Dead or AliCe
『16人の救世主』

幕間 桟敷川映鏡&シャルル

シャルル
屋敷内の廊下は、一度だけ見たことがある。
シャルル
最初の記憶、目が覚めてから部屋に案内されるまで。
シャルル
とはいえ、ぼんやりと景色を覚えているだけでどこに何があるかなんてわかりやしない。
桟敷川映鏡
今しがた5号室を出た男の前に長身の男が過る。
シャルル
「おわ。」
桟敷川映鏡
一瞥。
シャルル
「あ……」
桟敷川映鏡
「おや、5号室の……ミスター・ベルジール」
シャルル
「ああ、えっと……そう。シャルル……ベルジール、だったな。」
シャルル
「アンタは、あー……」
桟敷川映鏡
コイン0枚の救世主、おまけに記憶はない。
コイン20枚の救世主がどれほど危険かすら知らないだろう。
シャルル
「メイドじゃ、ないよな。」
シャルル
どうみても。
桟敷川映鏡
戯れに首をひねるだけで殺せるな。
とはいえ、この部屋に置かれている以上。
この“儀式”の所有物だろうと推測できる。
桟敷川映鏡
「私は1号室の桟敷川映鏡です」
桟敷川映鏡
帽子を取って恭しく一礼。
シャルル
「ああ、じゃあ。勝った人。」
シャルル
勝った人。殺した人。俺たちを殺せる人。
シャルル
「どうも。ああ……悪い、なんか……敬った方がよかった?」
シャルル
恐怖心は見えない。
桟敷川映鏡
「いいえ、どうぞご自由に」
シャルル
「助かるよ。あんまり……気を遣うってことが難しくて。」
桟敷川映鏡
心が広いのか、余裕でもあるのか。
その言動に腹を立てるほどの興味もないのか。
特に何かを否定するわけでもない。
シャルル
「あ。」
桟敷川映鏡
「何故部屋から外へ?貴方は6号室の救世主の持ち物でしょう」
シャルル
「ああ、ちょっと探し物……じゃねーや。人を探してて。同室の……アレクシアっていう、このくらいの女性なんだけど。」
シャルル
持ち物、という言葉は気にかかったが。
シャルル
「いや、ん?」
シャルル
「持ち物?」
シャルル
6号室の?
シャルル
「俺達ってそういう扱いなの?」
桟敷川映鏡
「概ねそういった認識でおります」
シャルル
「ふぅん。」
桟敷川映鏡
「とはいえ、自分で動ける以上は自由にされてるということなんでしょう」
シャルル
「まあ、そうかもな。メイドも何も言ってなかったし。」
桟敷川映鏡
「同室の方を探しておられるとか。しかし、残念ながら私は見ておりませんね」
シャルル
「あー、そっか。どこ行ったんだアイツ……」
シャルル
「桟敷川さん、ありがとう。んで、さ。」
シャルル
「ちょっと、時間ある?」
シャルル
「聞きたい事あって。いや、無理にとは言わないけど。」
桟敷川映鏡
「それなりには」
シャルル
「アンタ、なんか……いい人だな。」
シャルル
見かけによらず。
シャルル
廊下には今他に誰もいない。
シャルル
シャルルは武器も携帯していなかった。
桟敷川映鏡
見かけどおり、どこからどう見てもいい人だ。
桟敷川映鏡
「それで何か?」
シャルル
「ああ、そう。」
シャルル
「ぶっちゃけアンタ、今俺の事殺せるの?」
桟敷川映鏡
「ええ、試してみましょうか?」
シャルル
「いや、それは困る。」
桟敷川映鏡
「はは、でしょうね」
シャルル
「廊下汚れるしな。」
シャルル
「しかし、そっか……うーん。」
桟敷川映鏡
取り出したハンカチを指でなぞる。
それはナイフのように鋭利に光って、見る間もなくシャルルのまつげを一本切り取った。
シャルル
瞬く。
桟敷川映鏡
白手袋の上に男にしては長いまつげが乗せられている。
桟敷川映鏡
