Dead or AliCe『16JAcks』

裁判

GM
アルビー
*アリスのゆびぬきをネに渡します
[ ネ ] アリスのゆびぬき : 0 → 1
ジャン
*アリスのエプロンをペペルに譲渡します。
[ ジャン ] アリスのエプロン : 1 → 0
[ ペペル ] エプロン : 0 → 1
GM
GM
中央エレベーター。
GM
中心から大きく2つに分かたれたこの巨大な空間は、この後片方が昇り、片方が降る。
GM
それはこれから行われる決闘次第。
GM
それは繰り返されてきた儀式。
GM
それは運命の分かれ道。
GM
中継された1階の歓声が天井近くのスピーカーから届く中。
GM
エレベーターの境目で、ホテルマンが虚空へと一礼。
101号室のホテルマン
「24時間が経過致しました」
103号室のホテルマン
「これにてお茶会の時間は終了。裁判の時間と相成ります」
101号室のホテルマン
「マナー、チップ、ドレスコード、どうか御確認の上……ご準備はよろしいですね?」

足音はない。

そのかわりに、いくつもの帯が、揺れ、舞い、磨き抜かれた床を舐める。

するり、するり、するり。

ずる。
アルビー
ずる。

「最初に言った。勝つのは僕たちだと──」

「それを証明する時が来たようだ」
ペペル
たん、たんと軽快に靴音を鳴らす。
ペペル
「残念だけど、勝つのはボクたちだ」
ジャン
靴底のほとんどない粗末な靴で、ペペルの後に続く。
ペペル
いつもと変わらないような、朗らかな笑い。
ジャン
「はい」
アルビー
ずる。
アルビー
ずる。
アルビー
血のように赤い煙。
アルビー
白い少女の傍らに立つ。

「アルビー」

赤い帯を握る。

「オールイン・オールベット。コインの総取り合戦だ」
アルビー
頷く。
ペペル
「ボクたちには、使命がある……」
ペペル
「世界を救うという使命が」
ペペル
「ボクはボクの世界を。
 ジャンはジャンの世界を」
ペペル
「だから……ここで負けるわけにはいかないんだ」
ペペル
「そうだろう、ジャン?」
ジャン
「……はい!」
ジャン
頷く。
ペペル
優等生然とした救世主のセリフ。

「じゃあ、僕のは、君たちにとっては笑える使命だろうな」
ジャン
それが、自分の『使命』であるとはジャンは思わない。
ペペル
しかしそれは、かつてジャンに語ったものとは、
ほんの少し違ったものだ。
ジャン
それでもペペルに合わせるように頷いている。

「……」息を吸って、吐く。

「僕はアルビーの好きな僕でいるよ」

「笑えるだろ?」
ペペル
「使命に、笑うも笑わないもないさ」

「ああ、そう。それじゃあ」
ペペル
「……できれば、穏やかに
 そんな話だけできればよかったよ」

「……はじめようか、そろそろ」
ペペル
「剣での、語り合いの時間だ」
GM
GM
*裁判開廷!
GM
*小道具の使用
ジャン
*日刻みの時計を使用。

*日刻みの時計を使用。
GM
*行動順の決定
GM
*〔1D6+【才覚】(+時計+衣装)〕で「先制値」を決定してください!
ペペル
1d6+1 行動順 (1D6+1) > 3[3]+1 > 4

1d6+3+1+2 先制値 (1D6+3+1+2) > 5[5]+3+1+2 > 11
ジャン
1d6+3+2 (1D6+3+2) > 3[3]+3+2 > 8
アルビー
1d6+3 (1D6+3) > 5[5]+3 > 8
ジャン
1d6+3+2 (1D6+3+2) > 6[6]+3+2 > 11
アルビー
1d6+3 (1D6+3) > 5[5]+3 > 8

ラウンド1

ジャン
*c5,d4,h8,hK,dK
ペペル
*s4 c7 h7 s7 hJ
アルビー
*h10 cJ dJ dQ dA

*s2 h3 d2 c10 ck
GM
*行動:ネ

*ck 封殺 ジャン
ペペル
OK
ジャン
*割り込みしません

*d2 精確

1d6 (1D6) > 6

2d6+3+1+6=>7 判定(+才覚) (2D6+3+1+6>=7) > 7[5,2]+3+1+6 > 17 > 成功
[ ジャン ] HP : 15 → 12
[ ジャン ] 封印 : 0 → 2

「もらっていくぞッ!」

鋭い水色のひらめき。

それはジャンの目の前ではじける。
ジャン
「!」
ペペル
「ジャンっ!」
ジャン
目を見開く。咄嗟に腕で自分の体を庇う。

ゆらめく包帯に赤い血液が飛び散る。
ジャン
「いっ……て!」

「いつか言われたな。『恥ずかしくないのか?』と……」
ジャン
冷気が走り、熱が生まれる。

そして、痺れ。脱力感──短剣に塗られているのは、毒。

「汚くても、なんだってしてやるさ。これが僕らのやり方だ!!」
ペペル
「……そうか」
ペペル
「なら、こっちはこっちのやりかたで行かせてもらうさ!」
ジャン
血の浮いた腕をだらりと下げて、向き直る。
ジャン
しかし、視線の向く先は少女ではない。
GM
*行動:ジャン
ジャン
*必衰 c5 対象はアルビー

*妨害 c10

*h3 精確

1d6 (1D6) > 5

2d6+3+1+5=>7 判定(+才覚) (2D6+3+1+5>=7) > 6[2,4]+3+1+5 > 15 > 成功

*逆転します プレゼントを抉って2を6に
[ ネ ] プレゼント : 0 → -1
GM
*達成値は19点になります。
ジャン
*精確 hK
ジャン
1d6 精確 (1D6) > 1
ジャン
2d6+3+1+1+1=>19 判定(+才覚+多彩な凶器+万能) (2D6+3+1+1+1>=19) > 6[5,1]+3+1+1+1 > 12 > 失敗
ジャン
*失敗
ジャン
少女の横をすり抜けて、わずかに赤い尾を引きながら、血に塗れた男の方へ向かう。
ジャン
少女と同じように、しかしいささか使い古しの包帯に巻かれた腕を伸ばす。
ジャン
使えるものは何でも使う。たとえ毒でさえも、と少女は言ったが。

