Dead or AliCe
『16人の救世主』

プロローグ Room No.4

獣の女王 - trivial / fatal - 2人の救世主
月の色
夜の味
暗闇の手触り
傷の熱
ありきたりな日常のひとつ / 決して忘れることはない
GM
獣の女王 - trivial / fatal - 2人の救世主
GM
* * *
GM
それはあなたの目の前にいる。
GM
「おいおい、もうちょっとくらい楽しませてくれよ」
GM
「狩人」
獣の女王
素足で倒れている死体を転がすように蹴る。
獣の女王
変身が解けた魔法少女、糸田巴。
獣の女王
そこにはもう、息づかいはない。
獣の女王
巴が死んでいるのを確認すると、次につま先でつついたのはネイルだ。
鏖田 ネイル
「がっ…………!」
鏖田 ネイル
つつかれた、という程度の感覚だったのだろう。
鏖田 ネイル
だが、こちらとしては重機で殴りつけられたような衝撃だった。
獣の女王
「お、まだ生きてたか」
鏖田 ネイル
口から血の塊を吐き出し、霞んで消えゆきそうだった意識がわずかに明滅する。
鏖田 ネイル
何が起きているかはわかる。目の前に何者がいるかも、そこで誰が死んでいるかも。
鏖田 ネイル
だが、何もできない。指先一つも動かせない。
獣の女王
「結構結構。獲物は活きがよければよいほどいいからな」
網倉 霞
血でまともに見えない目を開けて、腕の力だけで近付いて、同様に横たわっている目の前の男の手を掴んだ。
網倉 霞
その手の温度はとっくに空気と同じで、硬かった。
網倉 霞
声を出そうとして、大きく咳き込んで、砂と血を吐く。
網倉 霞
ひどく耳鳴りがする。
GM
夜が人の形をとっているかのように、男はただそこに”ある”だけだ。
GM
いや。人の形というには不完全だ。
GM
下半分がないのだから。
網倉 霞
見上げる。このひとを、このようにした怪物を。
獣の女王
「そうだ、抗え」
獣の女王
「そいつの仇はここにいるぞ」
網倉 霞
怪物。化物。モンスター、魔女、吸血鬼――どの言葉でも形容できないような、言い表すことさえ不可能なような、そういったもの。
網倉 霞
抗う。どうやって? その方法すら見出だせないくらい、圧倒的な力の差だった。
網倉 霞
そうだ、仇だ、殺さなくてはならない、わかっているのに。
獣の女王
「そうしなければ、死ぬだけだ」
獣の女王
首根っこを掴み、霞を持ち上げる。
網倉 霞
自分の体重で気道が塞がる。
獣の女王
頸部に圧力が掛かれば血の流れが妨げられ、否応なく己の脈拍を意識させられる。
網倉 霞
もがく。もがいたつもりだ。それがどの程度の力か、認識することはできないが。
獣の女王
あなたは抑留された血で頭が熱く膨らむような感覚を覚える。
網倉 霞
耳鳴りがする。耳元で心臓が鳴っている。
獣の女王
獣の女王は目を細めて、その手を――
糸田巴
「――だ、」
糸田巴
「ダメ――ッ!!」
糸田巴
すさまじい閃光があたりを包み込む。音もなく。
鏖田 ネイル
目を見開く。その声が聞こえた事に。その声の主が動いた事に。
そして、それから起きた事に────
網倉 霞
閉じかかっていた目を開く。視線を声のするほうへ向けようとして、
糸田巴
「逃げて! 早くッ!」
糸田巴
何もかもが白く染まった世界の中で響く声は、確かにさきほどまでそこで死んでいたはずの、糸田巴。
糸田巴
霞は衝撃を受ける。地面に投げ出されたのだとすぐにわかる。
糸田巴
*最終判定を宣言。目標、獣の女王。部位ダメージ。
糸田巴
ast
BloodMoon : ランダム全特技表(2,10) > 頭部10:叫ぶ
鏖田 ネイル
「ま、て…………」
鏖田 ネイル
ダメだ、それは。それはダメだ。
指一本動かせない身体で、それでも血の海の中で這いずるようにもがく。
糸田巴
「ごめんね、鏖田さん、これが私の精一杯みたい」
鏖田 ネイル
腹部の裂傷から何かがはみ出そうだ。それがアスファルトと擦れて凄まじい激痛が流れ込む。それでも、そんな事を気にしている余裕もない。
鏖田 ネイル
「やだ、や、だ………………わた、しは」
鏖田 ネイル
死ぬなら、私の方が先の筈だ。
糸田巴
「大丈夫だよ。大丈夫」
鏖田 ネイル
先程、目の前でその細い身体が赤く染まった時に、その絶望は一度味わった。
鏖田 ネイル
それをもう一度、今度は目の前で、何が起こるか認識出来る状態で、繰り返されようとしている。
鏖田 ネイル
止めたい。
糸田巴
糸田巴はいつだって、そんなふうに根拠のない『大丈夫』を繰り返し口にしてきた。
鏖田 ネイル
その『大丈夫』に、今まで縋りついてきた。
鏖田 ネイル
まともに呼吸ができない人生の中で、その言葉が作る聖域の中でだけ息継ぎをして、今まで生きてこれていた。 
糸田巴
「逃げて、生きて」
鏖田 ネイル
なのに、なのにどうしてそんなことを言うの。
鏖田 ネイル
貴方が居ないと、私は呼吸ができない。
鏖田 ネイル
せめて私も連れて行って。
鏖田 ネイル
どれだけ泣きそうになっても、涙をこぼす体力すらも無い。
糸田巴
「いつだって、わたしは、鏖田さんの味方だから」
網倉 霞
鏖田の腕を掴む。掴んで、引っ張る。
糸田巴
「ありがとう、霞ちゃん」
網倉 霞
巴が、……あの人の娘で、あの人が愛している巴が、そう言うなら、そうするしかないと思った。
網倉 霞
自分がどのようにして立ったのかも、どうして他人を起こせたのかもわからないくらい、全身が痛くて、それでも。
網倉 霞
「……はや、く、」
糸田巴
「鏖田さんをよろしくね」
網倉 霞
「…………っ、」
糸田巴
2D6>=7 (判定:閃く)
BloodMoon : (2D6>=7) > 10[5,5] > 10 > 成功
糸田巴
BRT
BloodMoon : 身体部位決定表(2) > 《脳》
糸田巴
甲高い音が鳴る。
糸田巴
全身全霊。文字通り、魂を燃やす、最後の一撃。
獣の女王
閃光の中で、誰に見留められることもなく、獣の女王は笑う。
糸田巴
すさまじい爆発音。
GM
そうしてあなたがたは、その場を逃げおおせた。
GM
まだ空には、満月が掛かっている。
GM
* * *
GM
ではあなたがたは資材倉庫に辿り着きました。
GM
いつのまにか、身体がちゃんと動くようになっている。
GM
逃げて、生きるために。
鏖田 ネイル
「どうして、どうして、どうして…………」
鏖田 ネイル
身体は動くようになった。でも、心は少したりとも動かない。
鏖田 ネイル
うつむき、臥せ、涙を零し、悲しみから目を逸らせない。
網倉 霞
鏖田をぼんやりと視界におさめながら、段ボールの山にもたれかかって座る。冷たいコンクリートの床の感触がする。
GM
月光のなかで舞い上がった埃が揺れている。
鏖田 ネイル
どうしてこうなったのか。どうしてあの人が死んでしまったのか。どうして自分が生きているのか。
鏖田 ネイル
どうして置いていかれてしまったのか。
鏖田 ネイル
何もわからなくて、ただ子供のように泣いている。
網倉 霞
自分もこの目の前の女みたいに泣けたら、多少はマシになるだろうか、と思った。
網倉 霞
血が止まったのと一緒に、涙を出す機能を忘れたみたいだ。
網倉 霞
どうして。自分だってずっと思っていた。思っている。
網倉 霞
「…………逃げるか、……お前だけでも」
GM
あなたがたが見たのは、被ったのは、ただただ純粋な暴力の嵐。
鏖田 ネイル
「逃げる…………どこへ…………?」
鏖田 ネイル
逃げ場所は、たった今さっき失ったばかりだ。 
GM
獣の女王。その名前は狩人ならば聞いたことがあるはずだ。それは生きている伝説で、災害だった。台風や地震と同じようなものだとして、語り継がれている。
網倉 霞
「……わからない」行く宛がないのは、たぶん同じ。
鏖田 ネイル
「生きる場所が無くて、息ができる場所が無くて。あの人の傍だけが、それだけが私が居る事を許される場所だったのに」 
GM
獣の女王、女王、獣、The Beast、B案件――。
網倉 霞
世界の全てが敵だった。
網倉 霞
あの人を除いて。
網倉 霞
「……ああ」
網倉 霞
「そうだな……」
鏖田 ネイル
「もう、もう無くなってしまった。安らげる場所も、生きる場所も、この世界で唯一、たった一人だけ生きる価値のあった人が…………」
網倉 霞
「…………」
網倉 霞
安らげる場所、生きる場所。そうだなと思う。そうであったなと。
網倉 霞
この女のように言語化できないのは、まだ認められていないからなのかもしれない。
網倉 霞
きっと今日を生き抜いたところで、明日から生きられはしないのだろうし。
網倉 霞
「……俺は」
網倉 霞
「あの獣を殺したいと思う」
網倉 霞
自分の命と引き換えでもよくて。むしろそっちのほうがいい気がして。
鏖田 ネイル
漠然と。
鏖田 ネイル
思うところがあった。
鏖田 ネイル
だからそれを口にした。
鏖田 ネイル
「私は、死ぬしかないと思う」
鏖田 ネイル
理論だった思考等なにも経ていない。だけどそれが結論だと感じていた。
鏖田 ネイル
生きる事ができる場所がなくなったし、生きる理由もない。
鏖田 ネイル
「だけど」
鏖田 ネイル
「…………だけど」
鏖田 ネイル
「死ぬにも、順番がある」
網倉 霞
「……そうだな」
網倉 霞
口にされた結論と、考えていたことは同じだった。
網倉 霞
あの獣を殺して、自分も死ぬ。
鏖田 ネイル
「あいつを殺さないと、死ねない」
鏖田 ネイル
だって、それは間違っているから。
鏖田 ネイル
あの人を殺した奴がまだ生きていて、なのにそれを放っておいたまま、あの人に会いに行く事はできない。
鏖田 ネイル
死ぬために、殺さないといけない。
網倉 霞
頷く。
GM
会えば終わり。戦えば死ぬ。獣の女王の被害報告は、天気のニュースのように時折狩人のネットワークに流れてきた。
網倉 霞
あの人を殺した獣が、生きていること。それはきっとよくないことなのだと思った。
鏖田 ネイル
「貴女、名前は」
鏖田 ネイル
この人物とは先程出会ったばかりだ。共に居た人は…………糸田さんの父親だとは、知っているが。
網倉 霞
「……網倉。網倉霞」
鏖田 ネイル
「私は鏖田。鏖田ネイル」
鏖田 ネイル
「きっと、私達の目的は同じだと思う」
鏖田 ネイル
「なら、協力できる。違う?」
網倉 霞
「……そうだな」
網倉 霞
「あの獣を殺す。そうだよな」
鏖田 ネイル
「ええ、何を使ってでも」
鏖田 ネイル
「確実に、絶対に、私達が死ぬ前に」
鏖田 ネイル
「殺す」
鏖田 ネイル
それは退路を失った者の決意だった。
網倉 霞
「ああ」
GM
与えられた祈りは、祈りでしかない。
GM
言葉では、想い出だけでは暖まらないからこそ、寄り添ってきた。
GM
それはもはや、遠い。
GM
心に出来た疵を刃にして、あなたがたは立ち上がる。
GM
まだ凶器は握られている。ならば。
GM
あるいは殺すことができるかもしれない。
GM
* * *
鏖田 ネイル
関係
糸田 巴→信仰3
網倉 霞→同類1
網倉 霞
糸田 柱→悲恋 3
鏖田 ネイル→同類 1
獣の女王
支配力
孤高 地位 強度5 城に憩えど築かず 税徴らずに歯牙にて貪る
荒廃 日常 強度3 征服は荒廃にて果たし
跋扈 退路 強度3 冠戴かずに赤を肌に纏う
獣の女王
フォロワーはデータ的には存在しますが、概念です。獣の女王は一人です。データ的に干渉するときはフォロワーA,Bで指定してください。
獣の女王
* * *
獣の女王
2d6
BloodMoon : (2D6) > 9[3,6] > 9
網倉 霞
1d6
BloodMoon : (1D6) > 4
鏖田 ネイル
1d6
BloodMoon : (1D6) > 6
鏖田 ネイル
では手番を頂きます。
鏖田 ネイル
孤高に対して狩猟判定。
鏖田 ネイル
ST
BloodMoon : シーン表(9) > 生活の様子が色濃く残る部屋の中。誰の部屋だろう?
