プロローグ Room No.4
獣の女王 - trivial / fatal - 2人の救世主
月の色
夜の味
暗闇の手触り
傷の熱
ありきたりな日常のひとつ / 決して忘れることはない
GM
獣の女王 - trivial / fatal - 2人の救世主
GM
「おいおい、もうちょっとくらい楽しませてくれよ」
獣の女王
素足で倒れている死体を転がすように蹴る。
獣の女王
巴が死んでいるのを確認すると、次につま先でつついたのはネイルだ。
鏖田 ネイル
つつかれた、という程度の感覚だったのだろう。
鏖田 ネイル
だが、こちらとしては重機で殴りつけられたような衝撃だった。
鏖田 ネイル
口から血の塊を吐き出し、霞んで消えゆきそうだった意識がわずかに明滅する。
鏖田 ネイル
何が起きているかはわかる。目の前に何者がいるかも、そこで誰が死んでいるかも。
鏖田 ネイル
だが、何もできない。指先一つも動かせない。
獣の女王
「結構結構。獲物は活きがよければよいほどいいからな」
網倉 霞
血でまともに見えない目を開けて、腕の力だけで近付いて、同様に横たわっている目の前の男の手を掴んだ。
網倉 霞
その手の温度はとっくに空気と同じで、硬かった。
網倉 霞
声を出そうとして、大きく咳き込んで、砂と血を吐く。
GM
夜が人の形をとっているかのように、男はただそこに”ある”だけだ。
網倉 霞
見上げる。このひとを、このようにした怪物を。
網倉 霞
怪物。化物。モンスター、魔女、吸血鬼――どの言葉でも形容できないような、言い表すことさえ不可能なような、そういったもの。
網倉 霞
抗う。どうやって? その方法すら見出だせないくらい、圧倒的な力の差だった。
網倉 霞
そうだ、仇だ、殺さなくてはならない、わかっているのに。
獣の女王
頸部に圧力が掛かれば血の流れが妨げられ、否応なく己の脈拍を意識させられる。
網倉 霞
もがく。もがいたつもりだ。それがどの程度の力か、認識することはできないが。
獣の女王
あなたは抑留された血で頭が熱く膨らむような感覚を覚える。
糸田巴
すさまじい閃光があたりを包み込む。音もなく。
鏖田 ネイル
目を見開く。その声が聞こえた事に。その声の主が動いた事に。
そして、それから起きた事に────
網倉 霞
閉じかかっていた目を開く。視線を声のするほうへ向けようとして、
糸田巴
何もかもが白く染まった世界の中で響く声は、確かにさきほどまでそこで死んでいたはずの、糸田巴。
糸田巴
霞は衝撃を受ける。地面に投げ出されたのだとすぐにわかる。
糸田巴
*最終判定を宣言。目標、獣の女王。部位ダメージ。
糸田巴
ast
BloodMoon : ランダム全特技表(2,10) > 頭部10:叫ぶ
鏖田 ネイル
ダメだ、それは。それはダメだ。
指一本動かせない身体で、それでも血の海の中で這いずるようにもがく。
糸田巴
「ごめんね、鏖田さん、これが私の精一杯みたい」
鏖田 ネイル
腹部の裂傷から何かがはみ出そうだ。それがアスファルトと擦れて凄まじい激痛が流れ込む。それでも、そんな事を気にしている余裕もない。
鏖田 ネイル
「やだ、や、だ………………わた、しは」
鏖田 ネイル
先程、目の前でその細い身体が赤く染まった時に、その絶望は一度味わった。
鏖田 ネイル
それをもう一度、今度は目の前で、何が起こるか認識出来る状態で、繰り返されようとしている。
糸田巴
糸田巴はいつだって、そんなふうに根拠のない『大丈夫』を繰り返し口にしてきた。
鏖田 ネイル
その『大丈夫』に、今まで縋りついてきた。
鏖田 ネイル
まともに呼吸ができない人生の中で、その言葉が作る聖域の中でだけ息継ぎをして、今まで生きてこれていた。
鏖田 ネイル
なのに、なのにどうしてそんなことを言うの。
鏖田 ネイル
貴方が居ないと、私は呼吸ができない。
鏖田 ネイル
どれだけ泣きそうになっても、涙をこぼす体力すらも無い。
糸田巴
「いつだって、わたしは、鏖田さんの味方だから」
網倉 霞
巴が、……あの人の娘で、あの人が愛している巴が、そう言うなら、そうするしかないと思った。
網倉 霞
自分がどのようにして立ったのかも、どうして他人を起こせたのかもわからないくらい、全身が痛くて、それでも。
糸田巴
2D6>=7 (判定:閃く)
BloodMoon : (2D6>=7) > 10[5,5] > 10 > 成功
糸田巴
BRT
BloodMoon : 身体部位決定表(2) > 《脳》
糸田巴
全身全霊。文字通り、魂を燃やす、最後の一撃。
獣の女王
閃光の中で、誰に見留められることもなく、獣の女王は笑う。
GM
そうしてあなたがたは、その場を逃げおおせた。
GM
いつのまにか、身体がちゃんと動くようになっている。
鏖田 ネイル
「どうして、どうして、どうして…………」
鏖田 ネイル
身体は動くようになった。でも、心は少したりとも動かない。
鏖田 ネイル
うつむき、臥せ、涙を零し、悲しみから目を逸らせない。
網倉 霞
鏖田をぼんやりと視界におさめながら、段ボールの山にもたれかかって座る。冷たいコンクリートの床の感触がする。
鏖田 ネイル
どうしてこうなったのか。どうしてあの人が死んでしまったのか。どうして自分が生きているのか。
鏖田 ネイル
どうして置いていかれてしまったのか。
鏖田 ネイル
何もわからなくて、ただ子供のように泣いている。
網倉 霞
自分もこの目の前の女みたいに泣けたら、多少はマシになるだろうか、と思った。
網倉 霞
血が止まったのと一緒に、涙を出す機能を忘れたみたいだ。
網倉 霞
どうして。自分だってずっと思っていた。思っている。
GM
あなたがたが見たのは、被ったのは、ただただ純粋な暴力の嵐。
鏖田 ネイル
逃げ場所は、たった今さっき失ったばかりだ。
GM
獣の女王。その名前は狩人ならば聞いたことがあるはずだ。それは生きている伝説で、災害だった。台風や地震と同じようなものだとして、語り継がれている。
網倉 霞
「……わからない」行く宛がないのは、たぶん同じ。
鏖田 ネイル
「生きる場所が無くて、息ができる場所が無くて。あの人の傍だけが、それだけが私が居る事を許される場所だったのに」
GM
獣の女王、女王、獣、The Beast、B案件――。
鏖田 ネイル
「もう、もう無くなってしまった。安らげる場所も、生きる場所も、この世界で唯一、たった一人だけ生きる価値のあった人が…………」
網倉 霞
安らげる場所、生きる場所。そうだなと思う。そうであったなと。
網倉 霞
この女のように言語化できないのは、まだ認められていないからなのかもしれない。
網倉 霞
きっと今日を生き抜いたところで、明日から生きられはしないのだろうし。
網倉 霞
自分の命と引き換えでもよくて。むしろそっちのほうがいい気がして。
鏖田 ネイル
理論だった思考等なにも経ていない。だけどそれが結論だと感じていた。
鏖田 ネイル
生きる事ができる場所がなくなったし、生きる理由もない。
網倉 霞
口にされた結論と、考えていたことは同じだった。
鏖田 ネイル
あの人を殺した奴がまだ生きていて、なのにそれを放っておいたまま、あの人に会いに行く事はできない。
GM
会えば終わり。戦えば死ぬ。獣の女王の被害報告は、天気のニュースのように時折狩人のネットワークに流れてきた。
網倉 霞
あの人を殺した獣が、生きていること。それはきっとよくないことなのだと思った。
鏖田 ネイル
この人物とは先程出会ったばかりだ。共に居た人は…………糸田さんの父親だとは、知っているが。
鏖田 ネイル
「きっと、私達の目的は同じだと思う」
GM
言葉では、想い出だけでは暖まらないからこそ、寄り添ってきた。
GM
心に出来た疵を刃にして、あなたがたは立ち上がる。
鏖田 ネイル
関係
糸田 巴→信仰3
網倉 霞→同類1
網倉 霞
糸田 柱→悲恋 3
鏖田 ネイル→同類 1
獣の女王
支配力
孤高 地位 強度5 城に憩えど築かず 税徴らずに歯牙にて貪る
荒廃 日常 強度3 征服は荒廃にて果たし
跋扈 退路 強度3 冠戴かずに赤を肌に纏う
獣の女王
フォロワーはデータ的には存在しますが、概念です。獣の女王は一人です。データ的に干渉するときはフォロワーA,Bで指定してください。
獣の女王
2d6
BloodMoon : (2D6) > 9[3,6] > 9
網倉 霞
1d6
BloodMoon : (1D6) > 4
鏖田 ネイル
1d6
BloodMoon : (1D6) > 6
鏖田 ネイル
ST
BloodMoon : シーン表(9) > 生活の様子が色濃く残る部屋の中。誰の部屋だろう?