「ざっとこんなもんですね」
シャルル
「へぇ、見えなかった。」
シャルル
「腕がたつね。優勝候補かい?」
桟敷川映鏡
「なに、勝者は全員同じくらいの技量はありますでしょう」
シャルル
「そりゃ、ちょっと心配だな。」
シャルル
「俺のペアのアレクシア、一人で出てっちゃってさ。」
桟敷川映鏡
「おや」
桟敷川映鏡
「奇遇ですね、私も同室の女性を探しているところなんです」
シャルル
「そうなのか?俺は……今出てきたばっかだから誰も見てないけど。」
シャルル
「あー……よければ、ご一緒しても?」
桟敷川映鏡
「構いませんよ」
シャルル
この館を一人で歩き回るより、まあ、たぶん敵意のなさそうな男がいた方が安全な気がする。
シャルル
殺意はありそうだけど。
桟敷川映鏡
実質、男は基本的には他者を殺すことに躊躇いはないどころか好意的な方だ。
桟敷川映鏡
しかし、儀式の遂行を邪魔しない程度には分別があるらしく。
シャルル・ベルジールのことをどうこうしようとも思ってはいない。
シャルル
「そういえば、聞きたい事。……俺たちの試合って、見てた?」
桟敷川映鏡
歩き始める。
歩きながら答えた。
桟敷川映鏡
「ええ、見ておりましたよ」
シャルル
少し後ろを歩く。
意識はしていなかったが、癖になっているようだった。
シャルル
「どうだった?」
桟敷川映鏡
「どう、と申されますと?」
シャルル
「楽しかった?」
桟敷川映鏡
「あぁ、そういう……。ええ、楽しかったですよ」
シャルル
「そりゃよかった。俺は覚えてないがね。」
シャルル
先ほどのパフォーマンスも、言動も。
そうだな。そういう感じだな、と思う。
桟敷川映鏡
「アレクシアさんの得物と私の得物は同じ杖ですので、そういったところも興味深かったですね」
シャルル
なんか。少し……落ち着くような気がする。
シャルル
「杖。ふうん、いい趣味してるな。」
シャルル
「試合、楽しみにしてるよ。ちゃんと見るからさ。生きてたら。」
シャルル
シャルルの足音は殆どない。
それは普段使いのものでも変わらない。
そういうふうにできている。
桟敷川映鏡
「はは、こちらとしても光栄ですね。儀式を発動していただいた方々に見て頂けますのは……」
シャルル
「ま、俺その話覚えてないんだけどね。」
シャルル
「聞いていいかわかんないけど、桟敷川さんが探してる同室の女性ってどんな人?」
桟敷川映鏡
「そうですね……赤いコートで、黒いマスクを身に着けておられます。髪の色はおそらく金……」
桟敷川映鏡
「身長はこのくらいです」
桟敷川映鏡
手で指し示す。自身の肩よりも低い位置。
男の身長は190を越えているため、示されたのは160ほどになる。
シャルル
金の髪で、赤いコート。
シャルル
「美人?」
桟敷川映鏡
「ええ、客観的に見て」
シャルル
「強い?」
桟敷川映鏡
「私と同程度に」
シャルル
「そりゃおっかないねぇ。」
シャルル
「でも、そうだよな……勝ってるってことは、今、此処にいる俺たち以外の全員はそうなんだろう。」
シャルル
「アレクシア、無事だといいんだけど。」
桟敷川映鏡
「5号室には鍵がかからないのでしたっけ」
シャルル
「たぶん、試合中?だっけ。はかかるんだろうけど。」
シャルル
「ちょっと、出てっちゃってさ。たぶん俺のせい。」
シャルル
「たぶんじゃねーな。」
桟敷川映鏡
「そのあたり6号室は物理的に解決されておりますよね」
シャルル
「そうなの?」
桟敷川映鏡
「あぁ、会われてないのですね。首輪ですよ。首輪」
桟敷川映鏡
自身の首を指し示す。
シャルル
「首輪ぁ?」
シャルル