「触るなッ!!」
ジャン
毒は堕落の国ではあり触れた武器だ。特に救世主に比して『非力』な末裔にとっては。

悲鳴に近い怒声。
ジャン
その包帯の下には、毒の針が仕込まれている。
ジャン
声で制止などされない。立って動いているのがふしぎなほどの、毒が効くのか怪しい男へ向かって、走っていく。

声が途切れるよりも早く駆ける。

擦り切れた包帯のいくつかがちぎれ、宙に舞う。

短剣がまっすぐ、ジャンの腕へ向かって飛ぶ。
ジャン
「っ!」
ジャン
その気配を今度は敏感に察する。視線が泳ぎ、指先が跳ねた。
ジャン
だが、結局足を止める。短剣を避けるべく、転げるように床に倒れる。磨き抜かれた床に点々と血が散っていく。

からんからん、と短剣が転がり滑る。

肩で息をする。

「触るな……僕のアルビーに!!」
ジャン
「くそっ……」
ジャン
よろけながら体を起こした。
GM
*行動:アルビー
アルビー
*cJ 兵站 対象:ネ
ジャン
*妨害 h8
ジャン
*精確 hK
ジャン
1d6 (1D6) > 2
ジャン
2d6+3+1+1+2=>7 判定(+才覚+多彩な凶器+万能) (2D6+3+1+1+2>=7) > 9[4,5]+3+1+1+2 > 16 > 成功
アルビー
2d6+3+1=>7 判定(+才覚) (2D6+3+1>=7) > 8[2,6]+3+1 > 12 > 成功
アルビー
16なので失敗ですね。
GM
*16なので失敗
アルビー
赤い煙がたなびく。
アルビー
水パイプの香りが充満する。
ジャン
鉄錆の匂いの混じり入るそれに、もうひとつ煙の香りが混じる。
ジャン
その香りは、末裔の青年の腕から落ちる血から立ち上っている。白い煙。
ジャン
いかにイモムシの末裔を嫌おうと、遠ざけて救世主の力を得ようと望もうと。
ジャン
間違いなく青年はイモムシの末裔。その力を形作るイメージは、嫌うからこそイモムシに波のように寄り、また離れる。
アルビー
絶えず流れる血液で視線の行く先がわからない男が幽かに煙を見る。
アルビー
煙を吐く。
ジャン
「……」
ジャン
「俺の故郷は、滅ぼされたりしない」
ジャン
「その前に、俺が救世主になるからだ」
アルビー
「救うのは故郷だけか」
アルビー
「お優しい」
ジャン
「……いいや」
ジャン
「もう滅んでしまったものは、救えない」
アルビー
「例えできたとしても」
アルビー
「お前には御免だな」
アルビー
「だからここに来たんだろ」
アルビー
「立ちふさがる者すべてを」
アルビー
「葬るために」
ジャン
投げかけられた言葉に、虚を突かれたような顔をした。
ジャン
言葉を返せない。視線は泳ぎ、
ジャン
共に戦うペペルの方へ。返事のないままに、勇者が動き始める。
GM
*行動:ペペル
ペペル
*s4 鋭気
ペペル
*c7 乱打 対象はアルビーのみ
アルビー
*h10 妨害
アルビー
2d6+3+1=>7 判定(+才覚) (2D6+3+1>=7) > 7[5,2]+3+1 > 11 > 成功
ペペル
2d6+2+1=>11 判定(+猟奇) (2D6+2+1>=11) > 9[3,6]+2+1 > 12 > 成功
ペペル
1d6+2+3+2+1 ダメージ (1D6+2+3+2+1) > 5[5]+2+3+2+1 > 13
ペペル
OK
ペペル
逆転しません。そのままダメージ。
[ アルビー ] HP : 14 → 1
ペペル
火花のはじける音。
ペペル
ジャンが攻撃を行った、その反対側にペペルは回り込んでいる。
ペペル
空気が揺らめく。

──早い!
ペペル
稲妻をまとった剣。
ペペル
煙の彼方からそれが現れて、アルビーの躰を凪ぐ。

「アルビー!」
アルビー
半分に分かたれた胴体を赤い帯が繋ぐ。
アルビー
吹き飛ばされた肉塊がずるずると音を立てて戻ってゆく。
ペペル
殺しきれていない。

「いや……!」
ペペル
足を止めない。旋風のように駆けて再び距離を保つ。
ペペル
「……こんなもので終わるとは思っちゃいない」
ペペル
常人が受けていれば、何度絶命してもお釣りの出そうな一撃だ。
アルビー
それを見て。
アルビー
笑った。

「行かないで」

「どこにも、行くな……」
ペペル
「次で断つ」

睨みつける。今度は、ただしくペペルを。
GM
*手札捨てタイム
ジャン
*捨てなし
ペペル
*h7 hJ捨て
アルビー
*捨てなし

*捨てなし

ラウンド2

ジャン
*sJ,d4,d4,d6,h5
ペペル
*c2 s6 (s7) s8 d9
アルビー
*dQ cQ (d10 dJ DA)

