Dead or AliCe
『16人の救世主』

幕間 Room No.5-2


メイドの淹れてくれた紅茶は、薄過ぎもせず、濃すぎもせず、優しい味がして。

しかし、それからしばらく経った今はもう、空のティーカップがあるだけだ。
シャルル
話をするには、この。
同室の怯えた女よりも。
シャルル
幾分しっかりしたメイドは適任で。
シャルル
簡単にできる紅茶のいれかたや、ベッドメイキングのコツなどを聞いたりして。
シャルル
そうして、でも。
メイドが出て行ってしまえば。
シャルル
ふたりきり。
シャルル
「…………。」
アレクシア
「………………」
シャルル
することもなく、ベッドに腰かけてアレクシアを見る。
シャルル
「はぁ……。」
アレクシア
その視線に、溜息に、息を潜める。
アレクシア
言葉は、出てこない。
アレクシア
何を言えばいいのか。あるいは、何を言っても大丈夫なのか、わからなかった。
シャルル
「…………あのさ。」
シャルル
「そういう顔されてると、気になるんだけど。」
アレクシア
「…………ごめんなさい」
シャルル
「…………。」
シャルル
謝罪。
シャルル
「アンタ……ホントそればっかだな。」
シャルル
「もう少し何かないの?」
アレクシア
「……何、か」
アレクシア
困る。とても困る。
シャルル
「はぁ……。」
シャルル
先ほどよりも大きなため息。
アレクシア
適当に語れるような記憶はない。今、シャルルと放り込まれたこの部屋だけが、アレクシアにあるほとんどすべてだ。
シャルル
別に、もてなしを期待しているわけではない。
楽しい時間なんてものでもない。
ただ、その目が気にくわなかった。
アレクシア
何にイラつかれているのかは概ねわかる。かといって、それをどうすることもできない。
アレクシア
怖い。
アレクシア
それはどうしようもない。
シャルル
「そっち行っていい?」
アレクシア
「えっ」
シャルル
「…………見えにくいんだよ。アンタの顔。」
シャルル
「たぶん、目が……悪いんだ。」
アレクシア
「……そう……」
アレクシア
きつい目つき。それもまたアレクシアにとっては彼が怖い一因だったが、そう言われてしまうと。
アレクシア
「……どうぞ」 テーブルの向かいを、遠慮がちに示す。
シャルル
みしりと音を立ててベッドを離れ、向かいの席に着く。
シャルル
「うん、ちょっとましだな。」
アレクシア
「……そう」 良かった、と言うべきかどうか。
アレクシア
一瞬思って、言えなかった。
シャルル
「…………。」
シャルル
同じ記憶喪失でも、アレクシアとシャルルでは全く気の持ちようが違う。
シャルル
それは、もともとの気質の違いなのか、別の要因なのかはわからないが……
シャルル
「今ってさ。」
シャルル
「聞いた通りなら……俺たちの他に、勝った『救世主』がいるんだよな。」
アレクシア
「……うん」
シャルル
「恨まれてんのかな。……あの子は、そんな感じじゃなかったけど。」
シャルル
メイドのことである。
アレクシア
どうだろう。言葉もなく考える。
アレクシア
考えて、けれど答えは出ない。
アレクシア
だから、何も言えずに。
シャルル
「…………。」
シャルル
期待はしていない。
シャルル
「……俺、思うんだけどさ。」
シャルル
「ちゃんと、見た方がいいのかなって。」
アレクシア
「……何、を?」
シャルル
「この後の、試合?」
シャルル
それは、単に退屈だからというのもあったけれど。
シャルル
「始めたの、俺達なんだろ?」
アレクシア
「………………」
アレクシア
「そう、ね」
アレクシア
始めたのは。アレクシアと、そして、シャルルだという。
アレクシア
理由は、今のアレクシアにはわからないけれど。
アレクシア
膝の上で、ぎゅっと拳を握る。
シャルル
「見たくないっていうかと思った。」
アレクシア
「……………………」
アレクシア
「何も、覚えてなくても」
アレクシア
「……何も、覚えてないから、」
アレクシア
「……そうする以外には」
アレクシア
「何もできないの」
シャルル
「何かしたいって?」
アレクシア
「16人、集まって」
アレクシア
「14人、死んで、しまう」
アレクシア
「……その責任は」
アレクシア
「……………………」
アレクシア
途中で黙る。