鏖田 ネイル
倉庫の中、殺意を研ぎながら思い返す。
鏖田 ネイル
あの瞬間。あの暴風と遭遇した瞬間を……
鏖田 ネイル
私は糸田さんと一緒にとある魔女を追っていた。
いつものように、私が事前に手下は始末して。
鏖田 ネイル
その住居を突き止め追い込み、後はそこに突入するだけだった。
鏖田 ネイル
そうしたら、そこに……魔女の仲間だったヴァンパイアと……その網倉を含めた2人が居た。
GM
暖かく、柔らかく、決してあなたを一人にしない。
GM
小さい女の子の姿をとるが、その本質は、彼女の抱くぬいぐるみだ。
GM
一方、彼女を守る吸血鬼の少年は、元々孤児院にいた少年だ。
GM
吸血鬼の力を行使して、奪った彼の城に、ぬいぐるみの魔女が逃げ込んだ、という状況だった。
GM
血をたっぷりと吸い込んだ、大きなぬいぐるみは。
GM
少年は鋭い爪の生えた手を大きく開き、ぬいぐるみに囲まれて震える魔女の前で立っている。
鏖田 ネイル
まず、魔女が吸血鬼と手を組んでいた事。その上で友好な関係と目される事。
鏖田 ネイル
そして、それ以上に予想外だったのが……吸血鬼を追っていたと思しき狩人2人。
鏖田 ネイル
その片方には、写真だけだが見覚えがある。
糸田さんは私以上に驚いている事だろう。
糸田巴
「お、おいつめたぞー」完全に棒読みなのは、隣に、お父さんがいる!
網倉 霞
やけに棒読みな魔法少女がいるなと思って、そちらを見て。
糸田巴
ばれてないばれてない。私は魔法少女! 大丈夫!!
鏖田 ネイル
「……そうですね、必要な対処を優先しましょう」
鏖田 ネイル
まさかこんなところで義祖父さんと出くわすとは思っていなかったが……
GM
「なんか訳ありかと思ったら、あんたら、家族か」
糸田柱
左手に杭、右手にハンマー。吸血鬼を殺すためのもの。
糸田柱
「私は対象に対して興味を持たないようにしている」
鏖田 ネイル
こちらも無言で杭を取り出す。
獲物の上、信条までも被るとは思っていなかったが……
鏖田 ネイル
ただ、ここまで同じではなくて良かったと、半吸血鬼である己の血を杭の先端に垂らしながら思う。
鏖田 ネイル
血に濡れた杭は、そこから発火を始める。
糸田柱
特別なルールで配置された杭は陣を形成し、結界を成す。
網倉 霞
小さな魔法少女を見る。写真で見たことがある、幼い顔立ちの少女。
網倉 霞
「……ここ、色々仕込んであるから、踏むなよ」
糸田巴
中空に手をかざす。キュラン、キュランと超常的な効果音、輝きとともに、無から長い得物を作り出す。まるでオモチャのような槍。
糸田巴
「でも、わたしたちがちゃんと、お星様に還してあげるから」
鏖田 ネイル
ほほが緩むのを感じる、あの人は”いつも通り”だ。
鏖田 ネイル
この世界に渦巻くあらゆる汚泥におかまいなく、残酷な程輝く。
網倉 霞
この子があの人の娘か、と。思って。眩しさを感じて、目を細める。それは見た目だけではなくて。
網倉 霞
俺はどちらかというと、こいつら側なのだろうな。
GM
ぬいぐるみが動き出し、あなたがたに襲いかかる。
鏖田 ネイル
微笑みながらも、視線は外していなかった。
鏖田 ネイル
汚泥がこびりついたところで、別にあの人はものともしないし、輝きが鈍るなんて事も無いけれど。
鏖田 ネイル
あの人にこびりついていい汚泥は、今は私だけだ。
網倉 霞
棘のついたワイヤーが括り付けられている注射針。
鏖田 ネイル
杭を放つ。ただ先端に血が塗られただけの白木の杭。
網倉 霞
棘がぬいぐるみに引っかかり、切り裂いて、血の色の綿が飛び散る。
鏖田 ネイル
杭は突き刺したぬいぐるみを端から燃やし尽くしていく。
鏖田 ネイル
”元が何であったか”等は気にするべくもない。
糸田柱
鏖田の打込んだ杭にハンマーを更に打ち付ける。【二度打ち】。
鏖田 ネイル
そういうのを気にしながら戦って生き残れるのは、あの人だけだ。
糸田柱
結界の領域内に、燃やしたぬいぐるみの使い魔を固定する。
糸田巴
利き手を槍から離して、吸血鬼の手を取り、踊るようにステップを踏み。
網倉 霞
床が爆発する、床上に張り巡らされていたワイヤーが吸血鬼の足を切る。
網倉 霞
よろめいた吸血鬼にさらに爆発が二、三度続いて、ワイヤーで傷付けられた足に毒液がかかる。
GM
爆発によって放たれる金属片が吸血鬼を貫く、ワイヤーが肉を断ち、傷口を毒が灼く。
網倉 霞
倒すべき対象に感情移入しすぎることを、柱に怒られて。それから、距離を置くすべを教わって。だから。
鏖田 ネイル
吸血鬼の少年が罠に罹っている。魔女の方もそちらに気を取られている。だからその隙に、魔女に向かって杭を放つ……
鏖田 ネイル
その一連の動作を、”吸血鬼の少年から見えるように”行う。
糸田巴
折り重なる罠の連弾の間も、巴は決して手を離さず、同じようにステップを踏み続ける。
網倉 霞
この少女は罠の隙間に足を置いている。それが見て取れる。
GM
「エリっ!」吸血鬼の少年は己が傷ついていることも、手を掴まれていることも視野に入れていない――いれることができない。
鏖田 ネイル
その過程で吸血鬼の体勢も崩せるならば、そうしない理由は無い。
鏖田 ネイル
おそらく次が来る事を予想して、杭の線上から少し身を離した。
網倉 霞
吸血鬼が魔女を見て動き出そうとするのと、霞が吸血鬼の少年の背後に回って注射針をその首筋に刺すのは、同時だった。
網倉 霞
注射針の中には毒液。対モンスター用の神経毒。
GM
魔女と吸血鬼は横たわり、薄く開いた目で天井を見ている。
GM
ふたりならんで、こうやって、天井の蛍光灯を眺めていれば。
鏖田 ネイル
「さて、どっちからとどめを刺すか。それとも同時にやる?」
鏖田 ネイル
その意図するところを汲み取って、自分は糸田さん……どちらも糸田さんだが、私の太陽である方……の元へと歩み寄る。
糸田柱
「……こんな男だが、これでも私は、人の親なんでね」
鏖田 ネイル
「私達は、この家に他の犠牲者がいないか探しに行きましょう」
網倉 霞
愛妻家で娘思い。そういう人だ。糸田柱という人は。
糸田柱
「娘が手に掛けるところを、あまり見たくはない」
獣の女王
杭を打込もうとしていた糸田柱もそこになく、
網倉 霞
「え、」声を発したのと、全てが終わったのは同時。
網倉 霞
「――糸田、さ、」血の痕が続いているその先を、ゆっくり、見る。
鏖田 ネイル
状況を理解したとも言えないまま、反射的に手を動かす。
鏖田 ネイル
とにかく危険な存在で、おそらく糸田さんにも危害が及ぶ。
網倉 霞
その名前は知っていた。知っていて、けれど自分達なら倒せるのだろうと、思っていた。
網倉 霞
倒せない敵なんかこれまでいなかったのだから。
鏖田 ネイル
笑ってしまいそうな程理不尽なこの状況で:……いや、実際、笑ってしまいそうだ。
絶望に似た感情が胸と足を震わせている。
鏖田 ネイル
それでも、自分は止まる訳にはいかない。後ろにあの人がいるのなら……
糸田巴
父が目の前で踏みしめられている、倒れているにもかかわらず。
鏖田 ネイル
2D6+3>=6 (判定:笑う)