*c3 d7 c10 cQ (s2)
GM
*行動:ネ

*劇毒 d7 ペペル
[ ジャン ] 封印 : 2 → 1

*精確 c3

1d6 (1D6) > 5

2d6+3+1+5=>7 判定(+才覚) (2D6+3+1+5>=7) > 4[2,2]+3+1+5 > 13 > 成功
[ ペペル ] 猛毒 : 0 → 4

「世界を救う!?救うって何なんだ!?」

「何を掬ったつもりでいるんだよ!!」
ペペル
「世界にあまねく悪を滅ぼし、正しい方向に導くことだよ」

「お前の手の中にあるものを見ろ!!」

ペペルの手。
ペペル
手の中の鋼。
ペペル
それはべっとりと汚れている。

その赤い血が、ふつふつと熱を持つ。

アルビーの血は、ネの血。

悲しみ、憎悪、そして激しい怒り。

それがペペルの肌を焼く。
ペペル
「……!」
ペペル
赤・赤・怒りの色

「僕は取り落とさない」

「僕は絶対に、手放さない!!」
ペペル
「抱きしめたまま……」
ペペル
「奈落の底に落ちることに、なっても?」

「上等だ」
GM
*行動:ジャン
ジャン
*必衰 d5 アルビー

*アリスのゆびぬきを使用
GM
*誰かが技能の対象となったときに割り込み。その対象への効果を無効化できる。
ジャン
ネがペペルの方を向くその間に、ジャンはアルビーへ再び向かっていく。
ジャン
少女から伸びる重く湿った赤い包帯をたどるように、血のぽつぽつと落ちる床を走る。
ジャン
邪魔は、ない。伸ばされた手はアルビーの身体へ触れ、とげが突き立てられる。
アルビー
パイプ煙草を取り落とす。
アルビー
イモムシの毒は、基本的に水パイプからなるニコチン毒だ。
アルビー
自身の血に溜め続けた毒が、心の疵で増幅されて死体にまで届く。
ジャン
深々と、潜り込む。血に混じり入る。
アルビー
胸を掻き毟るような心の疵の激流に、一滴落ちる。
アルビー
銀の匙がおとしたミルク。
アルビー
白い薔薇を赤くするにはペンキを塗ろう。
赤い薔薇を白くするには?

いままで、この手にふれたものは、数え切れない。

ある人はあばずれと言った。ある人は天使と言った。

またある人は、

『アリス』と。

銀の匙が愛憎をひとさじ。

アルビーへと触れる。

それだけで。

「お前はまだ立てる」
アルビー
どうして誰も彼もこんな世界に生まれて来たのか。
アルビー
死にたくないのなら生まれないほうがよい。
アルビー
哀しみ、苦しみをすべて消し去るにはそれしかない。
アルビー
ただそれでも。

「お前はまだ僕の隣にいる」
アルビー
生まれてきたのなら。

「お前のことを、取り堕としはしない」
アルビー
薔薇の花を塗り替え続けるしかない。
アルビー
死体が声に応えて立つ。

誰でもよかった。でもお前しかいない。
ジャン
違和感──を、感じ、青年は腕を引き、引き下がる。

僕にはお前しかいないんだ。
ペペル
効いてない?
ペペル
そんなはずはない。だが。
ジャン
まだたおれていない。
ペペル
「奇跡か…」
ペペル
ひとりごちる。
ペペル
奇跡など、悪趣味なことにありふれている。この国では。
ジャン
奇跡ひとつでは、この世界は何も変わらない。
ペペル
救世主。心の疵。聖遺物。
ペペル
それらには、再現性はない。
ペペル
いくら安売りされているからといって──そう何度も起こせるものではないのだ。

「どこにも行かないで」
ジャン
まだ立っている。まだ倒れていない。まだ手折れていない。
ジャン
でも、この世界を救うほどの力がいる。だから奇跡ひとつで、気圧されるわけにはいかないんだ。
GM
*行動:アルビー
アルビー
世界なんて最初から個人の手のひらの上にしかない。
アルビー
「みなが自分ことだけを考えて、ひとのことに口出ししなけりゃ、この世は今よりずっと上手く行くものを……」
アルビー
笑う。
アルビー
「すべてのことには教訓がある。見つけることができればの話だが」
アルビー
されど。
アルビー
それをかつて、すべて午後の微睡に変えてしまった少女がいた。
アルビー
*dJ 兵站 対象:ネ
アルビー
2d6+3+1=>7 判定(+才覚) (2D6+3+1>=7) > 8[3,5]+3+1 > 12 > 成功
アルビー
*枯れた花輪 をお渡しします
アルビー
「そして疲れた語り手が肩の荷をおろそうとすれば……」
アルビー
「つづきはこんど――」「いまがこんどよ!」
アルビー
声が血に途切れて、なおも続ける。
アルビー
「かくして不思議の国のお話がそだち、
ゆっくり、そして一つ一つ……」
アルビー
アリス
アルビー
子どもじみたおとぎ話をとって
やさしい手でもって子供時代の
夢のつどう地に横たえておくれ
アルビー
男の唇が煙を輪に吹く。
アルビー
すべての教訓を投げ捨てて、少女はばかげた不思議の国を不思議のままにした。
アルビー
お話を紡ぐように、寝物語を語るように。
アルビー
赤い煙が少女の花冠になる。

ゆびさきに吸い寄せられた、赤い花冠を。

取り落とさないように、しっかり掴んだ。
[ ネ ] アリスのゆびぬき : 1 → 0
[ ネ ] 枯れた花輪 : 0 → 1
GM
*行動:ペペル
[ ペペル ] 猛毒 : 4 → 3
[ ペペル ] 猛毒 : 3 → 4
[ ペペル ] HP : 13 → 11
[ ペペル ] HP : 11 → 13
ペペル
*c2 鋭気
ペペル
*s6 乱打→ネ、アルビー

*妨害 c10

*精確 c2

1d6 (1D6) > 4

2d6+3+1+4=>7 判定(+才覚) (2D6+3+1+4>=7) > 5[4,1]+3+1+4 > 13 > 成功
ペペル
2d6+2+1=>13 判定(+猟奇) (2D6+2+1>=13) > 12[6,6]+2+1 > 15 > 成功
GM
*スペシャル!
GM
*PCが裁判中の判定でスペシャルを起こした場合、即座にPCのHPを1D6点回復します。
ペペル
1d6 回復 (1D6) > 3
[ ペペル ] HP : 13 → 16
ペペル
1d6+2+3 鋭気・乱打・歪な凶器 (1D6+2+3) > 3[3]+2+3 > 8
ペペル
ネに4点、アルビーに7点
[ ネ ] HP : 13 → 9
GM
*アルビーのHP0!判決表!
アルビー
2d6+1-0 判決表 (2D6+1-0) > 4[3,1]+1-0 > 5
GM
3~5 〈昏倒〉する。
アルビー
頽れ、高らかに水パイプのガラスが割れる音が鳴る。