そろそろ駆け引きを始めましょうか。

先制から。1d6
シャルル
1d6
DiceBot : (1D6) > 6
アレクシア
1d6
DiceBot : (1D6) > 6
シャルル
振りなおします。

振り直し
シャルル
1d6
DiceBot : (1D6) > 3
アレクシア
1d6
DiceBot : (1D6) > 4

アレクシア→シャルル。

手札を引きます
アレクシア
*d2 c4 dA
シャルル
*d3 c7 sQ
アレクシア
「………………」
アレクシア
「わたしは、」
アレクシア
「たぶん……そうしないと、」
アレクシア
「……いけない、気がして」
アレクシア
*dAで距離を測り、パス
シャルル
「…………。」
シャルル
思い出そうとする、という気がない。
ここにあるものと、これからがシャルルの全て。
シャルル
「責任、ね。」
シャルル
「俺も見た方がいいとは思うけど……それってさ。」
シャルル
「アンタ、ちゃんと果たせるの?」
シャルル
*アピール c7
アレクシア
*誘い受け d2
アレクシア
2d6+1>=7 距離を測ったぶん
DiceBot : (2D6+1>=7) > 5[2,3]+1 > 6 > 失敗
[ アレクシア ] 情緒 : 0 → 1
シャルル
2d6>=7
DiceBot : (2D6>=7) > 9[6,3] > 9 > 成功
アレクシア
「それは……」 小さく息を吸い、止めて。
アレクシア
「できないの、かも、しれない」 こぼれるように。
アレクシア
「でも、……」
シャルル
「したいの?」
アレクシア
「……うん」
シャルル
「…………じゃ。」
シャルル
「俺が捕まえててやろうか。」
アレクシア
「え、」
シャルル
「逃げないで、ちゃんと見れるように。」

手札捨てましょうか。
シャルル
*d3 sQ捨てます
アレクシア
*c4捨てます

2R

アレクシア情緒上げてないですね。
[ アレクシア ] 情緒 : 1 → 2
アレクシア
*h2 sJ sA
シャルル
*h3 h10 (sQ)
アレクシア
「……捕まえ、る、」 困ったように繰り返す。
アレクシア
「……捕まえる?」 もう一度。
アレクシア
*sA 距離を測る
アレクシア
*主動作はないのでパス
シャルル
「そ。」
シャルル
*アピール h10
アレクシア
スルーで
シャルル
立ち上がり、ぐるりとテーブルを迂回する。
アレクシア
肩が跳ねる。
シャルル
2d6>=7
DiceBot : (2D6>=7) > 7[4,3] > 7 > 成功
[ アレクシア ] 情緒 : 2 → 3
シャルル
腰を曲げ、後方から腕を回して。
シャルル
「前しか向けないようにさ。」
アレクシア
「……っ、」
アレクシア
言葉が出ない。距離が近い。
アレクシア
無遠慮な距離感。
シャルル
「…………。」
シャルル
「…………どっちがいい?」
シャルル
「無理やり前を向かせられるのと」
シャルル
「無理やり、布をかぶせられるのと。」
アレクシア
「ぬ、……布?」
シャルル
「怖いの、見たくないだろ。」
アレクシア
「………………」
シャルル
「俺が無理やりやってやるよ。」
シャルル
「アンタは何も悪くない。」
アレクシア
「…………、」
アレクシア
「い、い。……いらない」
アレクシア
「……悪くないわけ、ない」
シャルル
抱きしめる腕に力がこもる。
シャルル
耳元に。
シャルル
「悪くない。アンタも、俺も。」
シャルル
「それじゃダメなのか?」
アレクシア
「…………」
アレクシア
「…………あなたは」
アレクシア
「それでもいい」
アレクシア
「わたしは、」
アレクシア
「……わたしは、そう、思えないから」
アレクシア
「……だから、だめ」
シャルル
「…………。」
シャルル
「じゃ『前』だな。」
シャルル
正直言って、死というものに実感がわかない。
シャルル
実感というか、危機感というか。
シャルル
それは、忘れてしまったのかもしれないし、元からないのかもしれない。
シャルル
首筋にキスをする。
噛みつくように、勝手に、無遠慮に。
シャルル
暴力。
アレクシア
「ひ、」 悲鳴には満たない。
アレクシア
硬直する。一瞬後に、振りほどこうとして、失敗する。
シャルル
「ふ……ふふ。」