BloodMoon : (2D6+3>=6) > 8[2,6]+3 > 11 > 成功
鏖田 ネイル
駆け出した勢いのまま、【魔法剣】を纏わせた杭を渾身の力で打ち込む。
鏖田 ネイル
まるで鋼鉄を打ったような手応えだ。ダメージが通っているのかまるで分からない。
鏖田 ネイル
焦りから行動してしまったが、そうだ。目の前の相手がいかにも強力ならば、二人で力を合わせる必要がある。
鏖田 ネイル
そして、2人で力を合わせれば、きっと……
糸田巴
槍が光を放つ。この槍は、平和を願うみんな想いを届けるためのもの。
鏖田 ネイル
巴との【連携攻撃】となるように動きを併せる。
糸田巴
鏖田の付与した血液が炎を上げて、より強い光を伴う。
鏖田 ネイル
呼吸が止まる。今、蹴り飛ばされた巴の身体が異常な変形をするのが見えた。
鏖田 ネイル
その一瞬で頭が真っ白になって、その一瞬の間にもうあれは自分の目の前にいて──────
[ 鏖田 ネイル ] テンション : 8 → 11
[ 鏖田 ネイル ] 激情 : 0 → 1
GM
【幸福】の【強度】を減少させる効果は倍の効果量とする。
GM
あのとき、動かなければ。素直に逃げていれば。
GM
あるいはそれでも、彼女が一人、逃げていれば。
GM
あなたが今、逃げ出して、倉庫の片隅で息を潜めていられるのは。
獣の女王
フレグランスのように、それは纏っている。
獣の女王
血だけではない。まるごとすべてがそこにいる。
獣の女王
すさまじい音がして、ドアが破壊される。もぎ取られた。
獣の女王
「隠れられると思ったら、それは大間違いだぞ」
網倉 霞
ここは比較的安全だと、そう判断して逃げ込んだはずだ。
鏖田 ネイル
彼女の首元に噛みつき、啜った事がある。
獣の女王
「逃げるなら息を切らせて逃げるんだな。仲間を置いて、何もかも放り捨てて」
鏖田 ネイル
牙を見せつけ、露悪的に笑って、自分が怖いかと聞いたことがある。
鏖田 ネイル
その時、笑顔で答えてくれた彼女が…………
獣の女王
「それでどうにか、逃げて、生き延びれるかもしれない」
糸田巴
一切の屈託はなく、あのとき巴はそう答えた。
鏖田 ネイル
手元に杭を引き寄せる。血が出そうな程握りしめる。
鏖田 ネイル
「それでは、お前を殺せない…………」
獣の女王
「ワンサイドゲームじゃ、つまらないだろ」
鏖田 ネイル
頭に血が上る。同時に血の気が引いていくのも感じる。
鏖田 ネイル
感情が爆弾のように胸のうちで弾けて、血液を流している。同時に理性がその流れをひきとめ、手に精確な動作をもたらそうとしている。
鏖田 ネイル
自分は狩人だ。そう信じて生きてきた。
鏖田 ネイル
奴らに従わない、人を従わせない。己は狩る側だと。
獣の女王
獣の腹に、彼女がいる。彼女の仇が、目の前にいる。狩るべき吸血鬼と、相対している。
鏖田 ネイル
身体を引き絞る。筋肉が痛みを訴えるほどに縮め、弾性をエネルギーとして蓄える。
鏖田 ネイル
弓を引くように狙いを定める。瞳はまっすぐに目標を見据える。身体の部位のうち、最も柔らかく、最も装甲の薄く、そして急所と成りうる場所を探す。
鏖田 ネイル
指の一本を咥え、先端を噛みちぎる。それを自分の背後に投げる。
鏖田 ネイル
それを最後のエネルギーとして、その全身を発射する。
鏖田 ネイル
杭を構え、全てのエネルギーをそこに集中させるべき体勢を整え。
獣の女王
鏖田 ネイル ハンターの矜持を破壊します。
獣の女王
ast
BloodMoon : ランダム全特技表(6,5) > 環境5:待つ
網倉 霞
2D6>=7 (判定:蹴る)
BloodMoon : (2D6>=7) > 3[1,2] > 3 > 失敗
網倉 霞
鏖田に注意が向いている間にもう一撃を与えるつもりで、有刺鉄線を投げる。
獣の女王
鏖田の狙いは正確だった。その一撃の鋭さもまた。
獣の女王
しかし獣の女王は、ただ純粋にそれよりも速い。
獣の女王
ただ半歩足を下げるだけで、それで有効打は得られない。
獣の女王
精確で鋭利な一撃であるからこそ、ささいにもずらされればそれで届かない。
獣の女王
最小限の動きで一撃を回避した獣の女王は、放り込まれた有刺鉄線が描く影を操作する。
獣の女王
鏖田ネイルの一撃は、全身全霊を込めた一撃であるが故に、踏みとどまることはできない。
網倉 霞
鏖田の狙いは完璧だった。その攻撃を受ければ傷がつくはずで、避けようとすれば自分の追撃への対処が遅れる。
鏖田 ネイル
届かせる事ができなかった。ほんの少し狙いをずらされ、身体の厚い部分で受けるだけで無効化された。
鏖田 ネイル
全身に痛みが走る。身体が痺れる感覚も。
網倉 霞
有刺鉄線に手応えを感じた。その手応えがモンスターでなかったことは一度もなかったから、反射的にワイヤーを強く引く。
網倉 霞
爆破で舞った埃が目隠しになって、気付くのに遅れる。
網倉 霞
この鉄線が刺さったそれがモンスターではなく、狩人であったことに。
鏖田 ネイル
粉塵の中から転がり出たのは、全身血まみれになったこの女だ。
網倉 霞
手を緩めるが遅く。強く引いた鉄線は狩人に傷をつくる。
鏖田 ネイル
声の代わりに咳が続く。仕込まれた毒が回り始め、ろくに舌も回らなくなっている。
獣の女王
その歯牙が鏖田に襲いかかる。先刻、糸田巴を引き裂いた牙。
網倉 霞
これが決まって、生きていたモンスターはいままでひとりもいなかった。
網倉 霞
周囲10mは吹き飛ぶはずのその爆発が、獣の女王に吸収される。
網倉 霞
血が、肉片が、獣の女王から溢れて、自分の服を汚す。
獣の女王
戦いを継続するにせよ、体勢を立て直す必要があるのは明白だ。
鏖田 ネイル
有刺鉄線で受けた傷そのものは深くはない。出血が多いのも見た目だけだ。
鏖田 ネイル
ただ、毒による麻痺は深刻だった。上手く身体を動かすことができないでいる。
獣の女王
獣の女王は月の下で、笑いながら立っています。
網倉 霞
最近は担がれることもなくなっていたけれど。
鏖田 ネイル
その刀剣のような瞳だけは、ずっと怪物を睨みつけながら。
[ 網倉 霞 ] テンション : 9 → 14
網倉 霞
焼夷弾1 勝利の護符2 拳銃4 で補正-7
網倉 霞
2D6-7+2+3>=5 (判定:耐える)
BloodMoon : (2D6-7+2+3>=5) > 4[1,3]-7+2+3 > 2 > 失敗
網倉 霞
ありがとうございます・・・・・・・・・・・・・・
網倉 霞
ホテルの一室。逃げるようにして、その中に入る。
網倉 霞
慣れた手付きで手続きを済ませて飛び込んだ。
GM
その一室に踏み込むだけで、すべての想い出が蘇る。
鏖田 ネイル
寝かされた時に傷に痛みが走るが、表情は変えない。それくらいは今更だ。
糸田柱
初めてこの部屋にきたときは、酷い雨が降っていた。夏なのに酷く冷える夜だった。
鏖田 ネイル
避難先としてホテルに連れ込まれるのも、今更だ。
こういう場所が、狩人にとって都合が良い施設だというのは知っている。
鏖田 ネイル
……年齢の問題もあって、あの人と一緒に来たことはないが。
糸田柱