「アルビー?」
ペペル
駆ける。
ペペル
空気が焼けるにおい。
ペペル
ペペルの身も、毒で灼かれる。
[ ペペル ] HP : 16 → 14
ペペル
痛み、ふらつき……怒り。
ペペル
ボクだって…
ペペル
「取りこぼしたくて、取りこぼしたわけじゃない」
ペペル
担がれた剣。かがむペペルの頭上で、ぐるりと一回転する。
ペペル
稲妻と斬撃が、飛ぶ。
二人を同時に焼き、刻む。

蒸発する血。焦げる肉。切り刻まれる体。

手を伸ばしたかたちのままで、ぼろきれのように転がる。
アルビー
「──」
アルビー
雷が頽れた男の上体を吹き飛ばす。

「アルビー?」
アルビー
帯は繋がっている。
アルビー
ただ、肉塊がそこに戻らない。
アルビー
焦げるにおい。
体液が蒸発した死臭混じりの水蒸気。
アルビー
死霊術士の少女はそこにまだ立っている。
アルビー
死体は誰の力で動いていた?

「アルビー?」

よろめきながら立ち上がる。激しい熱が素足を焼く。駆け寄る。いない。

いない。
アルビー
誰がこのくだらない生を望んでいた?

「アルビー……!」

赤い帯を手繰り寄せる。手繰り寄せる。手繰り寄せる。

それでも。

花輪を離さない。

取り落していない──まだ。
ペペル
剣を構え直す。残心。
ペペル
感情のゆらぎは収まる。
痛みはまだ残っている。
だが無視できる。

あふれるほどの赤い帯が、ネの足元で渦巻いている。

「まだだ」

「……まだ!!」
ペペル
ペペルは、人を傷つけるのが嫌いだ。
ペペル
だが、裁判は、それほど嫌いではない。
ペペル
それは、余計なことを考えなくて済むからだ。
[ アルビー ] HP : 1 → 0

*捨てなし!
ペペル
*s8 d9捨て
ジャン
*d4捨て

ラウンド3

GM
*カード引きタイム!
ジャン
*(h4,d6,sJ),sK,sA
ペペル
*d3 c4 s3 h5 (s7)

*h6 c6 s9 joker (sQ)
GM
*行動:ネ
[ ジャン ] 封印 : 1 → 0
[ ペペル ] 猛毒/ネ : 4 → 3

*枯れた花輪を使用
[ ネ ] 枯れた花輪 : 1 → 0

*劇毒 h6 対象はジャン
ジャン
*妨害 sJ 精確 h4
ジャン
1d6 (1D6) > 5
ジャン
2d6+0+1+5=>7 判定(+猟奇+万能) (2D6+0+1+5>=7) > 12[6,6]+0+1+5 > 18 > 成功
GM
*スペシャル!
ジャン
1d6 (1D6) > 2
[ ジャン ] HP : 12 → 14
GM
*+3なので21!

素で振ります。

2d6+3+1=>21 判定(+才覚) (2D6+3+1>=21) > 2[1,1]+3+1 > 6 > 失敗

*逆転して1を6に
[ ネ ] 赤い包帯 : 0 → -1

「何も終わっていない、何も……」

赤い包帯がネの足元で、たわんで重なっている。
ジャン
ネの切り裂いた腕から、血がいまだぱたぱたと落ちる。
ジャン
そこから、立ち上りくゆる煙。イモムシが好む水パイプの煙。
ジャン
ネの動きを阻むべく、取り巻き、視界を遮る。

ネがいまだに、取り落とさない、花輪。

赤い包帯のさきは、その花輪にくくりつけられている。
まるで、プレゼントのように。

エキナセア。

モナルダ。

ポピー。

そして、赤い薔薇。

「勝つのは僕たちだ」煙の中、もうそこに立っていない人を幻視する。

「……そうだろう?」

花輪にくちびるを。

しわがれたなまぐさい、汚らわしい花輪。

これは、お前そのものだね。
ジャン
「俺たちは、負けるわけにはいかない」
ジャン
煙があなたと花輪を閉じ込める、閉じ込める。
ジャン
「俺たちが、勝ってみせる」

行かないで、と何度もつぶやいた。生と死の呪いのはざまに。

その言葉は、ほんとうは、ただしくないんだ。

ほんとうは、お前に、こう言いたかったんだよ。

『そばにいて』
アルビー
あなたのまぶたのむこうで、男が笑う。
アルビー
『それじゃあ、いっしょに死んでくれる?』

──抱きしめたまま

奈落の底に落ちることに、なっても?

くちづけは咀嚼へ。花輪が舌の上に乗る。煙を吸うように、あるいは、血をすするように。

赤い包帯を、口のなかに飲み込んで。

わらう。

「上等だ」
ジャン
そうして閉じ込めた煙の中に、一歩足を踏み入れる。
GM
*行動:ジャン
ジャン
*奪取 sK ネ

*妨害 s9

*精確 joker

1d6 (1D6) > 2

2d6+3+1+2=>7 判定(+才覚) (2D6+3+1+2>=7) > 6[1,5]+3+1+2 > 12 > 成功
ジャン
2d6+3+1+1=>7 判定(+才覚+多彩な凶器+万能) (2D6+3+1+1>=7) > 8[6,2]+3+1+1 > 13 > 成功
ジャン
*sQを奪取します。
ジャン
煙の中から、少女へ向けて手が伸ばされる。
ジャン
「あんたたちがしたこと」
ジャン
肩を掴み、鼻先を近づけ、末裔は密やかに言葉を紡ぐ。
ジャン
「俺は卑怯だとは思っちゃいない」
ジャン
「お茶会では当たり前のことだ」
ジャン
「でも、ペペルさんはああ言う──」
ジャン
触れた場所から重くなり、力が抜けていく。
ジャン
「だから、俺たちが勝つ」
ジャン
「あんたらは、別に卑怯者ではないからだ」
ジャン
何か言葉が返る前に、末裔は再び煙の中へ消える。