手札捨てましょう。
アレクシア
*sJ廃棄
シャルル
*h3 sQ 捨てます

では3R
アレクシア
*c10 hK(h2)
アレクシア
耳元。笑う声がかすかに髪を揺らす。
シャルル
*d5 cJ sK
アレクシア
「はな、して」
シャルル
「やだ。」
アレクシア
「……や、だ、……、嫌」
シャルル
「…………。」
シャルル
「嫌っていうだけじゃ、何も変わんねーよ。」
アレクシア
言葉に詰まる。
シャルル
言えるようになったのは偉いけど。
アレクシア
*c10 アピール
シャルル
受けます
アレクシア
2d6+1>=7 距離を測るがまだ乗ってる
DiceBot : (2D6+1>=7) > 6[3,3]+1 > 7 > 成功

ハプニング表
アレクシア
1d6
DiceBot : (1D6) > 5

極めて冷静、相手のことが手に取るようにわかる。自身の情緒-1。
[ アレクシア ] 情緒 : 3 → 2
[ シャルル ] 情緒 : 0 → 1
アレクシア
「じゃあ、」
アレクシア
「どうしろって言うの」
シャルル
「そりゃ……」
シャルル
「力づくとか?」
シャルル
*アピール d5
アレクシア
*h2 誘い受け
アレクシア
2d6>=7
DiceBot : (2D6>=7) > 9[3,6] > 9 > 成功
シャルル
2d6>=9
DiceBot : (2D6>=9) > 3[2,1] > 3 > 失敗
[ シャルル ] 情緒 : 1 → 2
シャルル
距離が近い。
抱きしめる腕は自分から離れることもなく、囁く。
アレクシア
「……っ、……どうしろって、言うのよ……!」
アレクシア
抱きしめられて、腕もほとんど動かない。
シャルル
「それ、教えたら俺の負けじゃん。」
アレクシア
「そん、なの……っ」
アレクシア
どうしようもない。どうにかしようと思っても、思考が空転している。
シャルル
「じゃ、こうする?」
シャルル
「アレクシアからキスしてくれたら離してやるよ。」