鏖田 ネイル
倉庫の中、殺意を研ぎながら思い返す。
鏖田 ネイル
あの瞬間。あの暴風と遭遇した瞬間を……
鏖田 ネイル
私は糸田さんと一緒にとある魔女を追っていた。
いつものように、私が事前に手下は始末して。
鏖田 ネイル
その住居を突き止め追い込み、後はそこに突入するだけだった。
鏖田 ネイル
そうしたら、そこに……魔女の仲間だったヴァンパイアと……その網倉を含めた2人が居た。
GM
魔女の名前は『ぬいぐるみの魔女』。
GM
暖かく、柔らかく、決してあなたを一人にしない。
GM
小さい女の子の姿をとるが、その本質は、彼女の抱くぬいぐるみだ。
GM
一方、彼女を守る吸血鬼の少年は、元々孤児院にいた少年だ。
GM
吸血鬼の力を行使して、奪った彼の城に、ぬいぐるみの魔女が逃げ込んだ、という状況だった。
GM
たくさんのぬいぐるみがある。
GM
そのいくつもに、咬みあとがついている。
GM
血をたっぷりと吸い込んだ、大きなぬいぐるみは。
GM
もともとは人間だったものだ。
GM
「キミたちが、この子をいじめてた狩人か」
GM
少年は鋭い爪の生えた手を大きく開き、ぬいぐるみに囲まれて震える魔女の前で立っている。
鏖田 ネイル
「……この状況は」
鏖田 ネイル
予想外の事があまりにも多い。
GM
「この子はおれが守る」
GM
「夜は、おれたちのものだ」
鏖田 ネイル
まず、魔女が吸血鬼と手を組んでいた事。その上で友好な関係と目される事。
鏖田 ネイル
そして、それ以上に予想外だったのが……吸血鬼を追っていたと思しき狩人2人。
網倉 霞
「……魔女みたいな血戒だと思ったが」
網倉 霞
「本当に魔女と組んでいたのか」
鏖田 ネイル
その片方には、写真だけだが見覚えがある。
糸田さんは私以上に驚いている事だろう。
糸田巴
「お、おいつめたぞー」完全に棒読みなのは、隣に、お父さんがいる!
糸田巴
えっお父さん!?
糸田巴
え!
網倉 霞
小さな吸血鬼と魔女を見下ろす。
網倉 霞
やけに棒読みな魔法少女がいるなと思って、そちらを見て。
網倉 霞
二度見する。
糸田巴
ばれてないばれてない。私は魔法少女! 大丈夫!!
網倉 霞
それから隣の狩人――糸田柱を見上げる。
網倉 霞
顔色をうかがう。
糸田柱
「巴」
糸田巴
「あー!! あーー!! 聞こえない!!」
糸田柱
「巴。話は後だ。今はモンスターを」
網倉 霞
なんとなく気まずくて目をそらす。
鏖田 ネイル
「……そうですね、必要な対処を優先しましょう」
網倉 霞
「……ああ」
鏖田 ネイル
まさかこんなところで義祖父さんと出くわすとは思っていなかったが……
GM
「なんか訳ありかと思ったら、あんたら、家族か」
GM
「ぼくたちへのあてつけか?」
糸田柱
左手に杭、右手にハンマー。吸血鬼を殺すためのもの。
糸田柱
「私は対象に対して興味を持たないようにしている」
糸田柱
「ただ、殺すだけだ」
鏖田 ネイル
こちらも無言で杭を取り出す。
獲物の上、信条までも被るとは思っていなかったが……
糸田柱
速やかに杭を床、壁に打ち付ける。
鏖田 ネイル
ただ、ここまで同じではなくて良かったと、半吸血鬼である己の血を杭の先端に垂らしながら思う。
鏖田 ネイル
血に濡れた杭は、そこから発火を始める。
糸田柱
特別なルールで配置された杭は陣を形成し、結界を成す。
糸田柱
魔を祓うための結界。
糸田巴
ふう、と深呼吸をする。
網倉 霞
小さな魔法少女を見る。写真で見たことがある、幼い顔立ちの少女。
網倉 霞
それから、黙って注射針を取り出す。
網倉 霞
「……ここ、色々仕込んであるから、踏むなよ」
網倉 霞
魔法少女に囁いて。
糸田巴
中空に手をかざす。キュラン、キュランと超常的な効果音、輝きとともに、無から長い得物を作り出す。まるでオモチャのような槍。
糸田巴
「うん。ありがとう」
糸田巴
笑顔で応える。
糸田巴
「ごめんね、吸血鬼さん」
糸田巴
槍を深く構える。
糸田巴
「でも、わたしたちがちゃんと、お星様に還してあげるから」
糸田巴
「ひとりには、絶対にしない」
鏖田 ネイル
ほほが緩むのを感じる、あの人は”いつも通り”だ。
鏖田 ネイル
この世界に渦巻くあらゆる汚泥におかまいなく、残酷な程輝く。
網倉 霞
この子があの人の娘か、と。思って。眩しさを感じて、目を細める。それは見た目だけではなくて。
網倉 霞
ちいさなモンスター達に向き直る。
網倉 霞
俺はどちらかというと、こいつら側なのだろうな。
GM
ぬいぐるみの魔女が狩人らを睨む。
GM
ぬいぐるみが動き出し、あなたがたに襲いかかる。
鏖田 ネイル
微笑みながらも、視線は外していなかった。
GM
「みんな! あの子たちを追い払って!!」
鏖田 ネイル
汚泥がこびりついたところで、別にあの人はものともしないし、輝きが鈍るなんて事も無いけれど。
鏖田 ネイル
あの人にこびりついていい汚泥は、今は私だけだ。
網倉 霞
構えていた注射器を投げる。
網倉 霞
棘のついたワイヤーが括り付けられている注射針。
鏖田 ネイル
杭を放つ。ただ先端に血が塗られただけの白木の杭。
網倉 霞
棘がぬいぐるみに引っかかり、切り裂いて、血の色の綿が飛び散る。
鏖田 ネイル
杭は突き刺したぬいぐるみを端から燃やし尽くしていく。
鏖田 ネイル
”元が何であったか”等は気にするべくもない。
糸田柱
鏖田の打込んだ杭にハンマーを更に打ち付ける。【二度打ち】。
鏖田 ネイル
そういうのを気にしながら戦って生き残れるのは、あの人だけだ。
糸田柱
結界の領域内に、燃やしたぬいぐるみの使い魔を固定する。
糸田柱
「いい術だな」
糸田巴
槍を放つ。吸血鬼の少年はそれを避ける。
糸田巴
が、そちらはフェイント。
糸田巴
利き手を槍から離して、吸血鬼の手を取り、踊るようにステップを踏み。
糸田巴
霞の張り巡らされた罠へ導く。
網倉 霞
床が爆発する、床上に張り巡らされていたワイヤーが吸血鬼の足を切る。
網倉 霞
よろめいた吸血鬼にさらに爆発が二、三度続いて、ワイヤーで傷付けられた足に毒液がかかる。
GM
「あっ、ぐっ」
網倉 霞
それを冷めた目で見ている。
鏖田 ネイル
それを好機と見る。
GM
爆発によって放たれる金属片が吸血鬼を貫く、ワイヤーが肉を断ち、傷口を毒が灼く。
網倉 霞
倒すべき対象に感情移入しすぎることを、柱に怒られて。それから、距離を置くすべを教わって。だから。
鏖田 ネイル
吸血鬼の少年が罠に罹っている。魔女の方もそちらに気を取られている。だからその隙に、魔女に向かって杭を放つ……
鏖田 ネイル
その一連の動作を、”吸血鬼の少年から見えるように”行う。
糸田巴
折り重なる罠の連弾の間も、巴は決して手を離さず、同じようにステップを踏み続ける。
糸田巴
しかし決して傷つかない。
糸田巴
手放さない。
網倉 霞
この少女は罠の隙間に足を置いている。それが見て取れる。
網倉 霞
さすがあの人の娘だ。
GM
「エリっ!」吸血鬼の少年は己が傷ついていることも、手を掴まれていることも視野に入れていない――いれることができない。
GM
ぬいぐるみの魔女は貫かれる。
GM
悲鳴。
鏖田 ネイル
魔女は殺す。
鏖田 ネイル
その過程で吸血鬼の体勢も崩せるならば、そうしない理由は無い。
糸田柱
モンスターは滅ぼさなければならない。
糸田柱
悲劇を一つでも食い止める。
鏖田 ネイル
おそらく次が来る事を予想して、杭の線上から少し身を離した。 
網倉 霞
吸血鬼が魔女を見て動き出そうとするのと、霞が吸血鬼の少年の背後に回って注射針をその首筋に刺すのは、同時だった。
糸田柱
【二度打ち】。そして【燃焼材】。
鏖田 ネイル
それを見届けてから、【発火】。
糸田柱
炎が爆発的に燃え広がる。
糸田柱
それはモンスターの血をも灼く。
網倉 霞
注射針の中には毒液。対モンスター用の神経毒。
糸田柱
すべてを灰に還すまで。
糸田巴
星に還すまで。
糸田柱
戦わなければならない。
糸田巴
絶対に諦めたりしない。
GM
GM
無数のぬいぐるみも、血の臭いも。
GM
何もかもが焼け焦げている。
GM
魔女と吸血鬼は横たわり、薄く開いた目で天井を見ている。
GM
ふたりいればそれでよかった。
GM
ふたりならんで、こうやって、天井の蛍光灯を眺めていれば。
GM
それでよかったはずなのに。
鏖田 ネイル
「さて、どっちからとどめを刺すか。それとも同時にやる?」
糸田柱
「私がやろう」
糸田柱
そう言って巴を一瞥した。
網倉 霞
「……糸田さん」
鏖田 ネイル
「……では、任せます」
鏖田 ネイル
その意図するところを汲み取って、自分は糸田さん……どちらも糸田さんだが、私の太陽である方……の元へと歩み寄る。
糸田柱
「……こんな男だが、これでも私は、人の親なんでね」
鏖田 ネイル
「私達は、この家に他の犠牲者がいないか探しに行きましょう」
網倉 霞
愛妻家で娘思い。そういう人だ。糸田柱という人は。
糸田柱
「娘が手に掛けるところを、あまり見たくはない」
糸田柱
杭を取る。ハンマーを握りしめる。
糸田柱
吸血鬼の胸にその先端を押し当て、
糸田巴
「パパ――」
糸田巴
「危ない!」
獣の女王
何もかもが一瞬だった。
獣の女王
月が差している。
獣の女王
あったはずの天井はそこになく、
獣の女王
杭を打込もうとしていた糸田柱もそこになく、
獣の女王
そこに立っている。
網倉 霞
「え、」声を発したのと、全てが終わったのは同時。
鏖田 ネイル
「──────?」
鏖田 ネイル
一切の気配を感じなかった。
獣の女王
「ん?」
獣の女王
「なんだ、おまえら」
網倉 霞
「――糸田、さ、」血の痕が続いているその先を、ゆっくり、見る。
網倉 霞
脳が理解を拒んでいる。
獣の女王
「お前らも、食い殺されたいのか」
網倉 霞
脳裏に「B」という単語がよぎる。
網倉 霞
B案件。
鏖田 ネイル
「────!!」
鏖田 ネイル
状況を理解したとも言えないまま、反射的に手を動かす。
鏖田 ネイル
とにかく危険な存在で、おそらく糸田さんにも危害が及ぶ。
網倉 霞
その名前は知っていた。知っていて、けれど自分達なら倒せるのだろうと、思っていた。
網倉 霞
倒せない敵なんかこれまでいなかったのだから。
糸田巴
「だめ、鏖田さん」
糸田巴
「これとは、戦っちゃダメ――!」
鏖田 ネイル
笑ってしまいそうな程理不尽なこの状況で:……いや、実際、笑ってしまいそうだ。
絶望に似た感情が胸と足を震わせている。
鏖田 ネイル
それでも、自分は止まる訳にはいかない。後ろにあの人がいるのなら……