赤い血は、錆びた香りそのまま。

煙にも、花にも、なりはしない。ネは救世主だからだ。

手がふれあう。まるで握手でもするかのように。赤いものがべったりとこびりつく。けれど、それは、あなたを灼かない。

「世界を救うだとか」煙のなか、赤色が落ちる。

「なんだか、大変そうだね。アルビー」
ペペル
「そうだよ。大変なんだよ」
GM
*行動:ペペル
ペペル
*d3 鋭気
ペペル
*h5 乱打→ネ
ペペル
2d6+2+1=>7 判定(+猟奇) (2D6+2+1>=7) > 9[5,4]+2+1 > 12 > 成功
ペペル
1d6+2+3+1 歪+鋭気+相手発狂 (1D6+2+3+1) > 1[1]+2+3+1 > 7
ペペル
*ん~~~~~…………
ペペル
*疵「闘争」を抉り、ダメージダイスを6に
[ ペペル ] 疵:闘争 : 0 → -1
ペペル
12ダメージ
GM
*ネのHP0! 判決表!

2d6+1-0 判決表 (2D6+1-0) > 7[2,5]+1-0 > 8
GM
6~8 ランダムな能力値で判定し、成功すればHPを1点回復して立ち上がる。失敗すれば〈昏倒〉する。

Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 愛

2d6+0=>7 判定(+愛) (2D6+0>=7) > 8[2,6]+0 > 8 > 成功
[ ペペル ] HP : 14 → 12
[ ネ ] 前科 : 0 → 1
ペペル
*毒でHP減少
ペペル
「そうだね……」
ペペル
「卑怯と言ったのは、取り消そう。
 ボクはただ」
ペペル
煙や包帯を越えるように大きく跳躍する。
ペペル
「ただ、怒っているだけだ!」
ペペル
まさに落雷のように、少女に鋼が振り下ろされる。

まどろみの中にいるように、ぼんやりとその鋼を見上げる。

ちぎれる包帯。 跳ね飛ばされる頭。 転がり倒れる銅。
ペペル
斬る。抉る。突き立てられる。怒り(gram)が。
ペペル
それは彼女に呼び起こされた、ペペル自身の怒りだ。
ペペル
「ボクに説教をするな……ッ」
ペペル
「始めから……救われようなんてつもりもないくせに!」

ちぎれてばらばらになった包帯が、倒れたネの体に集う。
ペペル
「周り中を憎んで! 自分たちの弱さに甘えているだけだ!」

ぴくり、と指が動く。

「っげほ……がっふ!!」
ペペル
「違うのか……!?」

なくなったはずの頭。

その口から、大量の血を吐き出しながら身を起こす。

「ごめんね」

「君たちと同じように、お茶を飲んで話がしたかったのは、本当なんだ」

白い少女の全身は、赤に。

「だって君は」

「靴も履いていない、かわいそうな、路地裏の女の子だったのにね」
ペペル
刃の腹で、赤く染まった少女を弾き飛ばす。

包帯のちぎれる音。
ペペル
「今のキミより、かわいそうな奴なんていないよ」
ペペル
吐き捨てるように。

「そうだろうか……」咳き込みながら、わらう。

「僕たちはもう、負けることはないのに」
ペペル
「…………」
ペペル
「やっぱりキミたちは、卑怯だ」
GM
*カード捨てタイム
ジャン
*d6,sA捨て
ペペル
*s3 c4 捨て
[ ネ ] HP : 9 → 1

*c6捨て

ラウンド4

GM
*カード引きタイム

*h2 s9 s8 d8 hA
ジャン
*s5,h9,(sQ),hQ,cA
ペペル
*s4 c6 d6 (s7) dK
GM
*行動:ネ
[ ペペル ] 猛毒/ネ : 3 → 2
[ ネ ] 枯れた花輪(ネ) : 2 → 1

卑怯。

卑怯か。

そうだろうな。

*パス
GM
*行動:ジャン
ジャン
*封殺 sQ ネ

*妨害d8
ペペル
*その妨害に割り込んで、dK 遊撃

*妨害 c9
ジャン
*妨害 h9

*妨害 c8 精確h2

1d6 (1D6) > 4

2d6+3+1+4=>7 判定(+才覚) (2D6+3+1+4>=7) > 5[3,2]+3+1+4 > 13 > 成功
ジャン
2d6+3+1+1=>13 判定(+才覚+多彩な凶器+万能) (2D6+3+1+1>=13) > 11[6,5]+3+1+1 > 16 > 成功

2d6+3+1=>16 判定(+才覚) (2D6+3+1>=16) > 6[1,5]+3+1 > 10 > 失敗
ペペル
2d6+2+1=>7 判定(+猟奇)遊撃の判定 (2D6+2+1>=7) > 11[5,6]+2+1 > 14 > 成功
ペペル
1d6 達成値減少 (1D6) > 1
ペペル
*ダメージは2点です
ペペル
達成値減少は判決表の後ですね
[ ネ ] HP : 1 → 0
GM
*ネのHP0! 判決表!

1d12 (1D12) > 6

2d6+1-1 判決表 (2D6+1-1) > 12[6,6]+1-1 > 12
GM
12~ 無罪!HPが0となる際に受けた不利な効果を無効とし、HPは0になる前の値に戻す。前科は増える。
[ ネ ] 前科 : 1 → 2
[ ネ ] HP : 0 → 1
GM
*遊撃が無効になります。

2d6+3+1=>7 判定(+才覚) (2D6+3+1>=7) > 4[2,2]+3+1 > 8 > 成功
ジャン
2d6+3+1+1=>8 判定(+才覚+多彩な凶器+万能) (2D6+3+1+1>=8) > 5[4,1]+3+1+1 > 10 > 成功
ジャン
*威力+発狂で4点ダメージ
[ ネ ] HP : 1 → 0
GM
*ネのHP0! 判決表!

