プロローグ Room No.5
シャルル
多くの観客が見守る中庭を、見下ろすように。
シャルル
館の一角、中央に近い部屋のバルコニーにふたり。
シャルル
ひとりは椅子に、ひとりはその隣に寄り添うように。
シャルル
記憶の中にないふたりの姿が、現れ、消える。
アレクシア
無言のうち、『シャルル』と『アレクシア』が現れて、消えた。
アレクシア
ただ、万華鏡のように現れては消える、その記憶が、ひたりと胸を刺す。
アレクシア
「……うん。……大丈夫」 かすか、ほほえみ帰して。
アレクシア
「そばにいてくれるって、信じてるから」
シャルル
記憶は記憶。
『俺達』のは、あそこにはない。
アレクシア
『わたしたち』は、ここにいる。
記憶でなく。
シャルル
アレクシアの紡いだ衣装と、シャルルの編んだ花冠。
シャルル
『今こうしてオレを飾り立ててる、お前らもその一部』
アレクシア
そして、次いで入場してくるマキナたちに目を移す。
シャルル
世界が救われたとして、その救いとは。
『赤の他人』どこまでも個人ではない、それは。
アレクシア
「正直に言えば、そのほうが、やっぱり、わかる……と、思う」
アレクシア
「わたしにとっては、きっと……目に見えるもので、手の届くもので」 [編集済]
アレクシア
「……ひとによって、きっと、違うから」
アレクシア
「『世界』はきっと、……ひとつじゃないから」
シャルル
「殺すことでしか、得られない幸せもある。」
シャルル
「…………トイトロールは、救ってくれるってさ。」
アレクシア
「………………」 静かに、中庭を見下ろして。
アレクシア
「……救い」 もう一度、小さく繰り返す。
シャルル
「俺は、ここで二人で……死ぬことを。死んだ方が。」
シャルル
「いいんじゃないかって、思った。『あの時』はだから、それが救いだった。」
シャルル
「……きっと、アレクシアに救われてる。」
アレクシア
傍らのシャルルの、金属の手のひらを握る。