糸田巴
父が目の前で踏みしめられている、倒れているにもかかわらず。
糸田巴
はじめに案じたのは、鏖田のことだった。
鏖田 ネイル
狩猟判定。
鏖田 ネイル
地位に対して、笑うで判定。
鏖田 ネイル
組み合わせて、【怪物性】を使用。
鏖田 ネイル
2D6+3>=6 (判定:笑う)
BloodMoon : (2D6+3>=6) > 8[2,6]+3 > 11 > 成功
鏖田 ネイル
駆け出した勢いのまま、【魔法剣】を纏わせた杭を渾身の力で打ち込む。
糸田巴
「鏖田さん!!」
鏖田 ネイル
だが────
鏖田 ネイル
「硬い…………!?」
糸田巴
今、このとき。判断を過たなければ。
鏖田 ネイル
まるで鋼鉄を打ったような手応えだ。ダメージが通っているのかまるで分からない。
糸田巴
逃げることも出来た。
糸田巴
それはわかっている。
糸田巴
けれど
糸田巴
絶対に一人にはしない。
糸田巴
だから。
糸田巴
糸田巴は、槍を放つ。
獣の女王
鏖田に対応し、反応が遅れた。
獣の女王
「……狩人か」
糸田巴
それに、わたしは諦めたりしない。
糸田巴
二人だったら、あるいは。
糸田巴
「鏖田さん、私に合わせて」
糸田巴
【一番槍】。
鏖田 ネイル
その言葉に、思考を仕切り直す。
鏖田 ネイル
焦りから行動してしまったが、そうだ。目の前の相手がいかにも強力ならば、二人で力を合わせる必要がある。
鏖田 ネイル
そして、2人で力を合わせれば、きっと……
糸田巴
槍が光を放つ。この槍は、平和を願うみんな想いを届けるためのもの。
糸田巴
心の殻を打ち破り、深く。
鏖田 ネイル
巴との【連携攻撃】となるように動きを併せる。
糸田巴
獣と称される怪物にも、あるいは。
糸田巴
想いは届くかもしれない。
糸田巴
槍が獣の女王を穿つ。
糸田巴
鏖田の付与した血液が炎を上げて、より強い光を伴う。
獣の女王
孤高 地位 強度5→3
獣の女王
獣の女王は、巴を蹴り飛ばした。
獣の女王
その勢いで槍が抜ける。
獣の女王
「くだらないな」
獣の女王
「だがなかなか美味そうだ」
獣の女王
そして真っ直ぐ、近づいてくる。
鏖田 ネイル
「なっ…………」
鏖田 ネイル
呼吸が止まる。今、蹴り飛ばされた巴の身体が異常な変形をするのが見えた。 
鏖田 ネイル
その一瞬で頭が真っ白になって、その一瞬の間にもうあれは自分の目の前にいて──────
鏖田 ネイル
[ 鏖田 ネイル ] テンション : 8 → 11
[ 鏖田 ネイル ] 激情 : 0 → 1
GM
* * *
GM
【幸福】の【強度】を減少させる効果は倍の効果量とする。
GM
* * *
GM
あなたにはわかる。
GM
糸田巴は、死なずに済んだはずだった。
GM
あのとき、動かなければ。素直に逃げていれば。
GM
あるいはそれでも、彼女が一人、逃げていれば。
GM
糸田巴は死ななかった。
GM
あなたが今、逃げ出して、倉庫の片隅で息を潜めていられるのは。
GM
すべて糸田巴の犠牲の上に成り立っている。
獣の女王
それを知らしめるように。
獣の女王
鏖田は気付くだろう。
獣の女王
糸田巴の血のにおいを。
獣の女王
フレグランスのように、それは纏っている。
獣の女王
すぐそこで。
獣の女王
血だけではない。まるごとすべてがそこにいる。
獣の女王
彼女の腹の中に。
獣の女王
すさまじい音がして、ドアが破壊される。もぎ取られた。
獣の女王
「隠れられると思ったら、それは大間違いだぞ」
鏖田 ネイル
知っている臭いがする。
鏖田 ネイル
自分はその味も知っている。
網倉 霞
ここは比較的安全だと、そう判断して逃げ込んだはずだ。
鏖田 ネイル
彼女の首元に噛みつき、啜った事がある。
獣の女王
「逃げるなら息を切らせて逃げるんだな。仲間を置いて、何もかも放り捨てて」
鏖田 ネイル
牙を見せつけ、露悪的に笑って、自分が怖いかと聞いたことがある。
鏖田 ネイル
その時、笑顔で答えてくれた彼女が…………
獣の女王
「それでどうにか、逃げて、生き延びれるかもしれない」
鏖田 ネイル
今、あいつの腹の中にいる。
鏖田 ネイル
「……それでは」
糸田巴
『あはは、怖くないよ』
糸田巴
一切の屈託はなく、あのとき巴はそう答えた。
鏖田 ネイル
手元に杭を引き寄せる。血が出そうな程握りしめる。
鏖田 ネイル
「それでは、お前を殺せない…………」
獣の女王
笑う。
獣の女王
「そうだ」
獣の女王
「お前の誇りを見せてみろ」
獣の女王
獣の女王は両手を下ろす。
獣の女王
「ハンデをくれてやる」
獣の女王
「ワンサイドゲームじゃ、つまらないだろ」
獣の女王
「一撃だ」
獣の女王
「それであの娘を越えて見せろ」
鏖田 ネイル
頭に血が上る。同時に血の気が引いていくのも感じる。
鏖田 ネイル
感情が爆弾のように胸のうちで弾けて、血液を流している。同時に理性がその流れをひきとめ、手に精確な動作をもたらそうとしている。
獣の女王
それを見ている。
鏖田 ネイル
自分は狩人だ。そう信じて生きてきた。
獣の女王
「お前のすべてを撃ち込め」
鏖田 ネイル
奴らに従わない、人を従わせない。己は狩る側だと。
獣の女王
獣の腹に、彼女がいる。彼女の仇が、目の前にいる。狩るべき吸血鬼と、相対している。
獣の女王
つまり、あなたの全てが。
獣の女王
今ここにある。 
鏖田 ネイル
身体を引き絞る。筋肉が痛みを訴えるほどに縮め、弾性をエネルギーとして蓄える。
鏖田 ネイル
弓を引くように狙いを定める。瞳はまっすぐに目標を見据える。身体の部位のうち、最も柔らかく、最も装甲の薄く、そして急所と成りうる場所を探す。
鏖田 ネイル
指の一本を咥え、先端を噛みちぎる。それを自分の背後に投げる。
鏖田 ネイル
【爆破】
鏖田 ネイル
それを最後のエネルギーとして、その全身を発射する。
鏖田 ネイル
杭を構え、全てのエネルギーをそこに集中させるべき体勢を整え。
鏖田 ネイル
その爪を、届かせようと────
獣の女王
鏖田 ネイル ハンターの矜持を破壊します。
網倉 霞
妨害します!
獣の女王
ast
BloodMoon : ランダム全特技表(6,5) > 環境5:待つ
網倉 霞
2D6>=7 (判定:蹴る)
BloodMoon : (2D6>=7) > 3[1,2] > 3 > 失敗
網倉 霞
その爆風に身を紛れさせて。
網倉 霞
鏖田に注意が向いている間にもう一撃を与えるつもりで、有刺鉄線を投げる。
獣の女王
鏖田の狙いは正確だった。その一撃の鋭さもまた。
獣の女王
しかし獣の女王は、ただ純粋にそれよりも速い。
獣の女王
ただ半歩足を下げるだけで、それで有効打は得られない。
獣の女王
精確で鋭利な一撃であるからこそ、ささいにもずらされればそれで届かない。
獣の女王
最小限の動きで一撃を回避した獣の女王は、放り込まれた有刺鉄線が描く影を操作する。
獣の女王
影に毒を潜ませることはできない。
獣の女王
鏖田ネイルの一撃は、全身全霊を込めた一撃であるが故に、踏みとどまることはできない。
獣の女王
あなたは有刺鉄線に巻き込まれる。
鏖田 ネイル
「────っ!!」
網倉 霞
鏖田の狙いは完璧だった。その攻撃を受ければ傷がつくはずで、避けようとすれば自分の追撃への対処が遅れる。
鏖田 ネイル
届かせる事ができなかった。ほんの少し狙いをずらされ、身体の厚い部分で受けるだけで無効化された。
鏖田 ネイル
全身に痛みが走る。身体が痺れる感覚も。
獣の女王
「終いだな」
網倉 霞
有刺鉄線に手応えを感じた。その手応えがモンスターでなかったことは一度もなかったから、反射的にワイヤーを強く引く。
網倉 霞
爆破で舞った埃が目隠しになって、気付くのに遅れる。
網倉 霞
この鉄線が刺さったそれがモンスターではなく、狩人であったことに。
網倉 霞
「……っ!」
鏖田 ネイル
「があっ…………!」
鏖田 ネイル
粉塵の中から転がり出たのは、全身血まみれになったこの女だ。
網倉 霞
手を緩めるが遅く。強く引いた鉄線は狩人に傷をつくる。
鏖田 ネイル
声の代わりに咳が続く。仕込まれた毒が回り始め、ろくに舌も回らなくなっている。
獣の女王
跳躍する。
獣の女王
「あの娘のところに送ってやる」
獣の女王
その歯牙が鏖田に襲いかかる。先刻、糸田巴を引き裂いた牙。
獣の女王
しかし、その攻撃もまた届かなかった。
獣の女王
爆発。獣の女王の内側から。
獣の女王
肉と血が飛び散るが、速やかに回復する。
獣の女王
この爆発は。この炎は。この燃料は。
獣の女王
糸田柱のものだ。
網倉 霞
何度も見た爆発だ。
獣の女王
それは糸田柱が残した最後の一撃。 
網倉 霞
これが決まって、生きていたモンスターはいままでひとりもいなかった。
網倉 霞
それも、体内からの爆発で。
網倉 霞
周囲10mは吹き飛ぶはずのその爆発が、獣の女王に吸収される。
獣の女王
「……とんだ"デザート"だな」
網倉 霞
血が、肉片が、獣の女王から溢れて、自分の服を汚す。
網倉 霞
「……糸田さん、」
獣の女王
今なら逃げることが出来るだろう。
獣の女王
戦いを継続するにせよ、体勢を立て直す必要があるのは明白だ。
獣の女王
鏖田はあなたの毒を受けたのだから。
鏖田 ネイル
有刺鉄線で受けた傷そのものは深くはない。出血が多いのも見た目だけだ。
鏖田 ネイル
ただ、毒による麻痺は深刻だった。上手く身体を動かすことができないでいる。
網倉 霞
鏖田を引っ張り上げて、担ぐ。
網倉 霞
思えばいつも担がれる側だったと思う。
獣の女王
獣の女王は月の下で、笑いながら立っています。
網倉 霞
最近は担がれることもなくなっていたけれど。
網倉 霞
服がじわりと、血で汚れていく。
網倉 霞
駆け出す。
鏖田 ネイル
担がれるままに去っていく。
網倉 霞
とにかくあの化物から離れなければ。
網倉 霞
それだけを考えて。
獣の女王
「鬼ごっこ継続か、いいだろう」
鏖田 ネイル
その刀剣のような瞳だけは、ずっと怪物を睨みつけながら。
獣の女王
* * *
[ 網倉 霞 ] テンション : 9 → 14
獣の女王
* * *
網倉 霞
焼夷弾1 勝利の護符2 拳銃4 で補正-7
網倉 霞
興奮剤を使用して+2 行動力で+3
網倉 霞
調達をします!!!!!
網倉 霞
2D6-7+2+3>=5 (判定:耐える)
BloodMoon : (2D6-7+2+3>=5) > 4[1,3]-7+2+3 > 2 > 失敗
網倉 霞
激情を使用します・・・・・・・・・・・
網倉 霞
この1は……6……!!!!!
