幕間 アリシア&匕首咲
匕首咲
見ているのは、料理本のコーナー。
端から手に取り、ぱらぱらとめくってはまた元に戻す。
匕首咲
いかにも「不思議の国のアリス」らしい、見るからに狂ったタイトルは素通りして。
見覚えのありそうな料理が並ぶ本を見ている。
匕首咲
最後の料理本を戻して、ううん、と唸った。
「やっぱり無いか……」
匕首咲
事の発端は、大したことではない。
映鏡がメイドに郷土料理を頼んだのだが、出てきたのは、同名の違う料理だった。
いかに奇跡の力であっても、あまりにマイナーな情報には寄り添えないのだろう。
匕首咲
なので、レシピでもあれば、と思ったのだが。
よく考えてみれば、レシピがあれば、メイドも作れるはずだ。
匕首咲
こうなってしまっては、映鏡が言っていたヒントだけでなんとかするしかない。
できるのか?
いや、そもそも作るのか?手料理を?
猫
そうしていると、
半開きになった戸の隙間から、するりと一匹の獣が忍び込んでくる。
猫
猫は、あなたの足元まで近づいてきて、
この人はどうしているのかなあと見上げてくる。
匕首咲
「おー、よしよし」
撫でられるかな~と思って手を出してみる。
猫
「ニャ……」
猫はおとなしく撫でられる。人馴れしているようだ。
しかし。
猫
やわらかい毛並みの下、感じる体温がいやに冷たい。
匕首咲
「いい子だね~、かわいいね~……」
撫でている途中で、体温に気が付く。
「ん……、おまえ冷たいな。
こっちの猫って、冷たいのか……?」
そういえば、堕落の国でまともな猫を触ったのは初めてかもしれない。
猫
そもそも、ここは救世主と使用人しかいないはずの屋敷だ。
こんな猫は、居ること自体がおかしいのだ……
猫
「冷たいのは、鏡だからでございますよ~」
問いかけに応じて、猫がしゃべった。
匕首咲
「いや……、ここの動物は結構喋るか……?」
匕首咲
そういえば、と思い出す。
鏡を名乗る救世主がいたはずだ。
アリシア
「本日が試合でなくてよかったですねぇ~、咲さま」
アリシア
瞬きする間に、猫の像がかき消え、チェシャ猫のように笑う
娘の姿へと変わった。
アリシア
「こうしてお会いするのは初めてですねえ。
はい。鏡のアリシアと申します」
匕首咲
「ええ……?お前猫にもなれんの?
強すぎるだろ……」
アリシア
1d6 先制
DiceBot : (1D6) > 5
匕首咲
1D6
DiceBot : (1D6) > 1
アリシア
「まあ、鏡も女王様の下僕ですから。
これぐらいはできないと務まりませんよ」
匕首咲
「ふーん……」
そんなもんかな、と一応は納得する。
アリシア
2d+2 デヤァ~
DiceBot : (2D6+2) > 10[5,5]+2 > 12
匕首咲
2D6+2 でやぁ~
DiceBot : (2D6+2) > 6[1,5]+2 > 8
[ 匕首咲 ] 情緒 : 0 → 1
匕首咲
「あの女王様、すごかったよな。
靴が燃えて、スカートが舞ってさ。
ああいうのちょっと憧れちゃうな」
匕首咲
「あんたも、鏡写しになってスゲーかっこよかった」
アリシア
「おお~!
我々への賞賛のお言葉、とてもありがたく思います。
女王様へも伝えておきましょう」
アリシア
「あなた方の戦い方も
なかなか凄惨にして鮮やかでございましたよ!」
アリシア
アピールの前に使わないと効果はないですよ!
匕首咲
捨札漁るのめんどくさいし、もう全部捨てる感じでいいかな
アリシア
手札が減ってないのでなんか使ってないのと勘違いしてました すいません
アリシア
「しかし試合ではないとは言え、
鏡にここまで接近を許してしまうのは、いささかいただけませんね~」
匕首咲
「何もしないんじゃん」
ぺたぺた。鏡を触ったような温度だ。
アリシア
「遠慮のない方ですねえ~」表情は崩れない。
アリシア
2d+2
DiceBot : (2D6+2) > 6[3,3]+2 > 8
アリシア
1d6 HAPPENING
DiceBot : (1D6) > 1
アリシア
> 1 情緒が入り乱れる!全員1D6を振り、その値を情緒とする。上限を超えた場合は〔上限-1〕とする。
アリシア
1d6 まあ振りますか……
DiceBot : (1D6) > 4
匕首咲
1D6
DiceBot : (1D6) > 4
[ アリシア ] 情緒 : 0 → 4
[ 匕首咲 ] 情緒 : 1 → 4
匕首咲
2D6+2+1
DiceBot : (2D6+2+1) > 3[1,2]+2+1 > 6
匕首咲
えーっと、とりあえずおしゃべりしていいですか?