手札捨てタイム。
シャルル
*キープ
アレクシア
*キープ

4R
アレクシア
*s8 cA(hK)
シャルル
*s10 ( cJ sK)
アレクシア
再度、硬直する。
アレクシア
何を言われたのか、一瞬、頭が理解を拒んだ。
シャルル
「…………。」
シャルル
楽しそうである。
アレクシア
シャルルの声は笑っている。それがわかる。
アレクシア
*cAで距離を測り、s8アピール
シャルル
*誘い受け cJ
シャルル
2d6>=7
DiceBot : (2D6>=7) > 7[2,5] > 7 > 成功
アレクシア
2d6+1>=7
DiceBot : (2D6+1>=7) > 7[1,6]+1 > 8 > 成功
[ シャルル ] 情緒 : 2 → 3
アレクシア
「……からかわないでって」
アレクシア
「もう、言ったはずでしょう」
シャルル
「…………そう見える?」
アレクシア
「……笑ってたくせに」
シャルル
「ふふ。」
シャルル
「なあ。」
アレクシア
「……何」
シャルル
「…………どうしたら。」
シャルル
「笑ってくれる?」
シャルル
*アピール s10
シャルル
2d6>=7
DiceBot : (2D6>=7) > 5[2,3] > 5 > 失敗
[ シャルル ] 情緒 : 3 → 4
アレクシア
「……笑、う」
シャルル
「…………。」
シャルル
「ずっと、暗い顔してるから。」
アレクシア
「…………だって」
アレクシア
「怖、いの。……怖い、……」
シャルル
「…………。」
シャルル
「ごめん。俺……」
シャルル
「怖いっていうの、なんかよく……わからなくて。」
シャルル
「怖いってどんな感じ?『嫌』が大きい?」
アレクシア
「……………………」 言葉を探す。
アレクシア
「……嫌、って、いうか」
アレクシア
「……不安、……」
シャルル
「不安。」
アレクシア
「何も、わからなく、なるから」
アレクシア
「……今」
シャルル
「……何もできないかな。」
アレクシア
「え、」
シャルル
「さっきも言ったけど、俺は……アンタに前を向かせることもできるし、布をかぶせることもできる。」
シャルル
こうして、動きを奪う事も勝手をすることも。
シャルル
「たぶん。殺すこともできると思う。」
アレクシア
「……う、ん」
アレクシア
根本的に。彼は、アレクシアとは違う。何かが。

手札捨てタイム。
アレクシア
*キープ
シャルル
*sK捨てます

5R
アレクシア
*c5 JOKER(hK)
シャルル
*h6 cQ dQ
アレクシア
「……わたしのこと」
アレクシア
「どうしたいの」
シャルル
「さぁ。でも……たぶん。」
シャルル
「壊したくないんだと、思うよ。」
アレクシア
「…………」
シャルル
あるいは、自分の手で。
シャルル
壊したいのかもしれない。
シャルル
「…………それで。」
シャルル
「キス、する?」
アレクシア
少し、黙り。
アレクシア
「……わたし」
アレクシア
「……布は、いらない。……」
アレクシア
「目を背けると、しても」
アレクシア
「それを、あなたのせいには、しない」
アレクシア
「……自分で、選ぶ」
アレクシア
だから。
アレクシア
何か、諦めのように。あるいは、何か、決意のように。
アレクシア
シャルルのくちびるに、ふと、くちびるを合わせる。瞬きのような、僅かの間だけ。
アレクシア
*JOKERで一押し。
[ アレクシア ] 情緒 : 2 → 3
[ シャルル ] 情緒 : 4 → 5
シャルル
「…………。」
シャルル
意表を突かれる。
シャルル
出来ないと思っていた。
シャルル
しないと、思っていた。
シャルル
「あ…………。」
シャルル
調子を崩される。
シャルル
腕の力が、緩む。
アレクシア
「…………」
アレクシア
緩んだそれを、そっと開いて立ち上がり。
アレクシア
「……少しだけ」
アレクシア
「……外、……行って、くる」
シャルル
「…………。」
アレクシア
静かな足取りで。
アレクシア
ドアが開き、閉じる。
シャルル
「…………アレク、シア。」
シャルル
何もできない。できなかった。
シャルル
扉が閉まるまで、ずっと……
シャルル
「…………。」
シャルル
「できるじゃん、やれば。」
シャルル
一歩。
シャルル
前に出るには勇気がいる。
シャルル
他人を傷つけることは、難しい。
けれど、自分を傷つけることはもっと難しい。
シャルル
ベッドまで歩いていって、横になる。
天井を見上げて……
シャルル
『他の参加者が危害を加えてくる可能性』を
シャルル
考えられるようになるには、少し時間がかかりそうだった。