GM
成功ですね。
GM
通します。
網倉 霞
ありがとうございます・・・・・・・・・・・・・・
網倉 霞
ホテルの一室。逃げるようにして、その中に入る。
網倉 霞
慣れた手付きで手続きを済ませて飛び込んだ。
GM
その一室に踏み込むだけで、すべての想い出が蘇る。
網倉 霞
ベッドに鏖田を寝かせる。
網倉 霞
横の椅子に座る。
鏖田 ネイル
寝かされた時に傷に痛みが走るが、表情は変えない。それくらいは今更だ。
糸田柱
初めてこの部屋にきたときは、酷い雨が降っていた。夏なのに酷く冷える夜だった。
鏖田 ネイル
避難先としてホテルに連れ込まれるのも、今更だ。
こういう場所が、狩人にとって都合が良い施設だというのは知っている。
鏖田 ネイル
……年齢の問題もあって、あの人と一緒に来たことはないが。
糸田柱
手を差し出す。特に何も言わず。上着を、ということだろう。糸田柱は丁寧なところと、ぶっきらぼうな側面を併せ持つ。
網倉 霞
何度も来た部屋だ。上着を着たまま椅子に座るのは初めてだ。
糸田柱
ハンガーに掛けるときに、その厚く傷ついた手で、しわにならないよう軽く均してかける。
網倉 霞
「……毒。その傷なら、そんなに強くはないはずだから」
網倉 霞
この部屋で自分から喋りかけるのは、あんまりないことだったような気がする。
鏖田 ネイル
「解毒薬とか、ないの」
網倉 霞
「……ない」
網倉 霞
「今まで狩人に毒を浴びせたことなんか、なかったし」
鏖田 ネイル
「……そう」
糸田柱
ホテルのテーブルにはアルコールがいつも置いてある。糸田柱はシーバスリーガルの18年物を好んだ。
鏖田 ネイル
「普通なら死んでたかもしれないけど、幸い私は普通じゃないから」
鏖田 ネイル
「しばらく寝る」
糸田柱
『君も飲むか?』
網倉 霞
「……そう」戦い方を見ればわかった。深くは追求しない。
網倉 霞
アルコール。ひとくちだけ、もらったことがある。
網倉 霞
気持ち悪くなって吐いた。
鏖田 ネイル
横になり、瞳を閉じながら問いかけた。
鏖田 ネイル
「ここ、来たことがあるの?」
鏖田 ネイル
誰と、とは問わない。
糸田柱
それなのに、どうしてか、いつもグラスが二つ置かれている。それに注ぐことなどないのに。
糸田柱
今日は当然、シーバスリーガルもグラスも置いてはいない。
網倉 霞
テーブルの上のその思い出から目を逸らして。椅子から立って、鏖田のベッドの端に座る。
網倉 霞
「…………まあ、何度か」
糸田柱
あなたと会うとき、柱はいつも飲み過ぎる。
糸田柱
あまり変わっているようには見えないのに、『今日は飲みすぎた』と言う。
鏖田 ネイル
「ふーん、そう」
鏖田 ネイル
「…………」
鏖田 ネイル
「恋人だった?」
鏖田 ネイル
これは、特に必要の無い問いだ。それは分かっていた。
糸田柱
お酒を飲んでからは、シャワーを浴びる。いつも柱が先に浴びる。
糸田柱
一緒に入ったことはない。
網倉 霞
「……いや」
網倉 霞
「そうでありたかったな、と……思う」
鏖田 ネイル
「ふーん」
糸田柱
シャワーを浴びた後にも柱は香水をつけた。9月の、残暑のような匂いだった。
鏖田 ネイル
聞く必要性があった訳ではない。だが、興味がなかった訳でもない。
鏖田 ネイル
それは、相手があの人の父親であった事もある。
網倉 霞
霞も柱も喋るほうではないから、こうして話しかけられるのはあまり慣れていないことだった。
鏖田 ネイル
……それと、この人物とあの人が似ているような気がしたのもあった。
網倉 霞
「…………アンタはさ」
糸田柱
何故そのタイミングにそうするのかはわからないが、バスローブの姿で、部屋の金庫を改める。
網倉 霞
「……」なんと問いかけたらいいかわからなくなって、悩む。
糸田柱
この部屋の金庫は二重底になっている。
糸田柱
その奥に、狩人の物資が隠されている。
網倉 霞
「……こういうとこ来るの、初めて?」
鏖田 ネイル
「別に」
鏖田 ネイル
連れ込んだ事も、連れ込ませてやった事もある。あまり面白い経験ではなかったが。
鏖田 ネイル
「でも、糸田さんと来た事はないよ」
糸田柱
特にそのままの金庫を見て、『大丈夫だな』と言う。
網倉 霞
「…………、」
鏖田 ネイル
「セックスする時はどっちかの家でやってたから」
網倉 霞
驚きはあった。けれど、自分もきっと外から見たら同じようなことをしている。
網倉 霞
「…………そ、こまでは。聞いてない」
鏖田 ネイル
「……そういう意味だったんじゃないの?」
網倉 霞
居たたまれなくなった。立ち上がって、金庫の前まで歩く。
鏖田 ネイル
お互いの一番の関心事は、”糸田さん”とどういう関係だったのか、だと認識していた。
網倉 霞
金庫の扉を開ける。
糸田柱
一見はただの金庫だが、その奥に開くところがある。
網倉 霞
あの人はいつもそれを確認していた。
網倉 霞
その動作をなぞるように、奥の板を外す。
糸田柱
中には無数の物資と、手紙が一つある。
網倉 霞
ひとつひとつ取り出して、上着のポケットにしまい。
網倉 霞
最後に残った手紙は、しまうか迷って。開く。
糸田柱
手紙にはこう記されている。
糸田柱
『霞へ』
糸田柱
『この金庫の物資は、私個人のものだ。好きに使ってほしい』
糸田柱
『君がいたお陰で、私はあの人を失った後でも、私は私を保っていることが出来た』
糸田柱
『本当に感謝している』
糸田柱
『私から君に願うことや、想うことは、口にせずともたくさんある』
糸田柱
『しかしながら、それを述べるはいささか押しつけがましいようにも思う』
糸田柱
『ただ一つだけ述べるならば』
糸田柱
『君が自分を大切にできるようになることを、私は望んでいる』
糸田柱
『君に好き勝手した私が言うことではないな。そうだな』
糸田柱
『だがそれでもだ』
糸田柱
手紙の中には、おおよそ二十万円ほどが一緒に同封されている。
糸田柱
『このお金は好きに使ってくれ』
糸田柱
そして、さらにもう一つの封筒。
糸田柱
『この封筒は、いざというときまで、決して開けるな』
糸田柱
『しかし、君が死に瀕したとき』
糸田柱
『そのときにだけ、開きなさい』
糸田柱
『この封筒の中身は魔法のアイテムだ』
糸田柱
『あるいは君に、活路を与えてくれるかもしれない』
糸田柱
『糸田柱より』
網倉 霞
その手紙を、丁寧だが硬い筆跡で書かれた文字を、一行一行読みながら。
網倉 霞
涙をこぼしていた。
網倉 霞
嗚咽が漏れる。
網倉 霞
封筒をズボンのポケットにしまう。
鏖田 ネイル
「……なにかあった?」
鏖田 ネイル
目を閉じていたから、その様子は観ていない。
網倉 霞
その場から立ち上がることもできずに。
鏖田 ネイル
ただ、金庫を漁る物音と、紙をめくる音。それから嗚咽が漏れ聞こえただけ。
網倉 霞
「……っ、…………」
網倉 霞
「……物資が」
網倉 霞
「物資が、あった」
網倉 霞
袖で涙をぬぐって、ふらりと立ち上がって。
網倉 霞
鏖田が寝ているベッドの端にふたたび腰掛ける。さきほどよりは近く。手を伸ばせば届く距離。
網倉 霞
「……糸田さんが」
網倉 霞
「用意して、くれてたんだ」
鏖田 ネイル
「優しい人だった?」
鏖田 ネイル
あの人の父親だったのならば。
網倉 霞
「……どうだろう」
網倉 霞
「少なくとも……愛妻家で娘思いって、聞いてる」
網倉 霞
「財布から嫁さんと娘さんの写真とか、出てくるんだ」
鏖田 ネイル
「親子仲が良かったのは、知ってる」
鏖田 ネイル
「家族写真とか、家にいっぱいあったから」
網倉 霞
「……家、行ったんだな」
鏖田 ネイル
「行きたいって言ったら、連れてってくれた」
鏖田 ネイル
「流石に、ご家族が居ない時だけだったけど」
網倉 霞
「……そうか」
鏖田 ネイル
「あの子は、私のわがままを何でも聞いてくれたんだ」
鏖田 ネイル
「嫌な顔ひとつせずに、全部を受け止めてくれた」
鏖田 ネイル
「最初、私はものすごくひどい事をしたのに……それでも、全部、全部…………」
糸田巴
『大丈夫だよ』と言う。
糸田巴
いつだって。
網倉 霞
「……うん」
糸田柱
手紙に書いてあることが正しいのであれば。
糸田柱
あなたと柱との関わりは、そうした家庭環境、そして巴の人格形成の、バックボーンだ。
糸田柱
あなたがいたお陰だと、その手紙には書いてある。
網倉 霞
「…………」
網倉 霞
「……俺さ」
網倉 霞
「あの人の嫁さんに似てるって、よく言われたんだ」
糸田柱
この奇妙な関係、巡り合わせは、その事実関係に反して決して無秩序な組み合わせではない。
鏖田 ネイル
「そうだと思うよ」
網倉 霞
鏖田の腰の杭を見て。なんとなく、出会ったばかりの頃のあの人を思い出して。
鏖田 ネイル
「……糸田さんにも似てるから。少しだけ」
鏖田 ネイル
この人物の前で”糸田さん”と呼ぶ事は多少の錯綜を伴いそうだが、呼び方を変える気にはなれなかった。
鏖田 ネイル
あの人に対する想いを、少しでも変えたくなかったし、変える可能性もつくりたくはない。
網倉 霞
初めてあの人と寝た時、翌日の身体の傷付き方がひどくて。シャワーがひどくしみたのを覚えている。
網倉 霞
噛み跡と引っかき傷だらけだった。
網倉 霞
「……そっか」
鏖田 ネイル
初めて、あの人と関係を持った時。
鏖田 ネイル
それは殆ど強姦のようなもので、あまりにも輝いていたあの子を傷つける事を目的としたもので。
鏖田 ネイル
終わった後のあの子は、噛み跡と引っかき傷だらけだった。
鏖田 ネイル
それでも、あの人は笑っていた。
網倉 霞
「……あんたも、なんか。俺と初めて会ったときの糸田さんに似てる」
鏖田 ネイル
「……そんなに乱暴な人だったわけ?」
網倉 霞
何度か夜を重ねるうちに、だんだん手付きが、目の鋭さが、変わっていくのを感じていた。
網倉 霞
不器用ではあったけど。
網倉 霞
最後まで、終わった後は全身が痛かったけど。
網倉 霞
「まあ……そうだな」
網倉 霞
「……でも、俺もそれを望んでたから」
網倉 霞
「べつに、それでよくて」
鏖田 ネイル
……そうして、何でも許してしまうところは。
鏖田 ネイル
やはり、似ているのかもしれない。少しだけ。
網倉 霞
「それで、糸田さんが良くなるなら、よかったんだ」
鏖田 ネイル
「ふうん」
鏖田 ネイル
「私と糸田さんとの関係とは違う」
鏖田 ネイル
「まぁ、少しは似ている」
網倉 霞
「……そっか」
鏖田 ネイル
「糸田さんは」
鏖田 ネイル
「私の、お母さんだったから」
網倉 霞
「…………え?」思わず聞き返してしまう。
鏖田 ネイル
「お母さんだった」
鏖田 ネイル
聞こえ無かったようだったので言い直した。
網倉 霞
「……おかあ、さん」繰り返す。
網倉 霞
あの人が、巴はまだ小さいから、と言っていた気がする。
鏖田 ネイル
「なんでも……全部受け止めてくれたんだ。あれを取って、これを取ってとか、そういう些細なわがままから。日常の些細な愚痴も、胸の奥の薄汚い感情も、セックスも……」
鏖田 ネイル
「糸田さんの胸の中だけが私の居場所だった。息苦しい世界の中で、あそこでだけ呼吸ができた……」
鏖田 ネイル
「私は糸田さんから産まれたかった。本来はそうなる筈だったんだ…………」 
鏖田 ネイル
牢獄に繋がれて、光のない瞳で毎晩犯されていた女ではなく。
鏖田 ネイル
あの人こそが、私の本当の母親だったんだ。
網倉 霞
「…………」
網倉 霞
なんと返せばいいかわからなくなって、
網倉 霞
「……そう」それだけ言う。
鏖田 ネイル
肉体年齢が9歳であることも、この鏖田という女には関係無かった。
鏖田 ネイル
でも。
鏖田 ネイル
「なのに、もう居ない…………」
鏖田 ネイル
「あいつが、殺してしまった」
鏖田 ネイル
「息ができない………………」
網倉 霞
ぎゅっと胸が痛くなる。
鏖田 ネイル
ベッドの上で、麻痺が引けてきた身体を縮める。
網倉 霞
そうだ。目の前で。そしてあの人も、一緒に。
鏖田 ネイル
シーツをぎゅっと押し込めて胸のうちにいくら強く掻き抱いても。
鏖田 ネイル
そこに空いた穴は塞がらない。
網倉 霞