2d6+1-2 判決表 (2D6+1-2) > 8[2,6]+1-2 > 7
GM
6~8 ランダムな能力値で判定し、成功すればHPを1点回復して立ち上がる。失敗すれば〈昏倒〉する。

Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 愛

2d6+0=>7 判定(+愛) (2D6+0>=7) > 11[5,6]+0 > 11 > 成功
[ ネ ] HP : 0 → 1
[ ネ ] 前科 : 2 → 3
ジャン
*封印 2ラウンド
[ ネ ] 封印(ジャン) : 0 → 2
ジャン
向かっていく。立ち尽くす少女を打ち倒そうと。
ジャン
お茶会は精神の戦い。裁判もまた肉体だけではなく心を削る。
ジャン
どちらかが倒れるまでは終わらない。まだ少女は倒れていない。

「救われようとしていない、ね……」

「君は取りこぼしたものすら見つめられないの?」

ナイフがひらめく。
ジャン
ぼふ──と、そう音が鳴ったようにすら錯覚しただろう。
ジャン
厚い煙がナイフを振ることさえ阻む。
ペペル
「ああ、そうだよ」
ジャン
「いいや、違う」
ジャン
返ってくる言葉は食い違う。

キノコのむこうとこちら側?
ジャン
「ペペルさんは見ている」
ジャン
「ちゃんと見ていますよ」
ペペル
「ボクはなんにも見えてないよ」
ペペル
稲光が蛇のように地面を這う。
ペペル
それはネの動きを先回りするように追いすがる。
ジャン
「見つめても見えないものはある」

「く……!」
ジャン
「考えても答えの出ない問いはある」
ペペル
光が弾ける。ネの視界を灼く。
ジャン
「考えすぎなのは、ペペルさんも同じですよ」

足をとらわれて、その先が焼き切れる。足をうしなった体が、光のなかに落ちる。粉砕される。ばらばらにちぎれる。

最後にのこった手が。

なにかを掴むように伸ばされる。

アルビー。

僕のそばに。

僕のそばに、おいで。

子守唄を歌ってあげよう。
ジャン
「掬う時に、何も零さないことができないのなら」
ジャン
「救うことを諦めなきゃいけないわけじゃない」
ジャン
「……行きましょう。ペペルさん」

そして──

光のなかで、なにかを握りしめる。

「掬う(scoop)にはスプーン(spoon)がなければ」

「お行儀が悪いと思わない?」
ジャン
「行儀なんか気にしてられないさ」

ひゅっ。水色の尾が走る。

ジャンへ向かって、まっすぐに。
ジャン
「勝つためには、何でもしなきゃいけない。そうでしょう?」
ペペル
「スプーンで戦う勇者は、ちょっと不気味(spooky)だしね」
ジャン
避けない。だが、ナイフは空を切る。
ジャン
水パイプの煙は薄められた毒。心の疵の力を借りて、距離感すら曖昧にする。
ジャン
とげ(spike)で刺すまでもなく。
アルビー
sを重ねて掬って束ねて、紐解いて。
解決(slove)には愛(love)だ。
愛だ。世界を動かすのは。

舞台の踊り子はいちど、にど、ステップを踏んで、

それから奈落へまた落ちる。

そして血まみれの床を這いずって、ふたたび愛にたどりつく。

吐き出す赤は血か、花弁か。

赤い薔薇の花言葉は、なんだったか。

「……まだだ」

「まだ終わらないさ」
GM
*行動:ペペル
ペペル
*c6 乱打→ネ
ペペル
2d6+2+1=>7 判定(+猟奇) (2D6+2+1>=7) > 5[3,2]+2+1 > 8 > 成功
ペペル
1d6+2+1 (1D6+2+1) > 2[2]+2+1 > 5
[ ネ ] HP : 1 → 0
GM
*ネのHP0! 判決表!

2d6+1-3 判決表 (2D6+1-3) > 4[3,1]+1-3 > 2
GM
~2 ランダムな能力値で判定し、成功すれば〈昏倒〉する。失敗すれば〈死亡〉する。

Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 猟奇

2d6+0=>7 判定(+猟奇) (2D6+0>=7) > 5[1,4]+0 > 5 > 失敗
ペペル
ペペルにはその愛を感じ取ることができない。
だから、その目に映る終着は冷たい刃だけ。
ペペル
剣を振り上げる。
地面を蹴る。何の工夫もない、必要もない袈裟斬り。
ペペル
解決(solve)? 救い(salve)? いや違う。
ペペル
ただの殺し(slay)だ。
ペペル
刃が振り下ろされる。
ギロチンのように。