匕首咲
「あの女王様、美しさをすごい気にしてたよな~」
指紋付かないかな、と思いながらぺたぺた。
「女王様、十分美しいと思うけどなぁ」
アリシア
「“充分”で満足できないのが、
人という生き物でございましょう~?」
アリシア
「あなたこそ、“充分”で満足していれば
こんな場所にはわざわざ来ないでしょうに」
匕首咲
「確かにそうだな。
十分って人から言われても、自分じゃ全然足りないし」
匕首咲
「そう考えると、女王様の気持ちも分かるな。
世界一じゃないと、どうしようもないんだろうな……」
アリシア
「あなたの強さへのこだわりも、
女王様の美しさへのこだわりも、
どちらも鏡には理解できぬものですけどね~」
匕首咲
「理解か……」
美しさというのは、主観的なものだ。
誰かが美しいと言ったものでも、別の誰かからは醜いと言われることがある。そして、その逆も。
強さも、似ているかもしれない。
腕力や武力、知力に財力。強さの種類は様々だ。誰かが強いと言ったものでも、別の誰かは弱いと言うかもしれない。
匕首咲
「たしかに、あんまり合理的じゃあないかもな……」
アリシア
「合理的という言葉、あなたには全く似合いませんしね~」
アリシア
「うるさくするのが役目ですので」馬耳東風
匕首咲
「あー、まー、確かにうるさくするの得意そうだな~」
Aホールの試合を思い出しながら。
アリシア
「まあ、救世主というのはだいたい何かしら合理性には
沿えない生き物なんですけどね」
アリシア
「不条理に勝って、不条理に負ける。
そんな展開が、第1試合でもありましたし」
匕首咲
「結局は心の疵の戦いだもんな。
そう考えると、めちゃくちゃな方が強いかもな?」
アリシア
「優勝するのは、案外あなたのような
ボケっとした人なのかもしれませんねえ」
匕首咲
「ボケっとした人ってなんだよ!」
近くの壁を蹴る。
アリシア
「すみません。適切な語彙に言い換えます。
よっ! 大物救世主!」
匕首咲
「ちょっと引っかかる気するけど、まぁいいや。
大物救世主ってとこで納得しといてやる」
アリシア
「図書室であまりうるさくすると、怒られてしまいますよ~」
と言っても、他に利用者は見当たらないが。
アリシア
「というか、あなたには全然似合わない場所ですね~
図書室って」
匕首咲
「分かってるんだよそんな事は……。
でもほら、調べ物するなら、ここぐらいしかないだろ?」
アリシア
「ほうほう……それは確かにそうですねえ」
アリシア
「でも、調べ物がしたいなら、それに適した存在が
あなたの目の前にいるんですよ?」
匕首咲
「え? ああ……」
真実を告げる女王の鏡。
白雪姫の女王の鏡。
そんなSiriみたいな使い方できるの?
アリシア
「鏡は人間の役に立つことが使命でございます~
さあなんなりとお聞きください!
真実の答えを授けてみせましょう」胸を張る。
匕首咲
「えっと……、じゃあ、一応聞いてみるけど……。
ぼっかけ、って料理のレシピとかって分かる?
なんか2種類あって、牛すじとかこんにゃくとか入ってない方みたいなんだけど……」
アリシア
「なるほど~
おやすい御用でございます!
山を千越えた先のレシピまで教えて差し上げましょう!!」
アリシア
鏡の像が乱れ……
次の瞬間には、ぼっかけの料理工程が動画で映し出される!
アリシア
「まずは人参を細かく切り……」音声ガイドつき。
アリシア
「……そうして一煮立ちさせたものをご飯に……」
匕首咲
「わかりやすいな~!やっぱ動画だよなぁ!」
匕首咲
「スゲーわかった!ありがとーSiri!!」
アリシア
「シリではありません。アリシアでございます」
匕首咲
「そうだったそうだった。ありがとアリシア!」
アリシア
「ところで代わりにというわけではないのですが、
鏡にも教えてほしいことがひとつ……」
アリシア
「この料理はご自分でお召し上がりに?
それとも、どなたかに振る舞うのでしょうか?」
匕首咲
「………………………その理由も大体以外だ」
アリシア
「自分で食べる以外なら、振る舞う候補は一人しかございませんね」
アリシア
「この鏡のアリシアでも、異性と親密になっていることを
隠したがる習性が一部の人間にはあることを、知っていますよ」
アリシア
「その一部の人間というのは、猫に優しくしちゃうタイプの
ヤンキーと呼ばれる女性で……」
匕首咲
「………………………」
親密になっていないから、親密になるために料理を作ろうとしていた。とは言えない。
いやそもそも親密になろうとしてねーし。
匕首咲
「誰が猫に優しくしちゃうタイプのヤンキーだ!!」
アリシア
「いやあ、敵情視察に来ただけのつもりが
なかなかおもしろい会話ができましたね~!」
アリシア
「お互い用も済んだようですし、
しからば、これにて~!」
匕首咲
「うるせ~~~~!!!そんなんじゃね~~~~!!!」
匕首咲
暴れているが、まんまと逃げられてしまった。
[ 匕首咲 ] 情緒 : 4 → 5
匕首咲
「くそ……。あの鏡野郎、次会ったらただじゃおかねぇぞ……」
匕首咲
ぜいぜいと肩で息をする。
しかしぼっかけのレシピ動画を見れたのは幸いだった。これなら作ってみることもできる、かもしれない。
桟敷川映鏡
そろそろ聞きなれてきただろう足音が入り口の方へ近づいてくる。
桟敷川映鏡
室内を見回して赤いコートの端がはみ出ているのを見つけた。
「あぁ、いらっしゃいましたか」
桟敷川映鏡
1時間経って戻ってこなかったら探しにいくことにしているらしい。
桟敷川映鏡
「まだ前の本が読み終わっていませんが、何か探し物でも?」
匕首咲
「いや、ちょっと………」
調べ物、とも言えずに。
「3号室のアリシアと話してた」
桟敷川映鏡
先日、5号室のティモフェイと共に敵対するなら厄介な相手と評したばかりの人物だ。
匕首咲
「最後は腹立ったけど、割といいやつだったよ」
懐柔されている。
桟敷川映鏡
「なんでもなにも……まぁ、他に用事がなければ部屋に戻りましょう」
[ 匕首咲 ] 情緒 : 5 → 6