「…………大事な、人だったんだな」
鏖田 ネイル
「この世界の全てだった」
鏖田 ネイル
主語は自分ではない。
鏖田 ネイル
「糸田さんに会いたい…………」
網倉 霞
「……うん」
鏖田 ネイル
「…………あいつを殺して」
鏖田 ネイル
「それから、会いにいかないと」
鏖田 ネイル
少なくとも、この世界に留まる理由はもう無い。
網倉 霞
「……そうだな」
鏖田 ネイル
必要なのはもう、旅立ちの準備だ。
網倉 霞
「俺も……」
網倉 霞
俺も。あの化物を殺して。それで。
網倉 霞
それでどうするのだろう。
網倉 霞
なにもなくなった金庫の中みたいに、からっぽだ。
網倉 霞
「……俺も」
網倉 霞
「会いたいな」
網倉 霞
「……娘さんにも、挨拶くらいできたらいい」
網倉 霞
でもきっと、あの人は天国で嫁さんに会っているのだろう。
網倉 霞
あの人の顔を見て、娘さんに挨拶して。それから。
網倉 霞
それから、どこに行けばいいのか、わからずに。
網倉 霞
「……あの化物を、殺す」
網倉 霞
わかっているのは、それだけ。
鏖田 ネイル
「……いかんぞ」
鏖田 ネイル
「糸田さんは、私の母さんだからな」
鏖田 ネイル
「今、君は母親を求める幼子のような顔をしている」
網倉 霞
「……。……目、開けられた?」
鏖田 ネイル
「さては君も糸田さんの子供になる気だろう、いかん、いかんぞ。私は一人っ子になって母の愛を一身に受けるのだ」
網倉 霞
「麻痺、抜けてきたみたいだ。……よかった」
鏖田 ネイル
「一人っ子でだだ甘に育てられて一生独り立ちせずに……まぁ、半吸血鬼だからな」
網倉 霞
「…………産まれ直せるといいな」
鏖田 ネイル
「願望で話してもどうにもならない。努力するしかないだろう」
網倉 霞
「……。……がんばって……」
鏖田 ネイル
「うむ。私は死んだら間違いなく地獄に落ちるだろうが、そこで閻魔を殺すか脅すかすれば天国に行けるだろう。そうすれば糸田さんに会える。ロードマップも完璧だ」
鏖田 ネイル
毒はもう完全に抜けているようだ。ベッドの上で身体を起こして饒舌に語っている。
網倉 霞
口の麻痺もぬけたのかなと思う。
網倉 霞
「……うん。……応援してる」
GM
そして、火災報知器のベルが鳴る。
GM
階下からの破壊音、悲鳴。
GM
夢から現実へと呼び覚ます、煩わしい目覚ましのように。
GM
* * *
GM
獣の女王は獲物を逃さない。
GM
このホテルに辿り着くのは時間の問題だった。
GM
悲鳴や破壊音は、徐々に近づいてくる。
GM
ワンフロアごとに、虐殺しているのだ。
GM
そして――
獣の女王
「いい部屋とってるじゃないか」笑う。
鏖田 ネイル
そのせいで随分と犠牲者が増えてしまったようだが。
獣の女王
「お陰で前菜をたくさん味わえた」
網倉 霞
上着の下で注射器を握る。
鏖田 ネイル
数多の死体が作ってくれた時間で、最低限の体勢は整えたが……まだ本調子とは言い難い。
獣の女王
遠くで消防車のサイレンの音が聞こえる。ぐらぐらと燃える音も。悲鳴はもう聞こえない。
獣の女王
「さて」
獣の女王
そう小さく呟いて、空気が変わる。 
獣の女王
殺意。
獣の女王
そして真っ直ぐ歩いてくる。
網倉 霞
その殺意に、身動きがとれなくなりそうになった。
網倉 霞
けれど。
網倉 霞
その腹の中の、その人を思って。
網倉 霞
床を踏みしめて、睨む。
獣の女王
それは何の変哲も無い一歩一歩だが、どうしても妨げられる気がしない。
網倉 霞
この場にはいくつかの罠が仕掛けられている。悲鳴が聞こえてから仕込んだものだ。
鏖田 ネイル
空気の味が変わったのを感じる。
手足の痺れが未だ僅かに残っても、ここから退く事は容易ではない。
獣の女王
獣の女王は、その技をあえて踏む。発動させる。
網倉 霞
小さな爆発。
網倉 霞
引っかかった、と思い、同時に。
網倉 霞
先程の、あの人の残した爆発を思い出して。
獣の女王
一つも残らず、余すところなく。
獣の女王
それはつまり、見えているということだ。
獣の女王
そしてあなたの狙い通りに発動し、作用し、傷つけられない。
網倉 霞
あの爆発をものともしなかった化物が。こんな罠で倒せるはずがないのだと。
鏖田 ネイル
「この場所で戦ったほうが有利になる……と言えるような理由は」
網倉 霞
しかしそれでも時間稼ぎくらいにはなると祈っていた。
鏖田 ネイル
「たった今無くなったな」
網倉 霞
「……そう、だな」
獣の女王
そして、あなたに届く。
網倉 霞
声は僅かに震えていて、
獣の女王
霞の両肩を押さえつける。
獣の女王
タートルネックの服を捲りもせず。
獣の女王
噛みつく。
獣の女王
首筋に。
網倉 霞
逃げようとして、逃げられなくて。
網倉 霞
ひゅう、と息を吸う音が、自分でも嫌になるくらいはっきりと聞こえた。
網倉 霞
――激痛。
獣の女王
血を啜るのではなく、その表面を食いちぎった。
網倉 霞
「っ、ぐ、あ――」
鏖田 ネイル
それを、止めに入るでもなく。なんら妨害も入れる事なく、静観していた。
鏖田 ネイル
静観以外に出来ることがなかった。
獣の女王
布地をぷっと吐き捨てる。
鏖田 ネイル
一歩でもにじみ寄れば、その瞬間頭を吹き飛ばされだろうという確信が身体を硬直させていたから。
網倉 霞
痛い。痛くて、この痛みはあの人に噛まれたものよりずっと痛くて、
網倉 霞
そうだ、首は、いつもあの人に触れてもらっていた首が、
網倉 霞
その傷口が。
網倉 霞
首元まである服で隠して、自分だけのものにしていた、それが。
獣の女王
そうした機敏を、獣の女王は察していたわけではない。
獣の女王
ただの捕食行為の一環。
獣の女王
ただ、活きの良い狩人だ。
獣の女王
ショートケーキの上のいちごくらいには思っていたかも知れない。
網倉 霞
鼓動に合わせて頭痛がする。深くはない傷から、血が溢れ出る。
網倉 霞
いっそ深く刺し殺してくれたらよかったのに、
獣の女王
「……つまらないな」
獣の女王
「もうお終いなのか?」
網倉 霞
皮だけを剥がして、その獣はそこにある。それをまだ認識できている。認識できてしまっている。
網倉 霞
「……っ、」顔を歪ませながら。
網倉 霞
「……かえ、して」
網倉 霞
手を伸ばしかける。
網倉 霞
「……かえせ、……かえせよ、」
獣の女王
あえてそのままにさせる。
網倉 霞
震えていて力のない腕が、獣の腕に触れる。
網倉 霞
顔が歪んでいるのは、痛みからのものだけではなくて。
網倉 霞
糸田さんとの繋がりは、もう眼前のこのモンスターの腹の中だ。
網倉 霞
腕はどこを掴むこともできずに。
獣の女王
「あの男か? 娘か?」
網倉 霞
歪みきった顔で、睨む。
網倉 霞
それにこたえることはない。
獣の女王
「お前も飲んでから食われるか? その懐の毒薬を」
獣の女王
糸田柱が最後に仕掛けた燃焼剤は、己の胃の中だ。
網倉 霞
こたえるかわりに、獣の腕をひっかく。
網倉 霞
僅かな抵抗にしかならない。
獣の女王
「だめだな」
獣の女王
「人間ならちゃんと武器を使え」
獣の女王
「話にならない」
獣の女王
飽きた。
獣の女王
空気が冷めるのがわかる。
獣の女王
あなたの露出した首を噛む。
網倉 霞
「っ、」
網倉 霞
さっきまで確かに、あの人が残した痕があったそこへ。
網倉 霞
獣の牙が刺さる。
獣の女王
それはほとんど一瞬だった。小さじほどの水を、乾いたタオルで吸うよりも速やかに。
網倉 霞
痛くて、苦しくて、視界がぼやけて、意識が失われていって。
獣の女王
その血を奪う。
網倉 霞
けれどそれ以上に、絶望がそこにあった。
[ 網倉 霞 ] 余裕 : 8 → 2
[ 網倉 霞 ] 余裕 : 2 → 8
[ 網倉 霞 ] 血量 : 8 → 3
[ 網倉 霞 ] 血量 : 3 → 0
獣の女王
血を啜り、顔を上げる。
獣の女王
少し悩んだ結果。
獣の女王
「肉はいいや」
獣の女王
窓から捨てる。
鏖田 ネイル
終始隙を伺っていた。血を吸っている間、ひと刺しでもできるタイミングがあればと。
鏖田 ネイル
結論。この存在に隙は無い。
獣の女王
窓ガラスが割れ、霞は夜の闇に投じられる。
鏖田 ネイル
無駄だった観察を止め、霞を負って自分も窓から飛び出す。
鏖田 ネイル
「ここで人手が減ると困るな……!」
獣の女王
血を奪われて黒く帳を下ろしつつある霞の視界には、月の光を受けて散らばるガラスが満天の星空のように見えた。
網倉 霞
悪い夢なら、ここで覚めるべきだと思うんだけど。
獣の女王
満天の星をみるようなロマンチックなデートなど、糸田柱としたことはなかった。
獣の女王
夢想したことはあったかもしれないが。
網倉 霞
星が綺麗だ。
網倉 霞
今日は満月で、ハロウィンで、星が綺麗で。
網倉 霞
あの人とこういうときにデートがしたかった。
網倉 霞
甘いお菓子が欲しかった。
網倉 霞
背中が木にぶつかる。
鏖田 ネイル
だけど、今日は
網倉 霞
枝が折れて、一緒に落ちる。
鏖田 ネイル
「まだお前が死ぬ日じゃない」
鏖田 ネイル
その命日は、あの怪物の翌日であるべきだ。
鏖田 ネイル
網倉の身体を追うように、無数の硝子が舞っている。
鏖田 ネイル
その一つ一つを、杭で打ち払い、砕き、逸らす。
網倉 霞
重い音がした。おそらく、地面についた。
網倉 霞
もう感覚も鈍くて、星がきれいで、
網倉 霞
――その星が取り払われていく。
鏖田 ネイル
着地跡に落ちる追撃を全て排除して、それから、落ち行く男の横に着地する。
鏖田 ネイル
「起きろ」
鏖田 ネイル
蹴りを入れる。木の緩衝材によって、動けなくなるような負傷は防いでいたはずだ。
鏖田 ネイル
骨の一本や二本は折れているかもしれないが、狩人ならそれくらいでも動ける。
獣の女王
獣の女王もまた、窓から夜へ。
網倉 霞
「っ、…………」
鏖田 ネイル
「星を見上げている暇は無いぞ」
獣の女王
辺りには消防士や野次馬がたくさんいる。
獣の女王
赤い回転灯が明滅している。
網倉 霞
声で意識が戻される。身を起こす。
鏖田 ネイル
「お前の足元に広がっている血溜まりを見ろ」
獣の女王
ホテルの炎が赤く、夜空の黒を際立たせている。
鏖田 ネイル
「そこに誰の血が混じっているのか思い出せ」
網倉 霞
「……、……まだ、死んでない」
網倉 霞
「なら」
網倉 霞
「……殺す、」
鏖田 ネイル
「そうだ」
網倉 霞
「……そう、だったよな」
鏖田 ネイル
「順番は守れ」
網倉 霞
立ち上がる。よろめいて、それから。
鏖田 ネイル
「奴が先、私達はその後だ」
網倉 霞
ポケットを確認して。
網倉 霞
「……ああ」
網倉 霞
「……わかってる」
網倉 霞
汚れた手で、ベルトに括り付けてある注射器を取り出す。
獣の女王
獣の女王が自由落下をし、そのまま着地するまでのわずかな時間。
獣の女王
あなたは戦意を取り戻す。
網倉 霞
得物を握る。
網倉 霞
そうだ。
網倉 霞
殺さなくてはならない。
鏖田 ネイル
「……観察して分かったが、あれに付け入る隙は無い」
鏖田 ネイル
「まともな罠もどうやら効かん」
獣の女王
どん、という重たい音を立てて、着地する。
獣の女王
そんな大立ち回りも獣の女王にとっては、まったくありふれた日常だ。
獣の女王
trivialだ。
網倉 霞
炎が宿るものとして、敵を討つものとして。
鏖田 ネイル
「つまり、どう足掻いても正面突破になる」
網倉 霞
殺すことは、使命だ。
鏖田 ネイル
「やれるな?」
網倉 霞
「……ああ」
網倉 霞
「やってやる」
鏖田 ネイル
「ならいい」
鏖田 ネイル
もう、自分たちには守りたい物なんてない。
鏖田 ネイル
保つべきプライドもない。
鏖田 ネイル
それらは全て食い散らかされ、打ち砕かれてきた。
獣の女王
ここまでの数刻。それは猫が獲物をじゃれていたぶるのにも似て、まったくの遊びでしかない。
鏖田 ネイル
一つ一つ、丁寧に。子供が無邪気に、捕まえた昆虫の手足をもいでいくように。
獣の女王
ただ気まぐれにそれをした。
鏖田 ネイル
巣を埋め立てられ、手足をもがれた蟻はそれからどうすればいいのか?