腹をかばう。

十月十日の、ながい旅だった。

何が宿っていたのだろう、この腹に。

何をこの、荒れた大地に、かえそうとしていたのだろう。

ひとりじゃ、きっと不安だね。

小さなぼうやのかわいい素足に、靴を履かせてやろうなんて人はあらわれない。

それどころか、剣をもたせて、王の城といとしい母のもとから、追い立てて、追い立てて。

風もふかないような場所で、その身を横たえることになるのだろうか。

ひとりじゃ、きっと、不安だね。

後ろに引き連れて、歩くばかりの仲間は、お前の手を握ってもくれないだろう。

愛してるよ。

お前を愛してるよ。

かわいくて、背が高くて、いつも水パイプをふかしている、

僕の小さな小さなぼうや。

「──あはッ!」

この荒野に、お前を産み落とさなくてよかった。

首が跳ねて、それで、

これにて。

終幕。
101号室のホテルマン
「101号室のお客様が敗北条件を満たされました」
103号室のホテルマン
「これにて、裁判は閉廷と致します」
GM
*裁判閉廷
GM
*亡者化判定
GM
103号室のお二人は判定なし。
GM
101号室、ネさんは死亡しているため判定なし。
GM
昏倒しているアルビーさんについては、亡者化判定があります。
GM
【猟奇】【才覚】【愛】の能力値からランダムに1つ選び、判定してください。
アルビー
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 愛
アルビー
2d6+0=>7 判定(+愛) (2D6+0>=7) > 10[5,5]+0 > 10 > 成功
GM
*成功。亡者化はしません。
ペペル
「…………」
ペペル
「…… はっ は はっ はーっ ……」
ペペル
剣を振り下ろしたままの体勢で、痙攣したように呼吸している。
ジャン
水パイプの煙の向こう、首を刎ねられた少女が倒れ。
ジャン
もはや起き上がることがないのを見つめている。その前に立つペペルのことも。
ジャン
愛は確かに、ふたりの問題を解決する。
世界に背を向けて、幸せになることだってできる。
ジャン
けれど裁判は、愛だけでは勝てない。
あのコックがそうであったように。
決めるのはいつも、愛と猟奇と才覚。
ジャン
「──……」
ジャン
息をついて、ペペルの傍へ向かって歩いて行った。
ジャン
「……ペペルさん」
ペペル
「…………」
ペペル
「……ジャン」
ペペル
振り向く。存在をさっきまで忘れていたかのように。
ジャン
「……ありがとうございます。俺たちの勝ちです」
ペペル
「…………」
ペペル
「……うん。勝ったね」
ペペル
血だらけのままいつものように微笑んだ。
ペペル
「やっぱり、ジャンとボクは無敵のコンビだ」
ジャン
「……はい」
ジャン
頷いて、微笑み返す。
ペペル
ふらつきながら立ち、観客にもよく見えるように腕を振り上げる。
勝利を誇示した。
ジャン
その横に立って、慣れない様子で手を上げる。
103号室のホテルマン
「────さて」
103号室のホテルマン
「春雷のペペル様、ジャン様」
103号室のホテルマン
「おめでとうございます。此度の裁判、あなた方が勝者となりました!」
103号室のホテルマン
「この後に次の試合が行われるフロアへと移動して頂き、そこで今しばらくお寛ぎ頂くことになりますが……恐れながら、その前に一つ」
103号室のホテルマン
「”勝者の責務”を果たして頂く必要が御座います」
101号室のホテルマン
「”生かす”か”殺す”か。お選び下さい」
GM
このゲームのルールは"オールイン"。敗北した者は、全てを失う。
GM
そして敗者の手元から離れた運命は、勝者の総取り。
ペペル
「そうだったね。……決めなくちゃ」
ジャン
「はい……」
ジャン
「……どうしますか」
ペペル
と言っても、答えはゲームが始まる前からとっくに決めていて、
それが揺らぐことはなかった。
ペペル
「 “生かす” よ」
ジャン
頷く。そして、ほっとする。
ジャン
死なせてやった方が、この二人にはいいのではないかと。
ジャン
わずかでも思う気持ちはジャンにもあった。
ジャン
でもペペルは、それをしない。
ジャン
「賛成です」
ペペル
「……ありがとう」
ジャン
「いいえ、……ここに来るのがペペルさんとでよかった」
101号室のホテルマン
「承りました」
GM
機械音と共に、巨大なエレベーターが中心点が二つに割れる。
GM
103号室は上へ、101号室は下へ。運命がゆっくりと分かたれていく。
101号室のホテルマン
ホテルマンが胸から取り出したベルを2度、鳴らす。
101号室のホテルマン
転がっていた筈の骸が、動画を逆再生するように元の姿を取り戻す。
101号室のホテルマン
このホテルの中で保留されていた死が、取り消される。
101号室のホテルマン
だが下された判決は、それで終わりではない。
GM
敗北し、そして殺される事もなかった救世主に待ち受ける運命。
GM
それはエントランスに飾られていた救世主と同じ末路。
アルビー
男が横たえていた身体を起こす。

「おはよう」

「よく眠れたかい」

エレベーターが底へ降りていく駆動音。
アルビー
「……」
アルビー
少女を見る。

裁判の前となんら変わりのない体。手足。表情。

床に直に座っている。

「アルビー、僕たちの勝ちだよ」

「お前は救世主になるんだ」
アルビー
男の身体は死体から修復され、そこにいる。

「僕は兄様のところへ帰る」

膝を叩く。

「……おいで」

僕の愛しい子。
アルビー
呼ばれるまま手を伸ばす。

ハッシャバイベイビー アリスの膝で。

床に落ちる包帯が、ぱき、と音を立てる。

やわらかく、暖かく、熱を持つ体。

そしてこれから、猶予もなく、冷たく、動かなくなる。

その運命に堕ちた救世主。
アルビー
男の指が慈しむように少女の髪を撫でる。
アルビー
お前は、誰だ?
アルビー
男の唇が口遊むようにそう動いた。

「その答えは──」

「お前が知っているでしょう?」
アルビー
男は微笑んだ。
アルビー
そうして、少女の細い体を抱きしめる。

ぱきぱき。

灰色の欠片が落ちる。

寝しなに聞かせるおとぎ話が、あまりうまくなくてごめんね。
アルビー
雨音のようなその音を聞いている。

だってゆりかごを揺らしたこともないもの。

だから折れるのは枝だけで、

過ぎ去っていくのは風だけだね。
アルビー
いいよ。
アルビー
それでいいよ。
アルビー
この世にごまんとある下手な詩をうたおう。

頬に指をそえる。

添えたさきから、つめたく、固く。

お前に何も遺してあげられない。靴も。ゆりかごも。ささいな子ども騙しの嘘も。

ただ。

お前の隣を歩く永遠になろう。

お前の心の中の、永遠のアリスに。

産み落とされない、はらのなかのアリス。

荒野を知らぬ、無垢なアリス。
アルビー
このおとぎ話に何も意味はない。
アルビー
生も死も詩のように過ぎ去ってゆくだけ。
アルビー
「愛しているよ、アリス」
アルビー
貰うべきものも。与えられるものも。
アルビー
すべてもう、ここにある。