「プレイかよ。」
桟敷川映鏡
「どうだか……とはいえ、外に出ていく可能性は低くなりますね」
桟敷川映鏡
「そういった意味で物理的な解決と申しました」
シャルル
「…………。」
シャルル
「んー…………。」
シャルル
「いや、流石に……。」
シャルル
ちょっと想像してしまうけれど。
桟敷川映鏡
「しかし、出ていくとは。危険なことをなさいますね。私のような救世主が館を自由にうろついているというのに」
シャルル
「そう。それが心配でさ。」
シャルル
「アイツ、女だし。」
シャルル
「弱そうだし。」
シャルル
「死にたくないだろうしさ。」
シャルル
「ま、アンタが殺してなさそうでちょっと安心したけど。」
桟敷川映鏡
「私にも選ぶ権利がありますからねぇ」
シャルル
「…………権利?」
シャルル
余計な事を、言わない方がいいと、わかっているのだけれど。
シャルル
「……選ぶ価値もないって?」
桟敷川映鏡
「おや。気を悪くなされたなら申し訳ありません」
桟敷川映鏡
「単純に趣味ではないというだけですよ」
シャルル
「はぁ、そうかい。」
シャルル
「俺は結構美人だと思うがね。」
桟敷川映鏡
「お美しい方だとは思いますが」
桟敷川映鏡
「見目だけではどうとも言えません」
シャルル
「あー、そういう。」
シャルル
「中身で選ぶタイプ。」
シャルル
殺す相手を。
シャルル
「それなら、まあ、そうかもな……いや、前の『アレクシア』はどうだか知らないけど。」
桟敷川映鏡
「……記憶を失う、ということがどういうことなのかわかりますね。貴方がたを見ていると」
シャルル
「そう?」
シャルル
「実際大変だったんだぜ。手も足もないし、壊れてるし。付け替えするのに死ぬほど痛かったし。」
シャルル
「俺は全然わかんないね。記憶のある状態ってやつがさ。ただ今更新中だ。」
桟敷川映鏡
「コイン0枚の身に痛みは耐え難いでしょう」
桟敷川映鏡
記憶を失うことについては、思うところがないわけではない。
とはいえ、話すようなことでもなく相槌を打つにとどめる。
シャルル
「コイン?ああ……持ってると、痛みもなくなるのか。」
シャルル
「便利だなー、それ。」
桟敷川映鏡
「なくなるかどうかは人それぞれかと思いますが、少なくとも私はそういった形で現れます」
シャルル
「…………なるほど。だから。」
シャルル
「いや、アレクシアの胸に傷があってさ。痛そうだったから。」
シャルル
「記憶を失う前は、コインで何とかしてたのかなって。」
桟敷川映鏡
「有り得ますね」
桟敷川映鏡
図書室の前あたりに来た。
一応中を覗く。
シャルル
「コイン……まあ、此処にいる間は手に入らないだろうな。」
シャルル
つまり、死ぬまでかもしれない。
シャルル
「いた?」
桟敷川映鏡
「いらっしゃいませんね」
シャルル
「どっちもか。」
シャルル
軽く部屋を覗く。
シャルル
本がたくさんある。
桟敷川映鏡
「対戦相手のことを調べているのかとでも思いましたが……違ったようですね」
桟敷川映鏡
「貴方のパートナーもおられないようです」
シャルル
「あ、そうか。2回戦。」
シャルル
「対戦相手決まってんの?」
桟敷川映鏡
「いえ、まだです。とはいえ……どうやらこの世界では出身に御伽噺を持つ者が力を持ちやすいようで」
シャルル
「御伽話。」
シャルル
「なるほどね。対戦相手の調査に何でって思ったけど……」
桟敷川映鏡
「童話を読めば何かしら、行きあたるかもしれませんからね」
シャルル
「詳しいの?」
桟敷川映鏡
「いいえ、私はまったく」
桟敷川映鏡
居なければ用はない。