手を差し出す。特に何も言わず。上着を、ということだろう。糸田柱は丁寧なところと、ぶっきらぼうな側面を併せ持つ。
網倉 霞
何度も来た部屋だ。上着を着たまま椅子に座るのは初めてだ。
糸田柱
ハンガーに掛けるときに、その厚く傷ついた手で、しわにならないよう軽く均してかける。
網倉 霞
「……毒。その傷なら、そんなに強くはないはずだから」
網倉 霞
この部屋で自分から喋りかけるのは、あんまりないことだったような気がする。
網倉 霞
「今まで狩人に毒を浴びせたことなんか、なかったし」
糸田柱
ホテルのテーブルにはアルコールがいつも置いてある。糸田柱はシーバスリーガルの18年物を好んだ。
鏖田 ネイル
「普通なら死んでたかもしれないけど、幸い私は普通じゃないから」
網倉 霞
「……そう」戦い方を見ればわかった。深くは追求しない。
網倉 霞
アルコール。ひとくちだけ、もらったことがある。
鏖田 ネイル
横になり、瞳を閉じながら問いかけた。
糸田柱
それなのに、どうしてか、いつもグラスが二つ置かれている。それに注ぐことなどないのに。
糸田柱
今日は当然、シーバスリーガルもグラスも置いてはいない。
網倉 霞
テーブルの上のその思い出から目を逸らして。椅子から立って、鏖田のベッドの端に座る。
糸田柱
あまり変わっているようには見えないのに、『今日は飲みすぎた』と言う。
鏖田 ネイル
これは、特に必要の無い問いだ。それは分かっていた。
糸田柱
お酒を飲んでからは、シャワーを浴びる。いつも柱が先に浴びる。
糸田柱
シャワーを浴びた後にも柱は香水をつけた。9月の、残暑のような匂いだった。
鏖田 ネイル
聞く必要性があった訳ではない。だが、興味がなかった訳でもない。
鏖田 ネイル
それは、相手があの人の父親であった事もある。
網倉 霞
霞も柱も喋るほうではないから、こうして話しかけられるのはあまり慣れていないことだった。
鏖田 ネイル
……それと、この人物とあの人が似ているような気がしたのもあった。
糸田柱
何故そのタイミングにそうするのかはわからないが、バスローブの姿で、部屋の金庫を改める。
網倉 霞
「……」なんと問いかけたらいいかわからなくなって、悩む。
鏖田 ネイル
連れ込んだ事も、連れ込ませてやった事もある。あまり面白い経験ではなかったが。
糸田柱
特にそのままの金庫を見て、『大丈夫だな』と言う。
鏖田 ネイル
「セックスする時はどっちかの家でやってたから」
網倉 霞
驚きはあった。けれど、自分もきっと外から見たら同じようなことをしている。
鏖田 ネイル
「……そういう意味だったんじゃないの?」
網倉 霞
居たたまれなくなった。立ち上がって、金庫の前まで歩く。
鏖田 ネイル
お互いの一番の関心事は、”糸田さん”とどういう関係だったのか、だと認識していた。
糸田柱
一見はただの金庫だが、その奥に開くところがある。
網倉 霞
ひとつひとつ取り出して、上着のポケットにしまい。
網倉 霞
最後に残った手紙は、しまうか迷って。開く。
糸田柱
『この金庫の物資は、私個人のものだ。好きに使ってほしい』
糸田柱
『君がいたお陰で、私はあの人を失った後でも、私は私を保っていることが出来た』
糸田柱
『私から君に願うことや、想うことは、口にせずともたくさんある』
糸田柱
『しかしながら、それを述べるはいささか押しつけがましいようにも思う』
糸田柱
『君が自分を大切にできるようになることを、私は望んでいる』
糸田柱
『君に好き勝手した私が言うことではないな。そうだな』
糸田柱
手紙の中には、おおよそ二十万円ほどが一緒に同封されている。
糸田柱
『この封筒は、いざというときまで、決して開けるな』
糸田柱
『あるいは君に、活路を与えてくれるかもしれない』
網倉 霞
その手紙を、丁寧だが硬い筆跡で書かれた文字を、一行一行読みながら。
鏖田 ネイル
目を閉じていたから、その様子は観ていない。
鏖田 ネイル
ただ、金庫を漁る物音と、紙をめくる音。それから嗚咽が漏れ聞こえただけ。
網倉 霞
袖で涙をぬぐって、ふらりと立ち上がって。
網倉 霞
鏖田が寝ているベッドの端にふたたび腰掛ける。さきほどよりは近く。手を伸ばせば届く距離。
網倉 霞
「少なくとも……愛妻家で娘思いって、聞いてる」
網倉 霞
「財布から嫁さんと娘さんの写真とか、出てくるんだ」
鏖田 ネイル
「家族写真とか、家にいっぱいあったから」
鏖田 ネイル
「行きたいって言ったら、連れてってくれた」
鏖田 ネイル
「流石に、ご家族が居ない時だけだったけど」
鏖田 ネイル
「あの子は、私のわがままを何でも聞いてくれたんだ」
鏖田 ネイル
「嫌な顔ひとつせずに、全部を受け止めてくれた」
鏖田 ネイル
「最初、私はものすごくひどい事をしたのに……それでも、全部、全部…………」
糸田柱
あなたと柱との関わりは、そうした家庭環境、そして巴の人格形成の、バックボーンだ。
糸田柱
あなたがいたお陰だと、その手紙には書いてある。
網倉 霞
「あの人の嫁さんに似てるって、よく言われたんだ」
糸田柱
この奇妙な関係、巡り合わせは、その事実関係に反して決して無秩序な組み合わせではない。
網倉 霞
鏖田の腰の杭を見て。なんとなく、出会ったばかりの頃のあの人を思い出して。
鏖田 ネイル
「……糸田さんにも似てるから。少しだけ」
鏖田 ネイル
この人物の前で”糸田さん”と呼ぶ事は多少の錯綜を伴いそうだが、呼び方を変える気にはなれなかった。
鏖田 ネイル
あの人に対する想いを、少しでも変えたくなかったし、変える可能性もつくりたくはない。
網倉 霞
初めてあの人と寝た時、翌日の身体の傷付き方がひどくて。シャワーがひどくしみたのを覚えている。
鏖田 ネイル
それは殆ど強姦のようなもので、あまりにも輝いていたあの子を傷つける事を目的としたもので。
鏖田 ネイル
終わった後のあの子は、噛み跡と引っかき傷だらけだった。
網倉 霞
「……あんたも、なんか。俺と初めて会ったときの糸田さんに似てる」
鏖田 ネイル
「……そんなに乱暴な人だったわけ?」
網倉 霞
何度か夜を重ねるうちに、だんだん手付きが、目の鋭さが、変わっていくのを感じていた。
網倉 霞
最後まで、終わった後は全身が痛かったけど。
鏖田 ネイル
……そうして、何でも許してしまうところは。
鏖田 ネイル
やはり、似ているのかもしれない。少しだけ。
網倉 霞
「それで、糸田さんが良くなるなら、よかったんだ」
網倉 霞
「…………え?」思わず聞き返してしまう。
鏖田 ネイル
聞こえ無かったようだったので言い直した。
網倉 霞
あの人が、巴はまだ小さいから、と言っていた気がする。
鏖田 ネイル
「なんでも……全部受け止めてくれたんだ。あれを取って、これを取ってとか、そういう些細なわがままから。日常の些細な愚痴も、胸の奥の薄汚い感情も、セックスも……」
鏖田 ネイル
「糸田さんの胸の中だけが私の居場所だった。息苦しい世界の中で、あそこでだけ呼吸ができた……」
鏖田 ネイル
「私は糸田さんから産まれたかった。本来はそうなる筈だったんだ…………」
鏖田 ネイル
牢獄に繋がれて、光のない瞳で毎晩犯されていた女ではなく。