鏖田 ネイル
簡単だ。
鏖田 ネイル
体当たりをして、噛み付く。
鏖田 ネイル
もうそれしかできないのだから、それをやるしかない。
鏖田 ネイル
「……行くぞ」
網倉 霞
仇を討てるなら何を捨ててもよかった。
獣の女王
獣の女王は笑う。
網倉 霞
あの怪物にとってはきっとありふれたことで。
網倉 霞
けれど自分達にとっては、それが全てで。
獣の女王
幸福や運命、些末なアビリティなど獣の女王に興味はない。
獣の女王
しかし。
獣の女王
そんな悪あがきは、いくらか心を沸き立たせるものがある。
獣の女王
獣の女王は暴食にして傲慢。
獣の女王
その"プライド"こそが、味わって飲み下すに値する。
網倉 霞
今の状況には、必死、という言葉が似合う。文字通り。
網倉 霞
何もかもが眼前の獣の腹の中にある。
網倉 霞
ならば、それだけを考えればいい。
網倉 霞
全て失い奪われて、残るのは、それだけだった。
網倉 霞
「……行こう」
獣の女王
* * *
獣の女王
なんか流れでやっちゃいましたがデータ的には首筋を壊してます。
獣の女王
あとついでに血を全部吸った。
獣の女王
ドリンクバーくらいの感覚です。
獣の女王
* * *
獣の女王
ラウンド1
獣の女王
ist
BloodMoon : 先制判定指定特技表(1) > 《自信/社会5》
鏖田 ネイル
見るで目標8
鏖田 ネイル
2D6>=8 (判定:見る)
BloodMoon : (2D6>=8) > 4[1,3] > 4 > 失敗
網倉 霞
2D6>=7 (判定:考える)
BloodMoon : (2D6>=7) > 3[1,2] > 3 > 失敗
獣の女王
1d2
BloodMoon : (1D2) > 1
獣の女王
鏖田に攻撃します。
獣の女王
使用アビリティは不明。
獣の女王
2D6+2>=5 (判定:落ちる)
BloodMoon : (2D6+2>=5) > 9[3,6]+2 > 11 > 成功
獣の女王
4d6+9+5
BloodMoon : (4D6+9+5) > 18[3,4,5,6]+9+5 > 32
獣の女王
受けると余裕が8点あるので24超過、耐久力5なので4部位飛びます
獣の女王
回避のペナルティは-10。
鏖田 ネイル
判定……!
鏖田 ネイル
2D6-10>=7 (判定:耐える)
BloodMoon : (2D6-10>=7) > 10[5,5]-10 > 0 > 失敗
獣の女王
特にないですね?
鏖田 ネイル
特にできることがないです!!!!!
獣の女王
brt
BloodMoon : 身体部位決定表(4) > 《利き脚》
獣の女王
brt
BloodMoon : 身体部位決定表(7) > 《攻撃したキャラクターの任意》
獣の女王
brt
BloodMoon : 身体部位決定表(10) > 《逆脚》
獣の女王
brt
BloodMoon : 身体部位決定表(7) > 《攻撃したキャラクターの任意》
獣の女王
任意は利き腕逆腕で。
獣の女王
四肢を捥ぎます。
鏖田 ネイル
どうしようもない。
鏖田 ネイル
避ける事もできない。受ける事もできない。
鏖田 ネイル
全身全霊を掛けるつもりでいた。決死の覚悟を持ち、何一つとして油断も無かった。
獣の女王
ただ近づいて、一撃を喰らわせる。
鏖田 ネイル
相手の戦力を、自分に想像しうる最大限に見積もっていた。
鏖田 ネイル
それでも、それよりも、この相手は強大だった。
獣の女王
それ以上でも、それ以下でも何もない。
[ 鏖田 ネイル ] 余裕 : 8 → 0
鏖田 ネイル
利き脚が捥がれる。
鏖田 ネイル
利き腕が捥がれる。
鏖田 ネイル
まるで童子が玩具で遊ぶような気軽さで。
獣の女王
正確には、取れた、が正しい。
獣の女王
そうしようという意図はない。
獣の女王
そうなっただけだ。
鏖田 ネイル
肉が骨から引き剥がされていくのが自分で認識できていても、身体は何も動かない。
網倉 霞
まるで触ったら取れてしまった、とでも言うような。
鏖田 ネイル
痺れている訳でも、竦んでいる訳でもない。
鏖田 ネイル
本来知覚等できないような高速の動きの中で、自分の感覚だけが加速しているのだと。
網倉の動きが非常にゆっくりに見える事で気づいた。
GM
あれだけ諦めないという言葉を使ってきた巴が逃げてと言ったのは。
網倉 霞
それくらい簡単に、腕が、脚が、"外れる"のを見ていた。
鏖田 ネイル
スローモーションのように引き伸ばされた世界の中で、あの怪物だけが通常の速度で動いている。
鏖田 ネイル
”生きている世界が違う”
GM
可能性などないからだ。
鏖田 ネイル
なるほど、こういう状況の事を言うのだと。どこか冷静な思考の中で理解した。
GM
獣の女王に対抗しようとすること自体が、諦めることに等しい。
鏖田 ネイル
だが。
鏖田 ネイル
結果が同じであろうとも。
鏖田 ネイル
諦めない。
鏖田 ネイル
再起判定。
鏖田 ネイル
部位ダメージ:6 再起目標値:7
鏖田 ネイル
1d6>=7
BloodMoon : (1D6>=7) > 2 > 失敗
鏖田 ネイル
激情を使用。 勝利の護符を使用
鏖田 ネイル
出目を2→6へと変更し、勝利の護符で+2 8。
鏖田 ネイル
もう立ち上がれない。
鏖田 ネイル
四肢を失った瞬間に、まずそれを考えた。だから。
鏖田 ネイル
別の移動手段が要る。
鏖田 ネイル
幸いにして、”付け根”は残っている。だからあとはそこに……
鏖田 ネイル
リーチを用意すればいい。
鏖田 ネイル
地面に着地する直前、身体をねじる。
鏖田 ネイル
腰元に装備していた杭をバラまく。
鏖田 ネイル
そのうちの2本、それが地面に垂直になった瞬間を狙って……
鏖田 ネイル
そこに自分の脚が生えていた場所が来るように動いて……
鏖田 ネイル
全体重をかけて、着地した。
GM
獣の女王は追加行動を獲得。
GM
フォロワーAの攻撃。
GM
1d2
BloodMoon : (1D2) > 1
GM
鏖田を攻撃。攻撃は不明。
GM
2d6>=5
BloodMoon : (2D6>=5) > 6[1,5] > 6 > 成功
[ 鏖田 ネイル ] 激情 : 1 → 0
GM
1d6
BloodMoon : (1D6) > 4
GM
フォロワーの攻撃は任意の特技で防御出来ます。
GM
ペナルティは2。
GM
回避しますか?
鏖田 ネイル
します。
鏖田 ネイル
では、【耐える】で回避。
鏖田 ネイル
2D6-2>=5 (判定:耐える)
BloodMoon : (2D6-2>=5) > 7[2,5]-2 > 5 > 成功
獣の女王
それはただの衝撃波だ。
獣の女王
獣の女王が殺意を持って動くだけで、それだけの余波が及ぶ。
獣の女王
凌ぐことができなければ、あなたは激しく叩きつけられ、全身の骨が砕けていただろう。
獣の女王
フォロワーB
獣の女王
1d2
BloodMoon : (1D2) > 1
獣の女王
鏖田さんですね。
鏖田 ネイル
はい!!!!
獣の女王
これはただの攻撃です。
獣の女王
2d6>=7
BloodMoon : (2D6>=7) > 6[2,4] > 6 > 失敗
獣の女王
すみません5以上なので当たります。
獣の女王
1d6
BloodMoon : (1D6) > 4
鏖田 ネイル
再び耐えるで回避
獣の女王
OK
[ 鏖田 ネイル ] テンション : 11 → 14
鏖田 ネイル
(さっきの回避で増えたぶん)
獣の女王
先に拳銃宣言します
獣の女王
1d6
BloodMoon : (1D6) > 6
網倉 霞
援護飛ばします!!!!!
獣の女王
10点飛びますね。
[ 網倉 霞 ] テンション : 14 → 17
獣の女王
ペナルティ-4。
網倉 霞
+1!
鏖田 ネイル
回避を、します。
鏖田 ネイル
2D6-4+1>=5 (判定:耐える)
BloodMoon : (2D6-4+1>=5) > 5[2,3]-4+1 > 2 > 失敗
網倉 霞
ブロック入れさせてください……!!!!!