シャルル
「何か、アンタめちゃめちゃ詳しそうに見えるよ。なんとなく。」
シャルル
格好のせいかもしれない。
桟敷川映鏡
「光栄です」
桟敷川映鏡
「……しかし。他に思い当たるのは温室……礼拝堂……あのあたりは人通りが少なく静かですし」
シャルル
「そもそも、同室の人さ。」
シャルル
「何しに出るとか言ってなかったの?」
桟敷川映鏡
「ええ。いつも私が入浴している最中に出かけておられるので」
シャルル
「恋人とかじゃないんだ。」
シャルル
入浴中にでかけるということは、そういう事だろう。
桟敷川映鏡
「その言葉そのままお返ししますが……とはいえ、貴方がたは仕方ありませんね」
シャルル
「俺たちは、恋人とは聞いてないけど。そんな感じだった?」
桟敷川映鏡
「……」
桟敷川映鏡
少し黙る。
シャルル
「……言いにくい感じ?」
桟敷川映鏡
「いえ」
桟敷川映鏡
「私の返答次第でどうなるものか思考していただけです」
シャルル
「ははっ。」
シャルル
「どうもならねーよ。」
シャルル
「まあ、気になって荷物とかひっくり返したけどさ……」
桟敷川映鏡
「で、あれば」
桟敷川映鏡
「貴方がたは恋人であったろうと思いますよ」
シャルル
「銃と刃物と手足しか出てこなかったし。」
シャルル
「え?」
シャルル
「マジ?」
桟敷川映鏡
「……信じるも信じないもご自由に」
シャルル
「ま、意見として受け取っとくよ。」
桟敷川映鏡
「私は基本的に嘘つきですからね」
シャルル
「そういうこと言う?」
桟敷川映鏡
「はは」
シャルル
「あはは」
シャルル
「次行きますか。」
シャルル
「ここ、詳しいの?」
桟敷川映鏡
温室へ足を向ける。
桟敷川映鏡
「いえ、他の参加者の方々と同等だと思いますよ……まぁ貴方よりは知っている程度でしょうね」
シャルル
「ああ、戦闘中使うんだっけ。いや、戦闘じゃなくて……お茶会?」
桟敷川映鏡
「ええ、そうです。お茶会の時に出歩きますので」
桟敷川映鏡
「とはいえすべてを使うわけではありませんしね。貴方がたが6号室の救世主を招いた正餐室などは、貴方がたの茶会でしか見たことがありません」
シャルル
「へぇ。『お茶会』なのに?」
シャルル
「あんまり想像がつかなくてさ。見てないからかもしれないけど。」
シャルル
「アンタは何したの?」
桟敷川映鏡
「中庭でお茶会に誘われた時を除いては基本的に自室におりました」
桟敷川映鏡
「あとは……礼拝堂ですね。あちらもお借りしましたよ」
シャルル
「ふぅん……。」
シャルル
「ま、次でわかるか。ありがと。」
桟敷川映鏡
温室前。
ガラス張りのドアをくぐるように入る。
桟敷川映鏡
「昨日のは片付けられてますね……砂に足跡もありませんし、今日ここには誰も来ていない」
シャルル
「これ、温室なんだ。」
桟敷川映鏡
隙間から入り込んだ砂を踏みしめて中を見渡す。
シャルル
後ろから入って見渡す
シャルル
「あったかい?」
桟敷川映鏡
「この国に観賞用の植物はほぼ存在しないらしいので、形だけのものでしょうね」
シャルル
「あ、やっぱり温室?って思ったの俺だけじゃなかった。良かった。」
シャルル
「花もないんだな。」
桟敷川映鏡
「ええ、残念ながら」
シャルル
「硝子はあるんだな。」
シャルル
「そういえば……なんか。別の世界から、来たんだってな、俺達。」
桟敷川映鏡
「大体の救世主はそうですね」
シャルル
「桟敷川さんたちも?」
桟敷川映鏡
「そうなりますね」
シャルル
「ここより、いいとこだった?」
桟敷川映鏡