鏖田 ネイル
あの人こそが、私の本当の母親だったんだ。
鏖田 ネイル
肉体年齢が9歳であることも、この鏖田という女には関係無かった。
鏖田 ネイル
ベッドの上で、麻痺が引けてきた身体を縮める。
網倉 霞
そうだ。目の前で。そしてあの人も、一緒に。
鏖田 ネイル
シーツをぎゅっと押し込めて胸のうちにいくら強く掻き抱いても。
鏖田 ネイル
少なくとも、この世界に留まる理由はもう無い。
網倉 霞
なにもなくなった金庫の中みたいに、からっぽだ。
網倉 霞
「……娘さんにも、挨拶くらいできたらいい」
網倉 霞
でもきっと、あの人は天国で嫁さんに会っているのだろう。
網倉 霞
あの人の顔を見て、娘さんに挨拶して。それから。
網倉 霞
それから、どこに行けばいいのか、わからずに。
鏖田 ネイル
「今、君は母親を求める幼子のような顔をしている」
鏖田 ネイル
「さては君も糸田さんの子供になる気だろう、いかん、いかんぞ。私は一人っ子になって母の愛を一身に受けるのだ」
網倉 霞
「麻痺、抜けてきたみたいだ。……よかった」
鏖田 ネイル
「一人っ子でだだ甘に育てられて一生独り立ちせずに……まぁ、半吸血鬼だからな」
鏖田 ネイル
「願望で話してもどうにもならない。努力するしかないだろう」
鏖田 ネイル
「うむ。私は死んだら間違いなく地獄に落ちるだろうが、そこで閻魔を殺すか脅すかすれば天国に行けるだろう。そうすれば糸田さんに会える。ロードマップも完璧だ」
鏖田 ネイル
毒はもう完全に抜けているようだ。ベッドの上で身体を起こして饒舌に語っている。
GM
夢から現実へと呼び覚ます、煩わしい目覚ましのように。
鏖田 ネイル
そのせいで随分と犠牲者が増えてしまったようだが。
鏖田 ネイル
数多の死体が作ってくれた時間で、最低限の体勢は整えたが……まだ本調子とは言い難い。
獣の女王
遠くで消防車のサイレンの音が聞こえる。ぐらぐらと燃える音も。悲鳴はもう聞こえない。
網倉 霞
その殺意に、身動きがとれなくなりそうになった。
獣の女王
それは何の変哲も無い一歩一歩だが、どうしても妨げられる気がしない。
網倉 霞
この場にはいくつかの罠が仕掛けられている。悲鳴が聞こえてから仕込んだものだ。
鏖田 ネイル
空気の味が変わったのを感じる。
手足の痺れが未だ僅かに残っても、ここから退く事は容易ではない。
獣の女王
獣の女王は、その技をあえて踏む。発動させる。
網倉 霞
先程の、あの人の残した爆発を思い出して。
獣の女王
そしてあなたの狙い通りに発動し、作用し、傷つけられない。
網倉 霞
あの爆発をものともしなかった化物が。こんな罠で倒せるはずがないのだと。
鏖田 ネイル
「この場所で戦ったほうが有利になる……と言えるような理由は」
網倉 霞
しかしそれでも時間稼ぎくらいにはなると祈っていた。
網倉 霞
ひゅう、と息を吸う音が、自分でも嫌になるくらいはっきりと聞こえた。
獣の女王
血を啜るのではなく、その表面を食いちぎった。
鏖田 ネイル
それを、止めに入るでもなく。なんら妨害も入れる事なく、静観していた。
鏖田 ネイル
一歩でもにじみ寄れば、その瞬間頭を吹き飛ばされだろうという確信が身体を硬直させていたから。
網倉 霞
痛い。痛くて、この痛みはあの人に噛まれたものよりずっと痛くて、
網倉 霞
そうだ、首は、いつもあの人に触れてもらっていた首が、
網倉 霞
首元まである服で隠して、自分だけのものにしていた、それが。
獣の女王
そうした機敏を、獣の女王は察していたわけではない。
獣の女王
ショートケーキの上のいちごくらいには思っていたかも知れない。
網倉 霞
鼓動に合わせて頭痛がする。深くはない傷から、血が溢れ出る。
網倉 霞
いっそ深く刺し殺してくれたらよかったのに、
網倉 霞
皮だけを剥がして、その獣はそこにある。それをまだ認識できている。認識できてしまっている。
網倉 霞
震えていて力のない腕が、獣の腕に触れる。
網倉 霞
顔が歪んでいるのは、痛みからのものだけではなくて。
網倉 霞
糸田さんとの繋がりは、もう眼前のこのモンスターの腹の中だ。
獣の女王
「お前も飲んでから食われるか? その懐の毒薬を」
獣の女王
糸田柱が最後に仕掛けた燃焼剤は、己の胃の中だ。
網倉 霞
さっきまで確かに、あの人が残した痕があったそこへ。
獣の女王
それはほとんど一瞬だった。小さじほどの水を、乾いたタオルで吸うよりも速やかに。
網倉 霞
痛くて、苦しくて、視界がぼやけて、意識が失われていって。
[ 網倉 霞 ] 余裕 : 8 → 2
[ 網倉 霞 ] 余裕 : 2 → 8
[ 網倉 霞 ] 血量 : 8 → 3
[ 網倉 霞 ] 血量 : 3 → 0
鏖田 ネイル
終始隙を伺っていた。血を吸っている間、ひと刺しでもできるタイミングがあればと。
獣の女王
窓ガラスが割れ、霞は夜の闇に投じられる。
鏖田 ネイル
無駄だった観察を止め、霞を負って自分も窓から飛び出す。
獣の女王
血を奪われて黒く帳を下ろしつつある霞の視界には、月の光を受けて散らばるガラスが満天の星空のように見えた。
網倉 霞
悪い夢なら、ここで覚めるべきだと思うんだけど。
獣の女王
満天の星をみるようなロマンチックなデートなど、糸田柱としたことはなかった。
網倉 霞
今日は満月で、ハロウィンで、星が綺麗で。
網倉 霞
あの人とこういうときにデートがしたかった。
鏖田 ネイル
その命日は、あの怪物の翌日であるべきだ。
鏖田 ネイル
網倉の身体を追うように、無数の硝子が舞っている。
鏖田 ネイル
その一つ一つを、杭で打ち払い、砕き、逸らす。
鏖田 ネイル
着地跡に落ちる追撃を全て排除して、それから、落ち行く男の横に着地する。
鏖田 ネイル
蹴りを入れる。木の緩衝材によって、動けなくなるような負傷は防いでいたはずだ。
鏖田 ネイル
骨の一本や二本は折れているかもしれないが、狩人ならそれくらいでも動ける。
鏖田 ネイル
「お前の足元に広がっている血溜まりを見ろ」
獣の女王
ホテルの炎が赤く、夜空の黒を際立たせている。
鏖田 ネイル
「そこに誰の血が混じっているのか思い出せ」
網倉 霞
汚れた手で、ベルトに括り付けてある注射器を取り出す。
獣の女王
獣の女王が自由落下をし、そのまま着地するまでのわずかな時間。
鏖田 ネイル
「……観察して分かったが、あれに付け入る隙は無い」
獣の女王
どん、という重たい音を立てて、着地する。
獣の女王
そんな大立ち回りも獣の女王にとっては、まったくありふれた日常だ。
網倉 霞
炎が宿るものとして、敵を討つものとして。
鏖田 ネイル
「つまり、どう足掻いても正面突破になる」
鏖田 ネイル
もう、自分たちには守りたい物なんてない。
鏖田 ネイル
それらは全て食い散らかされ、打ち砕かれてきた。
獣の女王
ここまでの数刻。それは猫が獲物をじゃれていたぶるのにも似て、まったくの遊びでしかない。
鏖田 ネイル
一つ一つ、丁寧に。子供が無邪気に、捕まえた昆虫の手足をもいでいくように。
鏖田 ネイル
巣を埋め立てられ、手足をもがれた蟻はそれからどうすればいいのか?
