホテルマン
「それでは、客室106号室、徒ヶ瀬つぐみ様、キュー様と」
108号室のホテルマン
「客室108号室、I-Carus様、スペードの56様の」
106号室のホテルマン
「これより、お茶会の時間と相成ります」