「さぁ……相対評価をするには私はこの国のことをそこまで詳しく知っているわけではありませんからね」
シャルル
「え?そうなんだ。」
シャルル
「参加者って、それなりにこっちにいるもんだと思ってたけど……。そうじゃないんだな。」
桟敷川映鏡
「年数自体はそれなりにいますが。知っているのはほぼ情報のみです」
桟敷川映鏡
「良し悪しは実感を伴いますでしょう。特にこの世界の良し悪しを実感したことがあまりないもので」
シャルル
「…………。」
シャルル
「なるほど。」
シャルル
「…………あのさ。」
シャルル
「アンタが優勝したら、俺たちは死ぬよな。」
桟敷川映鏡
「わかりかねます」
桟敷川映鏡
「奇跡がどのようになされるのか、それは儀式側の都合ですので」
シャルル
「そうなのか?」
桟敷川映鏡
「少なくとも私は6号室のおふたりのように救世を掲げてはおりませんからね」
シャルル
6号室。俺たちを所有している。勝者。
桟敷川映鏡
「生存を望むのであれば、6号室を応援なさればよろしいかと思いますよ」
シャルル
「いや、別に殺すのは構わないんだけどさ。」
シャルル
「あー……これも特に期待は、しないから聞き流してくれていいんだけどさ。」
シャルル
「殺すときは、アレクシアはさ。楽に殺してやって。」
シャルル
「ほら、アイツ何か。強がりだし、強情っていうか……部屋勝手に出てくしさ。」
シャルル
「でも、痛いの苦手そうだったから。」
シャルル
「アンタの趣味が『いたぶって殺す』じゃないことを願うよ。」
シャルル
「ま、2人そろって生かしてくれるならそれに越したことはねーけど。」
桟敷川映鏡
「随分迂闊なことを言いなさる」
シャルル
「ああ。そうだね。」
シャルル
「俺の趣味なのかも。」
桟敷川映鏡
「残念ながら、私は基本的にパートナーの趣味に付き合うつもりでおりますので」
桟敷川映鏡
「機会があれば咲さんにお話ししておくとよろしいかと」
シャルル
咲。名前らしい。
桟敷川映鏡
特にそうするつもりはないが、そうしないとも限らないという宣言だ。
シャルル
「いや、いいよ。」
シャルル
「アンタになら話しといてもいいかなって思っただけだし。」
シャルル
「なんか、落ち着くんだよね。」
桟敷川映鏡
「恐縮です」
シャルル
「しかし、『救世』か……。」
シャルル
「俺たちの所有者ってのは、随分と……」
シャルル
「変なやつだな。」
桟敷川映鏡
「そうですか?わりと至極まっとうな願いごとと思いますが」
シャルル
「そうかぁ?」
桟敷川映鏡
「奇跡にでも願わなければどうともならないもののひとつでしょう」
シャルル
「そりゃそうかもしれないけどさ。」
シャルル
「願ってどうなるって話。全員記憶喪失にでもするのかね。」
シャルル
「それとも、これは救世に反する罰とでもいうのか。」
シャルル
「わっかんねぇな。俺にはさ。」
桟敷川映鏡
「あなたがたの記憶がどういう経緯で失われたものかわかりませんが、救世に記憶喪失が伴うのであれば」
桟敷川映鏡
「……」
桟敷川映鏡
「ま、そういった意味での救世なのでしょう」
シャルル
「記憶喪失仲間になったらよろしく。」
シャルル
「ま、その時アンタは俺の事覚えてないんだろうけど。」
桟敷川映鏡
「ははは」
シャルル
「アンタが記憶喪失になったらさ。」
シャルル
「同室の女と恋人だったって言ってやるよ。」
桟敷川映鏡
「……」
シャルル
「あはは。」
桟敷川映鏡
台所前を通りがかると声がする。
桟敷川映鏡
「……メイドの声ではないですね」
*
おんなたちのわらいごえ。
シャルル
「ん。入ってみるか。」
シャルル
台所を覗き込む。
*