鏖田 ネイル
もうそれしかできないのだから、それをやるしかない。
網倉 霞
あの怪物にとってはきっとありふれたことで。
獣の女王
幸福や運命、些末なアビリティなど獣の女王に興味はない。
獣の女王
そんな悪あがきは、いくらか心を沸き立たせるものがある。
獣の女王
その"プライド"こそが、味わって飲み下すに値する。
網倉 霞
今の状況には、必死、という言葉が似合う。文字通り。
網倉 霞
全て失い奪われて、残るのは、それだけだった。
獣の女王
なんか流れでやっちゃいましたがデータ的には首筋を壊してます。
獣の女王
ist
BloodMoon : 先制判定指定特技表(1) > 《自信/社会5》
鏖田 ネイル
2D6>=8 (判定:見る)
BloodMoon : (2D6>=8) > 4[1,3] > 4 > 失敗
網倉 霞
2D6>=7 (判定:考える)
BloodMoon : (2D6>=7) > 3[1,2] > 3 > 失敗
獣の女王
1d2
BloodMoon : (1D2) > 1
獣の女王
2D6+2>=5 (判定:落ちる)
BloodMoon : (2D6+2>=5) > 9[3,6]+2 > 11 > 成功
獣の女王
4d6+9+5
BloodMoon : (4D6+9+5) > 18[3,4,5,6]+9+5 > 32
獣の女王
受けると余裕が8点あるので24超過、耐久力5なので4部位飛びます
鏖田 ネイル
2D6-10>=7 (判定:耐える)
BloodMoon : (2D6-10>=7) > 10[5,5]-10 > 0 > 失敗
獣の女王
brt
BloodMoon : 身体部位決定表(4) > 《利き脚》
獣の女王
brt
BloodMoon : 身体部位決定表(7) > 《攻撃したキャラクターの任意》
獣の女王
brt
BloodMoon : 身体部位決定表(10) > 《逆脚》
獣の女王
brt
BloodMoon : 身体部位決定表(7) > 《攻撃したキャラクターの任意》
鏖田 ネイル
避ける事もできない。受ける事もできない。
鏖田 ネイル
全身全霊を掛けるつもりでいた。決死の覚悟を持ち、何一つとして油断も無かった。
鏖田 ネイル
相手の戦力を、自分に想像しうる最大限に見積もっていた。
鏖田 ネイル
それでも、それよりも、この相手は強大だった。
[ 鏖田 ネイル ] 余裕 : 8 → 0
鏖田 ネイル
まるで童子が玩具で遊ぶような気軽さで。
鏖田 ネイル
肉が骨から引き剥がされていくのが自分で認識できていても、身体は何も動かない。
網倉 霞
まるで触ったら取れてしまった、とでも言うような。
鏖田 ネイル
痺れている訳でも、竦んでいる訳でもない。
鏖田 ネイル
本来知覚等できないような高速の動きの中で、自分の感覚だけが加速しているのだと。
網倉の動きが非常にゆっくりに見える事で気づいた。
GM
あれだけ諦めないという言葉を使ってきた巴が逃げてと言ったのは。
網倉 霞
それくらい簡単に、腕が、脚が、"外れる"のを見ていた。
鏖田 ネイル
スローモーションのように引き伸ばされた世界の中で、あの怪物だけが通常の速度で動いている。
鏖田 ネイル
なるほど、こういう状況の事を言うのだと。どこか冷静な思考の中で理解した。
GM
獣の女王に対抗しようとすること自体が、諦めることに等しい。
鏖田 ネイル
1d6>=7
BloodMoon : (1D6>=7) > 2 > 失敗
鏖田 ネイル
出目を2→6へと変更し、勝利の護符で+2 8。
鏖田 ネイル
四肢を失った瞬間に、まずそれを考えた。だから。
鏖田 ネイル
幸いにして、”付け根”は残っている。だからあとはそこに……
鏖田 ネイル
そのうちの2本、それが地面に垂直になった瞬間を狙って……
鏖田 ネイル
そこに自分の脚が生えていた場所が来るように動いて……
GM
1d2
BloodMoon : (1D2) > 1
GM
2d6>=5
BloodMoon : (2D6>=5) > 6[1,5] > 6 > 成功
[ 鏖田 ネイル ] 激情 : 1 → 0
GM
1d6
BloodMoon : (1D6) > 4
GM
フォロワーの攻撃は任意の特技で防御出来ます。
鏖田 ネイル
2D6-2>=5 (判定:耐える)
BloodMoon : (2D6-2>=5) > 7[2,5]-2 > 5 > 成功
獣の女王
獣の女王が殺意を持って動くだけで、それだけの余波が及ぶ。
獣の女王
凌ぐことができなければ、あなたは激しく叩きつけられ、全身の骨が砕けていただろう。
獣の女王
1d2
BloodMoon : (1D2) > 1
獣の女王
2d6>=7
BloodMoon : (2D6>=7) > 6[2,4] > 6 > 失敗
獣の女王
1d6
BloodMoon : (1D6) > 4
[ 鏖田 ネイル ] テンション : 11 → 14
獣の女王
1d6
BloodMoon : (1D6) > 6
[ 網倉 霞 ] テンション : 14 → 17
鏖田 ネイル
2D6-4+1>=5 (判定:耐える)
BloodMoon : (2D6-4+1>=5) > 5[2,3]-4+1 > 2 > 失敗
網倉 霞
ブロック入れさせてください……!!!!!
[ 網倉 霞 ] テンション : 17 → 20
[ 網倉 霞 ] 激情 : 0 → 1
網倉 霞
2D6>=5 (判定:蹴る)
BloodMoon : (2D6>=5) > 2[1,1] > 2 > ファンブル(【余裕】が 0 に)
獣の女王
衝撃波が炎上したホテルに及び、倒壊する。
鏖田 ネイル
少しだけでも相手に致命の可能性をと。
鏖田 ネイル
失った脚の代わり杭を突き刺し、失った腕の代わりに口に杭を咥え。
獣の女王
brt
BloodMoon : 身体部位決定表(3) > 《利き腕》
鏖田 ネイル
渾身の。全てを賭けて、あの時以上の一撃を狙って。
獣の女王
そうして活動できていたのは、あなたが耐えるばかりの人生だったからだ。
獣の女王
だからこの期に及んでも、まだその闘志は燃えている。
獣の女王
brt
BloodMoon : 身体部位決定表(9) > 《呼吸器》
鏖田 ネイル
代わりに口の辺りからごぽりと血の塊が吹き出して、胸に空いた穴からひゅっと間抜けな音が鳴った。
網倉 霞
一歩目を踏みしめる前に、鏖田が瓦礫に貫かれる。
鏖田 ネイル
捥がれた腕からも腹の穴からも、拍動に合わせて、もう存在しない身体の部位へ血を送ろうと流れ出ていく。
鏖田 ネイル
それでも最後まで、その最後までずっと獣の女王を睨みつけて────
鏖田 ネイル
1d6>=9
BloodMoon : (1D6>=9) > 2 > 失敗
鏖田 ネイル
────どうしてこのような事が起こるのだろう。
鏖田 ネイル
────死に際の脳が見せる幻影だろうか。
糸田巴
あなたの身に起きたあらゆる悲劇から、あなたを救うことはできない。
鏖田 ネイル
────あの子はたしかにそう言っていた。
鏖田 ネイル
────きっと、本心からそう願っていた。
鏖田 ネイル
────逃げて欲しいと、生きて欲しいと。そういう子だったから。
鏖田 ネイル
────だけど、それはできないんだ。
鏖田 ネイル
────それを叶える事ができるのは、私を生かす事ができるのは。
鏖田 ネイル
────世界で唯一人、貴女だけだったんだ。
糸田巴
あなたの手元には、ひとつの封筒が残される。
鏖田 ネイル
────だから、願わくば。願わくば。
鏖田 ネイル
────貴女が最期に願いを遺したように、私にも願う権利があるのならば。
鏖田 ネイル
────貴女に会いにいくための力が。
鏖田 ネイル
────奴を殺す事ができるだけの力が!