獣の女王
OK
[ 網倉 霞 ] テンション : 17 → 20
[ 網倉 霞 ] 激情 : 0 → 1
網倉 霞
2D6>=5 (判定:蹴る)
BloodMoon : (2D6>=5) > 2[1,1] > 2 > ファンブル(【余裕】が 0 に)
獣の女王
はい。
獣の女王
では。
獣の女王
衝撃波が炎上したホテルに及び、倒壊する。
鏖田 ネイル
せめて一撃。
獣の女王
瓦礫が降り注ぐ。
鏖田 ネイル
少しだけでも相手に致命の可能性をと。
鏖田 ネイル
失った脚の代わり杭を突き刺し、失った腕の代わりに口に杭を咥え。
獣の女王
brt
BloodMoon : 身体部位決定表(3) > 《利き腕》
鏖田 ネイル
決死の表情で敵を睨めつけ、備える。
鏖田 ネイル
渾身の。全てを賭けて、あの時以上の一撃を狙って。
獣の女王
そうして活動できていたのは、あなたが耐えるばかりの人生だったからだ。
獣の女王
なにもかも、耐え忍んできた。
獣の女王
だからこの期に及んでも、まだその闘志は燃えている。
獣の女王
降り注いだ鉄骨があなたの腹をぶち抜く。
獣の女王
消化器を破壊。
獣の女王
brt
BloodMoon : 身体部位決定表(9) > 《呼吸器》
獣の女王
燃えた瓦礫が、あなたの肺腑を焼く。
網倉 霞
地を蹴って、庇おうとした。
鏖田 ネイル
ころす。
鏖田 ネイル
そう発音しようとした。
網倉 霞
駆け出した、しかし全てが遅くて。
鏖田 ネイル
代わりに口の辺りからごぽりと血の塊が吹き出して、胸に空いた穴からひゅっと間抜けな音が鳴った。
網倉 霞
一歩目を踏みしめる前に、鏖田が瓦礫に貫かれる。
鏖田 ネイル
血がなみなみと溢れている。
GM
そして、崩れゆく瓦礫に飲み込まれる。
鏖田 ネイル
捥がれた腕からも腹の穴からも、拍動に合わせて、もう存在しない身体の部位へ血を送ろうと流れ出ていく。
GM
あなたの視界は炎の中に包まれる。
鏖田 ネイル
それでも最後まで、その最後までずっと獣の女王を睨みつけて────
GM
獣の女王はもはや、あなたに一瞥もくれない。
鏖田 ネイル
再起判定。
鏖田 ネイル
1d6>=9
BloodMoon : (1D6>=9) > 2 > 失敗
GM
瓦礫、炎の向こうに隔てられる。
GM
もう、決して届かない。
GM
しかし、あなたは【見る】。
糸田巴
炎のなかに、あの子がいる。
糸田巴
ゆっくりとあなたに近づき、
糸田巴
あなたの頭を優しく撫でる。
鏖田 ネイル
ああ────
糸田巴
『逃げて、生きて』
糸田巴
彼女の口がそう動くのを見る。
糸田巴
糸田巴は、あなたの退路だ。
鏖田 ネイル
────どうしてこのような事が起こるのだろう。
鏖田 ネイル
────死に際の脳が見せる幻影だろうか。
鏖田 ネイル
────走馬灯というものだろうか。
糸田巴
あなたの身に起きたあらゆる悲劇から、あなたを救うことはできない。
糸田巴
なかったことにはできない。
糸田巴
それは魔女の領分だから。
糸田巴
ただ、あなたの逃げ場になることはできる。
鏖田 ネイル
────あの子はたしかにそう言っていた。
鏖田 ネイル
────きっと、本心からそう願っていた。
鏖田 ネイル
────逃げて欲しいと、生きて欲しいと。そういう子だったから。
糸田巴
逃げて、生きる、それだけを続けてきた。
鏖田 ネイル
────だけど、それはできないんだ。
鏖田 ネイル
────その願いは叶えられない。
糸田巴
けれど願いは願われる。
糸田巴
願われる側の思いとは、裏腹に。
糸田巴
願いとは願う者のためにあるのだから。
鏖田 ネイル
────それを叶える事ができるのは、私を生かす事ができるのは。
鏖田 ネイル
────世界で唯一人、貴女だけだったんだ。
糸田巴
あなたの手元には、ひとつの封筒が残される。
鏖田 ネイル
────だから、願わくば。願わくば。
鏖田 ネイル
────貴女が最期に願いを遺したように、私にも願う権利があるのならば。
鏖田 ネイル
────力が欲しい。
鏖田 ネイル
────貴女に会いにいくための力が。
鏖田 ネイル
────奴を殺す事ができるだけの力が!
鏖田 ネイル
藻掻く。
鏖田 ネイル
何を目的とする訳でもない。何ができると思った訳でもない。
鏖田 ネイル
散り散りになった、芋虫のようになった身体のまま、ただ藻掻く。
鏖田 ネイル
何かを叶えたくて、欲しいものが欲しくて。駄々をこねる幼児のように。
鏖田 ネイル
そしてその動きが、身体の下にあった封筒を、開いた。
GM
GM
鏖田ネイルは無力化しました。
GM
狩人の手番です。
網倉 霞
はい。
網倉 霞
毒殺+神経毒。対象は獣の女王。
網倉 霞
2D6+3>=5 (判定:撃つ)
BloodMoon : (2D6+3>=5) > 7[1,6]+3 > 10 > 成功
網倉 霞
1d6
BloodMoon : (1D6) > 4
網倉 霞
激情で4を6に。
GM
はい。
網倉 霞
先に焼夷弾します!!!!!!!
網倉 霞
1d6 変調
BloodMoon : (1D6) > 1
網倉 霞
炎上と恐慌!
GM
恐慌ですね。
網倉 霞
拳銃を使用。
網倉 霞
1部位+1d6+2(神経毒)+2(有刺鉄線)+2 (祟り目)+1D6(拳銃)+3(恐慌)
網倉 霞
+重傷。 これは回避不能攻撃。
網倉 霞
1d6+2+2+2+1D6+3
BloodMoon : (1D6+2+2+2+1D6+3) > 6[6]+2+2+2+1[1]+3 > 16
網倉 霞
1部位+16点+重傷。 
GM
余裕がいっぱい減りました。
GM
1部位ですね。すばらしい。
網倉 霞
BRT
BloodMoon : 身体部位決定表(9) > 《呼吸器》
GM
2d6>=3
BloodMoon : (2D6>=3) > 7[3,4] > 7 > 成功
網倉 霞
付け入る隙は無い。まともな罠も効かない。
網倉 霞
触れられれば一撃で全てが吹き飛ぶ。
網倉 霞
ならば。
網倉 霞
ポケットから焼夷弾を取り出して。
網倉 霞
渾身の力で投げつける。
網倉 霞
そしてそれと同時に、瓶を取り出す。
網倉 霞
――毒液の入った瓶。
網倉 霞
致命的な毒が入っていて、触れれば死ぬ。入手が難しくて、誰にも見せていないそれ。
網倉 霞
それの蓋を開ける。
網倉 霞
頭からかぶって、手にも身体にも浴びて、
網倉 霞
そのまま獣の女王に突っ込む。
網倉 霞
――これは、あの人が。
網倉 霞
あの人が同じようなことをやっていて。
網倉 霞
真似するなって、怒られた。
網倉 霞
また会えたら、怒られるだろうか。
網倉 霞
だから、会うために。
網倉 霞
仇を。
獣の女王
獣の女王の攻撃。攻撃方法は不明。
獣の女王
2D6+2>=5 (判定:塞ぐ)
BloodMoon : (2D6+2>=5) > 8[3,5]+2 > 10 > 成功
獣の女王
4d6+5+9
BloodMoon : (4D6+5+9) > 17[3,4,4,6]+5+9 > 31
[ 網倉 霞 ] 余裕 : 8 → 0
獣の女王
余裕0なので、6部位です。
[ 網倉 霞 ] テンション : 20 → 30
網倉 霞
狂気を使用して回避。
[ 網倉 霞 ] 狂気 : 0 → 3
獣の女王
回避ペナルティ-11です。
網倉 霞
2D6-11>=9 (判定:蹴る)
BloodMoon : (2D6-11>=9) > 11[5,6]-11 > 0 > 失敗
網倉 霞
激情で5を6に。回避!
[ 網倉 霞 ] 激情 : 1 → 0
獣の女王
深く踏み込み、あなたを蹴る。
網倉 霞
脚が腹に直撃する。
獣の女王
焼夷弾による爆炎に、自ら飛び込んで。
獣の女王
獣の女王の全身が燃えている。
網倉 霞
そのまま声もなく弾き飛ばされる。
網倉 霞
地面に転がる。毒液が目に染みて涙が溢れる。
獣の女王
その死毒を、獣の女王はまともに吸う。
獣の女王
口から血を吐く。
獣の女王
手の甲で拭う。
獣の女王
笑う。
網倉 霞
息を吸い込んで、胃液を吐く。
網倉 霞
毒が回り始めている。
網倉 霞
けれど確かにぼやけた視界に、獣の口から血が溢れるのを見た。
網倉 霞
「……は、」笑う。
網倉 霞
手足はがくがくと震えて、痺れていて、まともに動かせはしない。
網倉 霞
指先が変色して壊死し始めている。
網倉 霞
このこみあげてくる笑いがどういったものかも、わからないまま。
獣の女王
ファンブル分の追加行動。
獣の女王
攻撃方法は不明。
獣の女王
2D6+3>=5 (判定:落ちる)
BloodMoon : (2D6+3>=5) > 8[3,5]+3 > 11 > 成功
獣の女王
4d6+5+9
BloodMoon : (4D6+5+9) > 13[1,3,4,5]+5+9 > 27
網倉 霞
狂気3点で回避。
[ 網倉 霞 ] 狂気 : 3 → 6
網倉 霞
2D6-9>=7 (判定:耐える)
BloodMoon : (2D6-9>=7) > 8[2,6]-9 > -1 > 失敗
獣の女王
部位は5。
獣の女王
brt
BloodMoon : 身体部位決定表(4) > 《利き脚》
獣の女王
brt
BloodMoon : 身体部位決定表(9) > 《呼吸器》
獣の女王
brt
BloodMoon : 身体部位決定表(3) > 《利き腕》
獣の女王
brt
BloodMoon : 身体部位決定表(4) > 《利き脚》
獣の女王
brt
BloodMoon : 身体部位決定表(8) > 《口》
獣の女王
では脳を破壊します。
網倉 霞
1D6+1>7
BloodMoon : (1D6+1>7) > 5[5]+1 > 6 > 失敗
網倉 霞
勝利の護符で+2。
獣の女王
あなたの身体が内側から爆ぜる。
獣の女王
原理はわからない。だがこの火薬の臭いは、あなたが使い慣れたもの。
獣の女王
あなたの仕掛けた爆薬が、あなたの内側で爆発した。
獣の女王
「お前は私にわずかでも届いた」
獣の女王
「だから私も”手品”を見せてやった」
獣の女王
笑ってやる。
網倉 霞
呼気とともに血が吐き出される。
網倉 霞
どこのものかもわからない自分の肉が口から出てくる。
網倉 霞
反射的に息を吸い込もうとして、
網倉 霞
喉が焼けるようで、詰まっているようで。
網倉 霞
また吐く。
網倉 霞
脚の感覚がもうない。
網倉 霞
ズボンの下で溶けているのがわかる。
網倉 霞
手品。
網倉 霞
それがどういう意味か、考える力すら奪われている。
網倉 霞
口を拭おうとして、
網倉 霞
持ち上げた手が根本から焼けて腐り落ちる。
網倉 霞
その全てが五感を通して伝わる。
獣の女王
ラウンド2。
獣の女王
ist
BloodMoon : 先制判定指定特技表(4) > 《人脈/環境9》
網倉 霞
2D6>=6 (判定:捕らえる)
BloodMoon : (2D6>=6) > 6[1,5] > 6 > 成功
網倉 霞
毒殺。
網倉 霞
対象は獣の女王。
獣の女王
どうぞ。
網倉 霞
2D6+3>=10 (判定:騙す)
BloodMoon : (2D6+3>=10) > 2[1,1]+3 > 5 > ファンブル(【余裕】が 0 に)
獣の女王
獣の女王は、ただ、立ってみている。
網倉 霞
最後に、そう、さいごに。
網倉 霞
もう一撃。
網倉 霞
もういちど、
網倉 霞
逆の腕で毒液を取り出す。
網倉 霞
もういちど。
網倉 霞
それを開けようとして、
網倉 霞
使い慣れない手で、震える手で、その瓶の蓋に触れて、力を込めて開けて、
網倉 霞
その手が浴びた毒液で腐り落ちた。
網倉 霞
手から滑り落ちた毒液が、口に入る。
網倉 霞
口に、顔にかかって、残りはコンクリートの上に溢れる。
網倉 霞
――一緒に取り出されていた封筒に、毒液がかかって。
網倉 霞
封筒の表面が燃えるように、溶けていく。
[ 網倉 霞 ] 狂気 : 6 → 10
GM
戦闘を終了します。
GM
* * *
GM
二人は封筒を開けた。
GM
中には便せんと、10枚の6ペンスコイン。
GM
あなたには読めないはずの言語で書かれていた。
GM
いや、それをまともに見れるような状況ではないはずだ。
GM
しかし、その文面に一瞥を寄せる。
GM
記述されていることが、一瞬でわかる。
GM
拝啓、アリス。
愛しいアリス。