停止していく。なにもかもが。上体が動かなくなり、首につめたさが昇る。視界が灰色になって、静止した世界がはじまろうとしている。

お前はもうわかっているでしょう。

答えはなくてもいいね。

まだ柔らかい唇が、アルビーの唇をかろうじて食んだ。

“僕もお前を愛しているよ”
アルビー
その唇の境目だけ、少し石になって肉が剥がれる。
アルビー
剥がれた唇から滴った血が、エレベーターの白い床を一滴、赤く塗った。

かくして、二人は悪魔に打ち勝ち。

魂は、永遠に結ばれたのでした。
101号室のホテルマン
「それでは、このまま地下へとご案内します」
101号室のホテルマン
「これから挑むべきゲームが、あなたには御座いますので」
GM
敗者は下へ、あるはずの観客席をすり抜けてさらに深く、怨みと堕落の最中まで。
GM
エレベーターが到着した先は、周囲を取り囲むいくつものドアがあるフロア。
GM
そのドア以外は一切のものが存在しない。飾り気もなく豪華でもない。
GM
暗く、無骨で、牢屋のような。
101号室のホテルマン
「こちら一つ一つが大回廊に連なる扉……そちらを経由して、堕落の国のあらゆる場所に通じております」
101号室のホテルマン
「それぞれ扉の行き先は、扉の上の掲示の通り」
101号室のホテルマン
「ですが、自由に選ぶことはできません。こちらを」
GM
差し出されるのは深紅のトランプ。ジャックとエースを決めたそれの、一揃いの山札。
101号室のホテルマン
「古く良き、ヴァンテアン・ゲームの形の通り。引いた数字の合計と同じ扉があなたの運命となります」
101号室のホテルマン
「引く枚数は、まずは2枚。それからはお望みのまま……」
アルビー
真紅のカードを見る。
アルビー
2枚引く。
101号室のホテルマン
「ダイヤの9、クラブの2……」
101号室のホテルマン
「11ですと、あちらです」
101号室のホテルマン
ひとつの扉を指し示す。
101号室のホテルマン
行き先は、公爵邸。
101号室のホテルマン
「ヒット、スタンド」
101号室のホテルマン
「いかがなさいますか?」
アルビー
ふ、と笑う。
アルビー
しばらくそうして、あの平手打ちの時のように笑って。
アルビー
笑って、笑って、「ヒット」と告げた。
101号室のホテルマン
「クラブの5……クラブのK」
101号室のホテルマン
「バーストですね」
アルビー
「後生だ」
アルビー
「最後まで引いていいか?」
101号室のホテルマン
「どうぞ」
アルビー
赤いカードを白い床に一枚引いては落とし、一枚引いては落とし。
アルビー
一枚、引いては落とす。
GM
磨かれた床に落ちるそれはまるで血のようで、
GM
花弁のようだ。
アルビー
最後に残った♥のキングを指でつまんで。
アルビー
「満足した」
101号室のホテルマン
「何よりです」
GM
そうして、一つの扉が開く。
GM
その先は壁。
アルビー
壁に指で触れる。
アリス
アリスは、その壁の先をみつめる。
アリス
ほほえみを、たたえて。
アルビー
振り返る。
アリス
愛しいお前。そばにいて。
アリス
どこにも行かず、そばに。
アリス
まどろみの夢の先の、静止した湖面の中で。
アルビー
「ここにいるよ」
GM
――アルビーの身体に異変が起こりはじめる。
アルビー
始めは指先、つま先。
アルビー
かかとを三回ならしてもお家には“帰らない”
アルビー
公爵夫人の末裔でもイモムシの末裔でもないものに。
アルビー
この耳なら、あなたの子守歌もよく聞こえるだろう。
アルビー
ちょっと切れて(cut)いるだって?
アルビー
その方がかわいい(cute)ってものなんだろう。
 
「では」
 
「よろしくお願いします」
GM
GM
敗者の末路を写していたモニターが、電源を落とされ暗転する。
GM
103号室のふたりが乗っているエレベーターの画面も、同時に切れる。
GM
エレベーターは上へ、上へと。
ペペル
見えるはずもない奈落を見下ろしていた。
ペペル
それも暫く経って、注がれる視線の気配も失せれば、
その場にへたり込む。
ペペル
糸の切れた人形のように。
ペペル
剣が転がって、乾いた音を立てる。
ジャン
「ペペルさん!」
ジャン
声を上げて、慌てて駆け寄る。助け起こそうとする。
ジャン
「大丈夫ですか……」
ペペル
「大丈夫だよ」
ペペル
返事には疲労が滲んでいるが、意識はしっかりしている。
ペペル
「ジャンこそ平気かい?」
ジャン
「お、俺ですか。俺はぜんぜん……」
ジャン
「……ありがとうございます」
ジャン
「勝ちましょう。この先も」
ペペル
「ああ、そうだね」
ペペル
「救世主に、ならないとね」
ジャン
「……はい。俺は、救世主になります」
ジャン
「そして、この国を救うんだ」
ジャン
そのために、ここに来た。自分の意志で。
ペペル
堕落の国が、本当に救われたなら。
ペペル
きっとあの二人だって、救われるはずだ。
ペペル
だから、間違った選択じゃない。
ペペル
ボクはまだ、間違えてない。
ジャン
ペペルがそう念じるからこそ、戦える。
ジャン
救世主になろうと思える。応えようと思える。
ジャン
相対するものの疵を抉り、裁判で打ち倒して殺し、
ジャン
次にもしかしたら、亡者を生むことになるとしてもだ。
ペペル
運命の奴隷(slave)か、真の勇者(blave)か。
ペペル
それを区別できるものは、この国にはいない。
GM
エレベーターが次なる戦いの場へと昇っていく。
GM
その最中に再び、証が力を発揮し始める。
GM
再び証を引き直すまで、エースはエースらしく、ジャックはジャックらしく。
103号室のホテルマン
「お疲れさまでした」
103号室のホテルマン
「次の戦いに備え、どうか休息をおとりください」
GM
エレベーターが到着し、ホテルマンが一礼をする。
GM
GM
GM
GM
以上を持ちまして、Dead or AliCe「16JAcks」1回戦Aホールを終了します。
GM
ありがとうございました。