鏖田 ネイル
何を目的とする訳でもない。何ができると思った訳でもない。
鏖田 ネイル
散り散りになった、芋虫のようになった身体のまま、ただ藻掻く。
鏖田 ネイル
何かを叶えたくて、欲しいものが欲しくて。駄々をこねる幼児のように。
鏖田 ネイル
そしてその動きが、身体の下にあった封筒を、開いた。
網倉 霞
2D6+3>=5 (判定:撃つ)
BloodMoon : (2D6+3>=5) > 7[1,6]+3 > 10 > 成功
網倉 霞
1d6
BloodMoon : (1D6) > 4
網倉 霞
1d6 変調
BloodMoon : (1D6) > 1
網倉 霞
1部位+1d6+2(神経毒)+2(有刺鉄線)+2 (祟り目)+1D6(拳銃)+3(恐慌)
網倉 霞
1d6+2+2+2+1D6+3
BloodMoon : (1D6+2+2+2+1D6+3) > 6[6]+2+2+2+1[1]+3 > 16
網倉 霞
BRT
BloodMoon : 身体部位決定表(9) > 《呼吸器》
GM
2d6>=3
BloodMoon : (2D6>=3) > 7[3,4] > 7 > 成功
網倉 霞
付け入る隙は無い。まともな罠も効かない。
網倉 霞
致命的な毒が入っていて、触れれば死ぬ。入手が難しくて、誰にも見せていないそれ。
獣の女王
2D6+2>=5 (判定:塞ぐ)
BloodMoon : (2D6+2>=5) > 8[3,5]+2 > 10 > 成功
獣の女王
4d6+5+9
BloodMoon : (4D6+5+9) > 17[3,4,4,6]+5+9 > 31
[ 網倉 霞 ] 余裕 : 8 → 0
[ 網倉 霞 ] テンション : 20 → 30
[ 網倉 霞 ] 狂気 : 0 → 3
網倉 霞
2D6-11>=9 (判定:蹴る)
BloodMoon : (2D6-11>=9) > 11[5,6]-11 > 0 > 失敗
[ 網倉 霞 ] 激情 : 1 → 0
網倉 霞
地面に転がる。毒液が目に染みて涙が溢れる。
網倉 霞
けれど確かにぼやけた視界に、獣の口から血が溢れるのを見た。
網倉 霞
手足はがくがくと震えて、痺れていて、まともに動かせはしない。
網倉 霞
このこみあげてくる笑いがどういったものかも、わからないまま。
獣の女王
2D6+3>=5 (判定:落ちる)
BloodMoon : (2D6+3>=5) > 8[3,5]+3 > 11 > 成功
獣の女王
4d6+5+9
BloodMoon : (4D6+5+9) > 13[1,3,4,5]+5+9 > 27
[ 網倉 霞 ] 狂気 : 3 → 6
網倉 霞
2D6-9>=7 (判定:耐える)
BloodMoon : (2D6-9>=7) > 8[2,6]-9 > -1 > 失敗
獣の女王
brt
BloodMoon : 身体部位決定表(4) > 《利き脚》
獣の女王
brt
BloodMoon : 身体部位決定表(9) > 《呼吸器》
獣の女王
brt
BloodMoon : 身体部位決定表(3) > 《利き腕》
獣の女王
brt
BloodMoon : 身体部位決定表(4) > 《利き脚》
獣の女王
brt
BloodMoon : 身体部位決定表(8) > 《口》
網倉 霞
1D6+1>7
BloodMoon : (1D6+1>7) > 5[5]+1 > 6 > 失敗
獣の女王
原理はわからない。だがこの火薬の臭いは、あなたが使い慣れたもの。
獣の女王
あなたの仕掛けた爆薬が、あなたの内側で爆発した。
網倉 霞
どこのものかもわからない自分の肉が口から出てくる。
網倉 霞
それがどういう意味か、考える力すら奪われている。
網倉 霞
持ち上げた手が根本から焼けて腐り落ちる。
獣の女王
ist
BloodMoon : 先制判定指定特技表(4) > 《人脈/環境9》
網倉 霞
2D6>=6 (判定:捕らえる)
BloodMoon : (2D6>=6) > 6[1,5] > 6 > 成功
網倉 霞
2D6+3>=10 (判定:騙す)
BloodMoon : (2D6+3>=10) > 2[1,1]+3 > 5 > ファンブル(【余裕】が 0 に)
網倉 霞
使い慣れない手で、震える手で、その瓶の蓋に触れて、力を込めて開けて、
網倉 霞
口に、顔にかかって、残りはコンクリートの上に溢れる。
網倉 霞
――一緒に取り出されていた封筒に、毒液がかかって。
[ 網倉 霞 ] 狂気 : 6 → 10
GM
あなたには読めないはずの言語で書かれていた。
GM
いや、それをまともに見れるような状況ではないはずだ。
GM
拝啓、アリス。
愛しいアリス。
きみが目を醒ましてから100年の月日が流れました。
ぶっちゃけ、この国はもう駄目です。
兎は落下し、猫は干乾び、帽子は裂け、女王は壊れ、
大いなる暴力と死が、堕落した国に降り注ぎます。
残ったのは53枚のトランプのみ。
猟奇と才覚、愛によって救われるこの世界で
僕らは今も、新たなアリスを待ちわびています。
GM
身体を腐らせる死毒も、貫く鉄骨も、炎もなく。
鏖田 ネイル
手があり、脚がある。あの状況から地続きの世界ではない。
網倉 霞
「……っ、……あ、」先ほどと同じように、地面に転がっていて、
網倉 霞
しかし頬に当たる感触はコンクリートのものでも生ぬるい血でもなくて、
網倉 霞
両手を持ち上げる。濡れても腐ってもいない手がそこにある。
網倉 霞
「早く、探して、だって、」だって。今さっき一撃を与えて。
鏖田 ネイル
もっとも本気で気配を潜ませれば、あれは手の届く距離にいても気配もさせないだろうが。
GM
では、そうですね。あなたがたが周囲を見渡すと。
GM
いつだってギリギリの力で、幸福のために命を削ってきて戦ってきたあなたがたは。
GM
満月の下の地獄で、這うように生きてきたあなたがたは。
GM
この荒廃した世界をさまよい、己の運命を知る。
GM
『君が自分を大切にできるようになることを、私は望んでいる』
GM
獣の女王 - trivial / fatal - 2人の救世主
-
地の草木は何もかもが疲れ果て、地に伏したまま起き上がる力を持たない。
晴れる事のない空の下では、背を高く伸ばしたところで日光の恵みは得られないからだ。
-
項垂れる草木達と同じように、この世界の住民達もまた空を仰ぎ見なくなって久しかった。
-
そんな中、背をまっすぐと伸ばした一人の女が、荒れ果てた地を迷いのない足取りで進んでいた。
鏖田 ネイル
黒い外套を纏ったその女……鏖田ネイルという人物は、そのまま岩陰下にある洞窟の中に入っていった。
網倉 霞
洞窟。その近くには罠が仕込まれていることをあなたは知っている。
網倉 霞
それをすべて避けた者だけしかこの洞窟には入れない。
網倉 霞
男性とも女性とも判断がつかないような声が洞窟に反響する。
鏖田 ネイル
洞窟の内部には簡素だが居住空間が構築されている。
椅子に机、武器の保管棚、ハンモック。
鏖田 ネイル
その机の上に、いくつかのものが投げ出された。
採取を頼まれていた植物。街で調達してきた食料。