きみが目を醒ましてから100年の月日が流れました。
ぶっちゃけ、この国はもう駄目です。
兎は落下し、猫は干乾び、帽子は裂け、女王は壊れ、
大いなる暴力と死が、堕落した国に降り注ぎます。
残ったのは53枚のトランプのみ。
猟奇と才覚、愛によって救われるこの世界で
僕らは今も、新たなアリスを待ちわびています。
GM
あなたたちは、荒野にいる。
GM
身体を腐らせる死毒も、貫く鉄骨も、炎もなく。
GM
五体は何故か、満足のままで。
鏖田 ネイル
「…………ここは?」
鏖田 ネイル
手があり、脚がある。あの状況から地続きの世界ではない。
鏖田 ネイル
「…………冥府か?」
網倉 霞
「……っ、……あ、」先ほどと同じように、地面に転がっていて、
網倉 霞
しかし頬に当たる感触はコンクリートのものでも生ぬるい血でもなくて、
網倉 霞
「…………っ、」
網倉 霞
両手を持ち上げる。濡れても腐ってもいない手がそこにある。
網倉 霞
「……あいつは」
網倉 霞
「あいつはどこに、」
鏖田 ネイル
「居ない…………」
網倉 霞
「早く、探して、だって、」だって。今さっき一撃を与えて。
鏖田 ネイル
もっとも本気で気配を潜ませれば、あれは手の届く距離にいても気配もさせないだろうが。
GM
では、そうですね。あなたがたが周囲を見渡すと。
GM
なにか近づいてくるものがある。
人喰い三月
「Grrrrrrrrr!!!!」
GM
ここは堕落の国。
GM
いつだってギリギリの力で、幸福のために命を削ってきて戦ってきたあなたがたは。
GM
満月の下の地獄で、這うように生きてきたあなたがたは。
GM
また、異なる地獄へ。
GM
やがて至る、オールドメイド・ゲームまで。
GM
この荒廃した世界をさまよい、己の運命を知る。
GM
『逃げて、生きて』
GM
『君が自分を大切にできるようになることを、私は望んでいる』
GM
その願いが届くかは、まだわからない。
GM
* * *
GM
獣の女王 - trivial / fatal - 2人の救世主
GM
終わり。
GM
GM
『 16人の救世主』へ続く。
GM

-
堕落の国では、何もかもが枯れ果てている。
-
地の草木は何もかもが疲れ果て、地に伏したまま起き上がる力を持たない。
晴れる事のない空の下では、背を高く伸ばしたところで日光の恵みは得られないからだ。
-
項垂れる草木達と同じように、この世界の住民達もまた空を仰ぎ見なくなって久しかった。
-
そんな中、背をまっすぐと伸ばした一人の女が、荒れ果てた地を迷いのない足取りで進んでいた。
鏖田 ネイル
黒い外套を纏ったその女……鏖田ネイルという人物は、そのまま岩陰下にある洞窟の中に入っていった。
鏖田 ネイル
「……今戻った」
網倉 霞
洞窟。その近くには罠が仕込まれていることをあなたは知っている。
網倉 霞
それをすべて避けた者だけしかこの洞窟には入れない。
網倉 霞
「…………ん」
網倉 霞
一言。それだけ返す。
網倉 霞
男性とも女性とも判断がつかないような声が洞窟に反響する。
鏖田 ネイル
「はいこれ。あとこれ」
鏖田 ネイル
洞窟の内部には簡素だが居住空間が構築されている。
椅子に机、武器の保管棚、ハンモック。
鏖田 ネイル
その机の上に、いくつかのものが投げ出された。
採取を頼まれていた植物。街で調達してきた食料。
それから、血に濡れた6ペンスコイン。
鏖田 ネイル
「遭遇戦があった。二人組で一人仕留めたけど、一人逃した」
網倉 霞
ハンモックから降りる。やることがないときはハンモックに丸まって布団を被り、小さくなって身体を休めている。満足な食事もないし、狩人をやっていたときよりも体力の管理に気を配らなければいけなかった。
網倉 霞
「ありがとう」机の上の植物を手に取る。
網倉 霞
頼んでいたのは数種類。どれも必要量揃っている。
網倉 霞
そうして、隣のコインを見る。
網倉 霞
「逃した? 珍しいな、強かった?」
鏖田 ネイル
「いや、どちらも10枚程度。ただ片方が相手を庇って時間を稼がれた……心の疵の力を使ったんだろう」
鏖田 ネイル
「だから、きっと残ったほうが復讐に来る。尾行はされてないだろうけど、次街に行く時は準備が要るな」
鏖田 ネイル
そう云って、血に染まったロングコートをそこらに放って、それからその下にある衣服も全部放り投げ、全裸になった状態でハンモックに身体を沈めた。
鏖田 ネイル
「疲れた。寝る」
網倉 霞
薬草を掴んで、ぎゅっと握る。手の中でいくつも毒薬が作られる。
網倉 霞
六ペンスコインの血のにおいを嗅ぐ。
網倉 霞
「来る前に殺せばいいな」
鏖田 ネイル
「んー…………そうね……」
網倉 霞
ふらりと歩き出す。洞窟の外のほうへ。
鏖田 ネイル
適当な相槌。もう早速寝そうらしい。
網倉 霞
「いってくる」
鏖田 ネイル
「女。得物はレイピア。年齢は14、身長は150。相方の死に様は四肢と頭部に杭」
鏖田 ネイル
「よろしくー……」
網倉 霞
若い女ならベッドに誘うのは難しそうだな、と思う。
網倉 霞
若いなら壊死系の毒殺かな、薬草採ってきてもらって助かったな、なんて思いながら。
網倉 霞
洞窟を出る。あまり重くない足音が去っていく。
網倉 霞
網倉 霞
――そうして。
網倉 霞
あなたが目を覚ますのと、足音が洞窟に再び響くのは同時。
網倉 霞
「ただいま」血の臭いに、ミント系香水と柔らかなフローラルの香水の入り混じったような香りを纏って。
網倉 霞
「これはおまけ」
網倉 霞
机に置かれた六ペンスコインは40枚。 
網倉 霞
「なんか、街にもうひとり……結構有名そうな救世主がいて」
網倉 霞
「情報引き出しつつ殺してきた」
網倉 霞
ふう、と溜息をついて上着を脱ぐ。噛み跡やキスマークが首筋にある。
鏖田 ネイル
「んぁ……」
女は網倉の声で起きたようだが、その有様は酷いものだった。毛布は蹴り飛ばされて半ばずり落ち、口元には涎の跡がある。
ハンモックから落ちていないのが奇跡的なくらいだった。
鏖田 ネイル
「情報……何の?獲物?」
鏖田 ネイル
キスマークについては今更振れたりはしない。
よーやるわとは内心思っていても、表に出すまでの関心もない。
網倉 霞
「……なんか」
網倉 霞
いや、ちょっと都合が良すぎる噂だから話半分に聞いて、と付け足して。
網倉 霞
「結論から言うと」
網倉 霞
「復讐が、できるかもしれない」
網倉 霞
「……そういう儀式があるんだそうだ」
網倉 霞
「救世主殺して、最後の一組になったら願いが叶うとか……」
網倉 霞
「場所も聞いた。明日館に行くんだ、一緒にどうか、って聞かれた。殺したけど」
網倉 霞
手には少し濡れて皺になっている招待状……の封筒。寝ぼけた視界にもおさまるようにひらひらさせる。
鏖田 ネイル
「……開けたら転移する奴?」
鏖田 ネイル
自分たちがこの世界に来た時も、確か……そうした封筒がきっかけだった筈だ。
網倉 霞
「あー……」
網倉 霞
2d6+3=>7 判定:才覚
DiceBot : (2D6+3>=7) > 11[6,5]+3 > 14 > 成功
網倉 霞
「そんな気がする」
鏖田 ネイル
「転移範囲がどれくらいかわからないから、持てる範囲の装備と……あと服も」
網倉 霞
「今すぐ開けていい?」どう見ても服着てない鏖田を見る。
鏖田 ネイル
「殺し合いに素手で突入する気か?」
網倉 霞
「……あー」自分は全部持ってたから忘れてた。
網倉 霞
こっちはいつも服着てなくても色々仕込んでるし……
鏖田 ネイル
「用意する……それで、明日だ」
網倉 霞
「ん」
網倉 霞
封筒を机の上に……置きかけて、不安になって服のポケットにしまい。
網倉 霞
ざらついた大きい布を2、3枚掴んでハンモックに飛び乗る。
鏖田 ネイル
正直得体の知れなさ過ぎる噂だが、やることがどうせ殺し合いなら問題はない。
鏖田 ネイル
この世界に来てからこれまで20人以上を殺し、コインを奪う度に力が増したのを感じた。
だが、その力が以前とは別種の……というより、別系統の力だとも感じていた。
鏖田 ネイル
狩人のそれとは別系統のこの力をどれほど積み重ねれば……あの怪物に届くのか。それが計れない。
鏖田 ネイル
だから、どうしても幾許かの焦りと、苛立ちとか溜まっているのを感じてしたし……その状況でなにか他の道が見つかるのなら、多少怪しかろうが飛びつく貪欲さはあった。
鏖田 ネイル
だが、それはそれとして。
鏖田 ネイル
「お前…………臭いぞ。寝る前にためた水を被ってこい」
網倉 霞
「えー……水は浴びたんだけど……」でも言われてみれば水を浴びたあとに人を殺したような気がしてきた。
網倉 霞
もう曖昧だ。昨晩食べたものが思い出せないのと同じように、いつ殺したかなんていちいち覚えてはいない。
網倉 霞
……疵のことを思う。
網倉 霞
ふわっといい匂いがする。石鹸のような。
網倉 霞
「これじゃだめ?」
網倉 霞
「もう眠いんだけど……」
網倉 霞
「起きたら……出発前に浴びるから……」
鏖田 ネイル
「無駄遣いを…………」
鏖田 ネイル
まぁ、明日くらいには回復するだろうからいいが……
鏖田 ネイル
「とりあえずそれでいい。装備の準備はこっちでしておく」
鏖田 ネイル
片方が寝ている間、片方は起きている。何度か取り逃がした救世主が出てからは、そういう取り決めだ。
網倉 霞
「……べつに、そんなに体力使うもんじゃないし……」
網倉 霞
行為よりはずっとマシだ。コインが増えてからは、特に。
網倉 霞
匂いをまとうこと。男を誘惑すること。身体から毒を出すこと。どれもが、ここに来た頃よりうまくなっている。……とくに誘惑することなんかは、もう自分の本来の性別がどちらか、度々わからなくなるくらいに。
網倉 霞
「…………。……ありがと」
網倉 霞
そのままハンモックの上でちいさく丸まる。
網倉 霞
あまり眠れるほうではないけれど、一人のハンモックの中が一番マシだ、と思う。
鏖田 ネイル
カチャカチャと、装備を弄る音が洞窟の壁に僅かに反響する。
鏖田 ネイル
使用する興奮剤の状態を確認する時の、容器の音。
刃物で、木の杭の表面を削る音。
鏖田 ネイル
数を確認し、ベルトにセットして、それからもう一度点検をする。
鏖田 ネイル
どこか聞いたような音。
網倉 霞
目を閉じて、眠ることなく、それをきいていた。
網倉 霞
あの人はいつも終わったあと、眠る前にそうして、装備をたしかめていた。
網倉 霞
ふとんをかぶり直す。
網倉 霞
――刺剣の館。
網倉 霞
やけにコインを持っていた救世主はベッドの上で、熱を持った息を吐き出しながらそう言っていた。
網倉 霞
そこにいけば、ようやく果たされるのだろうか。
網倉 霞
果たされなかったら、その時はまた次を探すだけ、だけど。
網倉 霞
首筋と背中が痛む。求めているのはこれではない。あの人がいつもしてくれていた場所には、痕はない。
網倉 霞
その部分を指でなぞる。
網倉 霞
復讐を。
網倉 霞
忘れたことはない。
網倉 霞
まぶたの下、暗闇のなかで、それだけを想う。
鏖田 ネイル
背後で身じろぎする気配を感じながら、作業を続ける。
鏖田 ネイル
こうした取り決めがある以上、お互いの睡眠事情には否応なく詳しくなるが、2人ともあの日以来安眠できた日はない。
鏖田 ネイル
だが、それも当然の帰結だ。復讐者は眠れない。
鏖田 ネイル
身体を休める事は出来ても、本当の意味で眠る事ができる日はもう来ない。 
鏖田 ネイル
少なくとも、自分はそうだ。
鏖田 ネイル
「糸田さん……」
鏖田 ネイル
求めているものが、思わず口から漏れる。あの人がいまここに現れて、自分を抱きしめてくれたら、自分は何もかも投げ出して今すぐ眠ることができるだろう。
鏖田 ネイル
でも、できない。心に空いた穴は塞がらない。
鏖田 ネイル
せめてできるのは、その穴から流れて止まらない血の中に、他人の血を混ぜるだけだ。
鏖田 ネイル
自分に穴を穿った怨敵の胸に、自分と同じ穴を穿つ日を夢想するだけだ。 
鏖田 ネイル
そのために、牙を研ぐ。
鏖田 ネイル
件の催しに、いったい何人の救世主が参加するのかは知らないが。
その全ての屍の上に立つための……決意でもなく。決心でもなく。覚悟でもなく。
そんな不要な、役にたたないものではなく。
鏖田 ネイル
冷酷な計算と準備を進めて、女はその前夜を過ごした。