それから、血に濡れた6ペンスコイン。
鏖田 ネイル
「遭遇戦があった。二人組で一人仕留めたけど、一人逃した」
網倉 霞
ハンモックから降りる。やることがないときはハンモックに丸まって布団を被り、小さくなって身体を休めている。満足な食事もないし、狩人をやっていたときよりも体力の管理に気を配らなければいけなかった。
網倉 霞
頼んでいたのは数種類。どれも必要量揃っている。
鏖田 ネイル
「いや、どちらも10枚程度。ただ片方が相手を庇って時間を稼がれた……心の疵の力を使ったんだろう」
鏖田 ネイル
「だから、きっと残ったほうが復讐に来る。尾行はされてないだろうけど、次街に行く時は準備が要るな」
鏖田 ネイル
そう云って、血に染まったロングコートをそこらに放って、それからその下にある衣服も全部放り投げ、全裸になった状態でハンモックに身体を沈めた。
網倉 霞
薬草を掴んで、ぎゅっと握る。手の中でいくつも毒薬が作られる。
鏖田 ネイル
「女。得物はレイピア。年齢は14、身長は150。相方の死に様は四肢と頭部に杭」
網倉 霞
若い女ならベッドに誘うのは難しそうだな、と思う。
網倉 霞
若いなら壊死系の毒殺かな、薬草採ってきてもらって助かったな、なんて思いながら。
網倉 霞
洞窟を出る。あまり重くない足音が去っていく。
網倉 霞
あなたが目を覚ますのと、足音が洞窟に再び響くのは同時。
網倉 霞
「ただいま」血の臭いに、ミント系香水と柔らかなフローラルの香水の入り混じったような香りを纏って。
網倉 霞
「なんか、街にもうひとり……結構有名そうな救世主がいて」
網倉 霞
ふう、と溜息をついて上着を脱ぐ。噛み跡やキスマークが首筋にある。
鏖田 ネイル
「んぁ……」
女は網倉の声で起きたようだが、その有様は酷いものだった。毛布は蹴り飛ばされて半ばずり落ち、口元には涎の跡がある。
ハンモックから落ちていないのが奇跡的なくらいだった。
鏖田 ネイル
キスマークについては今更振れたりはしない。
よーやるわとは内心思っていても、表に出すまでの関心もない。
網倉 霞
いや、ちょっと都合が良すぎる噂だから話半分に聞いて、と付け足して。
網倉 霞
「救世主殺して、最後の一組になったら願いが叶うとか……」
網倉 霞
「場所も聞いた。明日館に行くんだ、一緒にどうか、って聞かれた。殺したけど」
網倉 霞
手には少し濡れて皺になっている招待状……の封筒。寝ぼけた視界にもおさまるようにひらひらさせる。
鏖田 ネイル
自分たちがこの世界に来た時も、確か……そうした封筒がきっかけだった筈だ。
網倉 霞
2d6+3=>7 判定:才覚
DiceBot : (2D6+3>=7) > 11[6,5]+3 > 14 > 成功
鏖田 ネイル
「転移範囲がどれくらいかわからないから、持てる範囲の装備と……あと服も」
網倉 霞
「今すぐ開けていい?」どう見ても服着てない鏖田を見る。
網倉 霞
「……あー」自分は全部持ってたから忘れてた。
網倉 霞
こっちはいつも服着てなくても色々仕込んでるし……
網倉 霞
封筒を机の上に……置きかけて、不安になって服のポケットにしまい。
網倉 霞
ざらついた大きい布を2、3枚掴んでハンモックに飛び乗る。
鏖田 ネイル
正直得体の知れなさ過ぎる噂だが、やることがどうせ殺し合いなら問題はない。
鏖田 ネイル
この世界に来てからこれまで20人以上を殺し、コインを奪う度に力が増したのを感じた。
だが、その力が以前とは別種の……というより、別系統の力だとも感じていた。
鏖田 ネイル
狩人のそれとは別系統のこの力をどれほど積み重ねれば……あの怪物に届くのか。それが計れない。
鏖田 ネイル
だから、どうしても幾許かの焦りと、苛立ちとか溜まっているのを感じてしたし……その状況でなにか他の道が見つかるのなら、多少怪しかろうが飛びつく貪欲さはあった。
鏖田 ネイル
「お前…………臭いぞ。寝る前にためた水を被ってこい」
網倉 霞
「えー……水は浴びたんだけど……」でも言われてみれば水を浴びたあとに人を殺したような気がしてきた。
網倉 霞
もう曖昧だ。昨晩食べたものが思い出せないのと同じように、いつ殺したかなんていちいち覚えてはいない。
鏖田 ネイル
まぁ、明日くらいには回復するだろうからいいが……
鏖田 ネイル
「とりあえずそれでいい。装備の準備はこっちでしておく」
鏖田 ネイル
片方が寝ている間、片方は起きている。何度か取り逃がした救世主が出てからは、そういう取り決めだ。
網倉 霞
「……べつに、そんなに体力使うもんじゃないし……」
網倉 霞
行為よりはずっとマシだ。コインが増えてからは、特に。
網倉 霞
匂いをまとうこと。男を誘惑すること。身体から毒を出すこと。どれもが、ここに来た頃よりうまくなっている。……とくに誘惑することなんかは、もう自分の本来の性別がどちらか、度々わからなくなるくらいに。
網倉 霞
そのままハンモックの上でちいさく丸まる。
網倉 霞
あまり眠れるほうではないけれど、一人のハンモックの中が一番マシだ、と思う。
鏖田 ネイル
カチャカチャと、装備を弄る音が洞窟の壁に僅かに反響する。
鏖田 ネイル
使用する興奮剤の状態を確認する時の、容器の音。
刃物で、木の杭の表面を削る音。
鏖田 ネイル
数を確認し、ベルトにセットして、それからもう一度点検をする。
網倉 霞
目を閉じて、眠ることなく、それをきいていた。
網倉 霞
あの人はいつも終わったあと、眠る前にそうして、装備をたしかめていた。
網倉 霞
やけにコインを持っていた救世主はベッドの上で、熱を持った息を吐き出しながらそう言っていた。
網倉 霞
そこにいけば、ようやく果たされるのだろうか。
網倉 霞
果たされなかったら、その時はまた次を探すだけ、だけど。
網倉 霞
首筋と背中が痛む。求めているのはこれではない。あの人がいつもしてくれていた場所には、痕はない。
網倉 霞
まぶたの下、暗闇のなかで、それだけを想う。
鏖田 ネイル
背後で身じろぎする気配を感じながら、作業を続ける。
鏖田 ネイル
こうした取り決めがある以上、お互いの睡眠事情には否応なく詳しくなるが、2人ともあの日以来安眠できた日はない。
鏖田 ネイル
だが、それも当然の帰結だ。復讐者は眠れない。
鏖田 ネイル
身体を休める事は出来ても、本当の意味で眠る事ができる日はもう来ない。
鏖田 ネイル
求めているものが、思わず口から漏れる。あの人がいまここに現れて、自分を抱きしめてくれたら、自分は何もかも投げ出して今すぐ眠ることができるだろう。
鏖田 ネイル
でも、できない。心に空いた穴は塞がらない。
鏖田 ネイル
せめてできるのは、その穴から流れて止まらない血の中に、他人の血を混ぜるだけだ。
鏖田 ネイル
自分に穴を穿った怨敵の胸に、自分と同じ穴を穿つ日を夢想するだけだ。
鏖田 ネイル
件の催しに、いったい何人の救世主が参加するのかは知らないが。
その全ての屍の上に立つための……決意でもなく。決心でもなく。覚悟でもなく。
そんな不要な、役にたたないものではなく。
鏖田 ネイル
冷酷な計算と準備を進めて、女はその前夜を過ごした。